特許第6679503号(P6679503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 水ing株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6679503-有機性汚泥の処理方法及び処理装置 図000014
  • 特許6679503-有機性汚泥の処理方法及び処理装置 図000015
  • 特許6679503-有機性汚泥の処理方法及び処理装置 図000016
  • 特許6679503-有機性汚泥の処理方法及び処理装置 図000017
  • 特許6679503-有機性汚泥の処理方法及び処理装置 図000018
  • 特許6679503-有機性汚泥の処理方法及び処理装置 図000019
  • 特許6679503-有機性汚泥の処理方法及び処理装置 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6679503
(24)【登録日】2020年3月23日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】有機性汚泥の処理方法及び処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/02 20060101AFI20200406BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20200406BHJP
   C02F 11/14 20190101ALI20200406BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20200406BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20200406BHJP
   C02F 11/06 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   C02F11/02ZAB
   C02F11/00 B
   C02F11/14
   C02F3/34 101B
   B01D21/01 102
   C02F11/06 Z
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-568742(P2016-568742)
(86)(22)【出願日】2016年1月7日
(86)【国際出願番号】JP2016050309
(87)【国際公開番号】WO2016111324
(87)【国際公開日】20160714
【審査請求日】2018年11月29日
(31)【優先権主張番号】特願2015-2929(P2015-2929)
(32)【優先日】2015年1月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】片岡 直明
(72)【発明者】
【氏名】植田 真司
(72)【発明者】
【氏名】大塚 江理
(72)【発明者】
【氏名】岩根 良和
(72)【発明者】
【氏名】森田 智之
(72)【発明者】
【氏名】萩野 隆生
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−206699(JP,A)
【文献】 特開昭60−094200(JP,A)
【文献】 特開昭56−115695(JP,A)
【文献】 特開2008−073613(JP,A)
【文献】 特開2013−144298(JP,A)
【文献】 特開2000−079399(JP,A)
【文献】 特開昭60−038099(JP,A)
【文献】 特開昭56−121696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00
C02F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嫌気性処理後の有機性汚泥を処理する方法であって、
当該有機性汚泥は、25g/L以上のTS濃度と、当該TS濃度よりも5g/L以上少ないSS濃度と、を有する難脱水性消化汚泥であり、
当該消化汚泥を脱水処理する前に、当該難脱水性消化汚泥に対して、0.1m/(m・分)以上0.3m/(m・分)以下の曝気強度で4時間以上48時間以下、酸素含有気体を通気して、当該難脱水性消化汚泥の粘度を、下水試験方法に定められたB型回転粘度計による30℃での測定で200mPa・s以下に低下するまで曝気処理を行なうことを特徴とする有機性汚泥の処理方法。
【請求項2】
前記曝気強度は0.2m/(m・分)以上であることを特徴とする請求項に記載の有機性汚泥の処理方法。
【請求項3】
前記曝気処理に用いる酸素含有気体は、空気、又は処理対象となる有機性汚泥が形成される処理施設内で発生する臭気成分を含む空気であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機性汚泥の処理方法。
【請求項4】
