特許第6679558号(P6679558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6679558
(24)【登録日】2020年3月23日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】弁置換装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20200406BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20200406BHJP
【FI】
   A61F2/24
   A61F2/966
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-226655(P2017-226655)
(22)【出願日】2017年11月27日
(62)【分割の表示】特願2016-89112(P2016-89112)の分割
【原出願日】2011年9月12日
(65)【公開番号】特開2018-64955(P2018-64955A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2017年12月21日
(31)【優先権主張番号】11166201.1
(32)【優先日】2011年5月16日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11004013.6
(32)【優先日】2011年5月15日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11150544.2
(32)【優先日】2011年1月11日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10176281.3
(32)【優先日】2010年9月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500332814
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ビアディラ,ヨウセフ
(72)【発明者】
【氏名】デラロワ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ロンバルディ,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】エフティ,ジャン−ルク
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−539985(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/053497(WO,A1)
【文献】 特表2010−528761(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/149462(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0182483(US,A1)
【文献】 特表2005−505343(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0177894(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
A61F 2/966
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経カテーテル埋込のための弁置換装置であって、
流入末端を有する流入部と、中間部と、流出末端を有する流出部とを有するステント構成要素を備え、前記流入部の最大直径は前記流出部の最大直径よりも小さく、前記中間部は、前記流入部および前記流出部のいずれか一方の前記最大直径よりも小さい直径を有しており、前記ステント構成要素は、埋込部位への送達のための圧縮状態へと半径方向に圧縮可能であるとともに、機能状態へと半径方向に拡張可能であり、前記ステント構成要素は、送達装置と嵌合係合するための少なくとも1つの取付要素をさらに含み、前記弁置換装置はさらに、
前記ステント構成要素の内部に少なくとも部分的に装着された弁尖と、
ブタの心膜組織の内側スカートおよび外側スカートとを備え、前記内側スカートは前記弁尖に取付けられており、扇形の間隙によって間隔を空けられた交連部分を有しており、各間隙にはそれぞれの弁尖がまたがっており、前記内側スカートは前記流入末端に向かって前記ステント構成要素の内部に少なくとも部分的に延在しており、前記外側スカートは前記ステント構成要素の外部に少なくとも部分的に延在し、前記弁置換装置はさらに、
心臓において前記弁置換装置を挿入するための送達装置を備え、前記送達装置は、圧縮状態の前記弁置換装置を収容するための収容領域を有する遠位部を備え、前記送達装置は、前記弁置換装置が軸方向に動かないように前記弁置換装置を抑制するために、前記ステント構成要素の前記少なくとも1つの取付要素と嵌合係合するための前記収容領域に設けられたステントホルダをさらに備える、弁置換装置。
【請求項2】
前記流入部は20mmから35mmの範囲内の最大直径を有しており、前記流出部は20mmから55mmの範囲内の最大直径を有している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ステント構成要素は自己拡張可能である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記内側スカートおよび前記外側スカートは、軸方向において部分的に重なり合う、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記軸方向におけるスカートの重なり合いの程度は、少なくとも8mmである、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記外側スカートは、前記ステント構成要素の前記流入末端に向かって前記内側スカートが延在するよりもさらに延在する、請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記内側スカートは、前記ステント構成要素の前記流出末端に向かって前記外側スカートが延在するよりもさらに延在する、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記外側スカートは、前記弁尖のいずれの部分とも重なり合わない、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記弁尖は前記内側スカートの内部に取付けられる、請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記内側スカートおよび前記外側スカートは同一材料からなる、請求項1から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記流入部は少なくとも部分的に円錐形の本体を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
取付要素の数はちょうど2つである、請求項1から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記弁尖の外縁および/または下縁が縫合によって前記内側スカートに取付けられる、請求項1から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記弁尖はブタの心膜組織からなる、請求項1から13のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弁置換のための装置に関し、特に大動脈弁置換のための装置に関する。本発明はさらに、弁置換装置のための送達装置、および弁置換装置の製造方法に関する。弁置換装置は、ステント弁または弁付きステントとも称され得る。
【背景技術】
【0002】
