特許第6678861号(P6678861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6678861
(24)【登録日】2020年3月23日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】合成樹脂製注射針
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20200330BHJP
【FI】
   A61M5/32 540
   A61M5/32 520
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-222097(P2016-222097)
(22)【出願日】2016年11月15日
(65)【公開番号】特開2018-78978(P2018-78978A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(73)【特許権者】
【識別番号】512136167
【氏名又は名称】株式会社一倉製作所
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 広樹
(72)【発明者】
【氏名】一倉 史人
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−523082(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0065029(US,A1)
【文献】 特開2012−139407(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0172012(US,A1)
【文献】 英国特許出願公告第829383(GB,A)
【文献】 国際公開第2007/037164(WO,A1)
【文献】 米国特許第1882213(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器を構成するシリンジに取り付けられる基端部と、
先端が鋭利な針先を有する針部とを一体的に備えて合成樹脂から成形された合成樹脂製注射針において、
前記針部は、先端部と中間部と基部とを備えて構成され、
前記先端部は、前記針先を有して中実状に形成された先端針部と、前記先端針部に同軸に、且つ、中実状に形成された接続部とを備えて一体成形され、
前記基端部と前記針部の中間部及び基部との内部を軸方向に沿って貫通し、前記シリンジに連通する状態で、前記シリンジ内に収容された薬液が流れる薬液流路が形成され、
前記薬液流路は、前記先端部に開口せず、前記中間部の先端面で開口するように形成され、
前記接続部は、前記中間部から離間した状態で配置され、前記中間部の先端に少なくとも1本の連結ステムで一体的に連結され、
前記先端針部は、1つの、三角形状又は略三角形状の底面と、底面から前記先端針部の先端に向けて起立する3つの三角形状又は略三角形状の側面を有する三角錐形状又は略三角錐形状に形成されていることを特徴とする合成樹脂製注射。
【請求項2】
前記接続部は、円筒体形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製注射針。
【請求項3】
前記連結ステムは、複数配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成樹脂製注射針。
【請求項4】
前記接続部の基端面と前記中間部の先端面とは、軸方向に沿って所定距離だけ離間して隙間を構成し、
前記出口開口から注出される薬液は、該隙間を介して、互いに隣接する連結ステムの間を通って放射状に注出されることを特徴とする請求項3に記載の合成樹脂製注射針。
【請求項5】
前記接続部は、前記中間部の薬液流路の内径寸法より径小な外径寸法を有して形成されることを特徴とする請求項2又は4に記載の合成樹脂製注射針。
【請求項6】
前記連結ステムは、前記中間部の外周面から軸方向に沿って連続して延出する外面と、この外面の先端縁と前記円筒体部の外周面とを繋げる傾斜面とを備えることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製注射針。
【請求項7】
前記連結ステムは、円周方向に沿って等角度的に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の合成樹脂製注射針。
【請求項8】
前記連結ステムは2本備えられ、
前記隙間の外周は、該連結ステムにより2分割されていることを特徴とする請求項3に記載の合成樹脂製注射針。
【請求項9】
前記連結ステムは4本備えられ、
前記隙間の外周は、該連結ステムにより4分割されていることを特徴とする請求項3に記載の合成樹脂製注射針。
【請求項10】
第1及び第2の側面は、夫々前記円筒体部の先端面に垂直に起立すると共に、所定の第1の鋭角で互いに交差し、且つ、互いの交差線が、前記円筒体部の外周面から軸方向に沿って段差なく連続した状態で延出する第1の斜辺を構成し、
前記第3の側面は、前記円筒体部の先端面に直交する垂直軸線に対して所定の第2の鋭角で傾斜すると共に、前記先端針部の前記針先において、前記第1の斜辺と交差し、
前記第3の側面と前記第1の側面との交差線により第2の斜辺が規定され、前記第3の側面と前記第2の側面との交差線により第3の斜辺が規定され、
前記第2及び第3の斜辺は、前記先端針部の針先において交差することを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製注射針。
【請求項11】
注射器を構成するシリンジに取り付けられる基端部と、先端が鋭利な針先を有する針部とを一体的に備えて合成樹脂から成形された合成樹脂製注射針において、
前記針部は、先端部と中間部と基部とを備えて一体成形され、
前記先端部は、前記針先を有して中実状に形成された先端針部と、前記先端針部に同軸に、且つ、中実状に形成された接続部とを備えて一体成形され、
