(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、ケーブルのシース層を形成するための樹脂組成物であって、主成分のポリ塩化ビニルと、可塑剤と、空孔形成剤とを含有し、上記ポリ塩化ビニルの平均重合度が1,000以上2,500以下であり、上記可塑剤の上記ポリ塩化ビニル100質量部に対する含有量が40質量部以上100質量部以下であり、上記可塑剤がジイソノニルフタレートを含み、上記可塑剤におけるジイソノニルフタレートの割合が20質量%以上であり、上記空孔形成剤の上記ポリ塩化ビニル100質量部に対する含有量が0.05質量部以上0.4質量部以下である。
【0013】
当該樹脂組成物は、平均重合度が上記範囲の塩化ポリビニルを主成分とし、一定量の空孔形成剤を含むと共に、可塑剤として、一定量のジイソノニルフタレートを含むため、柔軟性とストリップ性とを両立できる発泡シース層を形成できる。このメカニズムは定かではないが、ジイソノニルフタレートは樹脂組成物のゲル化を促進するため、ジイソノニルフタレートを一定量含む樹脂組成物により得られるシース層は伸びが低下し、ストリップ性が向上するものと推測される。
【0014】
本発明の別の一態様に係るケーブルは、絶縁電線と、この絶縁電線の外周面側に積層されるシース層とを備えるケーブルであって、上記シース層が、主成分のポリ塩化ビニルと、可塑剤と、空孔とを含有し、上記ポリ塩化ビニルの平均重合度が1,000以上2,500以下であり、上記可塑剤の上記ポリ塩化ビニル100質量部に対する含有量が40質量部以上100質量部以下であり、上記可塑剤がジイソノニルフタレートを含み、上記可塑剤におけるジイソノニルフタレートの割合が20質量%以上であり、上記シース層の空孔率が5体積%以上30体積%以下である。
【0015】
当該ケーブルは、一定の空孔率を有するシース層が、平均重合度が上記範囲の塩化ポリビニルを主成分とし、可塑剤として、一定量のジイソノニルフタレートを含むため、柔軟性とストリップ性とを両立できる。
【0016】
本発明のさらに別の一態様に係るケーブルの製造方法は、当該樹脂組成物を上記絶縁電線の外周面側に押出成形により積層する積層工程を備える。
【0017】
当該ケーブルの製造方法は、当該樹脂組成物を用いてシース層を形成するので、柔軟性とストリップ性とを両立したケーブルを容易かつ確実に得ることができる。
【0018】
なお、「主成分」とは、最も含有量の多い成分を意味する。「重合度」とは、JIS−K6720−2:1999に準拠して測定される値を意味する。「空孔率」とは、シース層の容積に対するシース層に含まれる全ての空孔の合計体積の比率を意味し、百分率で表される。
【0019】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態に係る樹脂組成物、ケーブル及びケーブルの製造方法について詳説する。
【0020】
[樹脂組成物]
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、ケーブルのシース層を形成するための樹脂組成物である。当該樹脂組成物は、主成分のポリ塩化ビニルと、可塑剤と、空孔形成剤とを含有する。
【0021】
<ポリ塩化ビニル>
当該樹脂組成物が主成分として含むポリ塩化ビニルの平均重合度の下限としては、1,000であり、1,300がより好ましい。一方、ポリ塩化ビニルの平均重合度の上限としては、2,500であり、2,000が好ましく、1,700がより好ましい。ポリ塩化ビニルの平均重合度が上記下限より小さいと、得られるシース層の機械的強度が不十分となるおそれがある。逆に、ポリ塩化ビニルの平均重合度が上記上限を超えると、得られるシース層の加工性が低下するおそれがある。
【0022】
当該樹脂組成物におけるポリ塩化ビニルの含有量の下限としては、30質量%が好ましく、35質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。一方、ポリ塩化ビニルの含有量の上限としては、70質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましい。ポリ塩化ビニルの含有量が上記下限より小さいと、当該樹脂組成物の押出性が低下するおそれがある。逆に、ポリ塩化ビニルの含有量が上記上限を超えると、相対的に可塑剤の含有量が低下し、得られるシース層の柔軟性が低下するおそれがある。
