特許第6679249号(P6679249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6679249
(24)【登録日】2020年3月23日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】車両用開閉体の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20200406BHJP
   E05F 15/689 20150101ALI20200406BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   E05F11/48 C
   E05F15/689
   B60J1/17 A
   E05F11/48 E
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-174801(P2015-174801)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-48654(P2017-48654A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】村松 厚志
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢一
【審査官】 野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−162892(JP,A)
【文献】 特開平08−021150(JP,A)
【文献】 特開平10−339068(JP,A)
【文献】 特開2014−201905(JP,A)
【文献】 特開2011−074657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/48
15/689
B60J 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤが駆動されることにより開閉体を開閉させる車両用開閉体の駆動装置において、
上記ワイヤを挿通する挿通穴を有するアウタチューブ;
周面に螺旋溝が形成され、該螺旋溝に上記ワイヤが巻回される円柱状のドラム;
上記ドラムを回転可能に支持する収容部と、上記アウタチューブの端部を挿入可能なアウタチューブ接続部と、上記アウタチューブ接続部と上記収容部の間で上記ワイヤを通過させるワイヤ通過部とを有するドラムハウジング;
上記ドラムハウジングに取り付けられ上記ドラムを回転させる駆動部材;及び
上記ドラムハウジングまたは上記駆動部材に設けられ、上記ドラムの上記回転軸方向に沿う第1の方向への上記ワイヤの振れを制限する第1の振れ止め部と、上記第1の方向と反対の第2の方向への上記ワイヤの振れを制限する第2の振れ止め部;
を備え、
上記第1の振れ止め部と上記第2の振れ止め部は、上記回転軸方向における、上記螺旋溝の形成範囲の一端と上記アウタチューブ接続部に接続した上記アウタチューブの端部における上記挿通穴の形成範囲の一端とを結ぶ線と、上記螺旋溝の形成範囲の他端と上記アウタチューブ接続部に接続した上記アウタチューブの端部における上記挿通穴の形成範囲の他端とを結ぶ線とで囲まれる領域の内側に設けられ
上記ワイヤ通過部は上記第1の方向に開口するワイヤ通過溝であり、上記ワイヤ通過溝内に上記第1の振れ止め部が設けられており、
上記ワイヤ通過溝の側面と上記第1の振れ止め部の間に、上記開口を通した上記ワイヤの挿脱を可能にさせる隙間が形成されていることを特徴とする車両用開閉体の駆動装置。
【請求項2】
請求項記載の車両用開閉体の駆動装置において、上記ワイヤ通過溝は、上記第1振れ止め部が設けられている部分で上記開口の幅を拡大して上記隙間を形成している車両用開閉体の駆動装置。
【請求項3】
ワイヤが駆動されることにより開閉体を開閉させる車両用開閉体の駆動装置において、
上記ワイヤを挿通する挿通穴を有するアウタチューブ;
周面に螺旋溝が形成され、該螺旋溝に上記ワイヤが巻回される円柱状のドラム;
上記ドラムを回転可能に支持する収容部と、上記アウタチューブの端部を挿入可能なアウタチューブ接続部と、上記アウタチューブ接続部と上記収容部の間で上記ワイヤを通過させるワイヤ通過部とを有するドラムハウジング;
