【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1に係る光半導体素子100の平面図である。
図2Aは、光半導体素子100の端面11側の側面図、
図2Bは、光半導体素子100の端面12側の側面図である。光半導体素子100は、分布帰還型半導体レーザであり、所定波長のレーザ光を出力する。
図1から
図2Bのように、光半導体素子100は、発光素子20、受光素子30、及び端面11、12に設けられた低反射(Anti Reflection)膜AR、を備える。
【0014】
図3Aは、
図1のA−A間の断面図、
図3Bは、
図1のB−B間の断面図、
図4は、
図1のC−C間の断面図である。
図3A及び
図4のように、発光素子20は、n側電極13、半導体基板10、回折格子層21、n型クラッド層22、活性層23、p型クラッド層24、コンタクト層25、及びp側電極26を備える。
【0015】
半導体基板10は、例えば5.0×10
17/cm
3〜4.0×10
19/cm
3の濃度のn型不純物を含むn型InPからなる。一例として、1.0×10
18/cm
3のSn(錫)がドープされたn型InPからなる。n側電極13は、半導体基板10の下面に設けられている。n側電極13は、導電性材料からなり、例えばAuGe(金ゲルマニウム)とAu(金)の積層体が用いられる。n側電極13は、半導体基板10とオーミック接触をなしている。
【0016】
回折格子層21は、半導体基板10上に設けられている。回折格子層21には、単一波長性を向上させるために、回折格子の位相をπ/2だけシフトさせたλ/4位相シフト部21aが光伝搬方向の中央部に設けられている。回折格子層21は、例えばアンドープのInGaAsPからなる。回折格子層21によって形成される回折格子の周期は、光半導体素子100が出力するレーザ光の所定波長に応じた周期になっている。
【0017】
n型クラッド層22は、回折格子層21を覆い且つ回折格子層21の間の隙間に埋め込まれて、半導体基板10上に設けられている。n型クラッド層22は、例えば1.0×10
18/cm
3のSi(シリコン)がドープされたn型InPからなる。
【0018】
活性層23は、n型クラッド層22上に設けられている。活性層23は、例えばInGaAsPからなるバリア層とInGaAsPからなるウェル層とが交互に複数積層された多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造からなる。p側電極26とn側電極13との間に順方向電流が供給されると、活性層23では、n型クラッド層22及びp型クラッド層24から注入されたキャリアが再結合することで光が発生する。
【0019】
回折格子層21、n型クラッド層22、及び活性層23は、メサストライプ27の構造をしている。p型クラッド層24は、メサストライプ27を覆って設けられている。p型クラッド層24は、例えば1.0×10
18/cm
3のZn(亜鉛)がドープされたp型InPからなる。n型クラッド層22及びp型クラッド層24の屈折率は、活性層23よりも小さくなっている。これにより、n型クラッド層22及びp型クラッド層24は、活性層23で発生した光を閉じ込める機能を有する。
【0020】
メサストライプ27の斜め上側であってp型クラッド層24内にn型ブロック層28が設けられている。n型ブロック層28は、例えば1.0×10
19/cm
3のS(硫黄)がドープされたn型InPからなる。
【0021】
コンタクト層25は、p型クラッド層24上に設けられている。コンタクト層25は、p型クラッド層24よりもバンドギャップの小さい材料からなり、例えば1.2×10
19/cm
3のZn(亜鉛)がドープされたp型InGaAsからなる。
【0022】
メサストライプ27の上方の領域を除くコンタクト層25上に保護膜14が設けられている。保護膜14は、絶縁膜からなり、例えば酸化シリコン(SiO
2)膜からなる。p側電極26は、コンタクト層25の露出領域及び保護膜14を覆って設けられている。p側電極26は、導電性材料からなり、例えばTi(チタン)とPt(白金)とAu(金)の積層体からなる。p側電極26はコンタクト層25とオーミック接触をなしている。
図1のように、p側電極26に電気的に接続された電極パッド29が設けられている。
【0023】
図3B及び