前記基端部と前記針部の中間部及び基部との内部を軸方向に沿って貫通し、前記シリンジに連通する状態で、前記シリンジ内に収容された薬液が流れる薬液流路が形成され、
前記薬液流路は、前記先端部に開口せず、前記中間部の先端面で開口するように成され、
前記接続部は、前記中間部から離間した状態で配置され、前記中間部の先端に少くとも1本の連結ステムで一体的に連結され、
前記先端針部は、円錐形状に形成されていることを特徴とする合成樹脂製注射針。
【請求項12】
前記先端部は、前記先端針部と前記接続部との間に配設されたテーパー部を備え、
このテーパー部は、前記先端針部の底辺と前記接続部の先端外周縁とを連結する円錐状のテーパー面を備えることを特徴とする請求項11に記載の合成樹脂製注射針。
【請求項13】
前記先端針部の底辺は、前記テーパー部との接合部において、少なくとも円弧状の線分を備えることを特徴とする請求項12に記載の合成樹脂製注射針。
【請求項14】
前記先端針部の底面の頂点は、前記円筒体部の先端外周縁上に位置することを特徴とする請求項13に記載の合成樹脂製注射針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院・医院等の医療現場で用いられる合成樹脂製注射針に関し、特に、患者(人体)の皮膚に穿刺される際の穿刺抵抗を極力小さくして、患者の負担を軽減させることのできるように微細に形成することのできる合成樹脂製注射針に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療現場において患者の皮膚への穿刺用として用いられる注射針に関して、ディスポーザブル(使い捨て)の注射器に用いようとすると、従前の金属製の注射針では事後の廃棄物処理コストや製造コストの点が問題として指摘されていた。そこで、特にコスト低減の目的から、注射針全体をシリンジと共に合成樹脂で一体成型することが提案されていた。
【0003】
ここで、注射針を特に患者の皮膚への穿刺用として用いる場合には、患者が感じる穿刺時の痛みを極力低減させ、患者の負担を軽減するためには、穿刺抵抗を小さくしなければならず、これは、注射針の針先を鋭利にすると共に、針の外径寸法を極力小さくする必要がある。この要請は、注射針を合成樹脂で成形する場合、特に、針部とこの針部が取り付けられる基台とを合成樹脂から一体成型しつつ強度を維持しようとすると、針部の外径寸法を小さくすることが困難である問題点が指摘されていた。
【0004】
具体的には、注射針を合成樹脂製として、注射針の外径寸法を小さくすればするほど、座屈強度が低下して、針部が折れ易くなる結果を招くことになる。針が折れると皮膚の中に残ることとなり、このような事態は絶対に避けなければならないものである。また、たとえ座屈強度を担保した状態で注射針の外径寸法を小さく設定できたとしても、コスト低廉化のために、合成樹脂製の中空円筒体を斜めにスパッと切断して鋭利な針先端部を形成しようとする場合、針先端部はどうしても楕円形状を呈することとなり、この結果、穿刺抵抗を小さくすることに限度があり、人体が感じる痛みの観点で、患者の負担を軽減することができないでいた。
【0005】
以上のような従来において、針部と装着部とを合成樹脂で一体成型する先行技術が開発され、特許文献1に示すように提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−323622公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上述した特許文献1に記載の先行技術は、まず第1に、輸血セット、血液回路等のチューブに設けられた栓体から薬液を注入する際に使用される樹脂製針部材であり、人体の皮膚に穿刺される注射針とは、そもそも、その目的が異なるものであるし、それが故に、成形時の要求仕様が全く異なるものである。具体的には、人体の皮膚でなくゴムや合成樹脂製の栓体を貫通した状態で刺し入れるものであるため、座屈強度は皮膚に穿刺する場合と比較して大幅に強いものが要求されることになる。このため、注射針の外径寸法を微細に形成することは想定しておらず、更に、人体の皮膚に穿刺する場合に不要となる強化部材を必須とする構成とならざるを得ないものであった。
【0008】
この結果、この特許文献1には、針部と装着部とを合成樹脂から一体に成形する技術は開示されるものの、その開示された技術を人体の皮膚の穿刺用にそのまま用いることは、構造の上でも、また、サイズの観点でも、全く適用不可能なものであり、これから人体の皮膚への穿刺用の注射針の改良として示唆される技術は無いものである。
【0009】
このように、従来の注射針においては、合成樹脂から一体成型すれば安価に製造することが期待できる一方で、痛みの点での患者の負担を考慮すれば微細に製造しなければならず、また、微細に製造できたとしても座屈強度が十分に担保されていなければならないという謂わば二律背反的な要請を一挙に解決できる新規な技術の開発が要望されていた。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑みなされたもので、注射針を合成樹脂から一体成型してコストの低廉化を果たすことのできる合成樹脂製注射針を提供することを主たる目的とする。
【0011】
また、この発明の他の目的は、穿刺抵抗を可及的に小さく抑えて穿刺時の痛みの軽減を図ることのできる合成樹脂製注射針を提供することである。
【0012】
