(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
雄ネジ部(20A)と先端縮径テーパ部(20B)を有するフレア継手本体(20)と、上記雄ネジ部(20A)に螺着される雌ネジ部(15A)を有する袋ナット(15)とを、備え、
被接続用パイプ(P)は、先端面(3)から所定軸心寸法(L5 )に渡って先端拡径管部(5)が形成されると共に、上記先端拡径管部(5)と基本径管部(6)との境界には、テーパ状段付部(10)が形成され、
上記パイプ(P)の上記先端拡径管部(5)に内挿される接続筒部(31)と、上記先端縮径テーパ部(20B)に当接する勾配面(32)を有するインコア(30)を備え、
上記袋ナット(15)のフレア継手本体(20)への螺進により、上記パイプ(P)のテーパ状段付部(10)を経て上記先端拡径管部(5)に外嵌される閉円環状リング(25)を、上記袋ナット(15)の内部に設け、
上記リング(25)のラジアル内方向への縮径付勢力にて、上記パイプ(P)の先端拡径管部(5)と上記インコア(30)の接続筒部(31)との密封状態を保ち、
さらに、上記袋ナット(15)のフレア継手本体(20)への螺着に伴うアキシャル方向の力を、上記リング(25)を介してインコア(30)に伝達して、上記フレア継手本体(20)の先端縮径テーパ部(20B)と、インコア(30)の勾配面(32)との圧接密封状態を保つように構成したことを特徴とする冷媒用管継手構造。
【背景技術】
【0002】
従来から、
図11に示すフレア継手は広く知られている。一般に、このフレア継手は、
図11に示すように、パイプPの端部にフレア加工部fを作業工具(治具)によって塑性加工することで形成していた。フレア継手本体hのテーパ部aに当てて袋ナットnにて締付け、袋ナットnのテーパ面tとフレア継手本体hのテーパ部aにて挾圧し、金属面の相互圧接にて密封性を確保する構成である(例えば、特許文献1参照)。作業現場にて、被接続用パイプPの端部に、専用治具(作業工具)を使用してフレア加工部fを形成する際に、テーパ状への大きな塑性変形によって、フレア加工部fの小径側角部f
1 に亀裂を生じ易い。特に、パイプPの材質をAlとした場合には、その亀裂発生率が高い。また、(パイプPがCuでも、Alでも、)作業現場におけるフレア加工によって品質のバラツキが発生し易い等の問題があった。
そこで、
図9と
図10に示すような構造の管継手構造が提案されている(特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9,
図10に示す管継手構造は、フレア継手本体82と袋ナット83を有し、内部に引抜阻止部材81を備えた構成であって、パイプ先端にフレア加工も、その他の加工も省略できるという優れた点もあるが、極めて超精密な、爪80を有する引抜阻止部材81を必要とした。そのため製作が難しく、コスト高となるという問題が残されている。また、パイプPに回転トルクが作用すると、爪80によって螺旋溝が形成されながらパイプ引抜けが生ずる場合もある。
さらに、
図9,
図10の管継手構造では、(複数個の)Oリング84,85等のシール材を必要としている。このゴム製のOリング84,85等のシール材では、使用温度が、−50℃〜+130℃の大きな温度変化には耐えることが困難であり、耐久性及び密封性の面で問題が残っている。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題を解決して、超精密部品を省略でき、製作も容易でコストダウンを図り得て、コンパクトで接続作業も安定して容易に行い得る管継手構造を提供することを目的とする。特に、冷媒配管用として、過酷な温度変化に十分耐えて、寿命が長く、好適な管継手構造を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、雄ネジ部と先端縮径テーパ部を有するフレア継手本体と、上記雄ネジ部に螺着される雌ネジ部を有する袋ナットとを、備え、被接続用パイプは、先端面から所定軸心寸法に渡って先端拡径管部が形成されると共に、上記先端拡径管部と基本径管部との境界には、テーパ状段付部が形成され、上記パイプの上記先端拡径管部に内挿される接続筒部と、上記先端縮径テーパ部に当接する勾配面を有するインコアを備え、上記袋ナットのフレア継手本体への螺進により、上記パイプのテーパ状段付部を経て上記先端拡径管部に外嵌される閉円環状リングを、上記袋ナットの内部に設け、上記リングのラジアル内方向への縮径付勢力にて、上記パイプの先端拡径管部と上記インコアの接続筒部との密封状態を保ち、さらに、上記袋ナットのフレア継手本体への螺着に伴うアキシャル方向の力を、上記リングを介してインコアに伝達して、上記フレア継手本体の先端縮径テーパ部と、インコアの勾配面との圧接密封状態を保つように構成したものである。
