(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
又、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。更に、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
【0012】
<送電ユニット及び非接触給電システムの構造>
本発明の実施の形態に係る非接触給電システムは、
図1に示すように、給電コイルL1を有する送電ユニット1aと、受電コイルL2を有し商用周波数の電力を誘導性負荷X等の交流負荷に出力する受電ユニット2とを備える。給電コイルL1から受電コイルL2へ、高周波の電力が非接触で供給される。高周波の周波数は伝送効率を考慮すると10kHz以上、より好ましくは30kHz以上、更に好ましくは450kHz〜100kHz程度が望まれる。高周波の周波数が100kHz以上でも良い。受電ユニット2が出力する交流の周波数は商用周波数に限定されるものではなく、給電コイルL1から受電コイルL2へ送信される高周波よりも低周波の種々の周波数の交流出力を出力してもよい。
【0013】
給電コイルL1は、渦巻き円板状に構成され図示を省略したプラスチック等の誘電体からなる収納ボックスに納められている。そして、収納ボックスに納められた給電コイルL1の近傍に、給電コイルL1と間隔dを空けて対向するように非接触で、渦巻き円板状の受電コイルL2が配置されている。受電コイルL2も誘電体からなる収納ボックスに納められている。
【0014】
給電コイルL1及び受電コイルL2の間隔dは、0.8cm程度〜1.2cm程度に近接して配置され、給電コイルL1と受電コイルL2とが密結合をなしている。給電コイルL1に流れる高周波電流Iを1次電流として、受電コイルL2には電磁誘導により起電力が生じ、高周波の電力が非接触で伝送されることになる。受電コイルL2に供給された高周波の電力により、受電ユニット2が商用周波数の電力を出力し、誘導性負荷Xが駆動される。
【0015】
図1に例示した構成では、本発明の実施の形態に係る送電ユニット1aは、ハイサイドスイッチング素子Q
H1及びロウサイドスイッチング素子Q
L1等の回路素子で構成され給電コイルL1に電流を流す駆動回路14と、給電コイルL1に供給された電力を測定する電力監視装置16と、ハイサイドスイッチング素子Q
H1及びロウサイドスイッチング素子Q
L1のゲートに駆動信号を供給する駆動信号生成回路13と、駆動回路14及び駆動信号生成回路13に直流電源電圧を供給する整流回路12と、電力監視装置16の出力を用いて駆動信号生成回路13の周波数を決定し、駆動信号生成回路13を制御する周波数制御回路17と、を備える。
【0016】
図1に例示したように、送電ユニット1aの回路素子となる、駆動回路14のハイサイドスイッチング素子Q
H1及びロウサイドスイッチング素子Q
L1等は、例えば絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(MOSFET)等で構成できるが、MOSFETに限定されるものではなく、より一般的なMISFETやIGBT或いは静電誘導トランジスタ(SIT)や静電誘導サイリスタ等でも構成できる。
図1では、ハイサイドスイッチング素子Q
H1は、pチャネルMOSFETであり、ロウサイドスイッチング素子Q
L1はnチャネルMOSFETである。ハイサイドスイッチング素子Q
H1のドレイン及びロウサイドスイッチング素子Q
L1のドレインは接続されインバーター回路が構成されている。
【0017】
周波数制御回路17は、電力監視装置16からの出力を用いて伝送効率−周波数曲線(η−f
e曲線)上で最適周波数を探索し、この最適周波数によって駆動信号の周波数を決定し、駆動信号生成回路13を制御する。整流回路12は、接続端子11を介して外部の電源に接続される。接続端子11は、電源としての100V又は200V等の電圧で、50Hz又は60Hzの商用の交流電源が供給される。
【0018】
また受電コイルL2には、