また、この発明の別の目的は、微細に成形しても十分な強度を担保することのできる合成樹脂製注射針を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し目的を達成するために、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項1の記載によれば、注射器を構成するシリンジに取り付けられる基端部と、先端が鋭利な針先を有する針部とを一体的に備えて合成樹脂から成形された合成樹 脂製注射針において、前記針部は、先端部と中間部と基部とを備えて構成され、前記先端部は、前記針先を有して中実状に形成された先端針部と、この先端針部に同軸に、且つ、中実状に形成された接続部とを備えて一体成形され、前記基端部と前記針部の中間部及び基部との内部を軸方向に沿って貫通し、前記シリンジに連通する状態で、前記シリンジ内に収容された薬液が流れる薬液流路が形成され、この薬液流路は、前記先端部に開口せず、前記中間部の先端面で開口するように形成され、前記接続部は、前記中間部から離間した状態で配置され、前記中間部の先端に少なくとも1本の連結ステムで一体的に連結され、前記先端針部は、1つの、三角形状又は略三角形状の底面と、底面から前記先端針部の先端に向けて起立する3つの三角形状又は略三角形状の側面を有する三角錐形状又は略三角錐形状に形成されていることを特徴としている。
【0014】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項2の記載によれば、前記接続部は、円筒体形状に形成されていることを特徴としている。
【0015】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項3の記載によれば、前記連結ステムは、複数配設されていることを特徴としている。
【0016】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項4の記載によれば、前記接続部の基端面と前記中間部の先端面とは、軸方向に沿って所定距離だけ離間して隙間を構成し、前記出口開口から注出される薬液は、該隙間を介して、互いに隣接する連結ステムの間を通って放射状に注出されることを特徴としている。
【0017】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項5の記載によれば、前記接続部は、前記中間部の薬液流路の内径寸法より径小な外径寸法を有して形成されることを特徴としている。
【0018】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項6の記載によれば、前記連結ステムは、前記中間部の外周面から軸方向に沿って連続して延出する外面と、この外面の先端縁と前記円筒体部の外周面とを繋げる傾斜面とを備えることを特徴としている。
【0019】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項7の記載によれば、前記連結ステムは、円周方向に沿って等角度的に配置されていることを特徴としている。
【0020】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項8の記載によれば、前記連結ステムは2本備えられ、前記隙間の外周は、該連結ステムにより2分割されていることを特徴としている。
【0021】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項9の記載によれば、前記連結ステムは4本備えられ、前記隙間の外周は、該連結ステムにより4分割されていることを特徴としている。
【0022】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項10の記載によれば、第1及び第2の側面は、夫々前記円筒体部の先端面に垂直に起立すると共に、所定の第1の鋭角で互いに交差し、且つ、互いの交差線が、前記円筒体部の外周面から軸方向に沿って段差なく連続した状態で延出する第1の斜辺を構成し、前記第3の側面は、前記円筒体部の先端面に直交する垂直軸線に対して所定の第2の鋭角で傾斜すると共に、前記先端針部の前記針先において、前記第1の斜辺と交差し、前記第3の側面と前記第1の側面との交差線により第2の斜辺が規定され、前記第3の側面と前記第2の側面との交差線により第3の斜辺が規定され、これら第2及び第3の斜辺は、前記先端針部の針先において交差することを特徴としている。
【0023】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項11の記載によれば、注射器を構成するシリンジに取り付けられる基端部と、先端が鋭利な針先を有する針部とを一体的に備えて合成樹脂から成形された合成樹脂製注射針において、前記針部は、先端部と中間部と基部とを備えて一体成形され、前記先端部は、前記針先を有して中実状に形成された先端針部と、この先端針部に同軸に、且つ、中実状に形成された接続部とを備えて一体成形され、前記基端部と前記針部の中間部及び基部との内部を軸方向に沿って貫通し、前記シリンジに連通する状態で、前記シリンジ内に収容された薬液が流れる薬液流路が形成され、前記接続部は、前記中間部から離間した状態で配置され、前記中間部の先端に少なくとも1本の連結ステムで一体的に連結され、前記先端針部は、円錐形状に形成されていることを特徴としている。
【0024】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項12の記載によれば、 前記先端部は、前記先端針部と前記接続部との間に配設されたテーパー部を備え、このテーパー部は、前記先端針部の底辺と前記接続部の先端外周縁とを連結する円錐状のテーパー面を備えることを特徴としている。
【0025】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項13の記載によれば、前記先端針部の底辺は、前記テーパー部との接合部において、少なくとも円弧状の線分を備えることを特徴としている。
【0026】
また、この発明に係わる合成樹脂製注射針は、請求項14の記載によれば、前記先端針部の底面の頂点は、前記円筒体部の先端外周縁上に位置することを特徴としている。
【0027】
