(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.第1実施形態
図1に示すように、この温度センサ1は、太陽電池の一例としての太陽電池層2と、サーモクロミック樹脂の一例としてのサーモクロミック樹脂層3と、発信デバイスとしての一例としての発信器4とを備える。また、この温度センサ1は、受信器5をさらに備える。
【0024】
1−1.太陽電池層
太陽電池層2は、例えば、結晶系や非晶系などのシリコンなどからなる太陽電池である。太陽電池層2は、フィルム形状を有する。太陽電池層2は、その上面に、光を受光して起電力を生じるための受光面(主面)6を有する。また、太陽電池層2は、受光面6から光を受光することにより起電力を生じる片面タイプの太陽電池である。
【0025】
1−2.サーモクロミック樹脂層
サーモクロミック樹脂層3は、太陽電池層2の受光面6全面に配置されている。これにより、サーモクロミック樹脂層3は、太陽電池層2を被覆している。また、サーモクロミック樹脂層3は、太陽電池層2の受光面6に対して直接接触している。サーモクロミック樹脂層3は、フィルム形状を有する。また、サーモクロミック樹脂層3は、太陽電池層2とともに、センサ積層体7を構成する。センサ積層体7は、太陽電池層2およびサーモクロミック樹脂層3を備える。好ましくは、センサ積層体7は、太陽電池層2およびサーモクロミック樹脂層3のみからなる。
【0026】
サーモクロミック樹脂層3は、サーモクロミック性を有する樹脂組成物から、フィルム形状に形成されている。
【0027】
樹脂組成物は、例えば、樹脂と、サーモクロミック材料とを含有する。樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などなどの透明樹脂が挙げられる。サーモクロミック材料としては、例えば、サーモクロミック顔料などが挙げられる。サーモクロミック顔料としては、例えば、電子供与性呈色性有機化合物と、フェノール性水酸基を有する化合物と、アルコール性水酸基を有する化合物との三成分を必須成分とする示温材料(特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報など)などが挙げられる。サーモクロミック材料は、所定の温度T(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色(無色)状態、低温側変色点未満の温度域で発色(有色)状態となる可逆熱変色性組成物である。具体的には、クリスタルバイオレットラクトン(電子供与性呈色性有機化合物)、没食子酸プロピルエステル(フェノール性水酸基を有する化合物)およびn−ミリスチルアルコール(アルコール性水酸基を有する化合物)からなる示温材料(特公昭51−44706号公報の実施例4)が挙げられ、その変色点は、35℃である。また、クリスタルバイオレットラクトン(電子供与性呈色性有機化合物)、没食子酸イソオクチル(フェノール性水酸基を有する化合物)およびn−メリシルアルコール(アルコール性水酸基を有する化合物)からなる示温材料(特公昭51−44706号公報の実施例23)が挙げられ、その変色点は、97℃である。サーモクロミック材料の配合割合は、樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、25質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。
【0028】
そのため、サーモクロミック樹脂層3は、温度変化によって光透過率が可逆的に変化するサーモクロミック現象を示す性質(サーモクロミック性)を有する。より具体的には、温度T(℃)未満では、光透過率が低く、例えば、サーモクロミック樹脂層3に対して照射される光の照度にも依存しており、光がサーモクロミック樹脂層3を一部透過しても、太陽電池層2において起電力を生じない光透過率を有する。一方、温度T(℃)以上では、光透過率が高く、例えば、サーモクロミック樹脂層3に対して照射される光の照度にも依存しており、光がサーモクロミック樹脂層3を透過して、太陽電池層2において起電力を生じる光透過率を有する。