上記ドラムハウジングに取り付けられ上記ドラムを回転させる駆動部材;及び
上記ドラムハウジングまたは上記駆動部材に設けられ、上記ドラムの上記回転軸方向に沿う第1の方向への上記ワイヤの振れを制限する第1の振れ止め部と、上記第1の方向と反対の第2の方向への上記ワイヤの振れを制限する第2の振れ止め部;
を備え、
上記第1の振れ止め部と上記第2の振れ止め部は、上記回転軸方向における、上記螺旋溝の形成範囲の一端と上記アウタチューブ接続部に接続した上記アウタチューブの端部における上記挿通穴の形成範囲の一端とを結ぶ線と、上記螺旋溝の形成範囲の他端と上記アウタチューブ接続部に接続した上記アウタチューブの端部における上記挿通穴の形成範囲の他端とを結ぶ線とで囲まれる領域の内側に設けられ、
上記ワイヤ通過部は上記第1の方向に開口するワイヤ通過溝であり、上記収容部は上記第1の方向に開口しており、
上記第1振れ止め部と上記第2振れ止め部は上記ワイヤ通過溝の長手方向で互いに位置を異ならせており、
上記ワイヤ通過溝は、上記開口に対向する上記第2の方向の底部のうち少なくとも上記第1振れ止め部に対応する位置に貫通穴を有していることを特徴とする車両用開閉体の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に搭載される開閉体の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウインドガラスを昇降させるウインドレギュレータや、スライドドアを開閉させるドア開閉装置などの自動車用の開閉体の駆動装置では、ワイヤを巻回した巻取ドラムの回転によってワイヤを移動(牽引、弛緩)させて開閉体(ウインドガラスやスライドドア)を駆動する構造が多用されている。巻取ドラムの外周面にはワイヤを巻回する螺旋溝が形成されている。巻取ドラムを収容するドラムハウジングには筒状のアウタチューブの端部が接続し、巻取ドラムの螺旋溝から延出されたワイヤがドラムハウジング内の通路を通ってアウタチューブ内の挿通穴に進退可能に挿入される。
【0003】
この種の駆動装置では、巻取ドラムが回転すると螺旋溝の傾斜に応じてワイヤが巻取ドラムの回転軸方向に振れる。その際にワイヤの振れ量(振れ角)が大きいと、アウタチューブの端面部分で挿通穴の縁に対してワイヤが干渉し、駆動の繰り返しによってワイヤがダメージを受けるおそれがある。その対策として、ドラムハウジングとは別部材としてアウタチューブの端部を挿入可能なブッシュ部材を設け、このブッシュ部材内にアウタチューブの端部から離れるにつれて徐々に内径を大きくする振れ止め用の穴を形成し、ブッシュ部材を介してアウタチューブをドラムハウジングに接続させる構造が知られている(特許文献1)。巻取ドラムが回転するときに振れ止め用の穴の内面によってワイヤの振れ角が制限され、ワイヤを保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−144424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のワイヤの振れ止め構造は、ドラムハウジングとは別にブッシュ部材を取り付ける必要があるため、ドラムハウジングに対して直接にアウタチューブを接続させる構成に比して、組み立ての工数が多くなって製造に手間がかかったり、部品点数の増加によってコスト高になってしまったりするおそれがある。
【0006】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、生産性が良く安価でありながらワイヤの耐久性向上を実現できる車両用開閉体の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワイヤを挿通する挿通穴を有するアウタチューブと、周面に形成した螺旋溝にワイヤが巻回される円柱状のドラムと、収容部にドラムを回転可能に支持し、アウタチューブ接続部にアウタチューブの端部を挿入させ、アウタチューブ接続部と収容部の間のワイヤ通過部にワイヤを通過させるドラムハウジングと、ドラムハウジングに取り付けられてドラムを回転させる駆動部材を備え、ワイヤの駆動によって開閉体を開閉させる車両用開閉体の駆動装置において、以下の特徴を有するものである。ドラムハウジングまたは駆動部材に、ドラムの回転軸方向に沿う第1の方向へのワイヤの振れを制限する第1の振れ止め部と、第1の方向と反対の第2の方向へのワイヤの振れを制限する第2の振れ止め部を設ける。第1の振れ止め部と第2の振れ止め部は、ドラムの回転軸方向において、螺旋溝の形成範囲の一端とアウタチューブ接続部に接続したアウタチューブの端部における挿通穴の形成範囲の一端とを結ぶ線と、螺旋溝の形成範囲の他端とアウタチューブ接続部に接続したアウタチューブの端部における挿通穴の形成範囲の他端とを結ぶ線とで囲まれる領域の内側に設けられる。