上記請求項1に記載の課題解決手段による作用は次の通りである。即ち、針部を構成する先端部は先端を鋭利に、且つ、中実状に形成され、注射針を構成する基端部と針部を構成する基部及び中間部との内部を貫通した状態で形成される薬液流路を備え、この薬液流路は、先端部で開口せず、中間部の先端面で開口するように形成され、しかも、前記接続部は、前記中間部から離間した状態で配置され、前記中間部の先端に少なくとも1本の連結ステムで一体的に連結され、前記先端針部は、1つの、三角形状又は略三角形状の底面と、底面から前記先端針部の先端に向けて起立する3つの三角形状又は略三角形状の側面を有する三角錐形状又は略三角錐形状に形成されているので、注射針を合成樹脂から一体成型してコストの低廉化を果たすことのできる効果を奏することができると共に、穿刺抵抗を可及的に小さく設定して穿刺時の痛みの軽減を図ることのでき、また、微細に成形しても十分な強度を担保することができることになる。
【0028】
また、請求項2に記載の課題解決手段によれば、前記接続部は、円筒体形状に形成されているので、より安価に製造できる効果を奏することができることになる。
【0029】
また、請求項3に記載の課題解決手段によれば、前記連結ステムは、複数配設されているので、前記接続部は、これから離間した前記中間部に確実に取り付けられることができることになる。
【0030】
また、請求項4に記載の解決手段によれば、前記接続部の基端面と前記中間部の先端面とは、軸方向に沿って所定距離だけ離間して隙間を構成し、前記出口開口から注出される薬液は、該隙間を介して、互いに隣接する連結ステムの間を通って放射状に注出されるので、薬液流路からの薬液は、確実に、皮膚内に注入されることができることになる。
【0031】
また、請求項5に記載の解決手段によれば、前記接続部は、前記中間部の薬液流路の内径寸法より径小な外径寸法を有して形成されているので、更に確実に、薬液流路からの薬液が体内に注入することができることになる。
【0032】
また、請求項6に記載の課題解決手段によれば、前記各連結ステムは、前記中間部の外周面から軸方向に沿って連続して延出する外面と、この外面の先端縁と前記接続部の外周面とを繋げる傾斜面とを備えているので、穿刺抵抗を可及的に小さく設定して穿刺時の痛みの軽減を図ることのでき、また、微細に成形しても十分な強度を担保することのできることになる。
【0033】
また、請求項7に記載の課題解決手段によれば、前記連結ステムは、円周方向に沿って等角度的に配置されているので、薬液流路から薬液を確実に注入する効果を奏することができることになる。
【0034】
また、請求項8に記載の課題解決手段によれば、前記連結ステムは2本備えられ、前記隙間の外周は、該連結ステムにより2分割されているので、薬液流路から薬液を更に確実に注入する効果を奏することができることになる。
【0035】
また、請求項9に記載の課題解決手段によれば、前記連結ステムは4本備えられ、前記隙間の外周は、該連結ステムにより4分割されているので、薬液流路から薬液を更に確実に注入する効果を奏することができることになる。
【0036】
また、請求項10に記載の課題解決手段によれば、第1及び第2の側面は、夫々前記接続部の先端面に垂直に起立すると共に、所定の第1の鋭角で互いに交差し、且つ、互いの交差線が、前記接続部の外周面から軸方向に沿って段差なく連続した状態で延出する第1の斜辺を構成し、第3の側面は、前記接続部の先端面に所定の第2の鋭角で傾斜すると共に、前記先端針部の前記針先において、前記第1の斜辺と交差し、該第3の側面と前記第1の側面との交差線により第2の斜辺が規定され、該第3の側面と前記第2の側面との交差線により第3の斜辺が規定され、これら第2及び第3の斜辺は、前記先端針部の前記針先において交差するように構成しているので、穿刺抵抗を可及的に小さく設定して穿刺時の痛みの軽減を図ることのでき、また、微細に成形しても十分な強度を担保することができることになる。
【0037】
また、請求項11に記載の課題解決手段によれば、注射針を構成する針部は、先端部と中間部と基部とを備えて一体成形され、前記先端部は、先端を鋭利に、且つ、中実状に形成された先端針部と、この先端針部に同軸に、且つ、中実状に形成された接続部とを備えて一体成形され、前記基端部と前記針部の中間部及び基部との内部を軸方向に沿って貫通し、前記シリンジに連通する状態で、前記シリンジ内に収容された薬液が流れる薬液流路が形成され、この薬液流路は、前記先端部に開口せず、前記中間部の先端面で開口するように形成され、前記接続部は、前記中間部から離間した状態で配置され、前記接続部は前記中間部から離間した状態で配置され、前記中間部の先端に少なくとも1本の連結ステムで一体的に連結されて、しかも、前記先端針部は、円錐形状に形成されているので、注射針を合成樹脂から一体成型してコストの低廉化を果たすことのできる効果を奏することができると共に、穿刺抵抗を可及的に小さく設定して穿刺時の痛みの軽減を図ることのでき、また、微細に成形しても十分な強度を担保するとともに、安価に製造でできる効果を奏することができるものである。
【0038】
また、請求項12に記載の課題解決手段によれば、前記先端部は、前記先端針部と前記接続部との間に配設されたテーパー部を備え、このテーパー部は、前記先端針部の底辺と前記接続部の先端外周縁とを連結する円錐状のテーパー面を備えているので、更に、穿刺抵抗を可及的に小さく設定して穿刺時の痛みの軽減を図ることができることになる。
【0039】
また、請求項13に記載の課題解決手段によれば、の前記先端針部の底辺は、前記テーパー部との接合部において、少なくとも円弧状の線分を備えているので、更に確実に、穿刺抵抗を可及的に小さく設定して穿刺時の痛みの軽減を図ることができることになる。
【0040】
また、請求項14に記載の課題解決手段によれば、前記先端針部の底面の頂点は、前記接続部の先端外周縁上に位置するようにしているので、微細に成形しても十分な強度を担保することができることになる。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように、この発明によれば、注射針を合成樹脂から一体成型してコストの低廉化を果たすことのできる合成樹脂製注射針を提供することができることになる。
【0042】
また、この発明によれば、穿刺抵抗を可及的に小さく設定して穿刺時の痛みの軽減を図ることのできる合成樹脂製注射針が提供されることになる。
