【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の局面は請求項において定義される。
大まかに言えば、本発明の1つの局面は、少なくとも2つの弁尖を有する弁構成要素(および/または生体弁)を含む心臓弁置換のための装置を提供する。ここで「弁構成要素」という用語は、弁尖が互いにしっかりと固定されて他の構成要素から独立した単一の弁構造を規定しているか否かに関わらず、弁尖を総称するために用いられる。
【0010】
弁尖は好ましくは心膜組織からなり、最も好ましくはブタの心膜組織またはウシの心膜からなる。ブタの心膜は望ましく薄く、十分に耐久性があり得る。ウシの心膜はより厚く、所望の場合により耐久性があり得る。各弁尖は少なくとも2つのタブを有する。装置は、圧縮状態へと半径方向に圧縮可能であるとともに、機能状態へと拡張可能であるように構成されたステント構成要素をさらに含む。ステント構成要素は、第1の端と、第2の端と、第1の端と第2の端との間に配置された少なくとも1つの中間部とを含む。中間部は、任意におよび/または概して第1の端から第2の端に及ぶ軸に対して平行に並んだ少なくとも2つの交連ポストを有する。弁尖のタブは交連ポストに、好ましくは交連ポストに設けられる取付手段に直接的に取付けられる。
【0011】
弁尖は、置換弁を形成するように構成され、寸法決めされる。いくつかの実施例では、弁尖は、真っすぐまたはやや湾曲した上側自由縁と、2つの外縁と、実質的に弓形の下縁とを有する。少なくとも1つのタブが各外縁に、好ましくは弁尖の上側自由縁の領域内に配置される。弁置換装置において、少なくとも2つの弁尖は、大動脈弁置換の場合は、心拡張期に自身の上側自由縁が互いに押付けられて一方向の、たとえば心臓に向かう方向の血流を防止することができ、心収縮期に上側自由縁が互いに離れて他方向の、たとえば心臓から離れる方向の血流を可能にすることができるように位置決めされる。
【0012】
より好ましくは、3つの弁尖が設けられる。これによって、たとえば大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁または僧帽弁などの生来の三尖弁構造を模倣することが可能になる。代替的に、弁置換装置は、4つ、5つまたはそれ以上などのさらに多くの弁尖を含み得る。
【0013】
置換弁にさまざまな異なる人工材料を用いることが公知であるが、本発明に係る弁置換装置の少なくとも2つの弁尖は心膜組織からなることが好ましい。最も好ましくは、少なくとも2つの弁尖はブタの心膜組織からなる。心膜組織は十分に薄いが、弁尖材料として用いられるのに十分な耐久性がある。ブタの心臓はヒトの心臓との多くの類似点を示す。したがってブタの心膜組織を用いることが有利である。さらに、ブタの心膜組織は容易に入手可能である。ブタの大動脈弁は厚すぎて弁置換装置を20フレンチ未満に折曲げることができないため、本発明についてはブタの大動脈弁を用いることは記載されていない。上述のように、さらに高い耐久性を望む場合は、任意に組織がより厚くなることと引換えに、弁尖にウシの心膜を用いてもよい。
【0014】
ステント構成要素は好ましくは、自己拡張型である。そのようなステントは当該技術において公知であり、ニチノールなどの形状記憶材料を含むか当該材料からなることが多い。代替的に、ステント構成要素は塑性変形材料からなるか当該材料を含み得、バルーンカテーテルなどの外部手段によって機能状態へと拡張し得る。
【0015】
圧縮状態、たとえば折曲状態では、ステント構成要素は、大動脈弁などの患者の心臓弁の領域に挿入され得る。また、圧縮状態のステント構成要素の直径は、ステント構成要素が大腿動脈などの動脈を通って患者の心臓内へ進むことができるようなものである。したがって、圧縮状態のステント構成要素の直径および/または可撓性は好ましくは、弁置換装置が大動脈弓上を通って進むことができるようなものである。
【0016】
機能状態では、ステント構成要素は少なくとも部分的に拡張しているか、非圧縮構成にある。任意に、ステント構成要素は内部管空間を規定する。管空間は概して円筒形および
/または管状であり得る。弁尖は、ステント構成要素の内側で内部空間に及ぶように配置される。弁置換装置を患者の生来の弁の近くの目標位置に位置決めすると、ステント構成要素が機能状態へと拡張する。好ましくは、ステント構成要素は、ステント要素が拡張すると装置を心臓血管内にしっかりと取付けることを可能にするアンカー固定要素をさらに含み得る。
【0017】
患者の生来の弁尖は、拡張するステント構成要素によって押しやられ得る。ステント構成要素の内部に配置された弁構成要素は完全に拡張すると、生来の弁の機能を引継ぐ。
