(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリマー(i)及び前記架橋剤(ii)の粘度が、23℃で混合したときに少なくとも40,000mPa.sである、請求項1に記載の多部型セルフシーリング水分硬化性シリコーンシーラント組成物。
前記充填剤が、ヒュームドシリカ及び沈降シリカ、炭酸カルシウム、カーボンブラック、中空ガラスビーズ及び/又はカーボンナノチューブから選択される、請求項1に記載の多部型セルフシーリング水分硬化性シリコーンシーラント組成物。
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的に、縮合硬化化学によって硬化されたセルフシーリングシリコーンシーラント及び/又はゲル組成物、並びに、任意の種類の「膨張式」物品、すなわち空気などの好適な気体で膨張した後にその機能的形状をとる物品における、耐パンク層としての硬化後の上記組成物の使用に関する。本開示はまた、シリコーン材料、例えば、タイヤパンクセルフシーリング材料として機能するように、すなわち、異物によって穿刺された場合/ときに、タイヤのトレッド領域において穿刺孔をシールするように設計された。上記組成物の硬化後に得られるエラストマー及び/又はゲルにも関する。
【0002】
空気タイヤは、その優れた衝撃吸収性及び乗車快適性提供能力から、車両に広く使用されている。しかし、空気タイヤは、ゴムを含む柔軟かつ可撓性の材料から本質的に作られているため、パンクしやすい。釘、石、ガラス片などの鋭利な異物の上を走行したためにパンクが発生したとき、タイヤ内部の高圧空気が漏れて収縮を引き起こし、空気タイヤは適切に機能できない。従来、タイヤが釘などの異物でパンクしたときの唯一の解決策は、元のタイヤをスペアタイヤに交換することであり、時間と労力を要した。しかしながら、近年、タイヤ製造業者は、運転者に代替解決策を提供することを追究し、特に、1つ以上のタイヤ内の圧力が大幅に又は完全に喪失しても車両が走行を継続することを可能にする、セルフシーリングタイヤの提供を追究してきた。これにより、例えば、しばしば危険な状況において、スペアタイヤを装着するために停止する必要がなく、故障点まで走行することが可能となる。
【0003】
このような目的を達成し、本質的に、釘などの異物によってパンクした場合にタイヤがシールされていることを自動的に保証することができるセルフシーリング組成物は、特に開発が困難である。
【0004】
多数の解決策が提案されてきたが、このような車両タイヤ用のタイヤパンクセルフシーリング材料の提供に十分に成功しておらず、特にその理由として、長時間安定性の欠如若しくは極端な実用温度条件下での有効性の欠如、又は、これらのセルフシーリング組成物の製造及び/又は使用の難しさがある。
【0005】
使用できるには、組成物の硬化時に生成するセルフシーリング層は、非常に広範囲の実用温度で有効であり、タイヤの全寿命にわたってそうでなければならない。セルフシーリング層は、原因となる穿刺物(これを本明細書で以後「釘」(nail)と呼ぶ)が然るべき場所に残っているときに、孔を閉塞することができなければならない。特に冬季に、釘を抜くと同時に、セルフシーリング層は、孔を埋めてタイヤを気密とすることができなければならない。主要特性、すなわち、引張強度、伸び及び架橋密度又は貯蔵弾性率は、業界で、セルフシーリング層の機能に特に関係するものと確認されている。
【0006】
引張強度は、シーラント材の試料が破断前に耐えることができる最大応力(単位面積当たりの力)を指す。伸びは、破断点における材料試料の長さの相対的増加を測定する。架橋密度は、分子の特性としての、硬化して三次元架橋ネットワークとなったシーラントの当該部分に存在する架橋の密度の測定値である。材料の貯蔵弾性率は、材料の架橋密度に関係する。高い架橋密度は高い貯蔵弾性率をもたらし、逆に、低架橋の材料は低い貯蔵弾性率を示す。
【0007】
シーラントの引張強度が低すぎると、シーラントは、典型的なタイヤ実用条件下で流動し、穿刺物をタイヤから取り除いたときに穿刺孔に「入り込み」(blow through)、孔をシールできない。したがって、許容可能なシーラントは、このような「入り込み」に耐えるのに十分な引張強度を有するように配合する必要がある。
【0008】
