(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6678654
(24)【登録日】2020年3月19日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】オンボディ医療デバイスのための作動システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20200330BHJP
【FI】
A61M5/142 530
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-513452(P2017-513452)
(86)(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公表番号】特表2017-530759(P2017-530759A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】US2015049099
(87)【国際公開番号】WO2016040423
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2018年8月28日
(31)【優先権主張番号】62/048,733
(32)【優先日】2014年9月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ ジョージ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ.リチャード ギョリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】ケネス フォクト
(72)【発明者】
【氏名】スタニスラフ トルゴヴィトスキー
(72)【発明者】
【氏名】ステイシー ジェイ.ロンガネッカー
【審査官】
竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−516281(JP,A)
【文献】
特開昭64−040793(JP,A)
【文献】
特表2010−534085(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0332874(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療物質を注入するための医療デバイスであって、
ユーザ入力に基づいて少なくとも2つの独立した時間トレースを開始するためのインターフェースと、
前記時間トレース間の条件関係に基づいて医療物質の注入を命令するために前記時間トレースを評価するコントローラと、
前記コントローラ、第1のユーザアクセス可能なボタン、および第2のユーザアクセス可能なボタンを収容するように構成されたハウジングと、
を備え、
前記ユーザ入力は、第1のユーザ入力および第2のユーザ入力を含み、
前記少なくとも2つの独立した時間トレースは、第1の時間トレースおよび第2の時間トレースを含み、
前記インターフェースは、前記第1のユーザ入力を受け取る第1のユーザアクセス可能な作動制御部、および前記第2のユーザ入力を受け取る第2のユーザアクセス可能な作動制御部を含み、
前記インターフェースは、前記第1のユーザ入力を受け取る前記第1の作動制御部に基づいて、前記第1の時間トレースを選択的に開始し、
前記インターフェースは、前記第2のユーザ入力を受け取る前記第2の作動制御部に基づいて、前記第2の時間トレースを選択的に開始し、
前記第1のユーザアクセス可能な作動制御部は、前記第1のユーザアクセス可能なボタンを備え、
前記第2のユーザアクセス可能な作動制御部は、前記第2のユーザアクセス可能なボタンを備え、
前記第1のユーザ入力及び前記第2のユーザ入力は、独立及び並列して処理されることを特徴とする医療デバイス。
【請求項2】
前記ハウジング内に、前記医療物質を収容する容量部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも2つの独立した時間トレースは、第1の時間トレースおよび第2の時間トレースを含み、
前記第1の時間トレースは、第1の開始時間、第1の停止時間、および第1の継続時間を含み、
前記第2の時間トレースは、第2の開始時間、第2の停止時間、および第2の継続時間を含み、
前記条件関係は、前記第1の開始時間、前記第1の停止時間、前記第1の継続時間、前記第2の開始時間、前記第2の停止時間、および前記第2の継続時間のうちの少なくとも1つに依存することを特徴とする請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
前記第1の停止時間、前記第1の継続時間、前記第2の開始時間、前記第2の停止時間、および前記第2の継続時間のうちのいずれか1つは、非一時的コンピュータ可読メモリに記憶された予め設定された値と、有線および/または無線通信を介して前記コントローラに送信された値と、前記医療デバイスの意図された動作に基づく選択的に決定された値とのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項3に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記第1のユーザアクセス可能なボタンは、前記第2のユーザアクセス可能なボタンに対して距離を置いて配設され、したがって、前記第1のユーザアクセス可能なボタンの作動は、前記第2のユーザアクセス可能なボタンの作動とは独立していることを特徴とする請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項6】
前記時間トレース間の前記条件関係は、前記時間トレースの互いに対する時間重複を含むことを特徴とする請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項7】
医療物質を注入するための医療デバイスの作動方法であって、
前記医療デバイスが、ユーザ入力に基づいて少なくとも2つの独立した時間トレースを開始するステップと、前記医療デバイスが、前記時間トレース間の条件関係に基づいて医療物質の注入を命令するために前記時間トレースを評価するステップと、
を含み、
前記ユーザ入力は、第1のユーザ入力および第2のユーザ入力を含み、前記医療デバイスの作動方法は、