【0029】
具体的には、温度(サーモクロミック材料の変色点)T(℃)以上におけるサーモクロミック樹脂層3の光透過率T2の、温度(サーモクロミック材料の変色点)T(℃)未満におけるサーモクロミック樹脂層3の光透過率T1に対する比(T2/T1)は、1.00超過、好ましくは、1.05以上、より好ましくは、1.20以上、さらに好ましくは、1.50以上である。光透過率は、可視光線(400〜700nm)の透過率である。光透過率は、コニカミノルタ社製のCM−700dにより測定される。なお、温度Tにおける光透過率は、太陽電池層2が起電力を発生するのに必要な最低限の光の透過を許容する光透過率である。
【0030】
上記した温度Tは、温度センサ1が配置される環境応じて適宜決定されるものであり、サーモクロミック材料の種類によって適宜選択される。具体的には、温度Tは、例えば、−20℃以上、好ましくは、0℃以上、より好ましくは、好ましくは、20℃以上であり、また、例えば、150℃以下、好ましくは、130℃以下である。
【0031】
サーモクロミック樹脂層3の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、25μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、250μm以下である。
【0032】
1−3.発信器
発信器4は、太陽電池層2に電気的に接続されている。具体的には、発信器4は、第1配線15を介して太陽電池層2と接続されている。また、発信器4は、太陽電池層2において生じた起電力を検知する電力検知部4である。具体的には、発信器4は、太陽電池層2において生じた起電力を検知するとともに、かかる起電力を電力として利用して、検知信号を受信器5に無線発信するように構成されている。つまり、発信器4は、太陽電池層2から直接供給される電力により作動する。また、発信器4は、例えば、検知信号を無線発信できる発信アンテナ(図示せず)を備える。
【0033】
1−4.受信器
受信器5は、発信器4に対して遠隔の位置に配置されている。
【0034】
受信器5は、例えば、発信器4から無線発信された検知信号を受信できる受信アンテナ(図示せず)と、受信アンテナが受信した検知信号を増幅する増幅器(図示せず)と、増幅された検知信号に基づいて、センサ積層体7が配置された環境の温度が、温度T(サーモクロミック材料の変色点)以上となるか否かを表示する表示装置(図示せず)とを備える。
【0035】
2.用途および検知方法
このような温度センサ1は、各種産業の温度センサに用いることができる。また、温度センサ1は、太陽光などの自然光や、室内照明に基づく照明光などの光に暴露される環境に設置される。
【0036】
具体的には、温度センサ1は、例えば、自動火災報知設備、空調設備などにおける気温センサとして備えられる。また、温度センサ1は、例えば、貼付製剤、例えば、人間が近寄りづらい環境(例えば、毒ガス存在下、高所など、電池交換に手間を要したり、有線接続が困難な場所など)に設置する過昇温警告設備や、熱中症防止対策となるように屋外作業時の着衣(服や帽子や靴)などに備えられる。
【0037】
2−1.空調設備
温度センサ1が空調設備に設けられる場合には、例えば、センサ積層体7および発信器4は、空調が必要な場所(検知場所)に設置される。一方、受信器5は、空調設備のスイッチに接続される。空調設備として、例えば、暖房設備(例えば、ハウス栽培に用いられる建屋(いわゆる、ビニールハウス)を暖房する暖房設備)、冷房設備などが挙げられる。
【0038】
次に、温度センサ1が暖房設備に設けられる場合の検知方法を説明する。
【0039】
検知場所の気温が低い場合(温度T(サーモクロミック材料の変色点)未満である場合)には、温度センサ1は、サーモクロミック樹脂層3の光透過率は低いため、太陽電池層2を遮光している。そのため、太陽電池層2は、起電力を生じず、発信器4は、信号を発信せず、受信器5は、信号を受信しない。暖房設備は、検知場所(建屋)内を継続して暖房する。
【0040】
