(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6678818
(24)【登録日】2020年3月19日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】圧着要素を有するケーシングを備える電気装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20200330BHJP
H05K 7/14 20060101ALI20200330BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20200330BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20200330BHJP
H01L 23/40 20060101ALI20200330BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20200330BHJP
H05K 7/10 20060101ALN20200330BHJP
【FI】
H05K7/20 B
H05K7/14 C
H05K5/02 V
H02K11/33
H01L23/40 Z
H05K5/03 A
!H05K7/10 D
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-511904(P2019-511904)
(86)(22)【出願日】2017年7月13日
(65)【公表番号】特表2019-533301(P2019-533301A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(86)【国際出願番号】EP2017067676
(87)【国際公開番号】WO2018041457
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2019年4月10日
(31)【優先権主張番号】102016216672.7
(32)【優先日】2016年9月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ファルケンブルガー,アンドレアス
【審査官】
五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−229092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/40
H02K 11/33
H05K 5/02
H05K 5/03
H05K 7/14
H05K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(2)、少なくとも1つのプリント配線板(5,6)、およびヒートシンク(17)を備える電気装置(1)であって、ケーシング(2)が中空スペース(4)を包囲し、プリント配線板(5,6)が中空スペース(4)に収容されており、プリント配線板(5)がヒートシンク(17)に熱伝導可能に結合されている電気装置(1)において、
前記ケーシング(2)がケーシングカバー(3)を備え該ケーシングカバー(3)が、ケーシングカバー(3)の平坦な延在方向に対して横方向に、縦軸線(51,52,53,56)に沿ってスライド可能に支承された少なくとも1つ、2つ、または3つの圧着ボルト(14,15,35)または圧着ピンを備え、該圧着ボルトまたは圧着ピンが中空スペース(4)に押し込まれ、少なくとも間接的または直接的に前記プリント配線板(5)を圧着し、これにより、プリント配線板(5)を前記ヒートシンク(17)に押し付けるように構成されていることを特徴とする電気装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(1)において、
前記ケーシングカバー(3)に前記圧着ボルト(14,15)のための滑り軸受(21,22)が形成されている装置(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置(1)において、
前記圧着ボルト(14,15)および前記ケーシングカバー(3)が、それぞれ互いに異なるプラスチックにより形成されている装置(1)。
【請求項4】
請求項1に記載の装置(1)において、
前記ケーシングカバー(3)が、圧着ボルト(35)の範囲に形成され、圧着ボルト(35)を包囲し、ケーシングカバー(37)に結合される弾性的に形成されたリップ(39)または膜を備え、これにより圧着ボルト(35)がケーシングカバー(37)内にはめ込まれ、軸線方向にスライド可能に支承されている装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置(1)において、
