(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6679400
(24)【登録日】2020年3月23日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】ケースレスフィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20200406BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20200406BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
H01G4/32 540
H01G4/228 Q
H01G4/38 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-89382(P2016-89382)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-199793(P2017-199793A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】北島 崇雄
【審査官】
上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−138083(JP,A)
【文献】
特開2009−044920(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/001595(WO,A1)
【文献】
特開2014−116400(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/027462(WO,A1)
【文献】
実開昭58−175625(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
H01G 4/228
H01G 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数または複数のコンデンサ素子に外部引き出し端子が接続されてコンデンサユニットが構成され、このコンデンサユニットがそれぞれの素子軸方向を互いに平行にする状態で複数個並べられ、前記コンデンサユニット群における各コンデンサ素子の全体および各外部引き出し端子の根元部が外装樹脂によって被覆されてなるケースレスフィルムコンデンサであって、
前記複数個のコンデンサユニットのうち、一の前記コンデンサユニットと他の前記コンデンサユニットが前記コンデンサユニットのユニット並び方向に離間して配置され、
前記ユニット並び方向と前記素子軸方向とに沿う状態で互いに対向する前記外装樹脂の一対の主側面において、前記一のコンデンサユニットと前記他のコンデンサユニットとの間の前記コンデンサユニットが位置対応しないユニット空白領域に前記一対の主側面の対向方向内方に凹入するくびれが形成され、前記ユニット空白領域での前記外装樹脂の外方対向する主側面どうし間の差し渡し寸法が前記コンデンサユニットが位置対応するユニット存在領域での前記外装樹脂の前記同様の差し渡し寸法よりも短くされており、
さらに、前記外部引き出し端子の引き出しについて、少なくとも前記外装樹脂の主側面において前記外部引き出し端子が引き出されていることを特徴とするケースレスフィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記他のコンデンサユニットが前記ユニット並び方向に配列した複数のコンデンサ素子からなる請求項1記載のケースレスフィルムコンデンサであって、
前記ユニット並び方向における、前記一の前記コンデンサユニットと前記他のコンデンサユニットとの間の離間距離は、前記他のコンデンサユニットを構成する前記複数のコンデンサ素子間の距離よりも大きいことを特徴とするケースレスフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記外部引き出し端子は、前記外装樹脂の主側面から引き出されているほか、主側面以外の側面からも引き出されている請求項1または請求項2に記載のケースレスフィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単数または複数のコンデンサ素子に外部引き出し端子が接続されてコンデンサユニットが構成され、このコンデンサユニットが素子軸方向を平行にする状態で複数個並べられ、各コンデンサ素子の全体および各外部引き出し端子の根元部が外装樹脂によって被覆されてなるケースレスフィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ケースレスフィルムコンデンサは、一般的に小型化、軽量化、低コスト化に有利とされている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
