(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6678815
(24)【登録日】2020年3月19日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】導電性ノズルを絶縁して支持するための絶縁部品およびその絶縁部品を検出するためのセンサアセンブリを備えるレーザー加工ヘッド
(51)【国際特許分類】
B23K 26/04 20140101AFI20200330BHJP
【FI】
B23K26/04
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-509480(P2019-509480)
(86)(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公表番号】特表2019-524453(P2019-524453A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2017069227
(87)【国際公開番号】WO2018033372
(87)【国際公開日】20180222
【審査請求日】2019年4月17日
(31)【優先権主張番号】102016115415.6
(32)【優先日】2016年8月19日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516234100
【氏名又は名称】プレシテック ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュペール ゲオルグ
【審査官】
奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−540055(JP,A)
【文献】
特開平06−170573(JP,A)
【文献】
特開平07−171743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ノズル(17)をレーザー加工ヘッド(10)において絶縁して支持するための絶縁部品(18)であって、
前記絶縁部品(18)は、
加工レーザービーム路(11)のための中央貫通開口部(20)を有するリング状の電気絶縁体(25)と、
前記絶縁部品(18)を前記レーザー加工ヘッド(10)において支持するために設置された第1の手段と、
導電性ノズル(17)を支持するために設置された第2の手段と、を有し、
前記絶縁部品(18)は、前記レーザー加工ヘッド(10)が備えるセンサにより検出可能に設けられた強磁性体(26)を有する、
絶縁部品。
【請求項2】
前記電気絶縁体(25)は、内部に前記強磁性体(26)が埋め込まれたセラミック体である、請求項1に記載の絶縁部品。
【請求項3】
導電性ノズル(17)をレーザー加工ヘッド(10)において絶縁して支持するための絶縁部品(18’)であって、
前記絶縁部品(18’)は、リング状の強磁性体(36)を有し、
前記強磁性体(36)は、
加工レーザービーム路(11)のための中央貫通開口部(20)と、
前記絶縁部品(18’)を前記レーザー加工ヘッド(10)において支持するために設置された第1の手段と、
導電性ノズル(17)を支持するために設置された第2の手段と、を有し、
前記強磁性体(36)は、電気絶縁プラスチック(37)に埋め込まれている、
絶縁部品。
【請求項4】
前記強磁性体(26,36)は、絶縁部品が取り付けられたレーザー加工ヘッドを過熱から保護することができる程度の低キュリー温度を有する合金からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁部品。
【請求項5】
前記低キュリー温度を有する合金は、ニッケル/コバルト/鉄(NiCoFe)系合金である、請求項4に記載の絶縁部品。
【請求項6】
ハウジング(10)を備えるレーザー加工ヘッドであって、
加工レーザービーム経路(11)が、前記ハウジング(10)を通って導かれており、
前記加工レーザービーム経路(11)が、導電性ノズル(17)を通って加工側に出ており、
前記導電性ノズル(17)が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁部品(18,18’)上に支持されており、
前記絶縁部品(18,18’)が、前記ハウジング(10)上に支持されており、
前記導電性ノズル(17)が、静電容量式距離測定のために距離測定回路(22)の発振回路(24)に電気的に接続されており、
前記絶縁部品(18,18’)の強磁性体(26,36)を検出するためのセンサ(27)が、前記ハウジング(10)に設けられており、
前記センサ(27)が、当該センサにより前記強磁性体(26,36)が検出されなかったときに警告信号を出力する監視回路(29)に接続されている、