【0018】
ステント構成要素は好ましくは、第1の端と、第2の端と、第1の端と第2の端との間に配置された少なくとも1つの中間部とを含む。弁構成要素はそれによって好ましくは、ステント構成要素の中間部内に配置される。任意に、ステント構成要素は、中間部が任意に一定の直径を有する円錐形および/または円筒形の管空間を含み、当該直径は最も好ましくは15mm〜35mmの範囲内にあるように構成される。中間部の長さはそれによって好ましくは、10mm〜50mmの範囲内にある。
【0019】
機能状態では、第1および第2の端は流入および流出開口部を規定し、使用時にこれを通ってまたはこの周りに血液が流れ得る。本発明に係る弁置換装置の単純な実施例は、第1および第2の端を有する中間部のみを含み得る。しかし、さらに好ましくは、本発明に係る弁置換装置は、中間部と第1および/または第2の端との間に配置された少なくとも付加的な流入および/または付加的な流出部を含む。
【0020】
ここで理解される「流入部」とは、血液が管空間に入るステント構成要素の部分、および/または使用時に弁尖の上流にあるステント構成要素の部分である。たとえば、半月弁および/または大動脈弁の場合は、心室に向けて方向付けられたステント構成要素の部分である。
【0021】
したがって、ここで理解される「流出部」とは、血液が管空間を出るステント構成要素の部分、および/または使用時に弁尖の下流にあるステント構成要素の部分である。たとえば、半月弁については動脈内に配置された部分である。
【0022】
流入および流出部はそれによって、同一の長さまたは異なる長さを有し得る。さらに、流入および/または流出部は概して管状の管の内部管空間を規定し得る。管空間は概して円筒形であり得る。より好ましくは、流入および/または流出部は概して円錐形の管、すなわち直径が増加または減少する管を含む。代替的に、流入および流出部は任意の適切な幾何学的形状の内部管空間を含み得る。
【0023】
任意に、流入および流出部は同一の最大直径または変化する最大直径を有し得る。ここで理解される「最大直径」とは、そのような部分内の最大直径である。任意に、流入部の最大直径は流出部の最大直径よりも小さい。さらに、中間部の直径は、流入および流出部のいずれか一方の最大直径よりも小さい。最も好ましくは、流入および流出部は、第1および第2の端の方向において増大する直径を有する。代替的に、流入および/または流出部と中間部との間にさらなる部分が配置され得る。
【0024】
好ましい実施例では、流入部の最大直径は20mm〜35mmの範囲内にあり、流出部の最大直径は20mm〜55mmの範囲内にある。
【0025】
ステント構成要素は下側アンカー固定冠部をさらに含み得る。下側アンカー固定冠部は、少なくとも部分的に円錐形の本体を規定し得る。下側アンカー固定冠部は、好ましくはステント構成要素の第2の端と中間部との間に配置され、好ましくは弁輪の内部に配置さ
れるように、および/または弁輪の心室側に延在するように構成される。
【0026】
付加的に、ステント構成要素は、下側アンカー固定冠部と連通しているか下側アンカー固定冠部に隣接した上側アンカー固定冠部をさらに含み得る。上側アンカー固定冠部は、少なくとも部分的に円錐形の本体を規定し得る。下側アンカー固定冠部の円錐体は、第2の端の方向において外向きに傾斜し得、上側アンカー固定冠部の円錐体は、たとえば弁輪の大動脈側に配置されるように、中間部の方向において外向きに傾斜し得る。
【0027】
好ましくは、ステント構成要素は、交連ポストに連通しており、かつ第1の端に向かって延在する安定化アーチをさらに含む。安定化アーチは好ましくは、上行大動脈に係合してステント構成要素を大動脈または大動脈弁輪の内部で長手方向に方向付けることによって、埋込時に上行大動脈に対するステント構成要素のいかなる傾きも修正するように構成される。交連ポストはそれによって、安定化アーチを介して互いに接続され、2つの隣接する交連ポストが1本の安定化アーチによって互いに接続される。さらに、交連ポストは好ましくは、上側アンカー固定冠部および/または下側アンカー固定冠部にも連通している。
【0028】
さらに、ステント構成要素は好ましくは、送達装置(たとえば送達装置のステントホルダ)と噛合係合する少なくとも1つの取付要素を含む。少なくとも1つの取付要素は、ステント構成要素が完全に解放されるまでステント構成要素の軸方向の変位を抑制するように構成され得る。いくつかの実施例では、少なくとも1つの取付要素は、弁置換装置の心室部および/または流入部が装置の配置時に最後に拡張する部分となるように、下側冠部に設けられる。ステント構成要素は、たとえば2つ、3つまたはそれ以上などの任意の適切な数の取付要素を含み得る。取付要素は、円周方向に実質的に均一に間隔を空けられ得る。
