特許第6678638号(P6678638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 恵和株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6678638-バックライトユニット及び液晶表示装置 図000003
  • 特許6678638-バックライトユニット及び液晶表示装置 図000004
  • 特許6678638-バックライトユニット及び液晶表示装置 図000005
  • 特許6678638-バックライトユニット及び液晶表示装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6678638
(24)【登録日】2020年3月19日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】バックライトユニット及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13357 20060101AFI20200330BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20200330BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20200330BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20200330BHJP
【FI】
   G02F1/13357
   F21S2/00 431
   G02B5/02 C
   F21Y115:10
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-254582(P2017-254582)
(22)【出願日】2017年12月28日
(65)【公開番号】特開2019-121489(P2019-121489A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2018年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165088
【氏名又は名称】恵和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波川 啓土
(72)【発明者】
【氏名】松野 有希
【審査官】 岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/181812(WO,A1)
【文献】 特開2014−130234(JP,A)
【文献】 特開2016−028272(JP,A)
【文献】 特開2003−107219(JP,A)
【文献】 特開2010−026231(JP,A)
【文献】 特表2007−529780(JP,A)
【文献】 実開平06−037827(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0075069(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13357
F21S 2/00
F21V 8/00
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材と、該光学部材の表面に設けられた光拡散シートとを備えたバックライトユニットであって、
前記光学部材は、ガラス、アルミ、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、及びポリプロピレン樹脂からなる群より選ばれる1種からなり、
前記光拡散シートは、アクリルウレタン系樹脂からなるスティキング防止層を備え、線膨張係数が8.5×10−6/Kである光拡散シートであり、
JIS K 7125に準拠して、温度23℃、湿度50%の条件下で測定された前記光学部材と前記光拡散シートとの間の静摩擦係数をY
JIS K 7197に準拠して測定された、前記光学部材の線膨張係数と前記光拡散シートの線膨張係数との差をX(単位は×10−6/K)とした場合に、下記式(1)の関係が成立することを特徴とするバックライトユニット。
[数1]
≦1.00×10−4−3.43×10−2X+2.35 (1)
【請求項2】
光学部材と、該光学部材の表面に設けられた光拡散シートとを備えたバックライトユニットであって、
前記光学部材は、ガラス、アルミ、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、及びポリプロピレン樹脂からなる群より選ばれる1種からなり、
前記光拡散シートは、アクリルウレタン系樹脂からなるスティキング防止層を備え、線膨張係数が8.5×10−6/Kである光拡散シートであり、
JIS K 7125に準拠して、温度65℃、湿度95%の条件下で測定された前記光学部材と前記光拡散シートとの間の静摩擦係数をY
JIS K 7197に準拠して測定された、前記光学部材の線膨張係数と前記光拡散シートの線膨張係数との差をX(単位は×10−6/K)とした場合に、下記式(2)の関係が成立することを特徴とするバックライトユニット。
[数2]
≦9.00×10−5−3.51×10−2X+3.12 (2)
【請求項3】
