特許第6678898号(P6678898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6678898
(24)【登録日】2020年3月23日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】死鶏検出方法、及び死鶏検出システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 45/00 20060101AFI20200406BHJP
   G01J 5/48 20060101ALI20200406BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20200406BHJP
   G06T 7/90 20170101ALI20200406BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20200406BHJP
【FI】
   A01K45/00 Z
   G01J5/48 A
   G01N21/17 A
   G06T7/90 C
   G06T7/00 600
   G06T7/00 300B
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-31803(P2018-31803)
(22)【出願日】2018年2月26日
(65)【公開番号】特開2019-146498(P2019-146498A)
(43)【公開日】2019年9月5日
【審査請求日】2019年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】591196625
【氏名又は名称】株式会社晃伸製機
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 博規
(72)【発明者】
【氏名】角谷 一範
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 実開平1−98562(JP,U)
【文献】 特開2017−192315(JP,A)
【文献】 特開2018−7625(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0251228(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 45/00
G01J 5/48
G01N 21/17
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の鶏を収容したケージ鶏舎内において死鶏を検出する死鶏検出方法であって、
前記ケージ鶏舎内の同一箇所を同時に撮影して可視画像及び赤外画像を取得する画像取得工程と、
前記可視画像の画素及び前記赤外画像の画素に対してそれぞれ座標を設定する座標設定工程と、
前記可視画像の中から、予め登録されている鶏色と一致する画素からなる同色画素の座標位置を検出する同色画素検出工程と、
前記赤外画像の中から、予め登録されている温度でありかつ生きている鶏の体温よりも低い温度に対応する画素からなる低温画素の座標位置を検出する低温画素検出工程と、
互いの座標位置が一致する前記同色画素及び前記低温画素からなる画素ペアを特定する画素ペア特定工程と、
複数の画素ペアの中から1つの画素ペアを選択し、その選択された画素ペアの座標位置を基準としつつ、その基準の座標位置の周囲に所定の大きさの領域を設定し、その領域内に存在する他の画素ペアの個数が基準値を満たす場合に、死鶏が存在すると判断する死鶏判断工程とを備える死鶏検出方法。
【請求項2】
前記低温画素検出工程において、予め登録されている前記温度が、鶏の飼育環境温度に基づいて設定される請求項1に記載の死鶏検出方法。
【請求項3】
多数の鶏を収容したケージ鶏舎内において死鶏を検出する死鶏検出方法であって、
前記ケージ鶏舎内の同一箇所を同時に撮影して可視画像及び赤外画像を取得する画像取得工程と、
前記可視画像の画素及び前記赤外画像の画素に対してそれぞれ座標を設定する座標設定工程と、
前記可視画像の中から、予め登録されている鶏色と一致する画素からなる同色画素の座標位置を検出する同色画素検出工程と、
前記赤外画像の中から、予め登録されている温度でありかつ生きている鶏の体温以上の温度に対応する画素からなる高温画素の座標位置を検出する高温画素検出工程と、
前記赤外画像の中から、前記高温画素以外の画素からなる低温画素の座標位置を検出する低温画素検出工程と、
互いの座標位置が一致する前記同色画素及び前記低温画素からなる画素ペアを特定する画素ペア特定工程と、
複数の画素ペアの中から1つの画素ペアを選択し、その選択された画素ペアの座標位置を基準としつつ、その基準の座標位置の周囲に所定の大きさの領域を設定し、その領域内に存在する他の画素ペアの個数が基準値を満たす場合に、死鶏が存在すると判断する死鶏判断工程とを備える死鶏検出方法。
【請求項4】
前記ケージ鶏舎は、各々が位置を特定するための位置情報を有する複数の撮影区域に分けられており、
前記画像取得工程において、前記可視画像及び前記赤外画像を、前記撮影区域単位で取得し、
前記撮影区域の前記位置情報を取得する位置情報取得工程と、
前記死鶏判断工程において死鶏が存在すると判断された場合に、その死鶏情報と、前記死鶏情報が得られた前記撮影区域の前記位置情報とを関連付ける関連付け工程とを備える請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の死鶏検出方法。
