【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 DENSO Manufacturing Tennessee,Inc.(1720 Robert C.Jackson Drive Maryville,Tennessee 37801 U.S.A.)に本件特許出願に係る制御方法を実装した表面実装機を納品。納品日平成28年2月4日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来装置では、時間あるいは実装操作回数に基づいて部品実装装置内で発生している誤差を推測しているに過ぎないため、補正処理の実行間隔が必ずしも適切であるとは言えず、補正処理を過剰に実行してタクトタイムの長時間化を招くことがあった。
【0006】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ヘッドユニットの移動を補正する補正処理の実行間隔を高精度に調整することによって、短いタクトタイムで部品実装作業を安定して行うことができる部品実装技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1態様は、部品実装装置であって、基板に部品を実装するヘッドユニットと、 ヘッドユニットを駆動するヘッド駆動機構と、予め設定された位置に固定された基準マークを撮像する撮像部と、ヘッド駆動機構を制御してヘッドユニットによる基板への部品の実装を制御する制御ユニットと、を備え、制御ユニットは、部品の実装を行っている間に、撮像部により撮像された基準マークの位置情報の経時変化に基づいてヘッド駆動機構によるヘッドユニットの移動を補正する補正処理を断続的に実行する補正処理部と、経時変化の変動量に応じて補正処理の実行間隔を調整する間隔調整部と、を有することを特徴としている。
【0008】
また、この発明の第2態様は、ヘッドユニットを移動させてヘッドユニットにより基板に部品を実装する部品実装方法であって、部品の実装を繰り返して行っている間に、予め設定された位置に固定された基準マークを撮像して得られる基準マークの画像から基準マークの位置情報の経時変化を求め、当該経時変化に基づいてヘッドユニットの移動を補正する補正処理を断続的に実行する工程と、経時変化の変動量に応じて補正処理の実行間隔を調整する工程と、を有することを特徴としている。
【0009】
また、この発明の第3態様は、ヘッドユニットを移動させてヘッドユニットにより基板に部品を実装する部品実装装置の制御用プログラムであって、部品の実装を繰り返して行っている間に、予め設定された位置に固定された基準マークを撮像して得られる基準マークの画像から基準マークの位置情報の経時変化を求め、当該経時変化に基づいてヘッドユニットの移動を補正する補正処理を断続的に実行する補正機能と、経時変化の変動量に応じて補正処理の実行間隔を調整する間隔調整機能と、をコンピュータに実現させることを特徴としている。
【0010】
また、この発明の第4態様は、上記制御用プログラムが記録されたことを特徴としている。
【0011】
このように構成された発明では、部品の実装を行っている間に、熱変位によりヘッドユニットの位置精度に誤差が生じることがあるが、補正処理を断続的に行っているため、ヘッドユニットを適正な位置に移動させることができ、部品実装作業を高精度に、しかも安定して実行することができる。
【0012】
また、上記補正処理を行うために経時変化を取得しているが、この経時変化は、熱変位が比較的大きい間、大きく変動する一方、熱変位が飽和すると、その変動量は小さくなる。このように熱変位の特性は経時変化の変動量と密接に関連している。そこで、本発明では、経時変化の変動量に基づいて補正処理の実行間隔を調整することで、熱変位の特性に応じた補正処理を行い、補正処理の実行間隔を適正化している。このため、過剰な補正処理の実行が排除されてタクトタイムが短縮される。
【0013】
ここで、上記した熱変位の特性と経時変化の変動量との関連性を考慮すると、変動量が小さくなるのに伴って実行間隔を広げるのが望ましく、これによってタクトタイムを効果的に短縮することができる。
【0014】
また、変動量に応じて実行間隔を多段階で広げる、つまり変動量が小さくなるにしたがって実行間隔を広げるため、熱変位の特性にきめ細かく対応して補正処理の実行間隔を調整することができる。その結果、タクトタイムをさらに効果的に短縮することができる。
【0015】