従来のケースレスフィルムコンデンサの構造を
図4および
図5に示して、以下に説明する。
図4は従来のケースレスフィルムコンデンサの構造を示す斜視図、
図5はその横断面図である。
図4では外装樹脂の内部に埋め込まれているコンデンサユニットが透視的に図示されている。
【0004】
図4に示すように、従来のケースレスフィルムコンデンサでは、複数(
図4では3つ)のコンデンサ素子1の全体および外部引き出し端子3の根元部が外装樹脂4によって被覆されている。ここで、3つのコンデンサ素子1が並べられている方向をユニット並び方向Xとする。そして、コンデンサ素子1の軸方向を素子軸方向Z(図面上では上下方向)とし、ユニット並び方向Xと素子軸方向Zの双方に垂直な方向を厚み方向Yとする。
【0005】
各コンデンサ素子1の軸方向Zの両端面に、コンデンサ素子1の正極と負極にそれぞれ接続された状態の金属電極2が金属溶射等によって形成されている。そして、正極および負極の金属電極2,2に対して個別に外部引き出し端子3,3が結線されている。外部引き出し端子3,3は、板厚が比較的厚いバスバーと呼ばれるものである。
【0006】
コンデンサ素子1の全体および外部引き出し端子3の根元部が外装樹脂4によって被覆されたケースレスフィルムコンデンサは、成形金型を用いる射出成形によって作製される。この点で、プラスチックケース内にコンデンサ素子および外部引き出し端子の根元部を収容し、ケース内に溶融樹脂をポッティング(注入)して作製されるケース付きフィルムコンデンサとは大きく異なる。
【0007】
3つのコンデンサ素子1は、横断面が小判形の扁平柱状体を呈し、それぞれの素子軸方向(小判面に垂直な方向)Zが互いに平行となっている。
【0008】
コンデンサ素子1の立体形状である小判形の扁平柱状体の主側面1a(一対のものが厚み方向Yで外方対向している)は、コンデンサ素子1の外表面のうち最も面積の大きな側面であるが、3つのコンデンサ素子1はそれぞれの主側面1aが同一平面内に位置する姿勢で並べられている。次に広いのが小判面である素子軸方向Zの側面1b(一対のものがZ方向で外方対向している)であるが、3つのコンデンサ素子1はそれぞれの素子軸方向Zの側面1bが同一平面内に位置する姿勢で並べられている。前記2つの同一平面は互いに垂直の関係にある。
【0009】
3つのコンデンサ素子1の負極側の外部引き出し端子3どうしは一体化された共通グランド端子を構成している。3つの正極側の外部引き出し端子3は互いに別の回路の容量部として用いられることもあれば、互いに共通の回路の容量部として用いられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−234932号公報
【特許文献2】特開2014−138083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のケースレスフィルムコンデンサにおいては、
図5にも示すように、外装樹脂4の外側面が、並べて配置された複数のコンデンサ素子1の外側面を包絡した仮想ユニット包絡面をほぼ相似的に拡大したような形状を呈している。すなわち、個々のコンデンサ素子1は小判形の扁平柱状体であるが、外装樹脂4の外表面も類似の小判形の扁平柱状体である。
【0012】
実使用において、複数のコンデンサ素子1はそれぞれ熱を発生する。熱は高温側のコンデンサ素子1から低温側のコンデンサ素子1に向けて移動する。つまり、コンデンサ素子1が接続される回路の定格電流や定格電圧などの回路特性が互いに相違する場合には、特に両者の間で温度差が顕著になり、複数のコンデンサ素子1間で熱的干渉の問題が生じる。従来のケースレスフィルムコンデンサの場合、一方のコンデンサ素子1と他方のコンデンサ素子2との間の温度差が大きくなると、互いに熱的干渉を引き起こし、ケースレスフィルムコンデンサの性能を劣化させたり、寿命を短縮化したりする不都合があった。
【0013】
一方、別の課題として、外部引き出し端子3の引き出しの態様がある。従来のケースレスフィルムコンデンサにあっては、一般的に、外部引き出し端子3は外装樹脂4の外表面のうち、素子軸方向Zの側面から外部引き出し端子3が引き出されている。外装樹脂4の外表面には、ユニット並び方向Xと素子軸方向Zの双方に沿う側面である主側面4aと、素子軸方向Zの端面にあたる側面4bと、ユニット並び方向Xの端面にあたる側面4cとがある。これら3種類の側面はそれぞれその一対のものが外方対向面となっている。従来例の場合には、これら3種類の側面のうち、外部引き出し端子3は専らいずれかの一側面のみから引き出されていた。
