特許第6679428号(P6679428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6679428
(24)【登録日】2020年3月23日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】トンネル非常用設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/20 20060101AFI20200406BHJP
   A62C 3/00 20060101ALI20200406BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20200406BHJP
   A62C 33/00 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   A62C35/20
   A62C3/00 J
   G08B17/00 J
   A62C33/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-122789(P2016-122789)
(22)【出願日】2016年6月21日
(65)【公開番号】特開2017-225569(P2017-225569A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓史
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−123411(JP,A)
【文献】 特開2001−009053(JP,A)
【文献】 特開2010−046316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に設置され消火栓を使用する場合に、監視員通路下に配置されたホース収納部を昇降機構の作動により監視員通路上に上昇させて保持する消火栓設備と、
防災受信盤に設けられ、前記トンネル内の火災場所を特定した場合に、前記火災場所に対応した前記消火栓設備に上昇制御信号を送信して前記昇降機構を作動させ、前記ホース収納部を前記監視員通路上上昇させる消火栓連動制御部と、
を備えたことを特徴とするトンネル非常用設備。
【請求項2】
請求項1記載のトンネル非常用設備に於いて、
前記消火栓連動制御部は、前記トンネル内に設置された火災検知器からの火災信号を受信した場合に、前記火災信号を送信した前記火災検知器の設置場所に対応した前記消火栓設備に前記上昇制御信号を送信して前記昇降機構を作動させ、前記ホース収納部を前記監視員通路上上昇させることを特徴とするトンネル非常用設備。
【請求項3】
請求項2記載のトンネル非常用設備に於いて、
前記火災検知器は、前記トンネル内の設置場所の左右両側の監視エリアが相互補完的に重なるように配置されて火災を監視しており、
前記消火栓連動制御部は、前記火災検知器から何れか一方の監視エリアの火災を示す火災信号を受信した場合、火災が検知された監視エリアに位置する前記消火栓設備に前記上昇制御信号を送信して前記昇降機構を作動させ、前記ホース収納部を前記監視員通路上上昇させることを特徴とするトンネル非常用設備。
【請求項4】
請求項2記載のトンネル非常用設備に於いて、
前記消火栓連動制御部は、更に、火災が検知された監視エリアに隣接した他の監視エリアに位置する前記消火栓設備前記上昇制御信号を送信して前記昇降機構を作動させ、前記ホース収納部を前記監視員通路上上昇させることを特徴とするトンネル非常用設備。
【請求項5】
請求項2記載のトンネル非常用設備に於いて、
前記消火栓設備は、所定の操作により火災通報信号を前記防災受信盤に送信する発信機を備え、
前記消火栓連動制御部は、前記発信機からの前記火災通報信号を受信した場合に、当該発信機が設けられた前記消火栓設備に前記上昇制御信号を送信して前記昇降機構を作動させ、前記ホース収納部を前記監視員通路上上昇させることを特徴とするトンネル非常用設備。
【請求項6】
トンネル内に設置され消火栓を使用する場合に、監視員通路下に配置されたホース収納部を昇降機構の作動により監視員通路上に上昇させて保持する消火栓設備と、
前記消火栓設備に設けられ、所定の操作により火災通報信号防災受信盤に送信する発信機と、
前記発信機からの前記火災通報信号を受信した場合に、当該発信機が設けられた前記消火栓設備に上昇制御信号を送信して前記昇降機構を作動させ、前記ホース収納部を前記監視員通路上上昇させる消火栓連動制御部と、
が設けられたことを特徴とするトンネル非常用設備。
【請求項7】
請求項5又は6記載のトンネル非常用設備に於いて、
前記消火栓連動制御部は、更に、前記火災通報信号を送信した前記発信機が設けられた前記消火栓設備の両側に配置された他の消火栓設備に前記上昇制御信号を送信して前記昇降機構を作動させ、前記ホース収納部を前記監視員通路上上昇させることを特徴とするトンネル非常用設備。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載のトンネル非常用設備に於いて、
前記消火栓設備は、警報音及び又は警報メッセージを出力する音声警報部を備え、前記消火栓連動制御部から前記上昇制御信号を受信した場合に、前記音声警報部から警報音又は警報メッセージを出力させることを特徴とするトンネル非常用設備。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れかに記載のトンネル非常用設備に於いて、
前記消火栓設備は、点滅、明滅又は点灯される警報表示灯を備え、前記消火栓連動制御部から前記上昇制御信号を受信した場合に、前記警報表示灯を点滅、明滅又は点灯させることを特徴とするトンネル非常用設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース収納部を上昇させてホース取出しを可能とする消火栓設備が設けられたトンネル非常用設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネル内に設置するトンネル非常用設備として消火栓設備が設けられており、消火栓設備は開放自在な消火栓扉を備えた筐体の消火栓収納部に、先端にノズルを装着したホースとバルブ類を収納し、また、開閉自在な消火器扉を備えた消火器収納部に例えば2本の消火器を収納している。
【0003】
このような消火栓設備は、トンネル内に設けた監視員通路に面した側壁に沿って例えば50メートル間隔で設置している。監視員通路は路面に対し1メートル程度高くした側壁通路として設け、トンネル内の車両通行を妨げることなく且つ安全にトンネル内に設置している消火栓設備を含む各種の機器の点検を行うことを可能としている。
【0004】
火災を伴う車両事故が発生した場合には、事故車両の運転者等の利用者は、消火栓設備の消火栓扉を開いてノズル付きのホースを引き出し、消火栓弁開閉レバーを操作することで消火ポンプ設備を起動して放水することにより消火作業を行うことができる。
【0005】