図2に示すように、整流回路22、駆動信号生成回路23及び駆動回路24を有する受電装置20が接続されている。受電コイルL2及び受電装置20は、本発明の実施の形態に係る送電ユニット1aと対になる受電ユニット2を構成する。また受電ユニット2の駆動回路24からは交流電力が出力され、駆動回路24には誘導性負荷Xが接続され、誘導性負荷Xに交流電流が流れる。受電ユニット2側は商用周波数の回路であるため、誘導性負荷Xにインピーダンス変化が発生した場合でも、di/dtが小さく、経験上、駆動回路24を構成しているスイッチング素子の破壊は殆どない。
【0019】
送電ユニット1aの整流回路12は、直列に接続された第1のダイオードD1及び第2のダイオードD2と、直列に接続された第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2と、が互いに並列に接続されて構成されている。
接続端子11から延びる2本の端子のうち、一方の端子は接地され、他方の端子は第1のダイオードD1及び第2のダイオードD2の中間点に接続されている。また第1のコンデンサC1及び第2のコンデンサC2の中間点は接地されている。整流回路12は、接続端子11を介して入力された高周波電圧Vを、例えば110V程度の直流電圧に変換して駆動回路14に出力する。
【0020】
ハイサイドスイッチング素子Q
H1のソースは、整流回路12の第1のダイオードD1及び第1のコンデンサC1の中間点に接続されている。またロウサイドスイッチング素子Q
L1のソースは、整流回路12の
第2のダイオードD2及び第2のコンデンサC2の中間点に接続されている。
駆動信号生成回路13は、駆動回路14のハイサイドスイッチング素子Q
H1及びロウサイドスイッチング素子Q
L1のそれぞれのゲートに接続されている。また図示を省略しているが、駆動信号生成回路13は、整流回路12が出力する直流電圧を用いて駆動信号を生成するように構成されている。
【0021】
駆動信号生成回路13は、例えばピーク電圧が15V程度の高周波信号である駆動信号をそれぞれ生成し、生成した駆動信号をハイサイドスイッチング素子Q
H1及びロウサイドスイッチング素子Q
L1のそれぞれのゲートに出力する。
駆動信号生成回路13からの駆動信号が駆動回路14に入力されることにより、駆動回路14をなすハイサイドスイッチング素子Q
H1及びロウサイドスイッチング素子Q
L1のそれぞれのゲートのオン/オフが切り替わり、第1のp型スイッチング素子PMOS1のドレイン及び第1のn型スイッチング素子NMOS1のソースの中間点から、
図9(a)に示すような高周波の矩形パルス電圧が出力される。
【0022】
ハイサイドスイッチング素子Q
H1のドレイン及びロウサイドスイッチング素子Q
L1の
ドレインの中間点には、給電コイルL1の一端が接続され出力ノードを構成している。給電コイルL1の他端は接地されている。よってハイサイドスイッチング素子Q
H1のドレイン及びロウサイドスイッチング素子Q
L1の
ドレインの中間点から給電コイルL1に高周波電圧Vが出力されると、給電コイルL1に高周波電流Iが流れる。
【0023】
電力監視装置16は、給電コイルL1に入力される高周波電圧V及び給電コイルL1に流れる高周波電流Iを経時的に測定し、測定した高周波電圧V及び高周波電流Iの値を、周波数制御回路17に出力する。
周波数制御回路17は、
図3に示すように、効率依拠周波数演算部17a、出力電力取得部17b、伝送電力判定部17c、保護周波数演算部17d、最適周波数設定部17e及び電圧比較部17fを有する。周波数制御回路17は、CPU、RAM、ROMメモリ及びI/O回路などを有するマイクロプロセッサ等で構成できる。
【0024】
効率依拠周波数演算部17aは、
図6に示すような、予め求められたη−f
e曲線上において、効率の点から、後述する伝送電力制御モードの処理における効率依拠周波数f
eの最初の値を設定すると共に、高周波電圧Vの大きさに応じて効率依拠周波数f
eを変化させる演算処理を行う。
出力電力取得部17bは、電力監視装置16から入力された高周波電圧V及び高周波電流Iの値の積を求めて給電コイルL1における1次電力Pを算出し取得する。伝送電力判定部17cは、伝送電力制御処理モードの処理において、変化させた効率依拠周波数f
eにより、伝送電力が増加するかどうかを判定する。
【0025】
保護周波数演算部17dは、算出された1次電力Pを用いて、受電ユニット2側の誘導性負荷Xのインピーダンスの変化によって、
