(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る輸液状態検出システムについて好適な実施形態をあげ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
本発明の一実施形態に係る輸液状態検出システム10は、
図1に示すように、医療バッグ14から患者Cの体内につながる輸液ライン12に適用される。この輸液状態検出システム10は、輸液ライン12内を流動する薬液L(液体)の圧力を検出して輸液状態を判別し、輸液状態が正常であれば輸液を継続し、異常であれば医療従事者等に警告を行う構成となっている。
【0025】
輸液状態検出システム10が適用される輸液ライン12は、患者Cへの薬液Lの流動経路を構成するものであり、その構成部品は限定されるものではない。
図1中では、代表的に、医療バッグ14、チューブ16、留置針18(カニューレ)及び送液ポンプ20(ポンプ部)を備えたものを図示している。輸液ライン12は、この他にも点滴筒、クレンメ(クランプ)、フィルタ、又は他のチューブ16を接続するためのコネクタ等を含んでもよい。また、輸液状態検出システム10及び輸液ライン12は、輸液セット(製品)としてまとめて提供されてもよく、医療従事者が部品を任意に組み合わせて構築してもよい。
【0026】
医療バッグ14は、可撓性,耐薬品性を有する熱可塑性樹脂材料によりブロー成形等により袋状に形成され、内部の貯留空間14aに所定量の薬液Lを貯留する。医療バッグ14の下端には、図示しないびん針等を介してチューブ16の一端が接続される。薬液Lは、貯留空間14aからチューブ16に吐出されることで、チューブ16内を流動する。
【0027】
輸液に適用される薬液Lは、特に限定されるものではなく、患者Cの病気や治療内容に応じて適宜のものを選択してよい。例えば、薬液Lとしては、抗がん剤、麻酔剤、化学療法剤等があげられる。或いは、輸液ライン12は薬液L以外にも血液や栄養剤等の液体を送液する構成でもよい。
【0028】
チューブ16は、可撓性,耐薬品性を有する熱可塑性樹脂材料により射出成形により形成され、内部に薬液Lの導通路16aを有している。チューブ16は、輸液ライン12の構築時に、医療バッグ14から患者Cの体表に余裕をもってつながる充分な長さのものが適宜選択される。輸液ライン12は、複数のチューブ16が接続されることで構成されてもよい。
【0029】
留置針18は、チューブ16の医療バッグ14と反対側の端部に接続される。この留置針18は、例えば
図2に示すように、チューブ16とのコネクタとして機能するハブ22と、このハブ22に接続される細管24とを含む。ハブ22は、チューブ16よりも硬質な材料により構成され、導通路16aに連通する中空部22aを内部に有する。
【0030】
細管24は、可撓性を有する樹脂材料により構成され、中空部22aに連通する吐出路24aを有する。細管24は、図示しない穿刺針と共に患者Cの体表から血管V(生体管腔である静脈)内に挿入されて、穿刺針の抜去により血管V内に留置され、留置後に、吐出路24aを介してその先端開口部から薬液Lを血管V内に流入させる。すなわち、輸液ライン12は、医療バッグ14から患者Cに至る薬液Lの流動用空間として、貯留空間14a、導通路16a、中空部22a、吐出路24aを有する。本明細書では、これらの流動用空間をまとめて輸液ライン12内という。
【0031】
図1に戻り、送液ポンプ20は、チューブ16の途中位置に設けられ、薬液Lを定量的に血管V内に送液する機能を有する。送液ポンプ20は、チューブ16の一部を収容して薬液Lの送液を行う送液部26と、薬液Lの送液に必要な表示情報を表示する表示部28と、医療従事者が送液ポンプ20を操作するための操作部30とを有する。
【0032】
送液部26は、本体部32とカバー34を含み、カバー34の開放状態でチューブ16を本体部32にセット可能になっている。本体部32には、チューブ16を配置する図示しない溝が設けられ、この溝には配置したチューブ16をしごく、しごき機構36が設けられている。しごき機構36は、例えば、複数の押圧部材(蠕動式の場合はフィンガ)や不図示の複数のローラ(ローラ式の場合)によって構成され、チューブ16を上流側から下流側に向かって順次押圧していくことで、導通路16a内に存在する薬液Lを下流側に流動させる。送液部26は、例えば、0mL〜999mLの範囲で導通路16a内の薬液Lを送液する。なお、0mLは送液停止状態である。