前記スティキング防止層の硬度が0.36〜0.67mNであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバックライトユニット。
【請求項4】
前記スティキング防止層には複数の凸部が形成され、該凸部の平均半径が10〜30μmであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項5】
前記光学部材が導光シートであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項6】
液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルの表面に設けられた偏光板と、
前記偏光板と対向して配置された請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のバックライトユニットと
を備えることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置にバックライトユニット及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットディスプレイが、省スペ−スであり高精細であることから、表示装置として広範に使用されている。このうち、液晶ディスプレイは、より省電力であり高精細であるため注目され、開発が進められている。
【0003】
この液晶表示装置は、例えば、互いに対向するように配置された薄膜トランジスタ(thin film transistor、以下、「TFT」と称する)基板及びカラーフィルタ(color filter、以下、「CF」と称する)基板と、TFT基板及びCF基板の間に封入された液晶層とにより構成された液晶表示パネル、並びに液晶表示パネルの背面側に設けられたバックライトを備えた、非発光型の表示装置である。そして、CF基板では、画素を構成する各副画素に、例えば、赤色、緑色又は青色に着色された着色層が設けられている。
【0004】
また、バックライトとしては、液晶層の下面側にエッジライト型(サイドライト型)や直下型等のバックライトユニットが装備されている。このエッジライト型のバックライトユニットとしては、例えば、光源と、この光源に端部が沿うように配置される方形板状の導光シートと、この導光シートの表面側に設けられ、主に光拡散機能を有する光拡散シートと、光拡散シートの表面側に設けられ、法線方向側への屈折機能を有するプリズムシートとを備えたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−95380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記従来のバックライトユニットにおいては、光拡散シートと導光シートの各々の伸縮量が異なるため、伸縮量の大きい導光シートの膨張収縮に起因して、光拡散シートと導光シートとの間の摩擦により、伸縮量の小さい光拡散シートに撓み(シワ)が発生するという問題があった。
【0007】
より具体的には、光拡散シートの基材層の主成分としてポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂等が使用されるが、導光シートの主成分としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂に比し線膨張係数が高いポリカーボネート(PC)樹脂やアクリル樹脂等が使用されるため、加熱及び冷却時に光拡散シートと導光シートとの間で伸縮量に差が生じ、伸縮量の大きい導光シートの膨張収縮に起因して光拡散シートに撓み(シワ)が発生するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、光拡散シートにおける撓みの発生を抑制することができるバックライトユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のバックライトユニットは、光学部材と、光学部材の表面に設けられた光拡散シートとを備え、JIS K 7125に準拠して、温度23℃、湿度50%の条件下で測定された光学部材と光拡散シートとの間の静摩擦係数をY、JIS K 7197に準拠して測定された、光学部材の線膨張係数と光拡散シートの線膨張係数との差をXとした場合に、下記式(1)の関係が成立することを特徴とする。
[数1]
≦1.00×10−4−3.43×10−2X+2.35 (1)
【0010】
また、本発明の他のバックライトユニットは、光学部材と、光学部材の表面に設けられた光拡散シートとを備え、JIS K 7125に準拠して、温度65℃、湿度95%の条件下で測定された光学部材と光拡散シートとの間の静摩擦係数をY、JIS K 7197に準拠して測定された、光学部材の線膨張係数と光拡散シートの線膨張係数との差をXとした場合に、下記式(2)の関係が成立することを特徴とする。
[数2]
≦0.95×10−5−3.51×10−2X+3.12 (2)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光拡散シートに対向して配置される光学部材、例えば、導光シートの膨張収縮に起因する光拡散シートの撓みの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る液晶表示装置の断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る液晶表示装置におけるバックライトユニットを説明するための断面図である。