【0009】
本発明の一態様として、ワイヤ通過部を第1の方向に開口するワイヤ通過溝とした上で、ワイヤ通過溝内に第1振れ止め部を設け、ワイヤ通過溝の側面と第1振れ止め部の間に、開口を通したワイヤの挿脱を可能にさせる隙間を形成する。この隙間は、第1振れ止め部が設けられている部分でワイヤ通過溝の開口の幅を拡大して形成するとよい。
【0010】
本発明の別の態様として、ワイヤ通過部を第1の方向に開口するワイヤ通過溝とし、収容部も第1の方向に開口するようにドラムハウジングを構成した上で、ワイヤ通過溝の長手方向で第1振れ止め部と第2振れ止め部の位置を異ならせ、ワイヤ通過溝には開口に対向する第2の方向の底部のうち少なくとも第1振れ止め部に対応する位置に貫通穴を形成する。このように構成したドラムハウジングは、第1の方向と第2の方向(ドラムの回転軸方向)に相対移動する型によって容易に製造可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上の本発明の車両用開閉体の駆動装置によれば、ドラムを収容するドラムハウジングまたはドラムを駆動する駆動部材に設けた振れ止め部(第1の振れ止め部と第2の振れ止め部)によってドラムの回転軸方向のワイヤの振れを制限し、部品点数が少なく安価で生産性に優れた構成によって、確実にワイヤの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用したウインドレギュレータの正面図である。
図2】ウインドレギュレータの背面図である。
図3】ウインドレギュレータの側面図である。
図4】巻取ドラムを収容した状態のドラムハウジングの斜視図である。
図5】巻取ドラムを収容しない状態のドラムハウジングを図4と異なる角度から見た斜視図である。
図6】巻取ドラムを収容した状態のドラムハウジングの平面図である。
図7】巻取ドラムの斜視図である。
図8】巻取ドラムを回転軸と垂直な方向から見た側面図である。
図9図6のIX-IX線に沿うドラムハウジングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の車両用開閉体の駆動装置として、ドアの窓開口を開閉するウインドガラス(開閉体)を駆動させるウインドレギュレータに適用した実施形態を説明する。図1ないし図3に示すウインドレギュレータ10は、車両のドアパネル(図示略)内に取り付けられてウインドガラス(図示略)を昇降させるものである。図3にはウインドレギュレータ10を車両のドアに取り付けた状態での車外側と車内側の向きを矢線で示している。ウインドレギュレータ10は長尺部材であるガイドレール11を有し、ガイドレール11は長手方向に位置を異ならせて設けたブラケット12,13を介してドアパネル(インナパネル)に固定される。この固定状態でガイドレール11はその長手方向を概ね車両の高さ方向に向けて配される。
【0014】
ウインドガラスを支持するスライダベース14(ガラスキャリア)がガイドレール11の長手方向に沿って移動可能に支持されている。スライダベース14には一対のワイヤ15,16(図2)のそれぞれの一端が接続されている。ガイドレール11の長手方向の一端付近にはプーリブラケット30が固定されており、プーリブラケット30上にガイドプーリ17がプーリ支持軸19を介して回転可能に支持されている。ワイヤ15はスライダベース14からガイドレール11に沿って該ガイドレール11の一端方向に延び、ガイドプーリ17の外周面上に形成したワイヤガイド溝によって支持される。ワイヤ15の進退に応じてガイドプーリ17はプーリ支持軸19を中心とする回転を行う。ガイドレール11の長手方向の他端付近にはワイヤガイド部材18が設けられており、ワイヤ16はスライダベース14からガイドレール11に沿って該ガイドレール11の他端に向けて延びてワイヤガイド部材18に案内される。ワイヤガイド部材18はガイドレール11に対して固定されており、ワイヤガイド部材18に形成したワイヤガイド溝に沿って進退可能にワイヤ16が支持される。
