(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6678886
(24)【登録日】2020年3月23日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】給水予熱装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 9/26 20060101AFI20200406BHJP
F22D 1/08 20060101ALI20200406BHJP
F28D 1/047 20060101ALI20200406BHJP
B23P 15/26 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
F28F9/26
F22D1/08
F28D1/047 B
B23P15/26
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-105098(P2016-105098)
(22)【出願日】2016年5月26日
(65)【公開番号】特開2017-211144(P2017-211144A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】亀山 達彦
【審査官】
伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−523577(JP,A)
【文献】
特開2003−28583(JP,A)
【文献】
特開平10−96504(JP,A)
【文献】
特開昭61−216824(JP,A)
【文献】
特開2002−364989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/26
B23P 15/26
F22D 1/08
F28D 1/047
B23K 1/00
B21C 37/22
B21D 53/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラから排出される排ガスを通す排ガス通路に設置した熱交換器によってボイラ給水の予熱を行うようにしている給水予熱装置を持ったボイラであって、熱交換器は多数のフィンチューブを設置し、フィンチューブの端部同士をU字ベンド管で連結するようにしている給水予熱装置において、前記フィンチューブのU字ベンド管による連結を行う場合、フィンチューブを支えるための溝を長手方向に一定間隔で設けた2本1対のフィン管用治具を用い、平行に配置したフィン管用治具の溝にフィンチューブをセットするとともに、フィンチューブのフィン管用治具の溝とは反対側には押さえ板を配置してフィン管用治具と押さえ板によってフィンチューブを挟み込むようにしておき、前記のフィン管用治具と押さえ板で挟み込んだフィンチューブは、所定段数重ねるようにしてフィンチューブの位置を固定し、その後にフィンチューブ端部をU字ベンド管で連結し、フィンチューブの連結完了後に前記の押さえ板とフィン管用治具をフィンチューブ群から抜き取るようにしていることを特徴とする給水予熱装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の給水予熱装置の製造方法において、前記のフィン管用治具と押さえ板を積み重ねる面には長手方向に延びるレールを設置しておき、フィン管用治具を積み重ねる際にはレールをかみ合わせることで積み重ね時のずれを防止するようにしていることを特徴とする給水予熱装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のフィンチューブを連結することで構成する給水予熱装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平10−96504号公報や特開2013−108643号公報に記載があるように、ボイラでは、ボイラ給水と燃焼排ガスの間で熱交換することによる給水予熱が広く行われている。給水予熱装置は、排ガス通路内に排ガス流とは交差する方向に延びるフィンチューブを多数設置しておき、フィンチューブ内部にボイラ給水を通すことで、フィンチューブ周囲に流れる排ガスとフィンチューブ内を流れるボイラ給水の間で熱交換を行う。このような給水予熱装置でのフィンチューブは、一般的には端部同士を180°のU字ベンド管でつなぐことで長い流路を形成しており、ボイラ給水はフィンチューブによる流路の一方の端部から他方の端部へ向けて、途中で何度も折り返しながら流れるようにしている。
【0003】
この給水予熱装置を組み立てる場合、複数本のフィンチューブをベンド管で連結する際には、熱交換器の管板及び筐体(ケーシング等)にフィンチューブを取り付けておき、フィンチューブ先端にベンド管を溶接するようにしている。組み立てでは、まず多数の穴を開けている管板を置き、管板の穴に全てのフィンチューブを差し込み、その端に管板誘導治具を差し込む。そして管板と上部管板および側板を組み立てて仮付け後、管板誘導治具は取り外す。次にフィンチューブ端部に180°のUベンド管を溶接することによって行う。フィンチューブにU字ベンド管を接続する場合、先にフィンチューブの位置を固定させておく必要があり、そのためにフィンチューブと管板及び側板の組み立てを行う。また、このような製造時、治具を用いることによって製造の精度向上と時間短縮を行えるため、治具を使用して製造する。しかし、フィンチューブの長さや設置本数が機種毎に異なるという場合、治具は機種ごとに必要であり、機種に応じて治具を入れ替えながら製造することになる。また、溶接工程で当該ワークを取り扱う際にも、ワーク及び治具の総重量が重いことから扱いにくいという問題があった。