心臓弁置換のための従来のアプローチでは、外科医が患者の心臓にアクセスできるようにするために、患者の胸骨(「胸骨切開」)または胸腔(「開胸」)において比較的大きな開口部の切込が必要がある。さらに、これらのアプローチでは、患者の心臓の心停止と、心肺バイパス(すなわち患者の血液に酸素供給して循環させるための心肺バイパス機の使用)とが必要である。近年、経血管アプローチにより、すなわち、新たな弁を大腿動脈を通じて送達することにより、または経心尖経路により、すなわち、置換弁を肋骨間に、および心臓壁を直接的に通って埋込部位まで送達することにより、より小さな皮膚の切開によって挿入したカテーテルを介して心臓置換弁を送達して埋込むことによって、より低侵襲性の心臓弁置換手法を確立するための取組みがなされている。
【0003】
カテーテルを介して置換弁を配置するためのステント弁および送達システムは当該技術において公知であり、たとえばWO2007/071436およびWO2009/053497に開示されている。
【0004】
いくつかの公知のステントは、ニチノールなどの形状記憶材料からなり、自己拡張型である。弁は動物から、たとえばブタの大動脈弁から作られ得る。代替的に、弁は少なくとも部分的に、ダクロンなどの合成材料からなり得る。
【0005】
たとえば、WO2007/071436は、弁要素およびステント要素を含む弁置換装置を開示している。ステント要素は3つの異なる部分を含み、1つの部分が弁要素を収納している。弁要素は、生物材料または人工材料からなり得る3つの弁尖を含む。3つの異なる部分は、異なる直径を有し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いくつかの公知の置換弁ステントの1つの大きな欠点は、折畳まれた(折曲げられた)状態であっても、ステントの直径がステントの経血管送達にはしばしば大き過ぎることである。ステントを大動脈弓上に進めなければならないステントの経大腿送達では、18フレンチ(6mm)未満のさらに小さな直径が必要である。そのような小さな直径は、心臓のより小さな皮膚切開および/またはより小さな切込が使用され得る場合に経心尖送達においても有用であり得る。
【0007】
いくつかの公知のステント弁を18フレンチ未満の直径に折曲げると置換弁に大きな歪みが生じ、破損を引起し得る。
【0008】
したがって、公知の不利点を回避し、特に置換弁の破損の危険性を伴わずに小径に折曲げることができ、大動脈弁輪上に確実に配置してしっかりとアンカー固定できる置換弁装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の局面は請求項において定義される。
大まかに言えば、本発明の1つの局面は、少なくとも2つの弁尖を有する弁構成要素(および/または生体弁)を含む心臓弁置換のための装置を提供する。ここで「弁構成要素」という用語は、弁尖が互いにしっかりと固定されて他の構成要素から独立した単一の弁構造を規定しているか否かに関わらず、弁尖を総称するために用いられる。
【0010】
弁尖は好ましくは心膜組織からなり、最も好ましくはブタの心膜組織またはウシの心膜からなる。ブタの心膜は望ましく薄く、十分に耐久性があり得る。ウシの心膜はより厚く、所望の場合により耐久性があり得る。各弁尖は少なくとも2つのタブを有する。装置は、圧縮状態へと半径方向に圧縮可能であるとともに、機能状態へと拡張可能であるように構成されたステント構成要素をさらに含む。ステント構成要素は、第1の端と、第2の端と、第1の端と第2の端との間に配置された少なくとも1つの中間部とを含む。中間部は、任意におよび/または概して第1の端から第2の端に及ぶ軸に対して平行に並んだ少なくとも2つの交連ポストを有する。弁尖のタブは交連ポストに、好ましくは交連ポストに設けられる取付手段に直接的に取付けられる。
【0011】
弁尖は、置換弁を形成するように構成され、寸法決めされる。いくつかの実施例では、弁尖は、真っすぐまたはやや湾曲した上側自由縁と、2つの外縁と、実質的に弓形の下縁とを有する。少なくとも1つのタブが各外縁に、好ましくは弁尖の上側自由縁の領域内に配置される。弁置換装置において、少なくとも2つの弁尖は、大動脈弁置換の場合は、心拡張期に自身の上側自由縁が互いに押付けられて一方向の、たとえば心臓に向かう方向の血流を防止することができ、心収縮期に上側自由縁が互いに離れて他方向の、たとえば心臓から離れる方向の血流を可能にすることができるように位置決めされる。
【0012】
より好ましくは、3つの弁尖が設けられる。これによって、たとえば大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁または僧帽弁などの生来の三尖弁構造を模倣することが可能になる。代替的に、弁置換装置は、4つ、5つまたはそれ以上などのさらに多くの弁尖を含み得る。
【0013】
置換弁にさまざまな異なる人工材料を用いることが公知であるが、本発明に係る弁置換装置の少なくとも2つの弁尖は心膜組織からなることが好ましい。最も好ましくは、少なくとも2つの弁尖はブタの心膜組織からなる。心膜組織は十分に薄いが、弁尖材料として用いられるのに十分な耐久性がある。ブタの心臓はヒトの心臓との多くの類似点を示す。したがってブタの心膜組織を用いることが有利である。さらに、ブタの心膜組織は容易に入手可能である。ブタの大動脈弁は厚すぎて弁置換装置を20フレンチ未満に折曲げることができないため、本発明についてはブタの大動脈弁を用いることは記載されていない。上述のように、さらに高い耐久性を望む場合は、任意に組織がより厚くなることと引換えに、弁尖にウシの心膜を用いてもよい。
【0014】
ステント構成要素は好ましくは、自己拡張型である。そのようなステントは当該技術において公知であり、ニチノールなどの形状記憶材料を含むか当該材料からなることが多い。代替的に、ステント構成要素は塑性変形材料からなるか当該材料を含み得、バルーンカテーテルなどの外部手段によって機能状態へと拡張し得る。
【0015】
圧縮状態、たとえば折曲状態では、ステント構成要素は、大動脈弁などの患者の心臓弁の領域に挿入され得る。また、圧縮状態のステント構成要素の直径は、ステント構成要素が大腿動脈などの動脈を通って患者の心臓内へ進むことができるようなものである。したがって、圧縮状態のステント構成要素の直径および/または可撓性は好ましくは、弁置換装置が大動脈弓上を通って進むことができるようなものである。
【0016】
機能状態では、ステント構成要素は少なくとも部分的に拡張しているか、非圧縮構成にある。任意に、ステント構成要素は内部管空間を規定する。管空間は概して円筒形および
/または管状であり得る。弁尖は、ステント構成要素の内側で内部空間に及ぶように配置される。弁置換装置を患者の生来の弁の近くの目標位置に位置決めすると、ステント構成要素が機能状態へと拡張する。好ましくは、ステント構成要素は、ステント要素が拡張すると装置を心臓血管内にしっかりと取付けることを可能にするアンカー固定要素をさらに含み得る。
【0017】
患者の生来の弁尖は、拡張するステント構成要素によって押しやられ得る。ステント構成要素の内部に配置された弁構成要素は完全に拡張すると、生来の弁の機能を引継ぐ。
【0018】
ステント構成要素は好ましくは、第1の端と、第2の端と、第1の端と第2の端との間に配置された少なくとも1つの中間部とを含む。弁構成要素はそれによって好ましくは、ステント構成要素の中間部内に配置される。任意に、ステント構成要素は、中間部が任意に一定の直径を有する円錐形および/または円筒形の管空間を含み、当該直径は最も好ましくは15mm〜35mmの範囲内にあるように構成される。中間部の長さはそれによって好ましくは、10mm〜50mmの範囲内にある。
【0019】
機能状態では、第1および第2の端は流入および流出開口部を規定し、使用時にこれを通ってまたはこの周りに血液が流れ得る。本発明に係る弁置換装置の単純な実施例は、第1および第2の端を有する中間部のみを含み得る。しかし、さらに好ましくは、本発明に係る弁置換装置は、中間部と第1および/または第2の端との間に配置された少なくとも付加的な流入および/または付加的な流出部を含む。
【0020】
ここで理解される「流入部」とは、血液が管空間に入るステント構成要素の部分、および/または使用時に弁尖の上流にあるステント構成要素の部分である。たとえば、半月弁および/または大動脈弁の場合は、心室に向けて方向付けられたステント構成要素の部分である。
【0021】
したがって、ここで理解される「流出部」とは、血液が管空間を出るステント構成要素の部分、および/または使用時に弁尖の下流にあるステント構成要素の部分である。たとえば、半月弁については動脈内に配置された部分である。
【0022】
