(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オレフィン(共)重合体の示差走査型熱量計(DSC)により求められる融点ピーク(Tm)が、50℃以上130℃未満にあるか、またはDSCにて融点ピークが観測されないことを特徴とする請求項14〜23のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体の製造方法について説明する。本発明に係る一般式[1]で表される架橋メタロセン化合物(以下、「メタロセン化合物(A)」または「架橋メタロセン化合物(A)」ともいう。)、好ましいメタロセン化合物(A)の例示、メタロセン化合物(A)の製造方法、メタロセン化合物(A)をオレフィン重合用触媒に供する際の好ましい形態、メタロセン化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒の存在下、特定の重合温度および重合圧力下において、1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体を製造する方法について、順に説明する。なお、本発明の技術的範囲は以下の実施形態に限定解釈されるものではない。
【0037】
なお、以下の説明において、N
1以上N
2以下(N
1およびN
2は、それぞれ数値範囲の下限値および上限値を示す)を、単に「N
1〜N
2」と記載することもある。例えば、炭素数2以上20以下のα−オレフィンを、「炭素数2〜20のα−オレフィン」と記載することもある。また、本明細書において、単独重合体および共重合体を包括する概念として、「(共)重合体」または単に「重合体」という語が用いられることがある。
【0038】
〔メタロセン化合物(A)〕
メタロセン化合物(A)は、一般式[1]で表される。
【0040】
式[1]中、R
1は3級炭化水素基であり、R
2、R
3、R
6およびR
7は一般式[2]で表される基であり、R
4、R
5、R
8、R
9、R
10、R
11およびR
12は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基、ハロゲン原子、ハロゲン含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R
2、R
3、R
6およびR
7を除く隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく;Mは第4族遷移金属であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、炭素数10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、Qが複数ある場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、jは1〜4の整数である。
【0042】
式[2]中、R
13は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3の炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
本発明のメタロセン化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒を用いることにより、例えば、1−ブテンを単独重合する場合や、1−ブテンとプロピレン等を共重合する場合において、工業的製法において有利な高温条件下においても高分子量での1−ブテン系(共)重合体を、効率よく、経済的かつ安定して、高い生産性をもって製造することができる。すなわち、本発明のメタロセン化合物(A)は、オレフィン重合体、特に1−ブテン系(共)重合体を製造するためのオレフィン重合用の触媒成分として好適に用いることができる。
【0043】
以下、メタロセン化合物(A)について、式[1]および式[2]中の各基の具体例および好適例を説明するが、各々の基について記載した好ましい基の任意の組合せからなる化合物を、好ましいメタロセン化合物(A)として挙げることができる。
【0044】
〈R1〜R13について〉
以下、式[1]および式[2]におけるR
1〜R
13に係る各基について説明する。特に言及しない限り、式[1]および式[2]においてR
1〜R
13として列挙されることのある炭化水素基、ケイ素含有基、ハロゲン原子、ハロゲン含有炭化水素基として、以下の基を例示することができる。
【0045】
炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20の飽和脂環式基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基等の炭素数1〜20の炭化水素基が例示される。
【0046】
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基等の直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、tert−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基等の分岐状アルキル基が例示される。アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜10である。
【0047】
炭素数3〜20の飽和脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基等の脂環式多環基が例示される。飽和脂環式基の炭素数は、好ましくは5〜11である。
【0048】
炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ビフェニル基等の非置換アリール基;o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、iso−プロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、キシリル基等のアルキルアリール基が例示される。アリール基の炭素数は、好ましくは6〜10である。
【0049】
炭素数7〜20のアラルキル基としては、ベンジル基、クミル基、α−フェネチル基、β−フェネチル基、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基、ネオフィル基等の非置換アラルキル基;o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、エチルベンジル基、n−プロピルベンジル基、iso−プロピルベンジル基、n−ブチルベンジル基、sec−ブチルベンジル基、tert−ブチルベンジル基等のアルキルアラルキル基が例示される。アラルキル基の炭素数は、好ましくは7〜12である。
【0050】
ケイ素含有基としては、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等のアルキルシリル基;ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等のアリールシリル基が例示される。アルキルシリル基の炭素数は1〜10が好ましい。アリールシリル基の炭素数は8〜18が好ましい。
【0051】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示される。
ハロゲン含有炭化水素基としては、上記炭化水素基が有する少なくとも1つの水素原子をハロゲン原子で置換してなる基が例示され、具体的には、トリフルオロメチル基等のフルオロアルキル基などのハロゲン置換アルキル基;ペンタフルオロフェニル基等のフルオロアリール基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、クロロナフチル基等のクロロアリール基、o−ブロモフェニル基、m−ブロモフェニル基、p−ブロモフェニル基、ブロモナフチル基等のブロモアリール基、o−ヨードフェニル基、m−ヨードフェニル基、p−ヨードフェニル基、ヨードナフチル基等のヨードアリール基などの上記非置換アリール基のハロゲン置換基;フルオロメチルフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基等のフルオロアルキルアリール基、ブロモメチルフェニル基、ジブロモメチルフェニル基等のブロモアルキルアリール基、ヨードメチルフェニル基、ジヨードメチルフェニル基等のヨードアルキルアリール基などの上記アルキルアリール基のハロゲン置換基;などのハロゲン置換アリール基;o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、クロロフェネチル基等のクロロアラルキル基、o−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、p−ブロモベンジル基、ブロモフェネチル基等のブロモアラルキル基、o−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、p−ヨードベンジル基、ヨードフェネチル基等のヨードアラルキル基などの上記非置換アラルキル基のハロゲン置換基などのハロゲン置換アラルキル基;等が例示される。
【0052】
式[1]において、R
2、R
3、R
6およびR
7を除く隣接した2つの置換基(例:R
8とR
9、R
9とR
10、R
10とR
11、R
11とR
12)が互いに結合して、これらの置換基が結合している環炭素とともに環を形成していてもよく、前記環形成は、分子中に2箇所以上存在してもよい。
【0053】
本明細書において、2つの置換基が互いに結合して形成された環(付加的な環)としては、例えば、脂環、芳香環、ヘテロ環が挙げられる。具体的には、シクロヘキサン環;ベンゼン環;水素化ベンゼン環;シクロペンテン環;フラン環、チオフェン環等のヘテロ環およびこれに対応する水素化ヘテロ環が挙げられ、好ましくはシクロヘキサン環;ベンゼン環および水素化ベンゼン環である。また、このような環構造は、環上にアルキル基等の置換基をさらに有していてもよい。
【0054】
R
1は3級炭化水素基であり、炭素数は好ましくは4〜20、より好ましくは4〜12である。3級炭化水素基としては、具体的には、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−アミル基等の3級アルキル基、1−メチルシクロヘキシル基等の3級シクロアルキル基、1−アダマンチル基等の3級脂環式多環基が例示でき、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−アミル基、1−アダマンチル基が好ましく、tert−ブチル基または1−アダマンチル基が特に好ましい。R
1が前記基であると好ましい理由としては、触媒構造の安定化に寄与し、生成するオレフィン重合体の立体規則性の向上へ繋がると考えられるからである。
【0055】
R
4およびR
5は水素原子であることが好ましい。R
4およびR
5が水素原子であると好ましい理由としては、触媒構造の安定化に寄与し、生成するオレフィン重合体の立体規則性の向上へ繋がると考えられるからである。
【0056】
R
12は炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基である。炭化水素基としては、上記で列挙した、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20の飽和脂環式基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基が例示され、好ましくは当該アルキル基および当該アリール基であり、より好ましくは当該アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基である。R
12が前記基であると好ましい理由としては、触媒構造が安定化し、生成するオレフィン重合体の分子量向上に繋がると考えられるからである。
【0057】
R
8〜R
11は、それぞれ独立に水素原子、または上記で列挙した炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数3〜20の飽和脂環式基であり、さらに好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、シクロヘキシル基である。ここで本発明における好ましい態様において、R
8およびR
9は炭化水素基であり、炭素数1〜20の炭化水素基であることがより好ましい。また、本発明における好ましい態様の1つにおいて、R
10およびR
11は水素原子である。また、本発明における別の好ましい態様として、R
8〜R
11のうち隣接した置換基が互いに結合して環を形成している場合も挙げられ、この態様において、R
9およびR
10が互いに結合してシクロペンタン環またはシクロヘキサン環等の脂環を形成していることも好ましい。これらの基が前記基であると好ましい理由としては、オレフィン重合体の安定性に寄与し、重合活性の向上に繋がると考えられるからである。
【0058】
R
13は、水素原子、ハロゲン原子、または上記で列挙した炭素数1〜3の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、フッ素原子または塩素原子であり、さらに好ましくは水素原子である。これらの基が前記基であると好ましい理由としては、触媒構造が安定化し、生成するオレフィン重合体の分子量向上に繋がると考えられるからである。
【0059】
〈M、Qおよびjについて〉
Mは第4族遷移金属、すなわちTi、ZrまたはHfであり、好ましくはZrまたはHfであり、特に好ましくはZrである。
【0060】
Qはハロゲン原子(例:フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭化水素基、炭素数10以下の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示す。Qが複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0061】