【0015】
ガイドプーリ17とワイヤガイド部材18から出たワイヤ15,16は、管状のアウタチューブ21,22内に挿通され、アウタチューブ21,22が接続されるドラムハウジング20内に設けた巻取ドラム23に巻回される。図7図8に示すように巻取ドラム23は円柱状をなし、その中心部には軸線方向に貫通する軸嵌合穴24が形成されている。軸嵌合穴24の内面には鋸刃状のセレーションが形成されている。巻取ドラム23の外周面にはワイヤ15,16が巻回される螺旋溝25が形成されている。螺旋溝25は巻取ドラム23の外周面に沿って旋回しながら巻取ドラム23の軸線方向に位置を変化させる。巻取ドラム23の軸線方向における螺旋溝25の形成範囲Hを図8に示した。
【0016】
ドラムハウジング20に対してモータユニット(駆動部材)26(図1ないし図3)が取り付けられる。モータユニット26は、モータ27と、モータ27の出力軸の回転を減速させながら伝達する減速ギヤ列を内蔵したギヤボックス28と、ギヤボックス28の減速ギヤ列を経由してモータ27の回転駆動力が伝達される嵌合軸(図示略)が設けられている。モータユニット26は後述するドラムハウジング20の開口部分を覆うカバー部29を有しており、嵌合軸はカバー部29から突出して巻取ドラム23の軸嵌合穴24に嵌合する。嵌合軸には軸嵌合穴24のセレーションに嵌合するセレーションが形成されており、この嵌合状態でモータ27を駆動すると嵌合軸と共に巻取ドラム23が回転する。
【0017】
アウタチューブ21は一端がプーリブラケット30に接続し、他端がドラムハウジング20に接続しており、両端位置が定められたアウタチューブ21内でワイヤ15が進退可能となる。アウタチューブ22は一端がワイヤガイド部材18に接続し、他端がドラムハウジング20に接続しており、両端位置が定められたアウタチューブ22内でワイヤ16が進退可能となる。アウタチューブ21,22内には長手方向に貫通する挿通穴50(図9)が形成されており、ワイヤ15、16は挿通穴50に挿入される。アウタチューブ21でプーリブラケット30に接続する側の端部をレール側端部21aとし、アウタチューブ22でワイヤガイド部材18に接続する側の端部をレール側端部22aとする。また、アウタチューブ21,22のそれぞれでドラムハウジング20側に接続する側の端部をドラム側端部21b,22bとする。
【0018】
ドラムハウジング20はドアパネル(インナパネル)に固定される。モータ27の駆動力によって巻取ドラム23が正逆に回転すると、ワイヤ15,16の一方が巻取ドラム23の螺旋溝25への巻回量を大きくし、他方が巻取ドラム23の螺旋溝25から繰り出されて、この一対のワイヤ15,16の牽引と弛緩の関係によってスライダベース14がガイドレール11に沿って移動する。スライダベース14の移動に応じてウインドガラスが昇降する。
【0019】
以下、アウタチューブ21,22が接続するドラムハウジング20について説明する。図4ないし図6に示すように、ドラムハウジング20は、ドラム収容部(収容部)31と一対のアウタチューブ挿入部32,33を有している。ドラム収容部31は、底部34とその周縁に形成した円筒状の立壁35によって囲まれる空間を形成しており、底部34の反対側は収容部開口36として開口している。底部34にはドラム支持座37(図5)が設けられている。巻取ドラム23は、一端をドラム支持座37上に載せてドラム収容部61内に挿入される。ドラム支持座37には円筒状の軸突起37a(図5)が設けられ、巻取ドラム23には軸嵌合穴24の一部に平滑な円筒面24a(図7)が形成されている。軸突起37aが円筒面24aに挿入され、軸突起37aに対して円筒面24aを摺接させることで巻取ドラム23が回転可能に支持される。ドラム収容部61への収容状態での巻取ドラム23の回転中心である回転軸23xを図5図6に一点鎖線で示した。モータ27の駆動力が伝達されると、回転軸23xを中心として巻取ドラム23が回転する。
【0020】