【0023】
<可塑剤>
当該樹脂組成物が含有する可塑剤としては、ジイソノニルフタレート、ジオクチルフタレート等が挙げられ、当該樹脂組成物は可塑剤としてジイソノニルフタレートを必須成分とする。
【0024】
当該樹脂組成物における可塑剤のポリ塩化ビニル100質量部に対する含有量の下限としては、40質量部であり、45質量部が好ましく、50質量部がより好ましい。一方、上記含有量の上限としては、100質量部であり、80質量部が好ましく、70質量部がより好ましい。上記含有量が上記下限より小さいと、得られるシース層の柔軟性が低下するおそれがある。逆に、上記含有量が上記上限を超えると、得られるシース層のストリップ性が不十分となるおそれがある。
【0025】
上記可塑剤におけるジイソノニルフタレートの割合の下限としては、20質量%であり、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。ジイソノニルフタレートの割合が上記下限より小さいと、ストリップ性が不十分となるおそれがある。なお、ジイソノニルフタレートの割合の上限は100質量%である。また、ジイソノニルフタレートの割合を100質量%、つまり可塑剤としてジイソノニルフタレートのみを用いるとよい。
【0026】
<空孔形成剤>
当該樹脂組成物が含有する空孔形成剤は、加熱により空孔を形成する化学発泡剤、熱膨張性マイクロカプセル、熱分解性樹脂や、空隙として空孔を予め有する中空フィラーなどを用いることができる。
【0027】
化学発泡剤としては、例えば加熱により窒素ガス(N
2ガス)を発生するアゾジカルボンアミド(ADCA)や4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)等の熱分解性を有する物質が好適に用いられる。
【0028】
熱膨張性マイクロカプセルとしては、熱膨張剤からなる芯材(内包物)と、この芯材を包む外殻とを有するものが好適に用いられる。熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張剤は、加熱により膨張又は気体を発生するものであればよく、その原理は問わない。熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張剤としては、例えば低沸点液体、化学発泡剤又はこれらの混合物を使用することができる。
【0029】
熱分解性樹脂としては、例えば当該樹脂組成物の押出温度よりも低い温度で熱分解する樹脂粒子を用いることができる。
【0030】
中空フィラーとしては、例えばシラスバルーン、ガラスバルーン、セラミックバルーン、有機樹脂バルーン等が挙げられる。これらの中で当該ケーブルの可撓性を向上させることができる有機樹脂バルーンが好ましい。
【0031】
当該樹脂組成物における空孔形成剤のポリ塩化ビニル100質量部に対する含有量の下限としては、0.05質量部であり、0.1質量部がより好ましい。一方、上記含有量の上限としては、0.4質量部であり、0.3質量部がより好ましい。上記含有量が上記下限より小さいと、得られるシース層の低誘電率化及びストリップ荷重の低減効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記含有量が上記上限より大きいと、得られるシース層の機械的強度が不十分となるおそれがある。
【0032】
<その他の成分>
当該樹脂組成物は、無機フィラー、各種添加剤、ポリ塩化ビニル以外のその他の樹脂等のその他の成分を含有してもよい。
【0033】
上記無機フィラーとしては、シース層の耐熱性及び強度を向上する観点から炭酸カルシウムが好適に使用できる。当該樹脂組成物における炭酸カルシウムのポリ塩化ビニル100質量部に対する含有量の下限としては、30質量部が好ましく、35質量部が好ましく、40質量部がより好ましい。一方、上記含有量の上限としては、100質量部が好ましく、80質量部が好ましく、70質量部がより好ましい。上記含有量が上記下限より小さいと、炭酸カルシウムによる特性上昇効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記含有量が上記上限を超えると、相対的に他の成分の含有量が低下し、得られるシース層の特性が低下するおそれがある。