また、部品実装作業を停止すると、部品実装装置の内部は、時間経過に伴って温間状態(熱変位が飽和あるいはほぼ飽和している状態)から冷間状態(熱変位が不飽和となっている状態)に移行する。したがって、部品の実装を停止している停止時間を計測する停止時間計測部を設け、停止時間計測部により計測された停止時間が一定値を超えると、冷間状態に移行したと判断し、補正処理の実行間隔を狭めるように構成してもよい。これにより、部品の実装を再開した直後の補正処理を冷間状態に対応した間隔で実行することができ、再開直後であっても部品実装作業を高精度に行うことができる。
【0016】
さらに、基準マークの設置個数は任意であるが、互いに異なる位置に複数個設けることで部品実装装置内の各部での熱変位を詳細にモニターすることができ、これらの基準マークの全てに基づいて経時変化の変動量を求め、補正処理の実行間隔を調整してもよい。ただし、この場合、各基準マークを撮像部によって撮像する必要があり、タクトタイムの短縮化には不利となる。そこで、複数の基準マークのうち最初に撮像部により撮像された最先基準マークに関する変動量が所定値よりも小さいときには、残りの基準マークの撮像部による撮像を省略するように構成してもよく、これによってタクトタイムの長期化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように構成された発明では、予め設定された位置に固定された基準マークの位置情報の経時変化について変動量を求め、当該変動量に応じて補正処理の実行間隔を調整している。このため、補正処理を適正な実行間隔で実行して部品実装作業を安定して行いながら、その一方で過剰な補正処理の実行を排除してタクトタイムを短縮することが可能となっている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明にかかる部品実装装置の第1実施形態を示す平面図である。また、
図2は
図1に示す部品実装装置の部分正面図である。また、
図3は
図1に示す部品実装装置の主要な電気的構成を示すブロック図である。なお、
図1および
図2では、各図の方向関係を明確にするために、XYZ直角座標軸が示されている。
【0020】
この部品実装装置1では、基台11上に基板搬送機構2が配置されており、基板Sを所定の搬送方向Xに搬送可能となっている。より詳しくは、基板搬送機構2は、基台11上において基板Sを
図1の右側から左側へ搬送する一対のコンベア21、21を有している。そして、コンベア21、21は制御ユニット8の駆動制御部82からの動作指令に応じて作動することで、基板Sを搬入し、所定の実装作業位置(同図に示す基板Sの位置)で停止させ、図略の保持装置で基板Sを固定し保持する。そして、部品供給部4から供給される電子部品P(
図2参照)がヘッドユニット6に具備された実装ヘッド61により基板Sに移載される。また、基板Sに搭載すべき電子部品Pの全部を基板Sに搭載し終えると、基板搬送機構2は基板Sを搬出する。なお、基台11上には、部品認識カメラ7が配設されている。この部品認識カメラ7は、照明部およびCCD(Charge Coupled Device)カメラなどから構成されており、ヘッドユニット6の各実装ヘッド61の吸着ノズル62に保持された電子部品Pをその下側から撮像するようになっている。
【0021】
このように構成された基板搬送機構2の前方側(+Y軸方向側)および後方側(−Y軸方向側)には、部品供給部4が配置されている。これらの部品供給部4は多数のテープフィーダ41を備えている。また、各テープフィーダ41には、電子部品Pを収納・保持したテープを巻回したリール(図示省略)が配置されており、電子部品Pをヘッドユニット6に供給可能となっている。すなわち、各テープには、集積回路(IC)、トランジスタ、コンデンサ等の小片状のチップ電子部品Pが所定間隔おきに収納、保持されている。そして、テープフィーダ41がリールからテープをヘッドユニット6側に送り出すことによって該テープ内の電子部品Pが間欠的に部品吸着位置に繰り出され、その結果、ヘッドユニット6の実装ヘッド61に装着された吸着ノズル62によって電子部品Pのピックアップが可能となる。
【0022】
このヘッドユニット6は電子部品Pを実装ヘッド61の吸着ノズル62により吸着保持したまま基板Sに搬送するとともに、ユーザより指示された部品搭載位置に移載するものである。そして、前方側でX軸方向に一列に配列された6個の実装ヘッド61Fと、後方側でX軸方向に一列に配列された6個の実装ヘッド61Rとの合計12個の実装ヘッド61を有している。すなわち、
図1および