【0007】
また、上記インコアの接続筒部の外周面には、複数本の断面三角形乃至富士山形の独立小突条が形成されている。
また、密封のためのシール材を全く省略して、全ての構成部品を、金属製とした。
また、上記閉円環状リングの肉厚寸法をT
25とすると共に、上記パイプの肉厚寸法をT
p とすると、数式1が成立するように、寸法設定した。
1.0・T
p ≦T
25≦2.5・T
p (数式1)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、超精密部品を省略して比較的容易に製作でき、しかも、パイプに強大な耐引抜力を、付与できる。Oリング等のゴム製シール材を省略可能となり、極低温から超高温まで───例えば、−50℃〜+130℃───の温度変化に十分に耐え、さらに、パイプの耐引抜力を十分大きく維持できる。
先端拡径管部をパイプ端に予め加工する必要があるといえども、従来から長くロウ付けのために使用されていた作業工具(治具)を用いれば、簡単かつ確実に、熟練を要さずに加工できる。この先端拡径管部の存在によって、流路孔の内径寸法が、パイプ自身の内径寸法と同等となり、流体通過抵抗の増加を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1と
図2と
図3に示す本発明の実施の一形態に於て、被接続用パイプPは、先端面3から所定軸心寸法L
5 に渡って先端拡径管部5が形成されている。
この先端拡径管部5と、パイプ本来の基本径D
0 を有する基本径管部6との境界には、テーパ状段付部10が形成されている。
【0011】
20は、フレア継手本体であって、雄ネジ部20Aと先端縮径テーパ部20Bを有し、JIS B 8607に規定されたフレア管継手が該当し、
図11に示したフレア継手本体hと同様のものである。
15は袋ナットであって、フレア継手本体20の雄ネジ部20Aに螺着される雌ネジ部15Aを有する。
袋ナット15の孔部16には、基端から先端に渡って、大径の雌ネジ部15A,中径部15C,先端小径部15Fが、順次形成されている。
上述の如く、本発明に係る冷媒用管継手構造は、雄ネジ部20Aと先端縮径テーパ部20Bを有するフレア継手本体20と、この雄ネジ部20Aに螺着される雌ネジ部15Aを有する袋ナット15とを、備えている。
【0012】
30は、接続完了状態では、
図3に示すように袋ナット15に内有されるインコアであって、このインコア30は、パイプPの先端拡径管部5に内挿される接続筒部31と、継手本体20の先端縮径テーパ部20Bに当接する勾配面32を、備えている。
さらに具体的に説明すれば、インコア30は軸心に沿った貫孔33を有し、勾配面32は、この貫孔33の基端側に形成され、基端方向に拡径テーパ状であり、僅かに凸面状(凸アール状)とするも望ましい。また、インコア30は基端部位が、接続筒部31よりも大径の肉厚大径部34であり、この肉厚大径部34と、(小径の)接続筒部31との間に、段付部35が形成される。
【0013】
また、インコア30の接続筒部31の外周面には、複数本の断面三角形乃至富士山形の独立小突条36が、複数本形成されている。
また、25は閉円環状リングであって、短円筒体から成る。このリング25は、パイプPに対して、
図1に示すように、先端拡径管部5の形成加工前に、遊嵌状に外嵌され、その後、(後述する)
図7のように先端拡径管部5を形成すると、リング25はテーパ状段付部10に当たって、パイプPの先端側へ(
図1の左方向に)離脱しない。
【0014】
図1から
図2に示すように、袋ナット15を(手でもって)軽く左方向へ移動させると、リング25は、袋ナット15の中径部15Cに嵌合する。即ち、袋ナット15は、先端位置に、内鍔部17を有し(この内鍔部17の内周面にて小径部15Fが形成されている)、この内鍔部17の軸心直交面状内面17Aと、上記リング25の先端面が、当接する(
図2,
図3参照)。
【0015】
図1から
図2のように、袋ナット15を継手本体20へ接近させ、その後、袋ナット15を継手本体20の雄ネジ部20Aに螺進してゆくと、袋ナット15の内部のリング25は、内鍔部17の内面17Aにて、アキシャル内方向へ押圧されつつ、しだいにパイプ先端方向へ移動して、パイプPのテーパ状段付部10に当接する。
【0016】