リップ(39)が圧着ボルト(35)およびケーシングカバー(37)に、材料に基づいた結合により結合されている装置(1)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置(1)において、
前記プリント配線板(5)が熱伝導手段(9)、特に熱伝導可能な接着剤によってヒートシンクに結合されている装置(1)。
【請求項7】
ヒートシンク(17)にプリント配線板(5)を圧着する方法において、
プリント配線板(5)をケーシング(2)の中空スペース(4)に挿入し、
該中空スペースでプリント配線板(5)が平坦な面によってヒートシンク(17)に向かい合っており、該ヒートシンクがケーシング(2)のケーシング底部の少なくとも一部を形成し、
ケーシングカバー(3)によってケーシング(2)を閉じ、
ケーシングカバー(3)内に軸線方向にスライド可能に支承された少なくとも1つまたは複数の圧着ボルト(14,15,35)の、外側に突出した端部に外側から押圧力(19,20)を加え、これにより前記圧着ボルト(14,15,35)を中空スペース(4)内に押し込み、圧着ボルト(14,15,35)が前記中空スペース内でプリント配線板(5)をヒートシンク(17)に押し付ける方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
圧着される場合に前記プリント配線板(5)を前記ヒートシンク(17)に熱伝導可能に結合する方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の方法において、
前記圧着ボルト(14,15)がケーシングカバーに押し込まれた後にケーシングカバーと同一平面上に並ぶ方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法において、
前記圧着ボルト(14,15)が、中空スペースに押し込まれる場合にケーシングカバーの破断部内を滑動する方法。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法において、
前記圧着ボルト(14,15)の圧入時に前記ケーシング(2)を前記ヒートシンク(17)と共に、ケーシング部分(18)を形成するスリーブ、特にモータスリーブに圧入する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気装置は、ケーシング、少なくとも1つのプリント配線板、および少なくとも1つのヒートシンクを備える。ケーシングは中空スペースを包囲し、プリント配線板は中空スペースに収容されている。好ましくは、プリント配線板はヒートシンクに熱伝導可能に結合されている。
【発明の概要】
【0003】
本発明によれば、ケーシングはケーシングカバーを備え、ケーシングカバーは、ケーシングカバーの平坦な延在方向に対して横方向に、縦軸線方向にスライド可能に支承された少なくとも1つまたは複数の、例えば2つ、3つ、またはさらに多くの圧着要素、特に圧着ボルトまたは圧着ピンを備える。圧着要素は、中空スペースに押し込まれ、少なくとも間接的または直接的にプリント配線板を圧着し、これにより、プリント配線板をヒートシンクに押し付けるように構成されている。圧着要素によって、好ましくは中空スペース内におけるプリント配線板の配置の許容差を補正することができる。例えばケーシングカバーに一体成形されており、したがって固定した縦方向寸法を有する圧着ボルトと比較して、加圧工具を用いて、長さが可変の圧着要素によりプリント配線板に力を加えることができる。例えば、ケーシングはプリント配線板およびヒートシンクと共に別のケーシング部分、例えば電動モータのケーシングに圧入することができる。これにより、別のケーシング部分にケーシングを押し付ける場合に、好ましくはケーシングカバーには負荷が加えられない。
【0004】
好ましくは、圧着要素、例えば圧着ボルトまたは圧着ピンは、中空スペースに押し込まれたスライド位置に保持される場合には、プリント配線板を保持するための固定手段を形成することができる。
【0005】
好ましくは、圧着ボルトは横断面図では丸い形状、特に円形または楕円形である。これにより、圧着ボルトはケーシングカバーと共に容易に作製することができ、ケーシングカバーに対する良好なシールを達成することができる。別の実施形態では、圧着ボルトは横断面図では四角形であり、例えば三角形、四角形、五画形、または六角形であってもよい。これにより、圧着ボルトの良好な縦軸線方向の剛性が得られる。
【0006】
好ましくは、圧着ボルトの縦方向部分はケーシングカバーから突出している端部の一部を形成しており、信号色を備える。信号色は、例えば赤色、黄色、またはオレンジ色である。これにより、圧着ボルトがケーシング内に押し込まれており、ケーシングカバーの正確な組立てが行われているかどうかを人間の眼または検出装置によって外側から良好に検出することができる。
