特許第6678794号(P6678794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6678794
(24)【登録日】2020年3月19日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】芯出し装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20200330BHJP
【FI】
   G01C15/00 101
   G01C15/00 104Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-67069(P2019-67069)
(22)【出願日】2019年3月29日
【審査請求日】2019年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】514172954
【氏名又は名称】川田テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 篤史
(72)【発明者】
【氏名】山岡 千春
(72)【発明者】
【氏名】川合 徳男
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−196387(JP,A)
【文献】 特開2019−157378(JP,A)
【文献】 米国特許第5461793(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
G01B 5/00
G01B 11/00
E01D 19/04
E01D 22/00
E04G 21/12
E04G 21/18
E04B 1/41
E04C 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に形成された孔の中心位置を示す芯出し装置において、
前記孔内に挿入されるシャフトと、
前記シャフトの周方向に互いに実質上等間隔に離間して前記シャフトの軸線に対し平行に各々延在する3本以上の複数本の当接部材と、
前記複数本の当接部材を前記シャフトの軸線に対する平行を維持しつつ前記シャフトの軸線に対して互いに等距離だけ接近および離間させる当接部材平行移動機構と、
前記孔内に挿入されて、前記孔の中心軸線と一致させた前記シャフトの軸線上を通る中心位置表示光を前記孔の外部へ向けて照射する中心位置表示光照射装置と、
を具えてなる芯出し装置。
【請求項2】
前記中心位置表示光はレーザー光であることを特徴とする請求項1記載の芯出し装置。
【請求項3】
前記当接部材平行移動機構はパラレルリンク機構であることを特徴とする請求項1または2記載の芯出し装置。
【請求項4】
前記当接部材平行移動機構はカム機構であることを特徴とする請求項1または2記載の芯出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に形成された孔の中心位置を示す芯出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリートの壁面に、あと施工によって各種部材を設置する場合、アンカーボルトが用いられている。この設置の際、まずコンクリート壁面にドリル等でアンカー孔を穿孔し、このアンカー孔にアンカーボルトを挿入して、先端の拡張部を開かせる、または接着剤を充填することで固定するようになっている。このアンカー孔が設計通りの位置に穿孔できているかを測定するには、半透明の型板フィルムを基準墨に合わせて固定し、孔位置を透かしてフィルムに転写する方法がとられる。また、重複した孔位置の場合には、正規の孔に穿孔した孔内径と同等外径の管を差し込み、上記と同様に、孔位置として、差し込んだ管の形状を転写する。そして、写し取った孔形状や管形状から、孔中心位置を基準位置から計測する方法がとられている。
【0003】
特許文献1には、アンカー孔の深さと形状を簡単に計測できる穿孔計測器具として、アンカー孔に挿入され、アンカー孔の深さを計測する所定長さのゲージと、ゲージを移動自在に保持する中空の保持部と、保持部に設けられ、アンカー孔に挿入された状態でアンカー孔の幅方向に突出する複数の位置決め部材と、を備えるものが開示されている。
【0004】