【請求項5】
多数の鶏を収容したケージ鶏舎内において死鶏を検出する死鶏検出システムであって、
前記ケージ鶏舎内の同一箇所を同時に撮影して可視画像及び赤外画像を取得する撮像部と、
前記可視画像の画素及び前記赤外画像の画素に対してそれぞれ座標を設定する処理と、前記可視画像の中から、予め登録されている鶏色と一致する画素からなる同色画素の位置を検出する処理と、前記赤外画像の中から、予め登録されている温度でありかつ生きている鶏の体温よりも低い温度に対応する画素からなる低温画素の位置を検出する処理と、互いの位置が一致する前記同色画素及び前記低温画素からなる画素ペアを特定する処理と、複数の画素ペアの中から1つの画素ペアを選択し、その選択された画素ペアの位置を基準としつつ、その基準の位置の周囲に所定の大きさの領域を設定し、その領域内に位置する他の画素ペアの個数が基準値を満たす場合に、死鶏が存在すると判断する処理とを実行する制御部と、
を備える死鶏検出システム。
【請求項6】
前記ケージ鶏舎は、各々が位置を特定するための位置情報を有する複数の撮影区域に分けられており、かつそれらの撮影区域は、全体として行列状に並ぶように上下方向及び水平方向に複数配置され、
前記撮像部は、前記可視画像及び前記赤外画像を、前記撮影区域単位で取得し、
前記撮像部を支持し、かつ前記撮像部を上下方向に移動させる昇降部と、
前記昇降部を支持し、前記昇降部とともに前記撮像部を水平方向に移動させる水平方向移動部と、
作業者に情報を提示する情報提示部と、
を備え、
前記制御部は、
前記撮像部が、行列状に並ぶ複数の前記撮影区域の前で順次、静止するように、前記昇降部の高さ位置及び前記水平方向移動部の移動距離をそれぞれ調節する処理と、
前記撮像部が前記撮影区域の前で静止した状態において、前記可視画像及び前記赤外画像を取得するように前記撮像部に指示する処理と、
前記撮像部が前記可視画像及び前記赤外画像を取得する前記撮影区域の前記位置情報を取得する処理と、
死鶏が存在すると判断した場合に、その死鶏情報と、前記死鶏情報が得られた前記撮影区域の前記位置情報とを関連付ける処理と、関連付けられた前記死鶏情報及び前記位置情報を、前記情報提示部に出力する処理と、実行する請求項5に記載の死鶏検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、死鶏検出方法、及び死鶏検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鶏を収容するケージが複数段に積み重ねられた多段式のケージ鶏舎を利用して、多数羽の鶏(例えば、数千〜数万羽単位の鶏)を飼育する養鶏システムが知られている。このような養鶏システムには、鶏に餌や水等を所定時間毎に供給する給餌・給水装置や、鶏が産んだ卵をケージから回収する鶏卵回収システム等の各種装置が付設されているため、それらの飼育作業の労力が軽減されている。
【0003】
しかしながら、このような養鶏システムにおいても、死鶏を見つけ出す作業は、システム化されておらず、作業者の目視で行われているのが実情であった。ケージ内に死鶏が放置されると、飼育環境の悪化のみならず、回収される卵の品質管理にも問題が発生する虞があった。例えば、他の鶏が産んだ卵が、放置された死鶏に引っ掛かる等して回収されずにケージ内に留まり、その卵がケージ内で数日放置されることがある。そのような卵は、後日、他の新鮮な卵に混ざって回収されてしまう虞があり、問題となっている。そのため、作業者は、鶏舎内を定期的に巡回して、ケージ内の鶏の状態をすべて目視で確認し、それらの中から死亡した鶏を見つけ出す作業を行っている。
【0004】
このような死鶏を見つけ出す作業は、非常に負担が大きく問題となっている。このような事情の下、近年、死鶏を見つけ出す作業を無人で行う技術が幾つか提案されている。例えば、特許文献1には、多段式のケージ鶏舎で飼育されている鶏の生死を、二次元レーザースキャナーを利用して判別する技術が示されている。また、特許文献2には、サーモグラフィで撮影された画像を利用して、鶏の死亡率を推定する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2017−505639号公報
【特許文献2】特表2006−50989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の二次元レーザースキャナーを利用した技術では、1つの対象物(対象エリア)に対してレーザーを照射する工程を、十分な期間をおいて複数回行う必要がある。そのため、1の対象物(対象エリア)における死鶏の判別に時間がかかってしまう。
【0007】
また、従来のサーモグラフィを利用した技術は、鶏舎内で鶏を地面に放した状態で飼育する方法(所謂、平飼い)では適用可能であるものの、多段式のケージ鶏舎を利用した飼育方法では、ケージの前面に付設されている餌樋等が邪魔になり、適用することができない。
【0008】
