【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上述した特許文献1に記載の先行技術は、まず第1に、輸血セット、血液回路等のチューブに設けられた栓体から薬液を注入する際に使用される樹脂製針部材であり、人体の皮膚に穿刺される注射針とは、そもそも、その目的が異なるものであるし、それが故に、成形時の要求仕様が全く異なるものである。具体的には、人体の皮膚でなくゴムや合成樹脂製の栓体を貫通した状態で刺し入れるものであるため、座屈強度は皮膚に穿刺する場合と比較して大幅に強いものが要求されることになる。このため、注射針の外径寸法を微細に形成することは想定しておらず、更に、人体の皮膚に穿刺する場合に不要となる強化部材を必須とする構成とならざるを得ないものであった。
【0008】
この結果、この特許文献1には、針部と装着部とを合成樹脂から一体に成形する技術は開示されるものの、その開示された技術を人体の皮膚の穿刺用にそのまま用いることは、構造の上でも、また、サイズの観点でも、全く適用不可能なものであり、これから人体の皮膚への穿刺用の注射針の改良として示唆される技術は無いものである。
【0009】
このように、従来の注射針においては、合成樹脂から一体成型すれば安価に製造することが期待できる一方で、痛みの点での患者の負担を考慮すれば微細に製造しなければならず、また、微細に製造できたとしても座屈強度が十分に担保されていなければならないという謂わば二律背反的な要請を一挙に解決できる新規な技術の開発が要望されていた。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑みなされたもので、注射針を合成樹脂から一体成型してコストの低廉化を果たすことのできる合成樹脂製注射針を提供することを主たる目的とする。
【0011】
また、この発明の他の目的は、穿刺抵抗を可及的に小さく抑えて穿刺時の痛みの軽減を図ることのできる合成樹脂製注射針を提供することである。
【0012】
また、この発明の別の目的は、微細に成形しても十分な強度を担保することのできる合成樹脂製注射針を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し目的を達成するために、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項1の記載によれば、注射器を構成するシリンジに取り付けられる基端部と、先端が鋭利な針先を有する針部とを一体的に備えて合成樹脂から成形された合成樹 脂製注射針において、前記針部は、先端部と中間部と基部とを備えて構成され、前記先端部は、前記針先を有して中実状に形成された先端針部と、この先端針部に同軸に、且つ、中実状に形成された接続部とを備えて一体成形され、前記基端部と前記針部の中間部及び基部との内部を軸方向に沿って貫通し、前記シリンジに連通する状態で、前記シリンジ内に収容された薬液が流れる薬液流路が形成され、この薬液流路は、前記先端部に開口せず、前記中間部の先端面で開口するように形成され、前記接続部は、前記中間部から離間した状態で配置され、前記中間部の先端に少なくとも1本の連結ステムで一体的に連結され、前記先端針部は、
1つの、三角形状又は略三角形状の底面と、
該底面から
前記先端針部の先端に向けて起立する3つの
、三角形状又は略三角形状の
側面を有する三角錐形状又は略三角錐形状に形成されていることを特徴としている。
【0014】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項2の記載によれば、前記接続部は、円筒体形状に形成されていることを特徴としている。
【0015】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項3の記載によれば、前記連結ステムは、複数配設されていることを特徴としている。
【0016】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項4の記載によれば、前記接続部の基端面と前記中間部の先端面とは、軸方向に沿って所定距離だけ離間して隙間を構成し、前記出口開口から注出される薬液は、該隙間を介して、互いに隣接する連結ステムの間を通って放射状に注出されることを特徴としている。
【0017】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項5の記載によれば、前記接続部は、前記中間部の薬液流路の内径寸法より径小な外径寸法を有して形成されることを特徴としている。
【0018】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項6の記載によれば、前記連結ステムは、前記中間部の外周面から軸方向に沿って連続して延出する外面と、この外面の先端縁と前記円筒体部の外周面とを繋げる傾斜面とを備えることを特徴としている。