レーザー加工ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ノズル、特に切断ノズルチップを、レーザー加工ヘッドにおいて絶縁して支持するための絶縁部品、および当該絶縁部品を備えるレーザー加工ヘッド、特に一体型の静電容量式距離調整機能を有するレーザー加工ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー加工に応じて最適な加工品質および最高の加工速度に達することを可能にするためには、ワークピースとレーザー加工ヘッドとの間の距離、特に切断ノズルとワークピースとの間の距離を一定に保つことが必要であるが、これは、ほんのわずかな偏差でさえ加工品質を低下させるからである。目標距離からの偏差は、バリの形成につながるか、または、特にレーザー切断に応じて、切断速度、切断面の粗さ深度、およびギャップ幅に悪影響を及ぼす。したがって、レーザー加工ヘッド、特にレーザー切断ヘッドは、ワークピースと切断ノズルとの間の距離を静電容量で測定するための静電容量式距離測定システムを備える。この距離測定システムはセンサ電極として導電性切断ノズルチップを有し、このノズルチップはワークピースと共に、発振回路に組み込まれた測定コンデンサを形成する。導電性切断ノズルチップをレーザー加工ヘッドのノズル本体に締結するためには、導電性ノズルチップを支持するのに役立つだけでなくノズル本体およびハウジングに対するノズルチップの電気絶縁のためにも役立つ部品が、頻繁に使用される。
【0003】
既知の設計の絶縁部品は、セラミック材料、絶縁被覆を備えるまたはプラスチックリングによる絶縁体を備えるアルミニウムで作製されることが多い。
【0004】
ユーザがこの絶縁部品を挿入するのを忘れて距離調整を開始すると、ノズルチップが、ワークピースと同様に接地され、ノズルチップとワークピースとの間にコンデンサを形成することができないので、レーザー加工ヘッドが移動してワークピースに接触して衝突する。
【0005】
ノズルアセンブリの内部静電容量を監視することによって、絶縁部品がなくなったときに検出することができる方法が、独国特許第10121655(C1)号から公知である。レーザー加工ヘッドとワークピースとの衝突は、対応する信号処理によって防止することができる。しかしながら、この方法では、ノズル支持体は、導電性ノズルチップと共に内部静電容量を形成するので絶縁体の有無について監視可能であることが必要である。
【0006】
アクティブシールドの原理に従って機能する距離調整用の静電容量測定装置の場合、内部静電容量は、この測定方法によって除去されるため、監視には使用されない。
【0007】
センサ電極とワークピースとの間の距離を静電容量で測定するための方法が、独国特許出願公開第19906442(A1)号から公知である。この方法の場合、センサ電極への測定線がアクティブシールドされ、ここでは、測定線を介して引き込まれた測定電圧が、インピーダンス変換器を介して測定線のシールドに印加される。測定静電容量に一致する内部静電容量または寄生容量は、このようにして大幅に低減することができる。しかし、内部静電容量または寄生容量を絶縁部品の有無を監視するために利用することもできない。
【0008】
導電性ノズルチップを介して互いに接続される2本の線を絶縁部品内に設けることが、独国特許第4201640(C1)号から公知である。この接続の中断を評価して、絶縁部品があるかないかまたはセンサ要素がないかを判断することができる。しかしながら、この解決策は機械的に非常に複雑であり、したがって摩耗部品にとって不相応に高いコストを生じる。
【0009】
欧州特許第1977193(B1)号から、導電性ノズルをレーザー加工ヘッドにおいて絶縁支持するためのツーピース構造からなる絶縁体が、電気絶縁のための絶縁部分と、放射および/または熱に対する遮蔽のための遮蔽部分とからなること、またこの絶縁体が加工レーザービームのための中央貫通開口部を有することが公知である。この絶縁体のツーピースの実施形態は、製造の点でより単純で、したがって安価なレーザー加工ヘッド用絶縁体を提供することを可能にする。遮蔽部分は、ワークピースから反射されて戻ってくるレーザー放射の遮蔽に役立つものであり、耐熱性の非導電性材料からなる。
【0010】
欧州特許出願公開第2444183(A1)号には、導電性ノズルを支持するためのレーザー加工ヘッドの絶縁部について記載されている。この絶縁部は、外側絶縁部品と内側絶縁部品とを含み、これらは互いに同軸に配置され、加工レーザービームのための中央貫通開口部を有する。絶縁部内のコンタクトピンと導電性ノズルとの間に一種の金属界面を形成するセンサ部品の収容部が、外側絶縁部品の貫通開口部内に設けられている。内側絶縁部品は、単純な金属スリーブとして具現化することができ、真鍮、アルミニウム、銅またはステンレス鋼で構成することができる。この絶縁部は、第1の絶縁部品を用いて電気的絶縁を提供することを可能にし、第2の絶縁部品を用いて第1の絶縁部品を加工レーザービームからの熱衝撃から遮蔽することを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、ノズルチップをレーザー加工ヘッドにおいて支持するための絶縁部品を提供するという目的に基づく。この絶縁部品の製造は安価であり、またレーザー加工ヘッドにおけるこの絶縁部品の有無をユーザの使い勝手の良い方法で監視することができる。本発明はさらに、絶縁部品の有無をユーザに使い勝手の良い方法で監視するのに適したレーザー加工ヘッドを作成するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、それぞれ、請求項1に記載の絶縁部品、または請求項6に記載のレーザー加工ヘッドによって解決される。
【0013】
本発明によれば、導電性ノズルをレーザー加工ヘッドのハウジングにおいてハウジングに対して絶縁して支持する絶縁部品は、強磁性材料片を含み、この強磁性材料片の存在はセンサによって検出することができる。この絶縁部品の実施形態は、絶縁部品の安価な製造だけでなく、ユーザに使い勝手の良い方法での絶縁部品の有無の監視もまたもたらすので、誤った距離調整によるレーザー加工ヘッドへの損傷の危険性を確実に排除することができる。
