(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接続機構を外側から覆いつつ前記第1部位および前記第2部位に被せられ、少なくとも前記接続機構に対応する位置において伸縮性を有する外皮を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のロボット。
前記第2部位のヨーイングを実現するために前記回転軸周りに前記第2ベースを回動させるアクチュエータをさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のロボット。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略することがある。
【0013】
図1は、実施形態に係るロボット100の外観を表す図である。
図1(a)は正面図であり、
図1(b)は側面図である。
ロボット100は、外部環境および内部状態に基づいて行動や仕草(ジェスチャー)を決定する自律行動型のロボットである。外部環境は、カメラやサーモセンサなど各種のセンサにより認識される。内部状態はロボット100の感情を表現するさまざまなパラメータとして定量化される。
【0014】
ロボット100は、屋内行動が前提とされており、例えば、オーナー家庭の家屋内を行動範囲とする。以下、ロボット100に関わる人間を「ユーザ」とよぶ。
【0015】
ロボット100のボディ104は、全体的に丸みを帯びた形状を有し、柔軟で弾力性のある素材により形成された外皮314を含む。ロボット100に服を着せてもよい。丸くてやわらかく、手触りのよいボディ104とすることで、ロボット100はユーザに安心感とともに心地よい触感を提供する。
【0016】
ロボット100は、総重量が15キログラム以下、好ましくは10キログラム以下、さらに好ましくは、5キログラム以下である。ロボット100の身長は1.2メートル以下、好ましくは、0.7メートル以下である。ユーザは、乳児を抱っこするのと同等の労力でロボット100を抱っこできる。
【0017】
ロボット100は、3輪走行するための3つの車輪を備える。図示のように、一対の前輪102(左輪102a,右輪102b)と、一つの後輪103を含む。前輪102が駆動輪であり、後輪103が従動輪である。前輪102は、回転速度や回転方向が個別に制御可能とされている。後輪103は、ロボット100を前後左右への移動させるために回転自在となっている。
【0018】
前輪102および後輪103は、図示しない駆動機構(回動機構、リンク機構)によりボディ104に完全収納できる。走行時においても各車輪の大部分はボディ104に隠れているが、各車輪がボディ104に完全収納されるとロボット100は移動不可能な状態となる。車輪の収納動作に伴ってボディ104が降下し、床面Fに着座する。この着座状態においては、ボディ104の底部に形成された着座面108が床面Fに当接する。
【0019】
ロボット100は、2つの手106を有する。手106には、モノを把持する機能はない。手106は、図示しない内蔵ワイヤを引っ張る又は緩めることにより、上げる、振る、振動するなど簡単な動作が可能である。2つの手106も個別制御可能である。
【0020】
ロボット100の頭部正面(顔)には2つの目110が設けられている。目110は、液晶素子または有機EL素子により、様々な表情で表示される。ロボット100は、スピーカーを内蔵し、簡単な音声を発することもできる。ロボット100の頭頂部にはツノ112が取り付けられる。ツノ112には全天球カメラが内蔵され、上下左右全方位を一度に撮影できる。また、ロボット100の頭部正面には、高解像度カメラが設けられる(図示せず)。
【0021】
図2は、ロボット100の構造を概略的に表す断面図である。
ボディ104は、ベースフレーム308、本体フレーム310、一対のホイールカバー312および外皮314を含む。ベースフレーム308は、ボディ104の軸芯を構成するとともに内部機構を支持する。ベースフレーム308は、ロアプレート334に複数のサイドプレート336を立設して構成される。ベースフレーム308の内方には、バッテリー118、制御回路342および各種アクチュエータ等が収容されている。
【0022】
本体フレーム310は、頭部フレーム316および胴部フレーム318を含む。頭部フレーム316は、中空半球状をなし、ロボット100の頭部骨格を形成する。胴部フレーム318は、段付筒形状をなし、ロボット100の胴部骨格を形成する。胴部フレーム318の下端部が、ロアプレート334に固定されている。頭部フレーム316は、リンク構造330を介して胴部フレーム318に接続されている。
【0023】
頭部フレーム316は、ヨー軸321、ピッチ軸322およびロール軸323を有する。頭部フレーム316のヨー軸321周りの回動(ヨーイング)により首振り動作が実現され、ピッチ軸322周りの回動(ピッチング)により頷き動作,見上げ動作および見下ろし動作が実現され、ロール軸323周りの回動(ローリング)により首を左右に傾げる動作が実現される。各軸は、リンク構造330の駆動態様に応じて三次元空間における位置や角度が変化し得る。詳細については後述する。
【0024】
胴部フレーム318は、ベースフレーム308および車輪駆動機構370を収容している。車輪駆動機構370は、前輪102を駆動する前輪駆動機構と、後輪103を駆動する後輪駆動機構と、これらの駆動機構を駆動するアクチュエータ379を含み、ロボット100を移動させる「移動機構」として機能する。胴部フレーム318は、ボディ104のアウトラインに丸みをもたせるよう、上半部が滑らかな曲面形状とされている。胴部フレーム318の下半部は、ホイールカバー312との間に前輪102の収納スペースSを形成するために小幅とされ、前輪102の回動軸378を支持している。
【0025】
一対のホイールカバー312は、胴部フレーム318の下半部を左右から覆うように設けられている。ホイールカバー312は、胴部フレーム318の上半部と連続した滑らかな外面(曲面)を形成する。ホイールカバー312の上端部が、上半部の下端部に沿って連結されている。それにより、下半部の側壁とホイールカバー312との間に、下方に向けて開放される収納スペースSが形成されている。