図3】常温条件(温度23℃、湿度50%)下における、静摩擦係数と線膨張係数の差との関係、及び撓みの発生を説明するための図である。
図4】高温条件(温度65℃、湿度95%)下における、静摩擦係数と線膨張係数の差との関係、及び撓みの発生を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置の断面図であり、図2は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置におけるバックライトユニットを説明するための断面図である。
【0015】
図1に示すように、液晶表示装置1は、複数の画素がマトリクス状に配列された液晶表示パネル2と、液晶表示パネル2の表面側(図の上面側であって、液晶表示装置1における視認者側)に貼り付けられた第1偏光板3(以下、単に「偏光板3」と言う場合がある。)と、液晶表示パネル2の裏面側(背面側、図の下面側であって、液晶表示装置1における視認者側と反対側)に貼り付けられた第2偏光板4(以下、単に「偏光板4」と言う場合がある。)と、液晶表示パネル2の背面側に設けられたバックライトユニット5とを備えている。
【0016】
液晶表示パネル2は、図1に示すように、第1基板であるTFT基板6と、TFT基板6に対向して配置された第2基板であるCF基板7と、TFT基板6及びCF基板7の間に設けられた液晶層8と、TFT基板6及びCF基板7を互いに接着するとともに、TFT基板6及びCF基板7の間に液晶層8を封入するために枠状に設けられたシール材(不図示)とを備えている。
【0017】
なお、TFT基板6及びCF基板7は、それぞれ矩形板状に形成されている。また、液晶表示装置1は、液晶層8の厚み(即ち、セルギャップ)を規制するための複数のフォトスペーサ(不図示)を備えている。
【0018】
TFT基板6は、例えば、ガラス基板やプラスチック基板などの絶縁基板と、絶縁基板上に互いに平行に延びるように設けられた複数のゲート線と、各ゲート線と直交する方向に互いに平行に延びるように設けられた複数のソース線と、各ゲート線及び各ソース線の交差する部分毎、即ち、各副画素Pr、Pg及びPb毎にそれぞれ設けられた複数のTFTと、各TFTを覆うように設けられた保護膜と、保護膜上にマトリクス状に設けられ、各TFTに接続された複数の画素電極と、各画素電極を覆うように設けられた配向膜(いずれも不図示)とを備えている。
【0019】
CF基板7は、ガラス基板やプラスチック基板などの絶縁基板と、絶縁基板上に設けられた共通電極と、共通電極を覆うように設けられた配向膜(いずれも不図示)とを備えている。
【0020】
液晶層8は、電気光学特性を有するネマチックの液晶材料などにより構成されている。
【0021】
<バックライトユニット>
図2に示すように、バックライトユニット5は、エッジライト型バックライトユニットであり、端面から入射する光線を表面側に導く導光シート21と、導光シート21の端面に向けて光線を照射する光源22と、導光シート21の表面側に重畳される光拡散シート23と、光拡散シート23の表面側に配設されるプリズムシート24とを備える。また、バックライトユニット5は、導光シート21の裏面側に配設される反射シート26を更に備える。
【0022】
光拡散シート23は、裏面側から入射される光線を拡散させつつ法線方向側へ集光させる(集光拡散させる)機能を有しており、プリズムシート24は、裏面側から入射される光線を法線方向側に屈折させる機能を有している。また、反射シート26は、導光シート21の裏面側から出射される光線を表面側に反射させ、再度、導光シート21に入射させる機能を有している。
【0023】
<プリズムシート>
プリズムシート24は、偏光板4に対向して配置されている。このプリズムシート24は、光線を透過させる必要があるため、透明、特に無色透明の合成樹脂を主成分として形成されている。プリズムシート24は、基材層35と、基材層35の表面に積層される複数の凸条プリズム部36からなる突起列とを有する。凸条プリズム部36は、基材層35の表面にストライプ状に積層されている。凸条プリズム部36は、裏面が基材層35の表面に接する三角柱状体である。
【0024】
プリズムシート24の厚さ(基材層35の裏面から凸条プリズム部36の頂点までの高さ)の下限としては、35μmが好ましく、50μmがより好ましい。一方、プリズムシート24の厚さの上限としては、200μmが好ましく、180μmがより好ましい。
【0025】
また、プリズムシート24における凸条プリズム部36のピッチP(図2参照)の下限としては、12μmが好ましく、20μmがより好ましい。一方、プリズムシート24における凸条プリズム部36のピッチPの上限としては、100μmが好ましく、60μmがより好ましい。
【0026】
また、凸条プリズム部36の頂角としては、85°以上95°以下が好ましい。さらに、凸条プリズム部6の屈折率の下限としては、1.5が好ましく、1.55がより好ましい。一方、凸条プリズム部36の屈折率の上限としては、1.7が好ましい。
【0027】
なお、プリズムシート24としては、2枚のプリズムシートにより構成したものを使用してもよく、2枚のプリズムシートを貼り合わせて1枚にしたものを使用してもよい。
【0028】
<光拡散シート>