図2に示すように、ヘッドユニット6では、鉛直方向Zに延設された実装ヘッド61Fが6本、X軸方向(基板搬送機構2による基板Sの搬送方向)に等ピッチで列状に設けられている。また、実装ヘッド61Fに対して後方側(−Y軸方向側)にも、前列と同様に構成された後列が設けられている。つまり、鉛直方向Zに延設された実装ヘッド61Rが6本、X軸方向に等ピッチで列状に設けられている。なお、本実施形態では、実装ヘッド61Fと実装ヘッド61RとはX軸方向に半ピッチずれて配置されており、
図1に示すように平面視でジグザグ状に配置されている。このため、Y軸方向から見ると、
図2に示すように12本の実装ヘッド61は互いに重なり合うことなくX軸方向に一列に並んでいる。
【0023】
また、各実装ヘッド61の先端部に装着された吸着ノズル62は図略の圧力切換機構を介して負圧発生装置、正圧発生装置、及び大気のいずれかに連通可能とされており、制御ユニット8が圧力切換機構をコントロールすることで吸着ノズル62に与える圧力を切り換え可能となっている。すなわち、圧力切換によって負圧発生装置からの負圧吸着力を吸着ノズル62に与えることで、該吸着ノズル62の下方端部(先端部)が電子部品Pの上面を吸着して部品保持が可能となっている。逆に、吸着ノズル62へ正圧発生装置からの正圧を供給すると、実装ヘッド61による電子部品Pの吸着保持が解除されるとともに、正圧により電子部品Pを瞬時に基板Sに搭載する。そして、電子部品の搭載後、吸着ノズル62は大気開放とされる。このようにヘッドユニット6では制御ユニット8による負圧吸着力及び正圧供給の制御により電子部品Pの着脱が可能となっている。
【0024】
ちなみに、実装ヘッド61は、複数種類の吸着ノズル62のうちから部品実装に使用する使用ノズルを切り換えることが可能に構成されている。つまり、部品実装装置1において後方側の部品供給部4と実装作業位置の間には、オートノズルチェンジャ5が設けられており、このオートノズルチェンジャ5において実装ヘッド61に取り付ける吸着ノズル62が切り換えられる(ノズルチェンジ)。こうして、実装ヘッド61に取り付けられた吸着ノズル62が使用ノズルとして以後の部品実装で用いられる。
【0025】
また、各実装ヘッド61はヘッドユニット6に対して図略のノズル昇降駆動機構により昇降(Z軸方向の移動)可能に、かつ図略のノズル回転駆動機構によりノズル中心軸回りに回転(
図2のR方向の回転)可能となっている。これらの駆動機構のうちノズル昇降駆動機構は吸着もしくは装着を行う時の下降位置(下降端)と、搬送を行う時の上昇位置(上昇端)との間で実装ヘッド61を昇降させるものである。一方、ノズル回転駆動機構は吸着ノズル62を必要に応じて回転させるための機構であり、回転駆動により電子部品Pを搭載時における所定のR軸方向に位置させることが可能となっている。なお、これらの駆動機構については、それぞれZ軸サーボモータ72、R軸サーボモータ73および所定の動力伝達機構で構成されており、制御ユニット8の駆動制御部82によりZ軸サーボモータ72およびR軸サーボモータ73を駆動制御することで各実装ヘッド61がZ方向およびR方向に移動させられる。
【0026】
また、ヘッドユニット6は、これらの実装ヘッド61で吸着された電子部品Pを部品供給部4と基板Sとの間で搬送して基板Sに実装するため、基台11の所定範囲にわたりX軸方向及びY軸方向(X軸及びZ軸方向と直交する方向)に移動可能となっている。すなわち、ヘッドユニット6は、X軸方向に延びる実装ヘッド支持部材63に対してX軸に沿って移動可能に支持されている。また、実装ヘッド支持部材63は、両端部がY軸方向の固定レール64に支持され、この固定レール64に沿ってY軸方向に移動可能になっている。そして、このヘッドユニット6は、X軸サーボモータ65によりボールねじ66を介してX軸方向に駆動され、実装ヘッド支持部材63はY軸サーボモータ67によりボールねじ68を介してY軸方向へ駆動される。このようにヘッドユニット6は実装ヘッド61に吸着された電子部品Pを部品供給部4から目的位置まで搬送可能となっている。
【0027】