本発明の目的は、ケージ鶏舎を利用した養鶏システムに好適であり、容易に死鶏の検出が可能な死鶏検出方法、及び死鶏検出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 多数の鶏を収容したケージ鶏舎内において死鶏を検出する死鶏検出方法であって、前記ケージ鶏舎内の同一箇所を同時に撮影して可視画像及び赤外画像を取得する画像取得工程と、前記可視画像の画素及び前記赤外画像の画素に対してそれぞれ座標を設定する座標設定工程と、前記可視画像の中から、予め登録されている鶏色と一致する画素からなる同色画素の座標位置を検出する同色画素検出工程と、前記赤外画像の中から、予め登録されている温度でありかつ生きている鶏の体温よりも低い温度に対応する画素からなる低温画素の座標位置を検出する低温画素検出工程と、互いの座標位置が一致する前記同色画素及び前記低温画素からなる画素ペアを特定する画素ペア特定工程と、複数の画素ペアの中から1つの画素ペアを選択し、その選択された画素ペアの座標位置を基準としつつ、その基準の座標位置の周囲に所定の大きさの領域を設定し、その領域内に存在する他の画素ペアの個数が基準値を満たす場合に、死鶏が存在すると判断する死鶏判断工程とを備える死鶏検出方法。
【0010】
<2> 前記低温画素検出工程において、予め登録されている前記温度が、鶏の飼育環境温度に基づいて設定される前記<1>に記載の死鶏検出方法。
【0011】
<3> 多数の鶏を収容したケージ鶏舎内において死鶏を検出する死鶏検出方法であって、前記ケージ鶏舎内の同一箇所を同時に撮影して可視画像及び赤外画像を取得する画像取得工程と、前記可視画像の画素及び前記赤外画像の画素に対してそれぞれ座標を設定する座標設定工程と、前記可視画像の中から、予め登録されている鶏色と一致する画素からなる同色画素の座標位置を検出する同色画素検出工程と、前記赤外画像の中から、予め登録されている温度でありかつ生きている鶏の体温以上の温度に対応する画素からなる高温画素の座標位置を検出する高温画素検出工程と、前記赤外画像の中から、前記高温画素以外の画素からなる低温画素の座標位置を検出する低温画素検出工程と、互いの座標位置が一致する前記同色画素及び前記低温画素からなる画素ペアを特定する画素ペア特定工程と、複数の画素ペアの中から1つの画素ペアを選択し、その選択された画素ペアの座標位置を基準としつつ、その基準の座標位置の周囲に所定の大きさの領域を設定し、その領域内に存在する他の画素ペアの個数が基準値を満たす場合に、死鶏が存在すると判断する死鶏判断工程とを備える死鶏検出方法。
【0012】
<4> 前記ケージ鶏舎は、各々が位置を特定するための位置情報を有する複数の撮影区域に分けられており、前記画像取得工程において、前記可視画像及び前記赤外画像を、前記撮影区域単位で取得し、前記撮影区域の前記位置情報を取得する位置情報取得工程と、前記死鶏判断工程において死鶏が存在すると判断された場合に、その死鶏情報と、前記死鶏情報が得られた前記撮影区域の前記位置情報とを関連付ける関連付け工程とを備える前記<1>〜<3>の何れか一項に記載の死鶏検出方法。
【0013】
<5> 多数の鶏を収容したケージ鶏舎内において死鶏を検出する死鶏検出システムであって、前記ケージ鶏舎内の同一箇所を同時に撮影して可視画像及び赤外画像を取得する撮像部と、前記可視画像の画素及び前記赤外画像の画素に対してそれぞれ座標を設定する処理と、前記可視画像の中から、予め登録されている鶏色と一致する画素からなる同色画素の位置を検出する処理と、前記赤外画像の中から、予め登録されている温度でありかつ生きている鶏の体温よりも低い温度に対応する画素からなる低温画素の位置を検出する処理と、互いの位置が一致する前記同色画素及び前記低温画素からなる画素ペアを特定する処理と、複数の画素ペアの中から1つの画素ペアを選択し、その選択された画素ペアの位置を基準としつつ、その基準の位置の周囲に所定の大きさの領域を設定し、その領域内に位置する他の画素ペアの個数が基準値を満たす場合に、死鶏が存在すると判断する処理とを実行する制御部と、を備える死鶏検出システム。
【0014】
<6> 前記ケージ鶏舎は、各々が位置を特定するための位置情報を有する複数の撮影区域に分けられており、かつそれらの撮影区域は、全体として行列状に並ぶように上下方向及び水平方向に複数配置され、前記撮像部は、前記可視画像及び前記赤外画像を、前記撮影区域単位で取得し、前記撮像部を支持し、かつ前記撮像部を上下方向に移動させる昇降部と、前記昇降部を支持し、前記昇降部とともに前記撮像部を水平方向に移動させる水平方向移動部と、作業者に情報を提示する情報提示部と、を備え、前記制御部は、前記撮像部が、行列状に並ぶ複数の前記撮影区域の前で順次、静止するように、前記昇降部の高さ位置及び前記水平方向移動部の移動距離をそれぞれ調節する処理と、前記撮像部が前記撮影区域の前で静止した状態において、前記可視画像及び前記赤外画像を取得するように前記撮像部に指示する処理と、前記撮像部が前記可視画像及び前記赤外画像を取得する前記撮影区域の前記位置情報を取得する処理と、死鶏が存在すると判断した場合に、その死鶏情報と、前記死鶏情報が得られた前記撮影区域の前記位置情報とを関連付ける処理と、関連付けられた前記死鶏情報及び前記位置情報を、前記情報提示部に出力する処理と、実行する前記<5>に記載の死鶏検出システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ケージ鶏舎を利用した養鶏システムに好適であり、容易に死鶏の検出が可能な死鶏検出方法、及び死鶏検出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1の死鶏検出システムのブロック図
図2】室内に複数のケージ鶏舎(ケージ鶏舎群)が設置された建物の断面図
図3】ケージ鶏舎の正面図
図4】ケージ鶏舎の正面で移動撮影装置が静止して、昇降部に支持された撮像部がケージ鶏舎内を撮影する様子を示す説明図
図5】移動撮影装置により実行される死鶏検出の巡回処理の流れを示すフローチャート