このリング25の内径寸法は、パイプPの先端拡径管部5の自由状態の外径寸法よりも、小さく設定しておく。これによって、袋ナット15を、引続き螺進すれば、
図2から
図3のように、リング25は、パイプPのテーパ状段付部10を経て、先端拡径管部5に、外嵌され、しかも、縮径方向に大きな力(絞り力)を付与し、先端拡径管部5の内周面には、独立小突条36が食い込み状態となって、
図3に示す如く、先端拡径管部5の内周面と、インコア30の接続筒部31の外周面とは、金属相互の食い込み状態(圧接状態)として、密封され、冷媒の外部漏洩を阻止する。
【0017】
言い換えると、金属製リング25のラジアル内方向への縮径付勢力(弾発的付勢力)にて、パイプPの先端拡径管部5と、インコア30の接続筒部31との冷媒密封状態を保つことができる。
さらに、上記袋ナット15のフレア継手本体20への螺着に伴うアキシャル方向の力を、上記リング25を介してインコア30に伝達して、上記フレア継手本体20の先端縮径テーパ部20Bと、インコア30の勾配面32との圧接密封状態を保つことができる(
図1から
図2参照)。
【0018】
図1〜
図3から明らかなように、本発明に係る冷媒用管継手構造では、密封のためのOリング等のゴム又は合成樹脂製のシール材を、全く省略している。即ち、構成部品は金属製である。具体例を挙げると、パイプPはCu又はAlであり、フレア継手本体20は真鍮、袋ナット15は真鍮、インコア30は真鍮又はステンレス鋼、リング25はハードAl又はステンレス鋼等とする。
【0019】
次に、リング25が大きな縮径方向の弾発的付勢力を、パイプPの先端拡径管部5に付与させるには、リング25の肉厚寸法T
25をパイプPの肉厚寸法T
p に比較すれば、十分大きくすることが望ましい。
例えば、次の数式1が成立するように設定するのが良い。
1.0・T
p ≦T
25≦2.5・T
p (数式1)
さらに望ましいのは、次の数式2のように設定する。
1.2・T
p ≦T
25≦2.2・T
p (数式2)
【0020】
なお、T
25が下限値未満では、ラジアル内方向への絞り力が過小となり、密封性が不十分となる。逆に、上限値を越すと、袋ナット15の螺進によって、リング25を、
図2から
図3の状態へ、あるいは、後述する
図5から
図6の状態へ、嵌合させることが困難となる。
【0021】
次に、
図4〜
図6に示す他の実施形態について説明する。
この
図4〜
図6では、前述した数式1の範囲内において、リング25の肉厚寸法T
25が大きい値であって、リング外径寸法D
25が袋ナット15の雌ネジ部15Aの内径寸法D
15よりも大である場合を示す。リング25を、
図1,
図2のように前方側(雌ネジ部15A側)から袋ナット15の内部へ挿入不可であるため、袋ナット15の後方(
図4〜
図6の右側)からリング25を袋ナット15の内部へ挿入するための構造を示している。
【0022】
即ち、袋ナット15は、後方端側に於て、段付部18を介して、大径部19と逆ネジ部22が、軸心に沿った孔部16の後半部位に、形成される。
さらに、リング保持環23を付設する。つまり、リング25を嵌合する凹窪部24を有し、この凹窪部24にリング25を嵌合して、袋ナット15の逆ネジ部22に対して、リング保持環23の外周の逆ネジ部7を螺進し、
図4から
図5に示す状態とすれば、
図2と同じ状態となる。つまり、パイプPのテーパ状段付部10に対し、リング25の内方角部が当接する。
【0023】
その後、
図5から
図6に示したように、袋ナット15を螺進させてゆけば、リング25は拡径管部5に乗り上げるように外嵌して、リング25の弾発的縮径力により、パイプPの拡径管部5の内面に独立小突条36が食い込み状として、パイプPの耐引抜力を発揮し、かつ、(冷媒に対する)密封状態とできる。
図5,
図6に示したような袋ナット15とリング保持環23の組付状態において、
図1〜
図3に示した内鍔部17は、リング保持環23の側に形成されていると、言うことができる。
【0024】
このように、
図4〜
図6に示した実施形態では、リング25の肉厚寸法T
25は、
図1〜
図3の実施形態よりも、十分に大きいので、
図6の接続完了状態下でのパイプ耐引抜力は大であり、密封性能は極めて高く維持できる。
【0025】
本発明に於ては、先端拡径管部5を被接続用パイプPに設けることが基本的な一構成要件である。そこで、先端拡径管部5に関して、以下、説明する。
図7に示すように、被加工パイプP
0 の先端を分割金型26の孔部26Aに挿入し、4個(又はそれ以上)に分割された横断面扇型の拡径片27をパイプP