流入および流出部はそれによって、同一の長さまたは異なる長さを有し得る。さらに、流入および/または流出部は概して管状の管の内部管空間を規定し得る。管空間は概して円筒形であり得る。より好ましくは、流入および/または流出部は概して円錐形の管、すなわち直径が増加または減少する管を含む。代替的に、流入および流出部は任意の適切な幾何学的形状の内部管空間を含み得る。
【0023】
任意に、流入および流出部は同一の最大直径または変化する最大直径を有し得る。ここで理解される「最大直径」とは、そのような部分内の最大直径である。任意に、流入部の最大直径は流出部の最大直径よりも小さい。さらに、中間部の直径は、流入および流出部のいずれか一方の最大直径よりも小さい。最も好ましくは、流入および流出部は、第1および第2の端の方向において増大する直径を有する。代替的に、流入および/または流出部と中間部との間にさらなる部分が配置され得る。
【0024】
好ましい実施例では、流入部の最大直径は20mm〜35mmの範囲内にあり、流出部の最大直径は20mm〜55mmの範囲内にある。
【0025】
ステント構成要素は下側アンカー固定冠部をさらに含み得る。下側アンカー固定冠部は、少なくとも部分的に円錐形の本体を規定し得る。下側アンカー固定冠部は、好ましくはステント構成要素の第2の端と中間部との間に配置され、好ましくは弁輪の内部に配置さ
れるように、および/または弁輪の心室側に延在するように構成される。
【0026】
付加的に、ステント構成要素は、下側アンカー固定冠部と連通しているか下側アンカー固定冠部に隣接した上側アンカー固定冠部をさらに含み得る。上側アンカー固定冠部は、少なくとも部分的に円錐形の本体を規定し得る。下側アンカー固定冠部の円錐体は、第2の端の方向において外向きに傾斜し得、上側アンカー固定冠部の円錐体は、たとえば弁輪の大動脈側に配置されるように、中間部の方向において外向きに傾斜し得る。
【0027】
好ましくは、ステント構成要素は、交連ポストに連通しており、かつ第1の端に向かって延在する安定化アーチをさらに含む。安定化アーチは好ましくは、上行大動脈に係合してステント構成要素を大動脈または大動脈弁輪の内部で長手方向に方向付けることによって、埋込時に上行大動脈に対するステント構成要素のいかなる傾きも修正するように構成される。交連ポストはそれによって、安定化アーチを介して互いに接続され、2つの隣接する交連ポストが1本の安定化アーチによって互いに接続される。さらに、交連ポストは好ましくは、上側アンカー固定冠部および/または下側アンカー固定冠部にも連通している。
【0028】
さらに、ステント構成要素は好ましくは、送達装置(たとえば送達装置のステントホルダ)と噛合係合する少なくとも1つの取付要素を含む。少なくとも1つの取付要素は、ステント構成要素が完全に解放されるまでステント構成要素の軸方向の変位を抑制するように構成され得る。いくつかの実施例では、少なくとも1つの取付要素は、弁置換装置の心室部および/または流入部が装置の配置時に最後に拡張する部分となるように、下側冠部に設けられる。ステント構成要素は、たとえば2つ、3つまたはそれ以上などの任意の適切な数の取付要素を含み得る。取付要素は、円周方向に実質的に均一に間隔を空けられ得る。
【0029】
任意に、少なくとも1つの取付要素は、2つのステント支柱を互いに接合するU字形状部分を含み得る。ここで「U字形状」という用語は、側が真っすぐまたは湾曲しているか、外方向、平行、または非平行に隆起しているか否かに関わらず、概して弓形の頂部を含む任意の形状を含むように用いられる。送達カテーテルの収容領域内に受けられたときのステントの折畳(たとえば圧縮)状態では、支柱は、U字形状部分の孤が、たとえば、支柱同士の間隔よりも大きいアパーチャを有する閉じたまたはほぼ閉じた(たとえば蹄鉄形の)アイレットを規定するように180度よりも大きい第1の角度で周りを延在するように、取付要素において互いに隣接して存在し得る。アイレットアパーチャの蹄鉄形状および支柱同士の間の隣接空間はともに、鍵穴型形状を規定し得る。送達カテーテルの収容領域から解放されたときのステントの拡張(または非折畳)状態では、支柱は互いに離れ得、U字形状部分の孤は、アイレットを少なくとも部分的にさらに開くように、第1の角度よりも小さい第2の角度で周りを延在し得る。たとえば、第2の角度は、約180度以下であり得る。拡張状態では、取付要素は、弓形の頂部を有する、実質的に真っすぐな側が設けられたU字形状を規定し得る。
【0030】
送達カテーテルは、ステント収容領域内に設けられるステントホルダを含み得る。ステントホルダは、
(i)各アイレット内に受け入れ可能な突出部を含み得、突出部は、ステント構成要素が折畳状態にあるときに、突出部がアイレット内に捕捉され、隣接する支柱同士の間を通過することができないように寸法決めされ得、および/または、
(ii)少なくともステント構成要素が折畳状態にあるときに、取付要素を実質的に内部に収容するための1つ以上の凹部または隙間
を含み得る。
【0031】
上記の形態は、コンパクトであるが、ステント弁と送達システムとの間の信頼性のある自己開放および/または自己解放取付を提供し得る。取付要素を提供することによって、ステント構成要素を望ましい小さなサイズに圧縮することが妨害されることもない。
【0032】
いくつかの実施例では、中間部は、第1の端から第2の端に及ぶ軸に対して概して平行に並んだ少なくとも2つの交連ポストを含む。弁尖のタブは交連ポストに、好ましくは交連ポストに設けられる取付手段に直接的に取り付けられる。
【0033】
弁尖を交連ポストに直接的に取付けることによって、弁尖の高い歪み抵抗が与えられる。任意に、当該技術において公知の弁置換ステントと比較して、弁尖を交連ポストに直接的に取付けることによって、弁尖と歪み抵抗に耐え得る交連ポストとの間の組織の余分な層を無くすことができれば、折曲げたステント要素の厚みを任意に減少させることができる。
【0034】
本発明の別の局面によると、少なくとも2つの弁尖を有する弁構成要素および/または生体弁を含む、心臓弁置換のための装置が提供される。少なくとも2つの弁尖は好ましくは心膜組織からなり、最も好ましくはブタの心膜組織からなる。少なくとも2つの弁尖の各々は、少なくとも2つのタブを有する。装置は、圧縮状態へと半径方向に圧縮可能であるとともに、機能状態へと拡張可能であるように構成されたステント構成要素をさらに含む。ステント構成要素は、第1の端と、第2の端と、第1の端と第2の端との間に配置された少なくとも1つの中間部とを含む。中間部は、第1の端から第2の端に及ぶ軸に対して概して平行に並んだ少なくとも2つの交連ポストを有する。交連ポストは叉骨形状に形成され、タブは交連ポストに、好ましくは交連ポストに設けられる取付手段に直接的に取付けられる。
【0035】
叉骨は概して、逆さの「Y」字のように成形される。したがって交連ポストは、2本の傾斜脚部(アームとも称される)と、1本のステムとを含む。傾斜脚部は真っすぐであり得るが、好ましくは2本の傾斜脚部は(たとえばステント構成要素の軸の周りに、および/または円周平面内に)湾曲している。形状は好ましくは、直線であるか曲線であるかに関わらず、叉骨の脚部が弁尖の外縁と実質的に揃っているおよび/または合致するように選択される。これによって、交連ポストが弁尖の外縁に良好な支持を与えることができる。弁尖の外縁は脚部に、および/または弁尖と交連ポストとの間の内側スカート材料に取付けられ得る。脚部はそれによって、弁尖の外縁の輪郭と概して一致するように成形される。これによって、たとえば縫合によって、弁尖の外縁を叉骨形状の交連ポストの脚部に直接的または間接的に取付けて、弁尖を密接に支持することができる。
【0036】
ステント弁置換装置の本実施例の他の要素の構成は、上記の第1の実施例に記載されたものと同様である。
【0037】
交連ポストは好ましくは、弁尖のタブのための取付手段を含み、取付手段は、少なくとも1つのタブを挿入するように適合された少なくとも1つの開口部を含む。
【0038】
開口部は好ましくは貫通孔として構成され、すなわち開口部は、交連ポストによってすべての側の境界が付けられており、および/または交連ポストがすべての側に配置されている。代替的に、開口部はチャネルスリットとして構成され得、すなわち交連ポストによって3つの側のみの境界が付けられ得、および/または3つの側のみに交連ポストが配置され得、1つの側が開放されている。開口部は、矩形、円形、楕円形などのいずれかの好適な形態であり得る。最も好ましくは、開口部は長孔の形態である。開口部は、弁尖の少なくとも1つのタブを開口部から挿入可能であるようにさらに適合される。したがって、交連ポストの開口部の位置およびサイズは、弁尖の少なくとも1つのタブを挿入可能であ