また、非特許文献1(特願2018−041369未公開)には、(1)三本の腕の基端部を揺動可能にシャフトに支持し、それらの腕の中間部をシャフト上のスプリングでリンク部材を介して同時に押し広げて三本の腕の先端部を拡径し、(2)三本の腕を広げる位置はシャフト上の複数個所であり、それらの箇所で順次に三本の腕の先端部を縮径して孔に挿入し、(3)三本の腕を広げる位置をシャフト上の複数個所とすることで、シャフトを孔中心に沿わせて配置し、(4)シャフトの手前端部にはシャフトと直角の表示面を持つターゲット板が固定され、ターゲット板にはシャフトの中心位置を示すクロスマークが表示されており、(5)ターゲット板に表示されているクロスマークをデジタルカメラで撮影する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−168660号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】新技術情報登録システム 登録番号QS−180029−A「アンカー削孔中心表示冶具」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
型板フィルムに孔位置を転写する方法では、孔中心位置を直接測定するものではなく、孔中心位置を精確には測定できないという問題がある。また、重複した孔の場合に、孔内径と同等の外径の管を用意するのは不便である。また、特許文献1に記載の計測器具は、個々の孔形状を測定するものであって、基準線に対する孔位置の計測には適していないという問題がある。また、非特許文献1に記載の技術は、型板フィルムを使用しない代わりに、高解像度のデジタルカメラと3次元のモデル処理を必要とする。また、ターゲットが孔から外に突き出しており、撮影角度によっては、正確な孔中心位置を反映しないおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、対象物に形成された孔内に挿入して孔の中心位置を簡便に、かつ、精確に測定できる芯出し装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは鋭意検討の結果、孔内に挿入した装置を孔の中心軸線に平行に設置し、当該装置から孔の中心軸線上を通る光を照射することで孔中心位置が簡便に確認できることを見出し、本発明を開発した。
【0010】
上記課題を有利に解決する本発明の芯出し装置は、対象物に形成された孔の中心位置を示す芯出し装置において、前記孔内に挿入されるシャフトと、前記シャフトの周方向に互いに実質上等間隔に離間して前記シャフトの軸線に対し平行に各々延在する3本以上の複数本の当接部材と、前記複数本の当接部材を前記シャフトの軸線に対する平行を維持しつつ前記シャフトの軸線に対して互いに等距離だけ接近および離間させる当接部材平行移動機構と、前記シャフトの軸線上を通る中心位置表示光を前記孔の外部へ向けて照射する中心位置表示光照射装置と、を具えてなることを特徴としている。
【0011】
なお、本発明の芯出し装置は、
(a)前記中心位置表示光がレーザー光であること、
(b)前記当接部材平行移動機構がパラレルリンク機構であること、
(c)前記当接部材平行移動機構がカム機構であること、
が好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の芯出し装置によれば、当接部材平行移動機構を用いることにより、孔内に挿入した装置から、孔の中心軸線上を通る中心位置表示光を孔の入口面にあてた半透明の型板フィルムに投影して、孔中心位置を簡便に特定できる。
【0013】
本発明の芯出し装置は、対象物に形成された孔、例えば橋梁補修の落橋防止工や支承工におけるコンクリートに穿孔されたアンカー孔の中心位置を示す芯出し装置に係り、孔の内部に挿入されるシャフトと、そのシャフトの周方向に互いに実質的に等間隔に離間してシャフトの軸線に対し平行に各々延在する3本以上の複数本の当接部材とし、その複数本の当接部材をシャフトの軸線に対する平行を維持しつつシャフトの軸線に対し互いに等距離だけ接近および離間させる当接部材平行移動機構と、を有しているので、この当接部材平行移動機構により、対象物の孔内に本発明に係る芯出し装置を装入後、シャフトの軸、かつ、孔の中心軸線に平行に当接部材を拡開し、少なくとも3本の当接部材が孔の内壁に接触するようにすることで、シャフトの軸線と孔の中心軸線が同一線上に重なるようにすることができる。
【0014】
本発明の芯出し装置は、シャフトの軸線上を通る中心位置表示光を孔の外部へ向けて照射する中心位置表示光照射装置を備えているので、例えば、芯出し装置を対象物の孔に挿入し、上記のように当接部材を孔の内壁面に当接させて、シャフトの軸線と孔の中心軸線を同一線上に揃えた後、中心位置表示光照射装置から中心位置表示光を孔の外部に向けて照射し、孔の入口に当接させた半透明の調査紙に投影された光点を孔中心位置として、写し取ることができる。
【0015】
しかも、本発明の芯出し装置によれば、レーザー光を利用することにより、レーザー光が直進性や収束性に優れていることから、ピンポイントでかつ高輝度の光点を孔中心位置として、精確に半透明の調査紙に投影することができる。