【0026】
前輪駆動機構は、前輪102を回転させるための回転駆動機構と、前輪102を収納スペースSから進退させるための収納作動機構とを含む。前輪駆動機構の駆動により、前輪102を収納スペースSから外部へ向けて進退駆動できる。後輪駆動機構の駆動により、後輪103を収納スペースSから外部へ向けて進退駆動できる。
【0027】
外皮314は、本体フレーム310を外側から覆う。外皮314は、人が弾力を感じる程度の厚みを有し、ウレタンスポンジなどの伸縮性を有する素材で形成される。これにより、ユーザがロボット100を抱きしめると、適度な柔らかさを感じ、人がペットにするように自然なスキンシップをとることができる。本体フレーム310と外皮314の間には、静電容量型のタッチセンサが設けられる。タッチセンサは、複数箇所に設けられ、ロボット100のほぼ全域におけるタッチを検出する。タッチセンサは外皮314の内側に設けられているので、外皮314が変形すると検出レベルが高くなる。つまり、人がロボット100を強く抱きしめているか、そっと抱きしめているか等の接触状態を判断できる。手106は、外皮314と一体に形成されている。外皮314の上端部には、開口部390が設けられる。ツノ112の下端部が、開口部390を介して頭部フレーム316に接続されている。
【0028】
手106を駆動するための駆動機構は、外皮314に埋設されたワイヤ134と、その駆動回路340(通電回路)を含む。ワイヤ134は、本実施形態では形状記憶合金線からなり、加熱されると収縮硬化し、徐熱されると弛緩伸長する。ワイヤ134の両端から引き出されたリード線が、駆動回路340に接続されている。駆動回路340のスイッチがオンされるとワイヤ134(形状記憶合金線)に通電がなされる。
【0029】
ワイヤ134は、外皮314から手106に延びるようにモールド又は編み込まれている。ワイヤ134の両端から胴部フレーム318の内方にリード線が引き出されている。ワイヤ134は外皮314の左右に1本ずつ設けてもよいし、複数本ずつ並列に設けてもよい。ワイヤ134に通電することで腕(手106)を上げることができ、通電遮断することで腕(手106)を下げることができる。また、別の形態では、手106の先端付近にワイヤを取り付け、胴部フレーム318にワイヤを巻き取る機構を設け、ワイヤの長さを巻き取り機構の出し入れで調整することにより手106を駆動してもよい。
【0030】
図3は、リンク構造330およびその周辺構造を表す説明図である。
図3(a)は拡大断面図であり、
図3(b)は平面図である。
図3(a)に示すように、リンク構造330は、胴部(第1部位)を構成する第1ベース331と、頭部(第2部位)を構成する第2ベース332と、両ベースを接続する接続機構333とを含む。
【0031】
図3(b)にも示すように、第1ベース331は、円板状をなし、胴部フレーム318の上端部に固定されている。第1ベース331は、ロアプレート334と平行に設けられ、その中央には配線を通すための挿通孔335が設けられている。第1ベース331には、その軸線Lを中心とした仮想円VC上に3つのモータ(第1モータ344,第2モータ346,第3モータ348)が等間隔(120度おき)で設置されている。ロボット100の中心軸に対して、第1モータ344は後方、第2モータ346は右前方、第3モータ348は左前方にそれぞれ位置する。これらのモータは、接続機構333を駆動する「駆動部」を構成し、後述するリンク機構(後述する)を駆動して頭部のピッチングおよびローリングを実現する「第1〜第3アクチュエータ」として機能する。
【0032】
第2ベース332は、段付円筒状をなし、頭部フレーム316に同軸状に接続されている。頭部フレーム316の底部と第2ベース332との間には、環状のスペーサ337(滑り軸受)が介装されている。接続機構333は、ロボット100の頭部と胴部とをつなぐ首部(首関節)として機能する。
【0033】
頭部フレーム316の底部中央には、下方に向けて突出する円筒状の回動軸350(円筒軸)が設けられている。回動軸350は、第2ベース332に同軸状に挿通されている。回動軸350は、ヨー軸321を中心に第2ベース332に対して回動できる。頭部フレーム316内の周縁部にはモータ354が設置されている。モータ354の回転軸は頭部フレーム316の底部を貫通し、その先端にギヤ356が設けられている。モータ354は、頭部のヨーイングを実現する「アクチュエータ」として機能する。
【0034】
接続機構333は、胴部フレーム318の軸線方向(つまり鉛直方向)に伸縮可能な3つのリンク機構(第1リンク機構361,第2リンク機構362,第3リンク機構363)を含み、それらの伸縮により首部の伸縮動作を実現できる。第1リンク機構361は第1モータ344に接続され、第2リンク機構362は第2モータ346に接続され、第3リンク機構363は第3モータ348に接続されている。
【0035】
各リンク機構は、駆動リンク371および従動リンク372を直列に接続して構成され、互いに並列に配置されている。駆動リンク371の一端はモータの回転軸に対して固定され、他端が第1ジョイント374を介して従動リンク372の一端に接続されている。各モータの回転軸と各駆動リンク371との連結部が、上述した仮想円VC上に位置する。従動リンク372の他端は第2ジョイント376を介して第2ベース332に接続されている。第1ジョイント374は単軸のヒンジジョイントであり、第2ジョイント376はユニバーサルジョイントである。なお、駆動リンク371は、モータの回転軸に直接固定されてもよいし、減速機(ギア)等を介して固定されてもよい。
【0036】
第1ジョイント374の回動軸(軸線)は、モータの回転軸と平行とされている。第2ジョイント376は、第2ベース332から半径方向に延出したアーム部375の先端に設けられている。このような構成により、第2ベース332を鉛直方向(Z方向)に駆動でき、第2ベース332をピッチ軸322やロール軸323を中心に回動させることができる。すなわち、首の伸縮動作、頷き動作(見上げ/見下ろし動作)、傾げ動作等を実現できる。詳細については後述する。
