(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直列接続された第1から第n(nは2以上の整数)のキャパシタの各々に対して、2つの直列接続されたダイオードを並列に接続し、更に、該2つの直列接続されたダイオードの各々における中間点に中間キャパシタを接続した、多段倍電圧整流回路と、
スイッチ切り替えにより動作し、スイッチ切り替えに応じて変動する第1の電圧が印加されるコンバータ内インダクタを備えたスイッチングコンバータと、
前記スイッチングコンバータの出力部と前記多段倍電圧整流回路との間に接続された中間インダクタであって、前記スイッチの切り替え状態のうち少なくとも一つの状態において該スイッチングコンバータを流れる電流経路上に配置されたことにより、スイッチ切り替えに応じて変動する第2の電圧が印加される、中間インダクタと
を備え、
前記スイッチングコンバータの前記出力部と前記多段倍電圧整流回路との間にはトランスが接続されず、
前記スイッチングコンバータの前記出力部に、前記中間インダクタを介して、前記直列接続された第1から第nのキャパシタを接続することにより、該スイッチングコンバータから該中間インダクタを介して出力される電圧によって該第1から第nのキャパシタを充電するとともに、
前記中間インダクタから前記多段倍電圧整流回路に入力される電圧で該多段倍電圧整流回路が動作することにより、該第1から第nのキャパシタを充電する
よう構成された、充電器。
前記スイッチングコンバータとして降圧型PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)コンバータを用いる、請求項1に記載の充電器。
前記スイッチングコンバータとして昇圧型PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)コンバータを用いる、請求項1に記載の充電器。
前記スイッチングコンバータの出力部と前記多段倍電圧整流回路との間に共振キャパシタが更に接続されることにより、前記中間インダクタと該共振キャパシタが共振回路を構成する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の充電器。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】多段倍電圧整流回路を用いた従来の均等化回路の回路図。
【
図2】多段倍電圧整流回路を用いた均等化回路とコンバータ(充放電器)を一体化した従来の統合型コンバータの回路図。
【
図3a】本発明の充電器、充放電器において用いることができる、降圧型コンバータの回路図。
【
図3b】本発明の充電器、充放電器において用いることができる、昇圧型コンバータの回路図。
【
図3c】本発明の充電器、充放電器において用いることができる、昇降圧コンバータの回路図。
【
図3d】本発明の充電器、充放電器において用いることができる、SEPICコンバータの回路図。
【
図3e】本発明の充電器、充放電器において用いることができる、Zetaコンバータの回路図。
【
図3f】本発明の充電器、充放電器において用いることができる、Cukコンバータの回路図。
【
図4a】降圧型コンバータの動作時における、スイッチQがオンの時の電流経路を示す図。
【
図4b】降圧型コンバータの動作時における、スイッチQがオフの時の電流経路を示す図。
【
図6a】
図5に示す多段倍電圧整流回路の矩形波状電圧による動作時における、モード1の電流経路を示す図。
【
図6b】
図5に示す多段倍電圧整流回路の矩形波状電圧による動作時における、モード2の電流経路を示す図。
【
図7】
図5に示す多段倍電圧整流回路の等価回路の回路図。
【
図8a】
図5に示す多段倍電圧整流回路の、別の入力位置からの矩形波状電圧による動作時における、モード1の電流経路を示す図。
【
図8b】
図5に示す多段倍電圧整流回路の、別の入力位置からの矩形波状電圧による動作時における、モード2の電流経路を示す図。
【
図9】本発明の第1の実施形態である、降圧型コンバータ、共振回路、多段倍電圧整流回路を用いた均等化機能付充電器に、直列接続された蓄電セルB1〜B4を接続したシステムの回路図。
【
図10】
図9に示したトランスレス均等化回路統合型コンバータの理論動作波形。
【
図11a】
図9に示したトランスレス均等化回路統合型コンバータの動作時における電流経路(モード1)
【
図11b】
図9に示したトランスレス均等化回路統合型コンバータの動作時における電流経路(モード2)
【
図11c】
図9に示したトランスレス均等化回路統合型コンバータの動作時における電流経路(モード3)
【
図11d】
図9に示したトランスレス均等化回路統合型コンバータの動作時における電流経路(モード4)
【
図11e】
図9に示したトランスレス均等化回路統合型コンバータの動作時における電流経路(モード5)
【
図11f】
図9に示したトランスレス均等化回路統合型コンバータの動作時における電流経路(モード6)
【
図12a】昇圧型コンバータの動作時における、スイッチQがオンの時の電流経路を示す図。
【
図12b】昇圧型コンバータの動作時における、スイッチQがオフの時の電流経路を示す図。
【
図13】本発明の第2の実施形態である、昇圧型コンバータ、共振回路、多段倍電圧整流回路を用いた均等化機能付充電器に、直列接続された蓄電セルB1〜B4を接続したシステムの回路図。
【
図14】
図13に示したトランスレス均等化回路統合型コンバータの理論動作波形。
【
図15a】
図13に示したトランスレス均等化回路統合型コンバータの動作時における電流経路(モード1)
【
図15b】
図13に示したトランスレス均等化回路統合型コンバータの動作時における電流経路(モード2)
【
図15c】
図13に示したトランスレス均等化回路統合型コンバータの動作時における電流経路(モード3)
【
図15d】
図13に示したトランスレス均等化回路統合型コンバータの動作時における電流経路(モード4)
【
図15e】
図13に示したトランスレス均等化回路統合型コンバータの動作時における電流経路(モード5)
【
図16a】Zetaコンバータの動作時における、スイッチQがオンの時の電流経路を示す図。
【
図16b】Zetaコンバータの動作時における、スイッチQがオフの時の電流経路を示す図。
【
図17】本発明の第3の実施形態である、Zetaコンバータ、共振回路、多段倍電圧整流回路を用いた均等化機能付充電器に、直列接続された蓄電セルB1〜B4を接続したシステムの回路図。
【