【0014】
しかし、近年では、ケースレスフィルムコンデンサを接続する機器(例えばインバータ装置)の回路構成が複雑化し、それに伴って個々のコンデンサユニットから引き出す外部引き出し端子3の数が増え、外装樹脂4からの外部引き出し端子3の引き出しの位置や方向について、高い自由度が求められるようになってきている。
【0015】
しかしながら、従来のケースレスフィルムコンデンサにあっては、依然として、外部引き出し端子3の引き出しは専ら一側面のみに限定されており、外部引き出し端子3の引き出しの自由度が低く、機器に対する組み立てに困難を引き起こすおそれがあった。
【0016】
なお、外部引き出し端子3の引き出しが専ら一側面のみに限定されていたことの背景として、ポッティング方式によるケース付きのフィルムコンデンサの製造過程において、プラスチックケースの内部にコンデンサユニットを収容し、ケース内(コンデンサユニットとプラスチックケースとの空間)に液状樹脂をポッティングすることから、外部引き出し端子の引き出しが自ずとケース開口面(上面)からの引き出しに限定されてしまうということがある。このケース付きフィルムコンデンサでの一般的な技術常識がケースレスフィルムコンデンサでもそのまま踏襲されていた。
【0017】
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、ケースレスフィルムコンデンサに関して、外装樹脂の内部での熱移動に起因するコンデンサユニット間の熱的干渉を抑制して、ケースレスフィルムコンデンサの性能維持や長寿命を確保するとともに、外部引き出し端子の引き出しの自由度を高め、回路構成が複雑化する近年の機器に対する組み立ての容易性を確保することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0019】
本発明によるケースレスフィルムコンデンサは、
単数または複数のコンデンサ素子に外部引き出し端子が接続されてコンデンサユニットが構成され、このコンデンサユニットがそれぞれの素子軸方向を互いに平行にする状態で複数個並べられ、前記コンデンサユニット群における各コンデンサ素子の全体および各外部引き出し端子の根元部が外装樹脂によって被覆されてなるケースレスフィルムコンデンサであって、
前記複数個のコンデンサユニットのうち、一の前記コンデンサユニットと他の前記コンデンサユニットが前記コンデンサユニットのユニット並び方向に離間して配置され、
前記ユニット並び方向と前記素子軸方向とに沿う状態で互いに対向する前記外装樹脂の一対の主側面において、前記一のコンデンサユニットと前記他のコンデンサユニットとの間の前記コンデンサユニットが位置対応しないユニット空白領域に前記一対の主側面の対向方向内方に凹入するくびれが形成され、前記ユニット空白領域での前記外装樹脂の外方対向する主側面どうし間の差し渡し寸法が前記コンデンサユニットが位置対応するユニット存在領域での前記外装樹脂の前記同様の差し渡し寸法よりも短くされており、
さらに、前記外部引き出し端子の引き出しについて、少なくとも前記外装樹脂の主側面において前記外部引き出し端子が引き出されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の上記の構成において、コンデンサユニットはコンデンサ素子とその正・負の金属電極に接続された外部引き出し端子を有するもので、コンデンサ素子の数は単数であってもよいし、複数であってもよい。このようなコンデンサユニットが複数、個々の素子軸方向(コンデンサ素子の軸方向)を互いに平行にする状態で並べられている。隣接するコンデンサユニットどうしは通常、比較的近接した状態のもとに並べられる。個々のコンデンサユニットはその静電容量としての機能が互いに独立している。あるコンデンサユニットはある回路用の静電容量として機能し、別のコンデンサユニットは別の回路用の静電容量として設けられる。例えば、車載用のインバータ装置において平滑回路用とフィルタ回路用といった具合である。
【0021】
複数のコンデンサユニット群は、各コンデンサ素子の全体および各外部引き出し端子の根元部が外装樹脂によって被覆されている。コンデンサユニット群を被覆する外装樹脂の外表面について、ユニット並び方向(コンデンサユニットの並び方向)と素子軸方向の双方に沿う側面を外装樹脂の主側面とする。この主側面は、主側面に垂直な方向で一対のものが対向している(外方対向)。本発明の特徴は、複数のコンデンサユニット群のうち一のコンデンサユニットと他のコンデンサユニットとがユニット並び方向に離間して配置され、この外装樹脂の一対の主側面に凹入するくびれが形成されていることである。