【0037】
各モータの回転軸に外挿させるように、荷重キャンセル用のねじりばね349(トーションばね)が設けられている。ねじりばね349の一端側がモータの本体に対して固定され、他端側が駆動リンク371に対して固定されている。それにより、頭部の重力方向の荷重を一部キャンセルでき、モータのオフ時にも頭部を予め設定した基準位置に保つことができる。言い換えれば、頭部を基準位置に保持するためにモータを駆動する必要がない。モータの駆動により頭部をその基準位置に対して上昇又は降下させることで、首の伸縮動作を実現できる。頭部の全荷重をモータで受けとめる必要がないため、モータの負荷(トルク)を軽減でき、消費電力を抑えることができる。
【0038】
また、第2ベース332の外周の所定範囲にギヤ380が設けられ、モータ354のギヤ356と噛合している。このような構成により、モータ354を駆動することで頭部フレーム316をヨー軸321を中心に回動させることができ、首振り動作を実現できる。
【0039】
バッテリー118から延びる電源線や、制御回路342等から延びる信号線等の配線は、挿通孔335および回動軸350を通って頭部や首部のアクチュエータに接続される。これは、ヨーイング駆動を行うモータ354を頭部の中央に配置せず、周縁部に配置したことによる。配線を軸線に沿って延ばすことで、首振り動作を行ってもそれらの配線が絡まったり、その動作を妨げたりすることを防止又は抑制できる。
【0040】
頭部フレーム316と胴部フレーム318との間には、上下方向に十分な間隔が確保されているため、ピッチ軸322やロール軸323を中心とする頭部フレーム316の可動範囲(回転範囲)を大きくとることができる。
【0041】
本実施形態では、ピッチ軸322を中心とする頭部フレーム316の上下可動範囲を90度とし、ロボット100の視線が水平となる状態から上下に45度ずつとしている。すなわち、ロボット100が上向く角度(見上げ角)の限界値が45度とされ、下向く角度(見下ろし角)の限界値が−45度とされている。
【0042】
また、ヨー軸321を中心とする頭部フレーム316の左右可動範囲を80度とし、視線が正面となる状態から左右に40度ずつとしている。すなわち、ロボット100が正面に対して右を向く角度の限界値が40度とされ、左を向く角度の限界値が−40度とされている。
【0043】
さらに、ロール軸323を中心とする頭部フレーム316の傾き可動範囲を60度とし、頭部を真っ直ぐに立てた状態から左右への傾きが30度ずつとしている。すなわち、ロボット100が右側に傾げる限界値が30度とされ、左側に傾げる限界値が−30度とされている。なお、変形例においては、各軸周りの可動範囲を適宜変更してもよい。
【0044】
図4〜
図7は、リンク構造330の動作を例示する説明図である。
図4は首を伸ばしたときの状態を示し、
図5は首を縮めたときの状態を示す。
図6は頷き動作をするときの状態を示し、
図7は傾げ動作をするときの状態を示す。各図の(a)は平面図、(b)は斜視図、(c)は正面図、(d)は右側面図である。なお、以下では便宜上、三次元空間においてロボット100の上下方向をZ方向とし、これと垂直な左右方向をX方向、前後方向をY方向と表現することがある。
【0045】
図4に示すように、モータ344〜348は、仮想円VCに沿って同方向を向く(回転軸がモータの本体からみて同じ側に位置する)ように配置されている。これらのモータ344〜348を一方向に同角度回転させることで、全てのリンク機構361〜363を均等に伸ばすことができ、接続機構333を伸長させることができる。それにより、第2ベース332をその姿勢を一定に保ったまま第1ベース331から離間させ、ロボット100の首部を伸ばす動作を実現できる。
【0046】
一方、
図5に示すように、モータ344〜348を反対方向に同角度回転させることで、全てのリンク機構361〜363を均等に折りたたむことができ、接続機構333を縮小させることができる。それにより、第2ベース332をその姿勢を一定に保ったまま第1ベース331に近接させ、ロボット100の首部を縮めることができる。すなわち、モータ344〜348を同方向(一方向又は反対方向)に回転させることで、首部を伸縮させる動作を実現できる。
【0047】
また、
図6に示すように、第1モータ344を一方向に回転させ、第2モータ346および第3モータ348を反対方向に回転させることで、第2ベース332をピッチ軸322を中心に回動させて前方に傾けることができる。それにより、ロボット100の頭部を前傾させることができ、頷き動作や見下ろし動作を実現できる。図示を省略するが、第2モータ346および第3モータ348を一方向に回転させ、第1モータ344を反対方向に回転させることで、見上げ動作を実現できる。
【0048】
図7に示すように、第2モータ346を一方向に回転させ、第1モータ344および第3モータ348を反対方向に回転させることで、第2ベース332をロール軸323を中心に回動させて左方に傾けることができる。それにより、ロボット100の頭部を左側に傾げる動作を実現できる。図示を省略するが、第3モータ348を一方向に回転させ、第1モータ344および第2モータ346を反対方向に回転させることで、ロボット100の頭部を右側に傾げる動作を実現できる。
【0049】
なお、モータ344〜348のそれぞれの回転方向や回転速度を調整することにより、例えば見上げ動作をしながら首を傾げるなど、上記各種動作を組み合わせた(混合した)様々な動作を実現可能であることは言うまでもない。
【0050】
リンク構造330の構成上、3つのリンク機構は、互いの動きに制約を与える。頭部の並進運動については、実質的にZ方向の動きのみが許容され、X方向およびY方向の動きは許容されない(第2ベース332の傾動による微少変位を除く)。このことは、例えば頭部の軸が胴部の軸に対して平行移動するなど、生物的に違和感のある動作を防止できることを意味する。これは、各リンク機構の第1ジョイント374を単軸のヒンジジョイントとし、その軸をモータの軸と平行としたことによる。