図9(a)に示されるようなスパイクノイズが誘導性負荷X側から逆流して重畳され、駆動回路14が破壊されることを保護し、安全、且つ、安定的な電力を給電コイルL1に出力するための周波数である保護周波数f
pを、高周波電圧Vの大きさに応じて算出する。
【0026】
最適周波数設定部17eは、効率依拠周波数f
e及び保護周波数f
pを用いて、伝送効率の向上と駆動回路14の保護とをバランスよく両立させる周波数である最適周波数f
vを設定し、設定した最適周波数f
vを駆動信号生成回路13に出力する。駆動信号生成回路13は、入力された最適周波数f
vを駆動信号として生成し、駆動回路14のハイサイドスイッチング素子Q
H1及びロウサイドスイッチング素子Q
L1のゲートにそれぞれ出力する。
【0027】
また周波数制御回路17には、図示を省略する記憶装置が接続されている。この記憶装置には、予め求められている
図6に示すようなη−f
e曲線のデータと、効率依拠周波数f
eに設定される初期値f
0が格納されている。初期値f
0は、誘導性負荷Xに応じて、駆動回路14の破壊が確実に防止されるように考慮して、測定やシミュレーション等により算出された値が設定されている。
【0028】
またこの記憶装置には、出力電圧及び保護周波数に関し、誘導性負荷Xのインピーダンス特性に応じて予め求められた、
図8に示すような破壊電圧−周波数曲線(V−f
v曲線)のデータも格納されている。尚、η−f
e曲線及びV−f
v曲線は、給電処理中にインシツ(in−situ)にリアルタイムで作成して格納することもできる。
またこの記憶装置には、効率依拠周波数f
eの値を変化させる処理で用いるために設定された変化量Δf
eが格納されている。また誘導性負荷側の急激な負荷変動が、
図9(a)に示すように給電コイルL1に発生させる大きなスパイク電圧によって、駆動回路14が破壊されることを防止するために、誘導性負荷Xのインピーダンス特性に応じて設定された破壊閾値電圧Vthが格納されている。
【0029】
例えば、AGV内に搭載する部品等の受け渡しに用いるコンベヤのモータを誘導性負荷Xとした場合、誘導性負荷Xを駆動するためには、例えばAC100Vの商用電源を用いて、1次側の送電ユニット1aから、モータに接続された2次側の受電ユニット2に高周波の電力が電磁誘導方式で給電される。
しかし例えばAGVのバッテリを非接触で給電する場合、受電ユニット2側では、誘導性負荷Xとしてのモータの起動時や、コンベヤが一時停止となった場合などにおいて、瞬間的に定格負荷の数倍以上の大きな電流が必要となる。この大電流を賄うために1次側から大きな電圧が出力されるように、送電ユニット1aの駆動回路14を駆動する駆動信号の周波数を変化させると、2次側の商用周波数と異なり高周波の電力を扱う1次側ではノイズの影響が著しく大きくなりため、駆動回路14のハイサイドスイッチング素子Q
H1及びロウサイドスイッチング素子Q
L1が耐え切れず焼損してしまう。
【0030】
特に、受電ユニット2に接続される負荷が、モータ等の誘導性負荷(インダクタンス負荷)Xである場合、負荷変動によって駆動回路14に
図9(a)に示すような急峻なスパイク状の電圧が発生し、駆動回路14のハイサイドスイッチング素子Q
H1及びロウサイドスイッチング素子Q
L1が破壊されるおそれが一層大きくなる。しかし、これに対して駆動回路14を保護するように駆動信号の周波数を変化させると、受電ユニット2側への伝送効率が大きく低下してしまう場合がある。すなわち急激に変動する誘導性負荷Xに非接触で給電する場合、送電ユニット1a側の駆動回路14を駆動する駆動信号においては、最大の伝送効率を導く効率依拠周波数f
eと、駆動回路14のハイサイドスイッチング素子Q
H1及びロウサイドスイッチング素子Q
L1を破壊から保護するために設定される保護周波数fpとは必ずしも一致しない。周波数制御回路17は
図4に示すようなフローチャートを用いて、この問題を解決する。
【0031】
<送電ユニットの動作>
本発明の実施の形態に係る送電ユニット1aでは、
図4に示すように、ステップS1において、周波数制御回路17により、保護周波数f
pに一定の値が設定されているかどうかを判定する。
保護周波数f
pに一定の値が設定されていない場合、例えば誘導性負荷Xへの給電開始後の最初の処理であって、保護周波数f
pとして何も値が入力されていない場合には、ステップS2に移行する。一方、保護周波数f
