(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面層と裏面層とからなる丸編地であって、前記表面層のウェール列と前記裏面層のウェール列とが互い違いに存在し、かつ前記表裏面層それぞれにおいてウェール方向に走行するループが不存在である経筋状の溝が連続して形成されていることを特徴とする、スポーツウェア用又はインナーウェア用のダブル丸編地。
表裏面層の少なくともいずれかにポリエステルマルチフィラメントのフラットヤーンが含まれていると共に、前記フラットヤーンによりループ状の通気孔が形成され、かつ前記通気孔の大きさが30×10-3mm2以上65×10-3mm2以下であることを特徴とする請求項1記載のダブル丸編地。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の丸編地は、表面層及び裏面層からなるものである。具体的には、表面層と裏面層とを構成するウェール列が互い違いに配列され、かつ表面層及び裏面層においてウェール方向に走行するループが不存在である縦筋状の溝が各々形成されている。かかるダブル丸編地は、例えばダブル丸編機で編成できるものである。
【0012】
ダブル丸編地を構成する糸条としては、マルチフィラメント糸、紡績糸のいずれでもよく、特に限定されないが、糸条内部に水分を保持させない観点から、合成繊維マルチフィラメント糸を使用することが好ましい。当該フィラメント糸を構成する繊維としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維の他、PLA(ポリ乳酸)やPBS(ポリブチレンサクシネート)等、バイオマス由来モノマーを化学的に重合してなるバイオマスポリマーを用いた繊維等が挙げられる。
【0013】
なお、本発明の丸編地は、合成繊維マルチフィラメント糸のみで構成されていることが好ましいが、効果を阻害しない範囲内で、合成繊維スパン糸や綿、麻等の天然繊維を併用してもよい。
【0014】
本発明では、このように種々の糸条が適用可能であるが、中でもポリエステルマルチフィラメント糸を使用することが好ましい。特に、表裏面層の一部には、仮撚加工されておらず実質的に捲縮を有していないポリエステルマルチフィラメント糸(フラットヤーン)を用いることが好ましい。実質的に捲縮を有さないとは、捲縮を全く有していないか、捲縮をほとんど有していないことをいい、JIS L1013 8.11伸縮性A法に従って測定したときの伸縮伸長率が10%以下であることをいう。本発明では、表裏面層の少なくともいずれかにフラットヤーンを使用することで、所定の大きさ(広さ)を持つループ状の通気孔が形成できる。これにより、「ふいご作用」がより生じやすくなり、肌離れ性がより向上する。「ふいご作用」とは、着衣と身体(肌)との間に空気を送り込むことで放熱、蒸散を促進させる作用をいい、送り込んだ空気により形成される空間を起点にして、肌離れ性を実現させるものである。例えば、発汗時、着衣の襟元辺りを手でパタパタと扇ぐ動作が、正にふいご作用を利用したベタツキ感の軽減策にあたる。本発明では、後述のように、編地の構造に由来して自発的にふいご作用が発現する。
【0015】
また、本発明では、編地に伸縮性、嵩高性等を付与する観点から、ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸を使用してもよい。ただし、仮撚加工糸を使用すると、染色加工時に捲縮発現するため、通気孔の面積が小さくなりやすく、ふいご作用が促進し難くなることがある。しかし、丸編地でありさえすれば、仮撚加工糸を使用しても、通気孔は小さいながらも一応形成でき、ふいご作用は奏される。よって、これを排除する理由はなく、仮撚加工糸のみを使用して編地を構成してもよいことは無論のことである。ただ、仮撚加工糸を使用するときは、肌離れ性のさらなる向上を考慮し、フラットヤーンを併用することが好ましい。仮撚加工糸とフラットヤーンとを併用する場合、交編率としては仮撚加工糸65〜95質量%、フラットヤーン5〜35質量%とすることが好ましい。
【0016】
さらに、マルチフィラメント糸を使用したときの各構成繊維の横断面形状としては、特に限定されず、円形でも異形でもよい。繊維の繊度としては、0.1〜3.0dtex程度でよい。このような糸条は、編地としたとき単フィラメント間の隙間に水分を保持しにくく、裏面層で吸収した水分を素早く表面層へ移行できるため、肌離れがさらに良くなり、着用時の快適性も増すことになる。