【0029】
任意に、少なくとも1つの取付要素は、2つのステント支柱を互いに接合するU字形状部分を含み得る。ここで「U字形状」という用語は、側が真っすぐまたは湾曲しているか、外方向、平行、または非平行に隆起しているか否かに関わらず、概して弓形の頂部を含む任意の形状を含むように用いられる。送達カテーテルの収容領域内に受けられたときのステントの折畳(たとえば圧縮)状態では、支柱は、U字形状部分の孤が、たとえば、支柱同士の間隔よりも大きいアパーチャを有する閉じたまたはほぼ閉じた(たとえば蹄鉄形の)アイレットを規定するように180度よりも大きい第1の角度で周りを延在するように、取付要素において互いに隣接して存在し得る。アイレットアパーチャの蹄鉄形状および支柱同士の間の隣接空間はともに、鍵穴型形状を規定し得る。送達カテーテルの収容領域から解放されたときのステントの拡張(または非折畳)状態では、支柱は互いに離れ得、U字形状部分の孤は、アイレットを少なくとも部分的にさらに開くように、第1の角度よりも小さい第2の角度で周りを延在し得る。たとえば、第2の角度は、約180度以下であり得る。拡張状態では、取付要素は、弓形の頂部を有する、実質的に真っすぐな側が設けられたU字形状を規定し得る。
【0030】
送達カテーテルは、ステント収容領域内に設けられるステントホルダを含み得る。ステントホルダは、
(i)各アイレット内に受け入れ可能な突出部を含み得、突出部は、ステント構成要素が折畳状態にあるときに、突出部がアイレット内に捕捉され、隣接する支柱同士の間を通過することができないように寸法決めされ得、および/または、
(ii)少なくともステント構成要素が折畳状態にあるときに、取付要素を実質的に内部に収容するための1つ以上の凹部または隙間
を含み得る。
【0031】
上記の形態は、コンパクトであるが、ステント弁と送達システムとの間の信頼性のある自己開放および/または自己解放取付を提供し得る。取付要素を提供することによって、ステント構成要素を望ましい小さなサイズに圧縮することが妨害されることもない。
【0032】
いくつかの実施例では、中間部は、第1の端から第2の端に及ぶ軸に対して概して平行に並んだ少なくとも2つの交連ポストを含む。弁尖のタブは交連ポストに、好ましくは交連ポストに設けられる取付手段に直接的に取り付けられる。
【0033】
弁尖を交連ポストに直接的に取付けることによって、弁尖の高い歪み抵抗が与えられる。任意に、当該技術において公知の弁置換ステントと比較して、弁尖を交連ポストに直接的に取付けることによって、弁尖と歪み抵抗に耐え得る交連ポストとの間の組織の余分な層を無くすことができれば、折曲げたステント要素の厚みを任意に減少させることができる。
【0034】
本発明の別の局面によると、少なくとも2つの弁尖を有する弁構成要素および/または生体弁を含む、心臓弁置換のための装置が提供される。少なくとも2つの弁尖は好ましくは心膜組織からなり、最も好ましくはブタの心膜組織からなる。少なくとも2つの弁尖の各々は、少なくとも2つのタブを有する。装置は、圧縮状態へと半径方向に圧縮可能であるとともに、機能状態へと拡張可能であるように構成されたステント構成要素をさらに含む。ステント構成要素は、第1の端と、第2の端と、第1の端と第2の端との間に配置された少なくとも1つの中間部とを含む。中間部は、第1の端から第2の端に及ぶ軸に対して概して平行に並んだ少なくとも2つの交連ポストを有する。交連ポストは叉骨形状に形成され、タブは交連ポストに、好ましくは交連ポストに設けられる取付手段に直接的に取付けられる。
【0035】
叉骨は概して、逆さの「Y」字のように成形される。したがって交連ポストは、2本の傾斜脚部(アームとも称される)と、1本のステムとを含む。傾斜脚部は真っすぐであり得るが、好ましくは2本の傾斜脚部は(たとえばステント構成要素の軸の周りに、および/または円周平面内に)湾曲している。形状は好ましくは、直線であるか曲線であるかに関わらず、叉骨の脚部が弁尖の外縁と実質的に揃っているおよび/または合致するように選択される。これによって、交連ポストが弁尖の外縁に良好な支持を与えることができる。弁尖の外縁は脚部に、および/または弁尖と交連ポストとの間の内側スカート材料に取付けられ得る。脚部はそれによって、弁尖の外縁の輪郭と概して一致するように成形される。これによって、たとえば縫合によって、弁尖の外縁を叉骨形状の交連ポストの脚部に直接的または間接的に取付けて、弁尖を密接に支持することができる。
【0036】
ステント弁置換装置の本実施例の他の要素の構成は、上記の第1の実施例に記載されたものと同様である。
