特許第6679078号(P6679078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6679078-視覚障害者誘導用標示 図000002
  • 特許6679078-視覚障害者誘導用標示 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6679078
(24)【登録日】2020年3月23日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】視覚障害者誘導用標示
(51)【国際特許分類】
   G09B 21/00 20060101AFI20200406BHJP
   E01F 9/512 20160101ALI20200406BHJP
【FI】
   G09B21/00 A
   E01F9/512
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-133430(P2019-133430)
(22)【出願日】2019年7月19日
【審査請求日】2019年8月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇史
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−109331(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3182832(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B21/00−21/06
A61F 9/00− 9/08
E01C 1/00−17/00
E01F 9/00−11/00
B32B 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視覚障害者に移動すべき方向や注意すべき位置の情報を認識させる視覚障害者誘導用標示であって、
上方を向いて床面に設置される情報伝達面を備え、
前記情報伝達面の少なくとも一部に棒状、毛状、針状、管状、又は短冊状をなした可撓性を有する多数の起立体が立設された芝生部を備え、
前記多数の起立体は、当該視覚障害者誘導用標示を複数個線状に連結して設置する際に、平面視においてその連結方向と垂直な方向における両端側のものほど最高位置が低いことを特徴とする視覚障害者誘導用標示。
【請求項2】
前記芝生部は、前記情報伝達面の全面からなる請求項1に記載の視覚障害者誘導用標示。
【請求項3】
前記芝生部は、前記情報伝達面に分散配置される複数の互いに平行で、かつ前記連結方向に延びる線状の区域からなる請求項1に記載の視覚障害者誘導用標示。
【請求項4】
前記芝生部は、前記情報伝達面に分散配置される複数の点状の区域からなる請求項1に記載の視覚障害者誘導用標示。
【請求項5】
前記芝生部の起立体は、平面視における外周側のものが短く、中心側のものが長く設けられている請求項4に記載の視覚障害者誘導用標示。
【請求項6】
前記芝生部が黄色に着色されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の視覚障害者誘導用標示。
【請求項7】
前記情報伝達面が長方形をなす請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の視覚障害
者誘導用標示。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚障害者の歩行を誘導する視覚障害者誘導用標示に関し、特に、移動ベッドや車いす等の車輪を備えた器具が横断する際の衝撃を緩和する構成を備えた視覚障害者誘導用標示に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、視覚障害者誘導用標示として、JIS規格(T9251−2001)に基づく点字ブロックが広く用いられている。この点字ブロックは、視覚障害者に注意すべき位置を喚起すべく25個以上の点状突起を設けた警告ブロックと、視覚障害者に移動方向を指示すべく4本以上の線状突起を設けた誘導ブロックとからなり、視覚障害者が、白杖や足裏でこれらの突起を感知することにより必要な情報を認識するよう構成されている。
【0003】
かかる点字ブロックは、突起が視覚障害者に容易に認識されるよう、突起の高さの確保を優先すると、当該突起により歩行者が足を滑らせたり躓いたりするという問題があり、従来、突起の断面が半円形状のドーム型であったものを、上記のJIS規格では、その上端を水平に切り落としたハーフドーム型を採用している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】JIST9251−2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば、医療施設で用いられる移動ベッドや車いす等に対しては、特に横断時の衝撃を小さくすることが求められるため、上記のハーフドーム型の点字ブロックでは、なお移動ベッド等の横断時の衝撃が大きいという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、視覚障害者の識別の容易さを犠牲にすることなく、移動ベッド等が横断する際の衝撃を効果的に緩和可能な視覚障害者誘導用標示を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、視覚障害者に移動すべき方向や注意すべき位置の情報を認識させる視覚障害者誘導用標示であって、上方を向いて床面に設置される情報伝達面を備え、前記情報伝達面の少なくとも一部に棒状、毛状、針状、管状、又は短冊状をなした可撓性を有する多数の起立体が立設された芝生部を備え、前記多数の起立体は、当該視覚障害者誘導用標示を複数個線状に連結して設置する際に、平面視においてその連結方向と垂直な方向における両端側のものほど最高位置が低いことを特徴とする。