るように選択される。好ましくは開口部は、たとえば2つの隣接する弁尖の2つのタブを挿入可能であるように適合される。代替的に、交連ポストは2つ以上のそのような開口部を含み得る。このように、各外縁に2つのタブなどのより多いタブを有する弁尖の取付が交連ポストに取付けられ得る。さらなる代替例では、交連ポストは、隣接する弁尖のタブの各々を別個の開口部に挿入可能であるように、互いに平行に配置された2つの開口部を含み得る。タブは好ましくは開口部に挿入され、交連ポスト上で弁尖に向けて折返され、弁尖に縫合される。
【0039】
取付手段は、縫合針金を挿入するように適合された少なくとも2つのボアをさらに含み、ボアは好ましくは円形ボアの形態である。そのような付加的なボアを設けることによって、弁尖のタブおよび/または外縁を交連ポストに取付けることが容易になる。これらの付加的な少なくとも2つのボアは好ましくは、上記少なくとも1つの開口部の横に配置される。
【0040】
ステント構成要素は好ましくは、中間部と第2の端との間に配置された実質的に平行および/または非平行な管状部分を含み、管状部分は少なくとも一列のセルの格子構造を有し、各交連ポストの叉骨形状が少なくとも3つの隣接セルの配列に及ぶため、叉骨は配列の少なくとも1つの中間セルに取付けられることなく、配列の外側セルから延在する。このような構成によって圧縮が容易になり、かつ叉骨脚部が十分な分岐を有して弁尖の外縁の形状と一致することが可能になる。
【0041】
いくつかの実施例では、叉骨の脚部が格子構造内の配列の外側セルに接合されることによって、交連ポストが少なくとも1つの中間セルに取付けられることなく、少なくとも3つの隣接セル上に及ぶことが可能になる。代替的に、各交連ポストは、4つ、5つなどの3つよりも多い隣接セル上に及ぶように構成され得る。さらに代替的に、各交連ポストは、異なる数の隣接セルに及ぶように構成され得る。好ましくは、叉骨形状の交連ポストのステムは、安定化アーチによって互いに連通している。2つの隣接する叉骨形状の交連ポストのステムはそれによって、1本の安定化アーチによって互いに連通している。
【0042】
弁置換装置は、好ましくは心膜組織からなり、かつ弁尖に取付けられる内側スカートをさらに含み得る。内側スカートは、ステント構成要素の管空間内で血液を導き、ステント構成要素の隙間を通る(たとえば格子構造のセルを通る)血液の漏れを妨げるように作用し得る。
【0043】
いくつかの実施例では、内側スカートは、扇形の間隙(たとえば扇形の切抜部)によって間隔を空けられた交連部分を有し得る。各間隙には、それぞれの弁尖が及ぶ。弁尖の外縁および/または下縁は、たとえば縫合部によって内側スカートに取付けられ得る。
【0044】
いくつかの実施例では、内側スカートは第2の端に向かって延在し得、スカートは好ましくはステント装置に縫合される。スカートは好ましくは、ステント構成要素の内面を少なくとも部分的に覆う。これによって、ステント構成要素の材料によって引起され得る血液乱流の発生が減少する。スカートは好ましくは、少なくとも2つの弁尖にさらに縫合される。
【0045】
付加的に、ステント構成要素の少なくとも1つの部分は、外側スカートによって外側が少なくとも部分的に覆われている。
【0046】
ステント構成要素は好ましくは、圧縮状態の弁置換装置をカテーテルなどの送達装置のシースに挿入すると、送達装置およびシースの総直径が20フレンチ未満、好ましくは18フレンチ未満であるように構成される。これによって、弁置換装置を動脈に沿って、好
ましくは大腿動脈または鎖骨下動脈に沿って挿入することが可能になる。これによってさらに、小さな皮膚切開および/または心臓壁の切込を用いて弁置換装置を経心尖挿入することが可能になる。
【0047】
本発明のさらに別の局面によると、各々が少なくとも2つのタブを有する少なくとも2つの弁尖を有する弁構成要素および/または生体弁を含む心臓弁置換のための装置が提供される。少なくとも2つの弁尖は、環状スカートの内部において当該スカートに取付けられ得る。ここで「環状」という用語は、円周方向に延びる構造を示すように意図されるが、厳密に円形またはリング状の構造に限定されない。スカート材料の一部は、タブ開口部を通らずに、少なくとも部分的に交連ポストの周りに巻付く。
【0048】
本発明のさらに別の局面によると、少なくとも部分的に円錐形の本体を規定する少なくとも1つの部分を有するステント構成要素を含む心臓弁置換のための装置が提供される。装置は複数の弁尖をさらに有する。少なくとも部分的に円錐形の本体と部分的に重畳するステント構成要素の内部に内側スカートが配置され、内部に管を規定する。少なくとも部分的に円錐形の本体の一部のみと部分的に重畳するステント構成要素の外部に外側スカートが配置される。
【0049】
内側スカートおよび/または外側スカートは好ましくは心膜組織、最も好ましくはブタの心膜組織からなる。
【0050】
本発明の別の局面は、送達のための圧縮状態へと半径方向に圧縮可能であるとともに、機能状態へと半径方向に拡張可能であるステント構成要素を含む弁置換装置を提供する。ステント構成要素は、送達装置のステントホルダと協働する少なくとも1つの(好ましくは複数の)取付要素を含み得る。各取付要素(または複数の取付要素の少なくとも1つ)は、2つのステント支柱を互いに接合するU字形状部分を含み得る。ここで「U字形状」という用語は、側が真っすぐまたは湾曲しているか、外方向、平行、または非平行に隆起しているか否かに関わらず、概して弓形の頂部を含む任意の形状を含むように用いられる。送達カテーテルの収容領域内に受けられたときのステントの圧縮状態では、支柱は、U字形状部分の孤が、たとえば、支柱同士の間隔よりも大きいアパーチャを有する閉じたまたはほぼ閉じた(たとえば蹄鉄形の)アイレットを規定するように180度よりも大きい第1の角度で周りを延在するように、取付要素において互いに隣接して存在し得る。アイレットアパーチャの蹄鉄形状および支柱同士の間の隣接空間はともに、任意に鍵穴型形状を規定し得る。送達カテーテルの収容領域から解放されたときのステントの拡張(または非折畳)状態では、支柱は互いに離れ得、U字形状部分の孤は、アイレットを少なくとも部分的にさらに開くように、第1の角度よりも小さい第2の角度で周りを延在し得る。たとえば、第2の角度は、約180度以下であり得る。拡張状態では、取付要素は、たとえば弓形の頂部を有する真っすぐな側が設けられたU字形状などの、実質的に非蹄鉄形のU字形状を規定し得る。
【0051】
上述のような弁置換装置とともに用いられる送達装置は、収容領域内に設けられるステントホルダを含み得る。ステントホルダは、
(i)各アイレット内に受け入れ可能な突出部を含み得、突出部は、ステントが折畳状態にあるときに、突出部がアイレット内に捕捉され、隣接する支柱同士の間を通過することができないように寸法決めされ得、および/または、
(ii)少なくともステントが折畳状態にあるときに、取付要素を実質的に内部に収容するための1つ以上の凹部または隙間
を含み得る。
【0052】
上記の形態は、コンパクトであるが、弁置換装置と送達装置との間の信頼性のある自己
開放および/または自己解放取付を提供し得る。
【0053】
本発明の別の局面は、少なくとも2つの弁尖を支持するステント構成要素を含む弁置換装置を提供する。弁尖は心膜組織からなり得、最も好ましくはブタの心膜組織またはウシの心膜からなり得る。上述のように、ブタの心膜は望ましい組織の薄さを提供し得る。ウシの心膜組織は若干さらに厚いが、より耐久性があり得る。
【0054】
各弁尖は、少なくとも2つのタブを含み得る。タブは、弁尖をステント構成要素に対して支持するように作用し得る。
【0055】
いくつかの実施例では、タブは、ステント構成要素の交連支持部(たとえばポスト)に直接的に取り付けられ得る。タブは、交連支持部に設けられる取付手段に取り付けられ得る。たとえば、タブは、ステント構成要素の内部から外部まで、交連ポストの開口部(たとえばスロットまたはスリット)を通過し得る。ステント構成要素の外部のタブの部分は、交連支持部に接するように折返され得、および/または交連支持部に縫合され得る。任意に、交連支持部で合流する2つの隣接する弁尖のそれぞれのタブは、同一の開口部を通過する。各タブは、他方のタブと部分的に重畳することなく、交連支持部の外側に接するように折返され得る。2つのタブは任意に、互いに直接的に取付けられない。
