特許第6679295号(P6679295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6679295
(24)【登録日】2020年3月23日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】頭皮毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20200406BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20200406BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   A61K8/34
   A61K8/39
   A61K8/37
   A61Q5/00
   A61K8/86
   A61K8/31
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-243780(P2015-243780)
(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公開番号】特開2017-109935(P2017-109935A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年12月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年6月16日、(株)PALTACおよび(株)あらたに販売
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】今藤 泰輔
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−345146(JP,A)
【文献】 特開2003−335629(JP,A)
【文献】 特開2001−335435(JP,A)
【文献】 特開2014−058467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)低級アルコール、(B)界面活性剤、(C)水溶性高分子および(D)油分を含む原液と液化ガスとからなる頭皮毛髪化粧料であって、
前記(A)低級アルコールを前記原液中に20〜55質量%含み、
前記(B)界面活性剤が、HLBが12.0〜18.0であるポリオキシエチレン脂肪酸エステル(B−1)と、HLBが5.0〜12.0であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(B−2)との混合物で、該混合物のHLBが9.0〜15.0であり、前記(B−1)が、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンおよび/またはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、前記(B−2)が、PPG−13デシルテトラデセス−24および/またはPPG−20デシルテトラデセス−10で、前記(B−1)を前記原液中に0.5〜1.5質量%含み、前記(B−1)と前記(B−2)の比、(B−1):(B−2)が1:4〜3:1であり、
前記(C)水溶性高分子がキサンタンガム、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムの中から選ばれる少なくとも1種であり、該水溶性高分子を前記原液中に0.5〜2質量%含み、
前記(D)化粧料全量に対して分子量300以下のエステル油を1〜15質量%含む頭皮毛髪化粧料。
【請求項2】
前記(B)界面活性剤のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを前記原液中に0.01〜5質量%含む請求項記載の頭皮毛髪化粧料。
【請求項3】
前記原液と前記液化ガスとの配合質量比が70/30〜10/90である請求項1または2記載の頭皮毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール製剤から吐出したフォーム塗膜に熱や剪断力を作用させたときに破泡音(パチパチ音)が発生し、毛髪へ広げたときにも使用感に優れる頭皮および毛髪化粧料(頭皮毛髪化粧料)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エアゾール製剤から霧状ないし泡状に噴射したときに、破泡によってパチパチと音をたてるフォームを形成するクラッキングフォーム組成物の技術が知られている。特許文献1には、原液が、水、界面活性剤、油性成分及び低級アルコールを含有し、低HLBの界面活性剤と高HLBの界面活性剤との混合物を用いたクラッキングフォーム組成物が記載されている。特許文献1に記載されている組成物は剪断力を作用させなくても所定時間破泡音が継続して加圧レスで破泡音を楽しむことができるものではあるが、クラッキング効果という面では十分とは言えない。
【0003】
特許文献2には、水溶性高分子、界面活性剤および低級アルコールを含有する原液と、液化ガスとからなり、沸点が−5℃以下の液化ガスを、エアゾール組成物中38重量%以上含有するエアゾール組成物が開示されている。また、特許文献3には、油性基剤、水溶性高分子、界面活性剤、水とを含有する原液と、液化ガスとからなり、油性基剤のIOB値(Inorganic Organic Balance:無機性/有機性バランス)が0.2〜0.5、油性基剤の配合量が原液中3〜30重量%であり、原液と液化ガスの配合比が50/50〜10/90であるエアゾール組成物が開示されている。特許文献2および3のエアゾール組成物は水溶性高分子を配合しているため、吐出するとやや粘性を有する泡になり、泡に指先などでせん断を加えると大きな破泡音を発し、破泡により心地よい感触が得られるものの、クラッキング効果が持続しないという問題がある。また、これらの文献に記載されている組成物は毛髪用ではないため、塗布後に髪がべたついたり、塗布乾燥後に髪がパサついたりといった問題がある。