【0007】
好ましい実施形態では、圧着ボルトは、プリント配線板ではなく、ケーシングのケーシング底部を直接に加圧するように構成されている。プリント配線板は、例えば圧着ボルトが貫通係合するための切欠きを備えていてもよい。これにより、ケーシングを別のケーシング部分に押し付ける場合に、好ましくはケーシングのケーシング底部のみに荷重が加えられる。
【0008】
好ましい実施形態では、ケーシングカバーに圧着ボルトのための滑り軸受が形成されている。この実施例では、圧着ボルトは好ましくはケーシングカバーの破断部内で往復するようにスライド可能に支承されている。このようにして、ケーシングカバーは、好ましくは圧着手段である圧着ボルトと共に共通の組立てユニットを形成している。
【0009】
好ましい実施形態では、圧着ボルトおよびケーシングカバーは、それぞれ互いに異なるプラスチックにより形成されている。したがって、ケーシングカバーおよび圧着ボルトは、例えば一緒に1つの射出成形工具、例えばIMA(IMA=in mould Assembly)または型内組立成形によって作製することができる。好ましくは、互いに異なるプラスチックが、射出成型時に互いに分離して保持され、したがって互いに溶融するか、または互いに材料に基づいて結合しないように構成されている。これにより、圧着ボルトは好ましくはケーシングカバーの破断部内で往復するようにスライド可能に支承することができる。好ましくは、圧着ボルトはPOM(POM:ポリオキシ・メチレン)によって形成されており、ケーシングカバーはPBT(PBT:ポリブチレン・テレフタラート)によって形成されている。
【0010】
好ましい実施形態では、圧着ボルトはケーシングカバーよりも大きい弾性係数を有している。したがって、圧着ボルトはケーシングカバーよりも大きい剛性を有している場合もある。例えば、圧着ボルトは管状に形成されている。管状に形成されていることによって、好ましくは圧着ボルトを容易に供給することができる。
【0011】
好ましくは、圧着ボルトおよびケーシングカバーはそれぞれ熱可塑性樹脂によって形成されている。例えば、圧着ボルトはPOM(ポリオキシ・メチレン)、PPS(ポリフェニレン・スルファイド)、またはPMMA(ポリメチル・メタクリレート)により形成されている。ケーシングカバーは、好ましくはABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)、ポリアミド、PBT(ポリブチレン・テレフタラート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)またはポリアルケン、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンにより形成されている。ケーシングカバーは、好ましくは繊維によって強化されたプラスチックにより形成されている。繊維は、例えばガラス繊維またはカーボン繊維である。
【0012】
圧着ボルトは、ケーシングカバーと接続されるように、例えばケーシングカバーの破断部に押し込むことができる。好ましくは、圧着ボルトはケーシングカバー内に形状に基づいて係止するように構成されている。このために圧着ボルトは、ケーシングカバーの破断部の縁部に形状に基づいて係合するように構成された少なくとも1つの係止フックまたはバイオネットフックを備える。
【0013】
別の実施形態では、圧着ボルトは熱硬化性樹脂によって形成されており、ケーシングカバーは熱可塑性樹脂によって形成されている。この場合、例えばケーシングカバーは型内組立成形方法で圧着ボルトの作製後に作製することができる。
【0014】
好ましくは、圧着ボルトの材料の溶融温度はケーシングカバーの材料の溶融温度よりも低い。好ましくは、圧着ボルトはケーシングカバーの作製後に第2射出成形プロセスで、ケーシングカバー内で、例えば(IN MOULD ASSEMBLY)によって作製することができる。これにより、圧着ボルトがケーシングカバーの破断部内で作製される場合に圧着ボルトの容積を縮小することができ、したがって圧着ボルトはケーシングカバー内で縦軸線に沿って滑動することができるように収縮することができる。
【0015】