【0037】
交連ポストは好ましくは、弁尖のタブのための取付手段を含み、取付手段は、少なくとも1つのタブを挿入するように適合された少なくとも1つの開口部を含む。
【0038】
開口部は好ましくは貫通孔として構成され、すなわち開口部は、交連ポストによってすべての側の境界が付けられており、および/または交連ポストがすべての側に配置されている。代替的に、開口部はチャネルスリットとして構成され得、すなわち交連ポストによって3つの側のみの境界が付けられ得、および/または3つの側のみに交連ポストが配置され得、1つの側が開放されている。開口部は、矩形、円形、楕円形などのいずれかの好適な形態であり得る。最も好ましくは、開口部は長孔の形態である。開口部は、弁尖の少なくとも1つのタブを開口部から挿入可能であるようにさらに適合される。したがって、交連ポストの開口部の位置およびサイズは、弁尖の少なくとも1つのタブを挿入可能であ
るように選択される。好ましくは開口部は、たとえば2つの隣接する弁尖の2つのタブを挿入可能であるように適合される。代替的に、交連ポストは2つ以上のそのような開口部を含み得る。このように、各外縁に2つのタブなどのより多いタブを有する弁尖の取付が交連ポストに取付けられ得る。さらなる代替例では、交連ポストは、隣接する弁尖のタブの各々を別個の開口部に挿入可能であるように、互いに平行に配置された2つの開口部を含み得る。タブは好ましくは開口部に挿入され、交連ポスト上で弁尖に向けて折返され、弁尖に縫合される。
【0039】
取付手段は、縫合針金を挿入するように適合された少なくとも2つのボアをさらに含み、ボアは好ましくは円形ボアの形態である。そのような付加的なボアを設けることによって、弁尖のタブおよび/または外縁を交連ポストに取付けることが容易になる。これらの付加的な少なくとも2つのボアは好ましくは、上記少なくとも1つの開口部の横に配置される。
【0040】
ステント構成要素は好ましくは、中間部と第2の端との間に配置された実質的に平行および/または非平行な管状部分を含み、管状部分は少なくとも一列のセルの格子構造を有し、各交連ポストの叉骨形状が少なくとも3つの隣接セルの配列に及ぶため、叉骨は配列の少なくとも1つの中間セルに取付けられることなく、配列の外側セルから延在する。このような構成によって圧縮が容易になり、かつ叉骨脚部が十分な分岐を有して弁尖の外縁の形状と一致することが可能になる。
【0041】
いくつかの実施例では、叉骨の脚部が格子構造内の配列の外側セルに接合されることによって、交連ポストが少なくとも1つの中間セルに取付けられることなく、少なくとも3つの隣接セル上に及ぶことが可能になる。代替的に、各交連ポストは、4つ、5つなどの3つよりも多い隣接セル上に及ぶように構成され得る。さらに代替的に、各交連ポストは、異なる数の隣接セルに及ぶように構成され得る。好ましくは、叉骨形状の交連ポストのステムは、安定化アーチによって互いに連通している。2つの隣接する叉骨形状の交連ポストのステムはそれによって、1本の安定化アーチによって互いに連通している。
【0042】
弁置換装置は、好ましくは心膜組織からなり、かつ弁尖に取付けられる内側スカートをさらに含み得る。内側スカートは、ステント構成要素の管空間内で血液を導き、ステント構成要素の隙間を通る(たとえば格子構造のセルを通る)血液の漏れを妨げるように作用し得る。
【0043】
いくつかの実施例では、内側スカートは、扇形の間隙(たとえば扇形の切抜部)によって間隔を空けられた交連部分を有し得る。各間隙には、それぞれの弁尖が及ぶ。弁尖の外縁および/または下縁は、たとえば縫合部によって内側スカートに取付けられ得る。
【0044】
いくつかの実施例では、内側スカートは第2の端に向かって延在し得、スカートは好ましくはステント装置に縫合される。スカートは好ましくは、ステント構成要素の内面を少なくとも部分的に覆う。これによって、ステント構成要素の材料によって引起され得る血液乱流の発生が減少する。スカートは好ましくは、少なくとも2つの弁尖にさらに縫合される。
【0045】
付加的に、ステント構成要素の少なくとも1つの部分は、外側スカートによって外側が少なくとも部分的に覆われている。
【0046】
ステント構成要素は好ましくは、圧縮状態の弁置換装置をカテーテルなどの送達装置のシースに挿入すると、送達装置およびシースの総直径が20フレンチ未満、好ましくは18フレンチ未満であるように構成される。これによって、弁置換装置を動脈に沿って、好
ましくは大腿動脈または鎖骨下動脈に沿って挿入することが可能になる。これによってさらに、小さな皮膚切開および/または心臓壁の切込を用いて弁置換装置を経心尖挿入することが可能になる。
【0047】