【0022】
すなわち、主側面はユニット並び方向において2つの領域に分かれる。一つはコンデンサユニットが位置対応するユニット存在領域であり、もう一つは一のコンデンサユニットと他のコンデンサユニットとの間のコンデンサユニットが位置対応しないユニット空白領域である。主側面において凹入するくびれは、ユニット空白領域において形成される。くびれの凹入方向は一対の主側面の対向方向(主側面に垂直な方向)の内方である。
【0023】
外装樹脂の主側面に凹入するくびれを形成してあることにより、ユニット空白領域での外装樹脂の外方対向する主側面どうし間の差し渡し寸法は、ユニット存在領域での外装樹脂の外方対向する主側面どうし間の差し渡し寸法よりも短くなる。
【0024】
外装樹脂の主側面に凹入するくびれを形成してあることにより、外装樹脂の全体は、ユニット並び方向に並ぶユニット存在領域と、隣接するユニット存在領域とに挟まれたユニット空白領域とに分かれる。外装樹脂のユニット空白領域は凹入するくびれに位置対応する。外装樹脂のユニット空白領域の差し渡し寸法は、外装樹脂のユニット存在領域の差し渡し寸法よりも幅狭である。すなわち、外装樹脂のユニット存在領域に比べて、外装樹脂のユニット空白領域は肉厚が小さく、それに応じて断面積が小さくなっている。
【0025】
外装樹脂の一方のユニット存在領域に埋め込まれている一のコンデンサユニットと他方のユニット存在領域に埋め込まれている他のコンデンサユニットとは、それぞれに接続される回路が互いに別のものとなっている(定格の電圧、電流が同じではない)。したがって、コンデンサユニット間で互いに発熱量が異なるが、一方のコンデンサユニットと他方のコンデンサユニットとは、両者間になるべく熱量の移動が起こらないことが性能維持や寿命にとって都合が良い(熱的干渉の回避)。
【0026】
移動熱量は、隣接するユニット存在領域どうしの境界面の断面積が大きいほど多くなり、また、ユニット間の距離が小さいほど多くなる。従来のケースレスフィルムコンデンサにあっては、ユニット境界面での外装樹脂の断面積は比較的大きく、かつユニット間の距離も比較的小さかったため、移動熱量も比較的多くあった。これに対して本発明の場合は、一のコンデンサユニットと他のコンデンサユニットとをユニット並び方向に離間して配置するとともに、境界のユニット空白領域に凹入するくびれを形成して断面積を減らしているので、移動熱量が抑えられる。
【0027】
よって、本発明によれば、ケースレスフィルムコンデンサの性能維持や寿命に好ましい効果をもたらす。
【0028】
一方、外部引き出し端子の外装樹脂からの引き出し位置に関して、なるべく制約を与えないことが、コンデンサの電気的特性やフレームなど固定部への取り付け構造の利便性にとって好ましい。外部引き出し端子の引き出しの自由度が高いほど、コンデンサのインピーダンスやインダクタンスの低減など回路特性に有利に作用する。外装樹脂の内部に埋め込むコンデンサ素子の数が多くなるほど、外部引き出し端子の配設の自由度を高くすることが望ましい。
【0029】
外装樹脂の主側面は、他の側面(素子軸方向の両端の側面やユニット並び方向の両端の側面)に比べて展開面積が広い。したがって、外装樹脂の主側面での外部引き出し端子の引き出しの位置や方向について、その自由度が他の側面に比べて格段に高いものとなる。
【0030】
本発明のケースレスフィルムコンデンサは、外部引き出し端子の引き出しについて、少なくとも外装樹脂の主側面(展開面積が広い)において引き出すように構成しているので、回路構成が複雑化する近年の機器に適用するケースレスフィルムコンデンサにとって、その組み立ての容易性を確保することが有利となる。さらに、くびれを入れた分の樹脂使用量が削減され、材料費の低減が促される。
【0031】
なお、外部引き出し端子は、専ら外装樹脂の主側面から引き出されているが、主側面以外の側面からも引き出されているのでもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、一のコンデンサユニットと他のコンデンサユニットとをユニット並び方向に離間して配置するとともに、一のコンデンサユニットと他のコンデンサユニットとの間のユニット空白領域に凹入するくびれを設けてあるので、隣接するユニット間での移動熱量を低減し、ユニット間の熱的干渉を抑制し、ケースレスフィルムコンデンサの性能維持や寿命に好影響を与えることができる。また、くびれを入れた分の樹脂使用量が削減され、材料費の低減に繋がる。併せて、少なくとも凹入するくびれを形成してある外装樹脂の主側面から外部引き出し端子を引き出すように構成してあるが、この主側面は他の側面に比べて展開面積が比較的広く、外部引き出し端子の引き出しの自由度が高くなることから、コンデンサのインピーダンスやインダクタンスの低減など回路特性に有利に作用する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施例におけるケースレスフィルムコンデンサの構造を示す斜視図(内部に埋め込まれているコンデンサユニットを透視的に図示)