シーラントの伸びが低すぎる場合には、いくつかの欠点が生じる。内部にシーラント組成物がコーティングされたタイヤに針などの物体が入ると、シーラントは、好ましくは釘に付着し、針を囲むテントのような構造を形成する。このとき、シーラントの釘への付着は、パンク時の空気バリアの保全を助け、更に釘が取り除かれるときに、シーラントが釘によって穿刺孔に引き込まれることにもなる。また、シーラントの伸びが不十分の場合、シーラントはテントを形成するのに十分なほど伸張することができない。シーラントは、次いで釘を「キャップ」する、すなわち、釘の先端を囲むシーラントの小部分が残りのシーラントから離れ、針の先端付近に付着したままとなり得る。キャップは、一般的に、釘の入った状態(nail−in)でのシーリング性能の低下を招く。低い伸びの更なる結果は、大きな穿刺の場合に、穿刺物を取り除いたときに、シールを有効にするのに十分なシーラントが孔の上及び中に流れることができないことである。
【0009】
ポリマーシーラントの架橋密度は、シーラントが永久変形に耐える強度を決定する。シーラントの架橋密度又は貯蔵弾性率が高すぎると、シーラントは、永久変形への耐性が大きくなりすぎて、テントを形成せずに穿刺物をキャップし、上記の結果を招く。架橋密度又は貯蔵弾性率が低すぎると、遠心力により、高温でシーラントがクリープ又は流動し、タイヤのショルダー部分の下のシーラントが不足する。架橋濃度が低すぎると、シーラント組成物の耐疲労性も低くなる。耐疲労性は、とりわけ特に、釘などの物体がタイヤに入り、その後タイヤが、釘が取り除かれていない状態でかなりの時間使用される場合に、有効なタイヤシーラントにとって重要な要件である。典型的な場合では、当然、運転者は、釘の存在に気付きさえもしない。タイヤのパンク部分と道路との間の周期的な接触により、タイヤが回転したときに釘が前後に曲がることとなる。シーラントが釘の上又は周囲にシールを形成する間、シーラント自体は継続的に伸長及び緩和され、この過程は時間の経過とともに、場合によってはシールの不良及び気密の破れを引き起こす。
【0010】
このようにして、一般的にセルフシーリングタイヤの解決策では、シリコーン材料をほとんど使用していない。典型的には、硬化速度が速いゲル及び/又はエラストマーを形成するシリコーン材料は、付加硬化化学、又はヒドロシリル化に基づき、すなわち、これらの材料は、典型的には白金系化合物である触媒の助けを借りて、水素化ケイ素基と不飽和炭素基との反応によって硬化される。
【0011】
この種のヒドロシリル化硬化組成物は、バルクで、すなわち化合物全体にわたって、即座に硬化し、硬化ゲル材料を数分で生じることから、従来、産業界で、これらの用途に好ましく、一方、縮合硬化系は、スキン又は拡散プロセスにより硬化する(シーラント/空気界面からゲル組成物/シーラント全体までを硬化する)ことからはるかに低速であり、例えば、チタネート硬化縮合プロセスは、例えば、未硬化材料全体の深さ6mm当たりの硬化に最大7日かかる。2部型スズ硬化縮合系は、より短い期間で硬化するが、80℃を上回る温度で逆反応(すなわち、解重合)を起こすため、例えば、エレクトロニクス用途には望まれない。更に、スズ系縮合硬化組成物は、強靭なエラストマーを生成し、これは電子デバイスに必要な応力緩和特性をもたらさない。
【0012】
硬化速度の観点から、これらのヒドロシリル化硬化組成物から作製されたゲルが優れているが、これらの種類の生成物を使用するには、いくつかの潜在的問題及び/又は欠点がある。まず、ヒドロシリル化硬化組成物は、一般に、高温(すなわち、室温を大幅に上回る温度)で硬化する。ヒドロシリル化組成物は、汚染され、白金系硬化触媒の失活によって非硬化性になる場合がある。白金触媒は、アミン含有化合物、硫黄含有化合物及びリン含有化合物による影響を受けやすいものであり、被毒することがある。
【0013】