一方、検知場所の気温が高くなった場合(温度T(サーモクロミック材料の変色点)以上となる場合)には、サーモクロミック樹脂層3の温度が高くなり、そうすると、サーモクロミック樹脂層3の光透過率が高くなり、太陽電池層2は、光をサーモクロミック樹脂層3を介して受光する。そうすると、太陽電池層2は、起電力を生じ、発信器4は、太陽電池層2の起電力に基づいて、信号を発信して、受信器5は、信号を受信する。これによって、暖房設備のスイッチが切られ、建屋内の暖房が中断(停止)される。検知場所の気温が温度T以上となる間は、太陽電池層2による起電力の発生、発信器4による信号の発信、および、受信器5による信号の受信が、継続される。
【0041】
その後、検知場所の気温が再度低くなった場合(温度T(サーモクロミック材料の変色点)未満に戻った場合)には、サーモクロミック樹脂層3の光透過率が低くなるため、サーモクロミック樹脂層3は光を遮光する。そのため、太陽電池層2は、起電力を生じず、発信器4は、信号の発信を止め、受信器5は、信号を受信しなくなる。その結果、暖房設備のスイッチが入り、建屋内の暖房が再開される。
【0042】
2−2.自動火災報知設備
温度センサ1が自動火災報知設備に備えられる場合には、センサ積層体7および発信器4は、火災の検知が必要な場所(検知場所)に設置される。一方、受信器5は、防災センターなどの管理施設に設けられる。
【0043】
そして、温度センサ1は、常温環境にあり、サーモクロミック樹脂層3の温度は、通常、低い(温度T(サーモクロミック材料の変色点)未満である)ため、サーモクロミック樹脂層3の光透過率は低い。そのため、太陽電池層2を遮光している。そのため、太陽電池層2は、起電力を生じず、発信器4は、火災信号を発信せず、受信器5は、火災信号を受信しない。
【0044】
一方、火災が発生したときには、サーモクロミック樹脂層3の温度が高くなる(温度T(サーモクロミック材料の変色点)以上となる)ため、サーモクロミック樹脂層3の光透過率が高くなり、光はサーモクロミック樹脂層3を透過し、太陽電池層2は、光をサーモクロミック樹脂層3を介して受光する。そうすると、太陽電池層2は、起電力を生じ、発信器4は、太陽電池層2の起電力に基づいて、火災信号を発信して、受信器5は、火災信号を受信する。
【0045】
2−3.貼付製剤
温度センサ1が貼付製剤に用いられる場合には、センサ積層体7は、貼付製剤に対して積層される。具体的には、太陽電池層2の裏面(受光面6に対する反対面)を貼付製剤層20(
図1の仮想線参照)に積層する。貼付製剤層20は、貼付薬成分を含有し、感圧接着性を有しており、シート形状を有する。つまり、貼付製剤層20、太陽電池層2およびサーモクロミック樹脂層3を厚み方向に順次備える貼付製剤積層体を準備する。また、発信器4は、貼付製剤層20に対して近接配置されている。一方、受信器5は、医療管理者に管理されるように配置される。
【0046】
そして、貼付製剤が人体に対して投与される前には、貼付製剤は、人体と接触していないため、サーモクロミック樹脂層3の温度は、低く(温度T(サーモクロミック材料の変色点)未満であり)、サーモクロミック樹脂層3の光透過率が低くなり、サーモクロミック樹脂層3は、太陽電池層2を遮光している。そのため、太陽電池層2は、起電力を生じず、発信器4は、人体が貼付製剤を貼付したことの信号(貼付信号)を発信せず、受信器5は、信号(貼付信号)を受信しない。
【0047】
次に、貼付製剤層20の貼付面が人体に貼付されると、人体からの熱が、貼付製剤層20および太陽電池層2を介して、サーモクロミック樹脂層3に伝導する。そうすると、サーモクロミック樹脂層3の温度が高くなり(温度T(サーモクロミック材料の変色点)以上となり)、そのため、サーモクロミック樹脂層3の光透過率が高くなり、太陽電池層2は、光をサーモクロミック樹脂層3を介して受光する。そうすると、太陽電池層2は、起電力を生じ、発信器4は、太陽電池層2の起電力に基づいて、貼付信号を発信して、受信器5は、貼付信号を受信する。医療管理者は、受信器5における貼付信号を認識する。
【0048】
3.作用効果