さらに、ヘッドユニット6は、部品検査カメラ91を具備する。この部品検査カメラ91は、照明部およびCCDカメラなどから構成されており、基板Sに搭載された各電子部品の搭載状態を検査するために用いられる。具体的には、駆動制御部82がヘッドユニット6を適宜移動させることで、電子部品Pの搭載位置の上方に部品検査カメラ91を移動させる。そして、この状態で部品検査カメラ91の撮像した電子部品Pの画像が画像処理部84に転送される。画像処理部84は、転送されてきた電子部品Pの画像から、電子部品Pの搭載状態の良否を判定する。また、本実施形態では、部品検査カメラ91は、部品を撮像する以外に、部品実装装置1の各部や基板Sに対して予め設定された位置に設けられた基準マークM1〜M6を撮像する機能も兼ね備えている。より具体的には、基準マークM1〜M3は、熱膨張により変形することのないコンベア21、21のフレーム(図示省略)上の3箇所に一定の間隔を隔てて設けられており、上方からの平面視で略直角三角形の頂点に位置するように配置されている。また、基準マークM4、M5は基板Sの表面上の2箇所に一定の間隔を隔てて設けられたフィデューシャルマークである。さらに、基準マークM6はオートノズルチェンジャ5に設けられている。
【0028】
また、部品実装装置1には、作業者とのインターフェースとして機能するディスプレイ92を備えている。ディスプレイ92は、部品実装装置1の動作状態を表示する機能のほか、タッチパネルで構成されて作業者からの入力を受け付ける入力端末としての機能も有する。なお、ディスプレイ92に対する入出力の制御は、制御ユニット8の入出力制御部88によって実行される。
【0029】
このように構成された部品実装装置1全体の動作は、制御ユニット8の主制御部85によって統括的にコントロールされる。つまり、この主制御部85は、記憶部86に記憶されているプログラムやデータに基づいてバス87を介して制御ユニット8の各部と互いに信号のやり取りを行って、装置1全体を制御する。なお、このプログラム861は、CD(compact disk)、DVD(digital versatile disk)あるいはUSB(Universal Serial Bus)メモリーといった記録媒体862に記憶されていたものが、記憶部86に記憶されている。
【0030】
そして、例えば、複数の実装基板を生産する際には、記憶部86に記憶された生産用のプログラム861(生産プログラム)が主制御部85によって読み出される。そして、主制御部85がこのプログラム861に従って制御ユニット8の各部を制御することで、搬入されてくる複数の基板Sに対して順番に部品実装が実行されて、複数の実装基板が生産される。
【0031】
具体的には、実装作業位置に搬入・固定された一の基板Sの各搭載位置に対して所定の電子部品Pを搭載する部品実装が実行される。そして、一の基板Sにおける全ての搭載位置に電子部品Pが搭載されると(つまり、部品実装が完了すると)、一の基板Sが実装作業位置から搬出されるとともに次の基板Sが実装作業位置に搬入・固定され(基板搬送)、この次の基板Sに対して新たな部品実装が実行される。そして、このような動作が繰り返し実行されて、複数の実装基板が生産される。
【0032】
また、プログラム861は、搬入される基板Sに対して部品実装を繰り返し行う動作以外に、補正処理を断続的に実行する。これは、「背景技術」の項で説明したと同様の理由からである。すなわち、
図1に示す部品実装装置1において、補正処理を行うことなく部品実装を繰り返して行うと、その経過時間に伴い部品実装装置1の内部温度の上昇に伴う装置各部の熱変位によりヘッドユニット6の移動量に誤差が生じる。例えば
図4に示すように、時間経過に伴ってX軸方向およびY軸方向における誤差は変化する。したがって、部品を基板Sに正確に実装するためには、当該誤差を考慮してヘッドユニット6の移動を補正する必要があり、本実施形態においても、部品実装を繰り返している間に上記プログラム861にしたがって主制御部85が補正処理を断続的に行う。この補正処理は、基準マークを部品検査カメラ91により撮像して得られるマーク画像に基づいて当該基準マークの位置情報を取得して記憶する動作を基準マークM1〜M6の全部あるいは一部について行った後で、複数の位置情報を読み出し、それらから誤差を算出してヘッドユニット6の移動を補正するものであり、これによって熱変位に起因する移動量の誤差が補正される。なお、処理内容自体は周知であるため、本明細書においては補正処理の内容については説明を省略する。
【0033】
ここで、
図4から明らかなように、X軸方向およびY軸方向のいずれにおいても誤差は時間経過に伴って飽和する、つまり部品実装の開始直後および初期段階では熱変位は比較的大きいのに対し、部品実装の繰り返し時間が長くなるのに伴って熱変位は小さくなる。このような熱変位の特性を考慮すると、当該特性に応じて補正処理の実行間隔を調整するのが望ましく、主制御部85が装置各部を次に説明するように制御して間隔調整を実行する。このように、本実施形態では、主制御部85が実装処理を実行する実装処理部851、補正処理を実行する補正処理部852および補正処理の実行間隔を調整する間隔調整部853として機能する。