【0019】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項7の記載によれば、前記連結ステムは、円周方向に沿って等角度的に配置されていることを特徴としている。
【0020】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項8の記載によれば、前記連結ステムは2本備えられ、前記隙間の外周は、該連結ステムにより2分割されていることを特徴としている。
【0021】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項9の記載によれば、前記連結ステムは4本備えられ、前記隙間の外周は、該連結ステムにより4分割されていることを特徴としている。
【0022】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項10の記載によれば、第1及び第2の
側面は、夫々前記円筒体部の先端面に垂直に起立すると共に、所定の第1の鋭角で互いに交差し、且つ、互いの交差線が、前記円筒体部の外周面から軸方向に沿って段差なく連続した状態で延出する第1の斜辺を構成し、前記第3の
側面は、前記円筒体部の先端面に直交する垂直軸線に対して所定の第2の鋭角で傾斜すると共に、前記先端針部の前記針先において、前記第1の斜辺と交差し、前記第3の
側面と前記第1の
側面との交差線により第2の斜辺が規定され、前記第3の
側面と前記第2の
側面との交差線により第3の斜辺が規定され、これら第2及び第3の斜辺は、前記先端針部の針先において交差することを特徴としている。
【0023】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項11の記載によれば、注射器を構成するシリンジに取り付けられる基端部と、先端が鋭利な針先を有する針部とを一体的に備えて合成樹脂から成形された合成樹脂製注射針において、前記針部は、先端部と中間部と基部とを備えて一体成形され、前記先端部は、前記針先を有して中実状に形成された先端針部と、この先端針部に同軸に、且つ、中実状に形成された接続部とを備えて一体成形され、前記基端部と前記針部の中間部及び基部との内部を軸方向に沿って貫通し、前記シリンジに連通する状態で、前記シリンジ内に収容された薬液が流れる薬液流路が形成され、前記接続部は、前記中間部から離間した状態で配置され、前記中間部の先端に少なくとも1本の連結ステムで一体的に連結され、前記先端針部は、円錐形状に形成されていることを特徴としている。
【0024】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項12の記載によれば、 前記先端部は、前記先端針部と前記接続部との間に配設されたテーパー部を備え、このテーパー部は、前記先端針部の底辺と前記接続部の先端外周縁とを連結する円錐状のテーパー面を備えることを特徴としている。
【0025】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項13の記載によれば、前記先端針部の底辺は、前記テーパー部との接合部において、少なくとも円弧状の線分を備えることを特徴としている。
【0026】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項14の記載によれば、前記先端針部の底面の頂点は、前記円筒体部の先端外周縁上に位置することを特徴としている。
【0027】
上記請求項1に記載の課題解決手段による作用は次の通りである。即ち、針部を構成する先端部は先端を鋭利に、且つ、中実状に形成され、注射針を構成する基端部と針部を構成する基部及び中間部との内部を貫通した状態で形成される薬液流路を備え、この薬液流路は、先端部で開口せず、中間部の先端面で開口するように形成され、しかも、前記接続部は、前記中間部から離間した状態で配置され、前記中間部の先端に少なくとも1本の連結ステムで一体的に連結され、前記先端針部は、
1つの、三角形状又は略三角形状の底面と、
該底面から
前記先端針部の先端に向けて起立する3つの
、三角形状又は略三角形状の
側面を有する三角錐形状又は略三角錐形状に形成されているので、注射針を合成樹脂から一体成型してコストの低廉化を果たすことのできる効果を奏することができると共に、穿刺抵抗を可及的に小さく設定して穿刺時の痛みの軽減を図ることのでき、また、微細に成形しても十分な強度を担保することができることになる。
【0028】
また、請求項2に記載の課題解決手段によれば、前記接続部は、円筒体形状に形成されているので、より安価に製造できる効果を奏することができることになる。
【0029】