ドラムハウジング20にはドラム収容部31に連通するワイヤ通過溝(ワイヤ通過部)40とワイヤ通過溝(ワイヤ通過部)41が互いに異なる方向(ウインドレギュレータ10の完成状態でのプーリブラケット30とワイヤガイド部材18の方向)に向けて形成されており、ワイヤ通過溝40の先端にアウタチューブ挿入部32が設けられ、ワイヤ通過溝41の先端にアウタチューブ挿入部33が設けられている。
【0021】
ワイヤ通過溝40とワイヤ通過溝41は略同じ構成を有しており、ワイヤ通過溝40とワイヤ通過溝41に共通する要素は図中で同じ符号を用いて示している。ワイヤ通過溝40,41はそれぞれ, ドラム収容部31から回転軸23xと交差する(略直交する)方向に向突出する溝状の部位であり、ドラム収容部31の底部34に連続する底部42と、底部42から回転軸23xに沿う方向(立壁35の突出方向)に立ち上げられた一対の側壁43,44を有している。底部42に対向する天面部分には通過溝開口45が形成されている。通過溝開口45はドラム収容部31の収容部開口36に連続する開口部である。
【0022】
アウタチューブ挿入部32にはアウタチューブ21のドラム側端部21bを挿入可能であり、アウタチューブ挿入部33にはアウタチューブ22のドラム側端部22bを挿入可能である。アウタチューブ挿入部32に対するドラム側端部21bの挿入方向である挿入軸32xと、アウタチューブ挿入部33に対するドラム側端部22bの挿入方向である挿入軸33xを図6に示した。
【0023】
アウタチューブ挿入部32とアウタチューブ挿入部33は略同じ構成を有しており、アウタチューブ挿入部32とアウタチューブ挿入部33に共通する要素は図中で同じ符号を用いて示している。アウタチューブ挿入部32,33の内部には挿入軸32x,33xの方向に貫通する挿通溝46が形成されている。挿通溝46は、ワイヤ通過溝40,41に連通しており、ワイヤ通過溝40,41と挿通溝46の境界付近に段差状の挿入規制面47が形成されている。アウタチューブ挿入部32,33に挿入されたアウタチューブ21,22のドラム側端部21b,22bの端面がそれぞれ挿入規制面47に当接して、アウタチューブ挿入部32,33へのアウタチューブ21,22の挿入位置が決まる(図9参照)。ワイヤ通過溝40,41の通過溝開口45は、アウタチューブ挿入部32,33まで連続して形成されている。アウタチューブ挿入部32,33における通過溝開口45の幅はアウタチューブ21,22の径よりも小さく、アウタチューブ挿入部32,33に挿入されたアウタチューブ21,22のドラム側端部21b,22bは、通過溝開口45を通して脱落しないようになっている。
【0024】
ウインドレギュレータ10の組み立て時には、アウタチューブ21,22のドラム側端部21b,22bの端面から突出するワイヤ15,16を、通過溝開口45を通してアウタチューブ挿入部32,33の挿通溝46とワイヤ通過溝40,41内に挿入すると共に、ドラム側端部21b,22bを挿入軸32x,33xに沿ってアウタチューブ挿入部32,33の挿通溝46内に挿入する。ドラム側端部21b,22bの端面が挿入規制面47に当接して挿入軸32x,33x方向でのアウタチューブ21,22の位置が定まる。ワイヤ15,16は、ワイヤ通過溝40,41を通ってドラム収容部31内へ導かれて、巻取ドラム23の外周面上の螺旋溝25に巻回される。このようにして組み付けた状態(図1ないし図3図9)で、ワイヤ15,16はアウタチューブ21,22に対して挿通穴50(図9)内を進退可能となり、巻取ドラム23の回転に応じて螺旋溝25へのワイヤ15,16の巻回量が変化する。
【0025】
さらにドラムハウジング20の天面側にモータユニット26取り付ける。モータユニット26のカバー部29がドラムハウジング20の収容部開口36と通過溝開口45を塞ぎ、ドラム収容部31からの巻取ドラム23の脱落を防止する。モータユニット26を取り付けることで、前述の通りモータユニット26側の嵌合軸(不図示)が軸嵌合穴24に嵌合して、モータ27の駆動力を巻取ドラム23に伝達可能となる。
【0026】
以上のようにワイヤ15,16を配策したウインドレギュレータ10では、巻取ドラム23が回転すると、螺旋溝25からの各ワイヤ15,16の繰り出し位置が回転軸23xに沿う方向で変化する。この回転軸23xに沿う方向のワイヤ15,16の振れを制限する振れ止め手段として、ドラムハウジング20はワイヤ通過溝40とワイヤ通過溝41のそれぞれに第1振れ止め部(振れ止め部、第1の振れ止め部)51と第2振れ止め部(振れ止め部、第2の振れ止め部)52を備えている。