【0034】
図5は第1実施形態における補正処理の内容を示すフローチャートである。また、
図6は第1実施形態における間隔調整処理の内容を示すフローチャートである。以下、
図5および
図6を参照しつつ
図1の部品実装装置における補正処理の実行について説明した後で、補正処理の実行間隔(以下「補正間隔」という)の一例について説明する。
【0035】
部品実装装置1では、部品実装を開始すると、主制御部85は補正処理の実行回数を示すカウント値Nをゼロにリセットする(ステップS1)とともに補正間隔を比較的短い初期間隔ΔT1(例えば1分)に設定する(ステップS2)。また、部品実装の開始直後は
図4に示すようにX軸方向およびY軸方向のいずれにおいても誤差が比較的大きく変動することから、補正間隔を初期間隔ΔT1に維持したまま所定カウント値Nx(例えば3回)だけ実行する。すなわち、主制御部85はカウント値Nを「1」だけインクリメントし(ステップS3)、さらに補正間隔が経過するのを待った(ステップS4)後で補正処理を実行する(ステップS5)。このような処理(ステップS3〜S5)を主制御部85はカウント値Nが所定カウント値Nx未満の間、繰り返す(ステップS6)。例えば上記したように所定カウント値Nxを「3」に設定した場合、最初の3回の補正処理は常に短い補正間隔ΔT1で断続的に実行される。なお、当該3回の補正処理を行っている間に得られる基準マークの位置情報は順次記憶部86に記憶され、次に説明するように補正間隔の調整(ステップS7)に利用される。
【0036】
一方、ステップS6でカウント値Nが所定カウント値Nx以上である、つまり部品実装の開始から一定時間以上経過したと判断すると、主制御部85は補正間隔の調整(ステップS7)を実行する。ここでは、上記補正処理(ステップS5)において少なくとも第1基準マークM1の位置情報が記憶され、
図6に説明するように当該位置情報に基づいて補正間隔を調整するが、第1基準マークM1以外の基準マークM2〜M6の位置情報を用いる、あるいは複数の基準マークの位置情報に基づいて補正間隔の調整を行うことも可能である。
【0037】
この補正間隔の調整(ステップS7)では、
図6に示すように、主制御部85は記憶部86に記憶されている第1基準マークM1の位置情報のうち直近Nx回の位置情報を読み出し、第1基準マークM1の移動平均(Xave、Yave)を求める(ステップS71)。例えば、現時点でのカウント値Nが「4」であり、所定カウント値Nxが「3」の場合、1回目の補正処理で取得した第1基準マークM1のX軸方向の位置情報Xcur1(1)およびY軸方向の位置情報Ycur1(1)と、2回目の補正処理で取得した第1基準マークM1のX軸方向の位置情報Xcur1(2)およびY軸方向の位置情報Ycur1(2)と、3回目の補正処理で取得した第1基準マークM1のX軸方向の位置情報Xcur1(3)およびY軸方向の位置情報Ycur1(3)とに基づき、次式、
Xave=Xave(1-3)=(Xcur1(1)+Xcur1(2)+Xcur1(3))/3
Yave=Yave(1-3)=(Ycur1(1)+Ycur1(2)+Ycur1(3))/3
にしたがって移動平均(Xave、Yave)が算出される。
【0038】
この移動平均の算出(ステップS71)と同時あるいは前後して、主制御部85はヘッドユニット6を第1基準マークM1に向けて移動させ、部品検査カメラ91により第1基準マークM1を撮像する(ステップS72)。そして、主制御部85は撮像されたマーク画像に基づいて現時点での第1基準マークM1の位置情報(Xcur、Ycur)を取得した(ステップS73)後、X軸方向およびY軸方向における第1基準マークM1の誤差ΔX、ΔYを次式
ΔX=|Xcur−Xave|
ΔY=|Ycur−Yave|
で算出する(ステップS74)。さらに、主制御部85は第1基準マークM1の最大誤差Max(ΔX、ΔY)を求め、その値に応じて補正間隔を調整する(ステップS75〜S79)。より具体的には、
図6に示すように、最大誤差Max(ΔX、ΔY)が比較的大きな値D1(例えば5μm)以上である(ステップS75で「YES」)場合には、補正間隔を初期間隔ΔT1に設定する(ステップS76)。また、最大誤差Max(ΔX、ΔY)が値D1よりも小さいものの、誤差許容値D2(例えば3μm)を超えている(ステップS77で「YES」)場合には、補正間隔を初期間隔ΔT1よりも長い間隔ΔT2(例えば5分)に設定する(ステップS78)。さらに、最大誤差Max(ΔX、ΔY)が誤差許容値D2以下となっている(ステップS77で「NO」)場合には、補正間隔をさらに長い間隔ΔT3(例えば30分)に設定する(ステップS79)。