図4のように、受光素子30は、n側電極13、半導体基板10、n型クラッド層32、光吸収層33、p型クラッド層34、コンタクト層35、及びp側電極36を備える。半導体基板10及びn側電極13は、発光素子20と共通である。すなわち、1つの半導体基板10上に発光素子20と受光素子30が設けられていて、1つの半導体基板10の下面に1つのn側電極13が設けられている。
【0024】
n型クラッド層32は、半導体基板10上に設けられている。n型クラッド層32は、例えば発光素子20のn型クラッド層22と同じ材料且つ同じ組成からなる。すなわち、n型クラッド層32は、例えば1.0×10
18/cm
3のSiがドープされたn型InPからなる。
【0025】
光吸収層33は、n型クラッド層32上に設けられている。光吸収層33は、例えば発光素子20の活性層23と同じ材料からなる。すなわち、光吸収層33は、例えばInGaAsPからなるバリア層とInGaAsPからなるウェル層とが交互に複数積層された多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造からなる。p側電極36とn側電極13との間に逆バイアス電圧が印加されると、光吸収層33が空乏化され、光吸収層33で発生したフォトキャリアは光電流として外部に取り出されて電気信号に変換される。なお、受光素子30の光吸収層33は、発光素子20の活性層23の組成より、バンドギャップエネルギーが大きい組成からなる。
【0026】
n型クラッド層32及び光吸収層33は、メサストライプ37の構造をしている。p型クラッド層34は、メサストライプ37を覆って設けられている。p型クラッド層34は、例えば発光素子20のp型クラッド層24と同じ材料且つ同じ組成からなる。すなわち、p型クラッド層34は、例えば1.0×10
18/cm
3のZnがドープされたp型InPからなる。n型クラッド層32及びp型クラッド層34の屈折率は、光吸収層33よりも小さくなっている。これにより、n型クラッド層32及びp型クラッド層34は、光吸収層33内を伝搬する光を閉じ込める機能を有する。
【0027】
メサストライプ37の斜め上側であってp型クラッド層34内にn型ブロック層38が設けられている。n型ブロック層38は、例えば発光素子20のn型ブロック層28と同じ材料且つ同じ組成からなる。すなわち、n型ブロック層38は、例えば1.0×10
19/cm
3のS(硫黄)がドープされたn型InPからなる。
【0028】
コンタクト層35は、p型クラッド層34上に設けられている。コンタクト層35は、p型クラッド層34よりもバンドギャップの小さい材料からなり、例えば発光素子20のコンタクト層25と同じ材料且つ同じ組成からなる。すなわち、コンタクト層35は、例えば1.2×10
19/cm
3のZnがドープされたp型InGaAsからなる。
【0029】
メサストライプ37の上方の領域を除くコンタクト層35上に保護膜14が設けられている。p側電極36は、コンタクト層35の露出領域及び保護膜14を覆って設けられている。p側電極36は、導電性材料からなり、例えば発光素子20のp側電極26と同じ材料からなる。すなわち、p側電極36は、例えばTiとPtとAuの積層体からなる。p側電極36はコンタクト層35とオーミック接触をなしている。
図1のように、p側電極36に電気的に接続された電極パッド39が設けられている。
【0030】
メサストライプ27(活性層23)の幅は、1.2μm〜1.8μm、メサストライプ37(光吸収層33)の幅は、15μm〜20μmであり、光半導体素子100の幅が、200μm〜400μmである。このように、従来の光半導体素子(レーザチップ)にメサストライプ37(光吸収層33)を付加しても光半導体素子の面積増加への影響は少ない。また、共振器長が短い短共振器のレーザが開発された場合でも、実装時の光半導体素子のハンドリングを考慮すると光半導体素子の幅の下限値は100μm程度であることから、メサストライプ37(光吸収層33)の幅は光半導体素子の幅の5分の1程度と小さく、光半導体素子の面積増加への影響は少ないため、チップの収率への影響も少ない。
【0031】
図1から
図2Bのように、発光素子20の回折格子層21、n型クラッド層22、活性層23、p型クラッド層24、及びコンタクト層25の積層は、その両側に凹部15が形成されたメサ構造になっている。同様に、受光素子30のn型クラッド層32、光吸収層33、p型クラッド層34、及びコンタクト層35の積層は、その両側に凹部15が形成されたメサ構造になっている。