前記曝気処理を行う前に、難脱水性消化汚泥に、好気性微生物群を含む汚泥を添加することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の有機性汚泥の処理方法。
【請求項5】
前記曝気処理後の消化汚泥に、6.0g/L以下のTS濃度を有する希釈液を添加して希釈した後、脱水処理することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の有機性汚泥の処理方法。
【請求項6】
25g/L以上のTS濃度と、当該TS濃度よりも5g/L以上少ないSS濃度と、を有する難脱水性消化汚泥を形成する嫌気性処理槽と、
当該難脱水性消化汚泥に酸素含有気体を曝気させる曝気槽と、
曝気処理後の消化汚泥に凝集剤を添加して凝集汚泥を形成する凝集槽と、
当該嫌気性処理槽又は当該凝集槽の撹拌装置の撹拌抵抗に応じて当該曝気槽に供給する酸素含有気体の曝気速度を調整する制御装置と、
当該凝集汚泥を脱水する脱水装置と、
前記脱水装置からの脱水分離水を硝化脱窒素する硝化脱窒素槽と、
当該硝化脱窒素槽からの処理水を前記曝気処理後の消化汚泥に添加する希釈液供給配管と
を具備することを特徴とする、有機性汚泥の処理装置。
【請求項7】
前記硝化脱窒素槽からの好気性微生物群含有汚泥を前記曝気槽又は前記曝気槽に流入する前の難脱水性消化汚泥に添加する好気性微生物群含有汚泥供給配管をさらに具備することを特徴とする、請求項に記載の有機性汚泥の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性汚泥の処理方法及び処理装置に関し、特に難脱水性消化汚泥の処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工残渣、生ごみ、汚泥などの廃棄物系バイオマスを対象としたメタン発酵技術において、設備のコンパクト化やメタンガスのエネルギー回収率向上を目的として、設備への投入原料濃度を高濃度化することで運転動力を削減し、エネルギー回収の効率化を図ることが多い(高濃度消化法)。
【0003】
一方、メタン発酵時の汚泥濃度が高濃度化すると、発酵微生物の阻害反応に加えて、汚泥濃度の上昇に伴う移送、混合、撹拌時の設備容量や動力費増大、汚泥の難脱水化などの問題が発生してくる。特に、下水汚泥などの一般的なメタン発酵汚泥のTS濃度(全蒸発残留物:Total solids)は15〜20g/Lであるのに対して、メタン発酵汚泥のTS濃度が25g/L以上となる高濃度消化法では、発酵設備での適切な混合・撹拌技術とともに、難脱水化した発酵汚泥を簡便で安定的に汚泥処理できる技術が必要となっている。さらに、TS濃度が25g/L以上且つSS濃度(懸濁物質:Suspended solids)がTS濃度よりも5g/L以上少ない性状の汚泥の場合には、汚泥が高粘質化したり、固液分離性が著しく低下したりする傾向が強く、安定した汚泥処理技術が要求されている。
【0004】
メタン発酵汚泥処理では、凝集薬剤を注入して汚泥中の懸濁物質を化学的に凝集処理した後、機械脱水することが多い。その際、TS濃度が25g/L以上の高濃度汚泥では、希釈液などで汚泥を希釈処理してから汚泥脱水処理する方法が採られている(特許文献1)。この高濃度消化汚泥の脱水処理に用いる高分子凝集剤としては、高価なアミジン系高分子凝集剤などが用いられ、適正な凝集フロックを形成させるためには薬注率5wt%以上(対TS濃度)の高い添加率で添加する必要があるため、薬品費が著しくコスト高となっていた。下水汚泥を対象とする一般的な嫌気性消化汚泥の脱水処理に用いられる高分子凝集剤が安価な非アミジン系高分子凝集剤で薬注率2wt%(対TS濃度)程度であることと比較すると、著しくコスト高であることが明らかであろう。
【0005】
嫌気性消化汚泥の脱水性を改善するために、嫌気性消化処理した消化残物(消化汚泥、又は消化液と消化汚泥との混合スラリー)を酸素含有ガスで曝気したのち機械脱水する方法が提案されている(特許文献2)。特許文献2には、消化残物を十分曝気処理することで、消化残物のアルカリ度およびコロイド成分が微生物の作用によって減少するために、脱水効果が向上することが開示されている。しかし、特許文献2には、曝気条件が何ら明記されておらず、曝気処理の効果が明確ではない。
【0006】
また、嫌気性消化汚泥(SS濃度1.53%=15.3g/L)を曝気処理した後に余剰汚泥を混合し、得られた混合汚泥に金属塩を添加(第1段目の凝集反応)してから、凝集処理(第2段目の凝集反応)及び脱水処理を行う方法が提案されている(特許文献3)。特許文献3には、曝気により汚泥中に溶解している炭酸ガスを脱気し、金属塩を添加した際の発泡による凝集阻害を防止して凝集性を高めることが開示されている。また、余剰汚泥の混合によりアルカリ度を低下させ、金属塩(無機凝集剤)及び有機高分子凝集剤の凝集作用を改善すると記載されている。特許文献3に開示されている曝気条件は5〜10m−Air/m−汚泥・hr(0.083〜0.167m−Air/m−汚泥・分)の曝気風量にて1〜3時間である。特許文献3には、曝気処理を行った場合に塩化第二鉄の添加時に発泡が殆どなかった(実施例1)と記載されているに過ぎず、溶解している炭酸ガスの脱気効果が確認されているだけである。また、特許文献3には嫌気性消化汚泥のTS濃度は記載されておらず、推定することもできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−79399号公報