【0014】
本発明の都合の良い実施形態の場合、電気絶縁体は、内部に強磁性体が埋め込まれたセラミック体であるものとする。この絶縁部品の実施形態によれば、強磁性体を埋め込むこと以外は、通常の絶縁部品の場合と同様に製造を行うことができるので、絶縁部品は特に安価に製造することができる。
【0015】
本発明の別の実施形態では、絶縁部品は、プラスチック製の電気絶縁被覆物内に埋め込まれたリング状の強磁性体を含むものとする。
【0016】
鉄などの強磁性材料を使用する代わりに、例えば、本発明のさらなる展開によれば、低いキュリー温度を有する合金、具体的には、ニッケル/コバルト/鉄系合金を使用することもできる。当該キュリー温度より低い温度の場合、絶縁部品の存在をこうした強磁性体によって検出することができる。レーザー加工ヘッドの温度、ひいては強磁性体の温度がそのキュリー温度を超えて上昇すると、強磁性体はもはやセンサによって感知することができず、センサは対応する警告信号をマシンコントローラに出力する。したがって、導電性ノズルの絶縁体の存在を簡単な方法で監視することができるだけでなく、レーザー加工ヘッドを過熱から保護することもできる。
【0017】
本発明の都合の良い実施形態は、絶縁部品の強磁性体を検出するためのセンサがレーザー加工ヘッドのハウジングに設けられていること、距離測定回路の導電性ノズルが本発明による絶縁部品によってこのレーザー加工ヘッドにおいて支持されていること、このセンサが、絶縁部品がないときに警告信号を出力する監視回路に接続されていることを特徴とする。
【0018】
本発明は、例えば、図面を用いて以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】レーザー加工ヘッドの簡単な概略断面図である。
【
図2】レーザー加工ヘッドのさらなる絶縁部品の簡単な概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面の別々の図において、互いに対応する構成要素には同一の参照番号を付す。
【0021】
図1に示すように、レーザー加工ヘッドはハウジング10を有し、加工レーザービーム路11がこのハウジング10を通って導かれており、加工レーザービーム14をワークピース15に集束させるためのレンズアセンブリ12がこの加工レーザービーム路11内に設けられている。絶縁部品18によってノズル本体16に対して電気的に絶縁された電気絶縁ノズル17が設けられているノズルヘッド16が、ハウジング10の加工側端部に取り付けられている。絶縁部品18は、例えば、キャップナット19によってノズル本体16に締結されている。
図2に特によく分かるように、絶縁部品18,18’は、その加工側端部に雌ねじ20’が設けられた中央貫通開口部20を有し、対応する相手ねじ21を用いて導電性ノズル17にねじ込まれている。
【0022】
例えば銅からなる導電性ノズル17は、破線23で概略的に示唆されているように、静電容量式距離測定回路22の発振回路24に電気的に接続されている。導電性ノズル17は、ワークピース15と共に、静電容量式距離測定回路22の発振回路24に一体化されたコンデンサを形成し、このコンデンサの静電容量は、レーザー加工ヘッドとワークピース15との間の距離、ひいては導電性ノズル17とワークピース15との間の距離と共に変化する。静電容量式距離測定は当業者には知られており、例えば上述の先行技術刊行物に記載されている。したがって、距離測定をより詳細に説明する必要はない。
【0023】
本発明の第1の例示的な実施形態によれば、絶縁部品18は、内部に強磁性体26が埋め込まれているリング状セラミック体25を有する。強磁性体26を検出するためのセンサ27が、強磁性体26に対向する位置でノズル本体16内に配置されている。センサ27は線28を介して監視回路29に接続されており、監視回路29は、絶縁部品18がないときに、警告信号をマシンコントローラ(図示せず)に出力して、距離調整を阻止する。
【0024】
代替例において、絶縁部品18’は、基本的にリング状セラミック体25の形状を有する、プラスチック被覆物または被覆材料37内に埋め込まれた強磁性体36を有することもできる。絶縁被覆物の代わりに、詳細には示されていないが、プラスチックリングを、レーザー加工ヘッドのノズル本体16およびハウジング10に対する導電性ノズル17の必要な絶縁を実現するように設けることもできる。
【0025】
鉄などの強磁性材料の代わりに、例えば、低キュリー温度を有する合金、具体的には、ニッケル/コバルト/鉄(NiCoFe)系合金を設けることもできる。キュリー温度未満では強磁性であるがキュリー温度を超えると強磁性特性を失うさらなる金属添加物および非金属添加物を有するこうしたNiCoFe系合金は、先行技術において知られている。この特性により、キュリー温度を超えると強磁性体26,36を検出することができなくなり、監視回路29が対応する警告信号をマシンコントローラに出力し、マシンコントローラがその後ワークピースの進行中の加工を中断するので、適合するキュリー温度を有する適切に選択された合金を用いてレーザー加工ヘッドを過熱から保護することができる。
【0026】
本発明によれば、導電性ノズル17とノズル本体16との間、または導電性ノズル17とハウジング10との間の絶縁部18の有無は、絶縁部品に埋め込まれた強磁性体26,36を検出することによって簡単な方法で監視することができ、静電容量式距離測定の不具合によるレーザー加工ヘッドとワークピースとの間の衝突を確実に排除することができる。