【0032】
低反射膜ARは、発光素子20の活性層23で発生した光を、例えば1%以下の反射率で反射させる。低反射膜ARは、光半導体素子100の端面11、12において、反射光が光半導体素子100の内部に戻ることを抑制する機能を有する。低反射膜ARの反射率が低い程、反射光が内部に戻ることを抑制できることから、低反射膜ARの反射率は0.1%以下であることが好ましい。低反射膜ARとして、例えば窒化シリコン膜を用いることができる。
【0033】
次に、実施例1に係る光半導体素子100の製造方法について説明する。
図5Aから
図5Cは、実施例1に係る光半導体素子100の製造方法を示す平面図である。
図6Aから
図7Cは、実施例1に係る光半導体素子100の製造方法を示す断面図である。
図6Aから
図7Cは、
図5AのA−A間に相当する箇所の断面を示している。なお、実施例1の光半導体素子100は、ウエハ状の半導体基板に複数の光半導体素子が形成される多面取りプロセスによって形成されるが、
図5Aから
図7Cでは、1つの光半導体素子100について図示している。
【0034】
図5A及び
図6Aのように、半導体基板10の主面上に、例えばアンドープのInGaAsPからなる回折格子層40を成長させる。回折格子層40上にレジストからなるマスク41を形成する。マスク41は、発光素子20が形成される領域において、λ/4位相シフト部21aを有する回折格子層21が形成される領域の間に開口42を有し、その他の領域を覆う。また、マスク41は、受光素子30が形成される領域において全体に開口42を有する。
【0035】
図5B及び
図6Bのように、マスク41をエッチングマスクとして用いて回折格子層40に対してドライエッチングを施し、回折格子層40に開口43を形成する。発光素子20が形成される領域においては、λ/4位相シフト部21aを有する回折格子層21が形成される領域に回折格子層40が残存し、その間に開口43が形成される。受光素子30が形成される領域においては、全体に開口43が形成される。ドライエッチング処理として、例えばSiCl
4を用いたRIE(Reactive Ion Etching)法を用いることができる。その後、マスク41をHF(フッ酸)などを用いて除去する。
【0036】
図5C及び
図6Cのように、開口43が埋め込まれるように、回折格子層40上に、例えばn型InPからなるn型クラッド層44を成長させる。n型クラッド層44上に、例えばInGaAsPからなるバリア層とInGaAsPからなるウェル層とが交互に複数積層された多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造のコア層45を成長させる。コア層45上に、例えばp型InPからなるp型クラッド層46を成長させる。p型クラッド層46上であって、発光素子20が形成される領域にレジストからなるマスク47aを形成し、受光素子30が形成される領域にレジストからなるマスク47bを形成する。マスク47aは、n型クラッド層44aが並んで形成されていた領域に、n型クラッド層44aの幅よりも狭い幅のストライプ状に形成される。マスク47bは、マスク47aと同じ方向に延在するストライプ状に形成される。マスク47aとマスク47bの幅は例えば同じ大きさである。
【0037】
図7Aのように、マスク47a、47bをエッチングマスクとして用いて、p型クラッド層46、コア層45、n型クラッド層44、回折格子層40、及び半導体基板10の一部に対してドライエッチング処理を施す。これにより、発光素子20が形成される領域においては、λ/4位相シフト部21aを有する回折格子層21、n型クラッド層22、活性層23、及びp型クラッド層48からなるメサストライプが形成される。受光素子30が形成される領域においては、n型クラッド層32、光吸収層33、及びp型クラッド層49からなるメサストライプが形成される。ドライエッチング処理として、例えばSiCl
4を用いたRIE法を用いることができる。
【0038】
図7Bのように、メサストライプの両側を埋め込むように、半導体基板10上に、例えばp型InPからなるp型ブロック層50を成長させる。p型ブロック層50上に、例えばn型InPからなるn型ブロック層52を成長させる。p型クラッド層48、49及びn型ブロック層52の上面が覆われるように、例えばp型InPからなるp型クラッド層51を成長させる。p型クラッド層48、49、51は、例えば同じ材料及び組成からなる。