pに一定の値が設定されている場合、例えば、後述する保護周波数算出モードの処理を既に実行し、一定の保護周波数f
pの値が設定されている場合には、ステップS3に移行する。
【0032】
次にステップS2において、周波数制御回路17の効率依拠周波数演算部17aにより、効率依拠周波数f
eに、記憶装置に格納されている初期値f
0の値を設定して、ステップS4に移行する。一方、ステップS3においては、効率依拠周波数演算部17aにより、効率依拠周波数f
eに、既に設定されている保護周波数f
pの値を設定して、ステップS4に移行する。
【0033】
(伝送電力制御モード)
次にステップS4において、周波数制御回路17により伝送電力制御モードの処理を実行する。具体的には、まず
図5に示すように、ステップS41において、周波数制御回路17の出力電力取得部17bにより、駆動回路14から給電コイルL1に出力される高周波電圧V及び高周波電流Iからなる1次電力を、電力監視装置16を介して取得する。
【0034】
次にステップS42において、周波数制御回路17の効率依拠周波数演算部17aにより、取得した1次電力に応じて効率依拠周波数f
eの値を、
図6に示すη−f
e曲線上で変化させる。そして取得した伝送効率ηが最大伝送効率η
01と一致しない場合、伝送効率ηが最大伝送効率η
01に近づくように、現在の効率依拠周波数f
e(i)の値に設定された微小な変化量Δf
eを加算又は減算して、現在の効率依拠周波数f
e(i)の値を変化させる。
【0035】
図6中には、現在の効率依拠周波数f
eが最大伝送効率η
01に対応する最大効率周波数f
e01よりも低いため、最大効率周波数f
e01に向かって伝送効率ηの値が増加するように、現在の効率依拠周波数f
e(i)に変化量Δf
eを加えて変化させた状態が例示されている。一方、現在の効率依拠周波数f
e(i)が最大伝送効率η
01に対応する最大効率周波数f
e01よりも高い場合には、最大効率周波数f
e01に向かって伝送効率ηの値が減少するように、現在の効率依拠周波数f
e(i)から変化量Δf
eを減じて変化させる。
【0036】
すなわち、i回目の効率依拠周波数f
eの値を変化させる処理は、変化量Δf
eの値が、正負両方の値で設定され得るとして、式(1)で一般化して表される:
f
e(i+1)=f
e(i)+Δf
e ………(1)
次にステップS43において、出力電力取得部17bにより、給電コイルL1に出力される高周波電圧V及び高周波電流Iからなる1次電力を、再度取得する。
【0037】
次にステップS44において、周波数制御回路17の伝送電力判定部17cにより、ステップS43で取得した1次電力が、i回目の効率依拠周波数f
eの値を変化させる直前に取得した1次電力より増加して、伝送効率ηが向上したかどうかを比較する。
1次電力が増加した場合には、直前のi回目の効率依拠周波数f
e(i)の値の変化が適切であると判定し、ステップS42に移行して以降の処理を繰り返し、更に伝送効率ηの向上を図る。
【0038】
一方、増加しなかった場合には、直前のi回目の効率依拠周波数f
e(i)の値の変化が不適切で伝送効率ηが増加しなかった判定し、更に(i−1)回目の効率依拠周波数f
eの値の変化が適切であると判定し、ステップS45に移行する。
次にステップS45において、周波数制御回路17の最適周波数設定部17eにより、現在の最適周波数f
v(j)の値として効率依拠周波数f
e(i―1)の値を設定する。そして伝送電力制御モードの処理を終了して、
図4中のステップS5に移行する。
【0039】
次にステップS5において、周波数制御回路17により、保護周波数算出モードの処理を実行するかどうかを判定する。保護周波数算出モードの処理は、ステップS4における伝送電力制御モードの処理の実行の都度、伝送電力制御モードの処理に伴って実行してもよいし、伝送電力制御モードの処理を所定の回数実行した後、1回実行するように、間隔を空けて定期的に実行してもよい。又は、非接触給電システムの管理者が所望のタイミングで実行できるように構成してもよい。
そのため、保護周波数算出モードの処理を直ぐに実行せず後で実行する場合にはステップS4に移行し、伝送電力制御モードの処理を再度実行する。一方、保護周波数算出モードの処理を直ぐに実行する場合にはステップS6に移行し、保護周波数算出モードの処理を開始する。