図18】本発明の第4の実施形態である、ハーフブリッジコンバータ、共振回路、多段倍電圧整流回路を用いた均等化機能付充電器に、直列接続された蓄電セルB1〜B4を接続したシステムの回路図。
【
図19】本発明の第5の実施形態である、特にカップルドインダクタを用いた、降圧型コンバータ、共振回路、多段倍電圧整流回路からなる均等化機能付充電器に、直列接続された蓄電セルB1〜B4を接続したシステムの回路図。
【
図20】本発明の第6の実施形態である、特にカップルドインダクタを用いた、昇圧型コンバータ、共振回路、多段倍電圧整流回路からなる均等化機能付充電器に、直列接続された蓄電セルB1〜B4を接続したシステムの回路図。
【
図21a】多段倍電圧整流回路にインダクタLr,キャパシタCrを接続して直列共振形倍電圧整流回路とした回路図。
【
図21b】多段倍電圧整流回路にインダクタLrのみを接続して非共振形倍電圧整流回路とした回路図。
【
図21c】多段倍電圧整流回路にインダクタLr,キャパシタCrを接続して並列共振形倍電圧整流回路とした回路図。
【
図21d】多段倍電圧整流回路にインダクタLr,キャパシタCr,インダクタLaを接続してLLC共振形倍電圧整流回路とした回路図。
【
図22a】双方向コンバータの放電動作時における、スイッチQHがオフ、スイッチQLがオンの時の電流経路を示す図。
【
図22b】双方向コンバータの放電動作時における、スイッチQHがオン、スイッチQLがオフの時の電流経路を示す図。
【
図23】本発明の第7の実施形態である、双方向コンバータ、共振回路、多段倍電圧整流回路からなる均等化機能付充放電器に、直列接続された蓄電セルB1〜B4を接続したシステムの回路図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
これより図面を用いて、本発明に係る充電器、及び充放電器を説明する。但し、本発明に係る充電器、充放電器の構成は、各図面にて示される特定の具体的構成へと限定されるわけではなく、本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、以下において各キャパシタは主に単独の蓄電素子であるとして、また蓄電セルは二次電池、電気二重層キャパシタ等であるとして説明するが、これらは充放電可能な任意の素子、複数の素子からなるモジュール、あるいはそれらモジュールを用いて構成される任意の装置であってもよい。その他、以下の実施例における多段倍電圧整流回路は4段倍電圧整流回路として示されているが、本発明における多段倍電圧整流回路の段数、すなわち直列接続されるキャパシタの数nは2以上の任意の整数であってよい。
【0018】
電圧均等化機能を有する本発明の充電器、及び充放電器は、(コンバータ内)インダクタを備えたスイッチングコンバータ(充電回路)、中間インダクタ(及び、任意で追加的なキャパシタやインダクタ等の要素)、及び多段倍電圧整流回路の3つの機能部を備えている。コンバータとして用いることが可能な代表例として、
図3a〜
図3fは、降圧型コンバータ、昇圧型コンバータ、反転型昇降圧コンバータ、SEPICコンバータ、Zetaコンバータ、Cukコンバータをそれぞれ示している。これらコンバータの出力電圧によって、多段倍電圧整流回路に含まれる各キャパシタを充電することができる。
【0019】
図3a〜
図3f中では、コンバータ内のスイッチングノードにおいて発生する矩形波状の電圧も併せて図示されている。後述のとおりコンバータの出力側に配置される中間インダクタに、これら矩形波状電圧の一部が印加されることにより、中間インダクタからの入力電圧で多段倍電圧整流回路を動作させることが可能となる。
【0020】
ここでは非絶縁型のPWM(Pulse Width Modulation)コンバータについて例を示したが、その他の非絶縁型コンバータやの絶縁型コンバータ(ハーフブリッジやフルブリッジ等)、共振形コンバータ等を用いることも可能である。ここで示したコンバータはいずれもダイオードを用いた単方向コンバータであるため、充電器のみ(もしくは放電器のみ)に用いることができる。ダイオードをスイッチに置き換えて、これらコンバータを双方向コンバータとして用いることで、後述のとおり本発明の充放電器を構成することができる。
【0021】
例として、
図3a〜
図3fのコンバータのうち、
図3aの降圧型コンバータの動作時における電流経路を
図4a,
図4bにそれぞれ示す。
【0022】
スイッチQがオンとなる期間では、キャパシタCin,CoutからインダクタLに電圧が印加されることにより(入力電圧をV
in、出力電圧をV
outとすればV
in−V
outが印加される。)、インダクタLを流れる電流は直線的に増加する。このときスイッチQに印加されている電圧はゼロである(オン抵抗を無視した。)。スイッチQがオフとなる期間では、インダクタLを流れる電流はダイオードDoを介して負荷側へ流れる。インダクタLに印加される電圧は、−V
outであり(
図4a,
図4b中、矢印方向に電流を流す電圧を正とした。)、インダクタLを流れる電流は直線的に減少する。このように、スイッチング動作に伴い、インダクタLの電圧は矩形波状電圧となる。
【0023】
図5に、多段倍電圧整流回路の一例が示されている。多段倍電圧整流回路は、直列接続されたキャパシタCout1〜Cout4の各々に対して、2つの直列接続されたダイオードD1,D2と、D3,D4と、D5,D6と、D7,D8と、をそれぞれ並列に接続し、更に、2つの直列接続されたダイオードの各々における中間点に中間キャパシタC1〜C4をそれぞれ接続してなる。
【0024】
多段倍電圧整流回路は、矩形波状や正弦波状の電圧等、交流電圧を入力することで動作する。
図5の端子A−B間に矩形波状電圧が入力されるとき、入力される矩形波状電圧の変化に応じてキャパシタCout1〜Cout4に充放電電流が流れ、多段倍電圧整流回路内の奇数番号のダイオードD1,D3,D5,D7と偶数番号のダイオードD2,D4,D6,D8が交互に導通する。
【0025】
具体的には、
図5中、端子Bから端子Aへと(矢印方向)電流を流す極性の電圧が多段倍電圧整流回路へと入力されるとき、
図6aに示すとおりの経路を電流が流れて、
図5中、端子Aから端子Bへと電流を流す極性の電圧が多段倍電圧整流回路へと入力されるとき、
図6bに示すとおりの経路を電流が流れる。
【0026】
ここで、キャパシタCout1〜Cout4の容量が中間キャパシタC1〜C4の容量と比較して十分大きいとすれば、入力電圧V
SNの動作周波数が十分高い場合、キャパシタCout1,Cout2,Cout3,Cout4の電圧V