【0004】
また、特開平10−96504号に記載の発明では、直管形状のフィンチューブを曲げ加工によって蛇行形状のフィンチューブにする製造方法が記載されている。この場合、直管状のフィンチューブに、フィン状部材を複数の群に分けて、各フィン状部材群間に所定の間隔をおいて固定しておき、フィン状部材の無い箇所を交互に逆方向に曲げ加工して、平面的に蛇行した形状のフィンチューブとしている。この場合は、ベント管を溶接する必要はなくなるが、フィン状部材を設置しているフィンチューブの曲げ加工を精度良く行わなければならず、容易に製造することができるものではなかった。
【0005】
そのため、給水予熱装置の熱交換部における軽量化と製造の簡素化、また治具の共通化が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−96504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、フィンチューブを180°ベンド管で連結して構成する熱交換器からなる給水予熱装置において、簡素化による軽量化とコスト削減を行うことができ、さらに治具の共通化を図ることのできる給水予熱装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、ボイラから排出される排ガスを通す排ガス通路に設置した熱交換器によってボイラ給水の予熱を行うようにしている給水予熱装置を持ったボイラであって、熱交換器は多数のフィンチューブを設置し、フィンチューブの端部同士をU字ベンド管で連結するようにしている給水予熱装置において、前記フィンチューブのU字ベンド管による連結を行う場合、フィンチューブを支えるための溝を長手方向に一定間隔で設けた2本1対のフィン管用治具を用い、平行に配置したフィン管用治具の溝にフィンチューブをセットするとともに、フィンチューブのフィン管用治具の溝とは反対側には押さえ板を配置してフィン管用治具と押さえ板によってフィンチューブを挟み込むようにしておき、前記のフィン管用治具と押さえ板で挟み込んだフィンチューブは、所定段数重ねるようにしてフィンチューブの位置を固定し、その後にフィンチューブ端部をU字ベンド管で連結し、フィンチューブの連結完了後に前記の押さえ板とフィン管用治具をフィンチューブ群から抜き取るようにしていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記の給水予熱装置の製造方法において、前記のフィン管用治具と押さえ板を積み重ねる面には長手方向に延びるレールを設置しておき、フィン管用治具を積み重ねる際にはレールをかみ合わせることで積み重ね時のずれを防止するようにしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明を実施することによって、給水予熱装置自体の簡素化による軽量化とコスト削減を行うことができ、さらに治具の簡素化と共通化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明の一実施例の給水予熱装置の製造工程説明
図1
【
図3】本発明の一実施例の給水予熱装置の製造工程説明
図2
【
図4】組み立てた給水予熱装置の熱交換器部分の斜視図
【
図5】組み立てた給水予熱装置の熱交換器部分の正面図
【
図6】組み立てた給水予熱装置の熱交換器部分の側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明を実施している給水予熱装置の断面図、
図2と
図3は本発明の一実施例の給水予熱装置の製造工程説明図、
図4は組み立てた給水予熱装置の熱交換器部分の斜視図、
図5は組み立てた給水予熱装置の熱交換器部分の正面図、
図6は組み立てた給水予熱装置の熱交換器部分の側面図である。
【0013】
ボイラ1で発生した燃焼排ガスは、排ガス通路2を通して戸外へ排出するものであるが、排ガス通路2途中に給水予熱装置7を設けており、排ガスは給水予熱装置7を通した後に戸外へ排出する。給水予熱装置7は略直方体の形状をしており、給水予熱装置7は側面に排ガス入口8、上面に排ガス出口9を設けている。排ガス入口8は、給水予熱装置7の側面であるが上面に近い位置に設けており、排ガスは給水予熱装置内の上部に入る。
【0014】
給水予熱装置内には、内部を排ガス入口8側と排ガス出口9側に分割する仕切板4を設置しておく。仕切板4は、上端側と左右の端部では給水予熱装置の排ガス流路壁面とつながり、下端側では給水予熱装置底面との間に隔たりを持ったものとしており、給水予熱装置内は仕切板4の下方以外で分断している。給水予熱装置内部は、仕切板によって2つの排ガス流路に分割した構成で、排ガス入口8側の流路は排ガス流下降流路10、排ガス出口9側の流路は排ガス流上昇流路11となる。排ガス流は排ガス流下降流路10で下降し、仕切板4の下方でターンした後、排ガス流上昇流路11で上昇流となる。
【0015】