また、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両等を守るため、火災を監視する火災検知器が設置され、防災受信盤から引き出された信号線に接続されている。
【0006】
火災検知器は左右の両方向に監視エリアを持ち、トンネルの長手方向に沿って、隣接して配置される火災検知器との監視エリアが相互補完的に重なるように、例えば、25m間隔、或いは50m間隔で連続的に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−055024号公報
【特許文献2】特開2009−285126号公報
【特許文献1】特開平6−325271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来のトンネル内に設置した消火栓設備にあっては、監視員通路に面したトンネル側壁に沿って設置していたため、車両事故による火災の発生時に利用者は、路面から監視員通路を超えたトンネル側壁に設置している消火栓設備に手を伸ばして消火栓扉を開き、ホースを引き出して消火作業を行う必要があり、消火栓設備が路面から離れた高い位置に設置されているため、人によっては手が届かずに監視員通路に上がって操作しなければならない場合もあり、また、監視員通路によっては手摺りを設けており、手摺りが消火作業の邪魔になり、扱いづらい場合があった。
【0009】
この問題を解決するため、本願出願人は、道路側及び監視員通路側から簡単且つ容易に取り扱うことができる昇降型の消火栓設備を提案している。昇降型の消火栓設備は、ノズル付きのホースが収納されたホース収納部が監視員通路内に昇降機構により昇降自在に配置されており、トンネル内で火災を伴う車両事故の発生時には、所定のスイッチ操作を行うと、昇降機構の作動によりホース収納部が監視員通路上の露出位置に上昇して保持され、消火栓扉の開放操作を必要とすることなく、監視員通路上に露出したホース収納部から簡単且つ容易にノズル付きホースを引き出して消火を行うことができる。
【0010】
しかしながら、このような昇降型の消火栓設備にあっては、通常時は監視員通路内の外部から見えない場所にホース収納部が収納されており、消火栓設備を使用する場合には、道路に面した監視員通路側壁の操作パネルに設けられたスイッチを操作してホース収納部を監視員通路上の露出位置に動作させる必要があり、その取扱いについては、操作パネル上に分かり易く示しているが、車両事故により火災が発生している緊迫した状況にあっては、操作に不慣れな利用者は、その操作に戸惑い、ホース収納部を監視員通路上に露出させ、そこからホースを引き出して消火を開始するまでに、手間と時間がかる恐れがある。
【0011】
本発明は、ホース収納部を上昇させてホース取出しを可能とする昇降型の消火栓設備の取り扱いを簡単且つ容易とするトンネル非常用設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(トンネル非常用設備)
本発明は、トンネル非常用設備に於いて、
トンネル内に設置され消火栓を使用する場合に、監視員通路下に配置されたホース収納部を昇降機構の作動により監視員通路上に上昇させて保持する消火栓設備と、
防災受信盤に設けられ、トンネル内の火災場所を特定した場合に、火災場所に対応した消火栓設備に上昇制御信号を送信して昇降機構を作動させ、ホース収納部を監視員通路上上昇させる消火栓連動制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
(火災検知器による連動)
消火栓連動制御部は、トンネル内に設置された火災検知器からの火災信号を受信した場合に、火災信号を送信した火災検知器の設置場所に対応した消火栓設備に上昇制御信号を送信して昇降機構を作動させ、ホース収納部を監視員通路上上昇させる。
【0014】
(火災検知区画の火災報知設備を連動)
火災検知器は、トンネル内の設置場所の左右両側の監視エリアが相互補完的に重なるように配置されて火災を監視しており、
消火栓連動制御部は、火災検知器から何れか一方の監視エリアの火災を示す火災信号を受信した場合、火災が検知された監視エリアに位置する消火栓設備上昇制御信号を送信して昇降機構を作動させ、ホース収納部を監視員通路上上昇させる。
【0015】
(火災検知区画の両側区画の火災報知設備を連動)
消火栓連動制御部は、更に、火災が検知された監視エリアに隣接した他の監視エリアに位置する消火栓設備上昇制御信号を送信して昇降機構を作動させ、ホース収納部を監視員通路上上昇させる。
【0016】
(発信機による消火栓設備の連動)
消火栓設備は、所定の操作により火災通報信号を防災受信盤に送信する発信機を備え、
消火栓連動制御部は、発信機からの火災通報信号を受信した場合に、当該発信機が設けられた消火栓設備に上昇制御信号を送信して昇降機構を作動させ、ホース収納部を監視員通路上上昇させる。
【0017】
(発信機による連動)
本発明の別の形態にあっては、トンネル非常用設備に於いて、
トンネル内に設置され消火栓を使用する場合に、監視員通路下に配置されたホース収納部を昇降機構の作動により監視員通路上に上昇させて保持する消火栓設備と、
消火栓設備に設けられ、所定の操作により火災通報信号を防災受信盤に送信する発信機と、
発信機からの火災通報信号を受信した場合に、当該発信機が設けられた消火栓設備に上昇制御信号を送信して昇降機構を作動させ、ホース収納部を監視員通路上上昇させる消火栓連動制御部と、
が設けられたことを特徴とする。
【0018】
(火災通報した発信機の両側の消火栓設備連動)
消火栓連動制御部は、更に、火災通報信号が送信された発信機が設けられた消火栓設備の両側に配置された他の消火栓設備に上昇制御信号を送信して昇降機構を作動させ、ホース収納部を監視員通路上上昇させる。
【0019】
(上昇時の警報音)
消火栓設備は、警報音及び又は警報メッセージを出力する音声警報部を備え、消火栓連動制御部から上昇制御信号を受信した場合に、音声警報部から警報音又は警報メッセージを出力させる。
【0020】
(上昇時の警報表示)
消火栓設備は、点滅、明滅又は点灯される警報表示灯を備え、消火栓連動制御部から上昇制御信号を受信した場合に、警報表示灯を点滅、明滅又は点灯させる。
【発明の効果】
【0021】
(基本的な効果)
本発明は、トンネル非常用設備に於いて、トンネル長手方向に所定間隔で設置され、監視員通路内に収納されたノズル付きのホースを収納したホース収納部を、消火栓を使用する場合に昇降機構の作動により監視員通路上の露出位置に上昇して保持させる消火栓設備と、防災受信盤に設けられ、トンネル内の火災場所を特定した場合に、火災場所に対応した消火栓設備に上昇制御信号を送信してノズル付きのホースを監視員通路上の露出位置に上昇させる消火栓連動制御部とが設けられたため、トンネル内で火災を伴う車両事故が発生し、火災場所が特定されると、火災場所に近い消火栓設備のホース収納部が監視員通路から自動的に上昇して露出状態となり、利用者はホース収納部を上昇させる操作を必要とすることなく、監視員通路上に露出されたホース収納部からノズル付きホースを引き出して消火作業を速やかに行うことができる。