Qにおける炭化水素基としては、炭素数1〜10の炭化水素基が挙げられ、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましい。炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1,3−トリメチルブチル基、ネオペンチル基が例示され;炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基が例示される。Qにおける炭化水素基の炭素数は、5以下であることがより好ましい。
【0062】
炭素数10以下の中性の共役または非共役ジエンとしては、s−シス−またはs−トランス−η
4−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η
4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η
4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η
4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η
4−2,4−ヘキサジエン、s−シス−またはs−トランス−η
4−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η
4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η
4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエンが例示される。
【0063】
アニオン配位子としては、メトキシ、tert−ブトキシ等のアルコキシ基;フェノキシ等のアリールオキシ基;アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基;メシレート、トシレート等のスルホネート基が例示される。
【0064】
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン等の有機リン化合物;テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類が例示される。
Qの好ましい態様は、ハロゲン原子または炭素数1〜5のアルキル基である。
jは1〜4の整数であり、好ましくは2である。
【0065】
〈メタロセン化合物(A)の例示〉
メタロセン化合物(A)の具体例を示すが、特にこれによって本発明の範囲が限定されるものではない。なお、本発明においてメタロセン化合物(A)は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用して用いてもよい。
【0066】
説明する際の便宜上、メタロセン化合物(A)のMQ
j(金属部分)を除いたリガンド構造を、シクロペンタジエニル誘導体部分(α)とフルオレニル部分(β)との2つに分ける。それぞれの部分構造の具体例を表1および表2A,2Bに示す。
【0067】
なお、表1において「β」はフルオレニル部分(β)を表し、表2Aおよび2Bにおいて「Cp」はシクロペンタジエニル誘導体部分(α)を表す。
【0071】
上記表に従えば、リガンド構造がα1、β1の組合せからなるものであり、金属部分MQ
jがZrCl
2の場合は、下記式で表されるメタロセン化合物を例示している。
【0073】
MQ
jの具体的な例示としては、ZrCl
2、ZrBr
2、ZrMe
2、Zr(Me)(Et)、Zr(OTs)
2、Zr(OMs)
2、Zr(OTf)
2、TiCl
2、TiBr
2、TiMe
2、Ti(Me)(Et)、Ti(OTs)
2、Ti(OMs)
2、Ti(OTf)
2、HfCl
2、HfBr
2、HfMe
2、Hf(Me)(Et)、Hf(OTs)
2、Hf(OMs)
2、Hf(OTf)
2などが挙げられる。Meはメチル基、Etはエチル基、Tsはp−トルエンスルホニル基、Msはメタンスルホニル基、Tfはトリフルオロメタンスルホニル基を示す。
【0074】
なお、上記例示の化合物の「ジルコニウム」を「ハフニウム」や「チタニウム」に代えた化合物や、「ジクロリド」を「ジメチル」や「メチルエチル」等に代えたメタロセン化合物なども同様に、本発明のメタロセン化合物(A)に含まれる。
【0075】
〈メタロセン化合物(A)の合成〉
本発明で用いられるメタロセン化合物(A)は、例えば、以下の特許公報に記載された方法に準拠して合成することができる。具体的には、特開2000−212194号公報、特開2004−168744号公報、特開2004−189666号公報、特開2004−161957号公報、特開2007−302854号公報、特開2007−302853号公報、国際公開第01/027124号パンフレット等である。
【0076】
[化合物(B)]
本発明では、オレフィン重合用触媒の成分として、化合物(B)が用いられる。化合物(B)は、(b−1)有機アルミニウムオキシ化合物、(b−2)メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、および(b−3)有機アルミニウム化合物から選択される少なくとも1種である。これらの中では、有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)が好ましい。有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)は生成するオレフィン重合体を効率的に得る観点から好ましい。
【0077】
(有機アルミニウムオキシ化合物(b−1))
有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)としては、一般式[B1]で表される化合物および一般式[B2]で表される化合物等の従来公知のアルミノキサン、一般式[B3]で表される構造を有する修飾メチルアルミノキサン、一般式[B4]で表されるボロン含有有機アルミニウムオキシ化合物が例示される。
【0079】
式[B1]および[B2]において、Rは炭素数1〜10の炭化水素基、好ましくはメチル基であり、nは2以上、好ましくは3以上、より好ましくは10以上の整数である。本発明では、式[B1]および[B2]において、Rがメチル基であるメチルアルミノキサンが好適に使用される。
【0081】
式[B3]において、Rは炭素数2〜10の炭化水素基であり、mおよびnはそれぞれ独立に2以上の整数である。複数あるRは相互に同一でも異なっていてもよい。修飾メチルアルミノキサン[B3]は、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムとを用いて調製することができる。このような修飾メチルアルミノキサン[B3]は、一般にMMAO(modified methyl aluminoxane)と呼ばれている。MMAOは、具体的には米国特許第4960878号および米国特許第5041584号で挙げられる方法で調製することが出来る。
【0082】
また、東ソー・ファインケム社等からも、トリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムとを用いて調製された(すなわち、一般式[B3]においてRがイソブチル基である)修飾メチルアルミノキサンが、MMAOやTMAOという商品名で商業的に生産されている。
【0083】
MMAOは各種溶媒への溶解性および保存安定性が改善されたアルミノキサンである。
具体的には一般式[B1]または[B2]で表される化合物等のようなベンゼンに対して不溶性または難溶性の化合物とは異なり、MMAOは脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素および芳香族炭化水素に溶解するものである。
【0085】
式[B4]において、R
cは炭素数1〜10の炭化水素基である。複数あるR
dはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10の炭化水素基である。本発明では、後述するような高温においてもオレフィン重合体を製造することができる。したがって、本発明の特徴の一つに、特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性または難溶性の有機アルミニウムオキシ化合物をも使用できることが挙げられる。
【0086】
また、特開平2−167305号公報に記載されている有機アルミニウムオキシ化合物、特開平2−24701号公報、特開平3−103407号公報に記載されている2種以上のアルキル基を有するアルミノキサンなども好適に使用できる。
【0087】
なお、上記の「ベンゼン不溶性または難溶性の」有機アルミニウムオキシ化合物とは、60℃のベンゼンに溶解する当該化合物の溶解量が、Al原子換算で通常は10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは2重量%以下である、ベンゼンに対して不溶性または難溶性である有機アルミニウムオキシ化合物をいう。
本発明において、上記例示の有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)は、単独で用いてもよく2種以上を併用して用いてもよい。
【0088】
(架橋メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(b−2))
架橋メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(b−2)(以下、「イオン性化合物(b−2)」ともいう。)としては、特表平1−501950号公報、特表平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、特開2004−51676号公報、米国特許第5321106号等に記載された、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物が例示される。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も例示される。これらの中では、イオン性化合物(b−2)としては、一般式[B5]で表される化合物が好ましい。
【0090】
式[B5]において、R
e+としては、H
+、オキソニウムカチオン、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンが例示される。R
f、R
g、R
hおよびR
iはそれぞれ独立に有機基、好ましくはアリール基、ハロゲン置換アリール基を示す。
【0091】
上記カルベニウムカチオンとしては、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオン等の三置換カルベニウムカチオンが例示される。
【0092】
アンモニウムカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n−プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオンが例示される。
【0093】
ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオンが例示される。R
e+としては、上記例示の中では、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンが好ましく、トリフェニルカルベニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
【0094】
1.Re+がカルベニウムカチオンの場合(カルベニウム塩)
カルベニウム塩としては、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(4−メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが例示される。
【0095】
2.Re+がアンモニウムカチオンの場合(アンモニウム塩)
アンモニウム塩としては、トリアルキルアンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩が例示される。
【0096】
トリアルキルアンモニウム塩としては、具体的には、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(p−トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(o−トリル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(o−トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(p−トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(o−トリル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムが例示される。
【0097】
N,N−ジアルキルアニリニウム塩としては、具体的には、N,N−ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが例示される。
【0098】
ジアルキルアンモニウム塩としては、具体的には、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートが例示される。
イオン性化合物(b−2)は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用して用いてもよい。
【0099】
(有機アルミニウム化合物(b−3))
有機アルミニウム化合物(b−3)としては、一般式[B6]で表される有機アルミニウム化合物、一般式[B7]で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物が例示される。
【0100】
R
amAl(OR
b)
nH
pX
q・・・[B6]
式[B6]において、R