1成分型水分硬化性シリコーンを配合するには、アルコキシチタン化合物(すなわちアルキルチタネート)が好適な触媒であることは当業者に公知である(参考文献:Noll,W.;Chemistry and Technology of Silicones,Academic Press Inc.,New York,1968,p.399,Michael A.Brook,silicon in organic,organometallic and polymer chemistry,John Wiley&sons,Inc.(2000),p.285)。チタネート触媒は、スキン又は拡散硬化された1部型縮合硬化性シリコーンエラストマーの配合への使用について、広く記載されている。これらの配合物は、典型的には、15mmよりも薄い層に塗布される1部型パッケージで入手可能である。15mmよりも厚い層は材料の深部において未硬化材料を生じることが知られており、これは、非常に深い部分では水分の拡散が非常に遅いためである。スキン又は拡散硬化(例えば、水分/縮合)が起こるのは、シーラント/封入材が基材表面に塗布された後、組成物/空気界面での硬化スキンの形成によって初期硬化プロセスが起こったときである。表面スキンの形成の後、硬化速度は、シーラント/封入材と空気との界面からの内部(又はコア)への水分の拡散速度、並びに、材料の内部(又はコア)から外部(又は表面)への縮合反応副生成物/排出物の拡散及び時間の経過による外部/表面から内部/コアへの硬化スキンの漸進的増粘によって変動する。
【0014】
生成物のバルクで縮合硬化を活性化するように設計された多成分型組成物では、チタン系触媒を使用しない。上記組成物では、一般に、他の金属触媒、例えば、ジブチルスズジラウレート、スズオクトエート、及び/又は亜鉛オクトエートなどのスズ又は亜鉛触媒を使用する。(Noll、W;Chemistry and Technology of Silicones,Academic Press Inc.,New York,1968,p.397)。使用前に2つ以上の部に保存されるシリコーン組成物において、1つの部は充填剤を含有しており、この充填剤は、典型的には、生成物のバルクでの縮合硬化を活性化させるために必要な水分を含有する。前述の拡散硬化1部型系とは異なり、2部型縮合硬化系は、合わせて混合すると、深さが15mmより深い部分においてもバルク硬化を可能にする。この場合、組成物は、(混合後に)材料バルク全体にわたって硬化することとなる。スキンが形成される場合、それは塗布後の最初の数分のみである。その後すぐに、生成物は全体が固形となる。大量の水分が存在すると、アルキルチタネート触媒は完全に加水分解してテトラヒドロキシチタネートを生成し、これは、公知のこととしてシリコーンに不溶性であることから、チタネート触媒はこの種の2部型組成物の硬化に使用されない。この形態のチタンは、その触媒効率を失い、未硬化の系を生じる。
【0015】
第1の実施形態では、
(i)1分子当たり少なくとも1個、典型的には少なくとも2個のヒドロキシル官能基を有する、少なくとも1種の縮合硬化性シリル末端ポリマーと、
(ii)
1分子団当たり少なくとも2個の加水分解性基、あるいは少なくとも3個の加水分解性基を有するシラン、及び/又は
少なくとも2個のシリル基を有するシリル官能性分子であって、各シリル基が少なくとも1個の加水分解性基を含有するシリル官能性分子
の群から選択される架橋剤と、
(iii)チタネート及び/又はジルコネートの群から選択される縮合触媒と、
を含み、
(i)、(ii)及び(iii)は単一の部に保存されておらず、
全ケイ素結合ヒドロキシル(Si−OH)基の全加水分解性基に対するモル比が、シリル含有架橋剤を使用する場合0.5:1〜2:1、又はシリル官能性分子含有架橋剤を使用する場合、0.5:1〜10:1、あるいは0.5:1〜4:1であり、触媒M−OR官能基[式中、Mはチタン又はジルコニウムである]の、ISO787−2:1981に従って決定した組成物中に存在する水分と全ケイ素結合ヒドロキシル基との合計に対するモル比が、0.01:1〜0.6:1であることを特徴とする、2部型水分硬化性シリコーンタイヤシーラント組成物が提供される。
【0016】
本出願の目的で、「全加水分解性基」は、組成物中に存在する水分及びケイ素結合ヒドロキシル基の両方を除くことを理解されたい。
【0017】
全ケイ素結合ヒドロキシル(Si−OH)モル含有量は、混合配合物100gについて算出される。ポリマーに関する全ケイ素結合ヒドロキシルモル含有量は、混合生成物100g中のヒドロキシル含有ポリマーの量(g単位)を、ポリマーの数平均分子量(Mn)で除算し、ポリマー中に存在するヒドロキシル官能基の平均数(典型的には2)を乗じた値に等しい。配合物中に数種のヒドロキシル官能性ポリマーが存在する場合、各ポリマーのモル含有量の合計は、配合物中の全ケイ素結合ヒドロキシル(Si−OH)モル含有量の合計を構成する。
【0018】