前記医療デバイスが、第1のユーザアクセス可能な作動制御部を介して前記第1のユーザ入力を受け取るステップと、
前記医療デバイスが、第2のユーザアクセス可能な作動制御部を介して前記第2のユーザ入力を受け取るステップと、
をさらに含み、
前記少なくとも2つの独立した時間トレースは、第1の時間トレースおよび第2の時間トレースを含み、
前記開始するステップは、
前記医療デバイスが、前記第1のユーザ入力を受け取る前記第1の作動制御部に基づいて、前記第1の時間トレースを選択的に開始するステップと、
前記医療デバイスが、前記第2のユーザ入力を受け取る前記第2の作動制御部に基づいて、前記第2の時間トレースを選択的に開始するステップと、
を含み、
前記第1のユーザアクセス可能な作動制御部は、第1のユーザアクセス可能なボタンを備え、
前記第2のユーザアクセス可能な作動制御部は、第2のユーザアクセス可能なボタンを備え、
前記第1のユーザアクセス可能なボタンおよび前記第2のユーザアクセス可能なボタンは、ハウジングに対して構成され、
前記第1のユーザ入力及び前記第2のユーザ入力は、独立及び並列して処理されることを特徴とする方法。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記医療物質を収容する容量部を備えることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも2つの独立した時間トレースは、第1の時間トレースおよび第2の時間トレースを含み、
前記第1の時間トレースは、第1の開始時間、第1の停止時間、および第1の継続時間を含み、
前記第2の時間トレースは、第2の開始時間、第2の停止時間、および第2の継続時間を含み、
前記条件関係は、前記第1の開始時間、前記第1の停止時間、前記第1の継続時間、前記第2の開始時間、前記第2の停止時間、および前記第2の継続時間のうちの少なくとも1つに依存することを特徴とする請求項7に記載の方法デバイス。
【請求項10】
前記第1の停止時間、前記第1の継続時間、前記第2の開始時間、前記第2の停止時間、および前記第2の継続時間のうちのいずれか1つは、非一時的コンピュータ可読メモリに記憶された予め設定された値と、有線および/または無線通信を介して前記コントローラに送信された値と、前記医療デバイスの意図された動作に基づく選択的に決定された値とのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のユーザアクセス可能なボタンは、前記第2のユーザアクセス可能なボタンに対して距離を置いて配設され、したがって、前記第1のユーザアクセス可能なボタンの作動は、前記第2のユーザアクセス可能なボタンの作動とは独立していることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記時間トレース間の前記条件関係は、前記時間トレースの互いに対する時間重複を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医療デバイスに関し、より詳細には、デバイスユーザが薬剤の送達を開始することを要するウェアラブルまたはオンボディ薬剤送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病とは、糖尿病患者が必要なときに適切なレベルのインスリン産生を維持できないことに起因する高レベルの血糖を特徴とする疾患群である。糖尿病は、治療を受けなければ罹患患者にとって危険であり、重篤な合併症および早期死亡をもたらす可能性がある。しかしながら、そのような合併症は、1または複数の治療選択肢を利用して糖尿病の制御を促進し合併症のリスクを低減することによって最小限にされ得る。
【0003】
糖尿病患者の治療選択肢は、特別な食事療法、経口投薬、および/またはインスリン療法を含む。糖尿病治療の主な目標は、糖尿病患者の血糖値または糖値を制御することである。しかしながら、適切な糖尿病管理の維持は、それが糖尿病患者の活動と釣り合う必要があるので複雑になることがある。1型糖尿病(T1D)患者は、一般に彼らの体内でインスリンを産生できないので、血流からグルコースを移動させるために(たとえば、注射または注入によって)インスリンを摂取することを必要とされる。2型糖尿病(T2D)患者は一般にインスリンを産生できるが、彼らの体では血糖値を医学的に許容可能な範囲内に維持するように適切にインスリンを使用することができない。T1D患者とは対照的に、T2D患者の大半は通常、生存するために1日量のインスリンを必要としない。多くの人々が、健康的食事および身体活動の増大または経口投薬を通して彼らの状態を管理することができる。しかしながら、彼らが自身の血糖値を調節できない場合は、インスリンを処方されることになる。たとえば、24時間基礎インスリンと血糖管理制御のために食事時に摂られる短時間作用速効インスリンとからなる頻回注射法(multiple-daily-injections:MDI)を行う(たとえば、米国、西ヨーロッパ、カナダなどで)およそ620万人の2型糖尿病患者がいる。
【0004】
1型糖尿病(T1D)および2型糖尿病(T2D)の治療に関して、2つの主要な日々のインスリン療法の方法がある。第1の方法では、糖尿病患者は、必要なときにシリンジまたはインスリンペンを使用してインスリンを自己注射する。この方法は、注射ごとに針を刺す必要があり、糖尿病患者は毎日3から4回の注射を必要とすることがある。インスリンを注射するのに使用されるシリンジおよびインスリンペンは、使用が比較的容易で費用効果が高い。
【0005】
インスリン療法および糖尿病管理のための別の効果的方法は、インスリンポンプが使用される注入療法または注入ポンプ療法である。インスリンポンプは、必要なインスリンを産生する非糖尿病者の正常に働いている膵臓の機能および挙動と一致するように様々な率で糖尿病患者に対するインスリンの連続注入を提供することができ、インスリンポンプは、糖尿病患者の個々の必要に基づいて、糖尿病患者が彼/彼女の血糖値を目標範囲内に維持するのを助けることができる。注入ポンプ療法は、典型的には注入針または軟性カテーテルの形態の注入カニューレを必要とし、注入カニューレが糖尿病患者の皮膚を突き刺し、それを通してインスリンの注入が行われる。注入ポンプ療法は、インスリンの連続注入、精密な投与、およびプログラム可能な送達スケジュールの利点を提供する。