そして、この温度センサ1を光に暴露させる環境に配置して、環境の温度変化に基づいて、サーモクロミック樹脂層3の温度が変化すると、サーモクロミック樹脂層3の光透過率が上昇する。そうすると、光がサーモクロミック樹脂層3を透過し、続いて、太陽電池層2が光を受光して起電力を生じ、かかる起電力により、環境の温度変化を検知する。
【0049】
また、この温度センサ1は、サーモクロミック樹脂層3の光透過率の上昇による、太陽電池層2の起電力に基づいて、環境の温度変化を検知するので、特許文献1のように、別途、電源を設ける必要がない。そのため、この温度センサ1は、部品点数が低減され、装置構成が簡単である。
【0050】
また、この温度センサ1では、サーモクロミック樹脂層3は、太陽電池層2に対して直接接触しているので、太陽電池層2が、サーモクロミック樹脂層3を透過した光を直接受光することができる。そのため、環境の温度変化を優れた感度で検知することができる。
【0051】
また、この温度センサ1は、フィルム形状を有する太陽電池層2と、その厚み方向一方側に配置され、フィルム形状を有するサーモクロミック樹脂層3とを備えるので、構成が簡単であり、小型化を図ることができる。
【0052】
また、この温度センサ1によれば、電力検知部である発信器4が、太陽電池層2において生じる起電力を検知するので、環境の温度変化を確実に検知することができる。
【0053】
また、この温度センサ1では、発信器4は、太陽電池層2から直接供給される電力により作動するので、別途、外部電源を温度センサ1に備えることなく、発信器4を駆動させることができる。そのため、この温度センサ1は、部品点数が低減され、装置構成が簡単である。
【0054】
また、この温度センサ1では、電力検知部が、太陽電池層2に接続される発信器4であるので、かかる発信器4から発信された信号を受信器5が受信することにより、遠隔で、環境の温度変化を確実に検知することができる。
【0055】
4.第1実施形態の変形例
第1実施形態では、
図1に示すように、温度センサ1は、受信器5を備えている。
【0056】
しかし、図示しないが、温度センサ1は、受信器5を備えることなく、構成されていてもよい。
【0057】
つまり、温度センサ1は、太陽電池層2、サーモクロミック樹脂層3および送信器4を備える。一方、受信器5は、温度センサ1とは、別途設置された受信装置(図示せず)に備えられる。
【0058】
また、第1実施形態では、太陽電池層2およびサーモクロミック樹脂層3のそれぞれは、フィルム形状を有している。
【0059】
しかし、太陽電池層2およびサーモクロミック樹脂層3の少なくとも一方は、フィルム形状ではなく、例えば、ブロック形状などの不定形状(フィルム形状を除く)を有していてもよい。
【0060】
また、第1実施形態では、温度T(サーモクロミック材料の変色点)未満では、サーモクロミック樹脂層3が太陽電池層2を遮光しているが、光の一部がサーモクロミック樹脂層3を透過して、太陽電池層2が第1起電力を発生してもよい。その場合において、温度T(サーモクロミック材料の変色点)以上では、光の全部または一部がサーモクロミック樹脂層3を透過して、太陽電池層2が第2起電力を発生し、2つの起電力の差(第2起電力−第1起電力、つまり、起電力の上昇)に基づいて、発信器4が貼付信号を発信する。
【0061】
5.第2実施形態
第2実施形態において、第1実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0062】
第1実施形態では、
図1に示すように、サーモクロミック樹脂層3は、太陽電池層2に対して直接接触している。
【0063】
一方、第2実施形態では、
図2に示すように、サーモクロミック樹脂層3は、太陽電池層2に対して機能性層8を介して積層されている。センサ積層体7は、太陽電池層2、機能性層8およびサーモクロミック樹脂層3を厚み方向に順次備えている。
【0064】
機能性層8は、太陽電池層2の受光面6を被覆している。具体的には、機能性層8は、太陽電池層2の受光面6に配置されている。機能性層8は、フィルム形状を有している。
【0065】
機能性層8としては、例えば、断熱層、特定波長透過層、接着層、基材層などが挙げられる。
【0066】
5−1.断熱層