【特許文献2】特開昭60−38099号公報
【特許文献3】特開平8−206699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低コスト及び高脱水効率を達成できる高濃度消化汚泥の処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、高濃度消化汚泥中に残留する粘着質成分が高濃縮されることによって高濃度消化汚泥が難脱水化するとの知見を得て、高濃度消化汚泥の粘度を低下させることによって、凝集剤の添加量を削減し、脱水効率を向上できることを見いだした。
【0010】
本発明によれば、下記の有機性汚泥の処理方法及び処理装置が提供される。
[1]嫌気性処理後の有機性汚泥を処理する方法であって、当該有機性汚泥は、25g/L以上のTS濃度と、当該TS濃度よりも5g/L以上少ないSS濃度と、を有する難脱水性消化汚泥であり、当該消化汚泥を脱水処理する前に、当該難脱水性消化汚泥に対して酸素含有気体を通気して曝気処理を行ない、当該難脱水性消化汚泥の粘度を低減させることを特徴とする有機性汚泥の処理方法。
[2]前記曝気処理は、曝気処理後の難脱水性消化汚泥の粘度が、下水試験方法に定められたB型回転粘度計による30℃での測定で200mPa・s以下に低下するまで行うことを特徴とする[1]に記載の有機性汚泥の処理方法。
[3]前記曝気処理は、0.1m/(m・分)以上の曝気強度にて4時間以上48時間以下の曝気時間で行うことを特徴とする[1]又は[2]に記載の有機性汚泥の処理方法。
[4]前記曝気強度は0.2m/(m・分)以上であることを特徴とする[3]に記載の有機性汚泥の処理方法。
[5]前記曝気処理に用いる酸素含有気体は、空気、又は処理対象となる有機性汚泥が形成される処理施設内で発生する臭気成分を含む空気であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1に記載の有機性汚泥の処理方法。
[6]前記曝気処理を行う前に、難脱水性消化汚泥に、好気性微生物群を含む汚泥を添加することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の有機性汚泥の処理方法。
[7]前記曝気処理は、前記難脱水性消化汚泥中の溶存酸素濃度を1.0mg/L以下に維持して行うことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1に記載の有機性汚泥の処理方法。
[8]前記曝気処理後の消化汚泥に、6.0g/L以下のTS濃度を有する希釈液を添加して希釈した後、脱水処理することを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項に記載の有機性汚泥の処理方法。
[9]前記曝気処理後の消化汚泥に凝集剤を添加して凝集汚泥を形成し、当該凝集汚泥を脱水処理し、脱水処理により発生する脱水分離水を前記希釈液として用いることを特徴とする[8]に記載の有機性汚泥の処理方法。
[10]前記凝集剤としてポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄、PAC(ポリ塩化アルミニウム)又は硫酸バンドを用いることを特徴とする[8]に記載の有機性汚泥の処理方法。
[11]25g/L以上のTS濃度と、当該TS濃度よりも5g/L以上少ないSS濃度と、を有する難脱水性消化汚泥を形成する嫌気性処理槽と、
当該難脱水性消化汚泥に酸素含有気体を曝気させる曝気槽と、
曝気処理後の消化汚泥に凝集剤を添加して凝集汚泥を形成する凝集槽と、
当該嫌気性処理槽又は当該凝集槽の撹拌装置の撹拌抵抗に応じて当該曝気槽に供給する酸素含有気体の曝気速度を調整する制御装置と、
当該凝集汚泥を脱水する脱水装置と、
を具備することを特徴とする、有機性汚泥の処理装置。
[12]前記脱水装置からの脱水分離水を硝化脱窒素する硝化脱窒素槽と、
当該硝化脱窒素槽からの処理水を前記曝気処理後の消化汚泥に添加する希釈液供給配管をさらに具備することを特徴とする、[11]に記載の有機性汚泥の処理装置。
[13]前記硝化脱窒素槽からの好気性微生物群含有汚泥を前記曝気槽又は前記曝気槽に流入する前の難脱水性消化汚泥に添加する好気性微生物群含有汚泥供給配管をさらに具備することを特徴とする、[12]に記載の有機性汚泥の処理装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、嫌気性処理により発生するメタン発酵汚泥などのTS濃度25〜50g/L、SS濃度18〜45g/L、好ましくは20〜40g/Lの高濃度で高粘度の難脱水性消化汚泥を低コストで効率的に脱水処理することができる。
【0012】
本発明の有機性汚泥の処理方法によれば、難脱水性消化汚泥を曝気処理することによって、当該汚泥の粘度が低下し、凝集剤による凝集作用と脱水効率が向上し、薬品コスト及び脱水コストを大幅に低減することができる。汚泥粘度の低減は、曝気処理による粘着質成分の低減によるものと考えられる。