Cout1,V
Cout2,V
Cout3,V
Cout4は1サイクル前後において不変であるとみなすことができる。
図6aのモード1におけるV
SNの大きさをEとし、モード1における中間キャパシタC1,C2,C3,C4の電圧の大きさをV
C1a,V
C2a,V
C3a,V
C4aとすれば、
図6aの電流経路についてキルヒホッフの第2法則を適用することにより以下の式(1)が得られる。
【数1】
(1)
【0027】
なお、V
Cout1〜V
Cout4については、
図6a中でキャパシタCout2〜Cout4を流れている方向に電流を流す極性の電圧を正とし、V
c1a〜V
c4a(及び、後述のV
c1b〜V
c4b)については、
図6a中で中間キャパシタC1〜C4を流れている方向に電流を流す極性の電圧を正とした。
【0028】
同様に、
図6bのモード2におけるV
SNの大きさを0とし(例えば
図3aの降圧型コンバータに含まれるインダクタLの電圧は正と負の値をとり、後述のとおり中間インダクタが分担する電圧も正負で変動するが、電圧の基準点を負側の電圧と取ることにより、モード2におけるV
SNをゼロとしてよい。)、中間キャパシタC1,C2,C3,C4の電圧の大きさをV
C1b,V
C2b,V
C3b,V
C4bとすれば、
図6bの電流経路についてキルヒホッフの第2法則を適用することにより以下の式(2)が得られる。
【数2】
(2)
【0029】
上記式(1),(2)より、中間キャパシタC1〜C4における、モード1とモード2の間での電圧変動△V
C1=V
C1b−V
C1a,△V
C2=V
C2b−V
C2a,△V
C3=V
C3b−V
C3a,△V
C4=V
C4b−V
C4aは以下のとおり計算される。
【数3】
(3)
【0030】
中間キャパシタC1〜C4の容量をそれぞれG1,G2,G3,G4とした場合、中間キャパシタC1〜C4からキャパシタCout1〜Cout4に流れる電流I
C1,I
C2,I
C3,I
C4は、電流=周波数×電荷量=周波数×容量×電圧変動という関係から、
【数4】
(4)
となる。ここで、fは入力電圧V
SNの周波数である。ここで、オームの法則から、f×G1,f×G2,f×G3,f×G4はそれぞれ抵抗の逆数、つまりコンダクタンスの次元であることが分かる。
【0031】
よって、上記式(4)から、
図5の回路を
図7のような等価回路に置き換えることができる。ここで等価電源Vdcは出力電圧Eの直流電源であり、等価抵抗R1〜R4は中間キャパシタC1〜C4の充放電動作を等価抵抗に置き換えたものであり、等価抵抗R1〜R4の抵抗値はそれぞれ、1/(f×G1),1/(f×G2),1/(f×G3),1/(f×G4)と表すことができる。G1〜G4が等しい場合、R1〜R4の値も等しくなるため、
図7においてキャパシタCout1〜Cout4の各電圧が同じ場合は等価抵抗R1〜R4に流れる電流も等しくなる。つまりキャパシタCout1〜Cout4は均等に充電されることになる。
【0032】
その結果、キャパシタCout1〜Cout4の電圧は定常状態で均等となる。定常状態におけるキャパシタCout1〜Cout4の各電圧はEとなる(ただし、ダイオードにおける電圧降下は無視する。以下同様。)。なお、G1〜G4が異なる場合、等価抵抗R1〜R4に流れる電流も異なることとなるが、最終的にキャパシタCout1〜Cout4の電圧が定常状態でEの均一値となることに変わりはない。
【0033】
なお、多段倍電圧入力回路に対して交流電圧を入力する位置は、
図5で示した位置に限らず任意である。一例として、特許文献2の
図7に示す位置から入力した場合の動作を、特許文献2の[0022]〜[0030]に従って説明する。
【0034】
図8a,
図8bに示すとおり、入力回路の端子A−B間には矩形波状電圧が入力される。このとき、入力される矩形波状電圧の変化に応じてキャパシタCout1〜Cout4に充放電電流が流れ、多段倍電圧整流回路内の奇数番号のダイオードD1,D3,D5,D7と偶数番号のダイオードD2,D4,D6,D8が交互に導通する。
【0035】
具体的には、
図8aに示すとおり端子Bから端子Aへと電流を流す極性の電圧が多段倍電圧整流回路へと入力されるとき、
図8aに示すとおりの経路を電流が流れて、
図8bに示すとおり端子Aから端子Bへと電流を流す極性の電圧が多段倍電圧整流回路へと入力されるとき、
図8bに示すとおりの経路を電流が流れる。
【0036】
ここで、キャパシタCout1〜Cout4の容量が中間キャパシタC1〜C4の容量と比較して十分大きいとすれば、入力電圧V
SNの動作周波数が十分高い場合、キャパシタCout1,Cout2,Cout3,Cout4の電圧V
Cout1,V
Cout2,V
Cout3,V
Cout4は1サイクル前後において不変であるとみなすことができる。モード1におけるV
SNの大きさをEとし、
図8aのモード1における中間キャパシタC1,C2,C3,C4の電圧の大きさをV
C1a,V
C2a,V
C3a,V
C4aとすれば、
図8aの電流経路についてキルヒホッフの第2法則を適用することにより以下の式(5)が得られる。
【数5】
(5)
【0037】
なお、V
Cout1〜V
Cout4については、
図8a中でキャパシタCout3を流れている方向に電流を流す極性の電圧を正とし、V
c1a〜V
c4a(及び、後述のV
c1b〜V
c4b)については、
図8a中で中間キャパシタC1〜C4を流れている方向に電流を流す極性の電圧を負とした。
【0038】
同様に、
図8bのモード2におけるV
SNの大きさを0とし(電圧の基準点を負側の電圧と取ることにより、モード2におけるV
SNをゼロとしてよい。)、中間キャパシタC1,C2,C3,C4の電圧の大きさをV
C1b,V
C2b,V
C3b,V
C4bとすれば、
図8bの電流経路についてキルヒホッフの第2法則を適用することにより以下の式(6)が得られる。
【数6】
(6)
【0039】
上記式(5),(6)より、中間キャパシタC1〜C4における、モード1とモード2の間での電圧変動△V
C1=V
C1a−V
C1b,△V
C2=V
C2a−V
C2b,△V
C3=V
C3a−V
C3b,△V
C4=V
C4a−V
C4bは上記式(3)のとおり計算され、したがって
図8a,
図8bに示す位置から電圧が入力される場合であっても多段倍電圧整流回路の動作は
図7の等価回路で説明できる。
【実施例1】
【0040】
図3aの降圧型PWMコンバータと多段倍電圧整流回路とを、中間インダクタであるインダクタLrを介して接続してなる、本発明の第1の実施形態である充電器に、4直列の蓄電セルストリングB1〜B4を接続した、均等化機能付充電システムの回路図を