【0022】
(火災検知器による連動による効果)
また、消火栓連動制御部は、トンネル長手方向に所定間隔で設置された火災検知器からの火災信号を受信した場合に、火災信号を送信した火災検知器の設置場所に対応した消火栓設備に上昇制御信号を送信してノズル付きのホースを監視員通路上の露出位置に上昇させるようにしたため、トンネル内で火災を伴う車両事故が発生し、火災検知器で火災が検知されて防災受信盤から火災警報が出力されると、火災場所に近い消火栓設備のホース収納部が監視員通路から自動的に上昇して露出状態となり、利用者はホース収納部を上昇させる操作を必要とすることなく、監視員通路上に露出されたホース収納部からノズル付きホースを引き出して消火作業を速やかに行うことができる。
【0023】
(火災検知区画の火災報知設備を連動による効果)
また、火災検知器は、トンネル内の設置場所の左右両側の監視エリアが相互補完的に重なるように配置されて火災を監視しており、消火栓連動制御部は、火災検知器から何れか一方の監視エリアの火災を示す火災信号を受信した場合、火災が検知された監視エリアに位置する消火栓設備に、上昇制御信号を送信して昇降機構の作動によりホース収納部を監視員通路上の露出位置に上昇させるようにしたため、火災検知器で検知した火災の発生場所に最も近い消火栓設備のホース収納部が監視員通路上に自動的に上昇して露出状態となってホース取出しを可能とする。
【0024】
(火災検知区画の両側区画の火災報知設備の連動による効果)
また、消火栓連動制御部は、更に、火災が検知された監視エリアに隣接した他の監視エリアに位置する消火栓設備に、上昇制御信号を送信して昇降機構の作動によりホース収納部を監視員通路上の露出位置に上昇させるようにしたため、火災場所に近い消火栓設備に加え、その両側に位置する隣接した消火栓設備についても、ホース収納部が監視員通路上に自動的に上昇して露出状態となり、火災場所に近い消火栓設備が炎からの熱によりで使用できないような場合に、火災場所から十分に離れた消火栓設備を使用した消火活動を速やかに行うことが可能となる。
【0025】
(発信機による消火栓設備の連動による効果)
また、消火栓設備は、所定の操作により火災通報信号を防災受信盤に送信させる発信機を備え、消火栓連動制御部は、発信機からの火災通報信号を受信した場合に、当該発信機が設けられた消火栓設備に上昇制御信号を送信して昇降機構の作動によりホース収納部を監視員通路上の露出位置に上昇させるようにしたため、火災を伴う車両事故の発生に対し消火栓設備を使用しようとする利用者は、発信機を操作して火災通報を行うだけで、それ以外の特別な操作を必要とすることなく、操作した発信機が設けられている消火栓設備のホース収納部が監視員通路から自動的に上昇して露出状態となり、利用者は監視員通路上に露出されたホース収納部からノズル付きホースを引き出して消火作業を速やかに行うことができる。
【0026】
(発信機の連動による効果)
本発明の別の形態にあっては、トンネル非常用設備に於いて、トンネル長手方向に所定間隔で設置され、監視員通路内に収納されたノズル付きのホースを収納したホース収納部を、消火栓を使用する場合に昇降機構の作動により監視員通路上の露出位置に上昇して保持させる消火栓設備と、消火栓設備に設けられ、所定の操作により火災通報信号を伝送路を介して防災受信盤に送信させる発信機と、発信機からの火災通報信号を受信した場合に、当該発信機が設けられた消火栓設備に上昇制御信号を送信して昇降機構の作動によりホース収納部を監視員通路上の露出位置に上昇させる消火栓連動制御部とが設けられため、火災場所を自動的に特定する方法を持たない火災検知手段と受信盤であっても、発信機により受信盤が火災場所を特定することができ、火災を伴う車両事故に対し消火栓設備を使用しようとする利用者は、発信機を操作して火災通報を行うだけで、それ以外の特別な操作を必要とすることなく、操作した発信機が設けられている消火栓設備のホース収納部が監視員通路から自動的に上昇して露出状態となり、利用者は監視員通路上に露出されたホース収納部からノズル付きホースを引き出して消火作業を速やかに行うことができる。
【0027】
(火災通報した発信機の両側の消火栓設備連動による効果)
また、消火栓連動制御部は、更に、火災通報信号が送信された発信機が設けられた消火栓設備に隣接して配置された他の消火栓設備に上昇制御信号を送信して昇降機構の作動によりホース収納部を監視員通路上の露出位置に上昇させるようにしたため、発信機を操作した火災場所に近い消火栓設備に加え、その両側に位置する消火栓設備についても、ホース収納部が監視員通路上に自動的に上昇して露出状態となり、火災場所に近い消火栓設備による消火作業が火炎からの熱により使用できないような場合に、火災場所から十分に離れた消火栓設備を使用した消火活動を速やかに行うことが可能となる。
【0028】
(上昇時の警報音による効果)
また、消火栓設備は、警報音及び又は警報メッセージを出力する音声警報部を備え、消火栓連動制御部から上昇制御信号を受信した場合に、音声警報部から警報音又は警報メッセージを出力させるようにしたため、火災検知器で火災を検知した場合や発信機を操作した場合に消火栓設備におけるホース収納部の上昇動作が自動的に行われ、もしトンネル内の監視員通路に避難者がいた場合、警報音又は警報メッセージの出力により周囲にいる人の注意を喚起して上昇動作が開始されることを知らせ、ホース収納部の路面板に人が乗っているような状態で、突然、路面板が持ち上がり始めるといった事態が回避され、安全性が高められる。
【0029】
(昇降時の警報表示による効果)
また、消火栓設備は、点滅、明滅又は点灯される警報表示灯を備え、消火栓連動制御部から上昇制御信号を受信した場合に、警報表示灯を点滅、明滅又は点灯させるようにしたため、火災検知器で火災を検知した場合や発信機を操作した場合の消火栓設備におけるホース収納部の上昇動作が自動的に行われ、警報表示灯が例えば点滅することで、もしトンネル内の監視員通路に避難者がいた場合周囲にいる人の注意を喚起して上昇動作が開始されることを知らせ、ホース収納部の路面板に人が乗っているような状態で、突然、路面板が持ち上がり始めるといった事態が回避され、安全性が高められる。
【0030】
また、警報表示灯の点滅、明滅又は点灯は、離れた位置からも確認できるため、照明されているが十分に明るいとはいえないトンネル内であっても、ホース収納部を露出させた状態で警報表示灯が作動している消火栓設備に出向いて消火作業を行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】シールドトンネル内に設置した消火栓設備を含むトンネル非常用設備を示した説明図
図2】防災受信盤により監視制御を行うトンネル用非常設備の概略を示した説明図
図3】消火栓設備を道路側から示した説明図
図4】消火栓設備の内部構造を路面側から見た断面で示した説明図