排ガス流下降流路10内には水平方向に伸びる多数のフィンチューブ3からなる熱交換器を設置する。フィンチューブ3は、素管表面に全周の熱吸収用フィンを設置したものであり、熱吸収用フィンを設置することで伝熱面積が大きくなるため、熱吸収量を大きくすることができる。給水予熱装置7内の各フィンチューブ3は、端部を連結することで蛇行する長い給水流路を形成するようにしており、給水予熱装置内への給水は、フィンチューブ群の最下段のフィンチューブ3より行う。給水予熱装置内での給水は、最下段のフィンチューブ3から順次通り、加熱されながら最上段のフィンチューブ3まで達する。予熱を行った給水は、給水予熱装置より取り出して、ボイラ1内へ供給する。伝熱面積を大きくしたフィンチューブ3では、燃焼排ガスが熱吸収用フィンの表面に沿って流れる際に燃焼排ガスから熱を吸収する。排ガス流下降流路10内にはフィンチューブ3による熱交換器を設置しており、フィンチューブ3内には温度の低いボイラ給水が流れるため、最初高温であった排ガスは、フィンチューブ3を加熱するにつれて温度を低下させていく。替わりにフィンチューブ3内を流れる給水は温度を上昇させていく。
【0016】
フィンチューブ3による熱交換器を組み立てる際、熱交換器が縦長形状となる場合、つまりフィンチューブ3の配置が列数より段数の方が大きくなる場合は、90°回転させて寝かした状態で組み立てる。
図1での熱交換器は、3列6段のフィンチューブ3を設置するものであって、縦長形状になるものであるため、横に寝かした状態に組み立てる。
【0017】
フィンチューブ3による熱交換器の製造では、フィンチューブ3を等間隔に配置するためのフィン管用治具12を使用する。このフィン管用治具12は、フィンチューブ3を支えるためのV字状又は半円状の溝を掘った2本1対の支持金具であって、溝は長手方向に一定間隔で配置している。使用するフィンチューブ3の長さに対応する位置に2本のフィン管用治具12を平行に置き、フィン管用治具の溝は上向きとしてこの溝にフィンチューブ3の端部に近い素管部分をセットする。このとき、フィンチューブ3の長さにあわせて2本のフィン管用治具12の間隔を調節するものであるため、機種によるフィンチューブ長さの違いに対応することができる。また、フィン管用治具にセットする本数を調節することで熱交換器のフィンチューブ3の段数を調節することができる。
【0018】
フィン管用治具12の溝に必要数のフィンチューブ3を並べると、次に押さえ板13のセットを行う。押さえ板13も、フィンチューブ3を支えるための2本1対の支持具であるが、前記のフィン管用治具12とは違ってフィンチューブ3を乗せ置く溝は掘っておらず、上下の面は平らとしている。また、押さえ板13とフィン管用治具12が重なる部分では、長手方向に延びるレールを設け、両者がレールでかみ合わさるようにしておいてもよい。図では押さえ板13の上面に凸形状のレールを設置し、フィン管用治具12の下面には凹形状のレールを設置して両者をかみ合わせるようにしている。レールを設置することで組み立て時のずれを無くすことができる。ただし、押さえ板13は横方向にスライドさせて抜き出すことができるようにする必要があり、そのためにレールは縦方向に延びるものとしておく。
【0019】
2本の押さえ板13は、フィン管用治具12に重ねるようにして、フィンチューブ端部の上側に乗せ置き、さらにその上に2段目のフィン管用治具12を乗せ置く。2段目のフィン管用治具12にも1段目と同様にフィンチューブ3をセットして、その上に2段目の押さえ板13を乗せ置く。このフィンチューブ3と治具による段は、熱交換器でのフィンチューブの列数分繰り返す。熱交換器でのフィンチューブの列数は機種毎に異なることがあるが、フィンチューブ3を設置する段数を調節することで多種類の熱交換器に対応することができる。実施例ではフィンチューブ3は3列であるために、3段積み上げるようにしている。そして必要段数分を積み上げた状態でクランプなどを使用して上下方向に締め付け、フィンチューブ3の位置を固定する。
【0020】
次にフィンチューブ3の端部同士をU字ベンド管6によって連結する。溶接する際にはフィンチューブ端部が上になっている方が作業し易い場合には、溶接する側のフィンチューブ端部が上側に来るようにフィン管用治具ごと90°回転させてもよい。フィン管用治具12は上下方向に締め付けて固定しているものであるため、回転させてもフィンチューブ3のピッチは固定されている。
【0021】
その後、フィンチューブ端部にU字ベンド管6を順次溶接していく。一方の面でU字ベンド管6の溶接が終了すると、さらにフィン管用治具を180°回転させて反対側のフィンチューブ端部でもU字ベンド管6を溶接する。
【0022】
溶接終了後、クランプを外して押さえ板13を取り外す。押さえ板13は上下面が平らであるため、横方向にスライドさせて抜き出すことができる。押さえ板13を取り外すことでフィン管用治具12をずらすことができるようになり、フィン管用治具12も取り外すことで熱交換器部分のみが残る。
【0023】
完成した熱交換器は管板及び筐体が省かれているために製品は軽量化することができ、シンプルで低コストとなる。また、フィンチューブの長さに応じて平行に設置するフィン管用治具12の間隔を調節し、熱交換器のフィンチューブ段数に応じて1段のフィン管用治具12にセットするフィンチューブの本数を調節し、熱交換器のフィンチューブ列数に応じてフィン管用治具12の積み上げ段数を調節することができるため、治具の共通化を図ることができる。
【0024】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 ボイラ
2 排ガス通路
3 フィンチューブ
4 仕切板
5 熱吸収用フィン
6 U字ベンド管
7 給水予熱装置
8 排ガス入口
9 排ガス出口
10 排ガス流下降流路
11 排ガス流上昇流路
12 フィン管用治具
13 押さえ板