図9に示す。Vinは直流電源、Qはスイッチ、Dはダイオード、Lはコンバータ内インダクタ、Lrは中間インダクタを表わし、多段倍電圧整流回路については
図5で示したとおりである。
図9に示すとおり、降圧型コンバータと多段倍電圧整流回路との間には共振用キャパシタCrが更に接続されており、後述のとおり中間インダクタLrと共振用キャパシタCrとで共振回路(共振タンク)が構成されている(以下、共振回路と多段倍電圧整流回路が接続されてなる回路を直列共振形倍電圧整流回路と呼ぶ。またスイッチングコンバータと直列共振形倍電圧整流回路等、後述の
図21a〜
図21dのような変形例の整流回路とを接続してなる充電器を、トランスレス均等化回路統合型コンバータと呼ぶ。)。なお、Rbiasは、各キャパシタの電圧値が不定値になるのを防止するためのバイアス抵抗である。
【0041】
2つのインダクタL,Lrは、降圧型PWMコンバータにおけるフィルタインダクタとして振る舞う。一方、中間インダクタLrは直列共振形倍電圧整流回路内で共振用インダクタとしても振る舞い、共振用キャパシタCrとの間で共振することで、直列共振形倍電圧整流回路において正弦波状電流を生成する。すなわち、中間インダクタLrは2つの回路部によって共有されており、2つの役割を担う。
【0042】
実施例1のトランスレス均等化回路統合型コンバータ(充電器)においては、降圧型PWMコンバータが蓄電セルストリング全体(直列接続された蓄電セルB1〜B4)の充電を行う一方で、直列共振形倍電圧整流回路により蓄電セル電圧の均等化が行われる。降圧型PWMコンバータの動作時に自動的に直列共振形倍電圧整流回路は駆動される。入力電圧V
inと出力電圧(すなわち蓄電セルB1〜B4の電圧の合計電圧であるストリング電圧V
string)の関係は、汎用的な降圧型PWMコンバータと同様、スイッチの時比率(スイッチQのスイッチング1周期に対するオン期間の割合)をDとすると、インダクタにおける磁束の変化分が定常状態、1周期を通してゼロであるという条件より、以下の式(7)で表わされる。
【数7】
(7)
【0043】
スイッチQのスイッチングにより
図9の充電器を動作させたときに各素子を流れる電流、電圧の動作波形を
図10に、全蓄電セル電圧が均一時における、各動作モード1〜6における電流経路を
図11a〜
図11fにそれぞれ示す。
図10及び
図11a〜
図11fは、スイッチQのスイッチング1周期に共振回路の共振周期が2周期含まれている、電流不連続モードで動作した場合の動作波形及び電流経路を示している。
図10中のTsはスイッチQのスイッチング周期である。なお、
図10のグラフ中、各電流については、
図9で示す向きを正とし、また共振用キャパシタCrの電圧V
Crについては、
図9に示す向きに電流i
Crが流れることで充電される電圧を正とした。
【0044】
図11aに示すモード1ではスイッチQがターンオンし、コンバータ内インダクタLと中間インダクタLrには、それぞれのインダクタンス値に応じた電圧が印加される。コンバータ内インダクタLのインダクタンスをLとし、中間インダクタLrのインダクタンスをL
rとすれば、インダクタL,Lrに印加される電圧値V
L、V
Lrはおおよそ次式で表される(
図9中、i
L,i
Lrの矢印方向に電流を流す極性を正とする。)。
【数8】
(8)
【数9】
(9)
【0045】
V
Lrにより共振タンク内で、すなわち中間インダクタLrと共振用キャパシタCrとの間で共振が起こり、直列共振形倍電圧整流回路内では正弦波状の共振電流が流れる。コンバータ内インダクタLを流れる電流i
Lは、既に降圧型コンバータの動作として説明したとおり、ほぼ直線的に増加する(
図10中、i
Lのグラフ参照)。一方、中間インダクタLrを流れる電流i
Lrは、
図9の電流経路からわかるとおり、i
Lと、共振用キャパシタCrの電流i
Crとの差に相当するため、直線的に増加するi
Lに正弦波状電流i
Crが重畳した(i
Lからi
Crを減じた)電流波形となる(
図10中、i
Lrのグラフ参照)。多段倍電圧整流回路内の中間キャパシタC1〜C4を流れる電流は偶数番号のダイオードD2,D4,D6,D8を経由して流れる。共振用キャパシタCrの電流i
Crが共振により正弦波状に変化してゼロとなり、電流極性が反転すると同時に、動作はモード2へと移行する。
【0046】
図11bに示すモード2においてもスイッチQはオン状態であり、インダクタL,Lrに印加されている電圧はモード1の場合とほぼ同等である。中間インダクタLrと共振用キャパシタCrは共振を続けており、モード2では正弦波状共振電流i
Crの極性がモード1の場合とは逆のため、奇数番号のダイオードD1,D3,D5,D7が導通する。モード2は正弦波状電流i
Crが再び0に到達するまで継続される。なお、上記のとおりインダクタL,Lrに印加される電圧はモード1と同様におおよそ式(8),(9)で表わされ、極性もモード1のときと同様に、正の電流i
Crを流す極性である。
【0047】
図11cに示すモード3においても依然としてスイッチQはオン状態であり、インダクタL,Lrに印加される電圧はモード1の場合と同様である。多段倍電圧整流回路内の電流は全てゼロとなるため、モード3においてはi
L=i
Lrとなる。
【0048】
スイッチQをターンオフさせると、インダクタL,Lrを流れていた電流がダイオードDへと転流し、
図11dに示すモード4の電流経路が実現する。モード4においてインダクタLに印加される電圧V
Lと、インダクタLrに印加される電圧値V
Lrとは、ダイオードの順方向降下を無視するとおおよそ次式で表される(極性の定義は式(8),(9)と同様)。
【数10】
(10)
【数11】
(11)
【0049】
V
Lrにより共振タンク内で、すなわち中間インダクタLrと共振用キャパシタCrとの間で共振が起こり、直列共振形倍電圧回路内では正弦波状の共振電流が再び流れる。コンバータ内インダクタLを流れる電流i
Lは、既に降圧型コンバータの動作として説明したとおり、ほぼ直線的に減少する(
図10中、i
Lのグラフ参照)。一方、中間インダクタLrを流れる電流i
Lrは、
図9の電流経路からわかるとおり、i
Lと、共振用キャパシタCrの電流i
Crとの差に相当するため、直線的に減少するi
Lに正弦波状電流i
Crが重畳した(i
Lからi
Crを減じた)電流波形となる(
図10中、i
Lrのグラフ参照)。多段倍電圧整流回路内の中間キャパシタC1〜C4の電流は奇数番号のダイオードD1,D3,D5,D7を経由して流れる。共振用キャパシタCrの電流i