【0027】
図9に、回転軸23x方向における、巻取ドラム23の螺旋溝25の形成範囲H(図8)の一端D1と他端D2、アウタチューブ22のドラム側端部22bの挿通穴50の形成範囲の一端E1と他端E2を示した。螺旋溝25側の一端D1と挿通穴50側の一端E1を結ぶ仮想線をF1、螺旋溝25側の他端D2と挿通穴50側の他端E2を結ぶ仮想線をF2とする。図9に示すように、ドラムハウジング20内でワイヤ16は、巻取ドラム23(螺旋溝25)とアウタチューブ22のドラム側端部22b(挿通穴50)により支持され、その間のワイヤ通過溝41では巻取ドラム23やアウタチューブ22の支持を受けていない。そのため、振れ止め手段を設けない場合には、仮想線F1と仮想線F2で囲まれる範囲(振れ可能範囲Mとする)でワイヤ16の振れが生じる可能性がある。図9はワイヤ16とワイヤ通過溝41の関係を示しているが、ワイヤ15とワイヤ通過溝40も同様の関係にある。
【0028】
第1振れ止め部51は側壁43に設けた突出部であり、回転軸23xに沿う方向で、仮想線F1よりも振れ可能範囲Mの内側に入った位置に設けられている(図9参照)。また、図6のように回転軸23xに沿って見たときに、ワイヤ通過溝40の第1振れ止め部51は挿入軸32xと重なる位置にあり、ワイヤ通過溝41の第1振れ止め部51は挿入軸32xと重なる位置にある。そのため、ワイヤ通過溝40内で挿入軸32xに沿って配策されたワイヤ15と、ワイヤ通過溝41内で挿入軸33xに沿って配策されたワイヤ16はいずれも、第1振れ止め部51によって回転軸23xに沿う一方の振れ量が制限される。具体的には、振れ可能範囲Mの仮想線F1よりも狭い範囲(仮想線F2寄りの位置)に振れ量が制限される。
【0029】
第2振れ止め部52は底部42に設けた突出部であり、回転軸23xに沿う方向で、仮想線F2よりも振れ可能範囲Mの内側に入った位置に設けられている(図9参照)。そのため、ワイヤ通過溝40内に配策されたワイヤ15と、ワイヤ通過溝41内に配策されたワイヤ16はいずれも、第2振れ止め部52によって回転軸23xに沿う他方の振れ量が制限される。具体的には、振れ可能範囲Mの仮想線F2よりも狭い範囲(仮想線F1寄りの位置)に振れ量が制限される。
【0030】
このように第1振れ止め部51と第2振れ止め部52によって回転軸23xに沿う方向のワイヤ15,16の振れ量(振れ角)を制限することで、ワイヤ15,16の耐久性を向上させることができる。特に、振れ可能範囲Mが最も狭くなっているアウタチューブ21,22(ドラム側端部21b,22b)の挿通穴50への挿入部分において、挿通穴50の縁部に対するワイヤ15,16の擦れを効果的に防ぐことができる。このワイヤ15,16の振れ制限は、ドラムハウジング20に形成した第1振れ止め部51と第2振れ止め部52によって実現されるので、振れ止め用の部材や機構を別途備える必要がなく、構成が簡略で低コストに得ることができる。
【0031】
第1振れ止め部51と第2振れ止め部52は、ワイヤ通過溝40,41の長手方向(ワイヤ15,16の延設方向)において、巻取ドラム23よりもアウタチューブ21,22のドラム側端部21b,22bに近い位置に配されている。この配置は、ワイヤ15,16の擦れが生じやすいアウタチューブ21,22の挿通穴50の縁部に近い位置でワイヤ15,16の振れ幅を管理できる利点がある。
【0032】
回転軸23xに沿う方向に収容部開口36と通過溝開口45を開口させたドラムハウジング20は、回転軸23xに沿う方向に相対移動する2つの金型によって製造することが好ましい。ここで、ワイヤ通過溝40,41の長手方向で第1振れ止め部51と第2振れ止め部52が互いに位置を異ならせている。さらにワイヤ通過溝40,41の底部42には、回転軸23xに沿う方向で第1振れ止め部51に対向する位置に貫通穴53が形成されている。このように構成することにより、回転軸23xに沿う方向に相対移動する2つの金型によって第1振れ止め部51と第2振れ止め部52も併せて形成することが可能となるため、ドラムハウジング20の生産性が向上する。
【0033】