aおよびR
bはそれぞれ独立に炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。
【0101】
M
2AlR
a4・・・[B7]
式[B7]において、M
2はLi、NaまたはKであり、複数あるR
aはそれぞれ独立に炭素数1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基である。
【0102】
有機アルミニウム化合物[B6]としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のトリn−アルキルアルミニウム;トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリ2−メチルブチルアルミニウム、トリ3−メチルヘキシルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウム等のトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウム等のトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウム等のトリアリールアルミニウム;ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド;一般式(i−C
4H
9)
xAl
y(C
5H
10)
z(式中、x、yおよびzは正の数であり、z≦2xである。)などで表されるイソプレニルアルミニウム等のアルケニルアルミニウム;イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド等のアルキルアルミニウムアルコキシド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシド等のアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;一般式R
a2.5Al(OR
b)
0.5(式中、R
aおよびR
bは式[B6]中のR
aおよびR
bと同義である。)で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジtert−ブチル−4−メチルフェノキシド)等のアルキルアルミニウムアリーロキシド;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミド等のアルキルアルミニウムセスキハライド;エチルアルミニウムジクロリド等のアルキルアルミニウムジハライド等の部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリド等のジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリド等のアルキルアルミニウムジヒドリド等の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミド等の部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム;が例示される。
【0103】
錯アルキル化物[B7]としては、LiAl(C
2H
5)
4、LiAl(C
7H
15)
4が例示される。また、錯アルキル化物[B7]に類似する化合物も使用することができ、窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物が例示される。このような化合物としては、(C
2H
5)
2AlN(C
2H
5)Al(C
2H
5)
2が例示される。
【0104】
有機アルミニウム化合物(b−3)としては、入手が容易な点から、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。また、有機アルミニウム化合物(b−3)は、1種で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0105】
[担体(C)]
本発明では、オレフィン重合用触媒の成分として、担体(C)を用いてもよい。担体(C)は、無機化合物または有機化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体である。
【0106】
(無機化合物)
担体(C)を構成しうる無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土鉱物、粘土(通常は該粘土鉱物を主成分として構成される。)、イオン交換性層状化合物(大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。)が例示される。多孔質酸化物としては、SiO
2、Al
2O
3、MgO、ZrO、TiO
2、B
2O
3、CaO、ZnO、BaO、ThO
2;これらの酸化物を含む複合物または混合物が例示される。複合物または混合物としては、天然または合成ゼオライト、SiO
2−MgO、SiO
2−Al
2O
3、SiO
2−TiO
2、SiO
2−V
2O
5、SiO
2−Cr
2O
3、SiO
2−TiO
2−MgOが例示される。これらの中では、SiO
2およびAl
2O
3の何れか一方または双方の成分を主成分とする多孔質酸化物が好ましい。
【0107】
多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、粒径が好ましくは10〜300μm、より好ましくは20〜200μmの範囲にあり;比表面積が好ましくは50〜1000m
2/g、より好ましくは100〜700m
2/gの範囲にあり;細孔容積が好ましくは0.3〜3.0cm
3/gの範囲にある。このような多孔質酸化物は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。無機ハロゲン化物としては、MgCl
2、MgBr
2、MnCl
2、MnBr
2が例示される。無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコール等の溶媒に上記無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させた成分を用いることもできる。
【0108】
粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。なお、イオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有されるイオンが交換可能な化合物である。
【0109】
具体的には、粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、合成雲母等のウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ヘクトライト、テニオライト、ハロイサイトが例示され;イオン交換性層状化合物としては、六方最密パッキング型、アンチモン型、CdCl
2型、CdI
2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物が例示される。具体的には、イオン交換性層状化合物としては、α−Zr(HAsO
4)
2・H
2O、α−Zr(HPO
4)
2、α−Zr(KPO
4)
2・3H
2O、α−Ti(HPO
4)
2、α−Ti(HAsO
4)
2・H
2O、α−Sn(HPO
4)
2・H
2O、γ−Zr(HPO
4)
2、γ−Ti(HPO
4)
2、γ−Ti(NH
4PO
4)
2・H
2O等の多価金属の結晶性酸性塩が例示される。
【0110】
粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理としては、具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理が例示される。
【0111】
また、イオン交換性層状化合物は、そのイオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した層状化合物としてもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常はピラーと呼ばれる。例えば、層状化合物の層間に下記金属水酸化物イオンをインターカレーションした後に加熱脱水することにより、層間に酸化物支柱(ピラー)を形成することができる。なお、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。
【0112】
インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl
4、ZrCl
4等の陽イオン性無機化合物;Ti(OR)
4、Zr(OR)
4、PO(OR)
3、B(OR)
3等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基など);[Al
13O
4(OH)
24]
7+、[Zr
4(OH)
14]
2+、[Fe
3O(OCOCH
3)
6]
+等の金属水酸化物イオンが例示される。これらのゲスト化合物は、単独で用いてもよく2種以上を併用して用いてもよい。
【0113】
また、ゲスト化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)
4、Al(OR)
3、Ge(OR)
4等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)を加水分解および重縮合して得た重合物、SiO
2等のコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。
無機化合物の中では、粘土鉱物および粘土が好ましく、モンモリロナイト群、バーミキュライト、ヘクトライト、テニオライトおよび合成雲母が特に好ましい。
【0114】
(有機化合物)
担体(C)を構成しうる有機化合物としては、粒径が10〜300μmの範囲にある顆粒状または微粒子状の固体が例示される。具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2〜14のα−オレフィンを主成分として合成される(共)重合体;ビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として合成される(共)重合体;これら(共)重合体の変成体が例示される。
【0115】
[有機化合物成分(D)]
本発明では、オレフィン重合用触媒の成分として、有機化合物成分(D)を用いてもよい。有機化合物成分(D)は、必要に応じて、α−オレフィンの重合反応における重合性能およびオレフィン重合体の物性を向上させる目的で使用される。有機化合物成分(D)としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物、スルホン酸塩が例示される。
【0116】
〈各成分の使用法および添加順序〉
オレフィン重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。以下では、遷移金属化合物(メタロセン化合物)(A)、化合物(B)、担体(C)および有機化合物成分(D)を、それぞれ「成分(A)〜(D)」ともいう。
【0117】
(1)成分(A)を単独で重合器に添加する方法。
(2)成分(A)および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(3)成分(A)を成分(C)に担持した触媒成分と、成分(B)とを任意の順序で重合器に添加する方法。
(4)成分(B)を成分(C)に担持した触媒成分と、成分(A)とを任意の順序で重合器に添加する方法。
(5)成分(A)と成分(B)とを成分(C)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
(6)成分(A)、成分(B)および成分(D)を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0118】
上記(2)〜(6)の各方法においては、各触媒成分の少なくとも2種は予め接触されていてもよい。成分(B)が担持されている上記(4)、(5)の各方法においては、必要に応じて担持されていない成分(B)を、任意の順序で添加してもよい。この場合、成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。また、成分(C)に成分(A)が担持された固体触媒成分、成分(C)に成分(A)および成分(B)が担持された固体触媒成分は、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに触媒成分が担持されていてもよい。
【0119】
〔1−ブテン系(共)重合体の製造方法〕
本発明の1−ブテン系(共)重合体の製造方法は、本発明に係るオレフィン重合用触媒の存在下で、55℃以上200℃以下の重合温度かつ0.1MPaG以上5.0MPaG以下の重合圧力条件下において、少なくとも1−ブテンを含むモノマーを(共)重合する工程を有する。該製造方法は、1−ブテンと必要に応じてその他のモノマーとを(共)重合する工程を含むか、あるいは、1−ブテンと、炭素数2以上のα−オレフィン(ただし、1−ブテンを除く)と、必要に応じてその他のモノマーとを(共)重合する工程を含むことが好ましい。ここで「(共)重合」とは、単独重合および共重合を総称する意味で用いる。また「オレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを(共)重合する」とは、上記(1)〜(6)の各方法のように、任意の方法でオレフィン重合用触媒の各成分を重合器に添加してオレフィンを(共)重合する態様を包含する。
【0120】
(α−オレフィン)
本発明の製造方法において、重合反応に供給される炭素数2以上、好ましくは炭素数2〜20のα−オレフィン(ただし1−ブテンを除く)としては、直鎖状または分岐状のα−オレフィンが挙げられる。直鎖状または分岐状のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−イコセンが挙げられる。中でも、炭素数2〜10のα−オレフィンが好ましく、エチレンおよびプロピレンが特に好ましい。α−オレフィンは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