本発明のさらに別の局面によると、各々が少なくとも2つのタブを有する少なくとも2つの弁尖を有する弁構成要素および/または生体弁を含む心臓弁置換のための装置が提供される。少なくとも2つの弁尖は、環状スカートの内部において当該スカートに取付けられ得る。ここで「環状」という用語は、円周方向に延びる構造を示すように意図されるが、厳密に円形またはリング状の構造に限定されない。スカート材料の一部は、タブ開口部を通らずに、少なくとも部分的に交連ポストの周りに巻付く。
【0048】
本発明のさらに別の局面によると、少なくとも部分的に円錐形の本体を規定する少なくとも1つの部分を有するステント構成要素を含む心臓弁置換のための装置が提供される。装置は複数の弁尖をさらに有する。少なくとも部分的に円錐形の本体と部分的に重畳するステント構成要素の内部に内側スカートが配置され、内部に管を規定する。少なくとも部分的に円錐形の本体の一部のみと部分的に重畳するステント構成要素の外部に外側スカートが配置される。
【0049】
内側スカートおよび/または外側スカートは好ましくは心膜組織、最も好ましくはブタの心膜組織からなる。
【0050】
本発明の別の局面は、送達のための圧縮状態へと半径方向に圧縮可能であるとともに、機能状態へと半径方向に拡張可能であるステント構成要素を含む弁置換装置を提供する。ステント構成要素は、送達装置のステントホルダと協働する少なくとも1つの(好ましくは複数の)取付要素を含み得る。各取付要素(または複数の取付要素の少なくとも1つ)は、2つのステント支柱を互いに接合するU字形状部分を含み得る。ここで「U字形状」という用語は、側が真っすぐまたは湾曲しているか、外方向、平行、または非平行に隆起しているか否かに関わらず、概して弓形の頂部を含む任意の形状を含むように用いられる。送達カテーテルの収容領域内に受けられたときのステントの圧縮状態では、支柱は、U字形状部分の孤が、たとえば、支柱同士の間隔よりも大きいアパーチャを有する閉じたまたはほぼ閉じた(たとえば蹄鉄形の)アイレットを規定するように180度よりも大きい第1の角度で周りを延在するように、取付要素において互いに隣接して存在し得る。アイレットアパーチャの蹄鉄形状および支柱同士の間の隣接空間はともに、任意に鍵穴型形状を規定し得る。送達カテーテルの収容領域から解放されたときのステントの拡張(または非折畳)状態では、支柱は互いに離れ得、U字形状部分の孤は、アイレットを少なくとも部分的にさらに開くように、第1の角度よりも小さい第2の角度で周りを延在し得る。たとえば、第2の角度は、約180度以下であり得る。拡張状態では、取付要素は、たとえば弓形の頂部を有する真っすぐな側が設けられたU字形状などの、実質的に非蹄鉄形のU字形状を規定し得る。
【0051】
上述のような弁置換装置とともに用いられる送達装置は、収容領域内に設けられるステントホルダを含み得る。ステントホルダは、
(i)各アイレット内に受け入れ可能な突出部を含み得、突出部は、ステントが折畳状態にあるときに、突出部がアイレット内に捕捉され、隣接する支柱同士の間を通過することができないように寸法決めされ得、および/または、
(ii)少なくともステントが折畳状態にあるときに、取付要素を実質的に内部に収容するための1つ以上の凹部または隙間
を含み得る。
【0052】
上記の形態は、コンパクトであるが、弁置換装置と送達装置との間の信頼性のある自己
開放および/または自己解放取付を提供し得る。
【0053】
本発明の別の局面は、少なくとも2つの弁尖を支持するステント構成要素を含む弁置換装置を提供する。弁尖は心膜組織からなり得、最も好ましくはブタの心膜組織またはウシの心膜からなり得る。上述のように、ブタの心膜は望ましい組織の薄さを提供し得る。ウシの心膜組織は若干さらに厚いが、より耐久性があり得る。
【0054】
各弁尖は、少なくとも2つのタブを含み得る。タブは、弁尖をステント構成要素に対して支持するように作用し得る。
【0055】
いくつかの実施例では、タブは、ステント構成要素の交連支持部(たとえばポスト)に直接的に取り付けられ得る。タブは、交連支持部に設けられる取付手段に取り付けられ得る。たとえば、タブは、ステント構成要素の内部から外部まで、交連ポストの開口部(たとえばスロットまたはスリット)を通過し得る。ステント構成要素の外部のタブの部分は、交連支持部に接するように折返され得、および/または交連支持部に縫合され得る。任意に、交連支持部で合流する2つの隣接する弁尖のそれぞれのタブは、同一の開口部を通過する。各タブは、他方のタブと部分的に重畳することなく、交連支持部の外側に接するように折返され得る。2つのタブは任意に、互いに直接的に取付けられない。
【0056】