図6】移動撮影装置により実行される死鶏検出処理の流れを示すフローチャート
図7】撮像部が取得した可視画像を示す説明図
図8】撮像部が取得した赤外画像を示す説明図
図9】基準画素ペアの周りに形成される領域と、その領域内に存在する画素との関係を示す説明図
図10】実施形態2の死鶏検出システムが備える移動撮影装置のブロック図
図11】実施形態3の死鶏検出システムが備える移動撮影装置のブロック図
図12】実施形態4の死鶏検出システムが備える移動撮影装置の説明図
図13】実施形態5の死鶏検出システムが備える移動撮影装置の説明図
図14】実施形態6の死鶏検出システムにおける死鶏検出処理の低温画素検出工程を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1に係る死鶏検出システム及び死鶏検出方法を、図1図9を参照しつつ説明する。図1は、実施形態1の死鶏検出システム100のブロック図である。死鶏検出システム100は、多数の鶏(採卵鶏)Hを飼育する多段式のケージ鶏舎200において死鶏を無人で検出するシステムである。図1に示されるように、死鶏検出システム100は、移動撮影装置10と管理装置20を備えている。移動撮影装置10と管理装置20は、互いにネットワーク30を介して通信可能に構成されている。
【0018】
ここで、先ず、死鶏検出システム100が適用されるケージ鶏舎200について説明する。図2は、室内40aに複数のケージ鶏舎200が設置された建物40の断面図であり、図3は、ケージ鶏舎200の正面図である。図2に示されるように、建物40内には、2棟のケージ鶏舎群201が設置されている。ケージ鶏舎群201は、2つのケージ鶏舎200が、背中合わせの状態で互いに繋がったものである。図2の左側に示される一方のケージ鶏舎群201は、正面が図2の左側を向くケージ鶏舎200aと、正面が図2の右側を向くケージ鶏舎200bとからなり、右側に示される他方のケージ鶏舎群201は、正面が図2の左側を向くケージ鶏舎200cと、正面が図2の右側を向くケージ鶏舎200dとからなる。
【0019】
ケージ鶏舎200は、図3に示されるように、全体として行列状に配置された複数の小部屋300を備えている。各小部屋300には、それぞれ複数羽(例えば、4〜10羽)の鶏が収容される。本実施形態のケージ鶏舎200は、上下方向に4段の小部屋300が並び、かつ左右方向(水平方向)にn個(例えば、n=20)の小部屋300が並んでいる。
【0020】
ケージ鶏舎200の正面側には、給餌用の餌樋202と、鶏が産んだ卵を回収する回収コンベア203がそれぞれ設置されている。餌樋202は、ケージ鶏舎200の各段において、水平方向に一列に並んだ小部屋300の前を横切るように設置されている。餌樋202は、各小部屋300を正面から見た際、上下方向において中央位置よりもやや下方の位置に配されている。また、回収コンベア203も、ケージ鶏舎200の各段において、各小部屋300の前を横切るように設置されている。回収コンベア203は、餌樋202よりも下方に位置し、各小部屋300の床に続く形で設けられている。
【0021】
ケージ鶏舎群201が設置された建物40内(室内40a)の温度は、室内40aに設置された空調機(不図示)により、15〜35℃の範囲で保たれている。なお、生きた鶏Hの体温は、約41℃であり、室内温度は、それよりも低い温度に設定されている。また、建物40内に設置されたケージ鶏舎群201(ケージ鶏舎200)の温度は、略室温と同じとなる。
【0022】
本実施形態の死鶏検出システム100は、移動撮影装置10が建物40内を巡回して、ケージ鶏舎200内の死鶏HXを小部屋300単位で検出するシステムである。移動撮影装置10は、ネットワーク30を介して管理装置20により遠隔操作され、死鶏情報が検出されると、その情報が管理装置20へ送信されるように構成されている。
【0023】
移動撮影装置10は、主として、撮像部11、昇降部12、水平移動部13、通信部14、制御部15、記憶部16を備えている。
【0024】
撮像部11は、サーモグラフ11Aと、可視光デジタルカメラ11Bを備えている。サーモグラフ11Aは、対象物から放射される赤外線を検出し、それを見かけの温度に変換して、温度分布を示す画像(赤外画像)を取得する。可視光デジタルカメラ11Bは、対象物の可視画像を取得する。本実施形態の撮像部11は、サーモグラフ11Aと可視光デジタルカメラが一体化されており、対象物の同一箇所を同時に撮影し、その赤外画像及び可視画像を同時に取得することができる。撮像部11からは、デジタル化された赤外画像及び可視画像が出力される。これらの赤外画像及び可視画像は記憶部16に記憶される。
【0025】
昇降部12は、全体的には、上下方向に延びた棒状をなし、移動撮影装置10の水平移動部13に立設されている。昇降部12は、撮像部11を支持し、撮像部11の高さ位置を調節する。昇降部12は、制御部15からの指示を受けると、内蔵のサーボモータ(不図示)が適宜、駆動して昇降部12の長さが調節されて、撮像部11の高さ位置が調節される。
【0026】
水平移動部13は、建物40の床面40b上を走行する駆動輪13aを備えた駆動機構であり、制御部15からの指示を受けて水平方向に移動する。水平移動部13は、移動撮影装置10に搭載されている充電式のバッテリ(不図示)から電力が供給される。
【0027】
図4は、ケージ鶏舎200の正面で移動撮影装置10が静止して、昇降部12に支持された撮像部11がケージ鶏舎200内を撮影する様子を示す説明図である。図4は、図2に示される符号Sで示される範囲を拡大した図面である。