【0017】
本発明では、好ましくは以上のような糸条を使用して編地を得る。そして本発明では、表裏面層それぞれにおいて、ウェール列と、ウェール方向(経方向)に走行するループが不存在である縦筋状の溝とがコース方向(緯方向)に交互に配列されている。これにより、表裏面層それぞれに凹凸が形成され、肌と編地との接触面積が少なくなり、肌離れ性が良好となる。さらに、大量の発汗時においては、この溝(凹部)が汗を垂れ流す導線の役割を果たし、汗を外部へ放出するため、編地が汗を保水し難く、ベトツキ感を感じ難いものとなる。さらに、凹部が形成されると、その部分に空気の吹き溜まりが形成される結果、ふいご作用が奏され、肌離れ性がより発現する。
【0018】
図1は、本発明の丸編地の表面形態を例示する図面代用写真であり、裏面層を紙面上側に向け撮影したものである。本発明では、このように表裏面層それぞれに凹凸が形成されている(ただし、表面層は図示しない)。これに対し、
図2に示すように、表面形態が平坦なものは、汗を効率よく外部へ放出できないため、編地が汗を保水するか又は編地と肌との間に汗が滞留する等し、ベトツキ感を感じやすいものとなる。
【0019】
また、本発明では、以上に加え、表面層のウェール列と前記裏面層のウェール列とが互い違いに存在している。すなわち、表面層のウェール列の下に裏面層の経筋状の溝が、裏面層のウェール列の上に表面層の経筋状の溝がそれぞれ重なっている。厚み方向において、両ウェール列が重なると、その部分だけが極端に厚くなり、編地としての見映えが悪くなる他、その部分に保水される水の量が増え、使用中に水が逆戻りして肌離れ性が低下することがあるため、好ましくない。
【0020】
図3は、本発明の丸編地の断面形態を示す図面代用写真の一例である。紙面左右方向がコース方向である。このように、両ウェール列は互い違いに存在し、表裏面層にはそれぞれ経筋状の溝も併せて形成される。
【0021】
両ウェール列を互い違いに並べる方法としては、例えば、
図4のように、シリンダー側でループを2つ形成したのちにダイヤル側でタックを2つ形成することを3回繰り返し、次にシリンダー側でタックを2つ形成したのちにダイヤル側でループを2つ形成することを3回繰り返し、編組織の1リピートが前記6コースからなる編組織に編み立てる方法が挙げられる。
図4記載の組織図によれば、シリンダー側及びダイヤル側で形成されるループが互いに重なり合わず、両ウェール列が互い違いに並ぶと共に、両経筋状の溝も互い違いに並ぶことになる。そして、表裏面層それぞれにおいて、ウェール列と縦筋状の溝とがコース方向に交互に並び、各ウェール列は凸部を形成し、各経筋状の溝は凹部を形成することになる。
【0022】
本発明では、表面層及び裏面層のウェール列数は同じであっても異なっていてもよく、その数も
図4のように2列ずつに限ったものではない。また、ウェール列と経筋状の溝とは必ずしも規則的に並んでいる必要はないが、通常は規則的に並んでいることが好ましい。
【0023】
また、前記したように、表裏面層の少なくともいずれかにポリエステルマルチフィラメントのフラットヤーンを含ませると、結果として、所定の大きさ(広さ)を持つループ状の通気孔が形成できる。通気孔の大きさとしては、30×10
−3mm
2以上65×10
−3mm
2以下であることが好ましく、40×10
−3mm
2以上60×10
−3mm
2以下であることがより好ましい。通気孔の大きさが30×10
−3mm
2より小さいと、大量発汗時に十分な通気を確保し難く、ふいご作用が十分促進し難い傾向にある。一方、65×10
−3mm
2より大きいと、UVカット性や防透け性等が低下する傾向にあり、また編地強度も低下する傾向にあり、結果、実使用において問題が生じることがある。なお、編地を屋外スポーツウェアに用いる場合は、編地のUVカット性はUPF15以上が好ましい。
【0024】
図5は、フラットヤーンを使用した編地の表面形態を示す図面代用写真(拡大写真)の一例である。裏面層を紙面上側に向け撮影したものである。写真から分かるように、フラットヤーンを使用してループを形成することで、所定の大きさの通気孔が形成できる。これにより、ふいご作用が一層促進し、大量発汗時においても肌離れ性が良好となる。
【0025】
この他、本発明では、特に限定こそされないものの、目付としては180g/m
2以下が好ましく、160g/m
2以下がより好ましい。目付が180g/m