α−オレフィンとしてプロピレンを用いる場合、必要に応じてエチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィン(ただし1−ブテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンAを併用することができる。プロピレンとともに用いることのできるオレフィンAは、エチレンおよび炭素数4〜10のα−オレフィン(ただし1−ブテンを除く)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、例えば、エチレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンが挙げられる。中でも、エチレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、エチレンであることがさらに好ましい。
【0122】
本発明の製造方法では、1−ブテンの単独重合、あるいは、1−ブテンと上記炭素数2以上のα−オレフィン(ただし、1−ブテンを除く)と必要に応じて用いられるその他のモノマーとの共重合が好適に行われるが、共重合の場合は、1−ブテンと、プロピレンとの共重合、1−ブテンと、プロピレンと、後述するその他のモノマーとの共重合、1−ブテンと、エチレンとの共重合、1−ブテンと、エチレンと、その他のモノマーとの共重合、1−ブテンと、プロピレンと、エチレンとの共重合、または1−ブテンと、プロピレンと、エチレンと、その他のモノマーとの共重合が好ましく、1−ブテンおよびプロピレンの二元共重合、1−ブテンおよびエチレンの二元共重合、または1−ブテン、プロピレンおよびエチレンの三元共重合が最も好ましい。
【0123】
1−ブテンと、必要に応じて用いられるエチレンおよび/またはプロピレンとの使用量比は、プロピレンと、エチレン、プロピレン、またはエチレンおよびプロピレンの合計とのモル比として、通常1:1000〜1000:1、好ましくは1:100〜100:1である。
【0124】
(その他のモノマー)
本発明の製造方法では、1−ブテンと共に、環状オレフィン、極性基含有モノマー、末端水酸基化ビニル化合物、芳香族ビニル化合物などを反応系に共存させて重合を進めることもできる。また、ポリエンを併用することも可能である。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ビニルシクロヘキサン等のその他の成分を共重合してもよい。これらのその他のモノマーは、1−ブテン100質量部に対して、例えば50質量部以下、好ましくは40質量部以下の量で用いることができる。これらのその他のモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0125】
環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンが挙げられる。
【0126】
極性基含有モノマーとしては、例えば、
アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等のα,β−不飽和カルボン酸、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等の金属塩;
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル等のα,β−不飽和カルボン酸エステル;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステル等の不飽和グリシジル;
が挙げられる。
【0127】
末端水酸基化ビニル化合物としては、例えば、水酸化−1−ブテン、水酸化−1−ペンテン、水酸化−1−ヘキセン、水酸化−1−オクテン、水酸化−1−デセン、水酸化−1−ウンデセン、水酸化−1−ドデセン、水酸化−1−テトラデセン、水酸化−1−ヘキサデセン、水酸化−1−オクタデセン、水酸化−1−エイコセン等の直鎖状の末端水酸基化ビニル化合物;水酸化−3−メチル−1−ブテン、水酸化−3−メチル−1−ペンテン、水酸化−4−メチル−1−ペンテン、水酸化−3−エチル−1−ペンテン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ペンテン、水酸化−4−メチル−1−ヘキセン、水酸化−4,4−ジメチル−1−ヘキセン、水酸化−4−エチル−1−ヘキセン、水酸化−3−エチル−1−ヘキセン等の分岐状の末端水酸基化ビニル化合物が挙げられる。
【0128】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等のモノもしくはポリアルキルスチレン;メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、ジビニルベンゼン等の官能基含有スチレン誘導体;3−フェニルプロピレン、4−フェニルプロピレン、α−メチルスチレンが挙げられる。
【0129】
ポリエンとしては、ジエンおよびトリエンから選択されることが好ましい。ポリエンを用いる場合、重合反応に供給される全オレフィンおよびモノマーに対して、ポリエンを0.0001〜1モル%の範囲内で用いることも好ましい態様である。
【0130】
ジエンとしては、例えば、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン等のα,ω−非共役ジエン;エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン等の非共役ジエン;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンが挙げられる。これらの中でも、α,ω−非共役ジエンや、ノルボルネン骨格を有するジエンが好ましい。
【0131】
トリエンとしては、例えば、6,10-ジメチル-1,5,9-ウンデカトリエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、6,9-ジメチル-1,5,8-デカトリエン、6,8,9-トリメチル-1,5,8-デカトリエン、6-エチル-10-メチル-1,5,9-ウンデカトリエン、4-エチリデン-1,6,-オクタジエン、7-メチル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン(EMND)、7-メチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、7-エチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、6,7-ジメチル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、6,7-ジメチル-4-エチリデン-1,6-ノナジエン、4-エチリデン-1,6-デカジエン、7-メチル-4-エチリデン-1,6-デカジエン、7-メチル-6-プロピル-4-エチリデン-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-1,7-ノナジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカンジエン等の非共役トリエン;1,3,5-ヘキサトリエン等の共役トリエンが挙げられる。これらの中でも、末端に二重結合を有する非共役トリエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン(EMND)が好ましい。
【0132】
ジエンまたはトリエンはそれぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ジエンとトリエンとを組み合わせて用いてもよい。ポリエンの中でも、特にα,ω−非共役ジエンや、ノルボルネン骨格を有するジエンが好ましい。
【0133】
((共)重合方法)
本発明では、重合は、溶液重合、懸濁重合等の液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。不活性炭化水素媒体は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、重合に供給されうる液化オレフィン自身を溶媒として用いる、いわゆるバルク重合法を用いることもできる。
【0134】
[オレフィン重合用触媒の構成]
本発明に係るオレフィン重合用触媒を用いて(共)重合を行うに際して、オレフィン重合用触媒を構成しうる各成分の使用量は以下のとおりである。また、本発明に係るオレフィン重合用触媒において、各成分の含有量を以下のとおりに設定することができる。
【0135】
(1)オレフィン重合用触媒を用いて、(共)重合を行うに際して、メタロセン化合物(A)は、反応容積1リットル当り、通常は10
-9〜10
-1モル、好ましくは10
-8〜10
-2モルとなるような量で用いられる。
【0136】
(2)オレフィン重合用触媒の成分として有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)を用いる場合には、化合物(b−1)は、化合物(b−1)中のアルミニウム原子(Al)とメタロセン化合物(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔Al/M〕が、通常は0.01〜5000、好ましくは0.05〜2000となるような量で用いられる。
【0137】
(3)オレフィン重合用触媒の成分としてイオン性化合物(b−2)を用いる場合には、化合物(b−2)は、化合物(b−2)とメタロセン化合物(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(b−2)/M〕が、通常は1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
【0138】
(4)オレフィン重合用触媒の成分として有機アルミニウム化合物(b−3)を用いる場合には、化合物(b−3)は、化合物(b−3)とメタロセン化合物(A)中の全遷移金属原子(M)とのモル比〔(b−3)/M〕が、通常は10〜5000、好ましくは20〜2000となるような量で用いられる。
【0139】
(5)オレフィン重合用触媒の成分として有機化合物成分(D)を用いる場合には、化合物(B)が有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)であるときは、有機化合物成分(D)と化合物(b−1)とのモル比〔(D)/(b−1)〕が、通常は0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で;化合物(B)がイオン性化合物(b−2)であるときは、有機化合物成分(D)と化合物(b−2)とのモル比〔(D)/(b−2)〕が、通常は0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で;化合物(B)が有機アルミニウム化合物(b−3)であるときは、有機化合物成分(D)と化合物(b−3)とのモル比〔(D)/(b−3)〕が、通常は0.01〜2、好ましくは0.005〜1となるような量で用いられる。
【0140】
本発明の製造方法において、オレフィンの重合温度は、通常55〜200℃、好ましくは55〜180℃であり、特に好ましくは58〜150℃(換言すれば、特に好ましくは工業化可能な温度である。);重合圧力は、通常0.1MPaG以上5.0MPaG以下、好ましくは0.1MPaG以上4.0MPaG以下、さらに好ましくは0.5MPaG以上4.0MPaG以下である。重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる二段以上に分けて行うこともできる。水素存在下で重合することも好ましい。得られる1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体の分子量は、重合系に水素等を存在させるか、重合温度を変化させるか、または成分(B)の使用量により調節することができる。
【0141】
本発明の製造方法は、工業的製法において有利な高温条件下であっても、高い触媒活性を維持しつつ、高い分子量を有する1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体を、効率よく、経済的かつ安定して、高い生産性をもって製造することが可能である。
【0142】
特に水素は、触媒の重合活性を向上させる効果や、重合体の分子量を増加または低下させる効果が得られることがあり、好ましい添加物であるといえる。系内に水素を添加する場合、その量は1−ブテン1モルあたり0.00001〜1000NL程度が適当である。系内の水素濃度は、水素の供給量を調整する以外にも、水素を生成または消費する反応を系内で行う方法や、膜を利用して水素を分離する方法、水素を含む一部のガスを系外に放出することによっても調整することができる。
【0143】
本発明の製造方法は、特に水素の存在下で、活性が飛躍的に向上する。すなわち、本発明の製造方法によれば、高分子量体の製造が容易であるため、公知の製造方法および公知の触媒に比べて、同一分子量において、大幅に水素添加することが可能となる。そのため、特に水素の存在下にて高い重合活性が得られ、1−ブテン系(共)重合体の生産性が、飛躍的に向上する。
【0144】
このことを踏まえると、本発明に係る1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体の製造方法における1つの態様では、オレフィン重合活性が、好ましくは100kg−ポリマー/mmol-M/hr以上50000kg−ポリマー/mmol-M/hr以下であり、より好ましくは130kg−ポリマー/mmol-M/hr以上10000kg−ポリマー/mmol-M/hr以下であり、特に好ましくは150kg−ポリマー/mmol-M/hr以上10000kg−ポリマー/mmol-M/hrである。なお、Mは、式(I)中の第4族遷移金属を表す。上記範囲にある1−ブテン系(共)由来の構成単位を含むオレフィン重合体は第4族金属低減の観点から好ましい。本発明の製造方法では、上記1−ブテン(B)と炭素数2以上のα−オレフィン(但し、1−ブテンを除く)(O)との供給比、水素の供給量(H)および上記オレフィン重合活性を満たして、水素の存在下で共重合することが、より好ましい。
