(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6679560
(24)【登録日】2020年3月23日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】焼成用セッター
(51)【国際特許分類】
F27D 3/12 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
F27D3/12 S
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-251835(P2017-251835)
(22)【出願日】2017年12月27日
(65)【公開番号】特開2019-117030(P2019-117030A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2018年11月19日
【審判番号】不服2019-12152(P2019-12152/J1)
【審判請求日】2019年9月13日
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 聡
(72)【発明者】
【氏名】清水 壮太
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【合議体】
【審判長】
亀ヶ谷 明久
【審判官】
平塚 政宏
【審判官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
実開平1−102134(JP,U)
【文献】
特開2001−253763(JP,A)
【文献】
特開2011−189358(JP,A)
【文献】
特開昭61−256185(JP,A)
【文献】
実開平3−37397(JP,U)
【文献】
実開昭51−71848(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼成物を載置するための載置面を有するセッター本体と、
前記載置面に形成され、前記載置面を目視で識別するための識別マークと、
を備え、
前記識別マークは、前記載置面に形成された凹部であり、
前記識別マークの長さは、100μm以上5000μm以下であり、
前記識別マークの幅は、10μm以上1000μm以下であり、
前記識別マークの平均深さは、1μm以上200μm以下であり、
前記載置面の平面視において、前記識別マークは、前記載置面の角から幾何中心に向かって直線状に延びる、
焼成用セッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成用セッターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック製の焼成用セッターが広く使用されている。焼成用セッターとは、焼成対象である被焼成物を電気炉等で焼成する際に、被焼成物を載置するためのトレーである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−278526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
焼成用セッターは、板状に形成されており、被焼成物が載置される載置面と、載置面の反対に設けられる裏面とを有する。しかしながら、載置面と裏面とを目視で識別することは必ずしも容易ではない。
【0005】
本発明は、載置面を簡便に識別可能な焼成用セッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
焼成用セッターは、載置面を有するセッター本体と、載置面に形成される識別マークとを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、載置面を簡便に識別可能な焼成用セッターを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(焼成用セッター10の構成)
図1は、焼成用セッター10の斜視図である。
図2は、載置面11Sの平面図である。
【0010】
焼成用セッター10は、焼成対象である被焼成物(不図示)を電気炉等で焼成する際に、被焼成物を載置するためのトレーである。被焼成物は特に限られないが、被焼成物としては、セラミック電子部品(例えば、セラミックコンデンサー、多層セラミック基板など)の一部を構成する成形体が挙げられる。成形体は、単層又は多層のグリーンシートによって構成されていてもよい。
【0011】
焼成用セッター10は、セッター本体11と、識別マーク12とを備える。
【0012】
セッター本体11は、板状に形成される。セッター本体11は、載置面11S、裏面11T、及び側面11Uを有する。載置面11Sは、裏面11Tの反対側に設けられる。載置面11Sには、被焼成物が載置される。側面11Uは、載置面11S及び裏面11Tそれぞれの外縁に連なる。
【0013】
図2に示すように、載置面11Sは、被覆領域Saと、露出領域Sbとを含む。被覆領域Saは、載置面11Sに被焼成物が載置された場合に、被焼成物によって覆われる領域である。露出領域Sbは、載置面11Sに被焼成物が載置された場合に、被焼成物から露出する領域である。本実施形態において、被覆領域Sは矩形であり、露出領域Sbは被覆領域Saを取り囲む環状であるが、これに限られるものではない。
【0014】
セッター本体11を平面視した場合の形状及びサイズは特に限られず、被焼成物の形状及びサイズに対応していればよい。セッター本体11の厚みは特に限られず、被焼成物の重量に応じて設定することができる。
【0015】
セッター本体11は、セラミックスを主成分とすることができる。本実施形態において、組成物Xが物質Yを“主成分とする”とは、組成物X全体のうち、物質Yが70vol%以上を占めることを意味する。
【0016】
セッター本体11を構成するセラミックスとしては、酸化物セラミックス又は非酸化物セラミックスを用いることができる。酸化物セラミックスとしては、例えばアルミナ(Al
2O
3)、ムライト(3Al