【0013】
従来は、高粘度の難脱水性消化汚泥を凝集及び脱水処理する際には、希釈により粘度を低下させることが必要であったが、本発明の方法によれば、凝集及び脱水処理の際の希釈が不要となるか、あるいは低希釈率で十分となる。よって、希釈液のコストを削減でき、脱水分離水の浄化のために行われる生物処理工程での分離膜濾過コスト及び下水道放流コストも削減することができる。
【0014】
また、従来の高濃度消化汚泥処理において、凝集剤としてポリ硫酸第二鉄などの鉄系無機凝集剤を用いる場合に問題となっていた脱炭酸反応に基づく発泡も著しく低減することができ、凝集槽における発泡制御も可能となる。
【0015】
さらに、本発明の処理方法によって得られる脱水ケーキは、従来の高濃度消化汚泥の脱水ケーキと比較して、含水率を低下させるだけではなく、汚泥の粘着性が低減されることから、脱水ケーキの搬送機器への汚泥付着に伴う移送効率低下、汚泥乾燥設備での乾燥部位への汚泥付着に伴う乾燥効率低下、などの後処理工程で生じていた不具合を解消することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の処理方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の別の処理方法を示すフローチャートである。
図3】本発明の別の処理方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の処理装置の構成を示す系統図である。
図5】実施例2による曝気強度及び曝気時間と消化汚泥粘度との関係を示すグラフである。
図6】実施例3による高濃度汚泥に対する曝気時間と消化汚泥粘度との関係を示すグラフである。
図7】実施例3による曝気時間と分子量分布の変動を示すゲルパーミエーションクロマトグラフのチャートである。
【好ましい実施形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の有機性汚泥の処理方法は、嫌気性処理後の有機性汚泥を処理する方法であって、当該有機性汚泥は、25g/L以上のTS濃度と、当該TS濃度よりも5g/L以上少ないSS濃度と、を有する難脱水性消化汚泥であり、当該消化汚泥を脱水処理する前に、酸素含有気体による曝気処理を行ない、当該難脱水性消化汚泥の粘度を低減させることを特徴とする。
【0019】
(1)難脱水性消化汚泥
本発明による処理対象は、25g/L以上、好ましくは25〜60g/LのTS濃度と、当該TS濃度よりも5g/L以上少ないSS濃度と、を有する難脱水性消化汚泥である。より好ましくは、TS濃度25〜50g/L、さらに好ましくは35〜45g/L、SS濃度18〜45g/L、さらに好ましくは20〜40g/Lの高濃度で高粘度の難脱水性消化汚泥である。汚泥性状としては、pH6.5〜8.0、下水試験方法に定められたB型回転粘度計で測定した30℃での汚泥粘度400〜2000mPa・s、好ましくは400〜1500mPa・s、SSに対する粗浮遊物含有率3〜20wt%であることが多い。難脱水性消化汚泥は、食品製造残渣、生ごみ、汚泥などの有機性物質を嫌気性処理(メタン発酵処理)する工程から発生する。一般には処理温度30〜60℃の中温発酵領域及び高温発酵領域にて、滞留日数(HRT)12〜40日の条件で運転される完全混合型メタン発酵槽や乾式メタン発酵槽などから排出される汚泥である。
【0020】
(2)曝気処理
酸素を含む気体で難脱水性消化汚泥を曝気処理して、当該汚泥中に残留する粘着質成分を生物的反応とともに化学的反応で分解させて汚泥粘度を低下させる。硝化脱窒素処理後の余剰汚泥や生物脱臭処理後の汚泥などには、種々の好気性微生物群が高分子成分の分解活性は高くないが多数生存している。これらの好気性微生物群は、嫌気性処理工程において汚泥中に残留する粘着質成分を生育源として摂取し分解することが可能であるため、曝気処理によって部分的に好気性雰囲気とすることによって高分子成分の分解活性を高めることが重要である。曝気処理では、汚泥中に溶解している炭酸ガスの脱炭酸反応が進行するのみでなく、汚泥中の残留有機物と無機物とが架橋作用で結合して生じた粘着物、有機物同士が会合して生じた粘着物、高分子系粘着物が曝気処理による生物的反応及び化学的反応で低減される。特に、消化汚泥中に残留する分子量100万〜200万以上の高分子物質が低分子化されることで汚泥粘度が低減する。曝気処理時の温度は10〜50℃、pHは7〜9、曝気強度は0.1〜0.3m/(m・分)、曝気時間は4〜48時間が好ましい。曝気強度や処理時間が過大となると、汚泥中の粘着質成分ばかりでなく、汚泥自体の分解が進行して汚泥性状が更に変化して、後段の凝集処理や脱水処理に悪影響を及ぼす。曝気強度が0.1m/(m・分)未満では、汚泥粘度が高いため汚泥全体に曝気することが困難である。
【0021】