断熱層は、透明の断熱材料からなる。断熱材料としては、例えば、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレンなどの発泡ポリオレフィン、例えば、発泡ポリスチレン、例えば、発泡ポリウレタンなどの樹脂発泡体、例えば、中空シリカを添加した樹脂シート、例えば、シリカエアロゲルなどが挙げられる。断熱層の厚みは、例えば、5μm以上、また、例えば、1000μm以下である。
【0067】
機能性層8が断熱層であれば、例えば、温度センサ1を貼付製剤に用いたときに、人体に対するサーモクロミック樹脂層3への熱伝導を緩慢にすることができる。従って、例えば、人体が誤って貼付製剤層20に触れた際に、かかる指の接触に基づく、サーモクロミック樹脂層3への熱伝導を緩慢にし、結果的に、サーモクロミック樹脂層3の光透過率の変化を防止することができる。つまり、人体が誤って貼付製剤層20に触れた際の、温度センサ1の誤作動を防止することができる。
【0068】
5−2. 特定波長透過層
特定波長透過層は、特定波長の光のみが透過することができ、特定波長以外の光を遮光することができる材料からなる。特定波長透過層の厚みは、例えば、5μm以上、また、例えば、250μm以下である。
【0069】
機能性層8が特定波長透過層であれば、太陽電池層2に対して入射する光のうち、特定波長の光のみが透過することができる。そのため、サーモクロミック樹脂層3では遮光できない光(例えば、太陽光が持つ赤外波長)を遮光することができ、変色点(T)未満の温度の時の誤動作を防止することができる。
【0070】
5−3. 接着層
接着層は、透明な接着材料からなる。接着層の厚みは、例えば、5μm以上、また、例えば、250μm以下である。
【0071】
機能性層8が接着層であれば、たとえ、サーモクロミック樹脂層3が接着性(感圧接着性)を有さない場合であっても、サーモクロミック樹脂層3を太陽電池層2に対して接着することができる。そのため、センサ積層体7の信頼性、ひいては、温度センサ1の信頼性を向上させることができる。
【0072】
5−4. 基材層
基材層は、例えば、ガラス基材などの、透明な硬質材料からなる。基材層の厚みは、例えば、25μm以上、また、例えば、1000μm以下である。
【0073】
機能性層8が基材層であれば、機能性層8により、太陽電池層2およびサーモクロミック樹脂層3を支持することができる。そのため、センサ積層体7の機械強度を向上させることができる。
【0074】
サーモクロミック樹脂層3は、機能性層8の表面(上面)を被覆している。サーモクロミック樹脂層3は、機能性層8の表面(上面)に配置されている。
【0075】
そして、この第2実施形態によれば、
図2に示すように、機能性層8に基づく上記した各作用効果を奏することができる。
【0076】
一方、第1実施形態では、
図1に示すように、サーモクロミック樹脂層3は、太陽電池層2に対して直接接触しているので、太陽電池層2が、サーモクロミック樹脂層3を透過した光を直接受光することができる。そのため、環境の温度変化を優れた感度で検知することができる。
【0077】
6.第3実施形態
第3実施形態において、第1および第2実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0078】
第1実施形態では、
図1に示すように、サーモクロミック樹脂層3は、太陽電池層2の厚み方向一方側(
図1における上側)のみに配置されている。
【0079】
一方、第3実施形態では、
図3に示すように、サーモクロミック樹脂層3は、太陽電池層2の厚み方向両側に配置される。
【0080】
太陽電池層2は、厚み方向において互いに対向する第1受光面(第1主面)6および第2受光面(第2主面)9を有する。太陽電池層2は、受光面6および第2受光面9の両面(2つの主面)において受光した光に基づいて起電力を生じることができる。要するに、太陽電池層2は、両面タイプの太陽電池である。
【0081】
サーモクロミック樹脂層3は、太陽電池層2の第1受光面6および第2受光面9の両面に積層されている。サーモクロミック樹脂層3は、太陽電池層2の第1受光面6および第2受光面9の両面に直接接触している。