【0051】
一方、頭部の傾動については、頭部の高さに応じて変位するピッチ軸322(X軸に平行な軸)およびロール軸323(Y軸に平行な軸)周りに許容される。これは、各リンク機構の第2ジョイント376をユニバーサルジョイントとしたことによる。
【0052】
なお、頭部の回動(首振り運動)については、既述のように、第2ベース332に設置されたモータ354の駆動により実現される。第2ベース332を基準として頭部フレーム316自体が回転するため、その回転はリンク構造330の作動による制約は受けない。つまり、首部の伸縮動作,頷き動作,傾げ動作等とは独立に首振り動作を実現でき、生物の骨格の動きに沿ったものとなる。
【0053】
図8は、ロボットシステム300の構成図である。
ロボットシステム300は、ロボット100、サーバ200および複数の外部センサ114を含む。家屋内にはあらかじめ複数の外部センサ114(外部センサ114a、114b、・・・、114n)が設置される。外部センサ114は、家屋の壁面に固定されてもよいし、床に載置されてもよい。サーバ200には、外部センサ114の位置座標が登録される。位置座標は、ロボット100の行動範囲として想定される家屋内においてx,y座標として定義される。
【0054】
ロボット100の内蔵するセンサおよび複数の外部センサ114から得られる情報に基づいて、サーバ200がロボット100の基本行動を決定する。
【0055】
外部センサ114は、定期的に外部センサ114のID(以下、「ビーコンID」とよぶ)を含む無線信号(以下、「ロボット探索信号」とよぶ)を送信する。ロボット100はロボット探索信号を受信するとビーコンIDを含む無線信号(以下、「ロボット返答信号」とよぶ)を返信する。サーバ200は、外部センサ114がロボット探索信号を送信してからロボット返答信号を受信するまでの時間を計測し、外部センサ114からロボット100までの距離を測定する。複数の外部センサ114とロボット100とのそれぞれの距離を計測することで、ロボット100の位置座標を特定する。
【0056】
図9は、ロボット100のハードウェア構成図である。
ロボット100は、内部センサ128、通信機126、記憶装置124、プロセッサ122、駆動機構120およびバッテリー118を含む。駆動機構120は、上述した接続機構333(リンク機構361〜363)や車輪駆動機構370を含む。プロセッサ122と記憶装置124は、制御回路342に含まれる。各ユニットは電源線130および信号線132により互いに接続される。バッテリー118は、電源線130を介して各ユニットに電力を供給する。各ユニットは信号線132により制御信号を送受する。バッテリー118は、リチウムイオン二次電池であり、ロボット100の動力源である。
【0057】
内部センサ128は、ロボット100が内蔵する各種センサの集合体である。具体的には、カメラ(全天球カメラ,高解像度カメラ)、マイクロフォンアレイ、測距センサ(赤外線センサ)、サーモセンサ、タッチセンサ、加速度センサ、ニオイセンサなどである。タッチセンサは、外皮314と本体フレーム310の間に設置され、静電容量の変化に基づいてユーザのタッチを検出する。ニオイセンサは、匂いの元となる分子の吸着によって電気抵抗が変化する原理を応用した既知のセンサである。
【0058】
通信機126は、サーバ200や外部センサ114、ユーザの有する携帯機器など各種の外部機器を対象として無線通信を行う通信モジュールである。記憶装置124は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリにより構成され、コンピュータプログラムや各種設定情報を記憶する。プロセッサ122は、コンピュータプログラムの実行手段である。駆動機構120は、内部機構を制御するアクチュエータである。このほかには、表示器やスピーカーなども搭載される。
【0059】
プロセッサ122は、通信機126を介してサーバ200や外部センサ114と通信しながら、ロボット100の行動選択を行う。内部センサ128により得られる様々な外部情報も行動選択に影響する。駆動機構120は、主として、車輪(前輪102)や頭部(頭部フレーム316)の動きを制御する。駆動機構120は、2つの前輪102それぞれの回転速度や回転方向を変化させることにより、ロボット100の移動方向や移動速度を変化させる。また、駆動機構120は、車輪(前輪102および後輪103)を昇降させることもできる。車輪が上昇すると、車輪はボディ104に完全に収納され、ロボット100は着座面108にて床面Fに当接し、着座状態となる。また、駆動機構120は、ワイヤ134を介して、手106を制御する。
【0060】
図10は、ロボットシステム300の機能ブロック図である。
上述のように、ロボットシステム300は、ロボット100、サーバ200および複数の外部センサ114を含む。ロボット100およびサーバ200の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。ロボット100の機能の一部はサーバ200により実現されてもよいし、サーバ200の機能の一部または全部はロボット100により実現されてもよい。
【0061】
(サーバ200)
サーバ200は、通信部204、データ処理部202およびデータ格納部206を含む。通信部204は、外部センサ114およびロボット100との通信処理を担当する。データ格納部206は各種データを格納する。データ処理部202は、通信部204により取得されたデータおよびデータ格納部206に格納されるデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部202は、通信部204およびデータ格納部206のインタフェースとしても機能する。
【0062】
データ格納部206は、モーション格納部232、マップ格納部216および個人データ格納部218を含む。ロボット100は、複数の動作パターン(モーション)を有する。手106を震わせる、蛇行しながらユーザに近づく、首をかしげたままユーザを見つめる、など様々なモーションが定義される。