【0043】
また、この発明によれば、微細に成形しても十分な強度を担保することのできる合成樹脂製注射針が提供されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】この発明に係わる合成樹脂製注射針の一実施例の構成を備えた注射針つきシリンジの全体構成を示す正面図である。
図2図1に示す注射針つきシリンジの上面図である。
図3図1に示す注射針つきシリンジの内部構造を、図2のA−A線に沿って切断した状態で示す側断面図である。
図4図1に示す注射針つきシリンジの注射針を取り出して示す正面図である。
図5図1に示す注射針つきシリンジの注射針を取り出して、図4とは異なる方向から示す側面図である。
図6図5に示す注射針の上面図である。
図7図6のB−B線に沿って切断して示す断面図である。
図8】注射針の針部の構成を取り出して示す正面図である。
図9図8に示す注射針の針部の構造を取り出して示す斜視図である。
図10】注射針の針部の構成を、図8とは異なる方向から示す斜視図である。
図11】注射針の針部の構成を、図10とは反対の方向から示す斜視図である。
図12】この実施例の第1の変形例としての連結ステムが2つ設けられている注射針の針部の構成を取り出して示す上面図である。
図13図12に示す注射針の針部の構成を示す斜視図である。
図14】この実施例の第2の変形例としての連結ステムが1つ設けられている構成を示す斜視図である。
図15】この発明に係わる第3の変形例としての先端針部が円錐状に形成された構成を示す斜視図である。
図16】この発明に係わる第4の変形例としての先端針部の斜辺がぎざぎざ状に形成されている構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本発明に係わる合成樹脂製注射針の実施の形態について、注射針をシリンジ本体に一体成形した注射針付きシリンジの例において、添付図面を用いて説明する。
【0046】
図1乃至図3は、人体の皮膚に穿刺し薬液を皮下注射するための注射針付きシリンジの一実施例の構造を示す図であり、図4乃至図11は、このシリンジに一体的に形成された注射針の構造を取り出して示す図である。
【0047】
先ず、図1乃至図3に示すように、注射針付きシリンジ10は、 一方の端面12Aが開放された中空筒体から構成され、この開放端面から図示しないプランジャが液密に挿入される合成樹脂製のシリンジ本体12と、このシリンジ本体12内と連通する薬液流路14を内部に貫通した状態で備え、シリンジ本体12の他方の端面12Bに一体成型された合成樹脂製の注射針16とを備えている。
【0048】
ここで、このシリンジ本体12の一方の端面12A側の一端部には、手動によるプランジャの押し込み動作を容易にするための指掛け用のフランジ18が一体的に取り付けられている。また、注射針16の薬液流路14は、シリンジ本体12の他方の端面12Bに形成された連通穴12Cを介して、シリンジ本体12の内部空間と連通している。
【0049】
このように構成される注射針付きシリンジ10は、図示しない射出成型装置を用いて、後に説明する合成樹脂から射出により一体成形されて、単一部品として製造されるものである。
【0050】
次に、注射針16の構造を、図4乃至図11に取り出して示す状態で、詳細に説明する。この注射針16は、シリンジ本体12に一体的に連接される基端部20と、この基端部20の先方に連続した状態で配設された針部22とを備えて構成されている。そして、この針部22は、先端部24と中間部26と基部28とを一体的に備え、先端部24は鋭利な針先Sを先端に有して中実状に形成されている。
【0051】
また、上述した薬液流路14は、基端部20と針部22の基部28及び中間部26の内部を貫通した状態で形成されると共に、この発明の特徴をなす点であるが、薬液流路14の出口開口14Eは、先端部24で開口せず、中間部26の軸方向に直交するように形成された先端面で開口するように設定されている。そして、特に図7に示すように、薬液流路14は、基端部20内に位置する第1の流路14Aと、針部22の基部28内に位置する第2の流路14Bと、針部22の中間部26内に位置する第3の流路14Cとから連続した状態で構成されている。
【0052】
尚、基端部20内に位置する第1の流路14Aの内径寸法と、上述したシリンジ本体12の他方の端面12Aに形成された連通穴12Bの内径寸法と同一に設定されている。即ち、第1の流路14Aの内周面と連通穴12Bの内周面とは、段差なく連続した状態で接合されている。このため、図7に示すように、シリンジ本体12内に収容された薬液は、図示しないプランジャの押し込み動作に応じて、連通穴12Bから注射針16の薬液流路14内にスムーズに押し出されることになる。
【0053】
ここで、注射針16内の薬液流路14の内径寸法は、基端部20内に位置する第1の流路14Aのそれよりも、針部22の基部28の流路14Bと中間部26の第3の流路14Cのほうが小径となるように設定されている。そして、この実施例においては、第2および第3の流路14B,14Cの内径寸法は互いに同一寸法となるように設定されている。具体的には、この実施例においては、連通穴12B及び第1の流路14Aの内径寸法は、共に、φ0.6mmに設定され、第2及び第3の流路14B、14Cの内径寸法は、共に、φ0.3mmに設定されている。
【0054】
また、第1の流路14Aと第2の流路14Bとは、テーパー状絞り部14Dを介して、内径を徐々に絞られるように設定されている。これにより、シリンジ本体12内に収容された薬液は、図示しないプランジャの押し込み動作に応じて、連通穴12Bから注射針16の薬液流路14内に更にスムーズに押し出され、後述する出口開口14Eから注出されるように設定されている。
【0055】
次に、図7及び図8に示すように、注射針16の先端部24は、針先Sを規定する先端を鋭利に、且つ、中実状に形成された先端針部30と、この先端針部30に同軸に、且つ、中実状に形成された接続部32とを備えて一体成形されている。この接続部32は円筒体状に形成され、中間部26から軸方向に沿って所定距離Dだけ離間した状態で配置され、中間部26の前方(先端部側)において、この実施例においては4本の連結ステム34で一体的に連結されている。