図6に示すように、第1振れ止め部51が形成されている部分ではワイヤ通過溝40,41の通過溝開口45の幅が広げられており、第1振れ止め部51と側壁44の間に隙間45a(図6)が形成されている。そのため、第1振れ止め部51に妨げられずに、隙間45aを通してワイヤ通過溝40,41内へワイヤ15,16を挿入させることが可能である。図4図5に示すように、第1振れ止め部51は、隙間45a側にワイヤ15,16を導きやすくする傾斜方向のテーパ面51aを有している。
【0034】
以上、図示実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は図示した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて改良や改変が可能である。例えば図示実施形態では、第1振れ止め部51と第2振れ止め部52をいずれもドラムハウジング20に設けているが、ドラムハウジング20に対して組み付けられるモータユニット26に少なくとも一つの抜け止めを設けることもできる。具体的には、モータユニット26のカバー部29は通過溝開口45を塞ぐ(ワイヤ通過溝40,41の一部を構成する)形状を有しているため、第1振れ止め部51に相当する振れ止め部をドラムハウジング20ではなくカバー部29に設ける変更が可能である。
【0035】
図示実施形態では、ワイヤ通過溝40,41の側壁43に第1振れ止め部51を突設しているが、反対側の側壁44に第1振れ止め部51を設けることも可能である。
【0036】
図示実施形態のドラムハウジング20は、ドラム収容部31の収容部開口36とワイヤ通過溝40,41の通過溝開口45が同じ方向に開口しているが、収容部開口36と通過溝開口45が回転軸23xに沿う方向で互いに反対に向けて開口するタイプのドラムハウジングにも適用可能である。
【0037】
図示実施形態では、巻取ドラム23の回転軸23xに沿う方向のうち第1の方向(通過溝開口45の開口方向)へのワイヤ15,16の振れを制限する第1振れ止め部51と、これと反対の第2の方向(ワイヤ通過溝40,41の底部42の方向)へのワイヤ15,16の振れを制限する第2振れ止め部52を備えている。この構成は、巻取ドラム23の回転によってワイヤ15,16がいずれの方向に振れても保護できるので優れているが、本発明は回転軸23xに沿う方向のうち一方にのみワイヤ15,16の振れを制限するような構成であっても成立する。
【0038】
また、図示実施形態ではドラムハウジング20におけるワイヤ通過溝40とワイヤ通過溝41が略共通の構造であり、各ワイヤ15,16に同等の大きさの振れが生じ得る条件であるため、ワイヤ通過溝40とワイヤ通過溝41の両方に共通構造の第1振れ止め部51と第2振れ止め部52を設けているが、ワイヤ15とワイヤ16で振れ量の条件(図9の振れ可能範囲Mの幅)などが異なる場合は、ワイヤ通過溝40に設ける振れ止め部とワイヤ通過溝41に設ける振れ止め部のスペック(形状、配置)を異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 ウインドレギュレータ
11 ガイドレール
12 13 ブラケット
14 スライダベース
15 16 ワイヤ
17 ガイドプーリ
18 ワイヤガイド部材
19 プーリ支持軸
20 ドラムハウジング
21 22 アウタチューブ
21a 22a レール側端部
21b 22b ドラム側端部
23 巻取ドラム
23x 軸線
24 軸嵌合穴
25 螺旋溝
26 モータユニット(駆動部材)
27 モータ
28 ギヤボックス
29 カバー部
30 プーリブラケット
31 ドラム収容部(収容部)
32 33 アウタチューブ挿入部
32x 33x 挿入軸
34 底部
35 立壁
36 収容部開口
37 ドラム支持座
40 41 ワイヤ通過溝(ワイヤ通過部)
42 底部
43 44 側壁
45 通過溝開口
45a 隙間
46 挿通溝
47 挿入規制面
50 挿通穴
51 第1振れ止め部(振れ止め部、第1の振れ止め部)
51a テーパ面
52 第2振れ止め部(振れ止め部、第2の振れ止め部)
53 貫通穴
D1 螺旋溝の形成範囲の一端
D2 螺旋溝の形成範囲の他端
E1 アウタチューブの挿通穴の形成範囲の一端
E2 アウタチューブの挿通穴の形成範囲の他端
F1 F2 振れ可能範囲を決める仮想線
H 螺旋溝の形成範囲
M 振れ可能範囲
図1
図2
図3
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図9