【0039】
図7Cのように、p型クラッド層51上に、例えばp型InGaAsからなるコンタクト層を成長させた後、コンタクト層から半導体基板10の一部まで掘り込まれた凹部15(
図2A及び
図2B参照)を形成する。これにより、発光素子20が形成される領域では、回折格子層21、n型クラッド層22、及び活性層23からなるメサストライプ27を覆うp型クラッド層24が形成され且つp型クラッド層24上にコンタクト層25が形成される。受光素子30が形成される領域では、n型クラッド層32及び光吸収層33からなるメサストライプ37を覆うp型クラッド層34が形成され且つp型クラッド層34上にコンタクト層35が形成される。
【0040】
発光素子20が形成される領域において、メサストライプ27の上方の領域を除くコンタクト層25上に保護膜14を形成すると共に、コンタクト層25の露出領域及び保護膜14を覆うようにp側電極26を形成する。受光素子30が形成される領域において、メサストライプ37の上方の領域を除くコンタクト層35上に保護膜14を形成すると共に、コンタクト層35の露出領域及び保護膜14を覆うようにp側電極36を形成する。半導体基板10の下面にn側電極13を形成する。
【0041】
その後、半導体基板10を劈開してチップ化した後に、端面11、12に低反射膜ARを形成することで、発光素子20と受光素子30とを備える光半導体素子100が形成される。なお、上記の各半導体層の成長の際には、MOVPE(有機金属気相成長)法を用いることができる。
【0042】
図8は、実施例1に係る光半導体素子100の検査方法を示すフローチャートの一例である。
図9は、
図8のフローチャートを説明するための平面図である。
図10は、
図9のA−A間の断面図、
図11は、
図9のB−B間の断面図である。なお、
図8から
図11に示す検査方法は、ウエハ状の半導体基板10に複数の光半導体素子100が形成された状態で行われるものである。また、
図10及び
図11では、電極などの一部の構成の図示を省略している。
【0043】
図9から
図11のように、ウエハ状の半導体基板10には、発光素子20と受光素子30とを有する複数の光半導体素子100a〜100dが形成されている。複数の光半導体素子100a〜100dのうちの隣接する光半導体素子の互いの発光素子20の活性層23と受光素子30の光吸収層33とが光学的に接続(光結合)されている。
【0044】
図12は、ウエハ状の半導体基板10に複数の光半導体素子100が形成されている状態の上面図である。
図12のように、隣接する光半導体素子100の間では、発光素子20のp側電極26と受光素子30のp側電極36とが短絡しないように互いに離れている。
【0045】
図8から
図11のように、ウエハ状の半導体基板10に形成された複数の光半導体素子100a〜100dのうちの測定対象の光半導体素子100cを特定する(ステップS10)。次いで、光半導体素子100cに隣接し且つ光半導体素子100cの活性層23に光学的に接続された光吸収層33を備える光半導体素子100b、100dの受光素子30に逆バイアス電圧を印加する(ステップS12)。光半導体素子100b、100dの受光素子30への逆バイアス電圧の印加は、電極パッド39を用いて行う。受光素子30に逆バイアスを印加することで、光吸収層33は活性層23から伝搬される光を吸収するようになる。
【0046】
次いで、測定対象である光半導体素子100cの発光素子20に順方向電流を供給してスイープする(ステップS14)。光半導体素子100cの発光素子20への順方向電流の供給は、電極パッド29を用いて行う。次いで、光半導体素子100cの発光素子20に順方向電流が供給された状態で、光半導体素子100b、100dの受光素子30に流れる光電流を測定する(ステップS16)。
【0047】
ステップS16で光電流を測定することで、光半導体素子100cの発光素子20の電流−光出力特性を測定することができる。これにより、発振閾値電流、スロープ効率、直列抵抗値、キンクの有無などの基本的な特性を評価することができる。
【0048】
実施例1によれば、
図9から
図11のように、複数の光半導体素子100a〜100dが形成され且つ隣接する光半導体素子の互いの発光素子20と受光素子30とが光学的に接続された半導体ウエハを準備する。
図8のステップS12のように、測定対象の光半導体素子100cに隣接し且つ光半導体素子100cの発光素子20に光学的に接続された受光素子30を備える光半導体素子100b、100dの受光素子30に逆バイアス電圧を印加する。