【0145】
本発明の製造方法で得られた1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体に対しては、上記方法で合成した後に、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行ってよい。
【0146】
〔1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体〕
本発明によれば、特定の構造を有するメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、1−ブテンのみ、または1−ブテンと、炭素数2以上のα−オレフィン(ただし1−ブテンを除く)および/またはその他のモノマーとを(共)重合することで;好ましくは、1−ブテンの単独重合により、1−ブテンとエチレンとを共重合することにより、または、1−ブテンと、プロピレンと、必要に応じてエチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィン(ただし1−ブテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のオレフィンAとを共重合することにより、1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体を、高分子量で、効率よく、経済的かつ安定して、高い生産性をもって製造することができる。
【0147】
以下、1−ブテンを用いてなる単独重合体、1−ブテンとエチレンとを用いて得られた1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン共重合体、またはプロピレンと1−ブテンを用いて得られた1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン共重合体、例えば、プロピレン・1−ブテン共重合体またはプロピレンと1−ブテンと前記2種以外のモノマーとの共重合体の場合の物性を説明する。
【0148】
本発明において、重合反応に供給されるオレフィンは、少なくとも一部は1−ブテンであり、必要に応じて、プロピレン、エチレンおよび炭素数4〜10のα−オレフィン(ただし1−ブテンは除く)から選ばれる1種以上のオレフィンや、その他のモノマーを併用することが出来る。1−ブテンとともに用いるオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンまたは1−オクテンであることがより好ましく、オレフィンの少なくとも一種がエチレン、プロピレンであることが特に好ましい。
【0149】
本発明の製造方法にて得られる1−ブテン系共重合体の一態様1としては、少なくとも1−ブテンおよびプロピレンと、必要に応じて炭素数2以上のα−オレフィン(ただし、1−ブテンおよびプロピレンを除く)と、必要に応じてその他のモノマーとを共重合して得られる1−ブテン系共重合体(1)である。該共重合体は、少なくとも1−ブテン由来の構成単位を含み、エチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィン(1−ブテンを含む)由来の構成単位の含量を合計で8モル%以上50モル%以下の範囲で含み、プロピレン由来の構成単位を50モル%以上92モル%以下の範囲で含む。ただし、エチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィン(1−ブテンを含む)由来の構成単位の含量とプロピレン由来の構成単位の含量との合計を100モル%とする。該構成単位が前記範囲にある1−ブテン系共重合体は、成型加工性に優れる。
【0150】
上記一態様1の1−ブテン系共重合体(1)のDSC(示差走査熱量測定)により求められる融点(Tm)は、50℃以上110℃未満にあるか、またはDSCにて融点ピークが観測されない。DSCにより求められる融点(Tm)が55℃以上110℃未満にあるか、またはDSCにて融点ピークが観測されないことがより好ましく、60℃以上110℃未満であるか、またはDSCにて融点ピークが観測されないことが特に好ましい。ここで、融点が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。融点(Tm)が前記範囲にある1−ブテン系共重合体をフィルム等の成形体に応用した場合は、低温ヒートシール性に優れる。
【0151】
該1−ブテン系共重合体の一態様1の中で好ましい態様の一つとしては、該1−ブテン系共重合体が、少なくとも1−ブテンおよびプロピレンと、必要に応じてその他のモノマーを共重合して得られ、1−ブテン由来の構成単位(B)とプロピレン由来の構成単位(P)との合計含有量を100モル%とすると、10mol%≦B≦49mol%、かつ51mol%≦P≦90mol%であり、好ましくは15mol%≦B≦48mol%、かつ52mol%≦P≦85mol%であり、より好ましくは20mol%≦B≦47mol%、かつ53mol%≦P≦80mol%である。1−ブテン由来の構成単位およびプロピレン由来の構成単位が前記範囲にある1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン共重合体は、成型加工性に優れる。
【0152】
該好ましい態様の1−ブテン系共重合体の135℃デカリン中における極限粘度[η]は、1.0(dl/g)≦[η]≦10(dl/g)であることが好ましく、1.0(dl/g)≦[η]≦9(dl/g)であることがより好ましく、1.0(dl/g)≦[η]≦7(dl/g)であることが特に好ましい。また、前記極限粘度[η]の好ましい下限値は、1.3dl/gである。前記範囲にある1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン共重合体は、成型加工性に優れる。
【0153】
本発明の製造方法にて得られる1−ブテン系共重合体の一態様1の中で他の好ましい態様としては、該1−ブテン系共重合体が、少なくとも1−ブテン、プロピレンおよびエチレンと、必要に応じてその他のモノマーを共重合して得られる共重合体が挙げられる。該1−ブテン系共重合体は、1−ブテン由来の構成単位(B)とプロピレン由来の構成単位(P)とエチレン由来の構成単位(E)との合計含有量を100モル%とすると、
4mol%≦B≦45mol%、51mol%≦P≦92mol%、かつ、4mol%≦E≦45mol%が好ましく、
5mol%≦B≦44mol%、51mol%≦P≦90mol%、かつ、5mol%≦E≦44mol%がより好ましく、
6mol%≦B≦43mol%、51mol%≦P≦88mol%、かつ、6mol%≦E≦43mol%がさらに好ましく、
7mol%≦B≦42mol%、51mol%≦P≦86mol%、かつ、7mol%≦E≦42mol%の時が特に好ましい。
該構成単位が前記範囲にある1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン共重合体は、成型加工性に優れる。
【0154】
上記一態様1の中で他の好ましい態様である1−ブテン由来の構成単位とプロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位とを含むオレフィン共重合体において、135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.3(dl/g)≦[η]≦10(dl/g)であることが、好ましく、1.4(dl/g)≦[η]≦9(dl/g)であることがより好ましく、1.5 (dl/g)≦[η]≦7(dl/g)であることが特に好ましい。前記範囲にある1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体は、成型加工性に優れる。
【0155】
本発明の製造方法にて得られる1−ブテン系(共)重合体の一態様2としては、少なくとも1−ブテンと、必要に応じて炭素数2以上のα−オレフィン(ただし、1−ブテンを除く)と、必要に応じてその他のモノマーを(共)重合して得られる1−ブテン系(共)重合体(2)である。該(共)重合体は、少なくとも1−ブテン由来の構成単位を含み、1−ブテン由来の構成単位の含量を50モル%を超えて100モル%以下の範囲で含み、炭素数2以上のα−オレフィン(ただし、1−ブテンを除く)由来の構成単位を合計で0モル%以上50モル%未満の範囲で含む。ただし、1−ブテン由来の構成単位の含量と炭素数2以上のα−オレフィン(ただし、1−ブテンを除く)由来の構成単位の含量との合計を100モル%とする。該構成単位が前記範囲にある1−ブテン系(共)重合体は、成型加工性に優れる。
【0156】
上記一態様2の1−ブテン系(共)重合体(2)のDSC(示差走査熱量測定)により求められる融点(Tm)は、特に限定されないが、50℃以上130℃未満にあるか、またはDSCにて融点ピークが観測されないが好ましく、55℃以上130℃未満にあるか、またはDSCにて融点ピークが観測されないことがより好ましく、60℃以上130℃未満であるか、またはDSCにて融点ピークが観測されないことが特に好ましい。ここで、融点が観測されないとは、−150〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。融点(Tm)が前記範囲にある1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体をフィルム等の成形体に応用した場合は、低温ヒートシール性に優れる。
【0157】
該1−ブテン系(共)重合体の一態様2の中で好ましい態様の一つとしては、該1−ブテン系(共)重合体が、1−ブテンの単独重合体である。
また、該1−ブテン系(共)重合体の一態様2の中で好ましい態様の他の一つとしては、該1−ブテン系共重合体が、少なくとも1−ブテンおよびプロピレンと、必要に応じてその他のモノマーとを共重合して得られ、1−ブテン由来の構成単位(B)とプロピレン由来の構成単位(P)との合計含有量を100モル%とすると、51mol%≦B≦95mol%、かつ5mol%≦P≦49mol%であり、好ましくは55mol%≦B≦90mol%、かつ10mol%≦P≦45mol%であり、より好ましくは60mol%≦B≦88mol%、かつ12mol%≦P≦40mol%である。1−ブテン由来の構成単位およびプロピレン由来の構成単位が前記範囲にある1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン共重合体は、成型加工性に優れる。
【0158】
該好ましい態様の1−ブテン系共重合体の135℃デカリン中における極限粘度[η]は、1.0(dl/g)≦[η]≦10(dl/g)であることが好ましく、1.0(dl/g)≦[η]≦9(dl/g)であることがより好ましく、1.0(dl/g)≦[η]≦7(dl/g)であることが特に好ましい。また、前記極限粘度[η]の好ましい下限値は、1.3dl/gである。前記範囲にある1−ブテン系共重合体は、成型加工性に優れる。
【0159】
該1−ブテン系(共)重合体の一態様2の中で好ましい態様のもう一つとしては、該1−ブテン系共重合体が、少なくとも1−ブテンおよびエチレンと、必要に応じてその他のモノマーとを共重合して得られ、1−ブテン由来の構成単位(B)とエチレン由来の構成単位(E)との合計含有量を100モル%とすると、51mol%≦B≦95mol%、かつ5mol%≦E≦49mol%であり、好ましくは55mol%≦B≦95mol%、かつ5mol%≦E≦45mol%であり、より好ましくは60mol%≦B≦95mol%、かつ5mol%≦E≦40mol%である。1−ブテン由来の構成単位およびエチレン由来の構成単位が前記範囲にある1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン共重合体は、成型加工性に優れる。
【0160】
該好ましい態様の1−ブテン系共重合体の135℃デカリン中における極限粘度[η]は、1.3(dl/g)≦[η]≦10(dl/g)であることが好ましく、1.3(dl/g)≦[η]≦9(dl/g)であることがより好ましく、1.3(dl/g)≦[η]≦7(dl/g)であることが特に好ましい。前記範囲にある1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン共重合体は、成型加工性に優れる。
【0161】
また、本発明の製造方法によれば、工業的製法において有利な高温条件下においても、融点がある程度高く、分子量が高い、1−ブテン系(共)重合体を、効率よく、経済的かつ安定して、高い生産性をもって、好適に得ることもできる。
【0162】
本発明の1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体において、分子量には特に制限は無いが、ASTM D1238(230℃、荷重2.16kg)に従って測定したメルトマスフローレイト(MFR)は、0.1(g/10分)≦MFR≦150(g/10分)の範囲が好ましく、より好ましくは0.1(g/10分)≦MFR≦100(g/10分)、さらに好ましくは1.0(g/10分)≦MFR≦50(g/10分)、特に好ましくは2.0(g/10分)≦MFR≦30(g/10分)の範囲である。前記範囲にある1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体は、成型加工性に優れる。
【実施例】
【0163】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
まず、1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体の物性・性状を測定する方法について述べる。
【0164】
〔融点(Tm)、融解熱(ΔH)、結晶化温度(Tc)〕