Crがゼロとなり、電流極性が反転すると同時に、動作はモード5へと移行する。
【0050】
図11eに示すモード5においてもスイッチQはオフ状態であり、インダクタL,Lrに印加されている電圧はモード4の場合とほぼ同等である。中間インダクタLrと共振用キャパシタCrは共振を続けており、モード5では正弦波状電流の極性がモード4の場合と逆であるため、偶数番号のダイオードD2,D4,D6,D8が導通する。モード5は正弦波状電流が再びゼロに到達するまで継続される。なお、上記のとおりインダクタL,Lrに印加される電圧はモード4と同様におおよそ式(10),(11)で表わされ、極性もモード4のときと同様に、負の電流i
Crを流す極性である。
【0051】
図11fに示すモード6においても依然としてスイッチQはオフ状態であり、インダクタL,Lrに印加される電圧はモード4の場合と同様である。多段倍電圧整流回路内の電流は全てゼロとなるため、モード6においてはi
L=i
Lrとなる。
【0052】
以上、
図11a〜
図11fの電流経路と式(8)〜(11)で示したとおり、中間インダクタLrの両端には、コンバータ内インダクタLと中間インダクタLrのインダクタンスの比に応じた電圧が発生する。中間インダクタLrの両端に発生する電圧を簡単のために矩形波電圧であると仮定すると、その振幅V
Lr_p-pは式(9),(11)より次式で表される。
【数12】
(12)
【0053】
一般的に、共振タンクに流れる共振電流の波高値i
Cr-peakは印加電圧に比例し、
【数13】
(13)
の形式で表わすことができる。ここで、Zrは共振タンクのインピーダンスである。式(12),(13)が示すとおり、本発明のトランスレス均等化回路統合型コンバータではインダクタL,Lrのインダクタンス比を任意に決定することでi
Cr-peakを抑えつつ、蓄電セル電圧の均等化機能を担う多段倍電圧整流回路を駆動することができる。
【0054】
蓄電セル用均等化回路である直列共振形倍電圧整流回路による蓄電セル電圧均等化の原理については、特許文献2や非特許文献3で詳細な説明がなされており、また本明細書においても
図5〜
図8bを用いて詳細に説明したとおりである。ここで、
図10の波形図で示す充電器の動作は6つのモードからなり、スイッチQのオン状態においてはモード1〜3が、スイッチQのオフ状態においてはモード4〜6が実現されるが、電流が矩形波状であっても、あるいは正弦波状であっても、中間キャパシタC1〜C4が奇数番号のダイオードを介して、そして偶数番号のダイオードを介して充放電されさえすれば、キャパシタCout1〜Cout4の電圧は均等化される。したがって、中間インダクタLrと共振用キャパシタCrの共振によって6モード動作となった場合であっても、モード1〜モード6に亘るスイッチングの1周期を通じて、奇数番号、偶数番号のダイオードを介して中間キャパシタC1〜C4が充放電されることにより、キャパシタCout1〜Cout4の電圧は均等化されるのであり、定性的には上記式(1)〜(4)や
図7の等価回路を用いて説明される均等化動作と同様であると考えられる。
【0055】
なお、
図9の充電器が、共振タンクの共振周期よりもスイッチング1周期が短い連続モードで動作する場合、その動作は
図11aと
図11dで電流経路が表わされる2モード動作となるから、定性的には、上記式(1)〜(4)や
図6a,
図6b,
図7の等価回路を用いて説明される均等化動作と同様であると考えられる。また
図9の充電器から共振キャパシタCrを除き、共振キャパシタCrのあった部分を単なる導線とした場合(後述の
図21b参照)も、その動作は
図11aと
図11dで電流経路が表わされる2モード動作となるから(共振タンクがないため上述の共振が起こらない)、上記式(1)〜(4)や
図6a,
図6b,
図7の等価回路を用いて説明される均等化動作と同様であると考えられる。
【実施例2】
【0056】
以上では降圧型PWMコンバータと直列共振形倍電圧整流回路を組み合わせた例について説明したが、その他のコンバータと共振形倍電圧整流回路の組み合わせも可能である。一例として、
図3bの昇圧型PWMコンバータを用いた充電器について説明する。なお、特に断りのない限り、以降の実施例においても実施例1と同様の参照符号、変数定義等を用いる。
【0057】
図3bの昇圧型コンバータの動作時における電流経路を
図12a,
図12bにそれぞれ示す。スイッチQがオンとなる期間では、キャパシタCinからインダクタLに電圧が印加されることにより(入力電圧をV
inとすればV
inが印加される。)、インダクタLを流れる電流は直線的に増加する。このときスイッチQに印加されている電圧はゼロである(オン抵抗を無視した。)。スイッチQがオフとなる期間では、インダクタLを流れる電流はダイオードDoを介して負荷側へ流れる。インダクタLに印加される電圧は、−(V
out−V
in)であり(
図12a,
図12b中、矢印方向に電流を流す電圧を正とした。)、インダクタLを流れる電流は直線的に減少する。このように、スイッチング動作に伴い、インダクタLの電圧は矩形波状電圧となる。
【0058】
図3bの昇圧型PWMコンバータと多段倍電圧整流回路とを、中間インダクタであるインダクタLrを介して接続してなる、本発明の第2の実施形態である充電器に、4直列の蓄電セルストリングB1〜B4を接続した、均等化機能付充電システムの回路図を
図13に示す。Vinは直流電源、Qはスイッチ、Dはダイオード、Lはコンバータ内インダクタ、Lrは中間インダクタを表わし、多段倍電圧整流回路については
図5で示したとおりである。
図13に示すとおり、昇圧型コンバータと多段倍電圧整流回路との間には共振用キャパシタCrが更に接続されており、実施例1の
図9と同様に中間インダクタLrと共振用キャパシタCrとで共振回路(共振タンク)が構成されている。2つのインダクタL,Lrや共振用キャパシタCrの動作、役割は実施例1と同様である。
【0059】
実施例2のトランスレス均等化回路統合型コンバータ(充電器)においては、昇圧型PWMコンバータが蓄電セルストリング全体(直列接続された蓄電セルB1〜B4)の充電を行う一方で、直列共振形倍電圧整流回路により蓄電セル電圧の均等化が行われる。昇圧型PWMコンバータの動作時に自動的に直列共振形倍電圧整流回路は駆動される。入力電圧V
inと出力電圧(すなわち蓄電セルB1〜B4の電圧の合計電圧であるストリング電圧V