図5】管理用通路内に設置した制御機構収納部に設けた放水制御機構と昇降制御機構の実施形態を示した説明図
図6】昇降機構によりホース収納部を上昇して監視員通路上に露出させた状態を路面側から見た断面で示した説明図
図7図2の防災受信盤と消火栓制御装置の機能構成を示したブロック図
図8】トンネル内に火災検知器の火災監視区画を消火栓設備と共に平面で示した説明図
図9】防災受信盤による消火栓連動制御を含む受信制御処理を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0032】
[トンネル内消火栓設備の概要]
図1は自動車専用道路のトンネル内に設置された消火栓設備を含むトンネル非常用設備を示した説明図である。図1に示すように、シールド工法により構築されたトンネル10内は円筒形のトンネル壁面12により覆われ、床版18により仕切られることで道路15が設けられており、この例にあっては、道路15は1方向2車線としている。
【0033】
床版18で仕切られた道路15の左側のトンネル壁面12に沿って監視員通路14が設けられ、監視員通路14の下側の内部空間はダクト22として利用され、電線管23等が敷設される。
【0034】
道路15が形成された床版18の下側はトンネル横方向に複数の区画に仕切られており、例えば、監視員通路14の下に位置する区画は、管理用通路20として使用され、また、管理用通路20はトンネル内での火災発生時には、緊急避難通路として使用される。管理用通路20には給水本管24が敷設されている。
【0035】
トンネル10の長手方向の50メートルおきには、消火栓設備16が設置され、消火栓設備16はホース収納部44と制御機構収納部45に分離して設置されている。また、消火栓設備16に隣接して消火器を収納した消火器箱17が設けられている。
【0036】
ホース収納部44は、監視員通路14の路面上に取付口が開口された消火栓埋込部に配置されている。制御機構収納部45は、ホース収納部44の下側となる管理用通路20に配置され、給水本管24から分岐した分岐管が引き込まれ、また、ホース収納部44に消火用水を供給する給水配管が立ち上げられている。
【0037】
消火栓設備16のホース収納部44はノズル付きホースを収納し、監視員通路14内で昇降機構に支持されており、所定の上昇操作を行うと、昇降機構により監視員通路14上の露出位置にホース収納部44が上昇されて露出状態となり、ノズル付きホースの引き出しによる消火作業を可能とする。
【0038】
また、トンネル10の内部には、トンネル長手方向の壁面に沿って例えば25メートル又は50メートル間隔で火災検知器25が設置されている。火災検知器25は2組の火災検知部を備えることでトンネル長手方向の上り側および下り側の両方向に監視エリアを持ち、トンネルの長手方向に沿って、隣接して配置される火災検知器との監視エリアが相互補完的に重なるように連続的に配置され、監視エリア内で起きた火災による炎からの放射線、例えば赤外線を観測して火災を検知する。
【0039】
[トンネル防災設備の概要]
図2は防災受信盤により監視制御を行うトンネル用非常設備の概略を示した説明図である。
【0040】
図2に示すように、トンネル10の内部には、トンネル長手方向に、ホース収納部44と制御機構収納部45が分離配置された消火栓設備16が50メートル間隔で設置されている。ホース収納部44と制御機構収納部45に対しては消火栓制御装置140が設けられている。
【0041】
また、トンネル10内には、消火栓設備16以外の非常用設備として、火災による炎を検知するため火災検知器25が例えば50メートル間隔で設けられている。
【0042】
これ以外のトンネル非常用設備として、火災通報のために手動通報装置や非常電話が設けられ、更にトンネル躯体やダクト内を火災から防護するために水噴霧ヘッドから消火用水を散水させる水噴霧などが設置されるが、図示は省略されている。
【0043】
一方、監視センター等には防災受信盤100が設置されており、防災受信盤100からはトンネル10に対し伝送路102が引き出され、トンネル10内に設置された消火栓設備16の消火栓制御装置140及び火災検知器25が接続されている。伝送路102はFTTH等の光ファイバー伝送路や同軸伝送路が使用され、例えばIPパケット等を用いたデジタル伝送が行われる。
【0044】
また、防災受信盤100に対しては、消火ポンプ設備104、ダクト用の冷却ポンプ設備106、換気設備108、警報表示板設備110、ラジオ再放送設備112、テレビ監視設備114、照明設備116及びIG子局設備118等が設けられており、IG子局設備118がデータ伝送回線で接続される点を除き、それ以外の設備はP型信号回線により防災受信盤100に個別に接続されている。
【0045】
ここで、換気設備108は、トンネル内の天井側に設置されているジェットファンの運転による高い吹き出し風速によってトンネル内の空気にエネルギーを与えて、トンネル長手方向に換気の流れを起こす設備である。
【0046】
警報表示板設備110は、トンネル内の利用者に対して、トンネル内の異常を、電光表示板に表示して知らせる設備である。ラジオ再放送設備112は、トンネル内で運転者等が道路管理者からの情報を受信できるようにするための設備である。テレビ監視設備114は、火災の規模や位置を確認したり、水噴霧設備の作動、避難誘導を行う場合のトンネル内の状況を把握するための設備である。
【0047】
照明設備116はトンネル内の照明機器を駆動して管理する設備である。更に、IG子局設備118は、防災受信盤100と外部に設けた上位設備である遠方監視制御設備120とをネットワーク122を経由して結ぶ通信設備である。
【0048】
[消火栓設備の設置構造]
図3は消火栓設備を道路側から示した説明図、図4は消火栓設備の内部構造を路面側から見た断面で示した説明図である。
【0049】
(消火栓設備の外観構造)
図3に示すように、消火栓設備16のホース収納部側は、手摺り40を設けた監視員通路14の床面下の内部空間に設置されており、消火栓設備16の設置場所となる監視員通路14の道路に面した前壁14aの上部に消火栓扉26と通報装置パネル28が設置されている。
【0050】
消火栓扉26は、下側のヒンジ26aを中心に下向きに開閉自在に装着されており、ハンドル27を手前に引くことで、ロックが外れて開放できる。消火栓扉26の内部には、点線で示すように、ホース接続口を備えた給水栓90とポンプ起動スイッチ92が設けられている。このため、火災を伴う車両事故が発生した場合、消防隊が消火栓扉26を開いて消防ホースを給水栓90に接続し、ポンプ起動スイッチ92の操作により消火ポンプを起動して消火活動ができるようにしている。
【0051】
通報装置パネル28には、赤色表示灯30、発信機32及び応答ランプ34が設けられている。赤色表示灯30は常時点灯し、消火栓設備16の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には、発信機32を押して押し釦スイッチをオンすると、火災通報信号が監視室の防災受信盤に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が防災受信盤から送られて、応答ランプ34を点灯する。