【0063】
モーション格納部232は、モーションの制御内容を定義する「モーションファイル」を格納する。各モーションは、モーションIDにより識別される。モーションファイルは、ロボット100のモーション格納部160にもダウンロードされる。どのモーションを実行するかは、サーバ200で決定されることもあるし、ロボット100で決定されることもある。ロボット100のモーションの多くは、複数の単位モーションを含む複合モーションとして構成される。
【0064】
マップ格納部216は、状況に応じたロボットの行動を定義した行動マップのほか、椅子やテーブルなどの障害物の配置状況を示すマップも格納する。個人データ格納部218は、ユーザの情報を格納する。具体的には、ユーザに対する親密度とユーザの身体的特徴・行動的特徴を示すマスタ情報を格納する。年齢や性別などの他の属性情報を格納してもよい。
【0065】
ロボット100は、ユーザごとに親密度という内部パラメータを有する。ロボット100が、自分を抱き上げる、声をかけてくれるなど、自分に対して好意を示す行動を認識したとき、そのユーザに対する親密度が高くなる。ロボット100に関わらないユーザや、乱暴を働くユーザ、出会う頻度が低いユーザに対する親密度は低くなる。
【0066】
データ処理部202は、位置管理部208、認識部212、動作制御部222および親密度管理部220を含む。位置管理部208は、ロボット100の位置座標を、
図8を用いて説明した方法にて特定する。位置管理部208はユーザの位置座標もリアルタイムで追跡してもよい。
【0067】
認識部212は、外部環境を認識する。外部環境の認識には、温度や湿度に基づく天候や季節の認識、光量や温度に基づく物陰(安全地帯)の認識など多様な認識が含まれる。ロボット100の認識部150は、内部センサ128により各種の環境情報を取得し、これを一次処理した上でサーバ200の認識部212に転送する。
【0068】
認識部212は、更に、人物認識部214と応対認識部228を含む。人物認識部214は、ロボット100の内蔵カメラによる撮像画像から抽出された特徴ベクトルと、個人データ格納部218にあらかじめ登録されているユーザ(クラスタ)の特徴ベクトルと比較することにより、撮像されたユーザがどの人物に該当するかを判定する(ユーザ識別処理)。人物認識部214は、表情認識部230を含む。表情認識部230は、ユーザの表情を画像認識することにより、ユーザの感情を推定する。
【0069】
応対認識部228は、ロボット100になされた様々な応対行為を認識し、快・不快行為に分類する。応対認識部228は、また、ロボット100の行動に対するユーザの応対行為を認識することにより、肯定・否定反応に分類する。快・不快行為は、ユーザの応対行為が、生物として心地よいものであるか不快なものであるかにより判別される。
【0070】
動作制御部222は、ロボット100の動作制御部152と協働して、ロボット100のモーションを決定する。動作制御部222は、ロボット100の移動目標地点とそのための移動ルートを作成する。動作制御部222は、複数の移動ルートを作成し、その上で、いずれかの移動ルートを選択してもよい。動作制御部222は、モーション格納部232の複数のモーションからロボット100のモーションを選択する。
【0071】
親密度管理部220は、ユーザごとの親密度を管理する。親密度は個人データ格納部218において個人データの一部として登録される。快行為を検出したとき、親密度管理部220はそのユーザに対する親密度をアップさせる。不快行為を検出したときには親密度はダウンする。また、長期間視認していないユーザの親密度は徐々に低下する。
【0072】
(ロボット100)
ロボット100は、通信部142、データ処理部136、データ格納部148、内部センサ128、および駆動機構120を含む。通信部142は、通信機126(
図9参照)に該当し、外部センサ114、サーバ200および他のロボット100との通信処理を担当する。データ格納部148は各種データを格納する。データ格納部148は、記憶装置124(
図9参照)に該当する。データ処理部136は、通信部142により取得されたデータおよびデータ格納部148に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部136は、プロセッサ122およびプロセッサ122により実行されるコンピュータプログラムに該当する。データ処理部136は、通信部142、内部センサ128、駆動機構120およびデータ格納部148のインタフェースとしても機能する。
【0073】
データ格納部148は、ロボット100の各種モーションを定義するモーション格納部160を含む。モーション格納部160には、サーバ200のモーション格納部232から各種モーションファイルがダウンロードされる。モーションは、モーションIDによって識別される。様々なモーションを表現するために、各種アクチュエータ(駆動機構120)の動作タイミング、動作時間、動作方向などがモーションファイルにおいて時系列定義される。
【0074】
データ格納部148には、マップ格納部216および個人データ格納部218からも各種データがダウンロードされてもよい。
【0075】
データ処理部136は、認識部150および動作制御部152を含む。認識部150は、内部センサ128から得られた外部情報を解釈する。認識部150は、視覚的な認識(視覚部)、匂いの認識(嗅覚部)、音の認識(聴覚部)、触覚的な認識(触覚部)が可能である。
【0076】
認識部150は、内蔵の全天球カメラにより定期的に外界を撮像し、人やペットなどの移動物体を検出する。認識部150は、移動物体の撮像画像から特徴ベクトルを抽出する。上述したように、特徴ベクトルは、移動物体の身体的特徴と行動的特徴を示すパラメータ(特徴量)の集合である。移動物体を検出したときには、ニオイセンサや内蔵の集音マイク、温度センサ等からも身体的特徴や行動的特徴が抽出される。これらの特徴も定量化され、特徴ベクトル成分となる。
【0077】