【0033】
表示部28は、ユーザ(医師や看護師等の医療従事者)により設定された薬液Lの送液量を表示する、又は実際に送液されている薬液Lの送液量を表示するモニタである。表示部28は、例えば、液晶ディスプレイによって構成される。この表示部28は、輸液状態検出システム10としても機能し、例えば、輸液中に検出した輸液ライン12内の圧力を表示する。また表示部28は、輸液状態に異常が生じた場合に警告を表示する構成であってもよい。
【0034】
操作部30は、複数のボタンによって構成され、送液ポンプ20の電源のオン/オフ切換、送液ポンプ20の駆動の開始/停止切換、送液量等の数値切換や設定等を実施可能としている。
【0035】
また、送液ポンプ20の内部には、
図3に示すように、チューブ16の導通路16a内の圧力を検出するポンプ側圧力検出部38が設けられている。ポンプ側圧力検出部38は、送液ポンプ20内において導通路16a内の圧力を検出する。本実施形態に係る輸液状態検出システム10は、このポンプ側圧力検出部38と、後述する圧力センサ40の2つの圧力検出部により圧力を検出することで、詳細な判別を行う構成となっている。なお、輸液状態検出システム10は、ポンプ側圧力検出部38と、圧力センサ40のいずれか一方のみで輸液ライン12内の圧力を検出してもよいことは勿論である。
【0036】
図1に戻り、本実施形態に係る輸液状態検出システム10は、輸液ライン12上に圧力センサ40を設けると共に、上述した送液ポンプ20を利用して構成される。
【0037】
圧力センサ40は、薬液Lの吐出箇所近傍における輸液ライン12内の圧力を検出するため、留置針18に近いチューブ16上に設けられる。この圧力センサ40は、円盤状に形成され、その一方面が患者Cの体表に固着される。例えば
図2に示すように、圧力センサ40は、テープ42を介して体表に貼り付けられるケース44と、ケース44の測定室44aの開口面を塞ぎ測定室44a内の圧力を測定する測定部46とを有する。
【0038】
ケース44は、測定室44aと、測定室44aに連通し上流側のチューブ16が接続される流入ポート44bと、測定室44aに連通し下流側のチューブ16が接続される流出ポート44cとを有する。測定室44aは、輸液の正常状態で、流入ポート44bから流入された薬液Lを一時的に(低い液圧で)貯留し、流出ポート44cから流出させる。なお、測定室44a、流入ポート44b、及び流出ポート44cは一本の導通路として構成されていてもよい。
【0039】
測定部46は、測定室44aの対向面にダイヤフラム48を備え、測定室44aに流入した薬液Lの圧力を検出する。すなわち、測定部46は、輸液の正常状態で、ダイヤフラム48が殆ど変形しない場合に低い圧力を検出し、輸液に異常が生じてダイヤフラム48が押し広げられた場合に高い圧力を検出する。また、測定部46は、センサ側通信部50及び電池52を有し(
図3参照)、センサ側通信部50を介して、圧力の検出信号を送液ポンプ20に無線送信する。
【0040】
図3に示すように、輸液状態検出システム10は、送液ポンプ20内に設けた制御部54により、システム全体を制御している。この制御部54は、基本的には、送液部26を制御して薬液Lの送液を行うものである。制御部54は、図示しない演算処理部、記憶部及び入出力部を含む周知のコンピュータ(マイコン等)により構成される。制御部54は、操作部30を介してユーザが設定した送液量に基づき、しごき機構36を駆動してチューブ16内の薬液Lを送液する。
【0041】
そして、制御部54は、輸液状態検出システム10のプログラムを実行することで、輸液状態の正常又は異常を判別する判別処理部となる。より具体的には、制御部54の内部には、プログラムの実行により圧力取得部56、輸液状態判別部58及び閾値設定部60が設けられる。また、送液ポンプ20の内部には、輸液状態検出システム10の機能部として警報部62が予め設けられている。
【0042】