【0004】
特許文献4には、原液が有効成分、ポリオキシエチレン付加型の脂肪酸エステルおよびHLBが8〜19である非イオン界面活性剤、炭素数が2〜3の1価アルコールおよび水で、液化ガスが難水溶性液化ガスであり、原液と液化ガスとの配合比が60/40〜10/90である発泡性エアゾール組成物が記載されている。
【0005】
また、特許文献5にはエステル油を配合した、毛髪に豊かな光沢を与えるとともに、セット保持力に優れ、かつ湿時および乾燥時においてなめらかな感触と優れた櫛通り性を有し、手のひらにとった時の手のべたつきの少ない毛髪セット剤組成物が開示されているが、頭皮への使用については言及しておらず、頭皮および毛髪に対する両使用への示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3665925号公報
【特許文献2】特許第4173034号公報
【特許文献3】特開2009−173613号公報
【特許文献4】国際公開第2012/033196号
【特許文献5】特開2001−64124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
いわゆるクラッキングフォーム組成物はアルコールを多く配合させる処方では破泡しにくくなり、クラッキング効果が低くなる。特許文献4に記載されている組成物はアルコール含有量が5〜40質量%と多くなっており、このためクラッキング効果が低い。クラッキング効果を高めようとアルコール含有量を少なくした場合にはガスの気化熱により製剤が凍結する。このため、頭皮に使用する場合には凍傷を回避する必要性からアルコール量を減らしすぎないことも必要である。
【0008】
クラッキング効果を高くするためには、特許文献2および3に記載されているような水溶性高分子を配合することも考えられるが、上記のように水溶性高分子を配合するとクラッキング効果が持続しにくいという問題がある。また、水溶性高分子を配合した場合には水溶性高分子そのものにべたつきがあるため、毛髪へ広げたときに髪がべたつき使用性が悪くなる。さらに、水溶性高分子を配合した場合、製造した原液を数日保管した後に製缶すると原液が分離してしまうことがあるため、再度撹拌工程を行わない限り、原液を均一に充填することができない。特に毛髪化粧料に、薬剤を配合した場合には薬剤の安定性が損なわれることになる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、クラッキング効果が高く、そのクラッキング効果の持続性がよく、さらに原液の安定性が保たれ、毛髪へ広げたときにも使用感が優れる頭皮毛髪化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の頭皮毛髪化粧料は、(A)低級アルコール、(B)界面活性剤、(C)水溶性高分子および(D)油分を含む原液と液化ガスとからなる頭皮毛髪化粧料であって、
(A)低級アルコールを原液中に20〜55質量%含み、
(B)界面活性剤が、HLBが12.0〜18.0であるポリオキシエチレン脂肪酸エステルと、HLBが5.0〜12.0であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとの混合物で、この混合物のHLBが9.0〜15.0であり、
(C)水溶性高分子がEO(エチレンオキサイド)鎖およびPO(プロピレンオキサイド)鎖を分子中に有さない水溶性高分子であって、水溶性高分子を原液中に0.02〜3質量%含み、
(D)油分全量に対して分子量300以下のエステル油を1〜15質量%含むものである。
【0011】
(B)界面活性剤のポリオキシエチレン脂肪酸エステルはモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンおよび/またはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであることが好ましい。
(B)界面活性剤のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルはPPG−13デシルテトラデセス−24および/またはPPG−20デシルテトラデセス−10であることが好ましい。
(B)界面活性剤のポリオキシエチレン脂肪酸エステルは原液中に0.01〜5質量%含むことが好ましい。
(B)界面活性剤のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは原液中に0.01〜5質量%含むことが好ましい。
【0012】
(C)水溶性高分子はキサンタンガム、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
原液と液化ガスとの配合質量比は70/30〜10/90であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の頭皮毛髪化粧料は、(A)低級アルコール、(B)界面活性剤、(C)水溶性高分子および(D)油分を含む原液と液化ガスとからなる頭皮毛髪化粧料であって、(A)低級アルコールを原液中に20〜55質量%含み、(B)界面活性剤が、HLBが12.0〜18.0であるポリオキシエチレン脂肪酸エステルと、HLBが5.0〜12.0であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとの混合物で、この混合物のHLBが9.0〜15.0であり、(C)水溶性高分子がEO鎖およびPO鎖を分子中に有さない水溶性高分子であって、水溶性高分子を前記原液中に0.02〜3質量%含み、(D)油分全量に対して分子量300以下のエステル油を1〜15質量%含むので、クラッキング効果が高く、そのクラッキング効果の持続性がよく、さらに原液の安定性が保たれ、毛髪へ広げたときにも使用感が優れるものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の頭皮毛髪化粧料について詳細に説明する。