図8のステップS14のように、光半導体素子100cの発光素子20に順方向電流を供給する。その後、
図8のステップS16のように、光半導体素子100cに順方向電流が供給された状態で、光半導体素子100b、100cの受光素子30に流れる光電流を測定する。これにより、光半導体素子の光学特性をウエハ状態で測定することができ、特性異常の光半導体素子を早期に検出することができる。その結果、特性異常の光半導体素子をその後の製造工程から省くことができるようになり、例えばその後の製造工程であるキャリアへの実装作業が無駄になるような製造コストの増大を抑制することができる。また、光半導体素子100の光学特性のウエハ面内分布を容易に得ることができる。また、ウエハ状の半導体基板10に形成された複数の光半導体素子は相対的な位置関係が決まっていることから、ウエハ内の複数の光半導体素子100に対して自動で連続測定を行うことが可能となる。また、本測定において、特性異常と判定された光半導体素子については、ウエハ状態でインクマーキングがされる(良品にマーキングしても構わない)。このことにより、チップ状態にした後に良・不要の確認ができる。
【0049】
実施例1の光半導体素子100は、
図3Aから
図4のように、発光素子20と受光素子30とを備える。発光素子20は、端面11から端面12に向かって延在して半導体基板10上に設けられた活性層23と、活性層23に沿って設けられ、λ/4位相シフト部21aを有する回折格子層21と、を含む。受光素子30は、端面11から端面12に向かって延在して半導体基板10上に設けられた光吸収層33を含み、光吸収層33に沿って回折格子層は設けられていない。このように、光半導体素子100が発光素子20と受光素子30の両方を備えることで、ウエハ状態で光半導体素子の光学特性を測定する場合に受光素子を別の光半導体素子として設けることなく、光半導体素子100の一部として設けることで、半導体ウエハから取得できる光半導体素子100のチップ数の低下を抑制することができる。
【0050】
なお、実施例1では、測定対象の光半導体素子100cに隣接する光半導体素子100b、100dの両方の受光素子30に逆バイアス電圧を印加して光電流を測定する場合を例に示したがこれに限られない。光半導体素子100b、100dの少なくとも一方の受光素子30に逆バイアス電圧を印加して光電流を測定する場合であってもよい。
【0051】
以上のことから、チップ化後のキャリアへの実装工程において、本発明を用いることで、良品と判定された光半導体素子のみ実装するので、特性異常の不良品については、ここで廃棄される。よって、キャリアへの実装後の光半導体素子の不良は抑制される。なお、
図9では、光半導体素子100aの発光素子20は、光半導体素子100b側に出射端が形成される。光半導体素子100bの発光素子20は、光半導体素子100a側に出射端が形成される。これにより、光半導体素子100a〜光半導体素子100bの発光素子20と受光素子30は、同じ一端で出射端と入射端が形成される。
【実施例2】
【0052】
図13は、実施例2に係る光半導体素子200の平面図である。
図14Aは、
図13のA−A間の断面図、
図14Bは、
図13のB−B間の断面図である。なお、
図14A及び
図14Bでは、電極などの一部の構成の図示を省略している。実施例2の光半導体素子200は、1つの半導体基板10上に分布帰還型半導体レーザと光変調器とが集積された光半導体素子である。
【0053】
図14から
図15Bのように、実施例2に光半導体素子200は、発光素子20と端面12との間に光変調器60を備える。光変調器60は、例えば電界吸収型光変調器である。光変調器60は、発光素子20のn型クラッド層22に接続されたn型クラッド層62、活性層23に接続された光吸収層63、及びp型クラッド層24に接続されたp型クラッド層64を含む。n型クラッド層62は、例えば発光素子20のn型クラッド層22と同じ材料及び同じ組成からなる。すなわち、n型クラッド層62は、例えば1.0×10
18/cm
3のSiがドープされたn型InPからなる。光吸収層63は、例えば発光素子20の活性層23と同じ材料からなる。すなわち、光吸収層63は、例えばInGaAsPからなるバリア層とInGaAsPからなるウェル層とが交互に複数積層された多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造からなる。p型クラッド層64は、例えば発光素子20のp型クラッド層24と同じ材料及び同じ組成からなる。すなわち、p型クラッド層64は、例えば1.0×10