【0056】
これら連結ステム34は、この実施例においては等角度的に配設されており、接続部32と中間部26との間において規定される隙間は、これら連結ステム34により円周方向に沿って4つに区画されたている。この結果、中間部26の先端面に形成された出口開口14Eから抽出された薬液は、互いに隣り合う一対の連結ステム34の間の空間を通って、放射状(即ち、半径方向外方)に向けて注出されることになる。
【0057】
また、接続部32は、中間部26内に位置する薬液流路14の第3の流路14C内径寸法より径小な外径寸法を有して形成されている。具体的には、接続部32の外径寸法は、この実施例においては、φ0.2mmと極細に設定されている。また、離間距離Dは、この実施例では、0.86mmに設定されている。これにより、この離間距離Dと相まって、出口開口14Eの注出スペースは十分なサイズが確保され、出口開口14Eからの薬液のスムーズな注出が確実に担保されることになる。
【0058】
ここで、上述した連結ステム34は、各々、中間部26の外周面から軸方向に沿って連続して延出する外面34Aと、この外面34Aの先端縁と接続部32の外周面とを繋げる傾斜面34Bとを備えている。このように先端部24と中間部26とは、4本の連結ステム34を介して強固に連結されているので、先端部24と中間部26とは一体的な構造が確実に担保されることになる。
【0059】
また、上述した針部22の先端部24を構成する先端針部30は、この発明の特徴の一つを構成するものであるため、特に図10及び図11を参照して、以下に詳細に説明する。即ち、この先端針部30は、この実施例においては、三角形状の底面と、この底面から先端針部30の先端に向けて起立する3つの三角形状の側面36、38、40を有する三角錐形状を備えている。 この三角錐状の先端針部30の頂点が、鋭利な先端としての針先Sを構成している。一方、この先端針部30の底面の3つの頂点X、Y、Zは、接続部32の先端外周縁C上に位置している。即ち、この先端針部30の底面は、仮想的には、接続部32の先端面上に位置しているものである。
【0060】
また、この先端針部30の第1及び第2の側面36、38は、夫々、接続部32の先端面に垂直に交差すると共に、所定の第1の鋭角θ1(例えば、この実施例においては、17.6°)で互いに交差し、且つ、互いの交差線が、頂点Xにおいて、接続部32の外周面から軸方向に沿って段差なく連続的に延出する第1の斜辺αを構成している。換言すれば、この第1の斜辺αは、接続部32の先端面に対して、頂点Xにおいて(を通って)直交していることになる。
【0061】
また、第3の側面40は、接続部32の先端面に直交する垂直軸線に対して所定の第2の鋭角θ2(例えば、この実施例においては、15°)で傾斜すると共に、先端針部32の針先Sにおいて、第1の斜辺αと交差している。そして、第3の側面40と第1の側面36との交差線により第2の斜辺βが規定され、第3の側面40と第2の側面38との交差線により第3の斜辺γが規定され、これら第2及び第3の斜辺β、γは、先端針部30の先端において交差して、上述した鋭利な針先Sを構成としている。
【0062】
更に、針部22を構成する先端部24は、図8及び図9に示すように、先端針部30と接続部32との間に配設されたテーパー部42を備えている。このテーパー部42は、先端針部30の底辺と接続部32の先端面の外周縁とを連結する円錐状のテーパー面を備えている。この結果、先端針部30の各底辺は、テーパー部42との接合部において、円弧線を呈することになる。尚、このテーパー部42におけるテーパー角度は、上述した第3の側面40の垂直軸線に対する傾斜角度よりも大きく設定されている。
【0063】
このように、先端針部30においては、鋭利な針先Sに引き続いた状態で、針先Sの傾斜角度よりも大きく設定されたテーパー角度を有するテーパー部42を備えているので、この針部22の微細な針先Sが人体の皮膚に穿刺される状態において、穿刺抵抗が極めて低く抑えられて、これにより人体が感じる痛みを効果的に抑制することができるとともに、引き続くテーパー部42が皮膚に穿刺されるので、これに連接される接続部32がスムーズに皮膚内に穿刺されることになる。この結果、この注射針16が合成樹脂で外形寸法0.2mmと極細に成形される状況でも、先端部24が中実状に形成され、ここに何らの開口も形成されていないので、全体として十分な強度が担保されることになる。
【0064】
以上のように構成される注射針つきシリンジ10は、図示しない射出成型型の抜き方向に関して、その外径寸法を徐々に小さくなるように、即ち、細くなるように設定されており、且つ、オフセットされた部分を有していないので、図示しない射出成型装置により合成樹脂から一体成形され、一部品として製造され得るものである。尚、ここで用いられる合成樹脂としては、高強度、耐摩耗性、高ガスバリア性及び耐溶剤性を有すると共に、更に生分解性を有する合成樹脂から形成されており、更に具体的には、ポリグリコール酸(PGA)樹脂が用いられている。
【0065】
このように、注射針つきシリンジ10をPGA樹脂から成形されることにより、設計上、十分な耐折れ強度を有するように形成されてはいるものの、何らかの理由で仮に注射針16が人体の皮膚への穿刺時に折れて、体内に残ることになったとしても、PAG樹脂は上述したように、高強度、耐摩耗性、高ガスバリア性及び耐溶剤性を有するとともに、生分解性を特徴的に有しているので、体内において分解して消滅することとなり、注射針の折れることによる生体への悪影響を可及的に抑制することができることになる。
【0066】
以上のように構成される注射針付きシリンジ10を注射器として用いて皮下注射する場合につき、以下に説明する。
【0067】