2を超えると、大量発汗時に編地の吸汗量が増え、編地自体が重くなる傾向にある。そうすると、例えば編地をスポーツウェアに仕立て、着用したとき、運動性を阻害することがある。
【0026】
また、編地の厚みとしても特に限定されないが、一般に550μm以上が好ましく、600μm以上がより好ましく、650μm以上がさらに好ましい。厚みが550μm未満になると、編地上に形成された凹凸が小さくなり、結果、縦筋状の溝が十分に形成され難くなるため、大量発汗時に汗を外部へ放出する機能が弱まる傾向にあり、肌と編地との間に汗が滞留するため、ベトツキ感を感じやすくなることがある。
【0027】
以上で述べたように、本発明の丸編地は、肌離れ性に優れるものである。肌離れ性は、湿潤時引き上げ抵抗力の大小により評価する。
【0028】
肌離れ性測定は、発汗時を模倣して、測定対象たる編地に水分を付与した状態(湿潤状態)で測定を行う。具体的には、水を付与した状態で平板に載置された編地について、編地重心に引き上げ具を取り付け、編地を垂直方向へ引き上げることで、引き上げ荷重を測定する方法である。従来、肌離れ性に関し各種提案がなされているが、いずれも肌面の水分の処理能力のみを重要視しており、汗を外部へ放出する能力やふいご作用等との相乗効果を考慮していないため、たとえ機器による性能評価で良好な結果が得られても、実使用においては、期待したほどの肌離れ性が奏されないことが多々ある。そこで、本発明では、実体に則して肌離れ性を評価する観点から、吸水した編地が垂直方向に動くときの荷重を測定することにより肌離れ性を評価する。
【0029】
本発明における測定方法において、引き上げ荷重は、吸水した編地の重量と、編地と平板との間に存在する水による表面張力とに依存するから、測定試料としては、その重心が決定しやすく、重心から端縁までの長さがほぼ同じである正方形が好ましい。具体的には、10cm四方に切り取った編地を使用する。
【0030】
測定に使用する編地の重心には引き上げ具が取り付けられる。引き上げ具としては、編地の重心に固定しうるものであればよく、具体的には、伸縮性部材及び非伸縮性部材を用いる。
図6に、当該測定方法の模式図を示す。1は平板であり、2は湿潤状態の編地、3は非伸縮性部材、4は伸縮性部材及び5は引張試験機の上把持部である。測定では、上把持部5を垂直方向に引き上げ、引き上げ荷重fを測定する。ここで、非伸縮性部材とは、比較的低い荷重である引き上げ荷重が負荷されても実質的に伸びない部材のことであり、本発明では、ポリエステルミシン糸を使用する。そして、伸縮性部材とは比較的低い荷重である引き上げ荷重が負荷されたときに伸び、この引き上げ荷重を取り去ると縮む部材であり、本発明では輪ゴムを使用する。
【0031】
肌離れ性を測定する際、測定する編地には水分が付与される。本発明では、一律1m
2当たり300mLとする。これは、マラソン、サッカー等のスポーツを行ったときのおおよその発汗量を想定したものである。水は測定する編地を平板に載置した後、付与する。平板としては、平滑なアクリル板を使用する。なお、編地を平板に載置する際に、編地の裏面(肌に接する面)が平板に当接するように載置することはいうまでもない。
【0032】
そして、水平にした湿潤編地に取り付けられている引き上げ具の他端を、引張試験機の上把持部で把持して、上把持部を垂直方向に引き上げる。そうすると、湿潤編地も垂直方向に引き上げられ、最終的には平板から離れる。平板から離れる際に最大の引き上げ荷重がかかるので、この荷重を読み取り、これを湿潤時引き上げ抵抗力とする。当該測定方法では、引き上げ具中に伸縮性部材が存在しているので、編地が上方に跳ね上がり、引き上げ荷重が一気に降下するので、最大引き上げ荷重が判別しやすい。
【0033】
本発明では、1m
2当たり300mLの水分を付与した湿潤時引き上げ抵抗力が8cN以下であることが好ましい。引き上げ抵抗力が8cNより大きいと、実使用の場面で編地が肌に貼り付き、肌離れ性が悪く、不快感が生じやすい傾向にある。
【0034】
加えて、本発明の編地は、飽和水分量以上の水分を付与したときの引き上げ抵抗力が80cN以下であることが好ましい。ここで言う飽和水分量以上の水分とは、編地が大量に汗を吸収し、編地から雫は落ちないけれども、べったりと濡れた状態のときの水分量のことをいう。飽和水分量以上の水分を付与したときの引き上げ抵抗力を測定するには、まず、編地に対し完全に保水できず雫が落ちる程度の量の水を与え、編地を平板に載せ、平板と共に垂直にして雫を切る。雫を切るには、垂直にして一定時間(たとえば60〜120秒)保持していれば十分である。これによって、飽和水分量以上の水分を付与したときの状態(雫は落ちないけれども、べったりと濡れた状態)が実現できる。雫を切った後、編地及び平板を水平にし、以降は上記と同様にして引き上げ抵抗力を測定する。例えば目付140g/m