1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体の融点(Tm)あるいは結晶化温度(Tc)は、パーキンエルマー社製DSC Pyris1またはDSC7を用い、以下のようにして測定した。
【0165】
窒素雰囲気下(20mL/min)、試料(約5mg)を(1)230℃まで昇温して230℃で10分間保持し、(2)10℃/分で30℃まで冷却して30℃で1分間保持した後、(3)10℃/分で230℃まで昇温させた。前記(3)の昇温過程における結晶溶融ピークのピーク頂点から融点(Tm)を、前記(2)の降温過程における結晶化ピークのピーク頂点から結晶化温度(Tc)を算出した。なお、実施例および比較例に記載した1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体において、複数の結晶溶融ピークが観測された場合(例えば、低温側ピークTm1、高温側ピークTm2)には、高温側ピークを1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体の融点(Tm)と定義した。融解熱(ΔH)は結晶溶融ピークと溶融曲線の面積を測定し計算した。
【0166】
また、『結晶安定化後』と記載したデータは、上記と同様にパーキンエルマー社製DSC Pyris1またはDSC7を用い、窒素雰囲気下(20mL/min)、試料(約5mg)を220℃まで昇温して220℃で10分間保持した後に室温まで冷却し、室温で10日間以上経過させた後、融点(Tm)および融解熱(ΔH)を以下のようにして測定した。
【0167】
窒素雰囲気下(20mL/min)、試料(約5mg)を(1)20℃/分で室温から−20℃まで冷却して−20℃で10分間保持し、(2)20℃/分で200℃まで昇温させた。この(2)の昇温過程における結晶溶融ピークのピーク頂点から融点(Tm)を算出し、融解熱(ΔH)は溶融曲線の面積を測定し計算した。
【0168】
〔極限粘度[η]〕
1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体の極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定される値である。すなわち、1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体の造粒ペレット(約20mg)をデカリン溶媒(15mL)に溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒(5mL)を追加して希釈した後、前記と同様に比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体の濃度(C)を0に外挿したときのηsp/Cの値を1−ブテン由来の構成単位を含むオレフィン(共)重合体の極限粘度[η]とする。
極限粘度[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0169】
〔重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)〕
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC-2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムはTSKgel GNH6-HT:2本およびTSKgel GNH6-HTL:2本であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)と酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%とを用い、前記移動相は1.0mL/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mLとし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×10
6については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×10
6についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。分子量分布および各種平均分子量は、汎用校正の手順に従い、ポリスチレン分子量換算として計算した。
【0170】
〔エチレン含量(E)、プロピレン含量(P)、1−ブテン含量(B)の測定〕
ブルカー・バイオスピン製AVANCEIII cryo−500型核磁気共鳴装置を用い、Macromolecules,10(1977)p.773−778.およびMacromolecules,37(2004)p.2471−2477.に記載の方法を参考に
13C−NMRにて算出した。
【0171】
あるいは、日本分光社製フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−610を用い、プロピレンのメチル基に基づく横揺れ振動1155cm
-1付近の面積とC−H伸縮振動による倍音吸収4325cm
-1付近の吸光度を求め、その比から検量線(
13C−NMRにて標定した標準試料を用い作成)により算出した。
【0172】
〔目的物の同定〕
合成例で得られたメタロセン化合物の構造は、270MHz
1H−NMR(日本電子GSH−270)およびFD−MS(日本電子SX−102A)を用いて決定した。
【0173】
〔メタロセン化合物の合成例〕
本実施例で用いるメタロセン化合物は、以下の特許公報に記載された方法でも合成できる。具体的には、特開2000−212194号公報、特開2004−168744号公報、特開2004−189666号公報、特開2004−161957号公報、特開2007−302854号公報、特開2007−302853号公報、国際公開第01/027124号パンフレット等である。
【0174】
以下の合成例では、後述する実施例および比較例で用いられるメタロセン化合物について説明する。
[合成例1]
メタロセン化合物(a)の合成
メタロセン化合物(a):
【0175】
【化10】
【0176】
[合成例1−1]
配位子(a−1)の合成
窒素雰囲気下、フラスコに2,3,6,7−テトラメチル−9H−フルオレン 0.64g(2.88mmol),tert−ブチルメチルエーテル 60mlを入れ、−10℃に冷却しながらn−ブチルリチウム 1.89ml(ヘキサン溶液;3.02mmol)を添加した。50℃、2時間撹拌し、再び−10℃まで冷却させたのち、5-(tert-ブチル)-1,1,3-トリメチル-1,2-ジヒドロペンタレン 0.70g(3.45mmol)を添加し、50℃、4時間撹拌した。室温に戻した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて、有機層を分離し、水層をヘキサンで抽出した。先の有機層と合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、メタノール/ジクロロメタンで結晶を析出させた。得られた結晶をメタノール洗浄し、目的物460 mg(収率38%)得た。FD−MS測定で目的物の生成を確認した。
FD−MS:m/Z=424.7(M
+)
なお、以降の工程において、このようにして得られた化合物を配位子(a−1)として用いた。
【0177】
[合成例1−2]
メタロセン化合物(a)の合成
窒素雰囲気下、シュレンクフラスコに配位子(a−1)215mg(0.51mmol)、α-メチルスチレン 0.13g(1.1mmol)、シクロペンチルメチルエーテル 0.5g(5.1mmol)、ヘキサン 50mLを装入した。n−ブチルリチウム(ヘキサン溶液;1.1mmol) 0.71mLを添加し、50℃ 4時間撹拌した。減圧濃縮を行い、ジエチルエーテル 40mlを添加した。−78℃に冷却し、四塩化ジルコニウムを118mg(0.51mmol)装入し、室温に戻しながら16時間撹拌した。溶媒を留去し、ジクロロメタン、ヘキサンで可溶分を抽出した。得られた溶液を濃縮し、ヘキサンに溶解させ、再結晶した。析出した赤色固体をろ過によって回収し、ヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥させることで目的化合物を得た。収量180mg、収率61%。FD−MSの測定結果により、目的物を同定した。
FD−MS :m/Z=584.7(M
+)
なお、以降の実施例において、このようにして得られた化合物を「メタロセン化合物(a)」として用いた。
【0178】
[合成例2]
メタロセン化合物(b)の合成
メタロセン化合物(b):
【0179】
【化11】
【0180】
[合成例2−1]
配位子(b−1)の合成
窒素雰囲気下、フラスコに2,3,6,7−テトラメチル−9H−フルオレン 0.5g(2.25mmol),tert−ブチルメチルエーテル 80mlを入れ、−10℃に冷却しながらn−ブチルリチウム 1.38ml(ヘキサン溶液;2.18mmol)を添加し、50℃、2時間撹拌した。再び−10℃まで冷却させたのち、(1S,3s)-1-(8-メチル-3b,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロシクロペンタ[a]インデン-2-イル)アダマンタン 0.82g(2.70mmol)を添加し、50℃、4時間撹拌した。室温に戻した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて、有機層を分離し、水層をヘキサンで抽出した。先の有機層と合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、メタノール/ジクロロメタンで結晶を析出させた。得られた結晶をメタノール洗浄し、目的物を600 mg(収率50%)得た。FD−MS測定で目的物の生成を確認した。
FD−MS:m/Z=528.8(M
+)
なお、以降の工程において、このようにして得られた化合物を配位子(b−1)として用いた。
【0181】
[合成例2−2]
メタロセン化合物(b)の合成
窒素雰囲気下、シュレンクフラスコに配位子(b−1)120mg(0.23mmol)、α-メチルスチレン 0.059g(0.5mmol)、シクロペンチルメチルエーテル 0.23g(2.26mmol)、ヘキサン 50mLを装入した。n−ブチルリチウム(ヘキサン溶液;0.49mmol) 0.31mLを添加し、50℃ 4時間撹拌した。減圧濃縮を行い、ジエチルエーテル 40mlを添加した。−78℃に冷却し、四塩化ジルコニウムを52mg(0.23mmol)装入し、室温に戻しながら16時間撹拌した。溶媒を留去し、ジクロロメタン、ヘキサンで可溶分を抽出した。得られた溶液を濃縮し、ヘキサンに溶解させ、再結晶した。析出した赤色固体をろ過によって回収し、ヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥させ目的物を得た。収量100mg。FD−MSの測定結果により、目的物を同定した。
FD−MS :m/Z=688.9(M
+)
なお、以降の実施例において、このようにして得られた化合物を「メタロセン化合物(b)」として用いた。
【0182】
[合成例2−3]
配位子(b2−1)の合成
窒素雰囲気下、フラスコに2,3,6,7−テトラメチル−9H−フルオレン 1.112g(5.00mmol),tert−ブチルメチルエーテル 160mlを入れ、−10℃に冷却しながらn−ブチルリチウム 3.30ml(ヘキサン溶液;5.28mmol)を添加し、50℃、2時間撹拌した。再び−10℃まで冷却させたのち、(1S,3s)-1-(8-メチル-3b,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロシクロペンタ[a]インデン-2-イル)アダマンタン 1.839g(6.00mmol)を添加し、50℃、4時間撹拌した。室温に戻した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて、有機層を分離し、水層をヘキサンで抽出した。先の有機層と合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、メタノール/ジクロロメタンで結晶を析出させた。得られた結晶をメタノール洗浄し、目的物を286.5 mg得た。メタノール洗浄した液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製し目的物を1134mg得た。計1421mg(収率 54%)
1H−NMR(CDCl
3)、FD−MS測定で目的物の生成を確認した。
1H−NMR測定により、複数の異性体の混合物だった。
FD−MS:m/Z=528.8(M
+)
なお、以降の工程において、このようにして得られた化合物を配位子(b2−1)として用いた。
【0183】
[合成例2−4]
メタロセン化合物(b2)の合成
窒素雰囲気下、シュレンクフラスコに配位子(b2−1)1120mg(2.12mmol)、α-メチルスチレン 0.552g(4.67mmol)、シクロペンチルメチルエーテル 2.163g(21.6 mmol)、ヘキサン 60mLを装入した。n−ブチルリチウム(ヘキサン溶液;4.67mmol) 2.92 mLを添加し、50℃ 4時間撹拌した。減圧濃縮を行い、ヘキサンを加え、ろ過によってオレンジ色粉末を得た。シュレンクフラスコにオレンジ色粉末、ジエチルエーテル 60mlを添加した。−78℃に冷却し、四塩化ジルコニウムを510mg(2.19mmol)装入し、30分撹拌した。室温に戻しながら17時間撹拌した。溶媒を留去し、ジクロロメタン、ヘキサンで可溶分を抽出した。得られた溶液を濃縮し、ヘキサンに溶解させ、再結晶した。析出した赤色固体をろ過によって回収し、ヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥させ目的物を得た。この操作を2回行い計248mgの目的物を得た。
1H−NMR(CDCl
3)とFD−MSの測定結果により、目的物を同定した。
1H−NMR(ppm、CDCl