【0006】
注入療法では、インスリン用量は、典型的には基礎レートおよびボーラス用量で投与される。インスリンが基礎レートで投与される場合、食事と休憩の間で典型的には夜間に一貫した範囲に糖尿病患者の血糖値を維持するために、24時間にわたって連続的にインスリンが送達される。インスリンポンプはまた、昼夜の異なる時間に応じてインスリンの基礎レートが変わるようにプログラムできることがある。対照的に、ボーラス用量は、典型的には、糖尿病患者が食べ物を消費するときに投与され、一般に、消費された炭水化物と釣り合うように単一の追加的インスリン注射を提供する。インスリンポンプは、糖尿病患者が消費する食べ物のサイズまたはタイプに応じて、糖尿病患者がボーラス用量の量をプログラムすることを可能にするように構成され得る。また、インスリンポンプは、特定の食事に対するボーラス用量を糖尿病患者が計算しているときに低血糖値を補償するために、糖尿病患者がインスリンの補正または補充ボーラス用量を注入することを可能にするように構成されてもよい。
【0007】
インスリンポンプは、単回注射より長い時間にわたってインスリンを送達することが有利であり、その結果、典型的には、推奨される血糖値範囲内の変動が少なくなる。加えて、インスリンポンプは、糖尿病患者が耐える必要がある針を刺す数を減らし、糖尿病管理を改善して糖尿病患者の生活の質を向上することができる。たとえば、インスリン療法を処方されたT2D患者の多くは、改善された制御の臨床的必要性が満たされていないため、注射から注入療法へ変更することが期待され得る。すなわち、頻回注射法(MDI)を行うかなりの数のT2D患者が、目標グルコース制御を達成していないか、または彼らの処方されたインスリン療法を十分に実行されていない。
【0008】
典型的には、糖尿病患者が頻回注射法(MDI)を使用するかそれともポンプを使用するかにかかわらず、糖尿病患者は、睡眠からの覚醒時に空腹時血糖薬物療法(fasting blood glucose medication:FBGM)を行い、また各食事中またはその後に、補正用量が必要とされるかどうかを決定するためにグルコースについて試験する。加えて、糖尿病患者は、たとえば眠る前にスナックを食べた後に、補正用量が必要とされるかどうかを決定するために、眠る前の血液中のグルコースについて試験してもよい。
【0009】
注入療法を容易にするために、一般に2つのタイプのインスリンポンプ、すなわち従来のポンプとパッチポンプ(patch pump)がある。従来のポンプは、ポンプ内のリザーバからインスリンをユーザの皮膚中に運搬する、典型的には注入セット、チュービングセット、またはポンプセットと呼ばれる使い捨て部品の使用を必要とする。注入セットは、ポンプコネクタ、長さを有するチューブ、およびハブまたは基部からなり、ハブまたは基部から、中空の金属注入針または軟性プラスチックカテーテルの形態のカニューレが延びている。基部は、典型的には使用中に皮膚表面上に基部を保持する接着部を有する。カニューレは、手動で、または手動もしくは自動の挿入デバイスを用いて皮膚に挿入され得る。挿入デバイスは、ユーザに必要とされる別個のユニットであってもよい。
【0010】
別のタイプのインスリンポンプはパッチポンプである。従来の注入ポンプと注入セットの組み合わせとは異なり、パッチポンプは、患者の皮膚上の注入部位に接着して取り付けられる単一のハウジングにおいて、流体リザーバ、ポンピング機構、およびカニューレを自動的に挿入するための機構を含む、流体構成要素のほとんどまたはすべてを組み合わせる統合されたデバイスであり、別個の注入またはチュービングセットの使用を必要としない。インスリンを収容するパッチポンプは、皮膚に付着し、統合された皮下カニューレを介して一定期間にわたってインスリンを送達する。パッチポンプは、別個のコントローラデバイス(Insulet CorporationによってOmniPod(登録商標)という商標名で販売されているデバイスのように)と無線で通信するものもあれば、完全に自己完結したものもある。そのようなデバイスは、頻繁に、たとえば、3日ごと、インスリンリザーバが使い尽くされたとき、またはカニューレまたは注入部位の制限のような他の問題が発生したときなどに交換される。
【0011】
潜在的に有害な物質を注入するためにユーザによって作動化され得るパッチポンプなどの医療デバイスは、有効または意図的なユーザによる制御部の作動と、不用意な制御部の作動とを区別するための手段を有する必要がある。従来のデバイスは、不用意な作動を防止するいくつかの手段を提供しており、それらの手段は、電気的に相互連結されたボタンから、偶発的な制御部の作動を防止する物理的構造まで及ぶ。
【0012】
しかしながら、従来の制御は、偶発的な作動を防止するために、作動ボタンまたはスイッチの複雑な機械的構造に依存している。他の従来の制御は、たとえば、2つのボタンまたはスイッチが電気的に相互連結され、作動を達成するのに正確な操作を必要とする、2ボタン作動に依存している。
【0013】
したがって、正確な順序または同時の作動を必要とする作動ボタンおよび/または作動ボタンもしくはスイッチの電気的相互接続のための複雑な機械的構造を回避しながら、ユーザの不用意な作動からの保護を提供するユーザ作動化される流体送達システムが必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、上記および他の問題を実質的に解決することであり、マイクロプロセッサを使用してユーザ制御部からの作動信号のタイミングを分析することによって、意図的な制御部の作動と不用意な制御部の作動とを区別する、医療物質を注入するための医療デバイスを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、医療デバイスの不用意な作動を防止するために、医療デバイスに関連付けられた複数の作動スイッチから受け取られた信号の分析を容易にする、コンピュータに実装された信号処理アルゴリズムを提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、医療物質の不用意な注入を引き起こすことなくユーザによって都合よく操作され得る、作動ボタンのような容易にアクセス可能な作動制御部を備える、医療物質を注入するための医療デバイスを提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、ユーザに識別可能な触感を有する、医療物質を注入するための医療デバイスための作動ボタンのような作動制御部を提供すると共に、そのような制御部の意図しない操作が医療物質の不用意な注入を引き起こさないようにすることである。