【0028】
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成される。制御部15のCPUは、記憶部16に記憶されているプログラムを読み出し、RAMのワークエリアに展開し、展開したプログラムにしたがって、後述する各種処理を実行する。
【0029】
記憶部(メモリ)16は、制御部15が適宜、実行するプログラムや、各種処理に必要なデータ、撮像部11が取得した画像情報等を記憶する。
【0030】
また、管理装置20は、主として、制御部21、キーボードからなる入力部22、モニタからなる表示部23、プリンタ24、記憶部25、通信部26を備えている。制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成される。作業者による入力部22の操作により、死鶏検出の巡回処理を開始する指示が入力されると、制御部21は、開始信号を通信部26に送信する。通信部26は受信した開始信号を、ネットワーク30を介して移動撮影装置10の通信部14に送信する。通信部14は、開始信号を受信すると、移動撮影装置10の制御部15へ送信し、移動撮影装置10において、死鶏検出の巡回処理が開始される。死鶏検出の巡回処理では、建物40内にある全てのケージ鶏舎200における全ての小部屋300に対して、順番に、以下に示される死鶏検出処理が行われる。
【0031】
図5は、移動撮影装置10により実行される死鶏検出の巡回処理の流れを示すフローチャートである。上述したように、死鶏検出の巡回処理が開始すると、移動撮影装置10の撮像部11が、ケージ鶏舎200が有する多数の小部屋300の中から、目的とする小部屋300の前で静止するように、昇降部12、及び水平移動部13が作動する(S11)。そして、撮像部11が目的の小部屋300の前で静止すると、死鶏検出処理が実行される(S12)。その後、制御部15は、多数の小部屋300の中に、死鶏検出処理を実施していない小部屋があるか否かを判断する。死鶏検出処理を実施していない小部屋200がある場合、撮像部11が新たな小部屋200の前で静止するように、制御部15が昇降部12及び水平移動部13を制御する。
【0032】
本実施形態の場合、ケージ鶏舎200を正面から見た際、向かって左側の列(第1列)の最上段(4段目)の小部屋300から死鶏検出処理が開始される。そして、そこから順番に、ケージ鶏舎200のすべての小部屋(撮影区域の一例)300で死鶏検出処理が実施される。本実施形態の場合、左端にある4段目、第1列の死鶏検出処理が終わると、その4段目を図3の左側から右側に向かって水平に移動しながら、1つずつ小部屋300で死鶏検出処理が実施される。4段目の死鶏検出処理が終わった後、3段目の各小部屋300の死鶏検出処理が図3の右側から左側に向かって水平に移動しながら実施され、その後、続けて、2段目、1段目の各小部屋300の死鶏検出処理が実施さる。このようにして、ケージ鶏舎200の残りのすべての小部屋300に対して、死鶏検出処理が順次行われる。死鶏検出処理は、建物40内にある複数のケージ鶏舎200のすべてに対して行われる。なお、ケージ鶏舎200が備える複数の小部屋(撮影区域)300を撮影する順番は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はない。
【0033】
ここで、小部屋300単位で行われる死鶏検出処理の詳細を説明する。図6は、移動撮影装置10により実行される死鶏検出処理の流れを示すフローチャートである。上述したように、撮像部11が目的とする小部屋300の前で静止すると、制御部15からの指示を受けて、撮像部11が小部屋300内を外側から撮影し、可視画像及び赤外画像を取得する(図6のS21)。なお、撮像部11と撮影対象である小部屋300との距離は、水平移動部13や昇降部12、又は図示されない距離調節機構が適宜、作動することで一定に保たれる。図7は、撮像部11が取得した可視画像50を示す説明図であり、図8は、撮像部11が取得した赤外画像60を示す説明図である。本実施形態の撮像部11は、内蔵するサーモグラフ11Aと可視光デジタルカメラ11Bが同一箇所を同時に撮影することが可能である。なお、図7の可視画像には、生きている4羽の鶏H1,H2,H3,H4と、死んでいる1羽の鶏H5が示されている。鶏H5は、小部屋300の手前側の床上に横たわっている。
【0034】
次いで、制御部15は、可視画像50を構成する画素と、赤外画像60を構成する画素に対して、それぞれ座標を設定する処理を実行する(図6のS22)。本実施形態の場合、可視画像50及び赤外画像60に対して、x軸を横軸とし、y軸を縦軸とする同じ直交座標が設定される。
【0035】
その後、制御部15は、可視画像50を構成する画素の中から、予め記憶部16に登録されている鶏色と一致する画素(同色画素)の座標位置を検出する処理を実行する(図6のS23)。記憶部16には、鶏色データ16aが予め登録されており、登録されている鶏色と同じ色に対応する画素の座標位置が検出される。鶏色としては、鶏の羽色(例えば、白色)が設定される。なお、鶏色データ16aは、鶏の種類、色の明るさ、色の濃さ等の諸条件が考慮されて、適宜、設定される。
【0036】
ここで、可視画像50を構成する画素のうち、鶏H1の体色(羽色)を示す1つの画素X1Aの座標位置を、X1A(x1A,y1A)と表し、鶏H5の体色(羽色)を示す1つの画素X5Aの座標位置を、X5A(x5A、y5A)と表す。これらの画素X1A,X5Aは、共に同色画素として検出される。