2程度の編地であれば、およそ400〜600mL/m
2程度の水分量となる。
【0035】
本発明の丸編地は、例えば以上のような構成、効果を有するものであり、かかる編地は、編成後、後加工することで得ることができる。本発明では、後加工において、編地を吸水加工するとよい。ベタツキ感の軽減を目的とする布帛としては、従前より、撥水加工することで、繊維自体が水分を保持しないようにして所望の目的を達成しようという試みがある。すなわち、この方法は、繊維自体に水分を保持させず、組織の間隙、マルチフィラメントの間隙等に水分を追いやることで、ベタツキ感を軽減しようというものである。しかし、例えばいわゆるメッシュ編地に対しこの方法を適用すると、乾燥時には通気性を有するものの、特に大量に発汗した際には、編目間が水の膜で覆われ、通気性が阻害されてしまう。そうすると、水の表面張力により、かえって肌離れ性が悪化してしまう。したがって、本発明では、少なくとも肌面に向ける面については、撥水加工しないことが好ましく、また撥水加工された糸条、もしくは撥水効果を本来的に有する糸条等を使用しないことも好ましい。
【0036】
編地を吸水加工する方法としては任意の方法でよく、部分的又は全面状に吸水加工されていればよい。例えば染色浴中吸水加工や仕上工程でのパディング加工が挙げられるが、吸水性の耐久性を付与するために染色浴中吸水加工が好ましい。また、染色浴中吸水加工後の布帛に仕上工程でパディングによる吸水加工を行っても構わない。十分な吸水加工を行うことで大量に発汗した場合でも、汗を吸収する能力が高いため、発汗時の肌離れを良好にできる。さらに、耐久性のある吸水加工を行うことで、繰り返し洗濯を行った後でも良好な肌離れ性を保つことができ、実使用の場面で繰り返し着用しても快適な着用感を得ることができる。
【0037】
吸水性としては、JIS L1907記載の滴下法により測定した初期の吸水性が1秒以下であることが好ましい。さらに、JIS L0217 103法に基づく洗濯を5回繰り返した後の前記滴下法に基づく吸水性が5秒以下であることが好ましい。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
福原精機製丸編機(LPJ型、釜径33インチ、針密度28ゲージ)を用いて
図4記載の組織図に基づきダブル丸編地を編成した。すなわち、
図4中、給糸口F1、F4、F5にポリエステル仮撚加工糸(85dtex36f)を、F2、F3に異形異繊度ポリエステル仮撚加工糸(73dtex44f)を、F6に異形断面ポリエステルマルチフィラメント糸(フラットヤーン、84dtex48f)を各々導入しダブル丸編地を編成した。
図4中、F1〜3に導入した糸条で表面層を、F4〜6に導入した糸条で裏面層を各々編成した。各糸条の交編率は85dtex36fの糸が53.6質量%、73dtex44fの糸が30.0質量%、84dtex48fの糸が16.4質量%であった。
【0039】
編成後、液流染色機を使用して、上記丸編物を、日華化学社製精練剤「サンモールFL(商品名)」を含む浴で、80℃で30分間精練した。その後、染色機から上記の浴を取り除いた後、ダイスター社製分散染料「Dianix Blue UN−SE(商品名)」を1%omf、酢酸を0.2cc/L、日華化学社製分散均染剤「ニッカサンソルトSN−130(商品名)」を0.5g/L及び高松油脂社製吸水加工剤「SR1801(商品名)」を3.0%omf含む浴を注入し、135℃で20分間の条件で丸編物を染色浴中吸水加工した。加工後、ピンテンターを使用して丸編物を仕上げセットした。
得られた編地の1インチ当たりの密度は50コース、28ウェールであった。
【0040】
(実施例2)
実施例1の場合と同様にして編成、精練、染色浴中吸水加工した後、仕上げセットの条件を調整して、1インチ当たりの密度が52コース、28ウェールのダブル丸編地に仕上げた。
【0041】
(実施例3)
糸使いを変更すること以外は、実施例1と同様にして丸編地を得た。すなわち、給糸口F1〜5にポリエステル仮撚加工糸111dtex48fを、F6に異形断面ポリエステルマルチフィラメント糸(フラットヤーン、84dtex48f)を各々導入しダブル丸編地を編成した。各糸の交編率は111dtex48fの糸が87.2質量%、84dtex48fの糸が12.8質量%であった。