18/cm
3のZnがドープされたp型InPからなる。なお、光変調器60の光吸収層63は、発光素子20の活性層23の組成より、バンドギャップエネルギーが大きい組成からなる。
【0054】
光吸収層63は、発光素子20の活性層23に接続して、活性層23と端面12との間を延在していることから、活性層23で発生した光が伝搬される。このため、光変調器60は、p側電極66とn側電極13との間に逆バイアス電圧が印加されると、活性層23で発生し伝搬された光の強度を変調する。
【0055】
実施例2の光半導体素子200は、受光素子30を備える。受光素子30は、n側電極13、半導体基板10、n型クラッド層32、光吸収層33、p型クラッド層34を備える。n型クラッド層32は、半導体基板10上に設けられている。n型クラッド層32は、例えば発光素子20のn型クラッド層22と同じ材料からなる。すなわち、n型クラッド層32は、例えば1.0×10
18/cm
3のSiがドープされたn型InPからなる。光吸収層33は、n型クラッド層32上に設けられている。光吸収層33は、例えば発光素子20の活性層23と同じ材料からなる。すなわち、光吸収層33は、例えばInGaAsPからなるバリア層とInGaAsPからなるウェル層とが交互に複数積層された多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造からなる。p型クラッド層34は、例えば発光素子20のp型クラッド層24と同じ材料からなる。すなわち、p型クラッド層34は、例えば1.0×10
18/cm
3のZnがドープされたp型InPからなる。光が光吸収層33に入射され、光吸収層33で発生したフォトキャリアは光電流として外部に取り出されて電気信号に変換される。なお、受光素子30の光吸収層33は、発光素子20の活性層23の組成より、バンドギャップエネルギーが大きい組成からなる。
【0056】
図15は、実施例2に係る光半導体素子200の検査方法を示すフローチャートの一例である。
図16は、
図15のフローチャートを説明するための平面図である。
図17は、
図16のA−A間の断面図、
図18は、
図16のB−B間の断面図である。なお、
図15から
図18に示す検査方法は、実施例1と同様、ウエハ状の半導体基板10に複数の光半導体素子200が形成された状態で行われるものである。また、
図17及び
図18では、電極などの一部の構成の図示を省略している。
【0057】
図16から
図18のように、ウエハ状の半導体基板10には、発光素子20、受光素子30、及び光変調器60を有する複数の光半導体素子200a〜200dが形成されている。複数の光半導体素子それぞれの発光素子20の活性層23は、隣接する光半導体素子の一方の受光素子30の光吸収層33に直接接続され、他方の受光素子30の光吸収層33に光変調器60の光吸収層63を介して接続されている。また、1つの光半導体素子内において、発光素子20のp側電極26と光変調器60のp側電極66とは短絡しないように互いに離れている。隣接する光半導体素子の間では、発光素子20のp側電極26と受光素子30のp側電極36、及び、光変調器60のp側電極66と受光素子30のp側電極36が、それぞれ短絡しないように互いに離れている。
【0058】
図15から
図18のように、ウエハ状の半導体基板10に形成された複数の光半導体素子200a〜200dのうちの測定対象の光半導体素子200cを特定する(ステップS20)。次いで、光半導体素子200cに隣接し且つ光半導体素子200cの活性層23に光学的に接続された光吸収層33を備える光半導体素子200b、200dの受光素子30に逆バイアス電圧を印加する(ステップS22)。光半導体素子200b、200dの受光素子30への逆バイアス電圧の印加は、電極パッド39を用いて行う。
【0059】
次いで、光半導体素子200cの発光素子20に順方向電流を供給してスイープする(ステップS24)。光半導体素子200cの発光素子20への順方向電流の供給は、電極パッド29を用いて行う。次いで、光半導体素子200cの発光素子20に順方向電流が供給された状態で、光半導体素子200b、200dの受光素子30に流れる光電流を測定する(ステップS26)。これにより、光半導体素子200cの発光素子20の電流−光出力特性を測定することができる。