認識部150により認識された応対行為に応じて、サーバ200の親密度管理部220はユーザに対する親密度を変化させる。原則的には、快行為を行ったユーザに対する親密度は高まり、不快行為を行ったユーザに対する親密度は低下する。
【0078】
動作制御部152は、サーバ200の動作制御部222とともにロボット100の移動方向を決める。行動マップに基づく移動をサーバ200で決定し、障害物をよけるなどの即時的移動をロボット100で決定してもよい。駆動機構120は、動作制御部152の指示にしたがって前輪102(車輪駆動機構370)を駆動することで、ロボット100を移動目標地点に向かわせる。
【0079】
動作制御部152は、サーバ200の動作制御部222と協働してロボット100のモーションを決める。一部のモーションについてはサーバ200で決定し、他のモーションについてはロボット100で決定してもよい。また、ロボット100がモーションを決定するが、ロボット100の処理負荷が高いときにはサーバ200がモーションを決定するとしてもよい。サーバ200においてベースとなるモーションを決定し、ロボット100において追加のモーションを決定してもよい。モーションの決定処理をサーバ200およびロボット100においてどのように分担するかはロボットシステム300の仕様に応じて設計すればよい。
【0080】
動作制御部152は、選択したモーションを駆動機構120に実行指示する。駆動機構120は、モーションファイルにしたがって、各アクチュエータを制御する。モーションファイルに頭部の動作が定義されている場合、動作制御部152は、接続機構333を駆動してその動作制御を実行する。
【0081】
動作制御部152は、親密度の高いユーザが近くにいるときには「抱っこ」をせがむ仕草として両方の手106をもちあげるモーションを実行することもできるし、「抱っこ」に飽きたときには左右の前輪102を収容したまま逆回転と停止を交互に繰り返すことで抱っこをいやがるモーションを表現することもできる。駆動機構120は、動作制御部152の指示にしたがって前輪102や手106、首(頭部フレーム316)を駆動することで、ロボット100に様々なモーションを表現させる。
【0082】
次に、ロボット100の特徴的構成および動作について説明する。
図11は、ロボット100から外皮314を取り除いた状態を表す図である。
図12は、ロボット100に外皮314が装着された状態を表す図である。各図の(a)は右側面図であり、(b)は正面図であり、(c)は背面図である。なお、ロボット100の外観は、ほぼ左右対称となっている。
【0083】
図11に示すように、頭部フレーム316と胴部フレーム318との間に接続機構333が介装される。上述のようにねじりばね349を設けたことで頭部の荷重がキャンセルされるため(
図3(b)参照)、接続機構333の非駆動時においても、頭部フレーム316が胴部フレーム318の上方の所定位置に保持される。
【0084】
頭部フレーム316および胴部フレーム318のそれぞれには、外皮314を部分的に嵌合させるための複数の嵌合溝が設けられている。すなわち、頭部フレーム316の正面には、顔領域500を囲むように円弧状の嵌合溝504,506,508が設けられている。一方、胴部フレーム318の正面下部には長尺状の嵌合溝510が設けられ、背面下端部には円弧状の嵌合溝512が設けられている。胴部フレーム318の背面下部には後輪103を収容するための収容口377が設けられており、嵌合溝512は、その収容口377の周囲に形成されている。
【0085】
図12に示すように、本体フレーム310に被せられるように外皮314が装着されている。外皮314の上部正面には、頭部フレーム316の顔領域500を露出させるための円形の開口部502が設けられている。外皮314は、ロボット100の正面側および背面側に延在しており、胴部フレーム318にも固定されている。本実施形態では、ホイールカバー312が露出しているが、これを外皮314により覆ってもよい。
【0086】
外皮314は、伸縮性を有する基材の外面を表皮層で覆うようにして構成され、全体的に手触りが良い柔軟素材からなる。外皮314は、頭部フレーム316に被せられる袋状部524と、袋状部524の左右側面から下方に延びる一対の手部526と、袋状部524の正面から下方に延びる延在部528と、袋状部524の背面から下方に延びる延在部530とを含む。
【0087】
袋状部524の正面に開口部502が形成され、頂部に開口部390が形成されている。袋状部524の内面には、開口部502を囲むように円弧状の嵌合部材534,536,538が設けられている。一方、延在部528の下部内面には長尺状の嵌合部材540が設けられ、延在部530の下部内面には円弧状の嵌合部材542が設けられている。
【0088】
嵌合部材534〜538は、それぞれ頭部フレーム316の嵌合溝504〜508と相補形状を有する。嵌合部材540,542は、それぞれ胴部フレーム318の嵌合溝510,512と相補形状を有する。嵌合部材534〜542は、樹脂等の硬質素材からなり、これらがそれぞれ嵌合溝504〜512と嵌合することにより、外皮314が本体フレーム310に固定される。
【0089】
本体フレーム310に外皮314を被せると、両者間に当接領域(密着領域)が生じる。同図には、頭部当接領域550、腹部当接領域552および背部当接領域554が示されている。本体フレーム310と外皮314とは、これらの当接領域においては互いに密着する。しかし、頭部の回動や首部の伸縮があるため、外皮314の当接領域間で3次元的な変形が生じる。言い換えれば、当接領域があるが故に、当接領域間に捩れや伸びが生じやすい。本実施形態では、このような捩れや伸びが生じてもロボット100の作動に支障が生じないよう、外皮314における各当接領域の間に伸縮性を部分的に向上させた伸縮向上領域が設けられている。伸縮向上領域は、ロボット100の動作に伴って引張応力、圧縮応力、ねじり応力、またはせん断応力が大きく作用する部分に設定されている。
【0090】