本発明の頭皮毛髪化粧料は、(A)低級アルコール、(B)界面活性剤、(C)水溶性高分子および(D)油分を含む原液と液化ガスとからなる頭皮毛髪化粧料であって、(A)低級アルコールを原液中に20〜55質量%含み、(B)界面活性剤が、HLBが12.0〜18.0であるポリオキシエチレン脂肪酸エステルと、HLBが5.0〜12.0であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとの混合物で、この混合物のHLBが9.0〜15.0であり、(C)水溶性高分子がEO鎖およびPO鎖を分子中に有さない水溶性高分子であって、水溶性高分子を前記原液中に0.02〜3質量%含み、(D)油分全量に対して分子量300以下のエステル油を1〜15質量%含むものである。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0015】
(A)低級アルコール
低級アルコールとしては、炭素原子数1〜6の揮散性の低級アルコールが好適に用いられ、具体的には、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものではない。
【0016】
(B)界面活性剤
(B)界面活性剤は、HLBが12.0〜18.0であるポリオキシエチレン脂肪酸エステル(以下、(B−1)成分ともいう)と、HLBが5.0〜12.0であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(以下、(B−2)成分ともいう)との混合物で、(B−1)成分と(B−2)成分の混合物のHLBが9.0〜15.0である。
ここで、HLBとは親水性−親油性のバランス(Hydrophilic-Lypophilic Balance)を示す指標であり、本発明においては小田、寺村らによる次式を用いて算出した値である。
HLB=(Σ無機性値/Σ有機性値)×10
なお以下の記載において、POEはポリオキシエチレンを、POPはポリオキシプロピレンを、それぞれ意味する。
【0017】
(B−1)成分
(B−1)成分のポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、POEモノラウレート、POEモノステアレート、POEモノオレエートなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル、POEソルビタンモノラウレート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンモノオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、POEグリセリルモノステアレート、POEグリセリルモノオレエートなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、POEソルビットモノラウレート、POEソルビットテトラステアレート、POEソルビットテトラオレエートなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、およびこれらの混合物などがあげられる。
【0018】
原液および頭皮毛髪化粧料の乳化安定性に優れ、さらに頭皮毛髪化粧料中で原液と液化ガスが分離したとしても容易に再乳化できるという観点から、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを用いることが好ましく、特にはモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が好ましい。
なお、これら(B−1)成分は単独で用いてもよいし、適宜組み合わせて用いてもよい。
【0019】
(B−1)成分は原液全量に対し、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.1〜3.0質量%であることがより好ましく、さらには0.1〜1.5質量%であることが好ましい。(B−1)成分が原液全量に対し、0.01質量%以上、5.0質量%以下であることにより、クラッキング効果の高い頭皮毛髪化粧料とすることができるとともに、アルコール濃度が高い原液であっても頭皮毛髪化粧料の安定性を保つことができる。
【0020】
(B−2)成分
(B−2)成分のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、高級アルコールにエチレンオキシドとプロピレンオキシドを付加したエーテルで、具体的には、POE・POPラウリルエーテル、POE・POPセチルエーテル、POE・POPステアリルエーテル、POE・POPオレイルエーテル、POE・POPベヘニルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテル、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエーテル等が挙げられる。
【0021】