【0018】
本発明の例示的な実施形態の態様によれば、医療物質を注入するための医療デバイスは、ユーザ入力に基づいて少なくとも2つの独立した時間トレースを開始するためのインターフェースと、前記時間トレース間の条件関係に基づいて医療物質の注入を命令するために前記時間トレースを評価するコントローラとを備える。
【0019】
本発明の例示的な実施形態の態様によれば、ユーザ入力は、第1のユーザ入力および第2のユーザ入力を含み、少なくとも2つの独立した時間トレースは、第1の時間トレースおよび第2の時間トレースを含む。ユーザインターフェースは、第1のユーザ入力を受け取る第1のユーザアクセス可能な作動制御部、および第2のユーザ入力を受け取る第2のユーザアクセス可能な作動制御部を含む。インターフェースは、第1のユーザ入力を受け取る第1の作動制御部に基づいて、第1の時間トレースを選択的に開始し、第2のユーザ入力を受け取る第2の作動制御部に基づいて、第2の時間トレースを選択的に開始する。
【0020】
本発明の例示的な実施形態の態様によれば、条件関係は、第1の開始時間、第1の停止時間、第1の継続時間、第2の開始時間、第2の停止時間、および第2の継続時間のうちの少なくとも1つに依存する。
【0021】
本発明の例示的な実施形態の態様によれば、デバイスは、作動が意図されて有効であるかどうかを決定するために、作動ボタンの作動によって開始されるそれぞれの時間トレースの重複を利用することができる。これらの時間トレースは、同時にまたは特定の順序で開始される必要がない。
【0022】
本発明の例示的な実施形態の態様によれば、作動ボタンは、ハウジングにおける切欠き内に配置されたエラストマーのオーバーモールドされたボタンとすることができ、押下されると、それぞれのスイッチと物理的に接触する。
【0023】
本発明は、上記態様の1つもしくは複数ならびに/またはそれらの特徴および組み合わせの1つもしくは複数を有する作動ボタンを備えるデバイスを動作させるための方法または装置を含むことができる。本発明は、たとえば添付の特許請求の範囲に記載されるような上記態様の特徴および/または組み合わせの1または複数を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の実施形態の上記および/または他の態様および利点は、添付の図面と併せてなされる以下の詳細な説明からより容易に理解されよう。
【
図1】本発明の例示的な実施形態によるパッチポンプの斜視図である。
【
図2】本発明の例示的な実装形態による、
図1のパッチポンプの様々な構成要素の分解図である。
【
図3】本発明の例示的な実装形態による、可撓性リザーバを有するパッチポンプの代替的設計の斜視図である。
【
図4】
図3のパッチポンプのパッチポンプ流体アーキテクチャおよび計量サブシステムの例示的な実装形態を示すブロック図である。
【
図5】たとえばパッチポンプなどの薬剤送達デバイスの動作を制御するための無線遠隔コントローラを含む、本発明の例示的な実施形態を示す図である。
【
図6】本発明の例示的な実施形態による、デバイス(たとえば、パッチポンプなどの薬剤送達デバイス)の外側ハウジングの上面図である。
【
図7A】本発明の例示的な実装形態によるプリント回路板に取り付けられた電気スイッチを示す、本発明の例示的な実施形態による
図6のデバイスの斜視図である。
【
図7B】本発明の例示的な実施形態による
図6のデバイスの外側ハウジングの上面図である。
【
図7C】本発明の例示的な実施形態による
図6のデバイスの外側ハウジングの側面図である。
【
図8】本発明の例示的な実施形態による、電気スイッチのうちの少なくとも1つに対する作動ボタンの実装形態を示す、
図6のデバイスの外側面図である。
【
図9】本発明の例示的な実施形態による、電気スイッチのうちの少なくとも1つに対する作動ボタンの実装形態を示す、
図6のデバイスの外側面図である。
【
図10A】本発明の例示的な実施形態による、電気スイッチのうちの少なくとも1つに対する作動ボタンの別の実装形態を示す部分上面図である。
【
図10B】本発明の例示的な実施形態による、電気スイッチのうちの少なくとも1つに対する作動ボタンの上記別の実装形態を示す部分断面図である。
【
図11A】本発明の例示的な実施形態による、電気スイッチのうちの少なくとも1つに対する作動ボタンの別の実装形態を示す部分上面図である。
【
図11B】本発明の例示的な実施形態による、電気スイッチのうちの少なくとも1つに対する作動ボタンの上記別の実装形態を示す部分断面図である。
【
図12A】本発明の例示的な実施形態による、電気スイッチのうちの少なくとも1つに対する作動ボタンの別の実装形態を示す部分上面図である。
【
図12B】本発明の例示的な実施形態による、電気スイッチのうちの少なくとも1つに対する作動ボタンの上記別の実装形態を示す部分断面図である。
【
図13A】本発明の例示的な実施形態による、電気スイッチのうちの少なくとも1つに対する作動ボタンの別の実装形態を示す部分上面図である。
【
図13B】本発明の例示的な実施形態による、電気スイッチのうちの少なくとも1つに対する作動ボタンの上記別の実装形態を示す部分断面図である。
【
図14A】本発明の例示的な実装形態による、時間分析を介する作動有効性検証を示す概念的タイミング図である。
【
図14B】本発明の例示的な実装形態による、時間分析を介する作動有効性検証を示す概念的タイミング図である。
【
図14C】本発明の例示的な実装形態による、時間分析を介する作動有効性検証を示す概念的タイミング図である。
【
図15】本発明の例示的な実施形態による、信号処理の例を示すプロセスフロー図である。
【
図16】本発明の例示的な実施形態による、デバイス(たとえば、パッチポンプなどの薬剤送達デバイス)の外側ハウジングの斜視図である。
【
図17】本発明の例示的な実装形態による、
図16のデバイスの様々な構成要素の分解図である。
【
図18】本発明の例示的な実装形態による、
図16のデバイスの外側ハウジングの底面図である。
【
図19】本発明の例示的な実装形態による、作動ボタンが作動化されていない
図16のデバイスの上面図である。