すなわち、基材における頭部当接領域550と腹部当接領域552との間に伸縮向上領域556が設けられ、頭部当接領域550と背部当接領域554との間に伸縮向上領域558が設けられている。外皮314は、伸縮向上領域から離れた位置にて頭部フレーム316および胴部フレーム318のそれぞれに密着している。手部526についても、手106の動作に伴う伸縮を要するため、伸縮向上領域560が設けられている。これらの伸縮向上領域556〜560は、接続機構333を外側から覆うように設けられ、外皮314における接続機構333に対応する位置の伸縮性を向上させている。
【0091】
基材は多孔質発泡材料(本実施形態ではウレタンスポンジ)からなる。各伸縮向上領域は、基材において対応する領域に多数の空隙を最適配置することで構成される。各空隙は、各対応領域を基材の厚み方向に貫通する。このような空隙が設けられることにより、変形に必要とされる力が、空隙が設けられない場合より小さくなる。その結果、頭部フレーム316の作動に必要な駆動力を小さくできる。すなわち、接続機構333(リンク機構361〜363)を円滑に駆動することができる。また、基材に空隙が設けられることにより、変形にともない生じる皺(波打つような状態)が生じにくくなる。
【0092】
図13〜
図15は、リンク構造330の駆動によるロボット100の動作を模式的に表す説明図である。
図13(a)〜(d)は、リンク構造330による頭部の動作を例示している。
図14および
図15は、頭部の動作に伴うロボット100の全体動作を例示している。各図の(a)〜(d)はその動作過程を示している。
【0093】
既に説明したように、接続機構333(リンク構造330)を
図5に示したように駆動することで、
図13(a)に示すように、ロボット100の首部を縮める動作を実現できる。接続機構333を
図4に示したように駆動することで、
図13(b)に示すように、ロボット100の首部を伸ばす動作を実現できる。動作制御部152は、これらの動作に際し、頭部を胴部に近接又は離間させる方向に駆動する「第1の制御」を実行する。
【0094】
接続機構333を
図7に示したように駆動することで、
図13(c)および(d)に示すように、ロボット100の頭部を左右に傾げる動作を実現できる。動作制御部152は、この動作に際し、頭部をロール軸周りに回動させる「第2の制御」を実行する。このような動作を組み合わせることにより、ロボット100にコミカルな動きをさせることができる。
【0095】
例えば、
図14(a)〜(d)に示すように、ロボット100を走行させながら首部の伸長と縮小を繰りかえすことで、リズミカルな動きを実現できる。また、
図15(a)〜(d)に示すように、ロボット100を走行させながら首部を左右に傾げる動作を繰りかえすことで(具体的には、(c)→(b)→(a)→(b)→(c)→(d)→(e)→(d)→(c)→(b)・・・のような動作の繰り返し)、コミカルで可愛らしい動きを実現できる。動作制御部152は、これらの動作に際し、車輪駆動機構370を駆動してロボット100の移動を制御しつつ、接続機構333を駆動して第1の制御と第2の制御とを同時又は連続的に実行する。
【0096】
以上、実施形態に基づいて、ロボット100のリンク構造330およびその動作について説明した。本実施形態によれば、3つのリンク機構361〜363を並列に設け、それらのジョイント部にヒンジジョイントとユニバーサルジョイントとの組み合わせを採用するという簡易な構成により、ロボット100の独特の動きを実現できる。すなわち、駆動リンクの両端に位置するモータの回転軸とヒンジジョイントの回動軸とを平行とすることで、首部の伸縮動作を胴部の軸線に沿って行わせることができる。さらに、従動リンクと第2ベースとをユニバーサルジョイントを介して接続することで、首部の伸縮動作に干渉することなく頷き動作や傾げ動作を実現できる。これは、生物の骨格構造に沿ったものであり、ユーザに違和感がなく自然な印象を与えることができる。特に、首部の伸縮と頭部のローリングとを同時又は連続的に行うことで、上述のようなコミカルで可愛らしい動きも実現でき、ユーザに愛着を感じさせることが期待される。そのことが、ペットのようにロボット100の市場価値を高めるとも考えられる。
【0097】
また、リンク構造330による頭部の回動をローリングとピッチングに留め、ヨーイングについては別途アクチュエータ(モータ354)を設けることで、リンク構造330の簡素化および作動安定性を図ることができる。リンク構造330の制御について簡易化および安定性を図ることもできる。
【0098】
さらに、接続機構333(リンク機構361〜363)を外側から覆うように柔軟な外皮314を設けたことで、接続機構333がユーザに干渉することを防止できる。ユーザは、ロボット100に触れることを躊躇することなく、むしろ外皮314の手触り感の良さから積極的に触れるようになる。また、このような外皮314を設けても、その接続機構333を覆う部分については伸縮向上領域としたため、頭部の作動抵抗となることを抑制できる。
【0099】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0100】
上記実施形態では、第1ベース331を胴部フレーム318に組み付け、その第1ベース331にモータ344〜348を設置する構成を例示した。変形例においては、胴部フレーム318の一部を第1ベースとし、モータ344〜348を胴部フレーム318に直接固定してもよい。
【0101】
上記実施形態では、3つのリンク機構により接続機構333を構成した。変形例においては、4つ以上のリンク機構により接続機構を構成してもよい。ただし、1軸方向(Z方向)の並進と2軸周りの回動(ローリング,ピッチング)を実現する観点からは、上記実施形態のように3つのリンク機構で必要十分であり、機構を簡易に実現するうえでも最適と言える。
【0102】
上記実施形態では、頭部と胴部との間の荷重キャンセル(頭部の重量による荷重キャンセル)のために、モータ344〜348の回転軸に沿ってねじりばね349を設ける例を示した。変形例においては、例えば第2ベース332と第1ベース331との間にばね(コイルばねや板ばね等)を介装することで荷重キャンセルしてもよい。すなわち、各アクチュエータの回転軸に限らず、第1部位と第2部位との間に荷重キャンセル用のばねを設けてもよい。