2O
3−2SiO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、酸化マグネシウム(MgO)、及びイットリア(Y
2O
3)などが挙げられる。非酸化物セラミックスとしては、例えば、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(Si
3N
4)、及び窒化アルミニウム(AlN)などが挙げられる。
【0017】
セッター本体11は、焼結助材として酸化物、ガラスを含有していてもよい。
【0018】
セッター本体11は、緻密質体または多孔質体である。セッター本体11の気孔率は特に制限されないが、例えば0%以上60%以下とすることができる。セッター本体11の気孔率は、アルキメデス法によって測定することができる。
【0019】
識別マーク12は、セッター本体11の載置面11Sに形成される。識別マーク12は、セッター本体11の載置面11Sを目視で識別するために設けられたマークである。焼成時、作業者は、識別マーク12が形成されている面を載置面11Sとして簡便に識別できるため、効率的に焼成作業を行うことができる。
【0020】
図2に示すように、識別マーク12は、載置面11Sのうち露出領域Sbに形成されていることが好ましい。これによって、識別マーク12は、載置面11Sに被焼成物が載置された場合に、被焼成物から露出する。従って、被焼成物が載置された状態においても、被焼成物が正しく載置面11Sに載置されていることを確認することができる。
【0021】
本実施形態において、識別マーク12は、載置面11Sに形成された凹部である。これによって、被焼成物が識別マーク12上に被せられた場合であっても、識別マーク12が被焼成物と干渉することを抑制できる。ただし、識別マーク12は、載置面11Sに形成された凸部であってもよい。
【0022】
図2に示すように、識別マーク12は、載置面11Sの平面視において、所定の方向に延びる直線状に形成されている。識別マーク12が延びる方向は特に限られないが、載置面11Sの各辺に対して傾いていることが好ましい。特に、識別マーク12は、載置面11Sの4つの角のうちいずれかの角から載置面11Sの幾何中心に向かって延びていることが好ましい。これによって、識別マーク12の視認性をより向上させることができる。
【0023】
本実施形態のように、識別マーク12が凹部である場合、識別マーク12の長さL1は、100μm以上5000μm以下であることが好ましい。識別マーク12が凹部である場合、識別マーク12の幅W1は、10μm以上1000μm以下であることが好ましい。識別マーク12が凹部である場合、識別マーク12の平均深さは、1μm以上200μm以下であることが好ましい。これによって、識別マーク12の視認性を向上させつつ、被焼成物が凹部に入り込んでしまうことを抑制できる。
【0024】
ここで、
図1及び
図2では、平面形状が矩形の識別マーク12が図示されているが、識別マーク12の平面形状は、ドット状、波線状、破線状、その他の複雑形状であってもよい。このような場合には、以下のようにして長さL1、幅W1、及び平均深さが定義される。
【0025】
例えば、
図3(a)及び(b)に示すように、識別マーク12の平面形状が複雑形状である場合、長さL1は、識別マーク12を挟む2本の平行な直線A1,A2間の最大距離である。幅W1は、直線A1,A2に対して垂直な識別マーク12を挟む2本の平行な直線B1,B2間の最大距離である。長さL1及び幅W1は、例えばコンフォーカル顕微鏡(OLS4000−LAF,オリンパス製)で載置面11Sを10〜100倍で拡大した画像上で測定するものとする。
【0026】
また、平均深さは、以下のように取得される。まず、長さL1を6等分する5本の直線C1〜C5を直線B1,B2間に規定する。次に、各直線C1〜C5それぞれに沿ってコンフォーカル顕微鏡を二次元走査することによって、各直線C1〜C5上における載置面11Sの最大高さと最小高さとの差を得る。そして、各直線C1〜C5上における最大高さと最小高さとの差を算術平均した値を識別マーク12の平均深さとする。
【0027】
さらに、
図1及び
図2では、識別マーク12が1個だけ設けられているが、識別マーク12は2個以上設けられていてもよい。識別マーク12の個数を増やすほど、載置面11Sの識別性を向上させることができる。
【0028】
(焼成用セッター10の製造方法)
セッター本体11は、プレス成形法によって作製することができる。具体的には、まず、主成分としてのセラミックス粉末とバインダー(ポリビニルアルコール)と水を混練して坏土を得る。次に、坏土を油圧プレスで加圧(例えば、10MPa〜100MPa)することによって、セッター本体11の成形体を形成する。
【0029】
セッター本体11は、鋳込み成型法によっても作製することができる。具体的には、まず、主成分としてのセラミックス粉末と酸化物系分散剤と水を混合してスラリーを得る。次に、スラリーを石膏型で鋳込成形することによって、セッター本体11の成形体を形成する。
【0030】
セッター本体11は、テープ成型法によっても作製することができる。具体的には、まず、主成分としてのセラミックス粉末と分散剤と水を混合してスラリーを得る。次に、スラリーをドクターブレード法でテープ成形することによって、セッター本体11の成形体を形成する。
【0031】
識別マーク12は、セッター本体11の成形体の外表面のうち載置面11Sに形成される。識別マーク12として凹部を形成する場合には、識別マーク12の形状に対応した治具を載置面11Sに押しつけることによって識別マーク12を形成する。また、識別マーク12として凸部を形成する場合には、識別マーク12の形状に加工したテープ成形体を載置面11S上に配置することによって識別マーク12の成形体を形成する。
【0032】
次に、セッター本体11の成形体を焼成(1000℃〜1700℃、1時間〜10時間)することによって、セッター本体11と識別マーク12とが形成される。
【符号の説明】
【0033】
10 焼成用セッター
11 セッター本体
11S 載置面
12 識別マーク