【0040】
(保護周波数算出モード)
まず、
図7のステップS51において、周波数制御回路17の保護周波数演算部17dにより、保護周波数f
pの値として、伝送電力制御モードの処理で設定された現在の最適周波数f
v(j)の値を入力する。
次にステップS52において、出力電力取得部17bにより、給電コイルL1に出力される高周波電圧V及び高周波電流Iからなる1次電力を取得する。
【0041】
次にステップS53において、電圧比較部17fにより、給電コイルL1に出力されている現在の高周波電圧Vの値と、記憶装置に格納されている破壊閾値電圧V
thの値とを比較する。高周波電圧Vが破壊閾値電圧V
th以上であると判定した場合、ステップS54に移行する。一方、高周波電圧Vが破壊閾値電圧V
th未満であると判定した場合には、保護周波数算出モードの処理を終了して、
図4中のステップS7に移行する。
【0042】
先行するステップS53において高周波電圧Vが破壊閾値電圧V
th以上であると判定した場合、ステップS54において、周波数制御回路17の保護周波数演算部17dにより、保護周波数f
pの値を変化させる。具体的には、
図8に示すようなV−f
p曲線を用いて、現在の保護周波数f
pの値であるf
v(j)に対応する高周波電圧Vが最小電圧V
p02に近づくように、現在の保護周波数f
pの値に設定された微小な変化量Δf
pを加算又は減算して、保護周波数f
pの値を変化させる。
【0043】
すなわち保護周波数f
pの値を変化させる処理は、変化量Δf
pの値が、正負両方の値で設定され得るとして、式(2)で一般化して表される:
f
p=f
v(j)+Δf
p ………(2)
ハイサイドスイッチング素子Q
H1及びロウサイドスイッチング素子Q
L1を破壊から保護可能な高周波電圧Vと保護周波数f
pとの関係は、誘導性負荷Xのインピーダンス特性によって、種々のタイプが存在する。
図8中には、保護周波数f
pが高くなるに従って高周波電圧Vが漸減するパターンAと、保護周波数f
pが高くなるに従って高周波電圧Vが漸増するパターンBと、保護周波数f
pが高くなるに従って高周波電圧Vが漸減して最小電圧V
p02に至り、その後、漸増するパターンCと、の3つの主要なパターンが例示されている。以下の本発明の実施の形態に係る送電ユニットの動作においては、便宜上、パターンCの場合を用いて説明する。
【0044】
図8に示すように、現在の保護周波数f
pの値f
v(j)は最大保護周波数f
p02より高く、且つ、破壊閾値電圧V
thよりも高い。そのため、現在の保護周波数f
pの値f
v(j)が破壊閾値電圧V
th未満になるように、現在の保護周波数f
pの値f
v(j)から変化量Δf
pを減じて、最大保護周波数f
p02に向かって値が減少するように変化させる。この変化量Δf
pは、現在の保護周波数f
pの値f
v(j)から破壊閾値電圧V
thを減じた値を用いて算出することができる。
【0045】
一方、パターンCにおいて、現在の保護周波数f
pの値f
v(j)が、最大保護周波数f
p02より低く、且つ、破壊閾値電圧V
thよりも低い場合には、現在の保護周波数f
pの値f
v(j)が破壊閾値電圧V
th未満になるように、現在の保護周波数f
pの値f
v(j)に変化量Δf
pを加えて、最大保護周波数f
p02に向かって値が増加するように変化させる。このときの変化量Δf
pは、破壊閾値電圧V
thから現在の保護周波数f
pの値f
v(j)を減じた値を用いて算出することができる。
【0046】
そして保護周波数f
pの値を更新した後、保護周波数算出モードの処理を終了して、
図4中のステップS7に移行する。尚、他のパターンA及びパターンBの場合であっても、上記したパターンCの場合と同様に、現在の保護周波数f
pの値f
v(j)が破壊閾値電圧V
th未満になるように、適宜変化させればよい。
次にステップS7において、周波数制御回路17により、駆動信号生成回路13に生成させる駆動信号の最終的な最適周波数f
vlastとして、更新した保護周波数f
pの値を入力して設定する。
【0047】
次にステップS8において、周波数制御回路17により、伝送電力制御モードの処理を実行するかどうかを判定する。伝送電力制御モードの処理を実行する場合、ステップS1に移行して、以降の処理を適宜繰り返し、最適周波数f