シリコーンの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定することもできる。この技法は標準的技法であり、Mw(重量平均)、Mn(数平均)及び多分散指数(PI)[ここで、PI=Mw/Mn]の値が得られる。
【0019】
本出願で提供されるMn値は、GPCによって決定され、使用されるポリマーの典型値を表す。GPCによって提供されない場合、Mnは、上記ポリマーの絶対粘度に基づく計算から得られてもよい。触媒M−OR値=[(チタネート触媒のg)×(化合物中のORの数)]を(チタン触媒の分子量)で除算したもの。
【0020】
シーラント材料組成物は、未硬化のときに、タイヤ製造プロセスにおいてシーラント材料組成物をタイヤに組み込むことができる粘度、及び硬化したときに、当該材料がタイヤに流れ込んでパンクをシールできる粘度を有する。一実施形態では、ポリマー(i)と架橋剤(ii)とを同じ部において混合するとき、混合前のポリマー(i)及び架橋剤(ii)の23℃における粘度は、当該組成物の粘度に最も適したコーンプレートを使用してBrookfield製コーンプレート粘度計RV DIIIにより測定したときに、40,000mPa
・s以上である。
【0021】
本明細書では、セルフシーリング組成物として上記のような2部型水分硬化性シリコーンタイヤシーラント組成物を含む、耐パンク層を備える膨張式物品も提供される。上記2部型水分硬化性シリコーンタイヤシーラント組成物において、1つの部は充填剤を含有しており、この充填剤は、典型的に、生成物のバルクでの縮合硬化を活性化させるために必要な水分を含有する。このような量の水分が存在すると、アルキルチタネート触媒は完全に加水分解されてテトラヒドロキシチタネートを生成する。したがって、上記充填剤及び触媒は、2部型組成物のうちの異なる部に保存されなければならない。したがって、充填剤は、一般に、縮合硬化性シリル末端ポリマー(i)と共にベースに常に保存される。2つの部は、任意の好適な比率、例えば、ベース部:触媒パッケージが10:1〜1:1、あるいは5:1〜1:1、好ましくは1:1で、混合できる。
【0022】
ポリマー(i)は、少なくとも1種の水分/縮合硬化性シリル末端ポリマーである。ポリジアルキルシロキサン、アルキルフェニルシロキサン、又はシリル末端基を有する有機系ポリマー、例えばシリルポリエーテル、シリルアクリレート及びシリル末端ポリイソブチレン又は上記のいずれかのコポリマーを含む、任意の好適な水分/縮合硬化性シリル末端ポリマーを使用することができる。好ましくは、ポリマーは、少なくとも1個のヒドロキシルを含有するポリシロキサンベースのポリマーであり、最も好ましくは、ポリマーは2個の末端ヒドロキシル基を含む。好適なヒドロキシル含有基の例としては、−Si(OH)
3、−(R
a)Si(OH)
2、−(R
a)
2Si(OH)、又は−(R
a)
2Si−R
c−SiR
dp(OH)
3−p[式中、各R
aは独立して一価のヒドロカルビル基、例えば、アルキル基、特に1〜8個の炭素原子を有するものを表し(好ましくはメチルであり)、各R
d基は、独立して、アルキル基であり、ここで、アルキル基は好適には最大6個の炭素原子を有し、R
cは、最大6個のケイ素原子を有する1個以上のシロキサンスペーサーによって介在され得る最大12個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、かつpは値0、1又は2である]が挙げられる。
【0023】
好ましくは、ポリマー(i)は、一般式
X
3−A−X
1(1)
[式中、X
3及びX
1は、末端がヒドロキシル含有基であるシロキサン基から独立して選択され、Aは、シロキサン及び/又は有機含有ポリマー鎖、あるいはシロキサンポリマー鎖である]を有する。
【0024】
ヒドロキシル末端基X
3又はX
1の例としては、
上記定義による−Si(OH)
3、−(R
a)Si(OH)
2、−(R
a)
2Si(OH)、又は−(R
a)
2Si−R
c−Si(R
d)
p(OH)
3−pが挙げられる。好ましくは、X
3及び/又はX
1末端基は、ヒドロキシジアルキルシリル基、例えば、ヒドロキシジメチルシリル基である。
【0025】
式(I)のポリマー鎖A中の好適なシロキサン基の例は、ポリジオルガノシロキサン鎖を含むシロキサン基である。したがって、ポリマー鎖Aは、好ましくは、式(2)
−(R
5sSiO