付加的または代替的に、弁尖は内側スカートに取付けられ得る。弁尖は内側スカートの内側部分に取付けられ得、タブは内側スカートの開口部(たとえばスロットまたはスリット)を通過して内側スカートの外側に至る。内側スカートは扇形の間隙を有し得、このような間隙の各々にはそれぞれの尖が及ぶ。内側スカートは、開口部(たとえばスロットまたはスリット)が設けられる交連部分または立上がりを有し得る。
【0057】
付加的または代替的に、内側スカートを規定する材料は、交連支持部の部分を覆うための、および/または交連支持部にしっかりと固定される弁尖のタブを覆うための、交連支持部の少なくとも一部の周りに巻付く、一体化された延在部分(たとえばフラップ)を含み得る。この延在部分は、交連支持部に縫合され得る。
【0058】
いくつかの実施例では、上記構成のいずれか2つまたは3つすべての組合せが用いられ得る。たとえば、隣接した弁尖のタブの対は、内側スカートの開口部を通過し得るとともに交連支持部の開口部を通過し得る。これら2つの開口部は概して揃っていてもよい。タブは、反対方向に折返され得、交連支持部の外側に縫合され得る(任意にタブが互いに直接的に縫合されることなく)。交連支持部での内側スカートの1つ以上のフラップまたは延在部分を、タブおよび/または交連支持部を覆うように交連支持部の外側の周りに巻付けてもよい。延在部分は、交連支持部に縫合されてもよい。任意に、縫合部は、交連支持部において、タブを取り付けるために用いられるのと同一の縫合穴を通過し得る。延在部分は、タブの縁が覆われて保護されるように、タブを越えて軸方向に延在し得る。
【0059】
本発明の別の局面は、送達のための圧縮状態へと半径方向に圧縮可能であるとともに、機能状態へと半径方向に拡張可能であるステント構成要素と、ステント構成要素の内部に装着された複数の弁尖と、弁尖に取付けられ、かつステント構成要素の内部に少なくとも部分的に延在する内側スカートと、ステント構成要素の外部に少なくとも部分的に延在する外側スカートとを含む弁置換装置を提供する。
【0060】
いくつかの実施例では、外側スカートは、ステント構成要素の流入末端に向かって内側スカートが延在するよりも延在し得る。付加的または代替的に、内側および外側スカートは、少なくとも一方のスカートの表面に対して部分的に重畳し得る。付加的または代替的に、内側および外側スカートは、隣接する末端を有しなくてもよい。付加的または代替的
に、内側スカートは、ステント構成要素の流出末端に向かって外側スカートが延在するよりも延在し得る。
【0061】
少なくとも一方のスカートが延在するステント構成要素の少なくとも一部は任意に、少なくとも一列の複数のセルを含む格子構造を有し得る。
【0062】
内側スカートの機能は、血液を弁尖に向かわせるようにステント内の管を規定して、ステント構成要素の隙間(たとえば格子隙間)を通る血液の漏れを妨げる機能であり得る。外側スカートの機能は、周囲組織を封止するための封止面をステント構成要素の外側に提供して、周囲組織との界面での漏れを妨げる機能であり得る。両方のスカートを設けることによって、全体的な漏れを妨げる点において有益となり得る。しかし、両方のスカートの存在は、ステントが担持する材料の厚みに大きく加わり得、これによりステント弁を望ましい小さいサイズに圧縮する困難さが増加する。軸方向において部分的にのみ重畳した両方のスカートを設けることによって、両方のスカートの利点を得ることができるだけでなく、1つのスカートのみが延在する領域において厚みプロファイルが低減される。(たとえば、特にステント弁が送達のための圧縮および埋込での再拡張により実質的に変形されることになることを念頭に置くと)スカートを重畳させることで、スカートがステント構成要素のそれぞれ内側および外側で縁同士が面して配置されるよりも、スカート同士の間の良好な封止が提供され得る。
【0063】
軸方向におけるスカートの重畳の程度はたとえば、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mm、少なくとも5mm、少なくとも6mm、少なくとも7mm、または少なくとも8mmであり得る。付加的または代替的に、軸方向におけるスカートの重畳の程度はたとえば、10mm未満、9mm未満、8mm未満、7mm未満、6mm未満、5mm未満、または4mm未満であり得る。たとえば、軸方向におけるスカートの重畳の程度は約4mm〜6mmであり得る。
【0064】
少なくとも一方のスカート(任意に各スカート)は、重畳領域から少なくとも1mm離れた重畳しない軸方向距離だけ延在し得る。当該または各スカートについてのこの重畳しない距離はたとえば、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mm、少なくとも5mm、少なくとも6mm、少なくとも7mm、少なくとも8mm、少なくとも9mm、または少なくとも10mmであり得る。