また、請求項3に記載の課題解決手段によれば、前記連結ステムは、複数配設されているので、前記接続部は、これから離間した前記中間部に確実に取り付けられることができることになる。
【0030】
また、請求項4に記載の解決手段によれば、前記接続部の基端面と前記中間部の先端面とは、軸方向に沿って所定距離だけ離間して隙間を構成し、前記出口開口から注出される薬液は、該隙間を介して、互いに隣接する連結ステムの間を通って放射状に注出されるので、薬液流路からの薬液は、確実に、皮膚内に注入されることができることになる。
【0031】
また、請求項5に記載の解決手段によれば、前記接続部は、前記中間部の薬液流路の内径寸法より径小な外径寸法を有して形成されているので、更に確実に、薬液流路からの薬液が体内に注入することができることになる。
【0032】
また、請求項6に記載の課題解決手段によれば、前記各連結ステムは、前記中間部の外周面から軸方向に沿って連続して延出する外面と、この外面の先端縁と前記接続部の外周面とを繋げる傾斜面とを備えているので、穿刺抵抗を可及的に小さく設定して穿刺時の痛みの軽減を図ることのでき、また、微細に成形しても十分な強度を担保することのできることになる。
【0033】
また、請求項7に記載の課題解決手段によれば、前記連結ステムは、円周方向に沿って等角度的に配置されているので、薬液流路から薬液を確実に注入する効果を奏することができることになる。
【0034】
また、請求項8に記載の課題解決手段によれば、前記連結ステムは2本備えられ、前記隙間の外周は、該連結ステムにより2分割されているので、薬液流路から薬液を更に確実に注入する効果を奏することができることになる。
【0035】
また、請求項9に記載の課題解決手段によれば、前記連結ステムは4本備えられ、前記隙間の外周は、該連結ステムにより4分割されているので、薬液流路から薬液を更に確実に注入する効果を奏することができることになる。
【0036】
また、請求項10に記載の課題解決手段によれば、第1及び第2の
側面は、夫々前記接続部の先端面に垂直に起立すると共に、所定の第1の鋭角で互いに交差し、且つ、互いの交差線が、前記接続部の外周面から軸方向に沿って段差なく連続した状態で延出する第1の斜辺を構成し、第3の
側面は、前記接続部の先端面に所定の第2の鋭角で傾斜すると共に、前記先端針部の前記針先において、前記第1の斜辺と交差し、該第3の
側面と前記第1の
側面との交差線により第2の斜辺が規定され、該第3の
側面と前記第2の
側面との交差線により第3の斜辺が規定され、これら第2及び第3の斜辺は、前記先端針部の前記針先において交差するように構成しているので、穿刺抵抗を可及的に小さく設定して穿刺時の痛みの軽減を図ることのでき、また、微細に成形しても十分な強度を担保することができることになる。
【0037】
また、請求項11に記載の課題解決手段によれば、注射針を構成する針部は、先端部と中間部と基部とを備えて一体成形され、前記先端部は、先端を鋭利に、且つ、中実状に形成された先端針部と、この先端針部に同軸に、且つ、中実状に形成された接続部とを備えて一体成形され、前記基端部と前記針部の中間部及び基部との内部を軸方向に沿って貫通し、前記シリンジに連通する状態で、前記シリンジ内に収容された薬液が流れる薬液流路が形成され、この薬液流路は、前記先端部に開口せず、前記中間部の先端面で開口するように形成され、前記接続部は、前記中間部から離間した状態で配置され、前記接続部は前記中間部から離間した状態で配置され、前記中間部の先端に少なくとも1本の連結ステムで一体的に連結されて、しかも、前記先端針部は、円錐形状に形成されているので、注射針を合成樹脂から一体成型してコストの低廉化を果たすことのできる効果を奏することができると共に、穿刺抵抗を可及的に小さく設定して穿刺時の痛みの軽減を図ることのでき、また、微細に成形しても十分な強度を担保するとともに、安価に製造でできる効果を奏することができるものである。
【0038】
また、請求項12に記載の課題解決手段によれば、前記先端部は、前記先端針部と前記接続部との間に配設されたテーパー部を備え、このテーパー部は、前記先端針部の底辺と前記接続部の先端外周縁とを連結する円錐状のテーパー面を備えているので、更に、穿刺抵抗を可及的に小さく設定して穿刺時の痛みの軽減を図ることができることになる。
【0039】
また、請求項13に記載の課題解決手段によれば、の前記先端針部の底辺は、前記テーパー部との接合部において、少なくとも円弧状の線分を備えているので、更に確実に、穿刺抵抗を可及的に小さく設定して穿刺時の痛みの軽減を図ることができることになる。
【0040】
また、請求項14に記載の課題解決手段によれば、前記先端針部の底面の頂点は、前記接続部の先端外周縁上に位置するようにしているので、微細に成形しても十分な強度を担保することができることになる。