曝気に用いる酸素含有気体としては、酸素ガスを含む気体であれば問題なく、難脱水性消化汚泥が形成される処理施設内のごみ受入ピットやごみ選別設備などから発生する悪臭成分を含む低濃度系および高濃度系の臭気ガス、汚水の活性汚泥処理設備から発生する曝気排ガスなどを用いることができる。曝気処理時の汚泥中の溶存酸素(DO)濃度は1.0mg/L以下に維持する。汚泥の酸化還元電位(ORP)は多くの場合−400〜+100mV程度である。本発明において、曝気処理は、汚泥pH7.5〜9.5、下水試験方法に定められたB型回転粘度計による30℃での測定で汚泥粘度200mPa・s以下となるまで行うことが好ましい。
【0022】
また、曝気処理による生物的反応を促進する上では、曝気処理を行う前に、難脱水性消化汚泥に、好気性微生物群を含む汚泥(以下「好気性微生物群含有汚泥」という)を添加することが好ましく、粘着質成分を積極的に分解させ汚泥粘度を低下させることが可能である。添加することができる汚泥としては、硝化脱窒素工程から得られる活性汚泥の余剰濃縮汚泥、あるいは堆肥化汚泥、生物脱臭の汚泥などの好気性微生物群含有汚泥が好ましい。好気性微生物群含有汚泥の添加量は、その汚泥濃度にもよるが、曝気槽での汚泥滞留時間等を考慮して嫌気性消化汚泥量の5〜20%、好ましくは5〜10%程度が好ましい。好気性微生物群含有汚泥の添加量が20%を大きく上回ると、曝気槽での汚泥滞留時間が短くなるために、粘着質成分の分解反応が進行しにくくなり、併せて、難脱水性の余剰汚泥率が高くなり、脱水性能が低下する。したがって、好気性微生物群含有汚泥の添加量は、微生物が粘着質成分の分解に寄与できる範囲にすることが好ましい。
【0023】
(3)凝集処理
曝気処理した消化汚泥に凝集剤を添加して凝集フロックを形成させ、凝集フロックを脱水処理する。
【0024】
凝集剤としては、特に限定されないが、高分子凝集剤が用いられる。また、ポリ硫酸第二鉄または硫酸バンド、PAC等の無機系凝集助剤と高分子凝集剤の併用も分離液の清澄度を高めるために有効な場合がある。高分子凝集剤としては、カチオン系、アニオン系、両性系、等が挙げられ、例えば、アミジン系凝集剤、アクリルアミド系凝集剤、アクリル酸系凝集剤等が挙げられる。また、比較的安価なカチオンポリマー系凝集剤、例えば、アクリル酸エステル系、メタアクリル酸エステル系、アニオン度よりもカチオン度が高い両性系等を用いることができる。アクリル酸エステル系凝集剤としては、分子量が300万〜600万程度が好ましい。汚泥凝集時の高分子凝集剤の添加率は、汚泥のTS濃度に対して2〜7wt%が好ましく、2〜5wt%程度が更に好ましい。本凝集処理によって、直径、すなわちフロック径が数ミリ程度であり、沈降分離性が高い凝集フロックを形成することができる。
【0025】
凝集処理の前に、曝気処理した消化汚泥を希釈してもよく、凝集剤注入率を低減することができる。希釈された消化汚泥のMアルカリ度は、4000mg/L以下が好ましく、2500mg/L以下が更に好ましい。希釈された消化汚泥の電気伝導度は1200mS/m以下に調整することが好ましく、750mS/m以下に調整することが更に好ましい。希釈液としては、通常の飲用水等の他、凝集作用及び脱水作用に影響を与えない性状、たとえば溶解性成分濃度が低いプロセス水、あるいは脱水処理後にさらに生物処理を行う高次処理施設においては生物処理に影響しない性状、たとえばpH5〜9、NH−N1000mg/L以下、ヘキサン抽出物質500mg/L以下であれば、処理プラント内のプロセス水を用いることができる。具体的には、活性汚泥処理水、生物脱臭装置廃液などの生物処理水、汚泥脱水処理により排出される脱水分離水、ボイラ排水、場内洗浄排水、コンポスト化凝縮排水、雑排水などを使用することができる。
【0026】
(4)濃縮処理
凝集処理により形成された凝集フロックを脱水処理前に固液分離して消化汚泥濃縮物としてから脱水処理してもよい。
【0027】
濃縮処理により、凝集フロックは汚泥濃縮物と分離液とに固液分離される。TS濃度8〜12wt%に濃縮された汚泥は、より効率的に脱水処理することができる。
【0028】
(5)脱水処理
凝集処理、又は凝集処理及び濃縮処理された消化汚泥の凝集フロックを脱水ケーキと分離水とに固液分離する。
【0029】
本発明の処理方法により得られる脱水ケーキの含水率は78〜82%以下と低含水率であるため、コンポスト化、炭化、燃料化などの再資源化が可能である。分離水は、SS濃度100〜2000mg/L、Mアルカリ度1000〜2000mg/L、電気伝導度200〜500mS/mとなるため、消化汚泥の希釈液として用いることができる。
【0030】
本発明の有機性汚泥の処理装置は、25g/L以上のTS濃度と、当該TS濃度よりも5g/L以上少ないSS濃度と、を有する難脱水性消化汚泥を形成する嫌気性処理槽と、当該難脱水性消化汚泥に酸素含有気体を曝気させる曝気槽と、曝気処理後の消化汚泥に凝集剤を添加して凝集汚泥を形成する凝集槽と、当該嫌気性処理槽又は当該凝集槽の撹拌装置の撹拌抵抗に応じて当該曝気槽に供給する酸素含有気体の曝気速度を調整する制御装置と、当該凝集汚泥を脱水する脱水装置と、を具備することを特徴とする。図4を参照しながら、各構成要素について説明する。
【0031】
(A)嫌気性処理槽
廃棄物系バイオマス処理設備や下水処理施設などで一般に用いられる完全混合型メタン発酵槽や乾式メタン発酵槽など、公知の嫌気性処理槽を制限なく用いることができる。