【0052】
また、通報装置パネル28には、監視員通路14内に配置している消火栓設備16のホース収納部を昇降操作するための上昇スイッチ36aと下降スイッチ36bが設けられている。
【0053】
更に、消火栓設備16を設置している監視員通路14の部分には手摺り40を設けておらず、監視員通路14の路面上に内部から上昇して露出するホース収納部に対する操作の邪魔にならないようしている。
【0054】
なお、通報装置パネル28の上昇スイッチ36a及び下降スイッチ36bを配置したパネル部分は、道路15側及び監視員通路14の両方からの操作を可能とするため、監視員通路14の路肩部分に対し斜めに位置するように配置しても良い。
【0055】
(内部空間に設置した消火栓設備の構造)
図4に示すように、監視員通路14の消火栓設備16の設置場所対応した路面には、矩形の消火栓昇降口42が開口されており、消火栓昇降口42の開口縁の上部には段部42aが形成されている。
【0056】
消火栓昇降口42に対してはその下側から消火栓設備16のホース収納部44が昇降自在に配置される。ホース収納部44は、前面及び背面に開口した箱型の筐体48を備え、筐体48の前面及び背面の開口に4本のフレームパイプ52を配置して間にホース取出口55が形成されている。
【0057】
ホース収納部44の内部には、先端にノズル56を装着したホース54が内巻きした状態で収納され、内巻したホース54の中央部分にホース先端に装着したノズル56が配置され、筐体48の前面及び背面の何れからもノズル56の取出しができるようにしている。
【0058】
また、ホース収納部44内には、管理用通路20内に配置している制御機構収納部45に設けた電動弁を用いた遠隔消火栓弁を開閉操作するための放水スイッチ38aと放水停止スイッチ38bが設けられている。
【0059】
ホース収納部44は昇降機構46により昇降自在に支持されている。昇降機構46は、ホース収納部44の矩形底部のコーナーに相対した4箇所に水圧アクチュエータ60が起立して配置され、水圧アクチュエータ60はシリンダ筒内に摺動自在に設けたピストンに連結されたピストンロッドが上方に取出され、ピストンロッドの先端がホース収納部44の底部に固定されている。
【0060】
昇降機構46を配置した内部空間の下側となる管理用通路20には制御機構収納部45が配置され、制御機構収納部45には、ホース収納部44のホース54に消火用水を供給して放水させる放水制御機構と、昇降機構46を昇降駆動させるための昇降制御機構が設けられている。
【0061】
制御機構収納部45に対しては給水本管24から分岐した分岐配管24aが連結され、消火ポンプ設備から給水本管24に供給されている消火用水を導入している。また、分岐配管24aは上部に分岐され、図3に示した給水栓90に接続されている。
【0062】
制御機構収納部45に内蔵した放水制御機構からの配管は、連結ホース62を介してホース収納部44のホース接続口となるフレキシブルジョイント63に連結されている。連結ホース62は、昇降機構46によりホース収納部44を監視員通路14の消火栓昇降口42から押し上げて露出させた露出位置に保持した場合に、連結に必要な余裕を持ったホース長としており、これにより固定側となる配管に対しホース収納部44が昇降作動しても、連結ホース62が抜けることなく、ホース収納部44が動けるようにしている。また、昇降作動で生ずる連結ホース62の動きはフレキシブルジョイント63の動きで吸収される。
【0063】
また、制御機構収納部45に内蔵した昇降制御機構からは、消火用水の供給と排水を行うための配管が昇降機構46の水圧アクチュエータ60に接続されている。
【0064】
なお、昇降機構46に設ける水圧アクチュエータ60の数は必要に応じて適宜の数とすることができ、例えば、ホース収納部44の重量に対応した押上力を持つ所定口径の水圧アクチュエータを中央に1本配置しても良いし、同様に、ホース収納部44の重量に対応した合計押上力をもつ3本の水圧アクチュエータ60を三角形に配置しても良い。
【0065】
また、ホース収納部44と制御機構収納部45との連結は、監視員通路内を連結ホース62とし、管理用通路20側を配管としているが、ホース収納部44と制御機構収納部45との間を連結ホースにより直接に連結してもよい。この場合にも、ホース収納部44側及び制御機構収納部45に対する連結ホースの接続は、何れか一方又は両方をフレキシブルジョイントによる連結とする。
【0066】
(放水制御機構)
図5は管理用通路内に設置した制御機構収納部に設けられた放水制御機構と昇降制御機構の実施形態を示した説明図である。
【0067】
図5に示すように、放水制御機構64は、給水本管からの分岐配管24aを引き込んで電動弁を用いた遠隔消火栓弁70が接続され、遠隔消火栓弁70と並列に手動消火栓弁72が接続されている。遠隔消火栓弁70に続いては圧力調整弁74が接続され、圧力調整弁74の2次側が、図4に示したように、連結ホース62を介してホース54に連結されている。更に、圧力調整弁74の二次側には自動排水弁76が接続されている。
【0068】
遠隔消火栓弁70は、図4に示したホース54に設けられた放水スイッチ38aを操作すると開制御され、消火用水がホース収納部44側に供給される。また、放水作業中に図4に示したホース収納部44に設けられた放水停止スイッチ38bを操作すると閉制御され、ホース54に対する消火用水の供給が停止される。
【0069】
なお、遠隔消火栓弁70を電動弁とせず、ホース収納部44に消火栓弁開閉レバーを設けてリンクワイヤーで連結し、消火栓弁開閉レバーの操作による遠隔操作で消火栓弁を開閉させるようにしても良い。
【0070】
(昇降制御機構)
図5に示すように、昇降制御機構66は、給水本管からの分岐配管24aを引き込んで電動弁を用いた遠隔制御弁78が接続され、遠隔制御弁78と並列に手動制御弁80が接続されている。遠隔制御弁78の二次側は自動調圧弁81、逆止弁82及びオリフィス83を介して図4に示した水圧アクチュエータ60に配管を介して連結されている。オリフィス83の1次側には遠隔排水弁84が接続される。
【0071】
自動調圧弁81はスプリング荷重の調整により設定圧力を調整することができ、設定圧力を変えることで水圧アクチュエータ60によるホース収納部44の上昇速度を調整可能としている。
【0072】
通常監視状態で、遠隔制御弁78、手動制御弁80及び遠隔排水弁84は閉鎖されており、図4の水圧アクチュエータ60に消火用水が供給されないことから、水圧アクチュエータ60のピストンは図示の最下点に位置し、ホース収納部44を監視員通路14の内部空間に収納し、ホース収納部44の路面板50により消火栓昇降口42を閉鎖した状態としている。
【0073】