圧力取得部56は、圧力センサ40の検出信号を周期的に(又は圧力センサ40に送信指示を送ることで)受信し、この検出信号を処理して圧力値を得る機能部である。圧力取得部56は、送液ポンプ20内に設けられたポンプ側通信部64により、センサ側通信部50から検出信号を無線で受信する。この構成により、輸液状態検出システム10は、電気配線が少なくなり、輸液ライン12構築時の作業負担が軽減されると共に、輸液中も患者Cが動作し易くなる。勿論、圧力センサ40と制御部54は有線で通信してもよい。
【0043】
輸液状態判別部58は、圧力取得部56が取得した圧力値に基づき、輸液状態の正常又は異常を判別する。以下、輸液状態判別部58による輸液状態の判別の原理について説明する。
【0044】
輸液ライン12は、通常状態において、血管V内に挿入された留置針18の細管24から薬液Lを吐出して血管V内を流動させる(
図2も参照)。しかしながら、輸液ライン12は、既述したように、患者Cの姿勢の変化や静脈圧変動等により血圧が変化することで、輸液ライン12内の圧力が上昇することがある(以下、正常時上昇現象という)。
【0045】
また、輸液ライン12は、輸液中の何らかの原因(例えば、患者Cが身体動作する、チューブ16や留置針18に作用力が働く等)により、輸液ライン12に物理的な不具合が生じて、患者Cの血管V内に薬液Lが正常に供給されなくなることがある。例えば、
図4Aに示すように、留置針18の先端が血管Vから抜けて皮下組織に位置した状態で薬液Lを供給してしまう可能性がある(以下、血管外漏れ現象という)。この場合、薬液Lは多少流れるものの、正常状態に比べて薬液Lが流れ難くなる。このような状態においても、送液ポンプ20からは一定の流量で送液が行われ、輸液ライン12内に薬液Lが一部溜まる。このため、輸液ライン12内の圧力は、送液ポンプ20から送られてくる流量の薬液Lを、流れ難くなった輸液ライン12内に流すのに必要な圧力に達するまで上昇する。その結果、圧力センサ40の測定室44a内の圧力が上昇する。
【0046】
また例えば、
図4Bに示すように、留置針18やチューブ16の途中箇所が折れて、輸液ライン12内が閉塞する可能性もある(以下、閉塞現象という)。この場合、導通路16aや吐出路24aがほぼ閉塞して、薬液Lが流れなくなる。そのため、送液ポンプ20から送液される薬液Lは輸液ライン12内に溜まっていくことになり、輸液ライン12内の圧力が上昇する。その結果、やはり圧力センサ40の測定室44a内の圧力が上昇する。
【0047】
輸液状態判別部58は、上記のような複数種類の原因により測定室44a内の圧力が上昇した場合に、輸液状態が正常か、又は異常が生じているかを判別する構成となっている。具体的には、送液停止閾値Ps(設定圧力)を予め記憶部に記憶しており、輸液中に、圧力取得部56が取得した圧力値と、送液停止閾値Psとを比較する。そして、圧力値が送液停止閾値Ps以上になると、送液部26の駆動を停止し輸液ライン12内の薬液Lの送液を停止する処理を行う(以下、送液停止状態という)。
【0048】
このように送液ポンプ20による薬液Lの送液が停止された場合、測定室44a内では圧力が変化することになる。輸液状態判別部58は、この送液停止状態の実施中(送液停止期間中)における圧力値の変動に基づき、血管外漏れ現象と、他の正常時上昇現象や閉塞現象を区別する。
【0049】
具体的には、
図5Aに示すように、輸液ライン12に血管外漏れ現象が生じていると、圧力値は、送液停止状態で比較的急に低下する反応を見せる。血管外漏れ現象の場合は、抵抗が高い状態ではあるが、薬液Lは輸液ライン12の外へ流れている。そのため、送液ポンプ20からの送液がなくなると、輸液ライン12の中に溜まった薬液Lが圧力センサ40の下流側の皮下組織に流出され続けることになり、圧力値が短時間に降下する。
【0050】
一方、閉塞現象が生じた場合は、送液ポンプ20からの送液が停止された後も輸液ライン12内に薬液Lが残り続ける。そのため輸液ライン12内の圧力は原則として変化しないが、チューブ16の可撓性により、徐々に圧力が低下する場合がある。このときの圧力低下の度合いは、
図5Bに示すように、
図5Aに示す血管外漏れ現象の場合に比べて緩やかになる。また、正常に投与されている場合、送液による圧力上昇はほとんどなく、輸液ライン12内の圧力が上昇する大半の理由は、患者の血圧によるものである。すなわち、正常時上昇現象の場合は、患者Cの血圧変化が原因となることから、送液を停止しても輸液ライン12内の圧力は変化しない。