【
図20】本発明の例示的な実装形態による、作動ボタンが作動化されていない
図16のデバイスの側面図である。
【
図21】本発明の例示的な実装形態による、作動ボタンが作動化されていない
図19のデバイスの断面図である。
【
図22】本発明の例示的な実装形態による、作動ボタンが作動化されていない
図19のデバイスの平面断面図である。
【
図23】本発明の例示的な実装形態による、作動ボタンが作動化された
図16のデバイスの斜視図である。
【
図24】本発明の例示的な実装形態による、作動ボタンが作動化された
図16のデバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を通して、同様の参照番号は同様の要素、特徴、および構造を指すものと理解される。
【0026】
同様の参照番号が同様の要素を指す添付図面に示されている本発明の実施形態が、以下に詳細に参照される。本明細書に説明される実施形態は、図面を参照することで本発明を例示するものであり限定するものではない。
【0027】
本開示が、その適用において、以下の説明に記載されまたは図面に示される構成の詳細および構成要素の配列に限定されないことは、当業者には理解されよう。本明細書の実施形態は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行されることが可能である。また、本明細書で使用される表現および用語は、説明を目的としており、限定とみなされるべきでないことは理解されよう。本明細書における「含む」、「備える」または「有する」およびその変形の使用は、その後に列挙される要素およびそれらの均等物ならびに追加の要素を包含することを意図している。特に限定されない限り、本明細書における用語「接続された」、「結合された」および「取り付けられた」ならびにそれらの変形は広く使用され、直接的および間接的な接続、結合、および取り付けを包含する。さらに、用語「接続された」および「結合された」ならびにそれらの変形は、物理的または機械的な接続または結合に限定されない。さらに、上、下、下部、および上部などの用語は相対的であり、例示を助けるために利用されるが限定するものではない。
【0028】
同様に、以下の詳細な説明に特に明示的に記載されない限り、図面に示される様々な部分および構成要素の相対的および/または具体的な寸法は、本発明の実施形態の様々な例示的な実装形態の理解を容易にするために提供される非限定的な例であることは、当業者には理解されよう。
【0029】
例示的な実施形態はインスリン療法を使用する糖尿病管理を参照して説明されるが、これらの例示的な実施形態は、インスリンとは異なる薬剤を使用する糖尿病以外の生理学的状態を治療するための異なる薬物療法および治療計画と共に使用され得ることを理解されたい。
【0030】
図1は、本発明の例示的な実施形態によるパッチポンプ1を含む薬剤送達デバイスの例示的な実施形態の斜視図である。パッチポンプ1は、明瞭にするために透視カバーで示されており、パッチポンプ1を形成するように組み立てられた様々な構成要素を示す。
図2は、固体カバー2と共に示された
図1のパッチポンプの様々な構成要素の分解図である。パッチポンプ1の様々な構成要素は、インスリンを貯蔵するためのリザーバ4と、リザーバ4外にインスリンをポンピングするためのポンプ3と、1または複数のバッテリの形態の電源5と、カテーテルを有する挿入針をユーザの皮膚に挿入するための挿入機構7と、スマートフォンを含む遠隔コントローラおよびコンピュータなどの外部デバイスに対する任意の通信機能を有する回路板の形態の制御電子回路8と、ボーラス用量を含むインスリン用量を作動化するためのカバー2上の対の用量ボタン6(たとえば、各側に1つのボタン)と、留め具91を介して上記の様々な構成要素が付着され得るベース9とを含むことができる。パッチポンプ1はまた、リザーバ4外にポンピングされたインスリンを注入部位へ移送する様々な流体コネクタラインを含む。
【0031】
図3は、可撓性リザーバを有するパッチポンプ1Aの代替的設計の斜視図であり、カバー無しで示されている。そのような配置は、可撓性リザーバ4Aがパッチポンプ1A内の空隙を充填しており、パッチポンプ1Aの外形寸法をさらに小さくすることができる。パッチポンプ1Aは、典型的には90度未満の鋭角でユーザの皮膚の表面にカニューレを挿入する、従来のカニューレ挿入デバイス7Aと共に示されている。パッチポンプ1Aは、バッテリの形態の電源5Aと、インスリンの量を監視し少量検出能力を含む計量サブシステム41と、デバイスの構成要素を制御するための制御電子回路8Aと、リザーバ4Aに充填をするためのリフィルシリンジ(たとえば、
図4のシリンジ45)を受け入れるためのリザーバ充填口43とをさらに備える。
【0032】
図4は、
図3のパッチポンプ1Aのパッチポンプ流体アーキテクチャおよび計量サブシステムの例の図である。パッチポンプ1Aのための電力貯蔵サブシステムは、バッテリ5Aを含む。パッチポンプ1Aの制御電子回路8Aは、パッチポンプ1Aの作動を制御する、マイクロコントローラ81、検知電子回路82、ポンプおよび弁コントローラ83、検知電子回路85、ならびに展開電子回路(deployment electronics)87を含むことができる。パッチポンプ1Aは、リザーバ4Aと、リザーバ4Aの量センサ48と、リザーバ4Aに充填をするためのリフィルシリンジ45を受け入れるためのリザーバ充填口43とを含むことができる、流体サブシステムを含む。流体サブシステムは、ポンプおよび弁アクチュエータ411と、統合されたポンプおよび弁機構413とを備える、計量システム41を含むことができる。流体サブシステムはさらに、閉塞センサ49、展開アクチュエータ7、ならびにユーザの皮膚上の注入部位に挿入するためのカニューレ47を含むことができる。
図1および
図2のパッチポンプのアーキテクチャは、
図4に示したものと同じまたは類似してよい。
【0033】