vlastを更新する。一方、伝送電力制御モードの処理を実行しない場合、本発明の実施の形態に係る送電ユニット1aの一連の処理を終了する。そして周波数制御回路17は、最適周波数f
vlastを駆動信号生成回路13に出力する。この一連の処理を給電中に逐次行うことにより、給電コイルL1から受電コイルL2に伝送される高周波電力が、受電ユニット2の出力側の負荷変動に応じて最適化される。
【0048】
本発明の実施の形態に係る非接触給電システムによれば、伝送電力制御モードの処理及び保護周波数算出モードの処理を適宜組み合わせて、給電コイルL1へ出力される高周波電圧の状態に応じて最適周波数f
vを逐次変化させて更新し、更新した最適周波数f
vlastで駆動回路14を駆動して、給電コイルL1に出力する高周波電力を変化させる処理を繰り返す。
【0049】
そのため、受電ユニット2がモータ等の誘導性負荷Xへの商用周波数の電力の給電中に、誘導性負荷Xの起動や停止といった負荷のインピーダンス変動、あるいはAGV等における積載物の有無等による負荷のインピーダンス変動が生じ、この負荷のインピーダンス変動に伴って
図9(a)に示すように給電コイルL1への高周波出力電圧にスパイク状の電圧が逆流し、重畳される場合であっても、周波数制御回路17が最適周波数f
vを変化させて出力電圧を調整し、伝送効率ηが最適となるように周波数の値を変化させているので、逆起電力によるスパイク電圧の影響を速やかに緩和できる。よって送電ユニット1aの回路の保護と高い伝送効率とをバランスよく両立して、給電することができる。
【0050】
すなわち本発明の実施の形態に係る非接触給電システムにおいては、送電ユニット1aは、誘導性負荷Xの負荷のインピーダンス変動が生じても、大きな高周波電力を非接触で安定して伝送できる。
図9(a)は、誘導性負荷Xとして扇風機を用いて、扇風機による交流負荷を変動させつつ最適周波数f
vを変化させて、誘導性負荷Xに商用周波数の給電を行った時の、オシロスコープで観測した、給電コイルL1の両端の電圧波形である。また
図9(b)は受電ユニット2側の受電コイルL2の両端の電圧波形である。AC100Vで50Hzの商用電源を接続端子11に供給し、給電コイルL1の両端に約80Vの高周波電圧Vを出力した。
【0051】
図9(a)に示すように、高周波を出力する給電コイルL1の波形には、負荷のインピーダンス変動によって生じたdi/dtの大きなノイズが多重反射し、複数のスパイク成分が重畳されている。
図9(b)に示すように、受電コイルL2の波形にはノイズの影響が比較的小さいので、受電コイルL2から誘導性負荷Xを見た伝送線路の特性インピーダンスのマッチングよりも、給電コイルL1から受電コイルL2を見た伝送線路の特性インピーダンスのミスマッチングの方が大きいことがわかる。
【0052】
受電ユニット2側は商用周波数であるため、di/dtが小さく、受電コイルL2から誘導性負荷Xを見た伝送線路の特性インピーダンスのマッチングが比較的よく、受電コイルL2の波形には、逆流成分(反射成分)であるノイズの影響が比較的小さいことが分かる。そして、
図9(a)及び(b)の測定の際の駆動信号の最適周波数f
vは約45kHzであった。一方、最適周波数f
vを45kHzから外して変化させた場合、給電コイルL1の高周波波形に重畳するスパイクノイズが急激に増加して、駆動回路14のハイサイドスイッチング素子Q
H1及びロウサイドスイッチング素子Q
L1が破壊された。既に述べたとおり、受電ユニット2は商用周波数の回路であるため、誘導性負荷Xにインピーダンス変化が発生した場合でも、di/dtが小さく、経験上、駆動回路24を構成しているスイッチング素子の破壊は殆どない。
【0053】
(その他の実施の形態)
本発明は上記のとおり開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。
【0054】
(第1変形例)
図1に示した送電ユニット1aにおいては、pチャネルMOSFETをハイサイドスイッチング素子Q
H1、nチャネルMOSFETをロウサイドスイッチング素子Q
L1として用いて駆動回路14を構成したが、これに限定されず、例えば
図10に示すように、nチャネルMOSFETのみを用いてハイサイドスイッチング素子Q
H2及びロウサイドスイッチング素子Q