【0034】
上記添加剤としては、例えば安定剤、着色剤などが挙げられる。安定剤としては、ハイドロタルサイト系、ステアリン酸塩系等が使用できる。
【0035】
当該樹脂組成物における上記添加剤のポリ塩化ビニル100質量部に対する含有量としては、1質量部以上5質量部が好ましい。また、当該樹脂組成物におけるポリ塩化ビニル以外の樹脂のポリ塩化ビニル100質量部に対する含有量としては、3質量部以下が好ましい。
【0036】
<利点>
当該樹脂組成物は、平均重合度が上記範囲の塩化ポリビニルを主成分とし、可塑剤として、一定量のジイソノニルフタレートを含むため、柔軟性とストリップ性とを両立できる発泡シース層を形成できる。
【0037】
[ケーブル]
図1に示すケーブルは、2本のコア材1と、上記2本のコア材1の外周面を被覆するシース層2とを備える。
【0038】
当該ケーブルの平均外径は、例えば3.5mm以上13mm以下とされる。なお、「平均外径」とは、断面と同等の面積を有する円の直径を長さ方向に平均した値を意味する。
【0039】
<コア材>
2本のコア材1は、それぞれ電気信号を伝達する絶縁電線であり、導体1a及びこの導体1aを被覆する絶縁被覆層1bを有する。
【0040】
2本のコア材1は、長さ方向に沿って外周が接するように配設されている。また、2本のコア材1は並列して配設されてもよいし、撚り合わされて配設されてもよい。
【0041】
上記コア材1の導体1aは、単線又は撚線として構成される。また、上記導体1aの素線としては、通電できる限り特に限定されないが、錫メッキ軟銅線等の軟銅線、銅合金線などが挙げられる。
【0042】
上記導体1aの平均外径はコア材1に要求される抵抗値等により適宜決定され、上記導体1aの平均外径は、例えば0.5mm以上3mm以下とすることができる。
【0043】
上記コア材1の絶縁被覆層1bの主成分としては、絶縁性が確保される限り特に限定されないが、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の樹脂を用いることができる。また、上記樹脂は、電子線の照射により架橋処理されているとよい。上記樹脂が架橋処理されていることで、上記コア材1の耐熱性が向上する。
【0044】
絶縁被覆層1bの平均肉厚は、例えば0.15mm以上0.8mm以下とすることができる。
【0045】
絶縁被覆層1bには、必要に応じて可塑剤、耐熱老化防止剤、難燃剤等の添加剤を適宜含有してもよい。上記可塑剤としては、フタル酸系、トリメリット酸系、アジピン酸系、ポリエステル系等の可塑剤を挙げることができる。上記耐熱老化防止剤としては、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤や、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系酸化防止剤などを挙げることができる。また、上記難燃剤としては、臭素系有機化合物、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。
【0046】
さらに、絶縁被覆層1bは、重質炭酸カルシウム等の無機フィラーを含有してもよい。
【0047】
上記コア材1の平均外径は、例えば1mm以上4mm以下とすることができる。
【0048】
<シース層>
シース層2は、上記2本のコア材1を被覆する内側シース層2aと、この内側シース層2aを被覆する外側シース層2bとを備える。このように2層のシース層を備えることで、形状安定性や外観を向上することができる。
【0049】
(内側シース層)
内側シース層2aは、主成分のポリ塩化ビニルと、可塑剤と、空孔とを含有する発泡シース層である。
【0050】
内側シース層2aは、上述した当該樹脂組成物を用いて形成されており、内側シース層2aの空孔は当該樹脂組成物の空孔形成剤に由来する。つまり、例えば当該樹脂組成物の空孔形成剤が化学発泡剤等の場合は空孔形成剤の発泡により空孔が形成され、空孔形成剤が中空フィラーの場合はこの中空フィラーの空隙によって空孔が形成されている。
【0051】
内側シース層2aが含有する成分(ポリ塩化ビニル、可塑剤、その他の成分)及びその含有量は、上述の当該樹脂組成物と同様とすることができる。
【0052】