3): 7.8(1H)、7.7(1H)、7.4(1H)、7.3(1H)、6.2(1H)、5.4(1H)、3.6−3.1(2H)、2.5-1.2(38H),FD−MS :m/Z=688.2(M
+)
なお、以降の実施例において、このようにして得られた化合物を「メタロセン化合物(b2)」として用いた。
【0184】
[合成例3]
メタロセン化合物(d)の合成
メタロセン化合物(d):
【0185】
【化13】
【0186】
[合成例3−1]
配位子(d−1)の合成
窒素雰囲気下、3つ口フラスコに2,3,6,7−テトラメチル−9H−フルオレン 0.667g(3.00mmol),tert−ブチルメチルエーテル 80mLを入れ、ドライアイス-メタノール浴で冷却しながらn−ブチルリチウムヘキサン溶液 2.00mL(3.20mmol)を添加し、50℃、2時間撹拌した。再びドライアイス-メタノール浴で冷却させたのち、5-アダマンチル-1、1-ジメチル-3-メチル-1,2-ジヒドロペンタレン1.01g(3.60mmol) を添加し、50℃、4時間撹拌した。室温に戻した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて、有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出した。先の有機層と合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をメタノール、アセトンで洗浄し、目的物を953 mg(収率63%)得た。FD−MS測定で目的物の生成を確認した。FD−MS:m/Z=502.4(M
+)
1H−NMR測定により、複数の異性体の混合物だった。
【0187】
なお、以降の工程において、このようにして得られた化合物を配位子(c−1)として用いた。
[合成例3−2]
メタロセン化合物(d)の合成
窒素雰囲気下、シュレンクフラスコに配位子(c−1)1005mg(2.00mmol)、α-メチルスチレン 0.58mL(4.45mmol)、シクロペンチルメチルエーテル 2.32mL(20.0mmol)、ヘキサン 60mLを装入した。n−ブチルリチウムヘキサン溶液 2.75mLを添加し、70℃ 4時間撹拌した。減圧濃縮を行った後、ヘキサンを加えた。生じた沈殿をろ過により回収し、減圧乾燥した。得られたオレンジ色粉末602gをシュレンクフラスコに装入し、ジエチルエーテル 50mlを添加した。−78℃に冷却し、四塩化ジルコニウムを298mg(1.28mmol)装入し、30分撹拌した。室温に戻しながら17時間撹拌した。溶媒を留去し、ジクロロメタン、ヘキサンで可溶分を抽出した。得られた溶液を濃縮し、ジクロロメタンに溶解させ、ヘキサンにて再結晶した。析出した赤色固体をろ過によって回収し、ヘキサンで洗浄した後、減圧下で乾燥させた。この操作を2回行い目的物を計54mg得た。
1H−NMR(CDCl
3)とFD−MSの測定結果により、目的物を同定した。
【0188】
1H−NMR(ppm、CDCl
3): 7.8(2H)、7.7(1H)、7.4(1H)、6.0(1H)、5.2(1H)、4.0−3.9(1H)、2.6−1.3(37H),
FD−MS :m/Z=660.2(M
+)
なお、以降の実施例において、このようにして得られた化合物を「メタロセン化合物(d)」として用いた。
【0189】
[その他のメタロセン化合物]
メタロセン化合物(c):ジメチル[3-(tert-ブチル)-5-メチル-シクロペンタジエニル](フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
【0190】
【化12】
【0191】
上記合成例で得られたメタロセン化合物(a)、(b)および(b2)のほか、メタロセン化合物(c)として、上記構造式で表されるメタロセン化合物を用いた。このメタロセン化合物(c)は、上述のメタロセン化合物(a)、(b)および(b2)のいずれとも異なり、フルオレニル部分に置換基を有さないメタロセン化合物である。
【0192】
[実施例1A]-プロピレン‐1−ブテン二元共重合体-
充分に乾燥し窒素置換したシュレンク管に磁気攪拌子を入れ、メタロセン化合物としてメタロセン化合物(a)5.0μmolを入れ、修飾メチルアルミノキサンの懸濁液310eq/cat.(n−ヘキサン溶媒、アルミニウム原子換算で1.55mmol)を攪拌しながら室温で加え、メタロセン化合物(a)が1μmol/mLとなる量のヘプタンを加えて触媒液を調製した。
【0193】
充分に乾燥し窒素置換した内容積1,500mlのSUS製オートクレーブに、重合溶媒としてヘプタン500mLとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(Al=0.5M)0.75mmolを装入し、次いで850回転/分で撹拌しながら1−ブテン30gを加えた後に重合温度70℃に昇温した。その温度でオートクレーブ内圧が0.3MPaGになるまで窒素を加え、さらに全圧が0.8MPaGになるまでプロピレンで加圧した。
【0194】
このオートクレーブに上記調製触媒液を装入して重合を開始し、重合停止まで全圧0.8MPaGを保つ様にプロピレンを供給し、開始から15分後にメタノールを加えて重合を停止した。
【0195】
冷却/脱圧したオートクレーブから取り出した重合液を、メタノール中に投入し、ポリマーを析出させて濾過回収した。その後回収したポリマーを80℃で10時間減圧乾燥してポリマー44.3gを得た。
【0196】
重合活性は35.4kg−ポリマー/mmol−Zr/hrであった。得られたポリマーの[η]は1.76dl/g、融点(Tm)は77.3℃、融解熱(ΔH)は33.4mJ/mg、1−ブテン含量は25.8mol%、プロピレン含量は74.2mol%であった。
【0197】
[比較例1A]-プロピレン‐1−ブテン二元共重合体-
メタロセン化合物をメタロセン化合物(c)、メタロセン化合物の量4.3μmol、重合時間20分とした以外は、実施例1Aと同様に行い、ポリマーを得た。
【0198】
[比較例2A]-プロピレン‐1−ブテン二元共重合体-
供給する1−ブテンを40gとした以外は、比較例1Aと同様に行い、ポリマーを得た。
【0199】
実施例1A、比較例1Aおよび2Aについて、重合条件ならびに得られた1−ブテン系共重合体の物性を表3に示す。ここで、表3中「触媒種」の欄に記載されている記号は、触媒の調製に用いられたメタロセン化合物の記号に基づく。なお、表3および後述する表4〜9において、重合活性の単位として「kg-ポリマー/mmol-M/hr」とあるのは、触媒を構成する遷移金属MとしてZrが用いられている場合、「kg-ポリマー/mmol-Zr/hr」を意味する。
【0200】
【表3】
【0201】
[実施例2A]-プロピレン‐1−ブテン二元共重合体-
充分に乾燥し窒素置換したシュレンク管に磁気攪拌子を入れ、メタロセン化合物としてメタロセン化合物(a)3.0μmolを入れ、、修飾メチルアルミノキサンの懸濁液300eq/cat.(n−ヘキサン溶媒、アルミニウム原子換算で0.90mmol)を攪拌しながら室温で加え、メタロセン化合物(a)が1μmol/mLとなる量のヘプタンを加えて触媒液を調製した。
【0202】
充分に乾燥し窒素置換した内容積1,500mlのSUS製オートクレーブに、重合溶媒としてヘプタン500mLとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(Al=0.5M)0.75mmolを装入し、次いで850回転/分で撹拌しながら1−ブテン40gを加えた後に重合温度65℃に昇温した。その温度でオートクレーブ内圧が0.3MPaGになるまで窒素を加え、さらに全圧が0.8MPaGになるまでプロピレンで加圧した。
【0203】
このオートクレーブに上記調製触媒液を装入して重合を開始し、重合停止まで全圧0.8MPaGを保つ様にプロピレンを供給し、開始から15分後にメタノールを加えて重合を停止した。
【0204】
冷却/脱圧したオートクレーブから取り出した重合液を、メタノール中に投入し、ポリマーを析出させて濾過回収した。その後回収したポリマーを80℃で10時間減圧乾燥してポリマー16.2gを得た。
【0205】
重合活性は21.6kg−ポリマー/mmol−Zr/hrであった。得られたポリマーの[η]は2.29dl/g、融点(Tm)は70.6℃、融解熱(ΔH)は27.3mJ/mg、1−ブテン含量は32.6mol%、プロピレン含量は67.4mol%であった。
【0206】
[比較例3A]--プロピレン‐1−ブテン二元共重合体-
用いたメタロセン化合物をメタロセン化合物(c)、メタロセン化合物の量4.3μmol、供給する1−ブテンを30g、重合温度65℃とした以外は、実施例1Aと同様に行い、ポリマーを得た。
【0207】
実施例2Aおよび比較例3Aについて、重合条件ならびに得られた1−ブテン系共重合体の物性を表4に示す。ここで、表4中「触媒種」の欄に記載されている記号は、触媒の調製に用いられたメタロセン化合物の記号に基づく。
【0208】
【表4】
【0209】
[実施例1B]-プロピレン‐1−ブテン二元共重合体-
充分に乾燥し窒素置換したシュレンク管に磁気攪拌子を入れ、メタロセン化合物としてメタロセン化合物(a)1.5μmolを入れ、修飾メチルアルミノキサンの懸濁液310eq/cat.(n−ヘキサン溶媒、アルミニウム原子換算で0.46mmol)を攪拌しながら室温で加え、メタロセン化合物(a)が1μmol/mLとなる量のヘプタンを加えて触媒液を調製した。
【0210】
充分に乾燥し窒素置換した内容積1,500mlのSUS製オートクレーブに、重合溶媒としてヘプタン500mLとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(Al=0.5M)0.75mmolを装入し、次いで850回転/分で撹拌しながら1−ブテン30gを加えた後に重合温度70℃に昇温した。その温度でオートクレーブ内圧が0.3MPaGになるまで窒素を加え、35.5NmLの水素を加えた後にさらに全圧が0.8MPaGになるまでプロピレンで加圧した。
【0211】
このオートクレーブに上記調製触媒液を装入して重合を開始し、重合停止まで全圧0.8MPaGを保つ様にプロピレンを供給し、開始から15分後にメタノールを加えて重合を停止した。
【0212】
冷却/脱圧したオートクレーブから取り出した重合液を、メタノール中に投入し、ポリマーを析出させて濾過回収した。その後回収したポリマーを80℃で10時間減圧乾燥してポリマー50.5gを得た。
【0213】
重合活性は134.5kg−ポリマー/mmol−Zr/hrであった。得られたポリマーの[η]は1.01dl/g、融点(Tm)は88.5℃、融解熱(ΔH)は44.4mJ/mg、プロピレン含量は77.8mol%、1−ブテン含量は22.2mol%であった。
【0214】
[比較例1B]-プロピレン-1−ブテン二元共重合体-
用いたメタロセン化合物をメタロセン化合物(c)、メタロセン化合物の量を1.0μmol、修飾メチルアルミノキサンの懸濁液を300eq/cat.にし、重合停止までの時間を開始から10分にした以外は実施例1Bと同様に行い、ポリマー15.8gを得た。
【0215】
実施例1Bおよび比較例1Bについて、重合条件ならびに得られた1−ブテン系共重合体の物性を表5に示す。ここで、表5中「触媒種」の欄に記載されている記号は、触媒の調製に用いられたメタロセン化合物の記号に基づく。
【0216】
【表5】
【0217】
[実施例1C]-プロピレン-1−ブテン‐エチレン三元共重合体-
充分に乾燥し窒素置換したシュレンク管に磁気攪拌子を入れ、メタロセン化合物としてメタロセン化合物(a)2.0μmolを入れ、修飾メチルアルミノキサンの懸濁液300eq/cat.(n−ヘキサン溶媒、アルミニウム原子換算で0.60mmol)を攪拌しながら室温で加え、メタロセン化合物(a)が1μmol/mLとなる量のヘプタンを加えて触媒液を調製した。
【0218】
充分に乾燥し窒素置換した内容積1,500mlのSUS製オートクレーブに、重合溶媒としてヘプタン500mLとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(Al=0.5M)0.75mmolを装入し、次いで850回転/分で撹拌しながら1−ブテン50gを加えた後に重合温度55℃に昇温した。オートクレーブ内圧が0.58MPaGになるまでプロピレンを加えた後、内圧が0.7MPaGになるまで窒素を加え、さらに全圧が0.75MPaGになるまでエチレンで加圧した。
【0219】
このオートクレーブに上記調製触媒液を装入して重合を開始し、重合停止まで全圧0.75MPaGを保つ様にエチレンを供給し、開始から10分後にメタノールを加えて重合を停止した。
【0220】
冷却/脱圧したオートクレーブから取り出した重合液を、アセトンとメタノールの1:1溶液中に投入し、ポリマーを析出させて濾過回収した。その後回収したポリマーを80℃で10時間減圧乾燥してポリマー44.8gを得た。
【0221】
[比較例1C]-プロピレン-1−ブテン‐エチレン三元共重合体-
メタロセン化合物をメタロセン化合物(c)、メタロセン化合物の量を0.5μmolにし、重合停止までの時間を開始から25分にした以外は実施例1Cと同様に行い、ポリマー7.4gを得た。
【0222】
実施例1Cおよび比較例1Cについて、得られた1−ブテン系共重合体の物性を表6に示す。ここで、表6中「触媒種」の欄に記載されている記号は、触媒の調製に用いられたメタロセン化合物の記号に基づく。
【0223】
【表6】
【0224】
[実施例1D]-1−ブテン‐プロピレン二元共重合体-
充分に乾燥し窒素置換したシュレンク管に磁気攪拌子を入れ、メタロセン化合物としてメタロセン化合物(a)1.5μmolを入れ、修飾メチルアルミノキサンの懸濁液300eq/cat.(n−ヘキサン溶媒、アルミニウム原子換算で0.45mmol)を攪拌しながら室温で加え、メタロセン化合物(a)が1μmol/mLとなる量のヘプタンを加えて触媒液を調製した。
【0225】
充分に乾燥し窒素置換した内容積1,500mlのSUS製オートクレーブに、重合溶媒としてヘプタン500mLとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(Al=0.5M)0.75mmolを装入し、次いで850回転/分で撹拌しながら1−ブテン180gを加えた後に重合温度60℃に昇温した。その温度でオートクレーブ内圧が0.6MPaGになるまで窒素を加え、35.5NmLの水素を加えた後にさらに全圧が0.7MPaGになるまでプロピレンで加圧した。