【0039】
こうして補正間隔の調整が完了すると、
図5に示すように、ステップS3に戻って次の補正処理を実行する。
【0040】
以上のように、本実施形態では、部品の実装を行っている間に、補正処理(ステップS5)を断続的に行っているため、ヘッドユニット6を常に適正な位置に移動させることができ、部品実装作業を高精度に、しかも安定して実行することができる。
【0041】
また、第1基準マークM1の位置情報(Xcur、Ycur)を経時的に求め、さらに最大誤差(本発明の「位置情報の経時変化の変動量」に相当)を求めている。そして、最大誤差に応じて補正間隔(補正処理の実行間隔)を調整し、上述したように熱変位の特性に応じた補正処理を行っている。このように補正処理の実行間隔を適正化することができ、過剰な補正処理の実行を排除してタクトタイムを短縮することができる。
【0042】
さらに、最大誤差の大きさに応じて補正間隔の延長を2段階に設定しているため、最大誤差が小さくなる、つまり熱変位が小さくなるのに伴って補正間隔を多段階に広げている。このように熱変位の特性にきめ細かく対応して補正処理の実行間隔を調整しているため、タクトタイムをさらに効果的に短縮することができる。
【0043】
図7は
図1に示す部品実装装置で実行された補正処理および補正間隔の調整処理の一例を示す図である。また、
図8は第1実施形態における補正間隔の一例である。なお、
図7の縦方向が時間経過を示している。また、この具体例では、所定カウント値Nxは「3」に設定され、間隔ΔT1、ΔT2、ΔT3は
ΔT1<ΔT2<ΔT3
に設定されている。また、補正処理は基準マークM1〜M3に基づいて実行される。さらに、値D1、D2はそれぞれ「5μm」、「3μm」に設定されている。
【0044】
この具体例では、部品実装の開始から補正間隔として時間ΔT1経過すると、各基準マークM1〜M3の位置情報((Xcur1(1)、Ycur1(1))、(Xcur2(1)、Ycur2(1))、(Xcur3(1)、Ycur3(1)))が取得され、それらに基づいて補正演算が実行され、ヘッドユニット6の移動が補正される。その後、1回目と同様に、補正間隔ΔT1の経過後に補正処理が実行される。
【0045】
そして、3回目の補正処理が完了すると、それ以降においては補正処理が実行される毎に補正間隔の調整が実行される。この時点でのX軸方向での誤差ΔXは、
図8に示すように、「0μm」程度であるが、Y軸方向での誤差ΔYは「11μm」程度もあり、補正間隔は間隔ΔT1に維持されている。そして、3回目の補正処理から補正間隔として時間ΔT1経過すると、各基準マークM1〜M3の位置情報((Xcur1(4)、Ycur1(4))、(Xcur2(4)、Ycur2(4))、(Xcur3(4)、Ycur3(4)))が取得され、それらに基づいて補正演算が実行され、ヘッドユニット6の移動が補正される(4回目の補正処理)。
【0046】
また、4回目の補正処理が完了すると、再び補正間隔の調整が実行される。そして、先と同様にして補正間隔の調整処理が実行されるが、ここでは、誤差ΔX、ΔYはともに値D1と値D2との間に収まっているため、補正間隔は間隔ΔT1から間隔ΔT2に広げられる。したがって、次の6回目の補正処理は前回までよりも長い間隔ΔT2だけ待った上で実行される。なお、それ以降も補正処理が完了する毎に補正間隔の調整処理が実行され、
図8に示すように部品実装の開始からの時間経過に伴って補正間隔を広げることが多くなり、補正処理の回数が削減されてタクトタイムを大幅に短縮することができる。
【0047】
図9は本発明にかかる部品実装装置の第2実施形態で実行される補正処理の内容を示すフローチャートである。また、
図10は第2実施形態における間隔調整処理の内容を示すフローチャートである。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違するのは次の点である。つまり、第1実施形態では、最初のNx回については補正間隔の調整を行うことなく補正処理を行うものの、それ以降においては補正間隔の調整(=基準マークM1の移動平均の所得+基準マークM1の撮像による位置情報の取得+補正間隔の決定)を行った後で補正処理を実行している。これに対し、第2実施形態では、