【0037】
次いで、制御部15は、赤外画像60を構成する画素の中から、予め記憶部16に登録されている温度(低温データ16b)に対応する画素からなる低温画素の座標位置を検出する処理を実行する(図6のS24)。ケージ鶏舎200の小部屋300の温度は、室温と略同じである。室温は、生きている鶏H1等の体温よりも低く設定されているため、小部屋300を構成する柵状の壁や床、更には餌樋202等の温度は、生きている鶏H1等の体温よりも低くなる。
【0038】
図8において示されるように、温度が高い領域(高温領域61,62)は、生きている鶏H1,H2,H3,H4の頭付近に対応する箇所で見られる。また、鶏H1等の胴体や足に対応する箇所も、温度が高い領域(高温領域62,63)となっている。また、鶏H1等の周りの空間も、鶏H1等から発せられた熱により、温度が比較的、高い領域64となっている。なお、図8において、最も温度が高い領域が、符号61で示され、符号の数字が大きくなるに従ってその領域の温度が低くなる。
【0039】
これに対し、小部屋300の前に設けられた餌樋202や小部屋300の床に対応する部分は、室温と略同じであり、図8の赤外画像60では、低温領域65として示されている。また、死んでいる鶏H5に対応する箇所も、室温と略同じであり、低温領域65となっている。
【0040】
低温画素は、赤外画像60を構成する画素のうち、低温領域65に該当する画素である。例えば、赤外画像60において、生きている鶏H1に対応する1つの画素X1B(x1B,y1B)は、高温領域63にあり、低温画素には該当しない。これに対し、赤外画像60において、死んでいる鶏H5に対応する1つの画素X5B(x5B,y5B)は、低温領域65にあり、低温画素として検出される。
【0041】
その後、制御部15は、互いの座標位置が一致する同色画素及び低温画素からなる画素ペアを特定する処理を実行する(図6のS25)。例えば、可視画像50における画素X5Aと、赤外画像60における画素X5Bは、互いの座標位置が一致((x5A,y5A)=(x5B,y5B))するため、画素ペア(画素X5A,画素X5B)として特定される。画素ペアの特定は、検出されたすべての同色画素と低温画素に対して行われる。
【0042】
次いで、制御部15は、複数の画素ペアの中から1つの画素ペアを選択する処理を実行する(図6のS26)。画素ペアの選択は、すべての画素ペアに対して順番(例えば、座標位置が大きいから小さい方の順番)に1つずつ選択される。なお、ここでは、選択された画素ペアを、基準画素ペアCと称する。
【0043】
次いで、制御部15は、基準画素ペアCの座標位置を基準としつつ、その座標位置の周囲に所定の大きさの領域を設定する処理を実行する(図6のS27)。ここでは、基準画素ペアCの一例として、画素ペア(画素X5A,画素X5B)を例に挙げて説明する。また、基準画素ペアCの座標位置として、可視画像50の座標位置を利用する。図9は、基準画素ペアCの周りに形成される領域Rと、その領域R内に存在する画素との関係を示す説明図である。基準画素ペアCの周りに形成される領域Rの情報は、予め記憶部15に登録されている。説明の便宜上、ここでは、領域Rの形を正方形とする。なお、領域Rの形状、大きさ等は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、検出対象となる鶏の種類等に応じて、適宜、設定される。
【0044】
図9に示されるように、領域R内には、行列状に並ぶ25個の画素が示されている。そそれらのうち、符号Pで示される画素は、基準画素ペアC以外の画素ペアである。これに対し、符号Nで示される画素は、画素ペアではない画素である。領域R内に、基準画素ペアC以外の画素ペアは、最大で24個存在可能である。例えば、領域R内の基準画素ペアC以外の画素のうち、90%以上が画素ペアからなる場合、撮像部11が撮影した小部屋300内に死鶏が存在していると判断される。図9に示される場合、基準画素ペアC以外の画素のうち、90%以上が画素ペアPであり、死鶏の存在が検出される。なお、死鶏の検出に利用される基準値(例えば、90%以上)は、予め記憶部16に登録されている。
【0045】
死鶏が検出されると、その情報(死鶏情報)が生成され(図6のS29)、その死鶏情報は、通信部14に送信される(図6のS30)。そして、この小部屋300における死鶏検出処理が終了する。なお、制御部15の処理により、ステップS29では、死鶏情報として、可視画像50を基にした画像情報が生成される。その画像情報には、小部屋300の前側の餌樋に記載された位置情報(文字情報)204が含まれている。本実施形態の場合、ケージ鶏舎200の各小部屋300の前の餌樋202には、それぞれ、ケージ鶏舎200の位置を示す情報、小部屋の上下方向の位置情報、及び小部屋の水平方向の位置情報が記載されている(例えば、「B−3−3」)。なお、ステップS29において、可視画像50に含まれる文字情報をOCR(Optical Character Recognition)技術を利用して、デジタルの文字情報に変換してもよい。このようなステップ29において、死鶏情報と位置情報が互いに関連付けられる。
【0046】
また、領域R内の画素ペアPの数が基準値を満たさなかった場合、次のステップS31へ移行する。このステップS31では、すべての画素ペアのうち、基準画素ペアCとして選択されていない画素ペアがあるか否かが判断される。未選択の画素ペアがない場合、この小部屋300での死鶏検出処理が終了する。なお、この場合、対象の小部屋300からは、死鶏は検出されなかったことになる。