【0042】
以降は実施例1の場合と同様に後加工し、1インチ当たりの密度が49コース、26ウェールのダブル丸編地に仕上げた。
【0043】
(比較例1)
福原精機性丸編機(LPJ型、釜径33インチ、針密度28ゲージ)を用いて
図7記載の組織図に基づきダブル丸編地を編成した。すなわち、
図7中、給糸口F1、F3、F5、F7にポリエステル仮撚加工糸(84dtex72f)を導入して丸編地裏面を編成し、それ以外の給糸口には、ポリエステル仮撚加工糸(84dtex36f)を導入して丸編地表面を編成した。各糸条の交編率は84dtex72fの糸が51.5質量%、84dtex36fの糸が48.5質量%であった。
【0044】
以降は実施例1の場合と同様に後加工し、1インチ当たりの密度が53コース、39ウェールのダブル丸編地に仕上げた。
【0045】
以上の丸編地について、以下の性能を以下の方法に準じ測定した。
【0046】
1.通気孔の大きさ
光学顕微鏡(株式会社佐藤商事(販売元)、「Dino−Lite AM−313」)を使用して、丸編地裏面を50倍に拡大した写真を撮影し、任意の通気孔10個について面積を求め、その平均値を通気孔の大きさとした。
【0047】
2.目付
JIS L1018.8.4.2に準拠して測定した。
【0048】
3.厚み
JIS L1018.8.5.1に準拠して測定した。
【0049】
4.湿潤時引き上げ抵抗力
図6に図示する方法で測定した。まず、得られたダブル丸編地を10cm四方の正方形に裁断し、その重心の表面のみに(すなわち、丸編地の重心の裏面には至らないように)縫い針を用いて、糸[ポリエステルミシン糸(株式会社クラレ製、クラレエステル「クラフテル20/4000m(商品名)」]を通した。その後、縫い針から糸を外し、糸の両端を結んで全長約10cmの輪を作った。さらに、この糸の輪にゼムクリップを用いて輪ゴム(共和社製、「オーバンドNo.16(商品名)」)を直列に繋いだ。各丸編地の裏面(肌側となる面)が、厚み5mmで20cm角のアクリル板に当接するようにして、丸編地をアクリル板上に載置した。そして、この丸編地に3mLの水を丸編地中央部に付与した後、そのままの状態で1分間放置した。その後、輪ゴムを引張試験機[株式会社島津製作所製、「オートグラフ(型番:AGS−5kNX)」]の上把持部で把持して、垂直方向に500mm/分のスピードで引上げて、引き上げ荷重を読み取った。各丸編地につき、この測定を5回行い、5回の引上げ荷重の平均値を求め、これを湿潤時引き上げ抵抗力とした。
【0050】
5.密度
JIS L1018.8.8に準拠して測定した。
【0051】
実施例及び比較例で得た丸編地の性能測定結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1から分かるように、本発明の丸編地は、湿潤時引き上げ抵抗力が小さく、肌離れ性に優れていることが理解できる。丸編地の表面には、
図1、3に示すように、縦筋状の溝に由来する凹部と、ウェール列に由来する凸部とが形成されている。これにより、凹部を伝って効率よく水を外部へ放出でき、同時に、肌と編地とが凸部により点接触に近いような形で接することとなるから、優れた肌離れ性が奏される。さらに、実施例にかかる丸編地には、フラットヤーンが使用されているため、
図5に例示するような一定以上の大きさを持つループ状の通気孔が形成されており、ふいご作用がより発現する。このため、かかるふいご作用と相まって、従来にない肌離れ性が奏される。この結果を受け、実際に丸編地の着用試験を行ったところ、期待通りベタツキ感を感じ難く、快適に使用できることができた。
【0054】
これに対し、比較例1にかかる丸編地は、
図7に示すように、ウェール方向に走行するループが不存在である経筋状の溝が形成されておらず、
図2に示すような平坦な表面形態をしているため、湿潤時引き上げ抵抗力が実施例のものと比べ大幅に高くなった。ただ、同編地は、
図8(比較例1にかかる編地の裏面層の拡大写真)に示すような表面形態をしており、この図の通り、丸編地であるがゆえに通気孔が形成されているから、ふいご作用が一応期待できるものともいえる。しかしながら、同編地には、経筋状の溝が形成されていないから、そもそも吸水した水を放出する機能に劣り、多少のふいご作用が奏されていたとしても、満足できる肌離れ性は得られなかった。