【0016】
また、当接部材平行移動機構にパラレルリンク機構やカム機構を利用することで簡便に孔中心位置を特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るパラレルリンク機構を利用した芯出し装置の上面図であり、(a)は、定着部が平行に拡開された状態、そして(b)は、定着部を閉じた状態を示す。
図2】上記実施形態に係るパラレルリンク機構を利用した芯出し装置の使用状態を示す斜視図である。
図3】本発明の他の一実施形態に係るカム機構を利用した芯出し装置を示し、(a)は、上面図であり、(b)は、正面図である。
図4】上記実施形態に係るカム機構を利用した芯出し装置のA−A’視の断面図であり、(a)は、テーパーナットねじ込み前の状態、そして(b)は、テーパーナットねじ込み後の状態を示す。
図5】上記実施形態に係るカム機構を利用した芯出し装置の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、本発明の一実施形態に係るパラレルリンク機構を用いた芯出し装置1の上面図を示し、(a)は、定着部22が平行に拡開された状態、そして、(b)は、定着部22を閉じた状態を示す。この芯出し装置1は、シャフト21と、パラレルリンク機構による芯出し部2(当接部材平行移動機構)と、中心位置表示光照射装置としてのレーザー部3と、を備える。芯出し部2は、平行リンク24によってシャフト21と平行に開閉できるように連結された3セットの定着部22(当接部材)と、シャフト21に換装された環状のスリーブ23と、シャフト21およびスリーブ23の間に組み込まれたコイルスプリング25と、スリーブ23と平行リンク24をつなぐ連結リンク26を有する。スリーブ23は、シャフト21の軸線方向に摺動可能にシャフト21に貫装している。
【0019】
この芯出し装置1をレーザー部3側からアンカー孔に挿入する場合には、定着部22が連結リンク26を握り込むように閉じて、スリーブ23をシャフト21上でレーザー部3側にひきつけて、コイルスプリング25を圧縮し、アンカー孔に押し込む。アンカー孔に芯出し装置1が十分に挿入できたら、コイルスプリング25の付勢力でスリーブ23を孔の外側に向かって押し出させる。スリーブ23の移動に伴い、連結リンク26によって平行リンク24を3カ所とも均等に引っ張り、定着部22を開く。定着部22は、シャフト21の軸線に対し、平行に、かつ、軸対称に配置するのが好ましい。孔内で定着部22を安定に孔壁に当接させるために、定着部22を3以上有することが必要である。シャフト21の端部には、ストッパー21aを設置し、スリーブ23の抜け落ちを防止している。なお、この芯出し装置1をアンカー孔に挿入する際に、ストッパー21aとスリーブ23との間に挟装するスペーサーを用いることもできる。また、この芯出し装置1をアンカー孔に挿入する際、ロック機構によりスリーブ23をシャフトに係止してもよい。それらの場合には、アンカー孔に芯出し装置1が十分に挿入できたら、スペーサーを外したり、ロック機構を解除したりして、コイルスプリングの付勢力によりスリーブ23を移動させることができる。
【0020】
この芯出し装置1の定着部22をアンカー孔内に固定し、シャフトの軸線と孔の中心軸線を一致させたのち、図2に示すように、レーザー部3から、孔外に向かって中心位置表示光としてのレーザー光Lを照射する。そして、孔の入口に当接させた半透明の調査紙(図示しない)に投影されたレーザー光Lの光点を、孔中心位置としてその調査紙に写し取ることができる。
【0021】
図1の例では、コイルスプリング25により、スリーブ23に押圧の付勢力を付与したが、引張の付勢力でもよい。また、連結リンク26を引っ張ることによって、平行リンク24が開くほか、連結リンク26を押すことによって平行リンク24が開く構成としてもよい。
【0022】
図3(a)および(b)は、本発明の他の一実施形態として、カム機構を利用した芯出し装置1の上面図および正面図を示す。この芯出し装置1は、センターシャフト41と、センターシャフト41の周りに構成された芯出し部4(当接部材平行移動機構)と、中心位置表示光照射装置としてのレーザー部3と、を備えてなる。芯出し部4は、2本のガータースプリング45で緊締されている。
【0023】