トンネル内での火災を伴う車両事故の発生時には、図2に示した火災検知器25による火災検知又は図3の通報操作パネル28に設けられた発信機32の操作に基づき、防災受信盤100から送信された上昇制御信号によって遠隔制御弁78の開制御が行われ、オリフィス83を介して水圧アクチュエータ60に消火用水が供給され、シリンダ内のピストンを押上げ、ピストンロッドを介してホース収納部44を上昇させる。
【0074】
この場合、オリフィス83で絞られた量の消火用水が水圧アクチュエータ60に供給されるため、ホース収納部44は、自動調圧弁81の調整圧力とオリフィス83で決まるゆっくりした所定の速度で押し上られて監視員通路14上に露出され、フルストロークとなった位置に停止して保持される。
【0075】
なお、監視員通路14上にホース収納部44を露出保持させる上昇動作は、手動操作も可能であり、図4に示した通報装置パネル28の上昇スイッチ36aを操作すると遠隔制御弁78の開制御が行われ、オリフィス83を介して水圧アクチュエータ60に消火用水が供給され、シリンダ内のピストンを押上げ、ピストンロッドを介してホース収納部44を上昇させる。
【0076】
監視員通路14上に露出保持されたホース収納部44を収納する場合には、図3に示したホース収納部44の下降スイッチ36bを操作すると遠隔制御弁78の閉制御が行われ、水圧アクチュエータ60に対する消火用水の供給が停止される。この状態で遠隔排水弁84が開制御され、水圧アクチュエータ60から消火用水が排水され、ホース収納部44の重量を受けている昇降機構46の水圧アクチュエータ60がオリフィス83により決まるゆっくりした所定の速度で下降し、ホース収納部44を消火栓昇降口42の中に収納させる。
【0077】
なお、ホース収納部44を監視員通路14内に収納する動作は、ホース収納作業等の現場作業を必要とすることから、下降スイッチ36bによる現場での手動操作のみであり、防災受信盤100からの遠隔操作は行わない。
【0078】
なお、遠隔排水弁84と並列に手動排水弁を接続することで、手動制御弁80と手動排水弁を用いた昇降操作が可能となる。
【0079】
また、上昇スイッチ36aが操作された際には、防災受信盤100にその旨を示す信号を送信するようにしても良い。
【0080】
[消火栓設備の動作]
図6は昇降機構によりホース収納部を上昇して監視員通路上に露出させた状態を道路側から見た断面で示した説明図である。
【0081】
(通常監視時)
図1に示すトンネル10の道路を車両が通行している通常監視時にあっては、図4に示すように、消火栓設備16のホース収納部44は、昇降制御機構66からの消火用水の供給が停止されていることで、昇降機構46の水圧アクチュエータ60はピストンを最下点に位置させ、これにより昇降機構46はホース収納部44を監視員通路14の内部空間に収納し、筐体48の上面の路面板50を消火栓昇降口42の段部42aに押し当てて支えており、監視員通路14内に消火栓設備16を設置していても、監視員通路14を通る人の通行を妨げたり、危険を及ぼすことはない。
【0082】
(火災発生時)
一方、トンネル10内で火災を伴う車両事故が発生した場合には、利用者は火災場所に近い消火栓設備16に出向き、図3に示す通報装置パネル28の発信機32を押して図2に示した防災受信盤100に火災通報信号を送信し、防災受信盤100から確認応答信号を受信して応答ランプ34が点灯され、監視センター側への通報完了を確認する。
【0083】
また、発信機32の操作による火災通報信号を受信した防災受信盤100は上昇制御信号を送信し、消火栓設備16は上昇制御信号を受信して遠隔制御弁78が開制御され、分岐配管24aからの消火用水が遠隔制御弁78からオリフィス83を介して昇降機構46の水圧アクチュエータ60に送られ、シリンダ内に供給された消火用水によりピストンが上昇し、ピストンロッドを介して支持しているホース収納部44が押し上げられる。
【0084】
このため監視員通路14の消火栓昇降口42を閉鎖している路面板50が持ち上がり、内部に収納していたホース収納部44が路面からゆっくり表れ、図6に示す露出位置まで上昇して停止し、この露出位置を保持する。
【0085】
また、利用者が発信機32を操作しなくとも、図2に示した火災検知器25で火災が検知されると、火災信号を受信した防災受信盤100は上昇制御信号を火災場所に近い消火栓設備16に送信し、同様に、昇降機構46が上昇駆動されてホース収納部44が監視員通路14上の露出位置まで押し上げられる。
【0086】
このように監視員通路14の上に露出状態にホース収納部44が保持されると、利用者は道路側から筐体48の前面開口を介してノズル56を取出すことで、簡単且つ容易にホース54を引き出すことができる。
【0087】
続いて、利用者は、露出したホース収納部44に設けている放水スイッチ38aを押してオンすると、放水制御機構64の遠隔消火栓弁70に開制御信号が出力され、遠隔消火栓弁70が開放し、圧力調整弁74で調整された規定圧力の消火用水が連結ホース62を介してホース54に供給され、ノズル56からの放水により消火活動を行うことができる。
【0088】
一方、監視員通路14側から利用者が消火作業を行う場合には、監視員通路14上に露出保持されたホース収納部44における筐体48の背面開口からノズル56を取出すことで、簡単且つ容易にホース54を引き出して消火作業を行うことができる。
【0089】
火災が鎮火して消火作業が終了した場合には、ホース収納部44に設けている放水停止スイッチ38bを押してオンすると、放水制御機構64の遠隔消火栓弁70に閉制御信号が出力され、遠隔消火栓弁70が閉鎖し、ノズル56からの放水を停止させることができる。
【0090】
また、消火作業が終了した後の復旧作業では、ホース54の水抜きを行った後に、監視員通路14上に露出保持されているホース収納部44の中に内巻き状態にホース54を収納する。
【0091】
続いて、通報装置パネル28に設けている下降スイッチ36bをオン操作することで、昇降制御機構66の遠隔制御弁78に閉制御信号を送って閉鎖させ、続いて遠隔排水弁84が開制御され、水圧アクチュエータ60から消火用水が排水され、ホース収納部44の重量を受けて昇降機構46が下降し、路面板50が消火栓昇降口42の段部42aに当る位置まで下降して停止し、ホース収納部44が監視員通路14の内部空間に収納された状態となる。
【0092】
なお、昇降機構46の故障等によりホース収納部44が監視員通路14上に露出されない場合は、消火栓扉26を開くことで、ノズル56を取り出してホース54を引き出すことが可能であり、高いフェイルセーフ性が確保されている。また、消火栓扉26が開かれた際、ホース昇降中信号またはホース昇降制御信号を受信したときでも、ホース収納部の昇降を停止させるようにしても良い。このようにすることで、ホース54を引き出そうとしたときに挟まれるような事故を防止することができる。
【0093】
[消火栓設備の連動制御]
(防災受信盤)
図7図2の防災受信盤と消火栓制御装置の機能構成を示したブロック図である。図7に示すように、防災受信盤100は盤制御部124を備え、盤制御部124は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0094】