内側シース層2aの空孔率の下限としては、5体積%であり、7体積%がより好ましく、10体積%がさらに好ましい。一方、内側シース層2aの空孔率の上限としては、30体積%であり、25体積%がより好ましく、20体積%がさらに好ましい。内側シース層2aの空孔率が上記下限未満であると、低誘電率化及びストリップ荷重の低減効果が不十分となるおそれがある。逆に、内側シース層2aの空孔率が上記上限を超えると、シース層2の絶縁性が低下するおそれがあり、さらに、シース層2の機械的強度が不十分となるおそれがある。
【0053】
内側シース層2aの空孔の平均径の下限としては、0.001μmが好ましく、0.01μmがより好ましい。一方、上記空孔の平均径の上限としては、10μmが好ましく、1μmがより好ましい。空孔の平均径が上記下限未満であると、低誘電率化及びストリップ荷重の低減効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記空孔の平均径が上記上限を超えると、シース層2の絶縁性が低下するおそれがあり、さらに、内側シース層2aにおける空孔の分布が不均一になり誘電率の分布に偏りが生じ易くなるおそれがある。
【0054】
内側シース層2aの平均外径は、2本のコア材1を被覆できるように適宜決定されるが、例えば3mm以上12mm以下とすることができる。また、内側シース層2aは、互いに接する2本のコア材1を被覆するため、肉厚が通常不均一となる。内側シース層2aの平均最小肉厚は、例えば0.3mm以上3mm以下とすることができる。なお、内側シース層の「平均最小肉厚」とは、内側シース層の外周の任意の点とコア材の外周の任意の点との間の距離の最小値を長さ方向に平均した値を指す。
【0055】
(外側シース層)
外側シース層2bは、内側シース層2aと同様に、主成分のポリ塩化ビニルと、可塑剤と、空孔とを含有する発泡シース層である。
【0056】
外側シース層2bが含有する成分(ポリ塩化ビニル、可塑剤、その他の成分)及びその含有量は、内側シース層2aと同様とすることができる。
【0057】
外側シース層2bの空孔率及び空孔の平均径は、内側シース層2aと同様とすることができる。ただし、内側シース層2aの空孔の平均径を外側シース層2bよりも大きくするとよい。外側シース層2bの空孔を小さく、内側シース層2aの空孔を大きくすることで、シース層2の外観の低下を防止しつつ、低誘電率化とストリップ時の荷重低減効果を高めることができる。
【0058】
外側シース層2bの平均肉厚は、例えば0.2mm以上0.7mm以下とすることができる。
【0059】
当該ケーブルのシース層2の25℃における弾性率の上限としては、30MPaが好ましく、25MPaがより好ましい。上記弾性率が上記上限を超えると、当該ケーブルの柔軟性が不足するおそれがある。一方、上記弾性率の下限としては、特に限定されないが、後述する耐熱性の観点から例えば5MPaとできる。ここで、「弾性率」とは、動的粘弾性測定法により測定される貯蔵弾性率の値である。
【0060】
<用途>
当該ケーブルは、宅内配線用に用いられるVVF(ビニル絶縁ビニルシース平形)ケーブルとして好適に使用できる。
【0061】
<利点>
当該ケーブルは、空孔を含有するシース層が、平均重合度が上記範囲の塩化ポリビニルを主成分とし、可塑剤として、一定量のジイソノニルフタレートを含むため、柔軟性とストリップ性とを両立できる。
【0062】
[ケーブルの製造方法]
当該ケーブルの製造方法は、コア材(絶縁電線)と、このコア材の外周面側に積層されるシース層とを備えるケーブルの製造方法であり、当該樹脂組成物を1又は複数のコア材の外周面側に押出成形により積層する積層工程を主に備える。また、当該ケーブルの製造方法は、必要に応じて空孔形成剤を発泡させる空孔形成工程を備えてもよい。
【0063】
<積層工程>
積層工程では、例えば撚り合わせた2本のコア材の周りに上記内側シース層用樹脂組成物及び外側シース層用樹脂組成物を、外側シース層用樹脂組成物が外側となるように押し出す。
【0064】
押出成形は、公知の溶融押出成形機を用いることができる。また、押出は、上記内側シース層用樹脂組成物をコア材の周りに押し出した後に、さらにその外周に外側シース層用樹脂組成物を押し出してもよく、上記内側シース層用樹脂組成物及び外側シース層用樹脂組成物を、外側シース層用樹脂組成物が外側となるように同時に押し出し(共押出)してもよい。
【0065】
<空孔形成工程>