【0103】
上記実施形態ではロボットの一態様を示したが、上記リンク構造は、それ以外のヒューマノイドロボットやペットロボット等にも適用可能である。頭部と胴部に限らず、例えば胴部と腕部など、ロボットのいずれかの接続部(関節等)を境に「第1部位」と「第2部位」を設定してよい。そして、両部位の間に上記リンク機構を適用してもよい。また、椅子、テーブルの脚部、スタンド(電気スタンド等)のアーム部、ラウンドオンタイプのアーケードゲームにおいて物理的動作を伴う部位等に上記リンク構造を適用してもよい。
【0104】
上記実施形態では、接続機構をリンク機構により実現する例を示した。上述したコミカルな動きを実現する観点では、このような機構に限らず、主として制御によりこれを実現してもよい。例えば、2軸周りの回動(ローリング,ピッチング)をそれぞれ実現するための複数のモータを別途設けてもよい。あるいは、複数のリンク機構に代えて複数の油圧ピストンを配置し、各ピストンのストロークを制御することにより、上述した1軸方向の並進と2軸周りの回動を実現してもよい。あるいは、ソレノイドその他のアクチュエータを採用してもよい。このような構成を採用しても、上述した第1および第2の制御を実行できる。
【0105】
上記実施形態では述べなかったが、伸縮性を有する布材を基材の表面に配置して外皮を構成してもよい。それにより、基材の多孔質部分を目立たなくし、手触り感をより向上させることができる。基材の表面に布材を配置する構造としては、基材の形状に合わせた袋を布材で作成し、その袋で基材を包み込むことで形成されてよい。
【0106】
上記実施形態では、外皮314に袋状部524を設け、それを頭部フレーム316に被せることで係合させる構成を例示した。変形例においては、袋状でない外皮の部分を本体フレームの所定箇所(端部等)に引っ掛けることで係合させ、その係合部を支点として延在部にテンションをかけてもよい。「係合部」は、嵌合構造、引っ掛け構造等、種々の構造を含み得る。「袋状部」は、ロボットの特定部位(一部分)に被せられることでその特定部位と係合し、その特定部位によって支持される構造であればよい。
【0107】
上記実施形態では述べなかったが、基材の所定領域の厚みを相対的に小さくすることにより伸縮向上領域を実現してもよい。また、基材を層状に構成し、伸縮向上領域とその他の領域とで厚み方向の差をもたせてもよい。
【0108】
上記実施形態では、外皮の基材をウレタンスポンジからなるものとしたが、例えばゴムスポンジその他のスポンジを採用してもよい。ゴムスポンジは、例えばゴムに発泡剤、軟化剤などを練り込み加硫して得ることができる。
【0109】
上記実施形態では、外皮の基材に多孔質発泡材料からなるものを採用したが、伸縮性を有する他の材料を採用してもよい。例えば、ゴム等の弾性体から基材を形成してもよい。ただし、伸縮のための荷重を抑える、ロボットへの作動抵抗を抑える観点からは、スポンジ等の柔軟な多孔質素材が好ましい。
【0110】
上記実施形態では、頭部の動きを中心に説明したが、左右の前輪102の昇降位置を変えることで更に躍動的でコミカルな動作を実現してもよい。すなわち、ロボット100は、前輪102を昇降させる機構を備えてもよい。それにより、ロボット100は、左右の前輪102の昇降位置がずれるように昇降機構を制御することでボディ104の全体を左右に傾けることもできる。また、走行中に右側に旋回するときは、ボディ104が右側に傾くように左右の前輪102の昇降位置を調整し、左側に旋回するときは、ボディ104が左側に傾くように左右の前輪102の昇降位置を調整してもよい。このように、頭部の動きに加えて、左右の前輪102の昇降状態を調整することで、より躍動感があり、コミカルな動きを実現できる。
【0111】
図16は、変形例に係るリンク構造およびその動作を表す説明図である。
図16(a)は平面図である。
図16(b)はリンク構造周辺を表す側面図である。
図16(c)はリンク構造による頭部の動作を模式的に表す平面図である。図中矢印は、ロボットからみた前方を表している。
【0112】
上記実施形態では
図3(b)に示したように、第1ベース331の軸線Lとヨー軸321とを一致させた。軸線Lは、頭部フレーム316の軸線であり、接続機構333の中心軸でもあった。第2ベース332が軸線Lに沿って変位することで第1ベース331に対して近接又は離間し、首部の伸縮動作を実現した。
【0113】
本変形例では
図16(a)および(b)に示すように、ヨー軸321を軸線Lからずらし、頭部フレーム416の中心から偏心させる。具体的には、ヨー軸321を軸線Lの後方にずらしている。これに伴い、頭部フレーム416と第2ベース432との嵌合部(つまり回動軸350の位置)およびギヤ380のピッチ円の中心も、ヨー軸321に合わせて軸線Lの後方にずれている。
【0114】
このような構成により、ロボットが左右に振り向く際の頭部の挙動を生物に近づけ、より自然に見せることができる。すなわち、
図3(b)に示した上記実施形態では、頭部フレーム316がその中心軸周りに回動するため、振り向き動作に際して頭部と胴部との間にずれが生じず、生物的な挙動として違和感を与える可能性がある。この点、本実施形態によれば、
図16(c)に示すように、頭部フレーム416のヨー軸321が中心軸からずれているため、振り向き動作に際して頭部と胴部との間にずれを生じさせることができる。外皮314にも適度な変形を生じさせることができる。それにより、生物的な挙動により近づけることが可能となる。
【0115】
なお、本変形例においても接続機構333を覆うように外皮314を設けることで、接続機構333がユーザに干渉することを防止できる。また、第1ベース331と第2ベース332とを近接および離間可能に接続することで、コミカルな動きを実現できる。
【0116】
上記実施形態では、第1ジョイント374を単軸のヒンジジョイントとし、第2ジョイント376をユニバーサルジョイントとする例を示した。変形例においては、第1ジョイント374および第2ジョイント376の双方をユニバーサルジョイントとするなど、ジョイントの種類および組み合わせを適宜変更してもよい。