【0032】
通常、嫌気性処理槽は、槽内液の均質化や温度分布の均一化とともに、スカムの発生を防止するために撹拌手段を具備している。本発明では機械撹拌方式が最も効率的であるが、設備環境や処理条件に応じてポンプ撹拌方式やガス撹拌方式を使用してもよい。さらに、これらの要件を備えた水密かつ気密な構造の発酵処理槽であれば鉄筋コンクリート製または鋼板製のいずれでもよい。また、嫌気性処理槽は、対象バイオマスを可溶化および酸発酵処理する可溶化・酸発酵処理槽と、該槽での処理物を発酵処理する嫌気性処理槽と、を含む構成としてもよい。
【0033】
(B)曝気槽
水処理施設などで一般に用いられる曝気槽を制限なく用いることができ、難脱水性消化汚泥(メタン発酵汚泥など)を導入する手段、酸素含有気体を消化汚泥中に導入するためのブロワなどの曝気手段又は散気手段、曝気汚泥の引き抜き手段を備え、運転管理する計測機器としてpH計、DO計、ORP計、粘度計を備えることが好ましい。曝気手段は、曝気槽底部から曝気槽内の難脱水性消化汚泥中に気泡を導入できるように設けることが好ましい。
【0034】
さらに、曝気槽の前段に、高速分散機などの汚泥分散装置を設けてもよい。この場合には、難脱水性消化汚泥を均質に分散したスラリー状態を保持することができ、曝気槽容量を小型化することができる。
【0035】
(C)制御装置
嫌気性処理槽または凝集槽及び曝気槽には、消化汚泥の粘度に応じて酸素含有気体の曝気速度を調整する制御装置が電気的に連結されている。通常、消化汚泥の粘度の計測は、試料を採取して回転粘度計で計測するため、自動連続計測を行うことができない。本発明では、嫌気性処理槽または凝集槽の撹拌装置の撹拌抵抗に基づいて、嫌気性処理槽または凝集槽内の消化汚泥の粘度を推測し、曝気処理中の消化汚泥の粘度を推測して、曝気速度を調整する。具体的には、たとえば、嫌気性処理槽または凝集槽の撹拌装置に電流検出部を設け、検出された電流値から撹拌抵抗を求め、曝気槽内の難脱水性消化汚泥の粘度変動を推定して、所定の曝気速度に調整する。
【0036】
(D)凝集槽
水処理施設などで一般に用いられる凝集槽を制限なく用いることができる。凝集槽には、曝気槽にて曝気処理した後の消化汚泥を供給する曝気処理後汚泥供給配管、当該汚泥に対して凝集剤を添加する凝集剤供給配管、凝集処理により形成される凝集フロックを含む凝集汚泥を濃縮槽に送る凝集汚泥配管が連結されている。
【0037】
(E)濃縮槽
凝集槽にて形成された凝集フロックを固液分離して濃縮凝集フロックを形成する固液分離装置を備える。固液分離装置としては、特に限定されず、重力濃縮法が適用される単なる槽、遠心濃縮法が適用される遠心分離機、浮上濃縮法が適用される分離機、スクリーンを用いた分離機等が挙げられる。中でも、液体成分を通過させる多数のスリットを形成したスリット板と、スリット板上に周面を突出せしめた多数の円板と、を備えるスリット型濃縮機が好ましい。スリット型濃縮機は、例えば、スリット板で受け止められた処理物は、処理物排出方向に偏心回転するスリット板上の多数の円板によってスリット板上を排出側に送られ、この過程でスリットと円板との隙間から液体成分が落下して濾過され、処理物中の固体成分は分離捕集される。さらに、スリット板の上面に近接して処理物の排出方向に回転し、スリット板上の捕集物を圧搾して濃縮する背圧板を上記スリット板上に設けた機械構造も好ましく用いることができる。
【0038】
(F)脱水装置
凝集槽からの凝集フロック、又は濃縮槽からの濃縮凝集フロックを受け入れ、脱水する脱水装置を備える。脱水装置としては特に限定されず、凝集フロック又は濃縮凝集フロックへ応力を付与する手段と、分離液を透過し、消化汚泥凝集物を保持するろ過手段を具備することが好ましい。応力を付与する手段としては、プレス、遠心等が挙げられる。ろ過手段としては、開孔径が0.1〜2.5mmのスクリ−ン等が挙げられる。
【0039】
(G)硝化脱窒素槽
脱水装置からの脱水分離水を硝化脱窒素する硝化脱窒素槽を備えていてもよい。水処理施設などで一般に用いられる循環式硝化脱窒素槽、高負荷脱窒素槽、膜分離式高負荷硝化脱窒素槽を制限なく用いることができる。循環式硝化脱窒素槽の場合、嫌気的環境の脱窒槽、及び曝気等による好気的環境の硝酸化槽の2槽を設けてもよい。たとえば、硝酸化槽において好気性微生物反応で生成された硝酸塩を脱窒槽に戻して、嫌気性又は通性嫌気性微生物反応で脱窒素する方式で、循環法による硝化・脱窒を行うことができる。膜分離高負荷脱窒素槽の場合、硝化脱窒素槽は嫌気部と好気部に分割され、生物浮遊法を採用し、活性汚泥や凝集汚泥の固液分離を限外ろ過膜で処理を行うことができる。
【0040】
(H)希釈液供給配管
硝化脱窒素槽からの処理水を曝気処理後の消化汚泥に添加する希釈液供給配管を備えていてもよい。希釈液供給配管は、曝気槽と凝集槽とを連結する配管に連結されていることが好ましい。希釈液供給配管には、脱水槽からの脱水分離水を送液する配管が連結されていてもよい。
【0041】
(I)好気性微生物群含有汚泥供給配管