【0047】
これに対し、ステップS31において、未選択の画素ペアが存在する場合、ステップS32へ移行し、新たな基準画素ペアの選択が行われ、再び、ステップS27へ移行する。
【0048】
以上のような処理が、ケージ鶏舎200の小部屋300毎に行われる。なお、上述したように、死鶏情報が通信部14に送信されると、その死鶏情報は、ネットワーク30を介して管理装置20の通信部26で受信され、その後、管理装置20の制御部21の指令により、表示部23に死鶏情報が表示される。また、作業者は必要に応じて入力部22を操作することにより、死鶏情報がプリンタ24により紙媒体上に出力される。作業者は、その紙媒体上の死鶏情報(位置情報「B−3−3」)に基づいて、ケージ鶏舎200の多数の小部屋300の中から、死鶏H5が存在する小部屋300を容易に特定することができる。なお、管理装置20が受信した死鶏情報は、適宜、記憶部25に記憶される。
【0049】
<実施形態2>
次いで、本発明の実施形態2を、図10を参照しつつ説明する。図10は、実施形態2の死鶏検出システムが備える移動撮影装置110のブロック図である。本実施形態の死鶏検出システムは、ケージ鶏舎200の小部屋300の位置情報をICタグ205で管理するものである。ケージ鶏舎200の各小部屋300には、それらを互いに識別するための情報を有するICタグ205が取り付けられている。本実施形態の移動撮影装置110も、実施形態1と同様、サーモグラフ111A及び可視光デジタルカメラ111Bを含む撮像部111の他、昇降部112、水平移動部113、通信部114、制御部115、記憶部116を備えている。そして、本実施形態の移動撮影装置110は、更に、ICタグ205の情報を読み取る位置情報取得部(ICリーダ)117を備えている。位置情報取得部(ICリーダ)117は、撮像部111と共に、昇降部112に取り付けられており、撮像部111が小部屋300内を撮影する前に、又は撮影した後に小部屋300に設けられたICタグ205の情報を取得する。取得された位置情報は、適宜、撮像部11で取得された画像情報(可視画像及び赤外画像)と関連付けられて、記憶部116に記憶される。本実施形態において、実施形態1と同様の死鶏検出処理が実行され、小部屋300から死鶏が検出されると、その検出された死鶏情報と共に位置情報が、管理装置側へ送信される。このように、ICタグ205と、位置情報取得部117を利用して、ケージ鶏舎200の多数の小部屋300を識別してもよい。
【0050】
<実施形態3>
次いで、本発明の実施形態3を、図11を参照しつつ説明する。図11は、実施形態3の死鶏検出システムが備える移動撮影装置210のブロック図である。本実施形態の死鶏検出システムは、サーモグラフ221Aと可視光デジタルカメラ221Bが別体となった2つの撮像部211,221を備えている。本実施形態の移動撮影装置210は、2つ撮像部211,221以外に、主として、実施形態1と同様、昇降部212、水平移動部213、通信部214、制御部215、記憶部216を備えている。2つの撮像部211,221は、制御部215からの指示により、所定のタイミングで略同時に対象物を撮影する。また、2つの撮像部211,221は、共に昇降部212に昇降可能に支持される。
【0051】
撮像部211(サーモグラフ211A)が取得する赤外画像と、撮像部221(可視光デジタルカメラ221B)が取得する可視画像は、ケージ鶏舎の小部屋の同一箇所を撮影するように設定されているものの、通常、互いの撮影角度にずれが生じる。そのため、取得された可視画像と赤外画像は、それぞれ座標が設定される前に、互いの撮影箇所(撮影対象部)が一致するように、制御部215が公知の画像処理(補正処理)を実行する。このように、本発明の目的を損なわない限り、各小部屋の赤外画像及び可視画像を、別々の撮像部211,221を利用して取得してもよい。
【0052】
<実施形態4>
次いで、本発明の実施形態4を、図12を参照しつつ説明する。図12は、実施形態4の死鶏検出システムが備える移動撮影装置310の説明図である。本実施形態の移動撮影装置310は、撮像部311がケージ鶏舎200の小部屋300を撮影する箇所が、鶏Hの足元付近である場合である。撮像部311は、昇降部312の下側に固定されており、餌樋202と床との間の隙間から、小部屋300内を撮影する。死鶏HXは、通常、小部屋300の床上に横たわっているため、餌樋202と床との間を狙うように撮影することで、死鶏HXが餌樋202で遮られること等が防止される。このようにして取得された可視画像と赤外画像を利用して、実施形態1と同様の死鶏検出処理を行ってもよい。
【0053】
<実施形態5>
次いで、本発明の実施形態5を、図13を参照しつつ説明する。図13は、実施形態5の死鶏検出システムが備える移動撮影装置410の説明図である。本実施形態の移動撮影装置410は、2つの撮像部412A,412Bを備えている。各撮像部412A,412Bは、それぞれサーモグラフと可視光デジタルカメラを1つずつ備えている。本実施形態は、1つの対象物(ケージ鶏舎200の小部屋300)に対して、2種類(2組)の可視画像及び赤外画像からなる画像情報を取得し、それらの画像情報に対して、それぞれ実施形態1と同様の死鶏検出処理が施される。そして、何れかの画像情報を基にした死鶏検出処理において、死鶏の存在が検出された場合に、死鶏情報が生成される。このように、1つの対象物(小部屋300)に対して撮影角度の異なる複数の画像情報を利用して、死鶏検出処理を行うことで、死鶏検出の精度を更に高めることができる。