【
図2】
図1に対応するもので、外装樹脂を除去した状態で内部に埋め込まれているコンデンサユニットを顕現化して示したケースレスフィルムコンデンサの斜視図
【
図3】本発明の実施例におけるケースレスフィルムコンデンサの横断面図
【
図4】従来のケースレスフィルムコンデンサの構造を示す斜視図
【
図5】従来のケースレスフィルムコンデンサの横断面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、上記構成の本発明のケースレスフィルムコンデンサにつき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
【0035】
図1は本発明の実施例におけるケースレスフィルムコンデンサの構造を示す斜視図であり、内部に埋め込まれているコンデンサユニットが透視的に図示されている。
図2は
図1に対応するもので、外装樹脂を除去した状態で内部に埋め込まれているコンデンサユニットを顕現化して図示したケースレスフィルムコンデンサの斜視図、
図3はケースレスフィルムコンデンサの横断面図である。
【0036】
これらの図において、1はコンデンサ素子、2はコンデンサ素子1の端面に形成された金属電極(メタリコン)、3は金属電極2に結線された導電用の外部引き出し端子(バスバー)、4はコンデンサ素子1の全体と外部引き出し端子3の根元部を被覆する外装樹脂である。外部引き出し端子3は、正極側のものと負極側のものとの一対がある。U1は第1のコンデンサユニット、U2は第2のコンデンサユニットである。Xは3つのコンデンサ素子1が並べられているユニット並び方向、Zはコンデンサ素子1の軸方向である素子軸方向(図面上では上下方向)、Yはユニット並び方向Xと素子軸方向Zの双方に垂直な方向である厚み方向である。
【0037】
コンデンサ素子1は概略次のように構成されたものである。誘電体フィルムと金属蒸着電極からなる金属化フィルムを巻回して円柱状の金属化フィルムの巻回体を構成し、この巻回体に対してさらにその外周部に外装フィルムを巻回し、熱溶着して複合フィルム巻回体を得る。次に、この複合フィルム巻回体を直径方向にプレスして小判形の扁平柱状体とし、この扁平柱状体の軸方向両端に金属微粒子の溶射による金属電極を形成してコンデンサ素子を構成する。なお、長尺な金属化フィルムを巻回する代わりに、比較的短寸の金属化フィルムのシートを多数枚積層したものであってもよい。
【0038】
横断面が小判形で扁平柱状体のコンデンサ素子1の軸方向の両端面に、コンデンサ素子1の正極と負極にそれぞれ接続された状態の金属電極2が金属溶射等によって形成されている。そして、正極および負極の金属電極2,2に対して個別に外部引き出し端子3,3が結線されている。正極および負極の外部引き出し端子3,3は、板厚が比較的厚いバスバーと呼ばれるもので、最低でも0.5mm、標準的には1.5〜2.5mm程度の板厚を想定している。
【0039】
1つのコンデンサ素子1と、それの正極・負極一対の金属電極2,2に接続された外部引き出し端子3,3とをもって第1のコンデンサユニットU1が構成されている。また、ユニット並び方向Xに沿って2つ並べられたコンデンサ素子1,1と、それぞれの正極・負極一対の金属電極2,2に共通接続された外部引き出し端子3,3とをもって第2のコンデンサユニットU2が構成されている。
【0040】
小判形の扁平柱状体を呈する3つのコンデンサ素子1は、それぞれの素子軸方向(小判面に垂直な方向)Zが互いに平行となっている。
【0041】
コンデンサ素子1における上下面の小判形の直線部に挟まれた扁平柱状体の主側面1a(一対のものが外方対向している)は、コンデンサ素子1の外表面のうち最も面積の大きな側面であるが、3つのコンデンサ素子1はそれぞれの主側面1aが同一平面内に位置する姿勢で並べられている(特に
図3参照)。次に広いのが小判面である側面1b(一対のものが素子軸方向に外方対向している)であるが、3つのコンデンサ素子1はそれぞれの側面1bが同一平面(XY平面に平行な面)内に位置する姿勢で並べられている。前記2つの同一平面は互いに垂直の関係にある。