L2を構成することもできる。
【0055】
第1変形例に係る送電ユニット1bにおける駆動回路14aは、ハイサイドスイッチング素子Q
H2及びロウサイドスイッチング素子Q
L2を接続してインバーター回路が構成されている。
また駆動信号生成回路13は、ハイサイドスイッチング素子Q
H2及びロウサイドスイッチング素子Q
L2のそれぞれのゲートのオン/オフをそれぞれ切り換えて、給電コイルL1に高周波電圧Vを出力するようにハイサイドスイッチング素子Q
H2及びロウサイドスイッチング素子Q
L2のそれぞれのゲートに駆動信号を出力する。
【0056】
第1変形例に係る送電ユニット1bにおける駆動回路14a以外の構造及び動作については、
図1に示した送電ユニット1aにおいて同一又は類似の名称及び符号を付したそれぞれの装置と等価であるため、重複説明を省略する。第1変形例に係る送電ユニット1bによれば、本発明の実施の形態に係る送電ユニット1aと同様に、交流負荷のインピーダンスが急激に変動しても、送電側の駆動回路14aの保護と高い伝送効率とをバランスよく両立することができる。
【0057】
(第2変形例)
また例えば
図11に示すように、pチャネルMOSFET及びnチャネルMOSFETの両方をそれぞれ2個ずつ用いて駆動回路14bを構成することもできる。第2変形例に係る送電ユニットは、
図1に示した本発明の実施の形態に係る送電ユニット1aと、整流回路12及び駆動回路14bの構造が異なる。
【0058】
第2変形例に係る送電ユニットにおける駆動回路14bは、ハイサイドスイッチング素子Q
H3a、ハイサイドスイッチング素子Q
H3b、ロウサイドスイッチング素子Q
L3a及びロウサイドスイッチング素子Q
L3bをHブリッジ形に接続して構成されているハイサイドスイッチング素子Q
H3a及びハイサイドスイッチング素子Q
H3bはpチャネルMOSFETで、またロウサイドスイッチング素子Q
L3a及びロウサイドスイッチング素子Q
L3bはnチャネルMOSFETである。
【0059】
駆動回路14bのブリッジの位置には給電コイルL1が接続され、駆動回路14bから高周波電圧Vが入力される。また給電コイルL1には電力監視装置16が接続されている。尚、
図11中では、紙面の寸法の都合上、受電コイルL2に接続される受電装置及び誘導性負荷の図示を省略する。
また第2変形例に係る送電ユニットにおいては、整流回路12は、直列に接続された第1のダイオードD1及び第2のダイオードD2と、直列に接続された第3のダイオードD3及び第4のダイオードD4と、第3のコンデンサC3と、が互いに並列に接続されて構成されている。
【0060】
そして接続端子11から延びる2本の端子のうち、一方の端子は第1のダイオードD1及び第2のダイオードD2の中間点に接続されている。また他方の端子は第3のダイオードD3及び第4のダイオードD4の中間点に接続されている。整流回路12は、接続端子11を介して入力された高周波電圧Vを直流電圧に変換して、駆動回路14bに出力する。
【0061】
また第2変形例に係る送電ユニットにおいては、第1の駆動信号生成回路13a及び第2の駆動信号生成回路13bが設けられている。第1の駆動信号生成回路13aは、Hブリッジの一方の直列回路をなすハイサイドスイッチング素子Q
H3a及びロウサイドスイッチング素子Q
L3aのそれぞれのゲートに接続されている。第2の駆動信号生成回路13bは、Hブリッジの他方の直列回路をなすハイサイドスイッチング素子Q
H3b及びロウサイドスイッチング素子Q
L3bのそれぞれのゲートに接続されている。
【0062】
第1の駆動信号生成回路13a及び第2の駆動信号生成回路13bは、ハイサイドスイッチング素子Q
H3a、ハイサイドスイッチング素子Q
H3b、ロウサイドスイッチング素子Q
L3a及びロウサイドスイッチング素子Q
L3bのそれぞれのゲートのオン/オフを切り換えて、給電コイルL1に高周波電圧Vを出力するように、ハイサイドスイッチング素子Q
H3a、ハイサイドスイッチング素子Q
H3b、ロウサイドスイッチング素子Q
L3a及びロウサイドスイッチング素子Q
L3bのそれぞれのゲートに駆動信号を出力する。
【0063】
第1の駆動信号生成回路13a及び第2の駆動信号生成回路13bはいずれも周波数制御回路17に接続され、周波数制御回路17は、第1の駆動信号生成回路13a及び第2の駆動信号生成回路13bのそれぞれに対して、設定した最適周波数f