【0226】
このオートクレーブに上記調製触媒液を装入して重合を開始し、重合停止まで全圧0.7MPaGを保つ様にプロピレンを供給し、開始から10分後にメタノールを加えて重合を停止した。
【0227】
冷却/脱圧したオートクレーブから取り出した重合液を、アセトンとメタノールの1:1溶液中に投入し、ポリマーを析出させて濾過回収した。その後回収したポリマーを80℃で10時間減圧乾燥してポリマー36.7gを得た。
【0228】
重合活性は147.0kg−ポリマー/mmol−Zr/hrであった。得られたポリマーの[η]は1.06dl/g、融点(Tm)は106.5℃、融解熱(ΔH)は63.6mJ/mg、プロピレン含量は12.4mol%、1−ブテン含量は87.6mol%であった。
【0229】
[実施例2D]-1−ブテン‐プロピレン二元共重合体-
メタロセン化合物の量を3.0μmolにし、窒素で内圧を0.55MPaとし、水素を用いず、その後プロピレンを、張り込み全圧を0.7MPa、重合温度60℃、重合停止までの時間を開始から20分とした以外は、実施例1Dと同様に行い、ポリマー1.2gを得た。
【0230】
[実施例3D]-1−ブテン‐プロピレン二元共重合体-
メタロセン化合物をメタロセン化合物(b2)に変え、メタロセン化合物の量を3.0μmolにし、窒素で内圧を0.55MPaとして水素を添加、その後プロピレンを、張り込み全圧を0.7MPa、重合温度60℃、重合停止までの時間を開始から10分とした以外は、実施例1Dと同様に行い、ポリマー75.2gを得た。
【0231】
[実施例4D]-1−ブテン‐プロピレン二元共重合体-
メタロセン化合物をメタロセン化合物(b2)に変え、重合停止までの時間を開始から15分とした以外は、実施例2Dと同様に行い、ポリマー28.5gを得た。
【0232】
[比較例1D]-1−ブテン‐プロピレン二元共重合体-
メタロセン化合物をメタロセン化合物(c)に変えた以外は実施例2Dと同様に行い、ポリマー5.2gを得た。
【0233】
実施例1D、2D、3D、4Dおよび比較例1Dについて、重合条件ならびに得られた1−ブテン系共重合体の物性を表7に示す。ここで、表7中「触媒種」の欄に記載されている記号は、触媒の調製に用いられたメタロセン化合物の記号に基づく。
【0234】
【表7】
【0235】
[実施例1E]-1−ブテン‐エチレン二元共重合体-
充分に乾燥し窒素置換したシュレンク管に磁気攪拌子を入れ、メタロセン化合物としてメタロセン化合物(a)5.0μmolを入れ、修飾メチルアルミノキサンの懸濁液300eq/cat.(n−ヘキサン溶媒、アルミニウム原子換算で1.50mmol)を攪拌しながら室温で加え、メタロセン化合物(a)が1μmol/mLとなる量のヘプタンを加えて触媒液を調製した。
【0236】
充分に乾燥し窒素置換した内容積1,500mlのSUS製オートクレーブに、重合溶媒としてヘプタン500mLとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(Al=0.5M)0.75mmolを装入し、次いで850回転/分で撹拌しながら1−ブテン50gを加えた後に重合温度60℃に昇温した。その温度でオートクレーブ内圧が0.77MPaGになるまで窒素を加えた後に、全圧が0.8MPaGになるまでエチレンで加圧した。
【0237】
このオートクレーブに上記調製触媒液を装入して重合を開始し、重合停止まで全圧0.8MPaGを保つ様にエチレンを供給し、開始から15分後にメタノールを加えて重合を停止した。
【0238】
冷却/脱圧したオートクレーブから取り出した重合液を、アセトンとメタノールの1:1溶液中に投入し、ポリマーを析出させて濾過回収した。その後回収したポリマーを80℃で10時間減圧乾燥してポリマー4.7gを得た。
【0239】
重合活性は3.8kg−ポリマー/mmol−Zr/hrであった。得られたポリマーの[η]は1.38dl/g、融点(Tm)は71.1℃、融解熱(ΔH)は12.6mJ/mg、また、1−ブテン含量は94.2mol%、エチレン含量は5.8mol%であった。
【0240】
[比較例1E]-1−ブテン‐エチレン二元共重合体-
使用するメタロセン化合物をメタロセン化合物(c)に代え、修飾メチルアルミノキサンの懸濁液等量を310eq/cat.に代えた以外は実施例1Eと同様に行い、ポリマーを得た。
【0241】
実施例1Eおよび比較例1Eについて、重合条件ならびに得られた1−ブテン系(共)重合体の物性を表8に示す。ここで、表8中「触媒種」の欄に記載されている記号は、触媒の調製に用いられたメタロセン化合物の記号に基づく。
【0242】
【表8】
【0243】
[実施例1F]-1−ブテン重合体-
充分に乾燥し窒素置換したシュレンク管に磁気攪拌子を入れ、メタロセン化合物としてメタロセン化合物(a)5.0μmolを入れ、修飾メチルアルミノキサンの懸濁液300eq/cat.(n−ヘキサン溶媒、アルミニウム原子換算で1.50mmol)を攪拌しながら室温で加え、メタロセン化合物(a)が1μmol/mLとなる量のヘプタンを加えて触媒液を調製した。
【0244】
充分に乾燥し窒素置換した内容積1,500mlのSUS製オートクレーブに、重合溶媒としてヘプタン500mLとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(Al=0.5M)0.75mmolを装入し、次いで850回転/分で撹拌しながら1−ブテン180gを加えた後に重合温度60℃に昇温した。その温度でオートクレーブ内圧が0.5MPaGになるまで窒素で加圧した。
【0245】
このオートクレーブに上記調製触媒液を装入して重合を開始し、開始から20分後にメタノールを加えて重合を停止した。
冷却/脱圧したオートクレーブから取り出した重合液を、メタノール中に投入し、ポリマーを析出させて濾過回収した。その後回収したポリマーを80℃で10時間減圧乾燥してポリマー28.3gを得た。
【0246】
重合活性は17.0kg−ポリマー/mmol−Zr/hrであった。得られたポリマーの[η]は2.10dl/g、融点(Tm)は121.3℃、融解熱(ΔH)は1.8mJ/mg、結晶化温度(Tc)は64.3℃であった。結晶安定化後の融点(Tm)は122.1℃、融解熱(ΔH)は56.9mJ/mgであった。
【0247】
[実施例2F]-1−ブテン重合体-
用いた触媒種をメタロセン化合物(b)、メタロセン化合物の量10.0μmolとした以外は、実施例1Fと同様に行い、ポリマー44.6gを得た。重合活性は13.4kg−ポリマー/mmol−Zr/hrであった。得られたポリマーの[η]は3.54dl/g、融点(Tm)は128.8℃、融解熱(ΔH)は2.6mJ/mg、結晶化温度(Tc)は79.4℃であった。結晶安定化後の融点(Tm)は128.8℃、融解熱(ΔH)は59.5mJ/mgであった。
【0248】
[実施例3F]-1−ブテン重合体-
メタロセン化合物をメタロセン化合物(d)、メタロセン化合物の量を2.5μmol、重合停止までの時間を開始から10分とした以外は、実施例1Fと同様に行い、ポリマーを得た。重合活性は9.4kg−ポリマー/mmol−Zr/hrであった。得られたポリマーの[η]は2.11dl/g、融点(Tm)は125.7℃、融解熱(ΔH)は2.7mJ/mg、結晶化温度(Tc)は76.4℃であった。結晶安定化後の融点(Tm)は124.5℃、融解熱(ΔH)は68.6mJ/mgであった。
【0249】
[実施例4F]-1−ブテン重合体-
メタロセン化合物をメタロセン化合物(b2)、メタロセン化合物の量を5.0μmolにし、重合停止までの時間を開始から5分にした以外は実施例2Fと同様に行い、ポリマー31.8gを得た。重合活性は76.4kg−ポリマー/mmol−Zr/hrであった。得られたポリマーの[η]は3.46dl/g、融点(Tm)は129.6℃、融解熱(ΔH)は3.7mJ/mg、結晶化温度(Tc)は85.0℃であった。結晶安定化後の融点(Tm)は129.4℃、融解熱(ΔH)は69.8mJ/mgであった。
【0250】
[実施例5F]-1−ブテン重合体-
充分に乾燥し窒素置換したシュレンク管に磁気攪拌子を入れ、メタロセン化合物としてメタロセン化合物(b2)2.0μmolを入れ、修飾メチルアルミノキサンの懸濁液300eq/catを攪拌しながら室温で加え、触媒液を調製した。
【0251】
充分に乾燥し窒素置換した内容積1,500mlのSUS製オートクレーブに、重合溶媒としてヘプタン500mLとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(Al=0.5M)0.75mmolを装入し、次いで850回転/分で撹拌しながら1−ブテン180gを加えた後に重合温度60℃に昇温した。水素17.8NmLを加えた後、その温度でオートクレーブ内圧が0.5MPaGになるまで窒素で加圧した。
【0252】
このオートクレーブに上記調製触媒液を装入して重合を開始し、開始から4.2分後にメタノールを加えて重合を停止した。
冷却/脱圧したオートクレーブから取り出した重合液を、メタノール中に投入し、ポリマーを析出させて濾過回収した。その後回収したポリマーを80℃で10時間減圧乾燥してポリマー52.2gを得た。重合活性は372.3kg−ポリマー/mmol−Zr/hrであった。得られたポリマーの[η]は2.73dl/g、融点(Tm)は129.0℃、融解熱(ΔH)は3.2mJ/mg、結晶化温度(Tc)は80.9℃であった。結晶安定化後の融点(Tm)は129.0℃、融解熱(ΔH)は67.0mJ/mgであった。
【0253】
[実施例6F]-1−ブテン重合体-
重合停止までの時間を開始から3分にし、水素量を35.5NmLに代えた以外は実施例5Fと同様に行い、ポリマー53.9gを得た。
【0254】
[実施例7F]-1−ブテン重合体-
重合停止までの時間を開始から2分にし、水素量を106.5NmLに代えた以外は実施例5Fと同様に行い、ポリマー48.1gを得た。
【0255】
[比較例1F]-1−ブテン重合体-
充分に乾燥し窒素置換したシュレンク管に磁気攪拌子を入れ、メタロセン化合物としてメタロセン化合物(c)4.4μmolを入れ、修飾メチルアルミノキサンの懸濁液310eq/cat.(n−ヘキサン溶媒)を攪拌しながら室温で加え、触媒液を調製した。
【0256】
充分に乾燥し窒素置換した内容積1,500mlのSUS製オートクレーブに、重合溶媒としてヘプタン500mLとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(Al=0.5M)0.75mmolを装入し、次いで850回転/分で撹拌しながら1−ブテン180gを加えた後に重合温度60℃に昇温した。その温度でオートクレーブ内圧が0.5MPaGになるまで窒素を加えた。
【0257】
このオートクレーブに上記調製触媒液を装入して重合を開始し、重合停止まで全圧0.5MPaGを保つ様にプロピレンを供給し、開始から20分後にメタノールを加えて重合を停止した。
【0258】
冷却/脱圧したオートクレーブから取り出した重合液を、アセトンとメタノールの1:1溶液中に投入し、ポリマーを析出させて濾過回収した。その後回収したポリマーを80℃で10時間減圧乾燥してポリマー4.2gを得た。
【0259】
重合活性は2.9kg−ポリマー/mmol−Zr・hrであった。得られたポリマーの[η]は1.33dl/g、融点(Tm)は120.7℃、融解熱(ΔH)は72.8mJ/mg、結晶化温度(Tc)は72.8℃であった。
結晶安定化後の融点(Tm)は120.7℃、融解熱(ΔH)は67.0mJ/mgであった。
【0260】
[比較例2F]-1−ブテン重合体-
充分に乾燥し窒素置換したシュレンク管に磁気攪拌子を入れ、メタロセン化合物としてメタロセン化合物(c)2.0μmolを入れ、修飾メチルアルミノキサンの懸濁液300eq/catを攪拌しながら室温で加え、触媒液を調製した。
【0261】
充分に乾燥し窒素置換した内容積1,500mlのSUS製オートクレーブに、重合溶媒としてヘプタン500mLとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(Al=0.5M)0.75mmolを装入し、次いで850回転/分で撹拌しながら1−ブテン180gを加えた後に重合温度60℃に昇温した。水素17.8NmLを加えた後、その温度でオートクレーブ内圧が0.5MPaGになるまで窒素で加圧した。
【0262】
このオートクレーブに上記調製触媒液を装入して重合を開始し、開始から20分後にメタノールを加えて重合を停止した。
冷却/脱圧したオートクレーブから取り出した重合液を、アセトンとメタノールの1:1溶液中に投入し、ポリマーを析出させて濾過回収した。その後回収したポリマーを80℃で10時間減圧乾燥してポリマー3.6gを得た。
【0263】
[比較例3F]-1−ブテン重合体-
水素量を42.6NmLに代えた以外は比較例2Fと同様に行い、ポリマー72.3gを得た。
【0264】
実施例1F〜7F、ならびに、比較例1F、2Fおよび3Fについて、重合条件ならびに得られた1−ブテン重合体の物性を表9に示す。ここで、表7中「触媒種」の欄に記載されている記号は、触媒の調製に用いられたメタロセン化合物の記号に基づく。
【0265】
表9において、一部の実施例および比較例について、融点(Tm)および融解熱(ΔH)の値としてそれぞれ複数の値が併記されている場合がある。これは、上記「融点(Tm)、融解熱(ΔH)、結晶化温度(Tc)」の項で上述したように、当該実施例および比較例では複数の結晶溶融ピークが観測されたことを示しており、高温側ピーク以外のピークに対応する値も表したものである。なお、上記融解熱(ΔH)については、表9においては有効数字3桁で表した値を示している。
【0266】
【表9】
【0267】
表9に記載の結果からも明らかなとおり、本発明の製造方法によれば、大幅な分子量の向上が見込めることが分かる。さらに、水素添加によって大幅な活性向上が可能なため、非常に高い生産性をもって1−ブテン重合体を製造することができる。