string)の関係は、汎用的な昇圧型PWMコンバータと同様、スイッチの時比率(スイッチQのスイッチング1周期に対するオン期間の割合)をDとすると、インダクタにおける磁束の変化分が定常状態、1周期を通してゼロであるという条件より、以下の式(14)で表わされる。
【数14】
(14)
【0060】
スイッチQのスイッチングにより
図13の充電器を動作させたときに各素子を流れる電流、電圧の動作波形を
図14に、各動作モード1〜5における電流経路を
図15a〜
図15eにそれぞれ示す。
図14のグラフ中、各電流については、
図13で示す向きを正とし、また共振用キャパシタCrの電圧V
Crについては、
図13に示す向きに電流i
Crが流れることで充電される電圧を正とした。
【0061】
図14の動作波形に示すとおり、不連続モードにおいて
図13の充電器は5つの動作モード(モード1〜5)を繰り返しつつ動作する。便宜上、モード2から説明を行う。
【0062】
スイッチQがターンオンしているモード2(
図15b)においては入力電圧源Vinによりコンバータ内インダクタLの充電が行われ、コンバータ内インダクタLを流れる電流i
Lは直線的に増加する。このとき、共振形倍電圧整流回路内に電流は流れていない。モード2においてインダクタL,Lrに印加される電圧値V
L,V
Lrは次式で表される。
【数15】
(15)
【数16】
(16)
【0063】
図15cに示すモード3では、スイッチQをターンオフさせることでスイッチQを流れていた電流がダイオードDへと転流し、ダイオードDに電流i
Dが流れ始める。i
Dは共振インダクタ(中間インダクタ)Lrと共振用キャパシタCrを経由して流れることになる。モード3での共振インダクタLrを流れる電流i
Lrの初期値はゼロであり、一般的にインダクタの電流は急激には変化することはできないため、モード3の初期においてi
Dは全て共振用キャパシタCrを通過して流れることになる。モード3においてインダクタL,Lrに印加される電圧値V
L,V
Lrはダイオードの順方向降下を無視するとおおよそ次式で表される。
【数17】
(17)
【数18】
(18)
【0064】
V
Lrにより共振タンク内で、すなわち中間インダクタLrと共振用キャパシタCrとの間で共振が起こり、直列共振形倍電圧回路内では共振電流が流れ始める。コンバータ内インダクタLを流れる電流i
Lは、既に昇圧型コンバータの動作として説明したとおり、ほぼ直線的に低下する(
図14中、i
Lのグラフ参照)。一方、中間インダクタLrを流れる電流i
Lrは、
図13の電流経路からわかるとおり、モード3においては、i
Lと、共振用キャパシタCrの電流i
Crの差に相当するため、直線的に低下するi
Lに正弦波電流i
Crが重畳した(i
Lからi
Crを減じた)電流波形となる(
図14中、i
Lrのグラフ参照)。多段倍電圧整流回路内の中間キャパシタC1〜C4を流れる電流は偶数番号のダイオードD2,D4,D6,D8を経由して流れる。共振用キャパシタCrの電流i
Crが共振により正弦波状に変化してゼロとなり、電流極性が反転すると同時に、動作は次のモード4へと移行する。
【0065】
図15dに示すモード4においてもスイッチQはオフ状態であり、インダクタL,Lrに印加されている電圧はモード3の場合とほぼ同等である。中間インダクタLrと共振用キャパシタCrは共振を続けており、モード4では正弦波状共振電流i
Crの極性がモード3の場合とは逆のため、奇数番号のダイオードD1,D3,D5,D7が導通する。モード4は正弦波状電流が再びゼロに到達するまで継続される。
【0066】
図15eに示すモード5においても依然としてスイッチQはオフ状態であり、インダクタL,Lrに印加される電圧はモード3の場合と同様である。多段倍電圧整流回路内の電流は全てゼロとなるため、モード5においてはi
L=i
Lrとなる。
【0067】
スイッチQをターンオンさせるとダイオードDがターンオフされ、
図15aに示すモード1が始まる。コンバータ内インダクタLの電流i
LはスイッチQを経由して流れ始める一方、中間インダクタLrの電流i
Lrは共振用キャパシタCrを介して流れ始め、中間インダクタLrと共振用キャパシタCrの間で再び共振が始まる。モード1においてインダクタL,Lrに印加されている電圧はモード2の場合とほぼ同等である。
【0068】
以上、
図15a〜
図15eの電流経路と式(15)〜(18)で示したとおり、中間インダクタLrの両端には、コンバータ内インダクタLと中間インダクタLrのインダクタンスの比に応じた電圧が発生する。中間インダクタLrの両端に発生する電圧を簡単のために矩形波電圧であると仮定すると、その振幅V
Lr_p-pは式(16),(18)より次式で表される。
【数19】
(19)
【0069】
既に述べたとおり、一般的に、共振タンクに流れる共振電流の波高値i
Cr-peakは印加電圧に比例して上式(13)の形式で表わすことができるため、実施例2のトランスレス均等化回路統合型コンバータにおいても、インダクタL,Lrのインダクタンス比を任意に決定することでi
Cr-peakを抑えつつ、蓄電セル電圧の均等化機能を担う多段倍電圧整流回路を駆動することができる。
【0070】
蓄電セル用均等化回路である直列共振形倍電圧整流回路による蓄電セル電圧均等化の原理については、実施例1等で詳細に説明したとおりである。ここで、
図14の波形図で示す充電器の動作は5つのモードからなり、スイッチQのオン状態においてはモード1〜2が、スイッチQのオフ状態においてはモード3〜5が実現されるが、実施例1と同様に、スイッチングの1周期を通じて、奇数番号、偶数番号のダイオードを介して中間キャパシタC1〜C4が充放電されることにより、キャパシタCout1〜Cout4の電圧は均等化されるのであり、中間インダクタLrと共振用キャパシタCrの共振によって5モード動作となった場合であっても、定性的には上記式(1)〜(4)や
図7の等価回路を用いて説明される均等化動作と同様であると考えられる。
【0071】
なお、
図13の充電器が、共振タンクの共振周期よりもスイッチング1周期が短い連続モードで動作する場合、その動作は
図15aと
図15cで電流経路が表わされる2モード動作となるから、定性的には、上記式(1)〜(4)や
図6a,
図6b,
図7の等価回路を用いて説明される均等化動作と同様であると考えられる。また
図13の充電器から共振キャパシタCrを除き、共振キャパシタCrのあった部分を単なる導線とした場合(後述の
図21b参照)も、その動作は
図15aと
図15cで電流経路が表わされる2モード動作となるから(共振タンクがないため上述の共振が起こらない)、上記式(1)〜(4)や