まず、この注射器は注射針付きシリンジ10と図示しないプランジャとを組み合わせて構成されるものであり、基本的に、ディスポーザブル(使い捨て)タイプの注射器として用いられることに好適するものであり、注射器としての使用に先立ち、図示しないプランジャがシリンジ本体12の開放された一方の端面12Aから挿入されていて、シリンジ本体12内は薬液で満たされている。
【0068】
次に、注射針16を人体の皮膚に垂直に刺入して、皮膚の皮下組織に薬液を注入する皮下注射の場合を説明する。先ず、図示しないプランジャを僅かに押し込んでシリンジ本体12内に残留している空気を排気する。尚、この残留空気の排気動作は、この注射器10の製造時において、既に実施されている場合があり、この場合には不要となる。
【0069】
この後、注射針16を、皮膚の表皮に垂直に刺入し、針先Sが真皮を通り抜けて皮下組織に至るまで刺し入れる。ここで、表皮の厚さは一般的に0.06〜0.2mm程度であり、真皮の厚さは一般的に2.0から2.2mm程度となっている。換言すれば、皮下組織は皮膚の表面から、2.06〜2.4mmより深い位置に存在する。
【0070】
一方、この実施例の注射器10の注射針16は、針先Sを含んで皮膚に先ず刺入される部分としての先端部24の構造が、ここに何らの開口も形成されておらず中実状に形成されているので、この先端部24の外径寸法がφ0.2mmと極細にPGA樹脂から成形されているにも拘わらず、十分な強度を有するものであり、安全に注射針16を刺入することができるものである。
【0071】
また、この注射針16は、針先Sから薬液流路14の出口開口14Eまでの距離が、上述したように1.55mmに設定されているので、針先Sから4.0mmの深さで刺入することにより、針部22を構成する中間部26の先端面に形成されている薬液流路14の出口開口14Eは、確実に皮下組織内に入り込んだ状態が達成されることとなる。この刺入状態で、図示しないプランジャを押し込むことにより、シリンジ本体12内の薬液は、薬液流路14を通って出口開口14Eから皮膚の皮下組織中に確実に注出されることになる。
【0072】
以上の説明から明白なように、人体の皮膚に皮下注射をする場合に、従来の金属製の注射針のように、皮膚の表面に対して約30度の傾斜角度で刺入する場合において、この傾斜角度のばらつき等で針先を皮下組織内に位置させることが困難であることと比較して、この実施例においては、注射針16を皮膚に対して垂直に刺入するようにしているのできわめて容易に、且つ、確実に皮下組織内に薬液を注射することができることになる。
【0073】
具体的には、従来の金属製の注射針のように、そもそも皮膚に対して垂直に刺し入れるようにすると、針先が斜めの楕円状を呈するように形成されているので、この楕円状の開口部の軸方向に沿う長さが、皮下組織の厚さを超える場合が発生する。このような状態で、楕円状の開口から薬液が注出されると、薬液は、皮下組織内だけでなく、上層の真皮や下層の皮下脂肪に浸入する場合が発生して好ましくない。このように、従来の金属製の注射針において、これの楕円状の開口を皮下組織内に確実に位置させることが、かなり難しい実情がある。
【0074】
これと比較して、この実施例の注射針16における薬液の注出口としての出口開口14Eは、注射針16を構成する針部22の中間部26の、軸方向に直交する先端面に形成されている。従って、注射針16の刺入深さを正確に規定することにより、出口開口14Eの挿入位置は極めて正確に規定されることとなり、この結果、この出口開口14Eを皮下組織内に確実に位置させての注射が正確に実行されることになる特有の効果を奏することができることになる。
【0075】
この発明は、上述した実施例の、用途、構成及び数値に限定されることなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更・変形可能であることは言うまでもない。
【0076】
例えば、上述した実施例において、注射針16をシリンジ本体12に一体的に形成された注射針付きシリンジ10として説明したが、この発明は、このような構成に限定されることなく、注射針16をシリンジと別体として形成し、このシリンジに形成された取り付け部に取り付けるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0077】
また、上述した実施例において、この注射針16を人体の皮膚に穿刺する用途として用いるように説明したが、この発明は、このような用途に限定されることなく、例えば、豚や牛、馬等の家畜の皮膚に穿刺する用途として用いることも可能であることは言うまでもない。
【0078】
また、上述した実施例において、注射針16の先端部24の外径寸法をφ0.2mmとなるように説明したが、これは一例であって、この数値に限定されることなく、例えば、人体用においては0.08mmから0.8mmの範囲であれば、極細の構造となるものであるが、別段、これを超える外径寸法であってもよく、また、家畜用であれば、0.5mmから2〜3mm程度の外径寸法のものであってもよく、特に、豚の場合には、表皮が硬く厚いので、これ以上の外径寸法の注射針として製造することもあるものである。この場合であっても、注射針16の先端部24が中実に形成されているため、強い強度をもって、確実に硬い皮膚に穿刺することが可能となる特有の効果を奏することができるものである。
【0079】
また、上述した実施例において、連結ステム34として4つ設けるように説明したが、この発明は、このような数値に限定されることなく、その配設数に限定はなく、1つでもよいし、また、図12及び図13を用いて上述した実施例の第1の変形例として示すように、2つ設けるようにしてもよいものである。尚、以下の説明において、上述した一実施例と同一の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