光拡散シート23は、導光シート21の表面に設けられており、基材層37と、基材層37の表面側に配設される光拡散層38と、基材層37の裏面側に配設されるスティッキング防止層39とを有する。
【0029】
光拡散シート23の基材層37は、光線を透過させる必要があるため、透明、特に無色透明の合成樹脂を主成分として形成されている。基材層37の主成分としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、耐候性塩化ビニル、ポリイミド等が挙げられる。
【0030】
光拡散シート23の光拡散層38は、光拡散材とそのバインダーとを有する。光拡散材は、光線を拡散させる性質を有する粒子であり、無機フィラーと有機フィラーに大別される。無機フィラーとしては、例えばシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化バリウム、マグネシウムシリケート、又はこれらの混合物が挙げられる。有機フィラーの具体的な材料としては、例えば、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
【0031】
光拡散材の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、立方状、針状、棒状、紡錘形状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられ、中でも光拡散性に優れる球状のビーズが好ましい。
【0032】
スティッキング防止層39は、樹脂マトリックス中に樹脂ビーズ40が分散されて形成されている。この樹脂ビーズ40は、基材層37の裏面側に散点的に配設されている。スティッキング防止層39は、この樹脂ビーズ40が散点的に配設されることによって、樹脂ビーズ40に起因して形成される複数の凸部と、樹脂ビーズ40が存在しない平坦部とを有している。スティッキング防止層39は、裏面側に配設される導光シート21と上記複数の凸部で散点的に当接し、裏面全面で当接しないことによってスティッキングを防止し、液晶表示装置1の輝度ムラを抑制する。
【0033】
また、スティッキング防止層39を形成する樹脂は、特に限定されるものではなく、アクリルウレタン系樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
【0034】
このうち、光拡散シート23と導光シート21との摩擦に基づく導光シート21の表面の損傷に起因する輝点不良の発生を防止するとの観点から、アクリルウレタン系樹脂を使用して、スティッキング防止層39に柔軟性を付与することが好ましい。ここで、アクリルウレタン系樹脂とは、アクリル骨格とウレタン骨格を有するアクリル系樹脂をいい、例えば、イソシアネート樹脂とアクリルポリオール系樹脂とにより架橋させた樹脂を使用することができる。
【0035】
<導光シート>
導光シート21は、光源22から出射される光線を内部に伝搬させつつ、表面から出射するシート状の光学部材である。導光シート21は、断面略楔形状に形成されてもよく、また略平板状に形成されてもよい。
【0036】
導光シート21は、透光性を有する必要があるため透明、特に無色透明の樹脂を主成分として形成される。導光シート21の主成分としては、特に限定されるものではないが、透明性、強度等に優れるポリカーボネート樹脂や、透明性、耐擦傷性等に優れるアクリル樹脂等の合成樹脂が挙げられるが、導光シート21の主成分としては、ポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂は、透明性に優れると共に屈折率が高いため、空気層(導光シート21の表面側に配設される光拡散シート23との隙間に形成される層及び導光シート21の裏面側に配設される反射シート26との隙間に形成される層)との界面で全反射が起こりやすく、光線を効率的に伝搬することができる。また、ポリカーボネート樹脂は、耐熱性を有するため、光源22の発熱による劣化等が生じ難い。
【0037】
<光源>
光源22は、照射面が導光シート21の端面に対向(又は当接)するよう配設されている。光源22としては、種々のものを用いることが可能であり、例えば、発光ダイオード(LED)を用いることが可能である。具体的には、この光源22として、複数の発光ダイオードが導光シート21の端面に沿って配設されたものを用いることができる。
【0038】
<反射シート>
反射シート26としては、ポリエステル等の基材樹脂にフィラーを分散含有させた白色シートや、ポリエステル等から形成されるフィルムの表面に、アルミニウム、銀等の金属を蒸着させることで正反射性が高められた鏡面シート等が挙げられる。
【0039】
ここで、従来のバックライトユニットにおいては、上述のごとく、伸縮量の大きい導光シートの膨張収縮に起因して、伸縮量の小さい光拡散シートに撓みが発生するという問題があった。
【0040】
そこで、本発明者等は、この点に着目して、光拡散シート23と導光シート21との間の摩擦を低減させて、伸縮量の大きい導光シート21の膨張収縮による影響を抑制することにより、光拡散シート23における撓みの発生を抑制するための条件を見出した。
【0041】
より具体的には、本発明のバックライトユニット5においては、導光シート21と光拡散シート23との間の静摩擦係数をY、導光シート21の線膨張係数αと光拡散シート23の線膨張係数αとの差(即ち、α−α)をXとした場合に、下記式(3)の関係が成立する点に特徴がある。