vを出力する。第1の駆動信号生成回路13a及び第2の駆動信号生成回路13bは、入力されたそれぞれの最適周波数f
vを駆動信号として生成し、駆動回路14bに出力する。
【0064】
第2変形例に係る送電ユニットにおける駆動回路14b以外の構造及び動作については、
図1及び
図10に示したそれぞれの送電ユニット1aにおいて同一又は類似の名称及び符号を付したそれぞれの装置と等価であるため、重複説明を省略する。第2変形例に係る送電ユニットによれば、本発明の実施の形態に係る送電ユニット1aと同様に、交流負荷のインピーダンスが急激に変動しても、送電側の駆動回路14bの保護と高い伝送効率とをバランスよく両立することができる。
【0065】
(第3変形例)
また例えば
図12に示すように、nチャネルMOSFETのみを4個用いて駆動回路14cを構成することもできる。すなわち第3変形例に係る送電ユニットは、
図1に示した本発明の実施の形態に係る送電ユニット1aと、整流回路12a及び駆動回路14cの構造が異なる。
【0066】
第3変形例に係る送電ユニットにおける駆動回路14cは、ハイサイドスイッチング素子Q
H4a、ハイサイドスイッチング素子Q
H4b、ロウサイドスイッチング素子Q
L4a及びロウサイドスイッチング素子Q
L4bをHブリッジ形に接続して構成されている。駆動回路14cのブリッジの位置には給電コイルL1が接続され、駆動回路14cから高周波電圧Vが入力される。尚、
図12中では、紙面の寸法の都合上、受電コイルL2に接続される受電装置及び誘導性負荷の図示を省略する。
【0067】
第3変形例に係る送電ユニットにおいては、第1の駆動信号生成回路13aは、Hブリッジの一方の直列回路をなすハイサイドスイッチング素子Q
H4a及びロウサイドスイッチング素子Q
L4aのそれぞれのゲートに接続されている。第2の駆動信号生成回路13bは、Hブリッジの他方の直列回路をなすハイサイドスイッチング素子Q
H4b及びロウサイドスイッチング素子Q
L4bのそれぞれのゲートに接続されている。
【0068】
第1の駆動信号生成回路13a及び第2の駆動信号生成回路13bは、ハイサイドスイッチング素子Q
H4a、ハイサイドスイッチング素子Q
H4b、ロウサイドスイッチング素子Q
L4a及びロウサイドスイッチング素子Q
L4bのそれぞれのゲートのオン/オフを切り換えて、給電コイルL1に高周波電圧Vを出力するように、ハイサイドスイッチング素子Q
H4a、ハイサイドスイッチング素子Q
H4b、ロウサイドスイッチング素子Q
L4a及びロウサイドスイッチング素子Q
L4bのそれぞれのゲートに駆動信号を出力する。
【0069】
第3変形例に係る送電ユニットにおける駆動回路14c以外の構造及び動作については、
図1、
図10及び
図11に示したそれぞれの送電ユニットにおいて同一又は類似の名称及び符号を付したそれぞれの装置と等価であるため、重複説明を省略する。第3変形例に係る送電ユニットによれば、本発明の実施の形態に係る送電ユニット1aと同様に、交流負荷のインピーダンスが急激に変動しても、送電側の駆動回路14cの保護と高い伝送効率とをバランスよく両立することができる。
【0070】
以上の説明では、受電ユニット2が出力する交流電流よりも高周波となる電磁波を給電コイルL1から受電コイルL2に非接触で供給する場合について例示的に説明したが、電磁誘導方式で受電コイルL2に伝送される電磁波の周波数は、必ずしも、受電ユニット2が出力する交流電流よりも高周波の場合に限定されるものではない。受電ユニット2が出力する交流電流よりも低周波の電磁波を給電コイルL1から受電コイルL2に供給する場合、例えば、給電コイルL1から受電コイルL2に供給する周波数が30〜100kHzで、受電ユニット2が出力する交流電流の周波数が200kHz〜10MHz等の場合でもよい。
【0071】
また本発明に係る非接触給電システムは、
図1及び
図10〜
図12で示したようなそれぞれの実施の形態及び変形例の技術的思想を互いに組み合わせて構成することもできる。以上のとおり本発明は、本明細書及び図面に記載していない様々な実施の形態等を含むとともに、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。