【0056】
付加的または代替的に、弁尖は内側スカートに取付けられ得る。弁尖は内側スカートの内側部分に取付けられ得、タブは内側スカートの開口部(たとえばスロットまたはスリット)を通過して内側スカートの外側に至る。内側スカートは扇形の間隙を有し得、このような間隙の各々にはそれぞれの尖が及ぶ。内側スカートは、開口部(たとえばスロットまたはスリット)が設けられる交連部分または立上がりを有し得る。
【0057】
付加的または代替的に、内側スカートを規定する材料は、交連支持部の部分を覆うための、および/または交連支持部にしっかりと固定される弁尖のタブを覆うための、交連支持部の少なくとも一部の周りに巻付く、一体化された延在部分(たとえばフラップ)を含み得る。この延在部分は、交連支持部に縫合され得る。
【0058】
いくつかの実施例では、上記構成のいずれか2つまたは3つすべての組合せが用いられ得る。たとえば、隣接した弁尖のタブの対は、内側スカートの開口部を通過し得るとともに交連支持部の開口部を通過し得る。これら2つの開口部は概して揃っていてもよい。タブは、反対方向に折返され得、交連支持部の外側に縫合され得る(任意にタブが互いに直接的に縫合されることなく)。交連支持部での内側スカートの1つ以上のフラップまたは延在部分を、タブおよび/または交連支持部を覆うように交連支持部の外側の周りに巻付けてもよい。延在部分は、交連支持部に縫合されてもよい。任意に、縫合部は、交連支持部において、タブを取り付けるために用いられるのと同一の縫合穴を通過し得る。延在部分は、タブの縁が覆われて保護されるように、タブを越えて軸方向に延在し得る。
【0059】
本発明の別の局面は、送達のための圧縮状態へと半径方向に圧縮可能であるとともに、機能状態へと半径方向に拡張可能であるステント構成要素と、ステント構成要素の内部に装着された複数の弁尖と、弁尖に取付けられ、かつステント構成要素の内部に少なくとも部分的に延在する内側スカートと、ステント構成要素の外部に少なくとも部分的に延在する外側スカートとを含む弁置換装置を提供する。
【0060】
いくつかの実施例では、外側スカートは、ステント構成要素の流入末端に向かって内側スカートが延在するよりも延在し得る。付加的または代替的に、内側および外側スカートは、少なくとも一方のスカートの表面に対して部分的に重畳し得る。付加的または代替的に、内側および外側スカートは、隣接する末端を有しなくてもよい。付加的または代替的
に、内側スカートは、ステント構成要素の流出末端に向かって外側スカートが延在するよりも延在し得る。
【0061】
少なくとも一方のスカートが延在するステント構成要素の少なくとも一部は任意に、少なくとも一列の複数のセルを含む格子構造を有し得る。
【0062】
内側スカートの機能は、血液を弁尖に向かわせるようにステント内の管を規定して、ステント構成要素の隙間(たとえば格子隙間)を通る血液の漏れを妨げる機能であり得る。外側スカートの機能は、周囲組織を封止するための封止面をステント構成要素の外側に提供して、周囲組織との界面での漏れを妨げる機能であり得る。両方のスカートを設けることによって、全体的な漏れを妨げる点において有益となり得る。しかし、両方のスカートの存在は、ステントが担持する材料の厚みに大きく加わり得、これによりステント弁を望ましい小さいサイズに圧縮する困難さが増加する。軸方向において部分的にのみ重畳した両方のスカートを設けることによって、両方のスカートの利点を得ることができるだけでなく、1つのスカートのみが延在する領域において厚みプロファイルが低減される。(たとえば、特にステント弁が送達のための圧縮および埋込での再拡張により実質的に変形されることになることを念頭に置くと)スカートを重畳させることで、スカートがステント構成要素のそれぞれ内側および外側で縁同士が面して配置されるよりも、スカート同士の間の良好な封止が提供され得る。
【0063】
軸方向におけるスカートの重畳の程度はたとえば、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mm、少なくとも5mm、少なくとも6mm、少なくとも7mm、または少なくとも8mmであり得る。付加的または代替的に、軸方向におけるスカートの重畳の程度はたとえば、10mm未満、9mm未満、8mm未満、7mm未満、6mm未満、5mm未満、または4mm未満であり得る。たとえば、軸方向におけるスカートの重畳の程度は約4mm〜6mmであり得る。
【0064】
少なくとも一方のスカート(任意に各スカート)は、重畳領域から少なくとも1mm離れた重畳しない軸方向距離だけ延在し得る。当該または各スカートについてのこの重畳しない距離はたとえば、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mm、少なくとも5mm、少なくとも6mm、少なくとも7mm、少なくとも8mm、少なくとも9mm、または少なくとも10mmであり得る。
【0065】
いくつかの実施例では、ステント構成要素の流入縁または流入口は、少なくとも一列のセルの格子構造によって規定されるジグザグ形状を有し得る。ジグザグ形状は、(たとえば流入末端にあるか流入末端を規定する)自由頂部と、(たとえば流入端から離れて流出端に向かって延在する格子構造に接続される)接続頂部との交互の配列を規定し得る。いくつかの実施例では、内側スカートは、接続頂部のみに延在し得る。外側スカートは、内側スカートと部分的に重畳し得、自由頂部の少なくともいくつかに対応するレベルまで、内側スカートよりもさらに延在し得る。
【0066】
いくつかの実施例では、内側スカートは、ステント構成要素の流入末端に向かって延在し得る。外側スカートは、部分的にのみ内側スカートと部分的にのみ重畳しつつ、内側スカートの最上縁から距離を置いたままであり得る。外側スカートは、ステント構成要素の流入末端に向かって(または任意に流入末端まで)延在し得る。外側スカートは任意に、(たとえばステント構成要素を介して直接的または間接的に)弁尖の如何なる部分とも部分的に重畳しなくてもよい。
【0067】
内側スカートおよび/または外側スカートは、心膜組織(たとえば、厚みのため、ブタの心膜)、PET、ダクロンなどの任意の好適な材料からなり得る。内側および外側スカ
ートは任意に、互いに同一材料からなり得る。
【0068】
本発明の別の目的は、心臓弁置換のための装置を送達するための送達システムを提供することである。送達システムは、接続手段(たとえばステントホルダ)を有する近位端(または部分)および遠位端(または部分)を有する、可撓性を有する管状カテーテルを含む。送達装置は、上述のような心臓弁置換のための装置をさらに含む。送達装置は、心室の内部にまたは心室に向かって配置されるように適合された装置の部分がカテーテルの遠位端に向けて方向付けられ、かつ大動脈内に配置されるように適合された装置の部分が近位端に向けて方向付けられるように、接続手段に接続される。送達装置に関して、「遠位」という用語は送達装置の操作者から離れて方向付けられることを指し、「近位」という用語は操作者に向けて方向付けられることを指す。
【0069】
管状カテーテルの近位端は好ましくは、操作者のためのハンドル部材を含む。管状カテーテルの遠位端は、本発明に係る弁置換装置を解放可能に接続するための接続手段(たとえばステントホルダ)を含む。接続手段は、任意の好適な種類であり得る。好ましくは、接続手段は、ピン、または弁置換装置の対応取付要素(たとえばフックおよび/もしくはアイレット)と噛合する他の突出部として構成される。置換装置のステント構成要素が拡張すると、取付要素がピンから解放されることによって装置が管状カテーテルから外れる。
【0070】
管状カテーテル上の弁置換装置の向きによって、装置を患者の動脈に沿って、好ましくは大腿動脈または鎖骨下動脈に沿って挿入することが可能になる。動脈挿入の処置は外科手術よりも外傷が小さいため、ある患者にとっては有益である。所望であれば、管状カテーテルを経心尖挿入用に構成してもよい。
【0071】
本発明のさらに別の局面によると、心臓弁の置換方法が提供される。上記の送達装置を圧縮状態で、置換すべき心臓弁の部位に挿入する。そして、送った要素を拡張させる。送達装置を任意に、動脈に沿って、好ましくは大腿動脈または鎖骨下動脈に沿って、可撓性を有する管状カテーテルによって挿入する。代替的に、送達装置を心臓の心室に経心尖挿入する。