【0051】
従って、輸液状態判別部58は、送液停止状態以降の圧力値の変化を監視することで、血管外漏れ現象の発生を推定することができる。具体的には、輸液状態判別部58は、
図5Aに示すように、送液停止閾値Psに対し所定割合に設定された圧力判別閾値Pαと、予め設定された期間閾値Tαとを有する。そして、輸液状態判別部58は、送液停止状態となった時点t0から時間の計測を開始し、圧力値が圧力判別閾値Pαになった時点t1までの計測時間T1を算出する。
【0052】
計測時間T1の算出後、輸液状態判別部58は、その計測時間T1が期間閾値Tαよりも長いか否かを判別する。
図5Aに示すように計測時間T1が期間閾値Tαよりも短い場合には、圧力値が急に降下していると認められるので、血管外漏れ現象と判定する。逆に、
図5Bに示すように、計測時間T1が期間閾値Tαよりも長い場合には、圧力値の変動が少ないと認められるので、血管外漏れ現象ではないと判定する。
【0053】
圧力判別閾値Pαは、本実施形態では送液停止閾値Psの1/2に設定しているが、これに限定されるものではない。例えば、送液停止閾値Psに対する圧力判別閾値Pαの割合が所定の範囲、例えば1/2〜3/4の範囲内であれば、血管外漏れ現象の発生を比較的短時間に検出できる。また、期間閾値Tαの設定は、圧力判別閾値Pαの設定にも依るが、所定時間(秒)の範囲、例えば、10秒〜30秒の範囲であれば、血管外漏れ現象を良好に検出できると共に、送液の停止期間が長くならず好適である。
【0054】
なお、輸液状態判別部58による判別方法は、上記に限定されず種々の変形例をとり得る。例えば、
図6Aに示すように、輸液状態判別部58は、期間閾値Tβ及び圧力判別閾値Pβを有し、送液停止状態となった時点t0から期間閾値Tβを経過した時点t2での圧力値Pと、圧力判別閾値Pβとを比較する構成でもよい。そして圧力値Pが圧力判別閾値Pβ以下の場合には、血管外漏れ現象と判定し、圧力値Pが圧力判別閾値Pβよりも大きい場合には血管外漏れ現象ではないと判定する。
【0055】
このように、輸液状態検出システム10は、期間閾値Tβにおける圧力値Pを用いることで、一定の期間内に血管外漏れ現象か否かを推定することが可能となる。よって、送液の停止期間の短縮化が図られる。
【0056】
また例えば、
図6Bに示すように、輸液状態判別部58は、圧力値の変化率判別閾値RCを有し、送液停止状態となった時点t0からの所定時点t3を経過した際の変化率R3と比較する構成でもよい。そして、変化率R3が変化率判別閾値RCよりも大きい場合(急激に減少している場合)には、血管外漏れ現象と判定し、変化率R3が変化率判別閾値RCよりも小さい場合(緩やかに減少している場合)には、血管外漏れ現象ではないと判別する。
【0057】
このように、輸液状態検出システム10は、圧力値の変化率を用いて判別することでも、検出した圧力値の波形で血管外漏れ現象か否かを推定することができる。所定時点t3は、特に限定されるものではないが、時点t0から30秒の範囲内に設定するとよい。これにより、送液の停止期間の短縮化が図られる。なお、変化率の算出方法は、時点t0と時点t3の各圧力値に基づき算出する他に、時点t0に近い時点で微分を行うことで算出してもよい。また変化率を算出する回数(時点の数)は、特に限定されず、複数回行うことで、判別精度をより高くすることができる。
【0058】
また、輸液状態判別部58は、上記の判別方法を1種類行うだけでなく、複数種類の判別方法を組み合わせて、輸液状態を判別してもよい。これにより判別精度が一層向上する。
【0059】
図3に戻り、輸液状態判別部58は、圧力上昇が血管外漏れ現象であると判別した場合に、警報部62を動作させて血管外漏れ現象が発生した旨の警報を出力する。警報部62による警報は、アラーム音、音声出力等の種々の方法があげられる。或いは、制御部54は、血管外漏れ現象の発生を表示部28により表示してもよい。表示部28の表示においては、血管外漏れ現象に関する必要な対処をガイド表示する構成であってもよい。
【0060】