【0082】
そのため、センサ積層体7は、サーモクロミック樹脂層3、太陽電池層2およびサーモクロミック樹脂層3を厚み方向に順次備える。
【0083】
第3実施形態の温度センサ1は、両面タイプの太陽電池層2を備えるので、片面タイプの太陽電池層2を備える第1実施形態(
図1参照)の温度センサ1に比べて、太陽電池層2の単位面積当たりの発電力が高い。
【0084】
このような温度センサ1は、好ましくは、空調設備、より好ましくは、ハウス栽培の建屋の暖房設備に用いられる。
【0085】
温度センサ1は、ハウス栽培の建屋の暖房設備に用いられる場合には、温度センサ1により生じる影によって、栽培される植物の成長が阻害され易い。しかし、第3実施形態の温度センサ1では、太陽電池層2の単位面積当たりの発電力が高いので、太陽電池層2の面積を小さくして、栽培される植物の成長の阻害を抑制しても、太陽電池層2の発電力を維持することができる。
【0086】
7.第4実施形態
第4実施形態において、第1〜第3実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0087】
図4に示すように、第4実施形態では、第1配線15を介して太陽電池層2および発信器4に接続される二次電池10と、第1配線15から分岐する第1分岐配線13および第2分岐配線14と、第1分岐配線13および第2分岐配線14に介在される第1スイッチ11および第2スイッチ12とを備える。
【0088】
第1分岐配線13および第2分岐配線14は、第1配線15における太陽電池層2および発信器4の間において、2箇所のそれぞれから分岐している。第1分岐配線13の第1配線15における分岐点は、第2分岐配線14の第1配線15における分岐点に対して、電流の流れ方向上流側に位置している。第1分岐配線13および第2分岐配線14は、ともに、二次電池10に接続されている。第1分岐配線13には、第1スイッチ11が設けられている。第2分岐配線14には、第2スイッチ12が設けられている。
【0089】
第4実施形態では、太陽電池層2が発電するときには、第1スイッチ11を閉じ、第2スイッチ12を開く。すると、二次電池10が、太陽電池層2において生じた電気を蓄電する。
【0090】
一方、この二次電池10が放電するときには、第1スイッチ11を開き、第2スイッチ12を閉じる。すると、発信器4は、太陽電池層2において生じた起電力を信号としてのみ検知する。発信器4は、検知した信号に基づき、二次電池10の放電に基づいて、例えば、信号を増幅する。
【0091】
さらに、二次電池10を、別の配線(図示せず)を介して、別の電気機器(図示せず)と接続し、二次電池10を電源として、別の電気機器(図示せず)を作動させることもできる。
【0092】
好ましくは、
図1の第1実施形態のように、温度センサ1は、二次電池10と、第1スイッチ11および第2スイッチ12とを備えない。
【0093】
8.第4実施形態の変形例
第4実施形態では、
図4に示すように、二次電池10を、第1分岐配線13および第2分岐配線14を介して、第1配線15に接続している。
【0094】
しかし、外部電源16を、第1配線15ではなく、発信器4に電力供給配線17を介して接続することもできる。
【0095】
外部電源16は、電力供給配線17によって、発信器4と電気的に接続されている。外部電源16は、例えば、一次電池、二次電池などを含む。
【0096】
この変形例では、発信器4は、太陽電池層2において生じた起電力を検知するのみである。そして、発信器4は、外部電源16から供給される電力により作動する。つまり、発信器4は、太陽電池層2において生じた起電力を検知するのみである。発信器4は、検知した信号に基づき、外部電源16から供給される電力を利用して、例えば、信号を増幅させる。
【0097】
9.第5実施形態
第1実施形態では、
図1の破線で示すように、発信器4は、検知信号を受信器5に無線発信するように構成されている。
【0098】
しかし、
図6に示すように、第5実施形態では、発信器4は、検知信号を受信器5に有線発信するように構成されている。
【0099】