【0072】
本発明の別の目的は、迅速かつ容易に実施できる、半径方向に圧縮された際に小型化された弁置換装置の製造方法を提供することである。この目的は、添付の請求項において定義される製造方法によって達成される。
【0073】
いくつかの実施例では、本発明に係る弁置換装置の製造方法の第1のステップにおいて、好ましくは心膜組織からなる管状スカートを提供する。「管状」という用語は、概して円筒または円錐台の形状に成形されたスカートも含むと理解される必要がある。この用語は、軸に沿って半径方向に変化する楕円形断面部を有するスカートなども含む。管状スカートは好ましくは、ブタの心膜組織からなる。
【0074】
次のステップにおいて、これも好ましくは心膜組織からなる少なくとも2つの弁尖を、筒状スカートの周りに互いに隣接して配置する。そのため弁尖のサイズは、弁尖を互いに隣接して配置すると、弁尖が管状スカートの全周囲の周りに及ぶように選択される。弁尖の外縁はしたがって、少なくとも自身の上側自由縁の領域で接触している。
【0075】
弁尖は心膜組織から切出され得る。弁尖は、任意に湾曲した自由縁を含む。湾曲は凸状湾曲であり得る。そのため弁尖のサイズおよび自由縁の湾曲は、ステント構成要素が機能状態にあるときに自由縁が互いに封止接触する(たとえば接合する)ことを可能にするように選択される。弁尖は、弁尖の下縁に向かってテーパ状である2つの外縁をさらに含む
。下縁は自由縁よりも短い。好ましくは、下縁も湾曲しており、より好ましくは凸状湾曲である。「凸状」という用語は、弁尖の表面に対する弁尖の縁の湾曲を定義すると理解すべきである。したがって、凸状に湾曲した縁は弁尖から隆起する。
【0076】
切出に先立って、後の段階での弁尖の収縮を回避するように心膜組織を処理することが好ましい。
【0077】
次に、弁尖の外縁および底縁を、好ましくは縫合によって管状スカートの表面に取付ける。代替的に、接着などの他の手段で弁尖を取付けてもよい。自由縁は、組立てた弁置換装置の置換弁を形成するため、スカートに取付けられていない状態のままである必要がある。
【0078】
次のステップにおいて、弁尖が管状スカートの概して管状の管の内側に来るように、管状スカートを裏返す。そして、裏返したスカートを最終的にステント構成要素に取付ける。
【0079】
本発明の方法に従って製造される弁置換装置の弁構成要素は「裏表に」作られているため、弁尖をスカートに取付けることがずっと容易になり、より少ないステップで済む。
【0080】
折曲げた弁置換装置をさらに小型化するために、好ましくは、弁尖と部分的に重畳している少なくともいくらかのスカート組織を除去する。これは、弁尖をスカートに取付けている縫合部に沿ってスカートを切ることによって行うことができる。組織の除去は好ましくは、ハサミまたは外科用メスを用いて行う。これによって、縫合部の領域を除いて、一層の組織しか存在しないため、弁置換装置の直径をさらに減少させることが可能になる。このようなスカート組織の除去によって、スカート組織に扇形の間隙が形成され、この間隙には弁尖が及ぶ。スカート組織は、隣接する弁尖が合流する交連部分を含み得る。交連部分は、ステント構成要素の交連ポストの外側の周りに巻付く保護巻付材料を提供するための、円周方向および/または軸方向の延在部分(たとえばフラップ)を含み得る。
【0081】
少なくとも2つの弁尖は好ましくは、少なくとも2つのタブをさらに含み、好ましくは1つのタブはそれによって、各弁尖の各外縁に、最も好ましくは自由縁の領域内に配置される。代替的に、少なくとも2つの弁尖は、たとえば各弁尖の各外縁における2つのタブなどの、より多くのタブを含み得る。管状スカートを裏返した後、スカートに少なくとも2つのスリットを切込み、少なくとも1つのタブを各スリットから挿入する。代替的に、隣接する弁尖の2つのタブを同一のスリットから挿入する。これによって、タブをスカートの内側から外側に通過させることが可能になる。
【0082】
次に、タブを好ましくはステント構成要素に直接的に、好ましくは叉骨形状の交連ポストのステムに設けられる取付手段に、最も好ましくは交連ポストに設けられる開口部からタブを引張り、次にタブを交連ポストに縫合することによって、取付ける。その後、タブの余計な材料を除去してもよい。
【0083】
スカート材料の交連部分の延在部分を、タブと同一の開口部を通過させずに、交連ポストの周りに巻付けてもよい。
【0084】
好ましくは、管状スカートは、適切なサイズを有する概して矩形の心膜片を、弁置換装置の弁構成要素の意図されたサイズおよび形態に対応するサイズおよび形態を有するマンドレルの周りに巻付けることによって作られる。そして、概して管状のスカートが得られるように心膜片を互いに縫合する。次に、好ましくは心膜を組織の収縮を引起すように処理することによって、管状スカートがマンドレルの外郭の形態を採ることになる。したが
ってマンドレルは、管状スカートに特定の形を付加的に与え得る。特に好ましい実施例では、マンドレルはスカート上の円周方向の隆起を与える。少なくとも2つの弁尖を管状スカートに取付ける際、管状スカートはマンドレル上に存在し続け得る。
【0085】
さらに、スカート材料のフラップを、タブを交連ポスト上に保持している縫合部を覆うように、タブおよび開口部上に巻付けてもよい。これによって、装置を直径18フレンチ未満に折曲げる際に、弁置換装置を損傷からさらに保護する。
【0086】
本発明のある局面を上記および/または添付の請求項において定義したが、本明細書に記載および/または図面に図示したいずれの新規の特徴または発想についても、それが強調されているか否かに関わらず、保護を請求する。
【0087】
本発明のさらなる利点および特徴は、以下の例の説明および図面に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】本発明に係る弁置換装置の例示的な実施例を示す図である。
図2】本発明に係る弁構成要素の弁尖を示す図である。
図3】叉骨形状を有する交連ポストの詳細図である。
図4a】弁尖のタブのための取付手段のある構成を示す図である。
図4b】弁尖のタブのための取付手段のある構成を示す図である。
図4c】弁尖のタブのための取付手段のある構成を示す図である。
図4d】弁尖のタブのための取付手段のある構成を示す図である。
図5a】本発明に係る弁置換装置の製造方法を示す図である。
図5b】本発明に係る弁置換装置の製造方法を示す図である。
図5c】本発明に係る弁置換装置の製造方法を示す図である。
図5d】本発明に係る弁置換装置の製造方法を示す図である。
図5e】本発明に係る弁置換装置の製造方法を示す図である。
図6図3と同様の図でステント構成要素の代替実施例を示す図である。
図7】弁置換装置のための送達装置の概略図である。
図8】ステント構成要素が圧縮状態にあるときの、ステントホルダと取付要素との関係を示す概略拡大図である。
図9】ステント構成要素が機能状態へと拡張したときの取付要素を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
図1は、本発明に係る弁置換装置15の好ましい実施例を示す。弁置換装置15は経大腿アプローチで挿入されるように適合されるが、別の経血管アプローチまたは経心尖アプローチによっても一般に挿入可能である。置換装置15は、第1の端26と、第2の端27と、中間部17とを有し、ステント構成要素20および弁構成要素5を含む。本実施例では、第1の端26は動脈内に位置決めされるように意図され、第2の端27は患者の心臓の心室内にまたは心室に向かって位置決めされるように意図される。弁置換装置15が所定の位置に配置されると、血液が第2の端27から中間部17を通って第1の端26に流れる。したがって、第2の端27と中間部17との間の部分は「流入部」とも称される。それに応じて、中間部17と第2の端26との間の部分は「流出部」と称される。
【0090】
ステント構成要素20は、安定化アーチ21と、交連ポスト22と、上側アンカー固定冠部23と、下側アンカー固定冠部24と、取付要素25とを含む。ステント構成要素の構成はしたがって、同時係属中の出願であるEP 2 205 183に記載の構成と同様である。安定化アーチ21は、展開時に、ステント15を血管内に、好ましくは大動脈内に安定させるように作用する。アーチ21は、交連ポスト22の上側、すなわち遠位端