(4−s)/2)− (2)
[式中、各R
5は、独立して、1〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基などの有機基で、任意選択で、塩素又はフッ素などの1個以上のハロゲン基で置換されており、sは0、1、又は2であり、典型的にはpは約2である]のシロキサン単位を含む。基R
5の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、塩素又はフッ素で置換されたプロピル基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル、クロロフェニル、β−(ペルフルオロブチル)エチル若しくはクロロシクロヘキシル基が挙げられる。好適には、基R
5のうちの少なくともいくつか、好ましくは実質的に全てが、メチルである。
【0026】
典型的には、上記の種類のポリマーは、当該粘度に最も適したコーンプレートを使用してBrookfield製コーンプレート粘度計(RV DIII)を用いて測定したとき、23℃で1,000〜300,000mPa
・s、あるいは1,000〜100,000mPa
・sのオーダーの粘度を有する。
【0027】
したがって、式(2)の単位を含有する好ましいポリシロキサンは、上に定義するように水分を使用して加水分解できる末端ケイ素結合ヒドロキシル基又は端末ケイ素結合有機基を有するポリジオルガノシロキサンである。ポリジオルガノシロキサンはホモポリマーであってもコポリマーであってよい。末端縮合性基を有する異なるポリジオルガノシロキサンの混合物もまた好適である。
【0028】
本発明によれば、ポリマー鎖Aは、あるいは、シリル末端基を有する有機系ポリマー、例えば、シリル末端ポリエーテル、シリル末端アクリレート及びシリル末端ポリイソブチレンであってもよい。シリル末端ポリエーテルの場合、ポリマー鎖はポリオキシアルキレン系単位に基づく。このようなポリオキシアルキレン単位は、好ましくは、平均式(−C
nH
2n−O−)
y(式中、nは2〜4を含む整数であり、yは少なくとも4の整数である。)により表される、繰り返しオキシアルキレン単位(−C
nH
2n−O−)から構成される、直鎖状の主としてオキシアルキレンポリマーを含む。各ポリオキシアルキレンポリマーブロック又はポリマーの数平均分子量は、約300g/mol〜約10,000g/molの範囲であってもよいが、より高分子量であってもよい。更に、オキシアルキレン単位は、ポリオキシアルキレンモノマー全体にわたって必ずしも同一でなく、単位ごとに異なっていてもよい。ポリオキシアルキレンブロックは、例えば、オキシエチレン単位(−C
2H
4−O−)、オキシプロピレン単位
(−C
3H
6−O−);若しくはオキシブチレン単位(−C
4H
8−O−)、又はこれらの混合物から構成され得る。
【0029】
他のポリオキシアルキレン単位としては、例えば、構造の単位
−[−R
e−O−(−R
f−O−)
w−Pn−CR
g2−Pn−O−(−R
f−O−)
q−R
e]−
[式中、Pnは1,4−フェニレン基であり、R
eはそれぞれ同一であるか又は異なり、2〜8個の炭素原子を有する二価炭化水素基であり、R
fはそれぞれ同一であるか又は異なり、エチレン基又はプロピレン基であり、R
gはそれぞれ同一であるか又は異なり、水素原子又はメチル基であり、下付文字w及びqのそれぞれは3〜30の範囲の正の整数である]を挙げることができる。
【0030】
本出願の目的で、「置換された」とは、炭化水素基中の1個以上の水素原子が別の置換基で置き換えられていることを意味する。このような置換基の例としては、塩素、フッ素、臭素及びヨウ素などのハロゲン原子;クロロメチル、パーフルオロブチル、トリフルオロエチル、及びノナフルオロヘキシルなどのハロゲン原子含有基;酸素原子;(メタ)アクリル及びカルボキシルなどの酸素原子含有基;窒素原子;アミノ官能基、アミド官能基、及びシアノ官能基などの窒素原子含有基;硫黄原子;並びにメルカプト基などの硫黄原子含有基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
使用することができる架橋剤(ii)は一般に、
1分子団当たり少なくとも2個の加水分解性基、あるいは少なくとも3個の加水分解性基を有するシラン、及び/又は