また、制御部54は、血管外漏れ現象の判別時に、送液部26の駆動停止を継続する。これにより、患者Cの皮下組織への薬液Lの漏れが低減される。さらに、制御部54は、病院内の管理サーバ等に通信を行って、輸液に異常(血管外漏れ現象)が生じたことを知らせる構成であるとよい。
【0061】
また、輸液状態判別部58は、圧力上昇が血管外漏れ現象でないと判別した場合に、送液部26を駆動させ薬液Lの送液を再開する。なお、薬液Lの送液再開は、圧力値が圧力判別閾値Pαとなるまで待たずに、期間閾値Tαを経過した時点で開始することが好ましい。これにより、薬液Lの送液停止状態の長期化が回避される。
【0062】
そして、輸液状態判別部58は、薬液Lの送液再開後も、圧力センサ40が検出する圧力値を監視する。送液再開後に圧力が上昇しない場合には、今回の圧力上昇が正常時上昇現象であると推定して薬液Lの送液を継続する。
【0063】
一方、送液再開に伴って、圧力値が再び上昇した場合には、今回の圧力上昇が閉塞現象であると推定する。すなわち、圧力値が再上昇するということは、輸液ライン12内が閉塞されて薬液が殆ど流動していないと見なせる。閉塞現象を推定した場合、制御部54は、警報部62を動作させて警報を出力し、さらに送液部26の駆動を停止する。これにより、輸液ライン12の閉塞現象に直ぐに対処することが可能となる。なお、閉塞現象の警報が血管外漏れ現象の警報と異なることで、ユーザは双方の異常を個別に認識することができる。
【0064】
また、制御部54の閾値設定部60は、薬液Lの送液量に基づき、送液停止閾値Psを自動的に設定する機能を有している。つまり、送液量が少ない場合には、圧力センサ40が検出する圧力値の上昇率も小さくなるため、閾値設定部60は、低い送液停止閾値Psを設定する。例えば、送液量が1mL/hの場合には、送液停止閾値Psを1.5mmHg前後に設定する。
【0065】
逆に、送液量が大きい場合には、圧力センサ40が検出する圧力値の上昇率も大きくなるため、閾値設定部60は、高い送液停止閾値Psを設定する。例えば、送液量が500mL/hの場合には、送液停止閾値Psを450mmHg前後に設定する。勿論、輸液状態検出システム10は、送液停止閾値Psをユーザが手動で設定する構成であってもよい。
【0066】
本実施形態に係る輸液状態検出システム10は、基本的には以上のように構成され、以下その作用効果について、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0067】
輸液状態検出システム10は、ユーザにより圧力センサ40を含む輸液ライン12が構築された後、送液ポンプ20の電源オンに伴い制御部54が駆動を開始する。そして、ユーザの操作部30の操作により薬液Lの送液量が設定されると、閾値設定部60は送液停止閾値Psを自動的に設定する。これにより輸液状態検出システム10及び輸液ライン12の準備が完了し、送液ポンプ20の駆動(薬液Lの送液)開始に伴い、制御部54が処理フローを開始する。
【0068】
処理フローの開始後、制御部54は、圧力取得部56により圧力センサ40が送信する検出信号を受信して、留置針18の近傍位置の圧力値を検出する(ステップS10)。
【0069】
そして、制御部54は、検出した圧力値と、閾値設定部60が設定した送液停止閾値Psとを比較し、圧力値が送液停止閾値Ps以上となったか否かを判別する(ステップS11)。圧力値が送液停止閾値Psよりも低い場合には、ステップS10に戻って薬液Lの送液時の圧力値を監視し、圧力値が送液停止閾値Ps以上になった場合には、ステップS12に進む。
【0070】
ステップS12において、制御部54は、送液部26を駆動停止し薬液Lの送液を停止する。この停止期間中に、制御部54は、送液を停止した時点t0からの時間経過を計測すると共に、圧力センサ40の圧力値を監視する(ステップS13)。さらに停止期間中に、制御部54は、圧力値と圧力判別閾値Pαとを比較し、圧力値が圧力判別閾値Pαになったか否かを判別する(ステップS14)。圧力値が圧力判別閾値Pαにならない場合はステップS17へ進む。
【0071】
ステップS14で圧力値が圧力判別閾値Pαになった場合には、時点t1から計測時間T1を算出し、計測時間T1が期間閾値Tα以下か否かを判別する(ステップS15)。計測時間T1が期間閾値Tα以下の場合には、ステップS16に進み、計測時間T1が期間閾値Tαより大きい場合には、ステップS18に進む。