に、自身の近位端で直接的に取付けられる。近位端から開始して、アーチ21は自身の長さの一部にわたって半径方向外側に分岐し、自身の遠位端に向かって半径方向内側に集まる。以下、「遠位」および「近位」という用語は、心臓からより離れてまたはより近接して存在する弁置換装置15またはその構成要素の部分をそれぞれ指すために用いられる。遠位端は大動脈端とも称され、近位端は心室端とも称される。
【0091】
置換心臓弁の3つの弁尖31が交連ポスト22に取付けられる。弁尖31はブタの心膜組織から形成される。上側アンカー固定冠部23はステント15を心臓弁の大動脈側に取付けるように作用し、下側アンカー固定冠部24はステント15を生来の弁輪内にまたは心臓弁の心室側に向かって取付けるように作用する。取付手段25は、ステント15を送達装置に取外し可能に取付けることを可能にする。
【0092】
交連ポスト22は、安定化アーチ21の軸方向の長さL1に実質的に対応する軸方向の長さL2を有する。典型的に、長さL1は長さL2の約90%〜110%である。交連ポスト22は叉骨形状を有し、各々が、弁尖31のタブ30を直接的に固定するための上部22aと、2本の脚部またはアーム32,33を有する下部22bとを含む。タブ30は、周りに巻付けられて縫合されることによって上部22aに固定される。弁尖31の側面は、下部22bの2本のアーム32,33に直接的または間接的に縫合される。下側冠部24は、セル34,35,36の格子構造を有する実質的に管状の部分によって形成される。叉骨形状の各交連ポスト22の2本のアーム32,33は、少なくとも3つの隣接セル34,35,36の配列に及ぶ。叉骨は、配列の少なくとも1つの中間セル35に取付けられることなく、配列の外側セル34,36から延在する。
【0093】
ステントの下側、すなわち近位端は、セル34,35,36の高さの約半分に沿って軸方向に延在する外側スカート34によって覆われる。ステント15の内側には、叉骨形状の交連ポスト22の2本の隣接アーム32と33との間の空間を封止する、好ましくは心膜材料からなる内側スカート35がある。
【0094】
図2は、本発明に係る弁尖10の図である。自由縁10は、少なくとも1つのさらなる弁尖31の自由縁10を封止係合してきつく閉じられた弁を形成するように構成される。好ましくは、自由縁10は弓形であるが、真っすぐな縁を用いてもよい。弁尖31は、2つの外縁11および1つの下縁12をさらに含む。下縁12は弓形であるが、外縁11は直線である。外縁11および下縁12によって囲まれる表面は、弁尖31の「腹」と称されることが多い。自由縁10の領域内の両方の外縁11に2つのタブ30が配置される。タブ30は、弁置換装置のステント構成要素の交連ポストに設けられる取付手段に挿入可能であるようにサイズ決めされ、成形される(図3および図4も参照)。少なくとも2つの弁尖31がそのような装置内に位置決めされて弁構成要素を形成するが、好ましくは弁構成要素は3つの弁尖31を含む。
【0095】
図3は、叉骨形状の交連ポスト22を有するステント構成要素20の構成を示す詳細図である。ステント構成要素20は折畳状態で、すなわち折曲状態で示される。交連ポスト22の上部22aは、安定化アーチ21によって互いに接合される。さらに、これら上部22aは、ここでは開口部19および孔18によって表わされる、弁尖31のタブ30のための固定手段を含む。交連ポスト22の下部22bは、2本のアーム32,33を含む。交連ポスト22はそれによって、全体的な叉骨形状の構成を有する。この図に容易に見られるように、交連ポスト22の両アーム32,33は、下側冠部24の3つの連続セル34,35,36の配列に及ぶ。アーム32,33はそれによって、配列の中間セル35に取付けられることなく、配列の外側セル34,36に接続される。下側冠部24は、フックの形態の取付要素25をさらに含む。これらの取付要素25は、弁置換装置15を送達装置に取外し可能に取付けることを可能にする。
【0096】
図4は、交連ポスト22の上部22aの取付手段の異なる構成を示す。図4aに示す構成は、図3に示すような交連ポスト22の構成に対応する。上部22aの中心に長孔の形態の開口部19が配置される。開口部19は、少なくとも1つのタブ30の挿入を可能にするように成形され、サイズ決めされる。しかし、開口部19のサイズは好ましくは、2つのタブ30を挿入可能であるようなものである。さらに、開口部19の両側に4つの孔18が配置される。さらなる孔18が開口部19の上部に配置される。孔18は、タブ30を交連ポスト22に取付けるために用いられる縫合ワイヤを収容するように意図される。開口部19の代替の構成を図4bに示す。この実施例では、開口部19は、上部22aの中央の縦方向のスリットとして構成される。ここでも、開口部19の横には孔18が配置される。図4cは、孔18がないさらなる実施例を示す。開口部19は縦方向のスリットとして示されるが、代替的に長孔としても構成され得る。この実施例では、タブ30を開口部19から挿入し、弁尖31に向けて折返し、弁尖31に縫合する。さらなる代替の実施例を図4dに示す。この実施例では、取付手段は孔18のみを含む。これによってタブ30を弁尖31上に折返し、弁尖31に縫合する。さらなる縫合部をタブ30の折返部から開口部18内に縫付けることによって、タブ30を交連ポスト22に取付ける。
【0097】
図5は、本発明に係る弁置換装置15の製造方法を示す。図5aは、本方法の第1のステップを示す。適切なサイズを有する心膜組織2の全体的に矩形の一片を、適切な形状を有するマンドレル1の周りに巻付ける。マンドレルは好ましくは、ここでは弁置換装置の内側スカートに付与される隆起部4として例示的に示される、特定の形状要素を含む。次に、心膜組織を縫合部3で縫合わせ、任意に踏付けて組織のいくらかの収縮を付与する。図5bに示す次のステップにおいて、少なくとも2つであるが好ましくは3つのタブ31を心膜組織2の片の外面の周りに配置する。タブ31はそれによって、隣接する弁尖31のタブ30がマンドレル1の長手方向軸に沿って同じ高さであるように配置される。さらに、隣接する弁尖31は、タブ30の領域内で自身の外縁で互いに接触する。次に、弁尖31を下縁12および外縁11に沿って心膜組織2に縫付ける。タブ30は自由なままである。その後、心膜組織4をマンドレル1から取外して裏返す(図5c参照)。こうして、弁尖31は円筒形状の心膜組織4の内側に配置される。心膜組織の余分な材料6を、たとえば切ることによって除去する。弁尖31の外側に配置される心膜組織4の少なくとも一部も、心膜組織4を弁尖31に接続する縫合部7に沿って除去する。タブの領域において、タブ30を中に通すことができるように構成されサイズ決めされたスリット8を心膜組織4に設ける。スリット8の領域において、心膜組織4の2つのフラップ9を残す。次に、タブ30をスリット8に通す。こうして完成した弁構成要素5は、内側スカート28および弁尖31を含む。縫合部7の周りの領域を除いて、弁構成要素5は単一層の心膜組織で構成される。図5dに示す次のステップにおいて、弁構成要素5をステント構成要素20に挿入する。タブ30を交連ポスト22に配置される開口部19から挿入し、弁尖31に向かって折返し、さらに縫合によって交連ポスト22に取付ける。縫合の縫い目は孔18を通過する。続いて、タブ30の余計な材料を除去する。そして、フラップ9を交連ポスト22の上部22a上に折返してタブ30の縫合部を覆うことによって、交連ポスト22の上部22aの周りに一種のスリーブを形成する。図5eは、完成した弁置換装置15を示す。叉骨形状の各交連ポスト22のアーム32,33の領域において、弁構成要素5を縫合部13によってステント構成要素20にさらに取付ける。さらに、内側スカート28を縫合部14によって下側冠部24のセルに取付ける。図1の実施例に示すように、下側冠部24の外側を外側スカート29によってさらに覆ってもよい。
【0098】
いくつかの実施例では、フラップ9は、流入および/または流出方向においてタブ30よりも長い軸方向の長さを有し得る。フラップ9を交連ポストの周りに折返すと、フラップ9はタブ30の縁を越えて軸方向に延在することによって、タブ30を覆い保護し得る。図5eに見られるように、フラップ9は弁尖のレベルよりも高く軸方向に延在し得る。
【0099】