[数3]
≦1.00×10−4−3.43×10−2X+2.35 (3)
【0042】
なお、式(3)の「静摩擦係数Y」とは、温度が23℃、湿度が50%の条件下においてJIS K 7125に準拠して測定されたものを言う。また、「線膨張係数」とは、JIS K 7197に準拠して測定されたものを言う。
【0043】
そして、導光シート21と光拡散シート23との間の静摩擦係数Yを小さくするとともに、この範囲に設定することにより、導光シート21の伸縮量と光拡散シート23の伸縮量とが大きく異なる場合(即ち、導光シート21の線膨張係数αと光拡散シート23の線膨張係数αとの差が大きい場合)であっても、光拡散シート23における撓みの発生を抑制することが可能になる。
【0044】
また、液晶表示装置1を、長時間、使用する際には、バックライトユニット5は、長時間、高温・高湿条件下に曝されることになるため、本発明者等は、この点にも着目して、高温・高湿条件下(温度:65℃、湿度:95%)において、光拡散シート23における撓みの発生を抑制するための条件も見出した。
【0045】
より具体的には、本発明のバックライトユニット5においては、導光シート21と光拡散シート23との間の静摩擦係数をY、導光シート21の線膨張係数αと光拡散シート23の線膨張係数αとの差(即ち、α−α)をXとした場合に、下記式(4)の関係が成立する点に特徴がある。
[数4]
≦0.95×10−5−3.51×10−2X+3.12 (4)
【0046】
なお、式(4)の「静摩擦係数Y」とは、温度が65℃、湿度が95%の条件下においてJIS K 7125に準拠して測定されたものを言う。
【0047】
そして、導光シート21と光拡散シート23との間の静摩擦係数Yを小さくするとともに、この範囲に設定することにより、高温・高湿条件下(温度:65℃、湿度:95%)において、導光シート21の伸縮量と光拡散シート23の伸縮量とが大きく異なる場合であっても、光拡散シート23における撓みの発生を抑制することが可能になる。
【0048】
なお、導光シート21と接触するスティキング防止層39を形成する樹脂の硬度を高くすることにより、上記静摩擦係数Y,Yを小さくすることができる。
【0049】
より具体的には、光拡散シート23の凸部と導光シート21との接触部分においては、光拡散シート23、プリズムシート24、及び液晶表示装置1の重量に起因する負荷がかかるため、スティキング防止層39を形成する樹脂の硬度が低いと光拡散シート23の凸部が変形して、光拡散シート23の凸部と導光シート21との接触面積が増大し、結果として、光拡散シート23と導光シート21との摩擦が増大してしまうことになる。そこで、本実施形態においては、導光シート21と接触するスティキング防止層39を形成する樹脂の硬度を高くすることにより、光拡散シート23の凸部の変形を抑制して、静摩擦係数Y,Yを小さくする構成としている。
【0050】
また、ここで言う「硬度」とは、ISO14577−1(計装化押込み硬さ試験)により測定された硬さのことを言い、微小硬度計(SIMADZU社製、商品名:DUH-W201)を用いて測定することができる。
【0051】
更に、スティキング防止層39において、上述の樹脂ビーズ40に起因して形成される複数の凸部の平均半径を小さくすることにより、スティキング防止層39と導光シート21との接触面積が減少するため、上記静摩擦係数Y,Yを小さくすることができる。
【0052】
なお、ここで言う「凸部の平均半径」とは、10個の凸部を任意に抽出し、各凸部の径を平均した値を言う。
【0053】
また、実施形態においては、光拡散シート23に対向して配置される光学部材として、ポリカーボネートやアクリル樹脂等により形成された導光シート21を例に挙げて説明したが、上述の式(3),(4)の関係が成立するものであれば、光拡散シート23における撓みの発生を抑制することができるため、どのような光学部材であってもよい。
【0054】
例えば、ガラスシート、アルミシート等の金属シート、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂等に形成された樹脂シート等が挙げられる。
【0055】
また、本実施形態においては、樹脂マトリックス中に樹脂ビーズ40が分散されたスティッキング防止層39を例に挙げて説明したが、樹脂ビーズ40を使用せず、スティッキング防止層39に形状を賦形する、あるいは、基材層37に形状を賦形する構成としてもよい。また、この場合の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、立方状、針状、棒状、紡錘形状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられる。そして、このような構成においても、上述の式(3),(4)の関係が成立することにより、光拡散シート23における撓みの発生を抑制することができる。
【実施例】
【0056】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0057】
(実施例1)
<線膨張係数の測定>
アクリルウレタン系樹脂(表面硬度:0.67mN)からなり、表面に凸部を有するスティキング防止層を備えた光拡散シートと、ガラスからなる光学シート(光学部材)とを準備し、TMA(Thermo mechanical analyzer)法(JIS K 7197)により、光拡散シートと光学シートの線膨張係数を測定した。