【0072】
ステップS16において、制御部54は、血管外漏れ現象が発生したと判定して、警報部62により血管外漏れ現象用の警報を出力する。また、制御部54は、送液部26の駆動停止を継続する。
【0073】
一方、ステップS14で圧力値が圧力判別閾値Pαにならない場合は、ステップS17において、ステップS15と同様に時点t1から計測時間T1を算出し、計測時間T1が期間閾値Tα以下か否かを判別する。計測時間T1が期間閾値Tα以下の場合には、ステップS14に戻り、計測時間T1が期間閾値Tαより大きい場合には、ステップS18に進む。
【0074】
ステップS18において、制御部54は、血管外漏れ現象が発生していないと判定して、停止期間を終了し、送液部26による薬液Lの送液を再開する。この際、制御部54は、圧力値の取得を継続する。
【0075】
そして、送液の再開後、制御部54は、圧力値が上昇しているか否か(すなわち低下又は一定であるか)を判別する(ステップS19)。圧力値が上昇している場合に、制御部54は、閉塞現象の発生と推定してステップS20に進む。一方、圧力値が低下又は一定である場合に、制御部54は、正常時上昇現象の発生と推定してステップS10に戻り、薬液Lの送液及び輸液ライン12内の圧力の監視を継続する。
【0076】
ステップS20において、制御部54は、警報部62により閉塞現象用の警報を出力する。また、制御部54は、送液部26を駆動停止し、薬液Lの送液を再び停止する。そして、輸液状態検出システム10は、警報の出力後や輸液中に、ユーザの操作に基づきこの処理フローを終了する。
【0077】
以上のように、本実施形態に係る輸液状態検出システム10は、送液ポンプ20の停止期間中に圧力値の急な低下を検出することで、血管外漏れ現象を良好に推定することができる。よって、制御部54が血管外漏れ現象の発生を報知することで、ユーザは必要な対処を早期にとることが可能となる。その結果、輸液状態検出システム10は、検出の信頼性が高められ、使用性が一層向上する。また、このような判別処理により、輸液中は、薬液Lの送液量を変動せず、定量的に送液することができるので、液体の供給制御が容易になる。
【0078】
この場合、制御部54は、停止期間中における輸液ライン12内の圧力値が、圧力判別閾値以下となる時間を計測することで、計測時間T1が期間閾値Tα以下であった場合に、血管外漏れ現象を良好に検出することができる。また制御部54は、送液ポンプ20の駆動再開後に圧力値が上昇した場合に、閉塞現象が発生していると推定することができ、ユーザは、送液ポンプ20から閉塞現象の発生した旨が報知されることで、必要な対処を早期にとることが可能となる。
【0079】
さらに、圧力センサ40が輸液ライン12の留置針18(挿入部)の近傍位置に配置されることで、留置針18付近における輸液ライン12内の圧力値を検出する。そのため、制御部54による輸液状態の判別を一層精度よく行うことができる。またさらに、制御部54が送液停止閾値Psを薬液Lの送液量に基づき自動的に設定することで、送液量に応じた圧力変化を監視することができ、輸液状態検出システム10の使用性が一層向上する。
【0080】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。例えば、制御部54による閉塞現象の推定は、薬液の送液再開後の圧力値に依らず、圧力値が上昇して送液停止閾値Psに至るまでの変化率を使用してもよい。すなわち、輸液ライン12内が閉塞している場合には、薬液Lが流れないため、比較的急に圧力値が上昇する。よって制御部54は、この圧力値の変化率(上昇率)に基づき閉塞現象を良好に判別することができる。
【0081】
また、制御部54は、ポンプ側圧力検出部38と圧力センサ40を併用して輸液ライン12内の輸液状態を推定してもよい。すなわち、ポンプ側圧力検出部38と圧力センサ40との圧力値の変化が大きく異なる場合は、チューブ16の閉塞現象の発生を推定することができる。また、圧力センサ40の圧力値を血管外漏れ現象の判別に用い、ポンプ側圧力検出部38の圧力値を閉塞現象の判別に用いてもよい。