当該樹脂組成物が、空孔形成剤として、加熱により空孔を形成する化学発泡剤、熱膨張性マイクロカプセル、熱分解性樹脂等を含む場合、一般には押出時の加熱により空孔が形成されるが、空孔形成剤の発泡温度、熱分解温度等によっては押出時に空孔が形成されない場合がある。その場合には、押出後に樹脂組成物を発泡温度等以上に加熱し、空孔を形成することで、発泡シース層が得られる。
【0066】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0067】
上記実施形態では、コア材が2本の場合を説明したが、コア材は1本又は3本以上であってもよい。
【0068】
また、当該ケーブルは、シース層が単層(内側シース層のみ)であってもよい。また、
図1のようにシース層が多層の場合、全てのシース層が当該樹脂組成物を用いて形成される必要はなく、少なくとも1層のシース層が当該樹脂組成物を用いて形成されればよい。
【0069】
さらに、当該ケーブルは、コア材とシース層との間や、シース層の外周に他の層を備えてもよい。コア材とシース層との間に配設される他の層としては、例えば当該ケーブルからコア材を取り出し易くするための紙テープ層が挙げられる。また、シース層の外周に配設される他の層としては、例えばシールド層が挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
[ケーブルの作成]
表1に示す配合のシース層用樹脂組成物を用意した。ポリ塩化ビニル(PVC)としては、新第一塩ビ社の「ZEST1300Z」(平均重合度1,300、表中「PVC1300」)、可塑剤としてはジイソノニルフタレート(DINP)及びジオクチルフタレート(DOP)、炭酸カルシウムとしてはカルファイン社の「KS−1300」(体積平均粒子径D50:3.2μm)、安定剤としてはアデカ社の「RUP−151」(非鉛系安定剤)を用いた。
【0072】
次に、平行に配置した2本のコア材(導体径1.6mm、絶縁被覆層肉厚0.85mm)の周りに、上記シース層用樹脂組成物を押出成形し、平型ケーブルのシース層を形成した。シース層形成後の平型ケーブルの外形は6.2×9.4mmとした。得られたシース層の空孔率を表1に示す。
【0073】
[評価]
得られたケーブルに対し、以下の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0074】
(引張強度及び引張伸び)
JIS−C3005:2014の「4.16 絶縁体及びシースの引張り」に従い、シース層の引張強度及び伸びを測定した。なお、引張強度は10MPa以上、引張伸びは120%以上がJIS規格を満たす。
【0075】
(2%セカントモジュラス)
引張試験機を用いて長さ100mmのケーブルを引張速度50mm/分の速度で軸方向に引張し、2%伸長時の荷重を断面積で除した値を50倍したものを2%セカントモジュラス(MPa)とした。なお、2%セカントモジュラスが30MPa以下であれば、柔軟性が高いといえる。
【0076】
(ストリップ性)
ストリッパ(松坂鉄工所の「VSS−1620」)を用いてケーブルをストリップし、キレ残りのないものをA、キレ残りのあるものをBとした。
【0077】
【表1】
【0078】
表1から、平均重合度が1,000以上2,500以下のポリ塩化ビニルを主成分とし、ポリ塩化ビニル100質量部に対する空孔形成剤の含有量が0.05質量部以上0.4質量部以下であり、ポリ塩化ビニル100質量部に対し40質量部以上100質量部以下の可塑剤を含有し、さらに可塑剤におけるDINPの含有量が20質量%以上である実施例1〜9は、比較的高い引張強度及び引張伸びを有し、2%セカントモジュラスが比較的低い。つまり、実施例1〜9は、柔軟性に優れる。また、実施例1〜9は、ストリップ性にも優れる。
【0079】
一方、ポリ塩化ビニルの平均重合度が1,000未満の比較例1と、可塑剤の含有量が40質量部未満の比較例3とは、柔軟性が不十分であった。また、DINPを用いなかった比較例2と、可塑剤の含有量が100質量部超の比較例4とは、ストリップ性が不十分であった。
【0080】
また、空孔形成剤の含有量が0.05質量部未満であり、シース層の空孔率が5体積%未満である比較例5は、ストリップ性が不十分であった。さらに、空孔形成剤の含有量が0.4質量部超であり、シース層の空孔率が30体積%超である比較例6は引張強度が劣った。