【0007】
このように、本発明に係る視覚障害者誘導用標示は、芝生部に設けた植物様の起立体が
視覚障害者が白杖で探る際に大きな音を発し、また足で踏んで知覚することもできるため
、視覚障害者誘導用標示として、十分な機能を発揮する。また、当該起立体は、可撓性を
有し、その上を移動ベッド等が通過する際に倒れるため、移動ベッド等に与える衝撃を効
果的に緩和することができる。
また、前記多数の起立体が、当該視覚障害者誘導用標示を複数個線状に連結して設置する際に、平面視においてその連結方向と垂直な方向における両端側のものほど最高位置が低くなるよう設けられていることで、移動ベッド等が横断する際の衝撃をより効果的に緩和することができる。
【0008】
本発明の視覚障害者誘導用標示は、前記芝生部が、前記情報伝達面の全面からなるものを含む。こうすることで、視覚障害者がより容易に認識することができる。
【0009】
本発明の視覚障害者誘導用標示は、前記芝生部が、前記情報伝達面に分散配置される複数の互いに平行で、かつ前記連結方向に延びる線状の区域からなるものを含む。このように、芝生部を線状に設けることで、特定場所への進路等、歩行に必要な情報を視覚障害者に伝達することができる。
【0010】
また、本発明の視覚障害者誘導用標示は、前記芝生部が、前記情報伝達面に分散配置される複数の点状の区域からなるものも含む。こうすることで、視覚障害者に危険が場所の警告を行うことができる。
【0011】
前記点状の芝生部の起立体は、平面視における外周側のものが短く、中心側のものが長く設けられていることが好ましい。
【0012】
前記芝生部は、黄色に着色されていることが好ましい。こうすることで、健常者が視覚誘導用標示であることを容易に認識でき、その上に誤って手荷物等を置いてしまうことを防止できる。
【0013】
本発明に係る視覚障害者誘導用標示は、前記情報伝達面が長方形をなすものを含む。こうすることで、幅を細くして、移動ベッド等が横断する際の衝撃をさらに緩和することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の視覚障害者誘導用標示によれば、移動ベッドや車いす等が横断する際の衝撃を効果的に緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る視覚障害者誘導用標示の斜視図である。
図2】本発明の第2実施形態に係る視覚障害者誘導用標示の斜視図である。
図3】本発明の第3実施形態に係る視覚障害者誘導用標示の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施形態について詳述する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限られるものではない。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る視覚障害者誘導用標示100を示している。視覚障害者誘導用標示100は、視覚障害者に移動すべき方向や注意すべき位置の情報を認識させるためのものであり、上方を向いて床面に設置される情報伝達面10を備えている。
【0018】
情報伝達面10は、平面視で正方形をなす基板11の上面からなる。基板11は、例えば、樹脂により平板状、格子状、あるいは網状に形成されている。情報伝達面10は、その全面に芝草(植物)を模した起立体1,1,…が立設されている。起立体1,1,1,…は、情報伝達面に垂設される棒状とすることで、芝草を模した形状をなしている。情報伝達面10、及び基板11は、正方形に限らず、例えば、幅方向が短手方向となる長方形とすることで、横断距離を短くして、横断する移動ベッド等に与える衝撃を緩和することができる。基板11は、ロール状に巻回できるような帯状の長方形でもよい。
【0019】
本実施形態では、情報伝達面10の全体が芝生部12を構成している。起立体1は、芝草を模した棒状に限らず、毛状、針状、管状、短冊状、針葉状、広葉状、単子葉状、双子葉状、多子葉状、その他の公知の植物を模した形状あってもよく、情報伝達面から起立するよう構成され、車輪により踏みつけられて傾倒する性質を有すれば特に限定されない。起立体の材料として、ポリエチレンやポリエステル等の軟質樹脂や、人工、又は天然ゴム等が好ましく用いられるが、可撓性を有する材料であれば特に限定されない。起立体1は、傾倒したのち、その弾性により元の姿勢に復帰可能なものが好ましい。