別の実施形態では、ケーシングカバーは圧着ボルトの範囲に、圧着ボルトを包囲し、ケーシングカバーに結合される弾性的に形成されたリップ、特にばねリップまたは膜を備える。このように、圧着ボルトは好ましくはケーシングカバー内にはめ込まれ、軸線方向に往復するようにスライド可能に支承されている。好ましくは、圧着ボルトは弾性的に形成されたリップに少なくとも付着し、好ましくは材料に基づいて結合されており、リップは破断部、特に破断部の縁部で材料に基づいた結合および/または形状に基づいた結合によってケーシングカバーに結合されている。リップは、例えばケーシングカバーに形状に基づいて結合するために、好ましくは環状に形成された溝を有するシール縁部を備えていてもよい。好ましくは、弾性的に形成されたリップのエラストマ材料は、射出成型時に圧着ボルトおよびケーシングカバーに、材料に基づいた結合によって、特に相互の溶融によって、またはポリマー結合によって結合されるように構成されている。したがって、ケーシングカバーは複数材料‐射出成形方法でリップおよび圧着ボルトと共に互いに異なるプラスチックによって、特にRIM方法(RIM:反応射出成形)によって作製することができる。リップは、例えばシリコーンゴムによって形成されている。
【0016】
好ましい実施形態では、リップは圧着ボルトおよびケーシングカバーに、材料に基づいた結合によって、特に溶融により結合されている。したがって、ケーシングカバーは、好ましくは液状媒体、例えば水またはオイルに対して密閉されて構成されていてもよい。
【0017】
装置の好ましい実施形態では、プリント配線板は熱伝導手段、特に熱伝導可能な接着剤または熱伝導性のペーストによってヒートシンクに結合されている。したがって、好ましくは、例えばプリント配線板に結合されたパワー半導体の、損失熱を生成する電気構成要素からパワー半導体の損失熱を、プリント配線板を通って、または直接に熱伝導手段へ、さらにはヒートシンクへ放出することができる。
【0018】
本発明は、ヒートシンクにプリント配線板を圧着する方法にも関する。この方法では、プリント配線板はケーシングの中空スペースに挿入される。好ましくは、プリント配線板は平坦な面によってヒートシンクに向かい合って配置されている。好ましくは、ヒートシンクはケーシング底部の少なくとも一部またはケーシングのケーシング底部を形成している。
【0019】
さらなるステップで、ケーシングはケーシングカバーに結合される。好ましくは、ケーシングカバーはケーシング、特にケーシングのケーシング縁部に密着して結合されており、接着またはレーザ溶接されている。
【0020】
好ましくは、ケーシングカバー内に軸線方向にスライド可能に支承された少なくとも1つまたは複数の圧着ボルトは、外側に突出した圧着ボルトの端部に外側から押圧力を加えられ、これにより閉じられたケーシングの中空スペース内に押し込まれる。この場合に1つまたは複数の圧着ボルトはプリント配線板をヒートシンクに押し当てることができる。上記組立方法を用いて、軸線方向にスライド可能な圧着ボルトによって、許容寸法、特にプリント配線板とケーシングカバーとの間隔を表す構成寸法を補正することができる。好ましくは、このようにしてケーシングカバーは荷重を加えられることがなく、したがって湾曲させられるか、または損傷されることはない。
【0021】
方法の好ましい実施形態では、プリント配線板が圧着力によって圧着されることによりヒートシンクに熱伝導可能に結合される。これにより、好ましくはプリント配線板をヒートシンクに容易に、しっかりと結合することができる。したがって、好ましくはヒートシンクにプリント配線板を圧着する場合に、異物、例えば汚染粒子または金属浮遊粒または他の汚れ、例えばオイルまたは湿気などの媒体がケーシング内に浸入し、プリント配線板の電気的な機能、特にプリント配線板によって形成された回路装置を損傷することはない。なぜなら、ケーシングは圧着時に閉じられた状態に保持されるからである。ケーシングは、例えば圧力補正開口を備えていてもよく、これにより圧着ボルトが圧入される場合に中空スペース内の空気が逃れることができる。
【0022】
好ましい実施形態では、圧着ボルトはケーシングカバーに押し込まれた後にケーシングカバーと同一平面上に並ぶか、またはケーシングカバー内に沈められている。好ましくは、このようにして組立プロセスが完全および正確に行われたかどうか、特にプリント配線板がヒートシンクに熱伝導可能に結合されたかどうかを外側から容易に検出することができる。
【0023】
方法の好ましい実施形態では、圧着ボルトは中空スペースに押し込まれる場合にケーシングカバーの破断部内を滑動する。圧着ボルトは、好ましくはケーシングカバーの載置前にケーシングカバーに結合されており、これにより、ケーシングカバーと共に組立ユニットを形成している。ケーシングは、好ましくは容易に組み立てることができる。
【0024】
好ましくは、ケーシングカバーは圧着ボルトと共に射出成形方法、特に型内組立成形によって作製される。このようにして、好ましくはケーシングカバーを容易に供給することができる。さらに好ましくは、破断部に圧着ボルトを正確に嵌合させることができ、圧着ボルトの作製時に作製時の収縮に基づいて圧着ボルトとケーシングカバーとの間のギャップ寸法を決定することができる。
【0025】