図5は、ポンプ1と通信する遠隔無線コントローラ(WC)500と連動して動作可能であるウェアラブル医療送達デバイス(たとえば、パッチポンプ1のようなインスリン送達デバイス(IDD))を示す。WCは、たとえば、表示動作の中でも特に、構成設定、パッチポンプに対する無線接続が成功したときの標識、および用量が送達されているときの標識など、パッチポンプ1の動作に関するユーザ視覚情報を提供するための、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)ディスプレイ502を備えることができる。例示的な実装形態では、GUIディスプレイ502は、ユーザインターフェース動作の中でも特に、ロック解除をするスワイプ、ボーラスを送達する要求を確認するスワイプ、および確認または設定ボタンの選択などのタッチ入力を、ユーザが提供できるようにプログラムされたタッチスクリーンディスプレイ機能を含むことができる。
【0034】
WCは、いくつかの通信インターフェース504の任意の1または複数を使用して、送達デバイス(たとえばパッチポンプ1)と通信することができる。たとえば、WCとパッチポンプ1のタイミングを同期させ、また別様に始動時のペアリングを容易にするために、近接場放射インターフェースが提供され得る。別のインターフェースが、標準ブルートゥース低エネルギー(BlueTooth Low Energy:BLE)層ならびにトランスポート層およびアプリケーション層を利用する、WCとパッチポンプ1の間の無線通信のために提供されてもよい。アプリケーション層コマンドの非限定的例は、プライミング、基礎用量の送達、ボーラス用量の送達、インスリン送達のキャンセル、パッチポンプ1状態のチェック、パッチポンプ1の非作動化、およびパッチポンプ1状態または情報の応答を含む。
【0035】
図6は、本発明の例示的な実施形態によるパッチポンプ600を含む薬剤送達デバイスの外側ハウジング602の上面図であり、このデバイスは、デバイスに収容される薬剤の送達をユーザが開始するためにアクセス可能な2つの押しボタン604、606を含む。WCが利用される例示的な実装形態では、ボタン604、606の特定の予め定められた操作が、通信を同期させ、薬剤送達デバイスとWCのペアリングを容易にするために使用され得る。
【0036】
図7Aにさらに示されるように、パッチポンプ600を含む薬剤送達デバイスの例示的な実装形態では、ボタン604、606の操作(たとえば、ユーザが一方または両方のボタンを押下すること)によって薬剤送達(たとえば「ボーラス」)の開始が行われ、それぞれの(たとえば電気的)スイッチ704、706に、それぞれの作動信号をハウジング602内に配設され得るコントローラ1500へ出力させることができる(たとえば、
図15に示される信号処理)。スイッチ704、706の有効なまたはユーザに意図された作動と不用意な作動とを区別するために、コントローラは、
図14A〜
図14Cおよび
図15の参照によってより詳細に説明されるように、(たとえば、
図4のマイクロコントローラ81などのマイクロプロセッサ、および内部または外部の非一時的コンピュータ可読媒体を利用して)作動信号を処理し、処理の結果に基づいて薬剤の送達を制御する。
【0037】
図14A〜
図14Cの図を参照すると、本発明の例示的な実施形態では、作動信号のタイミングが、作動信号を発生したときにユーザが薬剤の送達を開始するのを意図したかどうかを検証するために使用され得る。
図1から
図13Bに特徴が示されているデバイスのような2つのボタンを有する注入デバイスに関する本発明の例示的な実施形態において、各ボタン1およびボタン2(ボタン604およびボタン606など)が押されると、それぞれのタイマ1404および1406が、それぞれの設定された時間量(たとえば、th1およびth2、ここでth1はth2と等しい場合も等しくない場合もある)において、スイッチSW1およびSW2(スイッチ704および706など)からの作動信号によって作動化されることが可能である。
【0038】
図14Aおよび
図14Bに示されるように各タイマの時間トレースが互いに重複する場合、有効な作動が示される。
図14Cの例に示されるように他方のタイマが作動化される前に一方のタイマが終了すると、無効な作動が示される。同様に、1つだけのタイマの時間作動(たとえば、2つのボタン604、606の各1つだけを押した結果として)は、無効な作動が示される。
【0039】
当業者には理解されるように、タイマは、たとえば個別電気部品を使用するタイミング回路としてハードウェアで、またはたとえばコンピュータ実行可能命令を使用するカウンタとしてソフトウェアで実装され得る。ボタンの押しを有効または無効として分類する方法としてタイマを使用することは、物理的に連結するタイプの設計より部品が少ないことを意味する可能性があり、それは、コストおよび組立時間の削減につながることになる。
【0040】
図15を参照すると、本発明の例示的な実施形態では、プログラマブルマイクロプロセッサなどのコントローラ1500は、電気スイッチ704および706などのスイッチSW1およびSW2の出力を監視して、以下のようにボタン604および606の有効な作動に基づいて薬剤の投与を制御する。
【0041】
ユーザがボタン604を操作(「押し1」)すると、スイッチ(SW1)704が作動信号(sig1)1504を出力し、ユーザがボタン606を操作(「押し2」)すると、スイッチ(SW2)706が作動信号(sig2)1506を出力する。コントローラ1500は、以下を含むコンピュータ実行可能命令を実行する:
・ 作動信号sig1がスイッチSW1から受け取られたかどうかを決定し(S1510)、作動信号sig1がスイッチSW1から受け取られている場合、タイマ1を開始する(S1512)。当業者には理解されるように、タイマ1は、たとえばカウンタ1としてソフトウェアで実装され得る。
・ 作動信号sig2がスイッチSW2から受け取られたかどうかを決定し(S1520)、作動信号sig2がスイッチSW2から受け取られている場合、タイマ2を開始する(S1522)。当業者には理解されるように、タイマ2は、たとえばカウンタ2としてソフトウェアで実装され得る。
・ タイマ1がタイムアウトしたかどうかを、たとえば、タイマ1が予め設定された閾値th1よりも大きいかどうかをチェックすることによって決定し(S1514)、
○ タイマ1がth1よりも大きい場合、タイマ1はタイムアウトしており、タイマ1をたとえば0にリセットし(S1516)、
○ タイマ1がth1よりも大きくない場合、タイマ1はタイムアウトしておらず、次いで、タイマ2が(sig2によって)作動化されていてタイムアウトしていないかどうかを決定する(S1518)。
・ タイマ2がタイムアウトしたかどうかを、たとえば、タイマ2が予め設定された閾値th2よりも大きいかどうかをチェックすることによって決定し(S1524)、