【0042】
第2のコンデンサユニットU2を構成する2つのコンデンサ素子1はユニット並び方向Xに近接した状態で配列している。負極側の外部引き出し端子3は2つのコンデンサ素子1に対して一体化された共通グランド端子を構成している。正極側の外部引き出し端子3は互いに別の回路の容量部として用いられることもあれば、互いに共通の回路の容量部として用いられることもある。また、別の回路といっても、2つのコンデンサ素子1は並列接続されていることから、同一機能、同一仕様の別の回路という意味である。
【0043】
第1のコンデンサユニットU1は、第2のコンデンサユニットU2が用いられる回路とは機能も仕様も異なるレベルの別の回路に用いられる。例えば、第1のコンデンサユニットU1が車載用(HEV(ハイブリッド電気自動車)用)のインバータ装置におけるフィルタ回路に用いられ、これとは別に、第2のコンデンサユニットU2がそのインバータ装置における平滑回路に用いられるといった具合である。
【0044】
かかる事情につき、第1のコンデンサユニットU1と第2のコンデンサユニットU2とは、その定格電圧や定格電流などの回路特性が互いに相違している。このような回路特性が互いに相違する第1のコンデンサユニットU1と第2のコンデンサユニットU2とは、外装樹脂4で被覆され、一体部品として取り扱われる。
【0045】
ここで問題となるのが熱移動である。もし、第1のコンデンサユニットU1の発熱量が多く、その温度が第2のコンデンサユニットU2の温度よりも高くなるとすると、第1のコンデンサユニットU1から第2のコンデンサユニットU2に向けて熱移動が起こる。逆に、第2のコンデンサユニットU2の発熱量が多く、その温度が第1のコンデンサユニットU1の温度よりも高くなるとすると、第2のコンデンサユニットU2から第1のコンデンサユニットU1に向けて熱移動が起こる。いずれにしても、その熱移動は第1のコンデンサユニットU1と第2のコンデンサユニットU2の境界面を介して行われる。
【0046】
本実施例のケースレスフィルムコンデンサにあっては、第1のコンデンサユニットU1と第2のコンデンサユニットU2とがユニット並び方向Xに離間して配置される。第1のコンデンサユニットU1と第2のコンデンサユニットU2との間のユニット並び方向Xにおける離間距離は、第2のコンデンサユニットU2を構成する各コンデンサ素子1間のユニット並び方向Xにおける距離よりも大きい。本実施例では、第2のコンデンサユニットU2を構成する2つのコンデンサ素子1はユニット並び方向Xに互いに隣接して配置され、第1のコンデンサユニットU1と第2のコンデンサユニットU2との間の離間距離を5〜20mmとしている。ユニット間の離間距離は、熱的干渉を回避するため、ユニット間の距離を確保するとともに、適正なくびれ4dを形成する観点から、ユニット間の離間距離は5mm以上とすることが好ましい。くびれ4dの形成により、熱移動経路となる樹脂部の断面積を小さくしている。また、くびれ4d部分の樹脂強度を確保するため、くびれ4dの凹みの大きさは、コンデンサ素子1の被覆部分の外装樹脂4の厚み程度とすることが好ましい。
【0047】
一方で、熱的干渉を回避する観点からは、外装樹脂4の厚み(被覆厚、本実施例では、5mmとしている)に対して2〜3倍あれば十分である。外装樹脂4の厚みに対してユニット間の離間距離を4倍超としても、大きな熱的干渉回避効果が見込めないほか、くびれ4dのくびれ量(凹みの大きさ)が大きくなり、くびれ4d部分の樹脂強度が低下するおそれがある。このため、ユニット間の離間距離は20mm以下とすることが好ましい。
【0048】
また、本実施例のケースレスフィルムコンデンサにあっては、第1のコンデンサユニットU1と第2のコンデンサユニットU2との間のユニット空白領域Bに位置する外装樹脂4には厚み方向Yの内方に向けて凹入するくびれ4dが形成されている。このくびれ4dは素子軸方向Zに沿って凹溝状に形成されている。くびれ4dは、外方対向する一対の外装樹脂4の主側面4a,4aの両方に対称的に形成されている。
【0049】
外装樹脂4の主側面4a,4aにくびれ4d,4dを形成した結果、ユニット空白領域Bにおいて、外装樹脂4の外方対向する主側面4a,4aどうし間の差し渡し寸法L
B は、ユニット存在領域Aでの外装樹脂4の外方対向する主側面4a,4aどうし間の差し渡し寸法L
A よりも短くなる。
【0050】
すなわち、外装樹脂4のユニット空白領域Bの差し渡し寸法L
B は、外装樹脂4のユニット存在領域Aの差し渡し寸法L