好ましくは、圧着ボルトはケーシングカバーの射出成形後にケーシングカバーの破断部内で射出成形によって作製することができ、これにより、圧着ボルトは破断部内における冷却および/または硬化時に長さおよび直径を所定の最終寸法に減少、特に縮小することができる。これにより、圧着ボルトを破断部内で移動可能に保持することができる。好ましくはケーシングカバーを作製する工具の工具温度は、圧着ボルトを作製する工具の工具温度に対応している。工具は、例えばそれぞれ特に分離可能に構成された、好ましくは加熱可能に構成された中空型として形成されている。
【0026】
別の実施形態では、圧着ボルトは圧入時にケーシングカバーの破断部にはめ込まれ、はめ込まれる場合に圧着ボルトとケーシングカバーとの間の材料に基づいた結合が保持される。このように、ケーシングカバーは、好ましくは媒体に対して密閉して構成されていてもよい。
【0027】
好ましくは、ケーシングカバーは中空スペースの閉鎖時にケーシング、特にケーシングのケーシング縁部に接着されるか、またはレーザビームによってレーザ溶接される。ケーシングは、好ましくは媒体に対して密閉して、特にオイルまたは水に対して密閉して閉じることができる。
【0028】
好ましい実施形態では、少なくとも1つまたは複数の圧着ボルトの圧入時にケーシングは冷却体と共に別のケーシング部分、特にケーシング部分を形成するスリーブ、例えばモータスリーブに圧入される。このようにして、好ましくは1つの圧入プロセスのみによってプリント配線板をヒートシンク、特に冷却体に熱伝導可能に結合し、圧入プロセスによってケーシングを別のケーシング部分に結合、特に差込み接続することができる。
【0029】
次に図面および他の実施例に基づいて本発明を説明する。他の好ましい実施形態が図面に示した特徴および従属請求項に記載の特徴の組合せから得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】ケーシングおよびケーシングのためのケーシングカバーを有し、ケーシングカバーがプリント配線板またはケーシング底部に圧着するためのスライド可能に支承された2つの圧着ボルトを備える電気装置のための一実施例を示す図である。
【
図2】縦軸線方向にスライド可能に支承された圧着ボルトを有するケーシングカバーのための一実施例を示す断面図である。
【
図3】縦軸線方向に弾性的に、往復するように移動可能に形成された圧着ボルトを有するケーシングカバーのための実施形態を示す図である。
【
図4】ケーシングカバー内に形状に基づいた結合により固定されており、ケーシングカバー内で縦軸線方向にスライド可能な圧着要素を有するケーシングカバーのための一実施例を示す図である。
【
図5】電気装置を作製する方法においてスライド可能に支承された圧着ボルトによってケーシングが別のケーシング部分に圧入され、この場合にケーシングの内部に配置されたプリント配線板がヒートシンクに押し付けられる方法の一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、電気装置1のための一実施例を断面図で概略的に示す。この電気装置1は、例えば電気機械、特に電動機および/または発電機を形成している。電気装置1はケーシング2を備え、ケーシング2はケーシングカバー3を備え、ケーシングカバー3と共に中空スペース4を包囲している。電気装置1は、少なくとも1つの回路担体、この実施例では回路担体5および回路担体6を備え、これらの回路担体はそれぞれ中空スペース4に配置されている。
【0032】
この実施例ではさらに電気装置1はスライド可能に支承された圧着ボルト14を備え、圧着ボルト14は、ケーシングカバー3の破断部7で縦方向に沿ってスライド可能に支承されている。さらに電気装置1は別の圧着ボルト15を含み、この圧着ボルト15はケーシングカバー3の破断部8内で縦方向に沿ってスライド可能に支承されている。圧着ボルト14および15は、それぞれ回路担体5を圧着するための圧着ボルトを形成している。
【0033】
電気装置1は、圧着ボルト14および15に加えてさらなる圧着ボルトを備えていてもよく、電気装置1は、2つよりも多くの圧着ボルト、特に3つ、4つ、または5つの圧着ボルトを備えていてもよい。
【0034】
回路担体6は、回路担体5に対して平行に離間して中空スペース4内に配置されており、圧着ボルト14は回路担体6の破断部10を通って案内されており、圧着ボルト15は回路担体6の破断部11を通って案内されている。破断部10および11は、破断部を通ってそれぞれ案内される圧着ボルトの直径よりも大きい直径を備え、圧着ボルトは破断部内でスライド可能に移動することができる。
【0035】