少なくとも2個のシリル基を有するシリル官能性分子であって、各シリル基が少なくとも1個の加水分解性基を含有するシリル官能性分子
を水分硬化する。
【0032】
場合によっては、2個の加水分解性基を有する架橋剤(ii)は、鎖延長剤とみなされる場合がある(すなわち、ポリマー(i)が反応性基を1又は2個しか有していない場合)が、ポリマー(i)が1分子当たり3個以上の反応性基を有する場合は架橋に使用することができる。したがって、架橋剤(ii)は、ポリマー(i)中の縮合性基に対して反応性であるケイ素結合縮合性基(好ましくはヒドロキシル及び/又は加水分解性基)を1分子当たり2個、あるいは3個又は4個有してよい。
【0033】
本明細書の開示の目的で、シリル官能性分子は、2個以上のシリル基を含有するシリル官能性分子であり、各シリル基は、少なくとも1個の加水分解性基を含有する。したがって、ジシリル官能性分子は、それぞれ少なくとも1個の加水分解性基を有する2個のケイ素原子を含み、ここで、ケイ素原子は有機又はシロキサンスペーサーによって分離されている。典型的には、ジシリル官能性分子上のシリル基は、末端基であってよい。スペーサは、ポリマー鎖であってもよい。
【0034】
本明細書の開示の目的で、ジシランは、少なくとも2個のシリル基を有し、その2個のケイ素原子が互いに結合したシリル基官能性分子である。
【0035】
シリル基上の加水分解性基としては、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、オクタノイルオキシ、及びベンゾイルオキシ基);ケトキシミノ基(例えば、ジメチルケトキシモ(ketoximo)及びイソブチルケトキシミノ(isobutylketoximino));アルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、及びプロポキシ)、並びにアルケニルオキシ基(例えば、イソプロペニルオキシ及び1−エチル−2−メチルビニルオキシ)が挙げられる。場合によっては、加水分解性基はヒドロキシル基を含んでもよい。
【0036】
シラン架橋剤(ii)としては、アルコキシ官能性シラン、オキシモシラン、アセトキシシラン、アセトンオキシムシラン及び/又はエノキシシランが挙げられる。
【0037】
架橋剤がシランであり、かつ、当該シランが1分子当たり3個のケイ素結合加水分解性基を有する場合、第4の基は、好適には非加水分解性ケイ素結合有機基である。これらのケイ素結合有機基は、好適には、任意選択でフッ素及び塩素などのハロゲンによって置換されたヒドロカルビル基である。このような第4の基の例としては、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチル);シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル及びシクロヘキシル);アルケニル基(例えば、ビニル及びアリル);アリール基(例えば、フェニル、及びトリル);アラルキル基(例えば、2−フェニルエチル)並びに前述の有機基中の水素の全部又は一部をハロゲンで置き換えることにより得られた基が挙げられる。第4のケイ素結合有機基は、メチルであってもよい。
【0038】
典型的なシランは、式(3)
R”
4−rSi(OR
5)
r(3)
[式中、R
5は、上記のとおりであり、rは2、3又は4の値を有する]によって記載することができる。典型的なシランは、R”がメチル、エチル又はビニル又はイソブチルを表すものである。R”は、直鎖及び分枝状のアルキル、アリル、フェニル及び置換フェニル、アセトキシ、オキシムから選択される有機基である。場合によっては、R
5はメチル又はエチルを表し、rは3である。
【0039】
別の種類の好適な架橋剤(ii)は、Si(OR
5)
4[式中、R
5は上記のとおり、あるいはプロピル、エチル又はメチルである]の種類の分子である。Si(OR
5)
4の部分縮合体も考えられる。
【0040】
一実施形態において、架橋剤(ii)は、各々少なくとも1個で最大3個の加水分解性基を有するシリル基を少なくとも2個有するか、あるいは各シリル基が少なくとも2個の加水分解性基を有する、シリル官能性分子である。
【0041】
架橋剤(ii)はジシリル官能性ポリマー、すなわち、2個のシリル基を含有し、それぞれが式(4)
(R
4O)
m(Y
1)
3−m−Si(CH
2)
x−((NHCH
2CH
2)
t−Q(CH