【0060】
次いで、光半導体素子200cの光変調器60に逆バイアス電圧を印加してスイープする(ステップS28)。光半導体素子200cの光変調器60への逆バイアス電圧の印加は、電極パッド69を用いて行う。光変調器60に逆バイアスを印加することで、光吸収層63は活性層23から伝搬される光を吸収するようになる。次いで、光半導体素子200cの受光素子30に順方向電流が供給され且つ光変調器60に逆バイアス電圧が印加された状態で、光半導体素子200dの受光素子30に流れる光電流を測定する(ステップS30)。これにより、光変調器60の消光特性を得ることができ、消光比を求めることができる。
【0061】
実施例2によれば、
図16から
図18のように、発光素子20及び受光素子30に加えて光変調器60を備える複数の光半導体素子200a〜200dが形成された半導体ウエハを準備する。光変調器60の光吸収層63は、発光素子20の活性層23に接続され、活性層23で発生した光が伝搬される。また、複数の光半導体素子200a〜200dそれぞれの発光素子20は隣接する光半導体素子の一方の受光素子30に光学的に直接接続され、他方の受光素子30に光変調器60を介して光学的に接続されている。
図15のステップS22のように、測定対象の光半導体素子200cに隣接し且つ光半導体素子200cの発光素子20に光変調器60を介して光学的に接続された受光素子30を備える光半導体素子200dの受光素子30に少なくとも逆バイアス電圧を印加する。
図15のステップS24のように、光半導体素子200cの発光素子20に順方向電流を供給する。
図15のステップS28のように、光半導体素子200cの光変調器60の逆バイアス電圧を印加する。その後、
図15のステップS30のように、光半導体素子200cの発光素子20に順方向電流が供給され且つ光変調器60に逆バイアス電圧が印加された状態で、光半導体素子200dに流れる光電流を測定する。これにより、発光素子20と光変調器60とが集積された光半導体素子200の場合では、光変調器60の消光特性の異常について検出することができる。
【0062】
また、実施例2の光半導体素子200は、
図13から
図14Bのように、発光素子20及び受光素子30に加えて光変調器60を備えている。光変調器60は、発光素子20の活性層23と端面12との間を延在して半導体基板10上に設けられ、活性層23で発生した光が伝搬される光吸収層63を含み、光吸収層63に沿って回折格子層は設けられていない。これにより、実施例1と同様、発光素子20と光変調器60が集積化された光半導体素子200の場合においても、ウエハ状態で光学特性を測定する場合に、半導体ウエハから取得できる光半導体素子200のチップ数の低下を抑制することができる。
【0063】
また、実施例2によれば、光半導体素子200に備わる発光素子20の活性層23と受光素子30の光吸収層33と光変調器60の光吸収層63とは同じ材料からなる。なお、受光素子30の光吸収層33と光変調器60の光吸収層63は、発光素子20の活性層23の組成より、バンドギャップエネルギーが大きい組成からなる。
【0064】
なお、実施例2では、光半導体素子200は、発光素子20と受光素子30に加えて光変調器60を備える場合を例に示したが、光変調器60の変わりに半導体光増幅器を備える場合でもよい。
【0065】
なお、
図16では、光半導体素子200aの光変調器60は、光半導体素子200b側に形成される。光半導体素子200bの光変調器60は、光半導体素子200a側に形成される。これにより、光半導体素子200aと光半導体素子200bとで受光素子30と光変調器60とは、同じ一端で出射端と入射端が形成される。
【0066】
なお、実施例1及び実施例2において、下部クラッド層がn型半導体で上部クラッド層がp型半導体の場合を例に示したが、下部クラッド層がp型半導体で上部クラッド層がn型半導体の場合でもよい。
【実施例3】
【0067】
図19は、実施例3に係る光半導体装置300を示す平面図である。
図19のように、実施例3の光半導体装置300は、パッケージ70にレセプタクル71が結合されている。パッケージ70の内部には、温度制御装置72と温度制御装置72上のキャリア73とが収納されている。レセプタクル71は、光ファイバを結合保持するためのものである。なお、