具体的には、発信器4および受信器5は、信号配線18によって、電気的に接続されている。
【0100】
太陽電池層2が発電すると、その起電力に基づいて、発信器4が検知信号を受信器5に対して有線発信する。
【0101】
第5実施形態によれば、発信器4が受信器5に検知信号を有線発信するので、発信器4が受信器5に無線発信する第1実施形態(
図4参照)に比べて、確実な発信をすることができる。
【0102】
一方、第1実施形態では、受信器5を発信器4に対して遠隔に配置できるので、受信器5の設置の自由度を高めることができる。
【0103】
10.第6実施形態
第6実施形態において、第1〜第4実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0104】
第5実施形態では、
図6に示すように、温度センサ1は、発信器4を備えている。
【0105】
しかし、
図7に示すように、第6実施形態では、温度センサ1は、発信器4を備えず、太陽電池層2、サーモクロミック樹脂層3および信号配線18を備える。
【0106】
信号配線18は、太陽電池層2と、温度センサ1とは別途設置されるトリガースイッチ19とを電気的に接続する。
【0107】
トリガースイッチ19は、例えば、温度センサ1が空調設備に設けられる場合には、空調設備をONおよびOFFするスイッチである。
【0108】
太陽電池層2において起電力が生じると、この起電力をトリガー信号としてトリガースイッチ19に伝送され、トリガースイッチ19は、空調設備(暖房設備)をONおよびOFFのいずれかを実施する。
【0109】
第6実施形態では、温度センサ1が発信器4および受信器5を備えないので、部品点数を削減して、構成を簡単にすることができる。
【実施例】
【0110】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0111】
また、部および%については、特段の記載がない限り、それぞれ、質量部および質量%を意味する。
【0112】
実施例1
図1に示すように、太陽電池層2およびサーモクロミック樹脂層3からなるセンサ積層体7と、太陽電池層2と電気的に接続される電力検知部4とを備える温度センサ1を用意した。
【0113】
なお、サーモクロミック樹脂層3は、シリコーン樹脂およびサーモクロミック顔料(変色点:30℃)から調製した。さらに、電力検知部4は、電流電圧計および整流器を備えていた。上記した各部材を表1に示す。シリコーン樹脂およびサーモクロミック顔料の配合割合を表2に示す。
【0114】
次に、センサ積層体7の太陽電池層2を、25℃(未作動状態)の加温装置(SHAMAL HOTPLATE、型番HHP−411、AS ONE社)に接触させた。次いで、センサ積層体7のサーモクロミック樹脂層3に、光を、照度500luxで照射した。電力検知部4において検知された電圧および電流を測定し、それらに基づいて、電力を測定した。
【0115】
次に、上記した加温装置を35℃に昇温したときの電力検知部4において検知される電圧および電流を測定し、それらに基づいて、電力を測定した。
【0116】
これらの結果を、表2に示す。
【0117】
表2から分かるように、実施例1では、電力検知部4がサーモクロミック樹脂層3において電力の上昇を検知できたことから、加温装置の温度が、サーモクロミック樹脂層3における温度T(サーモクロミック材料の変色点)以上となったことを検知したことが分かる。
【0118】
実施例2および3
サーモクロミック顔料の配合割合、サーモクロミック樹脂層の厚み、照度を表2に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様に処理した。
【0119】
これらの結果を、表2に示す。
【0120】
表2から分かるように、実施例2および3では、電力検知部4がサーモクロミック樹脂層3において電力の上昇を検知できたことから、加温装置の温度が、サーモクロミック樹脂層3における温度T(サーモクロミック材料の変色点)以上となったことを検知したことが分かる。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】