例えば、日光ケミカルズ社製PEN−4620(POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテル 表示名称PPG−6デシルテトラデセス−20:デシルテトラデカノールに平均6モルのプロピレンオキシドと平均20モルのエチレンオキシドを付加重合した化合物)、PEN−4612(POE(12)POP(6)デシルテトラデシルエーテル 表示名称PPG−6デシルテトラデセス−12:デシルテトラデカノールに平均6モルのプロピレンオキシドと平均12モルのエチレンオキシドを付加重合した化合物)、PEN−4630(POE(30)POP(6)デシルテトラデシルエーテル 表示名称PPG−6デシルテトラデセス−30:デシルテトラデカノールに平均6モルのプロピレンオキシドと平均30モルのエチレンオキシドを付加重合した化合物)、日油製ユニルーブ50MT−2200B(POE(24)POP(13)デシルテトラデシルエーテル 表示名称PPG−13デシルテトラデセス−24:デシルテトラデカノールに平均13モルのプロピレンオキシドと平均24モルのエチレンオキシドを付加重合した化合物)、ユニルーブ50MT−2000B(POE(10)POP(20)デシルテトラデシルエーテル 表示名称PPG−20デシルテトラデセス−10:デシルテトラデカノールに平均20モルのプロピレンオキシドと平均10モルのエチレンオキシドを付加重合した化合物)等が挙げられる。PPG−20デシルテトラデセス−10(表示名:一般名は、POE(10)・POP(20)2−デシルテトラデシルエーテル)、が挙げられる。
なお、これら(B−2)成分は単独で用いてもよいし、適宜組み合わせて用いてもよい。
【0022】
(B−2)成分は原液全量に対し、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.1〜3.0質量%であることがより好ましく、さらには0.1〜1.5質量%であることが好ましい。(C−2)成分が原液全量に対し、0.01質量%以上、5.0質量%以下であることにより、クラッキング効果の高い頭皮毛髪化粧料とすることができる。
【0023】
(B−1)成分と(B−2)成分の混合物のHLBは9.0〜15.0であり、好ましくは10.0〜14.0が好ましい。混合物のHLBが9.0以上、15.0以下であることにより、クラッキング効果の高い頭皮毛髪化粧料とすることができるとともに、アルコール濃度が高い原液であっても頭皮毛髪化粧料の安定性を保つことができる。
【0024】
(C)水溶性高分子
(C)水溶性高分子はEO鎖およびPO鎖を分子中に有さない水溶性高分子(以下、特定の水溶性高分子ともいう)である。ここでEO鎖およびPO鎖を分子中に有さないとは、EO鎖およびPO鎖を分子中に実質的に含まないことを意味し、含んでいても発泡性に影響を与えない範囲では含んでいてもよく、詳細には、分子中のEO鎖およびPO鎖の鎖数がn個である場合にn=2までを限度に含んでいてもよいことを意味する。天然の水溶性高分子としては、例えば、植物系高分子(例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸);微生物系高分子(例えば、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等);動物系高分子(例えば、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等)等が挙げられる。また、これらの誘導体(アルキル変性、アニオン化、シリル化類)も挙げられる。
【0025】
半合成の水溶性高分子としては、例えば、デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等);セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、セルロース末およびこれら高分子の疎水変性化合物<例:一部をステアロキシ変性>およびこれら高分子のカチオン変性化合物等);アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等);ペクチン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0026】
合成の水溶性高分子としては、例えば、ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等);ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムハライド)型カチオン性高分子(例えば、マーコート100(Merquat 100)米国メルク社製);ジメチルジアリルアンモニウムハライドとアクリルアミドの共重合体型カチオン性ポリマー(例えば、マーコート550(Merquat 550)米国メルク社製);アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等);ポリエチレンイミン;その他の(A)成分以外のカチオン性ポリマー;ケイ酸AlMg(ビーガム);ポリクオタニウム−39等が挙げられる。
【0027】
中でも、良好な発泡および破泡状態とすることができ、頭皮・毛髪へのべたつきや毛髪のパサつきをより少なくすることができるという観点から、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
これらは単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。
【0028】
特定の水溶性高分子の配合量は、原液全量に対して0.02〜3質量%であり、0.1〜2質量%であることがより好ましく、さらには0.1〜1質量%であることが好ましい。特定の水溶性高分子が0.02質量%以上、3質量%以下であることにより、アルコール濃度が高い原液であっても頭皮毛髪化粧料の安定性を保つことができるとともに、良好な発泡および破泡状態の頭皮毛髪化粧料とすることができる。