【0065】
いくつかの実施例では、ステント構成要素の流入縁または流入口は、少なくとも一列のセルの格子構造によって規定されるジグザグ形状を有し得る。ジグザグ形状は、(たとえば流入末端にあるか流入末端を規定する)自由頂部と、(たとえば流入端から離れて流出端に向かって延在する格子構造に接続される)接続頂部との交互の配列を規定し得る。いくつかの実施例では、内側スカートは、接続頂部のみに延在し得る。外側スカートは、内側スカートと部分的に重畳し得、自由頂部の少なくともいくつかに対応するレベルまで、内側スカートよりもさらに延在し得る。
【0066】
いくつかの実施例では、内側スカートは、ステント構成要素の流入末端に向かって延在し得る。外側スカートは、部分的にのみ内側スカートと部分的にのみ重畳しつつ、内側スカートの最上縁から距離を置いたままであり得る。外側スカートは、ステント構成要素の流入末端に向かって(または任意に流入末端まで)延在し得る。外側スカートは任意に、(たとえばステント構成要素を介して直接的または間接的に)弁尖の如何なる部分とも部分的に重畳しなくてもよい。
【0067】
内側スカートおよび/または外側スカートは、心膜組織(たとえば、厚みのため、ブタの心膜)、PET、ダクロンなどの任意の好適な材料からなり得る。内側および外側スカ
ートは任意に、互いに同一材料からなり得る。
【0068】
本発明の別の目的は、心臓弁置換のための装置を送達するための送達システムを提供することである。送達システムは、接続手段(たとえばステントホルダ)を有する近位端(または部分)および遠位端(または部分)を有する、可撓性を有する管状カテーテルを含む。送達装置は、上述のような心臓弁置換のための装置をさらに含む。送達装置は、心室の内部にまたは心室に向かって配置されるように適合された装置の部分がカテーテルの遠位端に向けて方向付けられ、かつ大動脈内に配置されるように適合された装置の部分が近位端に向けて方向付けられるように、接続手段に接続される。送達装置に関して、「遠位」という用語は送達装置の操作者から離れて方向付けられることを指し、「近位」という用語は操作者に向けて方向付けられることを指す。
【0069】
管状カテーテルの近位端は好ましくは、操作者のためのハンドル部材を含む。管状カテーテルの遠位端は、本発明に係る弁置換装置を解放可能に接続するための接続手段(たとえばステントホルダ)を含む。接続手段は、任意の好適な種類であり得る。好ましくは、接続手段は、ピン、または弁置換装置の対応取付要素(たとえばフックおよび/もしくはアイレット)と噛合する他の突出部として構成される。置換装置のステント構成要素が拡張すると、取付要素がピンから解放されることによって装置が管状カテーテルから外れる。
【0070】
管状カテーテル上の弁置換装置の向きによって、装置を患者の動脈に沿って、好ましくは大腿動脈または鎖骨下動脈に沿って挿入することが可能になる。動脈挿入の処置は外科手術よりも外傷が小さいため、ある患者にとっては有益である。所望であれば、管状カテーテルを経心尖挿入用に構成してもよい。
【0071】
本発明のさらに別の局面によると、心臓弁の置換方法が提供される。上記の送達装置を圧縮状態で、置換すべき心臓弁の部位に挿入する。そして、送った要素を拡張させる。送達装置を任意に、動脈に沿って、好ましくは大腿動脈または鎖骨下動脈に沿って、可撓性を有する管状カテーテルによって挿入する。代替的に、送達装置を心臓の心室に経心尖挿入する。
【0072】
本発明の別の目的は、迅速かつ容易に実施できる、半径方向に圧縮された際に小型化された弁置換装置の製造方法を提供することである。この目的は、添付の請求項において定義される製造方法によって達成される。
【0073】
いくつかの実施例では、本発明に係る弁置換装置の製造方法の第1のステップにおいて、好ましくは心膜組織からなる管状スカートを提供する。「管状」という用語は、概して円筒または円錐台の形状に成形されたスカートも含むと理解される必要がある。この用語は、軸に沿って半径方向に変化する楕円形断面部を有するスカートなども含む。管状スカートは好ましくは、ブタの心膜組織からなる。
【0074】
次のステップにおいて、これも好ましくは心膜組織からなる少なくとも2つの弁尖を、筒状スカートの周りに互いに隣接して配置する。そのため弁尖のサイズは、弁尖を互いに隣接して配置すると、弁尖が管状スカートの全周囲の周りに及ぶように選択される。弁尖の外縁はしたがって、少なくとも自身の上側自由縁の領域で接触している。
【0075】
弁尖は心膜組織から切出され得る。弁尖は、任意に湾曲した自由縁を含む。湾曲は凸状湾曲であり得る。そのため弁尖のサイズおよび自由縁の湾曲は、ステント構成要素が機能状態にあるときに自由縁が互いに封止接触する(たとえば接合する)ことを可能にするように選択される。弁尖は、弁尖の下縁に向かってテーパ状である2つの外縁をさらに含む
。下縁は自由縁よりも短い。好ましくは、下縁も湾曲しており、より好ましくは凸状湾曲である。「凸状」という用語は、弁尖の表面に対する弁尖の縁の湾曲を定義すると理解すべきである。したがって、凸状に湾曲した縁は弁尖から隆起する。
【0076】
切出に先立って、後の段階での弁尖の収縮を回避するように心膜組織を処理することが好ましい。
【0077】
次に、弁尖の外縁および底縁を、好ましくは縫合によって管状スカートの表面に取付ける。代替的に、接着などの他の手段で弁尖を取付けてもよい。自由縁は、組立てた弁置換装置の置換弁を形成するため、スカートに取付けられていない状態のままである必要がある。
【0078】
次のステップにおいて、弁尖が管状スカートの概して管状の管の内側に来るように、管状スカートを裏返す。そして、裏返したスカートを最終的にステント構成要素に取付ける。
【0079】
本発明の方法に従って製造される弁置換装置の弁構成要素は「裏表に」作られているため、弁尖をスカートに取付けることがずっと容易になり、より少ないステップで済む。
【0080】
折曲げた弁置換装置をさらに小型化するために、好ましくは、弁尖と部分的に重畳している少なくともいくらかのスカート組織を除去する。これは、弁尖をスカートに取付けている縫合部に沿ってスカートを切ることによって行うことができる。組織の除去は好ましくは、ハサミまたは外科用メスを用いて行う。これによって、縫合部の領域を除いて、一層の組織しか存在しないため、弁置換装置の直径をさらに減少させることが可能になる。このようなスカート組織の除去によって、スカート組織に扇形の間隙が形成され、この間隙には弁尖が及ぶ。スカート組織は、隣接する弁尖が合流する交連部分を含み得る。交連部分は、ステント構成要素の交連ポストの外側の周りに巻付く保護巻付材料を提供するための、円周方向および/または軸方向の延在部分(たとえばフラップ)を含み得る。
【0081】
少なくとも2つの弁尖は好ましくは、少なくとも2つのタブをさらに含み、好ましくは1つのタブはそれによって、各弁尖の各外縁に、最も好ましくは自由縁の領域内に配置される。代替的に、少なくとも2つの弁尖は、たとえば各弁尖の各外縁における2つのタブなどの、より多くのタブを含み得る。管状スカートを裏返した後、スカートに少なくとも2つのスリットを切込み、少なくとも1つのタブを各スリットから挿入する。代替的に、隣接する弁尖の2つのタブを同一のスリットから挿入する。これによって、タブをスカートの内側から外側に通過させることが可能になる。
【0082】
次に、タブを好ましくはステント構成要素に直接的に、好ましくは叉骨形状の交連ポストのステムに設けられる取付手段に、最も好ましくは交連ポストに設けられる開口部からタブを引張り、次にタブを交連ポストに縫合することによって、取付ける。その後、タブの余計な材料を除去してもよい。
【0083】
スカート材料の交連部分の延在部分を、タブと同一の開口部を通過させずに、交連ポストの周りに巻付けてもよい。
【0084】
好ましくは、管状スカートは、適切なサイズを有する概して矩形の心膜片を、弁置換装置の弁構成要素の意図されたサイズおよび形態に対応するサイズおよび形態を有するマンドレルの周りに巻付けることによって作られる。そして、概して管状のスカートが得られるように心膜片を互いに縫合する。次に、好ましくは心膜を組織の収縮を引起すように処理することによって、管状スカートがマンドレルの外郭の形態を採ることになる。したが
ってマンドレルは、管状スカートに特定の形を付加的に与え得る。特に好ましい実施例では、マンドレルはスカート上の円周方向の隆起を与える。少なくとも2つの弁尖を管状スカートに取付ける際、管状スカートはマンドレル上に存在し続け得る。
【0085】
さらに、スカート材料のフラップを、タブを交連ポスト上に保持している縫合部を覆うように、タブおよび開口部上に巻付けてもよい。これによって、装置を直径18フレンチ未満に折曲げる際に、弁置換装置を損傷からさらに保護する。
【0086】
本発明のある局面を上記および/または添付の請求項において定義したが、本明細書に記載および/または図面に図示したいずれの新規の特徴または発想についても、それが強調されているか否かに関わらず、保護を請求する。
【0087】
本発明のさらなる利点および特徴は、以下の例の説明および図面に記載される。