図6は、ステント構成要素の変形配置、ならびに内側スカート35および外側スカート34の変形配置を概略的に示す。ステント構成要素の流入端または流入口は、少なくとも一列の格子セルを含む格子構造のセルによって規定されるジグザグ形状を有する。ジグザグ形状は、交互になっている自由頂部50および接続頂部52によって規定される。自由頂部50は、流入末端を規定する。接続頂部52は、列内の隣接セルと連通している。
【0100】
内側スカート35の位置は線54および56で示され、交連ポストおよび/または弁尖から流入末端に向かって延在する。線54は概して弁尖の下縁のレベルを示すが、内側スカート35はステント構成要素の交連ポストへ軸方向上向きに延在する交連部分を有し得ることを認識すべきである。外側スカート34の位置は線58および60によって示され、流入末端に向かって内側スカート35よりもさらに延在する。
【0101】
図示される例では、線56によって示されるように、内側スカート35は、接続頂部52(の少なくともいくらか)に対応するレベルまで延在する。外側スカート34は、自由頂部50(の少なくともいくらか)に対応するレベルまで延在する。
【0102】
外側スカート34は、流入縁のジグザグ形状と実質的に一致するジグザグ形状の縁を有し得る。
【0103】
内側スカート35は、ステントの流出端(および/または末端)に向かう反対方向において、内側スカート34よりもさらに延在する。内側および外側スカートは、軸方向において互いに部分的に重畳し得る。軸方向における重畳の程度はたとえば、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mm、少なくとも5mm、少なくとも6mm、少なくとも7mm、または少なくとも8mmであり得る。付加的または代替的に、軸方向におけるスカートの重畳の程度はたとえば、10mm未満、9mm未満、8mm未満、7mm未満、6mm未満、5mm未満、または4mm未満であり得る。たとえば、軸方向におけるスカートの重畳の程度は約4mm〜6mmであり得る。
【0104】
図6に見られるように、セルの少なくともいくつかは、列内の隣接セルの自由頂部50を越えて延在し、かつ外側スカート34によって覆われていない、露出した自由頂部50aを有する。露出した自由頂部50aは、送達装置のステントホルダに係合する取付要素25を提供する。
【0105】
図6の円Aおよび図3の対応領域にも見られるように、交連ポストの開口部の各側に沿って、かつステムの軸方向の一端にのみ、縫合ボアが設けられ得る。このような構成によって、縫合ボアが軸方向の両端に設けられ得る構成と比較して、交連ポストのステムを小型化することが可能になる。
【0106】
図7は、心臓において弁置換装置を挿入するための送達装置62、たとえば送達カテーテルを概略的に示す。カテーテルは、ガイドワイヤ(破線で示す)の上を進み得る。カテーテルは、解剖学的組織に挿入するための、圧縮状態の弁置換装置を収容するための収容領域を有する、遠位部64を含む。ステント構成要素が機能状態へと拡張するまで弁置換装置が軸方向に動かないように弁置換装置を抑制するためのステントホルダ(後述)が収容領域に設けられ、ステント構成要素が機能状態へと拡張するとステント構成要素がステントホルダから取外される。遠位部64は、送達のためにステント構成要素を圧縮状態に拘束するためのシース構造をさらに有し得、シース構造はステント構成要素を露出させてステント構成要素が機能状態へと拡張できるように動作可能である。送達カテーテル62は、任意に可撓性を有し、かつ制御ハンドルを有する近位部68に向かって延在する、ステム部66をさらに含む。
【0107】
取付要素25の異なる例が想定される。一般に、各取付要素25は、ステント構成要素の端から延在する第1の支柱と第2の支柱を接合する頂部によって規定され得る。支柱は、ステント弁10の格子または骨格ステント構造を規定する部材であり得る。格子の場合、支柱に関連付けられるセルは、格子の隣接セルを越えて軸方向に突出し得る。
【0108】
図3では、支柱は概して直線状に延在し、圧縮状態の概して真っすぐな側が設けられたU字形状(図3に示す)を規定し、かつステント構成要素が機能状態へと拡張するとV字形状に拡張する頂部で合流し得る。図6では、頂部は、圧縮状態にあるときは概して円形または蹄鉄形のU字形状を有することによって(図6に示す)、かつステント構成要素が機能状態へと拡張すると、たとえば真っすぐな側が設けられたU字形状(図9)などの概して非蹄鉄形状へと拡張することによって、若干異なる。
【0109】
図8を参照して、ステントホルダ78は概して、図3および/または図6の取付要素25を収容するための複数の突出部84および/または隙間86を含み得る。各隙間86の縁90は任意に円形であり得るか、面取りされ得る。突出部84は、ステント構成要素が折畳状態にあるときに、各取付要素25の頂部の内部に嵌まるように構成され得る。突出部84と取付要素との係合により、少なくともステントホルダ24から離れる軸方向において、任意に両方の軸方向において、取付要素(およびしたがってステント弁10)が軸方向に動かないように抑制される。
【0110】
自己拡張型ステント構成要素の場合、取付要素25が延在し始めるステント構成要素の部分が送達カテーテルのシース構造によって覆いを取られると、取付要素25の係合が外れ得る。ステント構成要素が拡張すると、支柱が互いに離れて取付要素の頂部のU字形状またはV字形状を開く。頂部が開くにつれて取付要素25の内部が大きくなり、これにより突出部84と取付要素25との係合が外れるのが促進される。隙間86の面取り縁90はさらに、支柱が円周方向に拡張して縁90を押圧すると、間隙88から支柱を半径方向に「持上げる」ための傾斜表面として作用する。取付要素25が隙間86に誤って差し込まれ得た場合、取付要素25は、カテーテルの若干の回転および/または軸方向の変位により自由にされ得、これにより縁90に対してさらに載ることが促進される。
【0111】
図6図8および図9の特定の例では、突出部84は、取付要素の蹄鉄形状の内部に嵌まるのに好適な指部またはピンである。突出部は概して半径方向に突出し得るか、ある角度で、たとえば最大約10度(たとえば約5度)の角度でステント構成要素から離れるように傾斜し得る。ステント構成要素の折畳状態(図6および図8)では、支柱は、U字形状部分25の孤が、ピン84を収容するように支柱同士の間隔よりも大きいアパーチャを有する閉じたまたはほとんど閉じたアイレットを規定するように180度よりも大きい第1の角度で周りを延在するように、取付要素25において、互いに密接して隣接するように存在し得る。支柱同士の間のアイレットアパーチャおよび空間はともに、鍵穴型形状を規定し得る。代替的に、支柱は、アイレットを閉じるように、取付要素25において互いを押圧し得る。いずれの構成も、単に取付要素25と突出部84との係合によって、両方の軸方向において取付要素25を抑制し得る。これは、隙間86の縁90および/またはステントホルダの端面92において、より大きい面取り面が用いられることを可能にすることによって、有利となり得る。ひとたび埋め込みがなされると、弁置換装置によってステントホルダ78の撤収を促進するために、面取り端面92が望ましくあり得る。この構成によってさらに、取付要素を設けてもステント構成要素を望ましい小さいサイズに圧縮することが妨害されないように、取付要素の支柱を互いに密接して圧縮することができる。
【0112】
任意に、隙間86は軸方向の一端において閉じられて、突出部84を支柱同士の空間に
押込むことになる方向において取付要素25が軸方向に変位しないようにさらに保護する。
【0113】
図9を参照して、ステント構成要素の拡張した(または折畳まれていない)機能状態では、支柱は互いに離れて、U字形状頂部の弧は、アイレットを少なくとも部分的に開くように、第1の角度よりも小さい第2の角度で周りを延在し得る。第2の角度は、約180度以下であり得る。上記と同様の態様で、頂部が開くと突出部84から係合が外れるのが促進され得る。隙間86の面取り縁90はさらに、支柱70および72が円周方向に拡張して縁90を押圧すると、間隙88から支柱を半径方向に「持上げる」ための傾斜表面として作用する。
【0114】
上記の説明は本発明の非限定的な好ましい形態を単に例示するものであることが強調される。多くの変形例および均等物が本発明の範囲内で用いられ得る。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図6
図7
図8
図9