【0029】
(D)油分
油分は公知のものを用いることができるが、油分全量に対して分子量300以下のエステル油(以下、特定のエステル油ともいう)を1〜15質量%含む必要がある。特定のエステル油を1質量%以上配合することにより水溶性高分子による毛髪や頭皮に対するべたつきや毛髪に対するパサつきを低減することができる。また、15質量%以下の配合とすることで、油分特有のべたつきも抑制することができる。分子量が300よりも大きいエステル油では、毛髪へ塗布された際に油分特有のべたつきやパサつきを感じる場合があり、また、上述の水溶性高分子によるべたつきやパサつきを低減する効果が少なくなる場合がある。配合量は油分全量に対して、2〜15%質量%であることがより好ましい。
【0030】
特定のエステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル(分子量:270.45)、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール(分子量:286)、エチルヘキサン酸エチルヘキシル(分子量:256.42)、ラウリン酸プロピレングリコール(分子量:258.4)、アジピン酸ジイソブチル(分子量:258.35)、コハク酸ジエトキシエチル(分子量:262.3)、セバシン酸ジイソプロピル(分子量:286.41)、クエン酸トリエチル(分子量:276.28)、パルミチン酸イソプロピル(分子量:298.50)、イソノナン酸イソノニル(分子量:284.48)などが挙げられる。
【0031】
特定のエステル油以外の油分としては公知のものを用いることができ、例えば、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ひまし油等の液体油脂;固体油脂;カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン等のロウ類;水添加ポリイソブテン、イソドデカン、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等の炭化水素油;アルキル−1,3−ジメチルブチルエーテル、ノニルフェニルエーテル等のエーテル油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール等を挙げることができる。
【0032】
(原液)
本発明に用いる原液には、製品目的に応じて、本発明の効果を損なわない限り、通常毛髪化粧料に配合可能な成分、例えば、キレート剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、ビタミン、ホルモンなどの薬剤、香料等を添加することができる。
【0033】
原液の配合量は、頭皮毛髪化粧料中10〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%がより好ましく、さらには20〜50質量%であることが好ましい。原液の配合量を10質量%以上とすることにより液化ガスと乳化しやすく、均一な組成で吐出させることができる。また、原液の配合量を70質量%以下とすることにより塗り伸ばす際に垂れ落ちを抑制することができる。
【0034】
(液化ガス)
液化ガスは、エアゾール容器内では蒸気圧を有する液体であり、水への溶解性が低く、水を多く含有する原液と乳化してエアゾール組成物を形成し、外部に吐出されると気化して原液を発泡させてフォームを形成するものである。具体的には、例えば、プロパン、ブタンおよびイソブタンを主成分とする液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)および炭酸ガス、窒素ガス等の圧縮ガス等の単独またはそれらの混合物を使用することができる。中でも液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)等が好ましく用いられる。
【0035】
液化ガスの配合量は、頭皮毛髪化粧料中30〜90質量%であることが好ましく、40〜80質量%がより好ましく、さらには50〜80質量%であることが好ましい。液化ガスの配合量が30質量%以上とすることにより塗り伸ばす際に垂れ落ちを抑制することができ、クラッキング効果を高く、冷却感も強くすることができる。一方、90質量%以下であると原液と乳化しやすく、均一な組成で吐出させることができる。
【0036】
本発明の頭皮毛髪化粧料は、耐圧容器に原液と液化ガスを充填し、耐圧容器にエアゾールバルブを固着してエアゾール容器を密封することにより製造することができる。耐圧容器としては、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂製耐圧容器、ガラス製耐圧容器、アルミ、ブリキなどの金属製耐圧容器を使用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
【0038】
表1、2および3に示す配合処方によって頭皮毛髪化粧料の原液を調製した。原液をエアゾール缶に充填し、弁をした。次いで、液化ガス(LPG)を充填し、ヘアスプレーを得た。原液と液化ガスの質量比は40:60とした。
これらを試料として、下記評価基準に従って、有効成分の溶解安定性、クラッキング効果およびその持続性、頭皮の清涼感および毛髪への使用性について評価した。結果を表1、2および3に示す。
【0039】
(原液の安定性)
各試料の原液を、0℃で1ヶ月保存した後の析出物を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