多数の起立体1,1,…は、少なくともその一部が、棒状、針状、管状等、短冊状、針葉状であって、情報伝達面10に対し先端まで真っすぐ垂直に延出していることが好ましい。こうすることで、サンダル等を履いた人が起立体1に躓くことを抑制できる。また、この少なくとも一部の起立体1は、棒状、針状、管状であって、情報伝達面10に対し先端まで真っすぐ垂直に延出することに加え、横断面が円形をなすことが好ましい。こうすることで、起立体1は、いずれの方向にも同様に倒れやすくなるので、白杖で撫でる向きが違っても音や感触が変わらず、視覚障害者を惑わせることを抑制できる。
また、多数の起立体1,1,…が、無負荷状態で、傾いたり曲がったりしているものを含む場合は、起立体1ごとの傾く方向や曲がる方向は、複数方向に異なることが好ましい。こうすることによっても、白杖で撫でる方向による音や感触の違いを抑制することができる。多数の起立体1,1,…の傾く方向や曲がる方向がランダムであれば、その効果はさらに顕著である。
【0020】
多数の起立体1,1,…は、左右の両端のものを短く、中央のものを長く、あるいは左右の両端のものの先端位置もしくは最高位置を低く、中央のものの先端位置もしくは最高位置を高くして、それらの先端もしくは最高位置が左右方向になだらかな円弧上の曲線を形成している。こうすることで、視覚障害者誘導用標示100を横断する車輪に与える衝撃をより緩和することができる。多数の起立体1,1,…は、設置場所に合わせて、適宜の色に着色でき、例えば、黄色に着色することで、視覚健常者に対し、それが視覚障害者誘導用標示であることを容易に認識させることができる。
【0021】
視覚障害者誘導用標示100を床面に設置する際は、中央の起立体1が長い端辺同士を連結するようにして、複数の視覚障害者誘導用標示100を直線状に連結する。
この際、床面を基板11の厚みだけ切欠いた凹部(不図示)を設け、これに基板11を埋め込むようにして設置してもよいし、基板11が十分に薄い場合は、床面上に基板11の下面を貼着するようにして設置してもよい。
【0022】
視覚障害者誘導用標示100を床面へ線状に設置するにあたり、コーナー部においては、情報伝達面10の隣接する2辺に沿った起立体1を短くし、他の2辺に沿った起立体1を長くしたものを用いることができる。
【0023】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係る視覚障害者誘導用標示200を示している。視覚障害者誘導用標示200は、基板11と、基板11を支持する基台3と、基板11、及び基台3を挟んで対向するよう設けられる一対の傾斜部2,2とを備えている。
尚、第2実施形態以降の実施形態において、第1実施形態と共通する部材については同一符号を用いて説明を省略する。
【0024】
基板11は、その上面からなる情報伝達面10を備え、情報伝達面10に5行5列の格子点状に並ぶ平面視円形の点状芝生部13,13,…を有している。点状芝生部13は、全体に渡って立設された多数の棒状突起からなる起立体1,1,…を備えている。点状芝生部13に立設された多数の起立体1,1,…は、外周側のものが短く、中心側のものが長く設けられ、全体としてその先端がドーム状曲面を形成している。
【0025】
一対の傾斜部2は、図2に示すように、端面が直角三角形をなす三角柱を横倒しにした楔形をなし、情報伝達面10と周囲の床面との段差を解消するように構成されている。一対の傾斜部2,2は、視覚障害者誘導用標示200を連結する連結方向と平面視において垂直な幅方向に対向するよう設けられている。
【0026】
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態に係る視覚障害者誘導用標示300を示している。視覚障害者誘導用標示300は、基板11と、その上面からなる情報伝達面10の一辺に平行に、かつ略等間隔に配設された4本の線状芝生部14,14,…を備えている。線状芝生部14は、その全体に渡って多数立設された棒状の起立体1,1,…を備えている。線状芝生部14に立設された多数の起立体1,1,…は、線状芝生部14の幅方向における外側のものが短く、中央側のものが長く設けられ、その先端が、線状芝生部14の幅方向における断面上縁を略円弧状の曲線に形成している。
【0027】
以上、本発明の視覚障害者誘導用標示は、上述の実施形態に限られず、例えば、情報伝達面は、標示を設置する床面そのものであってもよい。芝生部は、点状、線状以外の形状を有する区域に設けられてもよい。芝生部における起立体は、全体が一様の高さであってもよいし、幅方向の中央が低くてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る視覚障害者誘導用標示は、視覚障害者が利用する施設に設置して用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
100,200,300 視覚障害者誘導用標示
10 情報伝達面
1 起立体
12,13,14 芝生部
2 傾斜部
【要約】      (修正有)
【課題】移動用ベッドや車いす等が横断する際の衝撃の少ない視覚障害者誘導用標示を提供する。
【解決手段】視覚障害者に移動すべき方向や注意すべき位置の情報を認識させる視覚障害者誘導用標示100は、上方を向いて床面に設置される情報伝達面10を備え、情報伝達面10の少なくとも一部に植物を模した可撓性を有する起立体が立設された芝生部12を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3