この実施例では、回路担体5は半導体素子12および半導体素子13を備え、これらの半導体素子は回路担体5に結合されており、この実施例でははんだ付けされている。半導体素子12および13はそれぞれ熱損失を生成するように構成されており、熱損失は回路担体5を通って、この実施例では冷却体、特にアルミニウム冷却体によって形成されているヒートシンク17に放出することができる。半導体素子12および13は、例えばそれぞれ電気装置1の出力最終段の半導体スイッチを形成している。この実施例では電気装置1の構成部品であるヒートシンク17は、熱伝導手段9、例えば熱伝導性ペーストまたは熱伝導性接着剤によって回路担体5に接続されている。さらに電気装置1は、この実施例では特に中空円筒状に成形されたジャケットによって形成されたケーシング部分18を含む。この実施例では、ケーシング部分18には電動機25が収容されている。この実施例では、ヒートシンク17はケーシング2の底部を形成している。この実施例では、ヒートシンク17は環状に形成されたエラストマシール45のための溝を備える。このようにして、ケーシング部分18の開口部にケーシング2を圧入することができ、この場合にヒートシンク17の少なくとも一部はケーシング部分18に突入し、エラストマシール45はケーシング部分18のケーシング壁に対してヒートシング17をシールしている。
【0036】
ケーシング2をケーシング部分18に押し込むためには、力19として圧着ボルト14に加えられ、力20として圧着ボルト15に加えられる力が必要である。したがって圧着ボルト14もしくは15を介してプリント配線板5に力19および力20を加えられ、これにより、プリント配線板5と、冷却体として形成されたヒートシンク17との間にサンドイッチの形式で閉じ込められた熱伝導手段9は、回路担体5をヒートシンク17に熱伝導可能に結合することができる。ケーシング部分18のケーシング縁部にケーシング2を載置した後に圧着ボルト14もしくは15に力19および20を加えることによって、ケーシング部分18にケーシング2を圧入することができ、圧入時に回路担体5は同時にヒートシンク17に対して加圧され、これにより熱伝導手段9を介して、回路担体5とヒートシンク17との間に熱伝導可能な結合が生成される。
【0037】
この実施例では、カバー3は、ケーシング2、特にケーシング2のケーシング壁の縁部に接着またはレーザ溶接するために形成された縁部16を備る。この実施例では、ケーシングカバー3は、破断部7の範囲に、補強範囲、特に隆起部21を備え、したがってケーシング3は破断部7の範囲では、隆起部21以外の範囲よりも大きい厚さを備える。隆起部21によって、圧着ボルト14のために滑り軸受が形成されている。ケーシングカバー3は、破断部8の範囲に厚さが増大された隆起部22を備え、この隆起部は破断部8を包囲し、隆起部22によって、圧着ボルト15のための特に中空円筒状に成形された滑り軸受が形成されている。
【0038】
この実施例では、圧着ボルト14は圧着ボルト14の縦方向から横方向に突出した突起23を備える。この実施例では、突起23は、環状に構成されたカラーによって形成されている。この実施例では、圧着ボルト14は円筒状に形成されている。突起23によって、圧着ボルト14がケーシング2の組立後にケーシング2から落下すること防止することができる。この実施例では、圧着ボルト15はカラー状の突起24を備え、突起24は圧着ボルト15の縦方向から半径方向に離れるように突出し、圧着ボルト15に一体成形されている。したがって圧着ボルト15がケーシング2から落下することはない。
【0039】
この実施例では、さらに電気装置1は、回路担体5を電動機25に接続する3つの電気的な接続導体26,27,28を含む。これらの接続導体26,27,28は、それぞれ回路担体5に電気的に接続されており、熱伝導媒体9および接続導体のためにそれぞれ形成されたヒートシンク17の破断部を通って、電動機25が収容されているケーシング部分18の中空スペース内に延在している。このようにして、電動機25は接続導体を介して出力最終段、特に回路担体5によって通電することができる。この実施例では、電動機25は、接続導体26のための圧接コンタクト29、接続導体27のための圧接コンタクト30、および接続導体28のための圧接コンタクト31を備える。接続導体26,27,28は、ケーシング部分18へのケーシング2の圧入時に圧接コンタクト29,30,31を介して電動機25に接触することができる。
【0040】
この実施例では、電動機25は3相により形成されて電動機である。別の実施形態では、電動機25は3相よりも多くの相、例えば5相、6相、12相、または18相を備えている。
【0041】
半導体素子12および13は、例えばそれぞれ電動機25を制御するための出力最終段を形成している。
【0042】
2つの加圧ドーム47および48を備える加圧装置46も示されおり、加圧装置は、加圧ドーム47によって、ケーシングカバー3から突出した圧着ボルト14の端部に力19を加え、加圧ドーム48によって、ケーシングカバー3から突出した圧着ボルト15の端部に力20を加えるように構成されている。加圧装置46によるケーシング部分18へのケーシング2の圧入前または圧入後に、ケーシングカバー3、特に縁部16を、レーザ49によって生成されたレーザビーム50を用いてケーシング2、特にケーシング2の開口縁部に溶接することができる。