○ タイマ2がth2よりも大きい場合、タイマ2はタイムアウトしており、タイマ2をたとえば0にリセットし(S1526)、
○ タイマ2がth2よりも大きくない場合、タイマ2はタイムアウトしておらず、次いで、タイマ1が(sig1によって)作動化されていてタイムアウトしていないかどうかを決定する(S1528)。
・ タイマ1およびタイマ2がタイムアウトしていない、すなわち時間トレースが重複している場合、作動は有効であり、したがって薬剤を投与する(S1530)。
注目すべきことに、2つの信号1504および1506(たとえばsig1およびsig2)は、互いに独立および/または並列して処理され得る。
【0042】
図14A、
図14B、および
図15の非限定的な例に示される本発明の例示的な実施形態によれば、薬剤を投与するための作動が有効である(たとえば、デバイスユーザによって意図されている)かどうかの決定は、ボタン1および2が特定の順序でまたは同時に押されることを必要としない。代わりに、薬剤を投与するための作動が有効であるかどうかの決定は、それぞれのボタン1および2を押すことによって引き起こされるそれぞれの作動信号によって開始されるそれぞれの時間トレースの重複に基づいている。
図14Aに示されているように、重複は、2つの時間トレースがある特定の期間に一緒に存在することに単に基づくので、これらの時間トレースは、同時にまたは特定の順序で開始される必要がない。たとえば、
図14Aは、ボタン1がボタン2の前に押されることを示しているが、
図14Bに示されるように、同じ有効な作動は、ボタン2がボタン1の前に押されることによって達成され得る。
【0043】
有効な作動を構成する重複の継続時間は、予め設定される、またはたとえば、コントローラ1500の内部もしくは外部の非一時的コンピュータ可読メモリ内にプログラムされることが可能である。同様に、作動信号の継続時間th1およびth2は、予め設定される、またはたとえば、コントローラ1500の内部もしくは外部の非一時的コンピュータ可読メモリ内にプログラムされることが可能であり、また、互いに対して異なるもしくは同じ継続時間に独立して設定されることが可能である。したがって、本発明の例示的な実装形態によれば、薬剤を投与するための作動が有効であるかどうかの決定は、たとえばコントローラ1500の内部もしくは外部の非一時的コンピュータ可読メモリにおいて、独立して予め設定され、プログラムされ、または調整され得る、重複の設定th1およびth2に基づくことができる。重複の継続時間などのボタン作動パラメータth1およびth2のプログラミングは、たとえば、デバイス上のボタンの位置、ユーザ人間工学および/または習慣、ならびに医療送達デバイスの構造要件など、いくつかのファクタのうちの任意のものに依存することが可能である。たとえば、ボタン作動パラメータは、ファクタの中でも、スイッチの接点に関連する弾性、ヒューマンファクタの考慮事項(たとえば、デバイスの典型的なユーザ操作に関連するタイミング)、特定の機械的ボタン実装形態の触覚フィードバック品質のうちの任意の1または複数に依存することが可能である。
【0044】
図7Bから
図13Bは、本発明による薬剤送達デバイスまたは注入デバイスのための様々なハウジングおよび押しボタン(「ボーラスボタン」)構造の例示的な実装形態を示す。これらの構造は、本発明の例示的な実施形態によるコントローラ1500およびタイミング分析と独立してまたは併せて利用され得る。
【0045】
本発明の例示的な実装形態は、注入デバイス上のボーラスボタンのいくつかの機能要件、たとえば、不用意な押しを最小限にしつつ、さらに注入デバイスの内部への侵入に対してシールしながら、有効な押しを確実に示すボタン設計などに対処することができる。
【0046】
図7Bおよび
図7Cは、シールおよび改善されたユーザグリップを提供するために、剛性シェル602とオーバーモールドされたエラストマーを有する押しボタン604および606とを含む、本発明の例示的な実施形態による薬剤送達デバイス600のハウジングの上面図および側面図である。この例示的な実装形態では、
図7Aに示されるように、プリント回路板708上に取り付けられ得る電気スイッチを作動化するために、ユーザは、作動のためにこれらのスイッチに適用するのに十分な大きさおよび移動の力で外側ハウジングに対してボタン604、606を押す必要がある。
【0047】
例示的な実装形態では、ユーザがボタンを押せる面積を拡大するが、依然として電気スイッチに対する十分な作動力を生じるように、剛性のフレックスアーム(flex arm)が、オーバーモールドされたボタン604、606の下に提供され得る。
図8および
図9は、本発明の実施形態によるフレックスアームの例を示すようなオーバーモールド無しのハウジング602の側面図を示す。特に、
図8は、より硬いフレックスアーム800を形成する、より小さな切り欠き802を有するフレックスアーム800の例を示す。一方、
図9は、より大きな切り欠き902のため、より可撓性のあるフレックスアーム900の例を示す。切り欠き802または902の全体形状および切り欠きの総面積は、ハウジングカバーまたはシェル702およびオーバーモールドされたエラストマーに使用される材料(たとえば、材料タイプ、厚さ、可撓性)、ならびに、ボタン604、606に対応するスイッチ704、706を作動化するために必要とされる望ましい可撓性または剛性または移動距離に応じて異なってよい。
【0048】
図10A〜
図13Bは、本発明の例示的な実施形態によるエラストマーのオーバーモールドの側面図および断面図(それぞれの線A−A、B−B、C−C、D−Dに沿った)を示す。本発明の例示的な実装形態では、そのようなオーバーモールドは、異物が薬剤送達デバイスのハウジングの内部に入らないようにシールを提供することが意図されている。それは、ユーザがデバイス(たとえば、
図7Aを参照して上述されたようにスイッチ704、706を作動化する)と対話するためのインターフェースでもある。
図10A〜
図13Bに示されている本発明によるエラストマーのオーバーモールドの例示的な実装形態では、このインターフェースのいくつかの特性を強調するまたは強調を弱めることがある。
【0049】
図10A〜
図10Bおよび
図11A〜