図6a,
図6b,
図7の等価回路を用いて説明される均等化動作と同様であると考えられる。
【実施例3】
【0072】
以上では降圧型PWMコンバータおよび昇圧型PWMコンバータと直列共振形倍電圧整流回路を組み合わせた実施例について説明を行ったが、その他のコンバータを基本回路として組み合わせることも可能である。一例として、
図3eのZetaコンバータを用いた充電器について説明する。
【0073】
図3eのZetaコンバータの動作時における電流経路を
図16a,
図16bにそれぞれ示す。スイッチQの切り替えに伴い、既に説明した降圧型、昇圧型と同様にインダクタに流れる電流が直線的に増加又は減少する。インダクタL1,L2における磁束の変化分が定常状態、1周期を通してゼロであるという条件より、入出力電圧比は
【数20】
(20)
と表わされる。
【0074】
図3eのZetaコンバータと多段倍電圧整流回路とを、中間インダクタであるインダクタLrを介して接続してなる、本発明の第3の実施形態である充電器に、4直列の蓄電セルストリングB1〜B4を接続した、均等化機能付充電システムの回路図を
図17に示す。
図17に示すとおり、Zetaコンバータと多段倍電圧整流回路との間には共振用キャパシタCrが更に接続されており、実施例1の
図9と同様に中間インダクタLrと共振用キャパシタCrとで共振回路(共振タンク)が構成されている。インダクタL1,L2,Lrや共振用キャパシタCrの動作、役割は実施例1と同様である。
【0075】
実施例3のトランスレス均等化回路統合型コンバータ(充電器)においては、Zetaコンバータが蓄電セルストリング全体(直列接続された蓄電セルB1〜B4)の充電を行う一方で、直列共振形倍電圧整流回路により蓄電セル電圧の均等化が行われる。Zetaコンバータの動作時に自動的に直列共振形倍電圧整流回路は駆動される。入力電圧V
inと出力電圧V
out(すなわち蓄電セルB1〜B4の電圧の合計電圧であるストリング電圧V
string)の関係は、上式(20)で表わされる。
【0076】
スイッチQのオン、オフ切り替えに応じてコンバータ内インダクタL1,L2には矩形波状電圧が印加され、これに伴い中間インダクタLrにも矩形波状電圧が印加される。中間インダクタLrと共振用キャパシタCrが共振回路を形成することにより、多段倍電圧整流回路には正弦波状電圧が入力される。以降、実施例1,2と同様の原理で多段倍電圧整流回路の動作により蓄電セル電圧が均等化される。共振用キャパシタCrを除いた場合も実施例1,2と同様である(以降の実施例も同様)。
【実施例4】
【0077】
図18に、絶縁型コンバータの一種であるハーフブリッジコンバータと直列共振形倍電圧整流回路とをトランスレスで組み合わせた充電器(本発明の第4の実施形態)に、4直列の蓄電セルストリングB1〜B4を接続した、均等化機能付充電システムの回路図を示す。
【0078】
ハーフブリッジコンバータは、入力電源Vin、キャパシタCa,Cb、スイッチQa,Qb、コンバータ内トランス(絶縁トランス)、ダイオードDa,Db,Dc,Dd、コンバータ内インダクタLからなり、スイッチQaのみがオンの状態とスイッチQbのみがオンの状態とを交互に切り替えることで矩形波状電圧を発生させ、これをコンバータ内トランスで変圧し、さらにダイオードDa,Db,Dc,Ddからなる整流回路で整流して出力する。絶縁トランス二次巻線側の整流回路の出力端には、フィルタ用として設けられたコンバータ内インダクタLと直列に中間インダクタLrが接続されており、スイッチQa,Qbのオン、オフ切り替えに応じて中間インダクタLrに矩形波状の電圧が印加されるため、上述の実施例と同様の原理で共振形倍電圧整流回路が駆動され、蓄電セル電圧が均等化される。
【0079】
具体的に、コンバータ内トランスの一次巻線に印加される電圧の大きさは入力電圧をV
inとして0.5V
inとなるため、一次巻線の巻数N1と二次巻線の巻数N2との巻線比N2/N1=Nとすれば、二次巻線に印加される電圧の大きさは0.5NV
inとなる。よって、上式(8)〜(11)中、V
inを0.5NV
inで置き換えることにより、以下の式(21)〜(24)が得られる。
【数21】
(21)
【数22】
(22)
【数23】
(23)
【数24】
(24)
【0080】
コンバータ内インダクタLの電圧V
Lはおおよそ上式(21),(23)で表わされる矩形波状電圧となり、中間インダクタLrの電圧V
Lrは、おおよそ上式(22),(24)で表わされる矩形波状電圧となる。上式(22),(24)の差をとることにより、中間インダクタにはおおよそ
【数25】
(25)
で表される振幅V
Lr_p-pの矩形波状電圧が印加される。以降、多段倍電圧整流回路による蓄電セル電圧の均等化は上述の実施例と同様である。
【実施例5】
【0081】
以上の実施形態では、フィルタ用のインダクタと共振形倍電圧整流回路用のインダクタLrが個別に必要であったため、回路全体としては少なくとも2つの磁性素子が必要であった。しかしながら、カップルドインダクタを用いることによりこれらの磁性素子を1つの素子として集約することも可能である。カップルドインダクタを用いて降圧型PWMコンバータに共振形倍電圧整流回路を組み合わせた本発明の第5の実施形態である充電器に4直列の蓄電セルストリングB1〜B4を接続した、均等化機能付充電システムの回路図を
図19に示す。
【0082】
図19の回路構成は概ね
図9のものと同様であるが、2つのインダクタ(
図9中、コンバータ内インダクタLと中間インダクタLr)が、同一のコアに対して巻回されることで一つの磁性素子(カップルドインダクタ)へと集約されている。
図19中、LmgとLkgはそれぞれカップルドインダクタの励磁インダクタンスと漏洩インダクタンスを表わし、励磁インダクタンスLmgは降圧型PWMコンバータにおけるフィルタインダクタL(
図9参照)として振る舞う一方、漏洩インダクタンスLkgは直列共振形倍電圧整流回路用の共振用インダクタLrの機能を果たす。カップルドインダクタはトランスと同様で1つのコアに複数の巻線が施された磁性素子であり、各々の巻線に印加される電圧は巻線比(N1:N2)で決定される。漏洩インダクタンスLkgに印加される電圧は十分小さく無視できるため、スイッチQがオンの期間に一次巻線に印加される電圧V
N1、二次巻線に印加される電圧V
N2はおおよそ下式(26),(27)で表される(一次巻線の巻数をN1、二次巻線の巻数をN2とする。)。
【数26】
(26)
【数27】
(27)
【0083】
V