【0054】
<実施形態6>
次いで、本発明の実施形態6を、図14を参照しつつ説明する。図14は、実施形態6の死鶏検出システムにおける死鶏検出処理の低温画素検出工程を示す説明図である。実施形態1のステップS24では、赤外画像を構成する画素の中から、低温画素に該当する画素を、低温データを利用して、直接、検出していた。これに対し、本実施形態では、予め記憶部に登録されている高温データを利用して、生きている鶏の体温以上の温度に対応する画素(高温画素)の座標位置を検出する(図14のS24A)。例えば、図8に示される高温領域61〜63(又は高温領域61〜64)を除外する。そして、赤外画像を構成する画素の中から、高温画素を除外し、残った高温画素以外の画素を低温画素として、その座標位置を検出する(図14のS24B)。例えば、図8に示される高温領域61〜63(又は高温領域61〜64)を除外した領域にあるすべての画素が、低温画素として処理される。
【0055】
ケージ鶏舎200が設置される環境によっては、高温画素の方が容易に検出し易い場合も考えられる。そのような場合、本実施形態のように上記のような高温画素を予め検出し、その高温画素の情報を利用して、低温画素の座標位置を検出してもよい。それ以降の死鶏検出処理の工程は、上記実施形態1等と同様に実行することができる。
【0056】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0057】
(1)上記実施形態1等では、ケージ飼いされた鶏(採卵鶏)に対して死鶏の検出が行われていたが、本発明はこれに限られず、他の実施形態においては、ケージ飼いされた肉鶏に対して死鶏の検出が行われてもよい。
【0058】
(2)上記実施形態1等では、可視画像の中から、同色画素を検出する工程(同色画素検出工程)を行った後、赤外画像の中から、低温画素を検出する工程(低温画素検出工程)を行っていたが、本発明はこれに限られず、例えば、低温画素検出工程を先に行った後、低温画素検出工程を行ってもよいし、または、それらの工程を同時並行で行ってもよい。
【0059】
(3)他の実施形態においては、例えば、2つ以上の撮像部を使用し、かつそれらの撮像部を利用して、それぞれ異なる対象物(ケージ鶏舎の小部屋)を撮影して、異なる対象物の死鶏検出を同時に行ってもよい。
【0060】
(4)本発明の死鶏検出方法及び死鶏検出システムでは、複数の撮影区域に分けられたケージ鶏舎に対して、撮影区域単位で、可視画像及び赤外画像が取得され、死鶏の有無が判断される。上述した各実施形態では、ケージ鶏舎が備える複数の小部屋が、それぞれ撮影区域に対応しているため、小部屋単位で、可視画像及び赤外画像が取得されている。本発明は、小部屋単位で、可視画像及び赤外画像を取得する場合に限られず、例えば、複数の小部屋(例えば、隣り合った2つの小部屋)を、1つの撮影区域として設定してもよいし、場合によっては、1つの小部屋を複数の撮影区域に分けてもよい。ケージ鶏舎の種類によっては、鶏を収容する1つの小部屋が大きい場合、又は小さい場合がある。そのため、撮影区域は、本発明の目的を損なわない限り、小部屋の大きさ等に応じて、適宜、設定される。そして、そのような複数の撮影区域に対して、それぞれ位置を特定するための位置情報が付与される。
【0061】
(5)撮影区域毎に付与される位置情報としては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はない。例えば、ケージ鶏舎が備える小部屋の仕切り壁を、ケージ鶏舎の左右方向で数えた数情報や、ケージ鶏舎の天井又は床面を、ケージ鶏舎の上下方向で数えた数情報等を利用して、撮影対象となっている撮影区域(例えば、小部屋)の位置情報を作成してもよい。また、移動撮影装置の水平移動部や、昇降部が移動した距離等の情報(例えば、水平移動部がケージ鶏舎の末端側から水平方向に移動した距離と、昇降部が移動した上下方向の距離)を利用して、撮影区域の位置情報を作成してもよい。
【0062】
(6)撮像部のサーモグラフによって取得される赤外画像の種類は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、白色と黒色を利用して表現される赤外画像であってもよい。
【0063】
(7)撮像部の可視光デジタルカメラによって可視画像を取得する際、ケージ鶏舎(ケージ鶏舎群)が設置されている建物内(室内)に差し込む光(自然光等)や、建物内(室内)に設置されている照明装置からの光が適宜、利用される。なお、それらだけでは光量が不足する場合、撮像部11が備えるエレクトロニックフラッシュ等の発光装置からの光を利用して、適宜、可視画像が取得される。
【0064】
(8)実施形態1等において、移動撮影装置と管理装置は、ネットワーク(例えば、インターネット)を介して互いに接続されていたが、本発明はこれに限られず、例えば、移動撮影装置と管理装置がネットワークを介さず、互いに直接、通信可能な構成としてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…移動撮影装置、11…撮像部、11A…サーモグラフ、11B…可視光デジタルカメラ、12…昇降部、13…水平移動部、14…通信部、15…制御部、16…記憶部、20…管理装置、30…ネットワーク、100…死鶏検出システム
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14