図9に示すように、補正処理(ステップS5)後に補正処理の回数(カウント値N)が所定回数Nxを超えているか否かを判定しており(ステップS8)、Nが超えていない間はステップS3に戻って補正処理を行うように構成している。つまり、最初の(Nx+1)回については補正間隔の調整を行うことなく補正処理を行っている。
【0048】
また、上記ステップS8で「YES」と判定する、つまり(Nx+1)回目以降の補正処理が完了した時点で
図10に示す補正間隔の調整を行っている(ステップS9)。すなわち、主制御部85は第1実施形態と同様にして第1基準マークM1の移動平均を求める(ステップS91)のと同時あるいは前後して、最新の補正処理(N回目の補正処理)中に得られた第1基準マークM1の位置情報を記憶部86から読み出す(ステップS92)。そして、それ以降、主制御部85は、第1実施形態と同様に、誤差ΔX、ΔYを算出し(ステップS93)、第1基準マークM1の最大誤差Max(ΔX、ΔY)を求め(ステップS94)、その値に応じて補正間隔を調整する(ステップS94〜S98)。
【0049】
以上のように、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、部品の実装を行っている間に、補正処理(ステップS75)を断続的に行うとともに、第1基準マークM1の最大誤差に応じて補正間隔(補正処理の実行間隔)を調整しているため、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。さらに、補正間隔の調整を行う直前に実行された補正処理で取得された第1基準マークM1の位置情報をそのまま用いて第1基準マークM1の最大誤差を求めているため、第1基準マークM1の撮像動作(ステップS72)が不要となり、タクトタイムをさらに短縮することができる。
【0050】
上述のように、上記した実施形態では、X軸サーボモータ65およびY軸サーボモータ67が本発明の「ヘッド駆動機構」の一例に相当している。また、部品検査カメラ91が本発明の「撮像部」の一例に相当している。また、主制御部85が本発明の「補正処理部」、「間隔調整部」、「コンピュータ」の一例に相当し、プログラム861が本発明の「部品実装装置の制御用プログラム」に相当している。また、第1基準マークM1が本発明の「基準マーク」の一例に相当している。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、部品実装作業を繰り返している間に補正間隔を調整しているが、部品実行作業を停止した際には次に説明するように適宜、補正間隔を広げるように構成するのが望ましい。というのも、部品実装作業を停止すると、部品実装装置1の内部温度は時間経過に伴って低下するからである。停止時点で部品実装装置1の内部が例えば温間状態(熱変位が飽和あるいはほぼ飽和している状態)になっていたとしても、停止時間が長くなると、冷間状態(熱変位が不飽和となっている状態)に移行する。そこで、主制御部85が部品の実装を停止している停止時間を計測し、一定値を超えると、冷間状態に移行したと判断し、補正間隔を狭める、例えば初期間隔ΔT1に戻すように構成してもよい。これにより、部品の実装を再開した直後の補正処理を冷間状態に対応した間隔で実行することができ、再開直後であっても部品実装作業を高精度に行うことができる。この実施形態では、主制御部85が本発明の「停止時間計測部」として機能する。
【0052】
また、上記実施形態では、第1基準マークM1に基づいて最大誤差(本発明の「変動量」に相当)を求めているが、その他の基準マークM2〜M6に基づいて最大誤差を求めてもよい。また、複数の基準マークの位置情報を用いて最大誤差を求めるようにしてもよく、部品実装装置1内の各部での熱変位を詳細にモニターすることができ、補正間隔の調整精度を高めることができる。ただし、その一方で各基準マークを部品検査カメラ91によって撮像する必要があり、タクトタイムの短縮化には不利となる。そこで、複数の基準マークのうち最初に部品検査カメラ91により撮像された最先基準マークに関する誤差(変動量)が所定値よりも小さいときには、残りの基準マークの部品検査カメラ91による撮像を省略してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、部品検査カメラ91を基準マークM1〜M6の撮像用して兼用しているが、基準マークM1〜M6を撮像する専用の撮像部を設けてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、最大誤差の大きさに応じた補正間隔の広がりを2段階としているが、1段階に設定したり、逆に3段階以上に設定してもよい。