【0043】
図2は、
図1では既にケーシング2に載置されているケーシングカバー3を断面図で概略的に示す。
図2では圧着ボルト14および15はケーシング3から突出している。圧着ボルト14および15にはそれぞれ力19もしくは20を加えることができ、圧着ボルト14および15は破断部7内で縦方向51に沿って、もしくは破断部8内で縦方向52に沿ってスライドすることができる。ケーシングカバー3から突出している端部32の終端部に力20が加えられる前には、圧着ボルト15はケーシングカバー3、および破断部8を包囲する隆起部22から突出している。したがって圧着ボルト15の端部32は、遠くからでもよくみることができ、
図1に示したケーシング2を電気装置1のケーシング部分18に載置した後に端部32の上記終端部に力20がまだ加えられていないことを容易に検出することできる。
【0044】
この実施例では、端部32の一部を形成している圧着ボルト15の縦方向部分34は信号色を備える。信号色は、例えば、赤色、黄色、またはオレンジ色である。これにより、圧着ボルトは外側から人間の眼により良好に検出することができる。端部32を押し込んだ後には縦方向部分34は中空スペース4に収容されており、したがってケーシングカバー3を外側から見た場合に縦方向部分34の信号色が見えないことによって、ケーシングカバー3がケーシング2と共に正確に組み立てられたことを、例えば人間の眼によって、または電子式の検出装置によって容易に検出することができる。
【0045】
突起24に加えて、または突起24とは無関係に、ボルト15には別のカラー状の突起54(破線で示す)が形成されていてもよく、これにより、ケーシングカバー3内におけるボルトの落下が防止されている。隆起部には、突起54に対応する切欠き55が形成されていてもよく、ボルト15は中空スペース4に入り込んだ後にケーシングカバー3と同一平面上に並ぶことができる。ボルト14および15は、それぞれ少なくとも縦方向部分では中空円筒状に形成されていてもよい。これにより、好ましくは材料を節約することができる。さらに好ましくは、圧着ボルトは、突起24または54によって形成されたカラーによって射出成型後に強制的に型から外すこともでき、圧着ボルトの壁、特に円筒壁は突起24または54の範囲で中空円筒体の中空スペースに挿入することができる。
【0046】
圧着ボルト14および15には、それぞれ色を付けて構成された縦方向部分34が設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい。
【0047】
圧着ボルトは、圧着ボルトの縦方向に沿って互いに離間された、特にカラー状に構成された2つの突起をそれぞれ備えていてもよく、これらの突起は互いの間に破断部を閉じ込めており、圧着ボルトがケーシングカラーから落下することを形状に基づいた結合により防止するように構成されている。
【0048】
さらに
図2は、ケーシングカバー3の一実施形態を破線で示している。圧着ボルト14の端部32を包囲する弾性的に形成されたカバーキャップ33が破線により示されている。弾性的に形成されたカバーキャップ33は、例えばケーシングカバー3、特に隆起部21に接着剤によって接着されていてもよいし、または隆起部21にはめ込まれていてもよい。カバーキャップ33は、媒体、特にオイルまたは水が中空スペース4に浸入することを防止するように構成されている。
【0049】
図3は、ケーシングカバー37の一実施例を部分的に断面図で概略的に示す。ケーシングカバー37は圧着ボルト35を備え、圧着ボルト35は、ケーシングカバー37内で圧着ボルト35の縦方向53に沿ってスライド可能に支承されている。圧着ボルト35の軸受は、
図1および
図2に示した圧着ボルト14および15の滑り軸受の一実施形態である。この実施例では円筒状に形成されている圧着ボルト35は、弾性的に形成されたばねリップ39を介してカバー37に結合されている。ばねリップ39は縦方向53から半径方向に離れるように、環状に形成されたカラー38に合流し、カラー38にはカバー37の破断部縁部を収容するための溝が形成されている。したがって圧着ボルト35は縦方向53に沿って縦軸線方向に支承されており、縦方向53に沿って往復運動40を行うことができる。
【0050】
圧着ボルト35は、例えば
図1の圧着ボルト14の代わりに電気装置1の構成部品であってもよい。回路担体5を圧着するためには、例えば加圧装置46によって、ケーシングカバー37から突出した圧着ボルト35の終端部に力19を加えることができる。圧着ボルト35は、リップ39によって保持された状態で縦方向53に沿って中空スペース4にはめ込まれ、そこで回路担体5に力19を伝達することができる。