0 に対して所定深さに挿入する。矢印E方向にテーパ状雄金型28を、分割された拡径片27によって形成されたテーパ状孔部29に、押込めば、
図7(A)から(B)のように拡径片27がラジアル外方向Rへ移動し、先端拡径管部5が形成(加工)される。
【0026】
なお、テーパ状段付部10を形成するために、拡径片27にはテーパ部27Aが設けられ、金型26の孔部26Aには、テーパ部26Bが設けられている。
その後、金型26を拡径方向に分割作動し、加工されたパイプP
0 を引抜けば、
図1〜
図6等に示すような先端拡径管部5付の被接続用パイプPが製作される。
古くから、
図7に示した拡径用手動作業具は、広く知られている。その理由は、
図8に示すようなロウ付け管接続63が、古くから、冷媒配管や家庭用給湯(水)配管に使用されているためである。つまり、古くから実施されてきたロウ付け管接続63のために、一方のパイプ61には、
図1〜
図6に示した先端拡径管部5を予め加工する必要があったためである。(なお、他方のパイプ62は加工せずにそのまま拡径管部5に挿入され、相互嵌合面部X
5 がロウ付けされる。)
このように、ロウ付けによるパイプ接続作業に広く用いられていた拡径作業工具、及び、それによって簡単に加工可能な先端拡径管部に、本発明者は着眼し、
図1〜
図6に示したような独自の形状と構造を結合させて、ロウ付け等の熱を用いずに安全に作業ができ、しかも、従来例の
図9に比べて、超精密の食込み爪80等を備えないで、かつ、パイプ接続作業性についても優れた管継手構造を、ここに提案する。
【0027】
本発明は、以上詳述したように、雄ネジ部20Aと先端縮径テーパ部20Bを有するフレア継手本体20と、上記雄ネジ部20Aに螺着される雌ネジ部15Aを有する袋ナット15とを、備え、被接続用パイプPは、先端面3から所定軸心寸法L
5 に渡って先端拡径管部5が形成されると共に、上記先端拡径管部5と基本径管部6との境界には、テーパ状段付部10が形成され、上記パイプPの上記先端拡径管部5に内挿される接続筒部31と、上記先端縮径テーパ部20Bに当接する勾配面32を有するインコア30を備え、上記袋ナット15のフレア継手本体20への螺進により、上記パイプPのテーパ状段付部10を経て上記先端拡径管部5に外嵌される閉円環状リング25を、上記袋ナット15の内部に設け、上記リング25のラジアル内方向への縮径付勢力にて、上記パイプPの先端拡径管部5と上記インコア30の接続筒部31との密封状態を保ち、さらに、上記袋ナット15のフレア継手本体20への螺着に伴うアキシャル方向の力を、上記リング25を介してインコア30に伝達して、上記フレア継手本体20の先端縮径テーパ部20Bと、インコア30の勾配面32との圧接密封状態を保つように構成したので、冷媒に対するシール材の耐久性を心配せずに、長期間に渡って優れた密封性能を発揮する。また、作業現場のフレア加工による品質のバラツキの問題が解決され、極めて超精密な爪80(
図9,
図10参照)を有する部品が省略できて、強力な耐引抜力を発揮する。冷媒配管では、−50℃〜+130℃と極めて温度差が大きく、かつ、高圧力が作用する過酷な使用環境下で、高い密封性を、安定して長期間に渡って維持することが可能となった。
【0028】
また、上記インコア30の接続筒部31の外周面には、複数本の断面三角形乃至富士山形の独立小突条36が形成されているので、金属製パイプPの先端拡径管部5の内周面に確実に十分深く食い込み、大きい耐引抜力、及び、高い密封性能を、冷媒に対して、発揮できる。
【0029】
また、密封のためのシール材を全く省略して、全ての構成部品を、金属製としたので、超低温(−50℃)から超高温(+130℃)と極めて厳しい使用環境下で、安定した密封性能を長期使用期間に渡って発揮できる。
【0030】
また 上記閉円環状リング25の肉厚寸法をT
25とすると共に、上記パイプPの肉厚寸法をT
p とすると、1.0・T
p ≦T
25≦2.5・T
p が成立するように、寸法設定したので、金属製リング25の強力な弾発縮径付勢力がラジアル内方向に向かって発生し、金属製パイプPを十分強力に、インコア30の接続筒部31に対して、圧着でき、しかも、低温から高温までの大きな温度変動にも、安定して高い冷媒への密封性能を発揮し、耐久性にも優れる。
【解決手段】フレア継手本体20と袋ナット15を有し、被接続用パイプPは、先端面3から所定軸心寸法に渡って先端拡径管部5が形成されている。パイプPのテーパ状段付部10を越えて、先端拡径管部5に対して閉円環状リング25が外嵌され、インコア30の接続筒部31に圧接するように絞り力を与えて、接続される。