盤制御部124に対しては伝送部126を設け、伝送部126から引き出された伝送路102にトンネル10内に50メートル間隔で設置された消火栓設備16の消火栓制御装置140が接続され、またトンネル10内に50メートル間隔で設置された火災検知器25が接続されている。
【0095】
盤制御部124に対しては、スピーカ、警報表示灯等を備えた警報部128、液晶ディスプレイ、プリンタ等を備えた表示部130、各種スイッチ等を備えた操作部132、外部監視設備と通信するIG子局設備118を接続するモデム134が設けられ、更に、図2に示した消火ポンプ設備104、冷却ポンプ設備106、換気設備108、警報表示板設備110、ラジオ再放送設備112、テレビ監視設備114及び照明設備116が接続されたIO部136が設けられている。
【0096】
盤制御部124は、伝送部126に指示してトンネル内に設置された火災検知器のアドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む呼出信号を繰り返し送信しており、火災検知器25は自己アドレスに一致する呼出信号を受信すると、火災検知等の自己の状態情報を含む応答信号を返信する。また、防災受信盤100の盤制御部124は、火災検知器25からの応答信号の受信により火災を検知した場合は警報部128により火災警報を出力させると共にIO部136を介し他設備の連動を指示する制御を行う。
【0097】
盤制御部124には、消火栓連動制御部125の機能が設けられている。消火栓連動制御部125は、火災検知器25からの火災信号を受信した場合に、火災信号を送信した火災検知器25の設置場所に対応した消火栓設備16に上昇制御信号を送信し、ホース収納部44を監視員通路14上の露出位置に上昇させる制御を行う。
【0098】
図8はトンネル内に火災検知器のその監視エリアを消火栓設備と共に平面で示した説明図であり、図8(A)は火災検知器をL1=50メートル間隔で設置した場合、図8(B)は火災検知器をL2=25メートル間隔で設置した場合を示している。なお、図8において、火災検知器は25−1,25−2,25−3・・・として区別し、また、消火栓設備も16−1,16−2,16−3・・・として区別しているが、区別する必要がない場合は火災検知器25及び消火栓設備16という場合がある。
【0099】
図8(A)を例にとると、トンネル10内に設置された火災検知器25−1,25−2,25−3・・・に対し、L1=50メートル間隔で監視エリアA1,A2,A3・・・が設定され、火災検知器25−1,25−2,25−3・・・はトンネル長手方向の上り側および下り側となる左右両方向に検知エリアAi,Ai+1(但し、iは1,2,3,・・・の整数)を持ち、トンネル10の長手方向に沿って、隣接して配置される火災検知器25との監視エリアが相互補完的に重なるように連続的に配置され、検知エリアAi内で起きた火災による炎からの放射線、例えば赤外線を観測して火災を検知する。
【0100】
例えば、図8(A)の監視エリアA3で火災を伴う車両事故が発生したとすると、監視エリアA3の両側に配置している火災検知器25−2,25−3における監視エリアA3を監視している火災検知部の各々から火災信号が防災受信盤100に送信される。
【0101】
防災受信盤100の消火栓連動制御部125は、隣接配置された火災検知器25−2,25−3からの火災信号を受信した場合、2台の火災検知器25−2,25−3に挟まれた例えば監視エリアA3の火災と判別し、火災検知エリアA3の両端に配置された消火栓設備16−2,16−3の各々に上昇制御信号を送信し、ホース収納部44を監視員通路14上の露出位置に上昇させる制御を行う。
【0102】
また図8(B)に示すL2=25メートル間隔で監視エリアA1,A2,A3・・・が設定された場合についても、例えば監視エリアA3で火災を伴う車両事故が発生したとすると、監視エリアA3の両側に配置している火災検知器25−2,25−3の監視エリアA3を監視している火災検知部側から火災信号が防災受信盤100に送信される。
【0103】
この場合、防災受信盤100の消火栓連動制御部125は、図8(B)の監視エリアA3の火災と判別し、火災検知エリアA3に最も近い図示で左側の消火栓設備16−1に上昇制御信号を送信し、ホース収納部44を監視員通路14上の露出位置に上昇させる制御を行う。更に、消火栓連動制御部125は、図8(B)の火災検知エリアA3に対し図示右側の監視エリアA4だけ離れた位置の消火栓設備16−2にも上昇制御信号を送信し、ホース収納部44を監視員通路14上の露出位置に上昇させる制御を行う。
【0104】
このように火災発生エリアA3に最も近い消火栓設備16−1と次に近い消火栓設備16−2の両方のホース収納部44を監視員通路14上の露出位置に上昇させることで、火災による炎からの熱の影響が少ない場合は、火災検知エリアA3に近い方の消火栓設備16−1を使用して消火を行い、一方、炎による熱を受けて危険な場合には、検知エリアA3から離れた消火栓設備16−2を使用して消火活動を行うことが可能となる。
【0105】
ここで、防災受信盤100の盤制御部124は、火災を検知した火災検知器25のIPアドレスと連動対象とする消火栓設備16のIPアドレスの対応情報を予めメモリに記憶しており、火災信号のIPアドレスから連動対象とする消火栓設備16のIPアドレスを取得して上昇制御信号を送信する。
【0106】
また、防災受信盤100の盤制御部124は、図3に示すように、消火栓設備16の通報装置パネル28に設けられた発信機32の操作による火災通報信号を受信した場合に、火災通報信号を送信した発信機32が設けられた消火栓設備16に上昇制御信号を送信してホース収納部44を監視員通路14上の露出位置に上昇させる制御を行う。
【0107】
また、消火栓連動制御部125は、火災通報信号を受信した場合に、火災通報信号を送信した発信機32が設けられた消火栓設備16に加え、その両側に配置された他の消火栓設備16にも上昇制御信号を送信してホース収納部44を監視員通路14上の露出位置に上昇させる制御を行う。

【0108】
この場合も、火災による炎からの熱の影響が少ない場合は、発信機32を操作した消火栓設備16を使用して消火を行い、一方、炎による熱を受けて危険な場合には、発信機32を操作した消火栓設備16から離れた消火栓設備16を使用して消火活動を行うことが可能となる。
【0109】
ここで、防災受信盤100の盤制御部124は、発信機32が接続された消火栓設備16のIPアドレスと連動対象とする他の消火栓設備16のIPアドレスの対応情報を予めメモリに記憶しており、火災通報信号のIPアドレスから連動対象とする他の消火栓設備16のIPアドレスを取得して上昇制御信号を送信する。
【0110】
図8において消火栓設備と火災検知がトンネル内の対面となっているが、当然同一面側に配置しても良いし、火災検知器をトンネル中央など適宜の場所に配置してよい。いずれの場合においても、火災検知器と連動する消火装置はトンネル長手方向の位置により最も近い消火装置として検討することが好適であるが、厳密に空間から距離を計算するようにしても良い。