硝化脱窒素槽からの好気性微生物群含有汚泥を汚泥引き抜きポンプで引き抜いて、曝気槽又は曝気槽に流入する前の難脱水性消化汚泥に添加する好気性微生物群含有汚泥供給配管を備えていてもよい。好気性微生物群含有汚泥供給配管は、嫌気性処理槽と曝気槽とを連結する配管に連結されていることが好ましい。
【実施例】
【0042】
次に、実施例及び比較例により、本発明を具体的に説明する。
【0043】
[実施例1]
表1に示すメタン発酵汚泥(難脱水性消化汚泥)を用いて、表2に示す8通りの処理試験を行って曝気処理による脱水性改善効果を確認した。曝気処理では、20リットルタンクにメタン発酵汚泥12リットルを投入し、温度30℃、曝気強度0.25m/(m・分)で連続曝気した。汚泥中のDO濃度は1.0mg/L以下であった。試験4では、活性汚泥の余剰濃縮汚泥(pH7.6、SS 13,700mg/L、NH−N 1.4mg/L)1.0リットルを投入して連続曝気した。比較のため、熱処理、水酸化ナトリウムによるアルカリ処理、及び硫酸による酸処理での脱水性改善効果も確認した。
【0044】
熱処理は、1リットル三角フラスコにメタン発酵汚泥500mLを投入し、ウォーターバス(温度50℃又は80℃)で2時間、熱処理した(比較試験1及び2)。
【0045】
酸処理は、1リットル三角フラスコにメタン発酵汚泥500mLを投入し、5%濃度の硫酸溶液でpH6に調整後、室温で6時間静置した(比較試験3)。
【0046】
アルカリ処理は、酸処理と同様、1リットル三角フラスコにメタン発酵汚泥500mLを投入し、10%濃度の水酸化ナトリウム水溶液でpH9に調整後、室温で6時間静置した(比較試験4)。
【0047】
【表1】
【0048】
各分析項目は以下の分析方法に拠った。
・TS(Total solids、全蒸発残留物);105℃蒸発残留物重量(JIS K 0102)
・VS(Volatile total solids、強熱減量);600℃強熱減量(JIS K 0102)
・SS(Suspended solids、懸濁物質);遠心分離機による回転数3,000rpm,10分間での沈殿物重量(JIS K 0102)
・VSS(Volatile suspended solids、揮発性懸濁物質);懸濁物質の600℃強熱減量(JIS K 0102)
・Mアルカリ度;遠心分離機による回転数3,000rpm,3分間での上澄液を0.1mol/Lの塩酸溶液でpH4.8まで滴定(下水試験方法)
・コロイド荷電量;汚泥の表面荷電量、コロイド滴定法により当量を測定(下水試験方法)
・粗浮遊物含有量;呼び寸法74μmふるいでの残留物の強熱減量分析(下水試験方法)
・汚泥粘度;B型回転粘度計を用いて30℃で測定(下水試験方法)
・脱水試験;カチオン性高分子凝集剤エバグロースCS-374Dを用いた。脱水試験はベルトプレス式脱水機を用いた(ろ布緊張力4.9kN/m、ろ布スピード1.0m/分)。
・粘り感;脱水汚泥を掌で触った際の汚泥粘着性(粘り感)を3段階評価(なし:さらさらで粘り感なし、弱:粘り感ややあり、強:掌に付着する強い粘り感あり)
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
[実施例2]
表1に示すメタン発酵汚泥を用いて、曝気強度0.1m/(m・分)、0.2m/(m・分)、0.3m/(m・分)の3系列で連続曝気処理し、汚泥粘度の経時的変化を調べた。曝気処理時の汚泥温度は22〜27℃、DO濃度は1.0mg/L以下であった。
試験結果を表4及び図5に示す。曝気強度に比例して、また、処理時間と共に汚泥粘度は低下することが分かった。
【0052】
【表4】
【0053】
実施例1および実施例2の試験結果より、メタン発酵汚泥を曝気処理することで汚泥粘度は低下し、脱水性が改善されると言える。特に、曝気強度0.3m/(m・分)の場合には、わずか4時間で汚泥粘度(30℃)が200mPa・s未満となり、18時間で100mPa・s未満となる。一方、曝気時間が長くなると再び汚泥粘度が上昇する傾向が見られるため、曝気時間は4時間〜80時間、好ましくは4時間〜48時間、より好ましくは18時間〜48時間程度、特に好ましくは20時間〜30時間である。曝気強度が0.2m/(m・分)の場合にも同様の傾向が認められ、汚泥粘度が200mPa・s未満を達成する曝気時間は15時間〜80時間であり、曝気時間としては18時間〜50時間がより好ましい。曝気強度が0.1m/(m・分)の場合には、汚泥粘度200mPa・s未満を達成するまでに19時間程度が必要となり、曝気時間は長くなる傾向が認められ、48時間程度で汚泥粘度100mPa・s以下となる。いずれの曝気強度においても曝気時間を30時間より長期化しても汚泥粘度低下効果はほぼ一定となる。したがって、本実施例によれば、曝気強度0.2m/(m・分)〜0.3m/(m・分)、曝気時間4〜48時間、好ましくは10〜40時間程度が、難脱水性消化汚泥の粘度低下に極めて効果的であるといえる。
【0054】
[実施例3]