また、この連結ステム34の配設数は、4つでも2つでもなく、3つであってもよく、要は、接続部32と中間部26とは少なくとも1つの連結ステムで連結されていればよいものである。例えば、図14に連結ステム34を1つ設ける場合としての第2の変形例の構造を示すが、この図14に示すように、連結ステム34が1つの場合には、射出成型からの型抜きの際にオフセットがなく円滑に型抜きができるようにするためには、1つの連結ステム34を設けて接続部32と中間部26との間に隙間を規定する場合には、連結ステム34に設けられ、軸方向に沿って貫通する1つの空間が必須となるが、出口開口14Eから出た薬液は、この空間を通って、皮下組織内に半径方向に沿って注出されることになる。
【0081】
また、上述した実施例において、各部の外形寸法、内径寸法、傾斜角度や交差角度等、それぞれ数値を用いて説明したが、この発明は、このような数値に何ら限定されることがないことは言うまでもない。
【0082】
また、上述した実施例において、先端針部30の形状を斜辺αが接続部32の先端面に対して直交するような、換言すれば、針先Sを規定する頂点が、三角形状の底辺の中央位置の直上方となる正三角錐ではなく斜三角錐となるように説明したが、この発明はこのような形状に限定されることなく、頂点が上面視で中央に位置する正三角錐の形状でもよいものであり、更には図15に先端針部30の第3の変形例として示すように、円錐形状であってもよいことは言うまでもない。
【0083】
また、上述した実施例において、先端針部30の形状を三角錐形状として、3つの側面が三角形状の平面から構成されるように説明したが、この発明はこのような形状に限定されることなく、曲面と平面との組み合わせとして構成してもよいものである。この場合、たがいに隣接する側面が平面の場合に、これの交線から規定される斜辺は直線からなる線分となるものであり、曲面と平面、又は、曲面同士の場合に、これの交線から規定される斜辺は、曲線からなる線分となるものである。共に、この先端針部30が皮膚に穿刺される際に、皮膚の穿刺部分を切り分けて内部に入り込んでいくものであるが、相対的な比較でいえば、直線より曲線のほうが「切れ味」がよいものであるが、直線状の斜辺からなる三角錐形状であっても、十分に穿刺抵抗が小さいものであり、この注射針16を穿刺された際の痛みを可及的に低減させることができるものである。
【0084】
また、上述した実施例において、先端針部30の三角錐形状の各斜辺が、直線であろうと曲線であろうと、要はスムーズな線分から構成されるように説明したが、この発明は、このような形状に限定されることなく、例えば、図16に先端針部30の第4の変形例として示すように、多数の角部を有する所謂「ぎざぎざ」状の線分を備えてもよいことは言うまでもない。このようにぎざぎざ線から斜辺を構成することにより、皮膚との接触部を過給的に小さく設定でき、これにより、直線や曲線のようなスムーズな線分の場合と比較して、与える痛みを極力低減することができるという特有の効果を奏することができるものである。
【0085】
また、上述した実施例において、注射針16を皮膚に穿刺して、皮下注射をする場合につき説明したが、この発明はこのような場合に限定されることなく、例えば、皮膚を構成する真皮に薬液を注出することができるものであり、この場合には、皮下組織に薬液を注出させる場合と比較して、注射針16の挿入深さを浅くすればよいものであるが、この実施例の注射針16は、挿入深さを容易に自由設定できるものであるため、出口開口14Eから出る薬液の注出先(対象)は皮下組織内にしろ、真皮内にしろ、また、筋肉内にしろ、自由に設定することができるものである。
【0086】
また、上述した実施例において、隙間Dの間隔(中間部26と接続部32との離間距離)を所定の値となるように説明したが、この発明は、このような構成に限定されることなく、この隙間Dの間隔をなし(即ち、零)に設定することができることは言うまでもない。この場合、出口開口14Eからの薬液は、中間部26と接続部32との間の直径差に基づくリング状の空間から体内に注出されることになる。
【0087】
また、上述した実施例において、この注射針付きシリンジ10の材料として、ポリグリコール酸(PGA)樹脂を用いるように説明したが、この発明はこのような材料を用いることに限定されることなく、要は、射出成形により一体成形することができ、また、医療用機器として用いる品質及び性能に合致するものであれば、何でもよいことは言うまでもない。例えば、医療用プラスチックとして広く知られているポリ塩化ビニル、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等や、この他に、各種熱可塑性エラストマーやポリスチレン、ポリスルホン、シリコーン等の特殊プラスチックを用い得ることは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上詳述したように、この発明によれば、微細な注射針をシリンジに一体に取り付けた状態で合成樹脂から射出成型技術を用いて、一部品として一体成型で製造することが可能となり、コストの低廉化を果たすことができると共に、穿刺抵抗を可及的に小さく設定して穿刺時の痛み軽減を図ることができ、更には、たとえ注射針を微細に形成したとしても十分な強度が担保され、その安全性が確保できるようになるので、病院・医院等の医療現場で有効に用いられ得る合成樹脂製注射針が提供されるものであり、その利用性は計り知れない。
【符号の説明】
【0089】
10 注射針付きシリンジ
12 シリンジ本体
12A 一方の端面
12B 他方の端面
12C 連通穴
14 薬液流路
14A 第1の流路
14B 第2の流路
14C 第3の流路
14D テーパー状絞り部
14E 出口開口
16 注射針
18 フランジ
20 基端部
22 針部
24 先端部
26 中間部
28 基部
30 先端針部
32 接続部
34 連結ステム
34A 外面
34B 傾斜面
36 第1の側面
38 第2の側面
40 第3の側面
42 テーパー部
C 接続部32の先端外周縁
D 中間部26と接続部32との離間距離
P 空間
S 針先
X、Y、Z 頂点
α、β、γ 斜辺
θ1 第1の所定の鋭角
θ2 第2の所定の鋭角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16