【0058】
より具体的には、シートの機械軸(長手)方向(以下、「MD方向」という。)と、これと直交する方向(以下、「TD方向」という。)において、それぞれ10mm×5mmの長さを有する試料を用意し、線膨張係数測定装置(Hitachi High-Tech Science Corporation製、商品名:TMA7100)を使用して、長さの変化を測定するプローブ(検出棒)に対する荷重を4[kPa]に調整して、大気中で室温から70℃まで5℃/分で昇温し、光学シートと光拡散シートの各々について、30℃から70℃までの線膨張係数α,αを算出した。
【0059】
なお、線膨張係数α,αは下記式(5)に基づいて算出した。
[数5]
線膨張係数α(またはα)=(1/L)×(L70―L30)/(70―30) (5)
【0060】
ここで、Lは試料(シート)の長さ[mm]、L30は30℃における長さの変化量[μm]、L70は70℃における長さの変化量[μm]を示す。
【0061】
そして、この線膨張係数αとαとの差X(即ち、α−α)を算出した。以上の結果を表1に示す。
【0062】
<静摩擦係数の測定>
次に、光拡散シートのスティキング防止層と光学シートを接触させ、温度23℃、湿度50%の条件下において、摩擦係数試験方法(JIS K 7125)により、光学シートと光拡散シートとの間の静摩擦係数Yを測定した。
【0063】
より具体的には、光拡散シート(200mm×150mm)上に光学シート(63mm×63mm)を載置し、更に、光学シート上に200gの重り(63mm×63mm)を載置し、引張り試験機(A&D Inc.製、商品名:RGT−1210)を用いて、光学シートを100mm/分の速度で引っ張り、その時の静摩擦係数Yを測定した。
【0064】
また、同様にして、温度60℃、湿度95%の条件下において、摩擦係数試験方法(JIS K 7125)により、光学シートと光拡散シートとの間の静摩擦係数Yを測定した。以上の結果を表1に示す。
【0065】
<撓みの評価>
次に、光拡散シートにおける撓みの有無について評価した。より具体的には、5インチの光学シート上に同サイズの光拡散シートを載置して重ね合わせ、更に、光拡散シート上に同サイズのプリズムシート(75μmの厚みを有するプリズムシートと、このプリズムシート上に、凸条プリズム部が直交するように重ね合わせた100μmの厚みを有するプリズムシートにより構成されたもの)を載置し、この状態で、温度65℃、湿度95%の条件下に72時間、静置した。
【0066】
その後、常温(温度23℃、湿度50%)に戻して、この状態で取り出し、2時間後に光拡散シートにおける撓みの有無を確認した。なお、光拡散シート単体を平滑なガラス板の上に載置し、蛍光灯下で真横から目視で観察することにより、撓みの有無を確認した。以上の結果を表1に示す。
【0067】
(実施例2〜13、比較例1〜11)
スティキング防止層を形成する樹脂の硬度、凸部の平均半径、及び光学シートの材質の少なくとも1つを、表1に示す内容に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、線膨張係数の測定、静摩擦係数の測定、及び撓みの評価を行った。以上の結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
<静摩擦係数と線膨張係数との相関関係>
次に、表1に示す、光学シートと光拡散シートとの間の静摩擦係数Y(温度23℃、湿度50%)と、光学シートの線膨張係数αと光拡散シートの線膨張係数αとの差Xとの関係をプロットし、静摩擦係数をYと線膨張係数の差Xとの関係、及び撓みの発生の有無を検討した。以上の結果を図3に示す。
【0070】
また、同様に、表1に示す、光学シートと光拡散シートとの間の静摩擦係数をY(温度65℃、湿度95%)と、光学シートの線膨張係数αと光拡散シートの線膨張係数αとの差Xとの関係をプロットし、静摩擦係数をYと線膨張係数の差Xとの関係、及び撓みの発生の有無を検討した。以上の結果を図4に示す。
【0071】
表1、及び図3に示すように、常温条件(温度23℃、湿度50%)下において、線膨張係数の差Xに対して静摩擦係数Yが上記式(3)の関係を満たす場合(即ち、実施例1〜13の場合)に、光拡散シートの撓みが抑制されていることが分かる。
【0072】
また、表1、図4に示すように、高温条件(温度65℃、湿度95%)下において、線膨張係数の差Xに対して静摩擦係数Yが上記式(4)の関係を満たす場合(即ち、実施例1〜13の場合)に、光拡散シートの撓みが抑制されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本発明は、液晶表示装置に使用されるバックライトユニットに、特に有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 液晶表示装置
2 液晶表示パネル
3 第1偏光板
4 第2偏光板
5 バックライトユニット
6 TFT基板
7 CF基板
8 液晶層
21 導光シート(光学部材)
22 光源
23 光拡散シート
24 プリズムシート
26 反射シート
35 基材層
36 凸条プリズム部
37 基材層
38 光拡散層
39 スティッキング防止層
40 樹脂ビーズ
図1
図2
図3
図4