図4は、カム機構を利用した芯出し装置1の芯出し部4の図3(a)中のA−A’視の断面図であり、(a)は、テーパーナット44のねじ込み前の状態、そして(b)は、テーパーナット44のねじ込み後の状態を示す。この実施形態の芯出し装置1では、センターシャフト41におねじが切られるとともに、テーパーナット44にめねじが切られており、テーパーナット44にセンターシャフト41が螺合している。また、センターシャフト41の、レーザー部3側に対して反対側の端部には、止め部41aとともにつまみ46が一体に形成されている。テーパーナット44はセンターシャフト41上のレーザー部3側に配置されている。テーパースリーブ43はテーパーナット44に対向して、センターシャフト41上のつまみ46側に、センターシャフト41に対し軸回転可能に配置されている。図4に示す例では、当接部材としてのスライダーブロック42は、センターシャフト41の軸線に対し、周方向に均等に3分割され、テーパースリーブ43とテーパーナット44に挟まれて、ガータースプリング45によって緊締されている。
【0024】
テーパースリーブ43とテーパーナット44は、各々スライダーブロック42と摺動する傾斜面に案内溝43a、44aを有し、スライダーブロック42はそれらの案内溝43a、44aに掛合して、テーパースリーブ43およびテーパーナット44に対する回り止めをされている。また、テーパースリーブ43の傾斜面に対向する面、または、外周面に溝部を設けて、把持または掛止できるようにして、回転止めとしてもよい。
【0025】
この芯出し装置1をレーザー部3側からアンカー孔に挿入する場合には、図4(a)に示すようにテーパーナット44をテーパースリーブ43から最も離して配置し、スライダーブロック42がセンターシャフト41に近接するようにする。十分にアンカー孔に芯出し装置1が挿入できたら、テーパースリーブ43を把持または掛止して固定したうえで、センターシャフト41のつまみ46を回して、テーパーナット44をテーパースリーブ43側に引き付ける。図4(b)に示すようにスライダーブロック42は、ガータースプリング45によって、3分割の形状を安定に保持しながら、センターシャフト41の軸線に平行にかつ均等に広がり、孔の内壁に当接することができる。
【0026】
この芯出し装置1をアンカー孔内に固定して、センターシャフト41の軸線と孔の中心軸線を一致させたのち、図5に示すように、レーザー部3から、孔外に向かってを中心位置表示光としてのレーザー光Lを照射する。そして、孔の入口に当接させた半透明の調査紙(図示しない)に投影されたレーザー光Lの光点を、孔中心位置としてその調査紙に写し取ることができる。
【0027】
なお、図4に示す例とは逆にテーパーナット44とテーパースリーブ43の位置を入れ替え、テーパーナット44をレーザー部3側に向かって移動するようにしたり、テーパースリーブ43およびテーパーナット44のいずれにもめねじを切り、一方を逆ねじとして、両者がセンターシャフト41の中央部に移動するようにしたりしてもよい。
【0028】
レーザー部3のレーザー発振器は、適度の強度のレーザー光を出力するレーザーポインターが好適に用いられる。また、無線信号で電源を入り切りできるようにすることが好ましい。
【0029】
孔中心位置の測定は、半透明の調査紙に照射された光点を写し取るほか、調査紙に描かれた基準線と調査紙に照射された光点とを写真撮影したり、画像解析などしたりして、孔中心位置を特定し、設計に反映することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明に係る芯出し装置によれば、簡便に、かつ、精確に孔中心位置を測定することができ、特に、コンクリートアンカー等のアンカー孔等の各種孔をドリル等で穿孔する際の孔中心位置の計測に適している。
【符号の説明】
【0031】
1 芯出し装置
2 芯出し部:パラレルリンク機構
21 シャフト
21a ストッパー
22 定着部
23 スリーブ
24 平行リンク
25 コイルスプリング
26 連結リンク
3 レーザー部
4 芯出し部:カム機構
41 センターシャフト
41a 止め部
42 スライダーブロック
43 テーパースリーブ
43a 案内溝
44 テーパーナット
44a 案内溝
45 ガータースプリング
46 つまみ
L レーザー光
【要約】      (修正有)
【課題】対象物に形成された孔内に挿入して孔の中心位置を簡便にかつ精確に測定できる芯出し装置を提供する。
【解決手段】対象物に形成された孔の中心位置を示す芯出し装置1において、孔内に挿入されるシャフト3と、シャフトの周方向に互いに実質上等間隔に離間してシャフトの軸線に対し平行に各々延在する3本以上の複数本の当接部材22と、複数本の当接部材をシャフトの軸線に対する平行を維持しつつシャフトの軸線に対して互いに等距離だけ接近および離間させる当接部材平行移動機構24〜26と、シャフトの軸線上を通る中心位置表示光Lを孔の外部へ向けて照射する中心位置表示光照射装置と、を具えてなる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5