【0051】
圧着ボルト35は、例えば多成分射出成形方法によってカバー37と共に作製することができる。カバー37は、例えば熱可塑性樹脂によって形成されていてもよい。圧着ボルト35は、例えばシールリップ39およびカラー38と共にエラストマにより形成されていてもよい。圧着ボルト35は、例えば、縦方向53に沿って圧着ボルト35内に形成されたコア36を備えていてもよい。この実施例では、コア36は圧着ボルト35のエラストマ材料に埋設されている。したがって、圧着ボルト35のエラストマ材料よりも高い剛性を有するコア36に力19が作用することができる。コア36は、例えば圧着ボルト35よりも高い剛性を有するプラスチック、例えば熱硬化性樹脂、金属、またはセラミック材料により形成されている。
【0052】
図4は、ケーシングカバー60のための一実施例を断面図で概略的に示す。ケーシングカバー60は、ケーシングカバー60の破断部に縦軸線56に沿ってスライド可能に支承された圧着ボルト61を備える。この圧着ボルト61は、特に中空円筒状に形成されたスリーブ62を備え、スリーブ62は中空スペース65を包囲している。圧着ボルト61の互いに向かい合った2つの終端部には、それぞれ縦軸線56に対して横方向に延在するカラー63および64が一体成形されており、ケーシングカバー60内の圧着ボルト61は縦軸線56に沿って形状に基づいた結合により固定されており、落下することはない。
【0053】
ケーシングカバーは、破断部の範囲にケーシングカバーを補強する隆起部67を備え、隆起部67は圧着ボルトを包囲している。この隆起部67によって、圧着ボルト61のための滑り軸受が形成されている。
【0054】
スリーブの内部には、スリーブ62の中央部でスリーブ壁を支持するウェブ66が延在している。したがってカラー63および/またはカラー64でスリーブ62を圧縮し、中空スペース65にはめ込むことができる。これにより、圧着ボルト61を作製する射出成形工具を、縦軸線56に沿って、カラー63または64によって形成されたアンダカットに抗して引き出し、圧着ボルトを強制的に型から外すことができる。ケーシングカバー60は、例えば型内組立成形によって作製することができ、ケーシングカバー60は第1ステップで作製され、これに続く第2ステップで圧縮ボルト61が破断部内で作製される。
【0055】
圧着ボルトは、例えばPOM(ポリオキシ・メチレン)から形成されており、ケーシングカバーは繊維強化されたPBT(ポリブチレン・テレフタラート)から形成されている。圧着ボルト61は、圧着ボルト13および/または14の代わりに
図1のケーシングカバー3の構成要素として実施されていてもよい。圧着ボルト60に力19を加え、破断部内で縦軸線56に沿って圧着ボルト60スライドさせることができる。
【0056】
図5は、
図1の電気装置1、例えば
図1に示した電動機のような電気装置を作製する方法のフロー図を示す。
【0057】
方法ステップ41では、回路担体5が収容されているケーシング2が別のケーシング部分18に載置される。さらなるステップ42では、少なくとも1つの圧着ボルト、例えば圧着ボルト14および15を縦軸線方向にスライド可能に支承しているケーシングカバーがケーシング2に載置され、ケーシング2のケーシング開口が閉じられる。この場合、圧着ボルト14または圧着ボルト15などの圧着ボルトは、端部、例えば
図2に示した端部32によってケーシングカバー3から突出している。さらなるステップ43では、ケーシングカバー3はレーザビーム、例えば
図1に示したレーザビーム50によって、ケーシング2にレーザ溶接される。さらなるステップ44では、加圧装置46によって、力、特に力19および/または力20が
図1の圧着ボルト14および15などの少なくとも1つの圧着ボルトに加えられ、圧着ボルトは中空スペース4に挿入され、ケーシングカバー3から突出した端部とは反対側の、中空室4内に向いている端部によって回路担体5に押し付けられる。このようにして、回路担体5はヒートシンク、特に
図1に示したヒートシンク17に押し付けられ、これにより、熱伝導手段、特に熱伝導性の接着剤または熱伝導性のペーストが回路担体5とヒートシンク17との間の中間スペースをほぼ完全に、または完全に充填することができる。力19および/または力20によって、ケーシング2は、特にヒートシンク、例えば
図1に示したヒートシンク17を別のケーシング部分18、特に
図1に示したモータスリーブに押し込むこともできる。好ましくは、少なくとも1つの圧着ボルトに力を加えた場合に、回路担体、特に
図1の回路担体5に接続されている電気接触部が電気機械、特に電動機および/または発電機に電気的に接続される。電気的な接続は、例えば圧接接続または差込み接続である。