図11Bに示されるような本発明によるエラストマーのオーバーモールドの例示的な実装形態はそれぞれ、設計1000および1100を提供し、設計1000および1100はそれぞれ、外側本体から突き出ないまたは面一である特徴部1002および1102を有し、それにより不用意な作動の可能性が低くなる。
【0050】
図12A〜
図12Bおよび
図13A〜
図13Bに示されるような本発明によるエラストマーのオーバーモールドの例示的な実装形態はそれぞれ、設計1200および1300を提供し、設計1200および1300はそれぞれ、ハウジングの主表面から突き出る特徴部1202および1302を有する。そのような例示的な実装形態は、ユーザのための位置の触覚的手掛かりを提供することができ、これは、ユーザがデバイスに対する視線を有しない(たとえば、ユーザが、衣服の下で腹部の皮膚に付着されたパッチポンプ600を着用している)場合に特に有用であり得る。
【0051】
図10A〜
図10B、
図12A〜
図12B、および
図13A〜
図13Bに示されるような本発明によるエラストマーのオーバーモールドの例示的な実装形態の追加の特徴はそれぞれ、ボタンの部分の周りの溝1004、1204、および1304であり、これらはエラストマーの断面を小さくして、ボタンを撓めるのに必要とされる力を低下させる。
【0052】
本発明の例示的な実施形態によれば、
図7A〜
図13Bに示されるようなエラストマーのオーバーモールドの設計は、望ましい力および感触に調整可能な設計のシステムであるという利点を有する。たとえば、より小さい力の組み合わせは、
図10A〜
図10Bのへこまされた矩形と結合された
図9に示されるような大きな切り欠きフレックスアームとなる。
【0053】
ハウジングカバーまたはシェル602またはボタン604、606は、内部(すなわち、ハウジング602の内容に対する)表面領域または内部属性(たとえば、
図17のリブ612などの隆起またはリブ)を有することができ、内部表面領域または内部属性は、ボタン604、606が押下されていないとき、対応するスイッチ704、706とは直接対向し離れて配置され、ボタン604、606が押下されたとき、スイッチ704、706と接触(たとえば物理的接触)をする。ボタン604、606は、ボタン604または606の押圧により、対応する内表面領域または属性が、対応するスイッチ704、706に向かって並進、移動、または他の形式で延びるように、ハウジング700に取り付けられまたはハウジング700と共に形成され得る。
【0054】
たとえば、
図16〜
図24を参照すると、本発明の例示的な実施形態によるエラストマー作動ボタン604、606が、デバイス600(たとえば、パッチポンプなどの薬剤送達デバイス)の外側ハウジングに設けられている。たとえば、外側ハウジングは、608で示す孔または切り欠きを有するプラスチックなどの610で示す剛性材料から形成され得るものであり、孔または切り欠き608によって画定された空間内にエラストマー作動ボタン604、606が2ショット成形されるように構成されている。。ハウジング602、スイッチ704、706、およびエラストマー作動ボタン604、606は、ユーザが作動ボタン604、606を押す、押圧する、または他の形式で作動化すると、各エラストマー作動ボタン604、606の内表面が対応するスイッチ704、706(たとえば、プリント回路板708に取り付けられたまたは隣接する触覚スイッチまたは他のタイプのスイッチ704、706)を押す。押圧されたとき、エラストマー作動ボタン604、606は、対応するスイッチ704、706を直接的または間接的に(たとえば、図示されていない介在部材を介して)押してスイッチを作動化する。
【0055】
たとえば、スイッチ704、706の作動は、デバイス内にスイッチが上または近くに取り付けられるスイッチまたはプリント回路板の電極または他の部分とスイッチの第1の部分とが電気的に接触する結果であることが可能であり、信号出力(たとえば、ボタン作動を示しコントローラ1500によって処理される)を生成し、それによりスイッチ704、706を作動状態から非作動状態に変更する。各エラストマー作動ボタン604、606の内表面に、
図17、
図18および
図22に示されるようにリブ612または他の物理的属性が設けられ得る。しかしながら、ボタン604、606に使用される材料、スイッチ704、706のタイプ、ハウジング602、スイッチ704または706およびボタン604または606のそれぞれ互いに対する配置、ならびに、誤った作動無しにユーザによってスイッチを作動化するために必要とされる圧力の望ましい量および望ましい触覚フィードバックなどの望ましい人間数ファクタによっては、リブ612は必要とされないことがある。
【0056】
デバイス600の様々な構成要素の分解図である
図17に示されるように、外側ハウジング602は、エラストマーボタン604、606を受け入れるように構成された切り欠き608を有し、それらは、組立時にデバイスの内部への進入に対するシールを提供するようにぴったりフィットされる。外側ハウジング602の底面図である
図18に示されるように、エラストマーボタン604、606には、ボタンの作動と非作動を区別するための選択された量または程度の触覚フィードバックをユーザに提供することを容易にするためにリブ612が形成され得る。
図19、20、21、および22に示されるように、作動ボタンが押下されていないまたは他の形式で作動化されていないとき、ボタン604、606の内表面(たとえばリブ612)は、対応するスイッチ704、706と接触せず、したがってスイッチは作動化されない(たとえば、
図22に示されるようにスイッチ704、706が展開されていない位置にあることで表される)。他方で、
図23および
図24に示されるように、作動ボタンが押下されまたは他の形式で作動化されたとき、ボタン604、606の内表面(たとえばリブ612)は、対応するスイッチ704、706と接触し、したがってスイッチは作動化される(たとえば、
図24に示されるようにスイッチ704、706が展開された位置にあることで表され、ここで、各スイッチ704、706の触覚部分がその対応する電気接点に向けて並進される)。
【0057】
本発明の特定の例示的な実施形態が、その特定の好ましい実施形態を参照して本明細書に示され説明されているが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく形態および詳細の様々な変更が行われ得ることは当業者には理解されよう。