図19では、パッケージ70内への部品の実装状態を示すために、上部が開放された状態を図示しているが、実際は上部の開口に蓋が設けられ、パッケージ70内部は密閉状態となっている。
【0068】
キャリア73上には、サブキャリア74とレンズ75が実装されている。サブキャリア74の上面にはグランド配線パターン76と信号配線パターン77とが設けられている。グランド配線パターン76上に、実施例1の光半導体素子100とキャパシタ78が実装されている。キャパシタ78は、ワイヤ配線80を介してDC電源パッド81に電気的に接続されると共に、ワイヤ配線82を介して光半導体素子100の発光素子20の電極パッド29に電気的に接続されている。また、光半導体素子100の受光素子30の電極パッド39には、ワイヤ配線83を介してDC電源パッド81に電気的に接続されている。
【0069】
パッケージ70の外部から内部にかけて配線基板84が挿入されている。パッケージ70の内部であって、配線基板84上にグランド端子85と信号端子86が設けられている。グランド端子85は、ワイヤ配線87を介して、グランド配線パターン76に電気的に接続されている。信号端子86は、ワイヤ配線88、信号配線パターン77、及びワイヤ配線89を介して光半導体素子100の発光素子20の電極パッド29に電気的に接続されている。
【0070】
信号端子86からの信号に応じて発光素子20はレーザ光を出力し、光半導体素子100の端面12から出力されたレーザ光はレンズ75で集光されてレセプタクル71に結合保持された光ファイバに入射する。光半導体素子100の端面11から出力されたレーザ光はサブキャリア74上に実装されたミラー90で反射されて受光素子30に入射する。
【0071】
図20は、実施例3に係る光半導体装置300の製造方法を示すフローチャートである。
図20のように、複数の光半導体素子100が集積されたウエハ状の半導体基板10を形成する(ステップS40)。半導体基板10は、
図5Aから
図7Cで説明した方法によって、
図9から
図12で説明したような半導体基板を作製することができる。
【0072】
次いで、測定対象の光半導体素子100の発光素子20に光結合された受光素子30に逆バイアス電圧を印加する(ステップS42)。次いで、測定対象の光半導体素子100の発光素子20に順方向電流を供給する(ステップS44)。次いで、測定対象の発光素子20に順方向電流が供給された状態で、逆バイアス電圧を印加した受光素子30に流れる光電流を測定する(ステップS46)。これらは、
図8で説明した方法によって行うことができる。
【0073】
次いで、ステップS46で測定した光電流の測定結果に基づいて、発光素子20の合否を判定する(ステップS48)。すなわち、所望の特性を満たしていれば合格であると判定し、満たしていなければ不合格であると判定する。
【0074】
次いで、半導体基板10を劈開して、複数の光半導体素子100を分離させる(ステップS50)。次いで、ステップS48での判定結果に基づき、合格と判定した光半導体素子100をパッケージ70に搭載する(ステップS52)。これにより、
図19のように、光半導体素子100がパッケージ70内のサブキャリア74上に実装される。
【0075】
次いで、パッケージ70に搭載した光半導体素子100の発光素子20の電極パッド29をワイヤ配線80、82によってDC電源パッド81に電気的に接続させる(ステップS54)。次いで、光半導体素子100の受光素子30の電極パッド39をワイヤ配線83によってDC電源パッド81に電気的に接続させる(ステップS56)。このような工程を含んで、実施例3の光半導体装置300を製造することができる。
【0076】
実施例3の製造方法によれば、測定対象の光半導体素子100の発光素子20の特性を、隣接する光半導体素子100の受光素子30で測定し、その測定結果に基づいて、測定対象の光半導体素子100の合否を判定する。そして、合否の判定結果に基づいて、光半導体素子100をパッケージ70に搭載する。パッケージ70に搭載した光半導体素子100の発光素子20の電極をワイヤ配線によって電源に接続する。これにより、良品の光半導体素子100のみをパッケージ70に搭載することができるため、無駄な製造工程を低減することができ、製造コストの増大を抑制することができる。
【0077】
なお、実施例3では、実施例1の光半導体素子100を備える場合を例に示したが、実施例2の光半導体素子200を備える場合でもよい。