【0111】
また、火災検知器・消火栓設備はともに等間隔で配置されるため、火災検知器間の中間地点と最も近い消火栓設備を火災検知器と連動する火災検知器とすることで、火災検知器と消火栓設備とがお互いにずれて等間隔で配置されている場合であっても、火災場所と最も近いであろう消火栓を選択することができるようになる。
【0112】
(消火栓制御装置)
図7に示すように、消火栓設備16には消火栓制御装置140が設けられる。消火栓制御装置140は消火栓制御部142と伝送部144を備える。伝送部144は防災受信盤100との間で伝送路102を介してIPパケットの送受信を行う。このため伝送部144には固有のIPアドレスが設定されている。ここで、消火栓制御装置140のIPアドレスとは伝送部144に設定されたIPアドレスを意味する。
【0113】
消火栓制御部142は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0114】
消火栓制御部142に対しては、ホース収納部44側に設けられた発信機32、放水スイッチ38a、放水停止スイッチ38b、音声警報部146及び警報表示灯148が接続される。また、消火栓制御部142には制御機構収納部45に設けられた遠隔消火栓弁70、遠隔制御弁78及び遠隔排水弁84が接続される。
【0115】
音声警報部146は、昇降機構46によりホース収納部44を上昇する場合に、消火栓制御部142の指示を受けて所定の警報音や警報メッセージを出力させ、周囲にいる人に注意を促す。
【0116】
警報表示灯148は、昇降機構46によりホース収納部44を上昇する場合に、消火栓制御部142の指示を受けて点滅、明滅又は点灯され、周囲にいる人に注意を促す。警報表示灯148は例えば図3及び図4に示したホース収納部44における路面板50の下側に配置され、路面板50の閉鎖位置で点滅、明滅又は点灯を開始することで、路面板50の周囲の隙間から光を出すことで注意を促し、また、ホース収納部44の上昇中は、路面板50の下側で点滅、明滅又は点灯することで、周囲に光を出して注意を促す。
【0117】
(消火栓設備の連動制御)
図9は防災受信盤による消火栓連動制御を含む受信制御処理を示したフローチャートである。
【0118】
図9に示すように、防災受信盤100の盤制御部124はステップS1で火災検知器25を用いた火災監視処理を行っており、トンネル内での火災を伴う車両事故が発生すると、火災検知器25が火災信号を送信し、この火災信号の受信がステップS2で判別されると、ステップS3に進んで火災警報を出力させると共に他の設備を作動させる連動制御が行われる。
【0119】
続いてステップS4に進み、火災検知器25から受信した火災信号に設定されたIPアドレスから、火災が検知された火災検知器25の監視エリアに対応した消火栓設備16のIPアドレスを取得することで、火災検知エリアに最も近い消火栓設備16を判別し、判別したIPアドレスが設定された上昇制御信号をステップS5で送信し、ホース収納部44を監視員通路14上の露出位置に上昇させる制御を行う。
【0120】
一方、ステップS2で火災信号の受信がない場合はステップS6に進み、トンネル内での火災を伴う車両事故が発生に対応して、関係者が消火栓設備16の発信機32を操作した場合の火災通報信号の受信が判別されるとステップS7に進み、火災警報を出力させると共に他の設備を作動させる連動制御が行われる。
【0121】
続いてステップS8に進み、火災通報場所に対応した消火栓設備16として、発信機32が操作された消火栓設備16における消火栓制御装置140のIPアドレス、その消火栓設備16の両側に配置された消火栓設備における消火栓制御装置140のIPアドレスを対応情報の参照により判別し、判別したIPアドレスが設定された上昇制御信号をステップS9で消火栓設備16に送信し、ホース収納部44を監視員通路14上の露出位置に上昇させる制御を行う。
【0122】
[本発明の変形例]
(消火栓収納部)
上記の消火栓設備は、昇降機構によりホース収納部を昇降自在に支持しているが、ホース収納部と一体に消火器収納部を設けて消火器を収納し、消火器を使用する場合にも、昇降機構により消火器収納部をホース収納部と一体に監視員通路上の露出位置に上昇させるようにしても良い。
【0123】
このため、火災検知器による火災検知時または発信機を操作した場合に、監視員通路内に収納されている消火器収納部がホース収納部と共に昇降機構により上昇して監視員通路の路面上に露出し、消火器扉の開放操作を必要とすることなく、監視員通路上に露出した消火器収納部から簡単且つ容易に取り出して消火を行うことができる。
【0124】
(昇降機構)
上記の実施形態は、水圧シリンダにより直接にホース収納部を昇降させる昇降機構を例にとっているが、別の機構、例えばパンタグラフ式の昇降機構やネジシャフト式の昇降機構としても良い。
【0125】
(消火栓設備)
上記の実施形態で示した消火栓設備のホース類や消火栓弁等のバルブ類、通報装置の構成及び配置、その他の構成については任意であり、適宜の構成を採用して良い。
【0126】
(火災検知器以外の検知器)
上記の実施形態は、火災を監視する方法として火災検知器単独の火災検知を用いているが、例えば直近の火災検知器により火災検知器の感度を補正するといったような複数の火災検知器の連動や、火災検知器とカメラを組み合わせるといったような複数種のセンサによる火災検知など、トンネル内に配置された複数種類のセンサ情報を元に総合的に火災検知を行うようなシステムに於いて、火災発生を検知した場合に火災発生と検知された場所の直近の消火栓設備を上昇させるようにしても良い。
【0127】
(その他)
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0128】
10:トンネル
12:トンネル壁面
14:監視員通路
15:道路
16:消火栓設備
18:床版
20:管理用通路
22:ダクト
24:給水本管
24a:分岐配管
25:火災検知器
26:消火栓扉
28:通報装置パネル
36a:上昇スイッチ
36b:下降スイッチ
38a:放水スイッチ
38b:放水停止スイッチ
42:消火栓昇降口
44:ホース収納部
45:制御機構収納部
46:昇降機構
48:筐体
50:路面板
54:ホース
55:ホース取出口
56:ノズル
60:水圧アクチュエータ
62:連結ホース
63:フレキシブルジョイント
64:放水制御機構
66:昇降制御機構
70:遠隔消火栓弁
78:遠隔制御弁
80:手動制御弁
81:自動調圧弁
82:逆止弁
83:オリフィス
84:遠隔排水弁
100:防災受信盤
102:伝送路
124:盤制御部
125:消火栓連動制御部
126,144:伝送部
140:消火栓制御装置
142:消火栓制御部
146:音声警報部
148:警報表示灯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9