A:結晶や不溶物が析出しない
B:結晶や不溶物が若干析出した
C:結晶や不溶物が析出した
【0040】
(クラッキング効果およびその持続性)
ヘアスプレーを25℃の恒温水槽中に1時間保持し、各試料0.5gを腕に吐出して塗り拡げたときの状態を、クラッキング効果とその持続性についてそれぞれ以下のように評価した。
<クラッキング効果>
A:パチパチと大きな破泡音を発した
B:破泡音を発したがその程度は小さかった
C:破泡音がかなり小さかった
<クラッキング効果の持続性>
A:発泡音が8秒以上持続した
B:発泡音が2秒以上8秒未満持続した
C:破泡音が2秒以下持続した
【0041】
(頭皮の清涼感)
各試料0.5gを頭皮に塗布し、塗布時の清涼感について女性専門パネラー(10名)による官能試験で以下のように評価した。
A:10名中、7名以上が清涼感がちょうどよいと回答
B:10名中、7名以上が冷たすぎると回答
【0042】
(毛髪の使用性)
各試料を吐出して毛髪へ塗り拡げたときの使用性(髪への馴染みやすさ、塗布中のべたつきのなさ、指どおりのなめらかさ、乾燥後のパサつきのなさ)について、女性専門パネラー(10名)による官能試験で以下のように評価した。
A:10名中、8名以上が使用性がよいと回答
B:10名中、4〜7名が使用性がよいと回答
C:10名中、4名未満が使用性がよいと回答
【0043】
なお、実施例で用いた界面活性剤のHLBは以下のとおりである。
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 16.7
POE(24)POP(13)デシルテトラデシルエーテル 9.5
POE(10)POP(20)デシルテトラデシルエーテル 5.8
【0044】
【表1】
【0045】
表1から明らかなように、実施例1〜5に示す本発明の頭皮毛髪化粧料はクラッキング効果が高く、その持続性もよく、原液の安定性、頭皮の清涼感、使用性に優れていた。一方、低級アルコールの含有量が多すぎる比較例1は原液の安定性が悪く、クラッキング効果も低く、その持続性も悪かった。また、低級アルコールの含有量が少なすぎる比較例2は原液の安定性やクラッキング効果はよかったものの持続性が劣り、頭皮に対して冷たすぎた。また、界面活性剤混合物のHLBが低い比較例3ではクラッキング効果が低下するとともに持続性も低下し、逆に界面活性剤混合物のHLBが高い比較例4では原液の安定性が悪かった。
【0046】
【表2】
【0047】
また、表2に示すように、特定の水溶性高分子である実施例6〜9に示す頭皮毛髪化粧料はクラッキング効果が高く、その持続性もよく、原液の安定性、頭皮の清涼感、使用性に優れていた。一方、特定の水溶性高分子であっても、その含有量が少なすぎる比較例5や多すぎる比較例6では原液安定性が悪かったり、使用性が低下した。また、特定の水溶性高分子でない場合には、比較例7〜9に示すように、原液安定性、クラッキング効果や毛髪の使用性が低下した。さらに、特定のエステル油を含まない比較例10および11ではクラッキング効果やその持続性が低下し、使用性が悪かった。
【0048】
【表3】
【0049】
また、表3に示すように、油分全量に対して特定のエステル油を1〜15質量%含む実施例10〜16に示す頭皮毛髪化粧料はクラッキング効果が高く、その持続性もよく、原液の安定性、頭皮の清涼感、使用性に優れていた。一方、特定のエステル油であっても油分量が少なすぎる比較例12や油分量が多すぎる比較例13ではクラッキング効果の持続性や使用性が低下した。また、分子量300よりも大きいエステル油を用いた場合には、比較例14〜17に示すように使用性や原液の安定性が低下したり、クラッキング効果が低下した。
【0050】
(処方例)
以下に、本発明の頭皮毛髪化粧料の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではない。なお、配合量は全て製品全量に対する質量%で表している。
【0051】
処方例1:育毛用頭皮毛髪化粧料充填エアゾール製品
下記配合量に伴い原液を調製し、調製した原液70質量%をエアゾール缶に充填し、次いで噴射剤としてLPGを30質量%充填した。容器を上下に振って原液と噴射剤とを乳化させ、育毛用頭皮毛髪化粧料が充填されたエアゾール製品を調製した。
アデノシン 1.0
β−グリチルレチン酸 0.1
ニコチン酸アミド 0.1
メントール 0.5
エタノール 40
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.0
POE(24)POP(13)デシルテトラデシルエーテル 0.5
POE(10)POP(20)デシルテトラデシルエーテル 0.5
ミリスチン酸イソプロピル 1.0
キサンタンガム 0.5
タルク 1.0
精製水 残余
【0052】
処方例2:頭皮毛髪化粧料充填エアゾール製品
下記配合量に伴い原液を調製し、調製した原液10質量%をエアゾール缶に充填し、次いで噴射剤としてLPGを90質量%充填した。容器を上下に振って原液と噴射剤とを乳化させ、頭皮毛髪化粧料が充填されたエアゾール製品を調製した。
エタノール 20
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.0
POE(24)POP(13)デシルテトラデシルエーテル 0.5
POE(10)POP(20)デシルテトラデシルエーテル 0.5
ミリスチン酸イソプロピル 5.0
キサンタンガム 0.5
ダイナマイトグリセリン 2.0
ジプロピレングリコール 2.0
ツバキ油 0.1
アルガンオイル 0.1
ローズヒップ油 0.1
オノニスエキス 0.1
シソエキス 0.1
タルク 1.0
精製水 残余