A よりも幅狭で、外装樹脂4のユニット存在領域Aに比べて、外装樹脂4のユニット空白領域Bは肉厚が小さく、それに応じて断面積が小さくなっている。ユニット存在領域Aの差し渡し寸法L
Aは、ユニット空白領域Bの差し渡し寸法L
B に外装樹脂4の厚みの2倍を加えた寸法と設定することができる。
【0051】
本実施例の場合のユニット間の境界断面積(ユニット空白領域Bの断面積)をS
B とし、
図5に示した従来例の場合のユニット間の境界断面積をS
B ′とすると、形成したくびれ4dの分だけ、断面積S
B は断面積S
B ′よりも小さくなっている。このため、境界のユニット空白領域Bの断面積S
B を減らした分に応じて移動熱量を抑えることができる。
【0052】
以上、本実施例によれば、第1のコンデンサユニットU1と第2のコンデンサユニットU2とをユニット並び方向Xに離間して配置するとともに、ユニット空白領域Bに凹入するくびれ4d,4dを形成して断面積を減らしているので、ユニット間の熱的干渉を回避し、ケースレスフィルムコンデンサの性能維持や寿命延長を図ることができる。加えて、くびれ4d,4dを入れた分だけ樹脂使用量が削減され、材料費の低減が促される。
【0053】
さらに、外部引き出し端子3の引き出し位置については、次のように構成している。くびれ4dの形成箇所として、外装樹脂4の3方向の側面のうち面積の広い主側面4aを選択しているが、これは上記したようにユニット間の熱的干渉を抑制するため、コンデンサユニット2の側面のうち最も狭い側面どうしをユニット並び方向Xに対向させるとともに、伝熱経路となる外装樹脂4のユニット間の境界断面積を小さくした結果である。
【0054】
外部引き出し端子3,3の引き出し箇所として、くびれ4dが形成された同じ主側面4aが選択されている。外装樹脂4の主側面4aは面積が広いので、この面から外部引き出し端子3,3を引き出すことは、引き出しの自由度を高めることに繋がる。
【0055】
そして、外部引き出し端子3,3の引き出しの自由度が高まると、ケースレスフィルムコンデンサのインピーダンスやインダクタンスなどの回路特性の向上に有利に作用する。このことは、外装樹脂4の内部に埋め込むコンデンサ素子1の数が多くなるほど有利に作用する。
【0056】
フィルムコンデンサに用いられる外部引き出し端子3はバスバーと呼ばれ、その板厚が最低でも0.5mmはある比較的厚肉の金属板である。これは肉厚で折り曲げ強度が比較的に大きいことから、外部機器に組み付けるときの組み付け公差の原因となったり、組み付け作業の抵抗要素となる。回路構成が複雑化する近年の機器に適用するケースレスフィルムコンデンサにとって、上記のように外部引き出し端子3の引き出しの自由度が向上することは、外部引き出し端子3の折り曲げ箇所を減少させ、その組み立ての容易性を確保する上で有利に作用する。また、外部引き出し端子3の引き回し距離の短縮化に繋がり、インダクタンス低減等の特性向上に寄与する。
【0057】
なお、外部引き出し端子3,3は、外装樹脂4の主側面4aからの引き出しとともに、主側面4a以外の側面からも引き出されているのでもよい。
【0058】
なお、複数のコンデンサユニットについて、その個々のものがコンデンサ素子1を1つ有するのでも複数有するのでも構わない。複数の場合、その数は2以上任意である。
【0059】
また、コンデンサユニットの数について2つの場合を例示したが、コンデンサユニットの数は3つ以上任意である。
【0060】
また、上記実施形態では、くびれ4dを外装樹脂4の主側面4aのみに形成しているが、主側面4aに直交する側面(
図1および2の素子軸方向Zに対向する上下面)にも、くびれを形成してもよい。但し、コンデンサユニット間を橋渡しする共通電極が存在する場合には、くびれの形成により共通電極に曲げ加工が別途必要となることから、くびれを形成しない方が好ましい。例えば、負極側がコンデンサユニット間で共通電極となっている場合には、負極側には素子軸方向Zのくびれを形成することなく、正極側のみに素子軸方向Zのくびれを形成することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ケースレスフィルムコンデンサに関して、隣接するユニット存在領域どうし間での熱的干渉も抑制を通じて、ケースレスフィルムコンデンサの性能維持や寿命を向上させるとともに、製品コストを低減する技術として有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 コンデンサ素子
3 外部引き出し端子
4 外装樹脂
4a 外装樹脂の主側面
4d くびれ
A ユニット存在領域
B ユニット空白領域
U1 第1のコンデンサユニット
U2 第2のコンデンサユニット
Z 素子軸方向