(a)TS濃度30g/L、SS濃度18g/L、(b)TS濃度38g/L、SS濃度19g/L、(c)TS濃度44g/L、SS濃度30g/Lの3種類の高濃度消化(メタン発酵)汚泥を用いて、曝気強度0.24m/(m・分)の条件で連続曝気処理し、汚泥粘度(30℃)の経時的変化を調べた。DO濃度は1.0mg/L以下であった。試験結果を表5及び図6に示す。メタン発酵汚泥のTS濃度44g/L、汚泥粘度1600mPa・sの高濃度汚泥でも、24時間の曝気処理によって200mPa・sにまで汚泥粘度が低下することが分かった。
【0055】
汚泥(a)の曝気時間0(h)、6(h)及び12(h)の各試料について、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)による分子量分布測定を行った。汚泥試料を10倍希釈後、0.45μmフィルターでろ過したろ液試料を分離カラム(東ソー製TSKgel GMPWXL)に導入し、RI検出器(示差屈折率検出)でGPC分析を行った。高分子物質の標準物質としてプルラン(平均分子量235万、10.7万、0.6万の3種類)を用いた。分析条件を下記表5に示す。
【0056】
【表5】
【0057】
分析結果のクロマトグラフを図7に示す。図中、(1)は曝気0時間(hr)の試料、(2)は曝気6時間(hr)の試料、(3)は曝気12時間(hr)の試料である。なお、図7はすべての結果を比較するために便宜的に並べて示しており、曝気12時間(hr)の試料が最も高い位置にあるが測定値が高いことを示すものではない。保持時間(Retention time)5分〜10分のRI強度(RI Intensity)をベースラインとした場合のRI強度差でピーク強度の高低を認定した。
【0058】
分析結果では、保持時間(Retention time)約13分〜14分における高分子画分ピークは、曝気時間が長くなるほどRI強度が低くなることから、曝気処理によって高分子物質が分解されていることがわかる。また、いずれの汚泥試料においても、保持時間(Retention time)約18〜19分に大きなピークが認められる中、曝気0時間(hr)試料、曝気6時間(hr)試料では分子量235万付近(プルラン換算)の物質が多く存在するのに対して、曝気12時間(hr)試料では分子量100万付近(プルラン換算)の物質が多く存在しており、曝気処理によって高分子物質が低分子化されていると言える。そして、曝気12時間(hr)試料の保持時間(Retention time)約19分のピークは、曝気0時間(hr)試料や6時間(hr)試料よりも鋭利となっていることから、曝気0時間(hr)試料や曝気6時間(hr)試料中の高分子物質の分解が進行していることが分かる。
【0059】
表6に曝気処理時間と消化汚泥の粘度との関係、表7に曝気処理時間と分子量との関係を示す。
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
[実施例4]
図2のフローシートに基づいて、表8に示す条件にて、種々の食品製造廃棄物を混合してメタン発酵処理を行った。曝気用気体として、原料受入ホッパ、破砕機、選別機、可溶化槽、堆肥化発酵槽などの処理設備からの高濃度臭気含有空気を吸引して使用し、曝気槽底部の散気装置から導入した。
【0063】
曝気槽ブロワ運転は、図4に示す制御装置系統図に基づいて、メタン発酵槽の汚泥粘度720mPa・s、曝気槽の汚泥粘度105mPa・sでの初期設定時を基準とし、メタン発酵槽撹拌機の初期電流設定の5%以上が検出された際にブロワ強度を3%ずつ段階的に増大させて曝気速度の調整を行う自動制御とした。メタン発酵汚泥及び曝気処理後の汚泥の性状を表9に示す。
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】
次に、曝気処理後の消化汚泥に凝集剤を添加した後、脱水処理した。脱水処理(1)ではカチオン系高分子凝集剤(水ing(株)エバグロースCS-374D)と無機凝集剤(ポリ鉄)を併用し、脱水処理(2)及び(3)では高分子凝集剤のみ添加した。脱水処理(3)は比較試験で、曝気処理をしなかった難脱水性消化汚泥での脱水試験結果である。脱水処理(1)〜(3)における凝集剤添加率及び脱水処理後の脱水ケーキ性状及び時間当たりの固形物処理量を表10に示す。
【0067】
【表10】
【0068】
[実施例5]
図3のフローシートに基づいて、硝化脱窒素工程から得られる活性汚泥の余剰濃縮汚泥(好気性微生物群含有汚泥)を曝気槽に導入した点を除いて実施例4と同様に処理を行った。結果を表11及び12に示す。
【0069】
【表11】
【0070】
【表12】
【0071】
以上のように、本発明によれば、有機性廃棄物を高濃度でメタン発酵処理した難脱水性消化汚泥に対して、脱水処理の前に曝気処理を施すことで汚泥の粘度を大幅に低下させることができ、凝集性能及び脱水効率を向上させることができる。本発明の処理方法によれば、凝集剤の添加量を低減でき(低薬注率)、安定的に短時間で高濃度消化汚泥の脱水処理が可能となる。本発明によって得られた含水率82%以下の脱水ケーキは、従来の脱水ケーキと比較して低含水率で、粘着性がなく、特殊な不快臭もないことから、コンポスト、炭化、燃料化などの再資源化にも好適である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7