N2により共振タンク、すなわち漏洩Lkgと共振用キャパシタCrの間で共振が起こり、直列共振形倍電圧回路内では正弦波状の共振電流が流れる。一方、スイッチQがオフの期間はダイオードDが導通する。一次巻線と二次巻線に印加される電圧値は、ダイオードの順方向降下を無視するとおおよそ下式(28),(29)で表される。
【数28】
(28)
【数29】
(29)
【0084】
スイッチQがオフの期間においてもV
N2により共振タンク、すなわち漏洩インダクタンスLkgと共振用キャパシタCrの間で共振が起こり、直列共振形倍電圧回路内では正弦波状の共振電流が流れる。
【0085】
以上、式(27),(29)で示したとおり、二次巻線の両端にはN1とN2の比に応じた電圧が発生する。二次巻線の両端に発生する電圧を簡単のために矩形波電圧であると仮定すると、その振幅V
N2_p-pは式(27),(29)より次式で表される。
【数30】
(30)
【0086】
共振タンクに流れる共振電流の波高値i
Cr-peakは式(13)と同様で印加電圧に比例し、
【数31】
(31)
の形式で表わすことができる。ここで、Zrは共振タンクのインピーダンスである。式(30),(31)式が示すように、カップルドインダクタを用いたトランスレス均等化回路統合型コンバータでは、N1とN2の比を任意に決定することでi
Cr-peakを抑えつつ、セル電圧の均等化機能を担う倍電圧整流回路を駆動することができる。なお、
図19の充電器の動作原理も実施例1等と同様であり、上式(7)で表わされる降圧型PWMコンバータの出力電圧によって蓄電セルB1〜B4を充電しつつ、共振タンクの共振電流によって多段倍電圧整流回路を動作させることにより蓄電セル電圧を均等化する。
【実施例6】
【0087】
実施例5では、降圧型PWMコンバータに対してカップルドインダクタを用いつつ均等化回路を統合した例について示したが、その他のコンバータに対してもカップルドインダクタを用いた統合が可能である。一例として、昇圧型PWMコンバータに対してカップルドインダクタを用いつつ均等化回路を統合した、本発明の第6の実施形態である充電器に4直列の蓄電セルストリングB1〜B4を接続した、均等化機能付充電システムの回路図を
図20に示す。
【0088】
図20の構成は、
図13で示した昇圧型コンバータのコンバータ内インダクタLと共振形倍電圧整流回路内の中間インダクタLrを、同一のコアに対して巻回することでカップルドインダクタにより集約した実施例に相当する。基本的な動作原理は
図13に示したものと同様であり、上式(14)で表わされる昇圧型PWMコンバータの出力電圧によって蓄電セルB1〜B4を充電しつつ、共振タンクの共振電流によって多段倍電圧整流回路を動作させることにより蓄電セル電圧を均等化する。
図19を用いて説明した実施例5と同様の原理から、各巻線に発生する矩形波状電圧の振幅はカップルドインダクタの巻線比に依存するのであり、一次巻線と二次巻線の比を任意に決定することで共振電流の波高値i
Cr-peakを抑えつつ、セル電圧の均等化機能を担う倍電圧整流回路を駆動することができる。
【0089】
その他の変形例
以上の各実施例においては、主には直列共振形の共振回路から共振電流を入力することで多段倍電圧整流回路を動作させる実施形態について説明を行ってきたが、非共振形の入力部や、その他の共振形の入力部からの入力電流により多段倍電圧整流回路を動作させることも可能である。
【0090】
本発明の教示するトランスレス均等化回路統合型コンバータに用いることができる、入力部と多段倍電圧整流回路との構成例を
図21a〜
図21dに示す。
図21aは直列共振形入力部と多段倍電圧整流回路との接続例であり、これまで説明してきた各実施形態で用いている構成である。
図21bは非共振形の入力部と多段倍電圧整流回路との接続例であり、
図21aの直列共振形の回路における共振用キャパシタCrを削除した形態と同等である。非共振形の入力部を用いる場合の多段倍電圧整流回路の動作は、
図5〜
図7等を用いて説明したとおりである。
図21aの共振用キャパシタCrの容量を十分大きく設定した場合においても、
図21bの非共振形と同等の動作波形や特性を得ることができる。
【0091】
図21cは並列共振形の入力部と多段倍電圧整流回路との接続例であり、
図21dはLLC共振形の入力部と多段倍電圧整流回路との接続例である。これらの入力部を用いる場合であっても、多段倍電圧整流回路は共振電流により、上述の各実施例と同様に動作する。
図21a〜
図21dで示した各回路は一般的によく知られた共振・非共振回路方式を多段倍電圧整流回路に適用したものであり、その他の共振・非共振回路を多段倍電圧整流回路に適用することも可能である。
【実施例7】
【0092】
上記各実施例においては、単方向の電力伝送、すなわち蓄電セルストリングの充電を行うためのコンバータに均等化回路をトランスレスで統合した構成を用いていたが、上述の全ての実施例について、充放電可能な双方向コンバータを用いることにより、トランスレス均等化回路統合型双方向コンバータを構成することができる。
【0093】
一般的には、単方向のコンバータに含まれるダイオードをスイッチに置き換えることで、各種コンバータを双方向コンバータとして応用することができる。
図3aの降圧型PWMコンバータのダイオードをスイッチに置き換えることで構成される双方向コンバータについて、負荷RL(出力)側からの放電動作時、スイッチの切り替え状態に応じて実現される電流経路を
図22a(スイッチQHがオフ、スイッチQLがオン。モード1とする。),
図22b(スイッチQHがオン、スイッチQLがオフ。モード2とする。)に示す。コンバータ内インダクタLには、
図22aのモード1において出力電圧−V
outが、
図22bのモード2においては入出力電圧差に相当するV
in−V
outが印加されるため、単方向の場合と同様に矩形波状電圧が印加される。入出力電圧比も単方向の場合と同様、上式(7)で表わされる。
【0094】
図22a.
図22bに示す双方向降圧型PWMコンバータを、中間インダクタLrを介して多段倍電圧整流回路へと接続してなる本発明の第7の実施形態である充放電器を、直列接続された蓄電セルB1〜B4に接続してなる充放電システムの回路図を、
図23に示す。
図23の充放電システムは、
図9に示した実施形態におけるダイオードDをスイッチQLに置き換えることで双方向化に対応させた実施形態である。この実施形態では、充電時および放電時の両方において上式(8)〜(13)が成立するため、
図9で示した第1の実施形態と同様の原理にて蓄電セルの均等化が充電と放電の両方の場合において行われる。