2)
x)
n−Si(OR
4)
m(Y
1)
3−m(4)
[式中、R
4は、C
1−10アルキル基であり、Y
1は、1〜8個の炭素を含有するアルキル基であり、
Qは、孤立電子対を有するヘテロ原子を含有する化学基、例えば、アミン、N−アルキルアミン又は尿素であり、各xは、1〜6の整数であり、tは0又は1であり、各mは、独立して1、2又は3であり、nは0又は1である]
により記載されるものなどの加水分解性基を少なくとも1個含有するポリマーであってもよい。
【0042】
シリル(例えば、ジシリル)官能性架橋剤(ii)は、シロキサン又は有機ポリマー主鎖を有してもよい。好適なポリマー架橋剤(ii)は、上記式(1)で示されるポリマー鎖Aと類似のポリマー主鎖化学構造を有してもよい。このようなシロキサン又は有機系架橋剤の場合、その分子構造は、直鎖、分枝状、環状又は巨大分子状であってよく、すなわちアルコキシ官能末端基を有するシリコーン又は有機ポリマー鎖は、少なくとも1個のトリアルコキシ末端を有するポリジメチルシロキサンを含み、そのアルコキシ基はメトキシ基又はエトキシ基であってもよい。シロキサン系ポリマーの場合、架橋剤の粘度は、コーンプレートを使用したBrookfieldコーンプレート粘度計(RV DIII)を用いて(ポリマー(i)と同様に測定)、23℃で0.5mPa
・s〜80,000mPa
・sの範囲内となる。上記の加水分解性基のいずれも好適であるが、加水分解性基は、アルコキシ基であり、そのようなものとして、末端シリル基は、−R
aSi(OR
b)
2、−Si(OR
b)
3、−R
a2SiOR
b又は−(R
a)
2Si−R
c−SiR
dp(OR
b)
3−p[式中、各R
aは独立して、一価のヒドロカルビル基、例えば、アルキル基、特に1〜8個の炭素原子を有するものを表し(好ましくはメチルであり)、各R
b及びR
d基は、独立して最大6個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
cは、最大6個のケイ素原子を有する1個以上のシロキサンスペーサーにより介在され得る二価の炭化水素基であり、かつpは値0、1又は2である]などの式を有することが好ましい。典型的には、各末端シリル基は2又は3個のアルコキシ基を有する。
【0043】
アルコキシ官能性末端基を有するシリコーン又は有機ポリマー鎖を有するジシリルポリマー架橋剤(ii)の例としては、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(あるいは、ヘキサメトキシジシリルヘキサン、HMSHとして知られる)、少なくとも1個のトリアルコキシ末端(アルコキシ基はメトキシ基又はエトキシ基であってもよい)を有するポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0044】
したがって、架橋剤(ii)としては、メチルトリメトキシシラン(MTM)及びメチルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン、テトラエトキシシラン、部分縮合テトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランなどのアルケニルトリアルコキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン(iBTM)が挙げられる。その他の好適なシランとしては、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アルコキシトリオキシモシラン、アルケニルトリオキシモシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジ−ブトキシジアセトキシシラン、フェニル−トリプロピオノキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、ビニル−トリス−メチルエチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン、メチルトリス(イソプロペノキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン、エチルポリシリケート、n−プロピルオルトシリケート、エチルオルトシリケート、ジメチルテトラアセトキシジシロキサン、オキシモシラン、アセトキシシラン、アセトンオキシムシラン、エノキシシラン及びその他の3官能性アルコキシシランなど、並びにこれらの部分加水分解縮合生成物;ビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、ビス(ジアルコキシアルキルシリルアルキル)アミン、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)N−アルキルアミン、ビス(ジアルコキシアルキルシリルアルキル)N−アルキルアミン、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)尿素、ビス(ジアルコキシアルキルシリルアルキル)尿素、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)アミン、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)アミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)N−メチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)N−メチルアミン、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)N−メチルアミン、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)N−メチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)尿素、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)尿素、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)尿素、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)尿素、ビス(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)アミン、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)アミン、ビス(4−ジメトキシメチルシリルブチル)アミン、ビス(4−ジエトキシメチルシリルブチル)アミン、ビス(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)N−メチルアミン、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)N−メチルアミン、ビス(4−ジメトキシメチルシリルブチル)N−メチルアミン、ビス(4−ジエトキシメチルシリルブチル)N−メチルアミン、ビス(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)尿素、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)尿素、ビス(4−ジメトキシメチルシリルブチル)尿素、ビス(4−ジエトキシメチルシリルブチル)尿素、ビス(3−ジメトキシエチルシリルプロピル)アミン、ビス(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)アミン、ビス(4−ジメトキシエチルシリルブチル)アミン、ビス(4−ジエトキシエチルシリルブチル)アミン、ビス(3−ジメトキシエチルシリルプロピル)N−メチルアミン、ビス(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)N−メチルアミン、ビス(4−ジメトキシエチルシリルブチル)N−メチルアミン、ビス(4−ジエトキシエチルシリルブチル)N−メチルアミン、ビス(3−ジメトキシエチルシリルプロピル)尿素ビス(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)尿素、ビス(4−ジメトキシエチルシリルブチル)尿素及び/又はビス(4−ジエトキシエチルシリルブチル)尿素;ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)尿素、ビス(トリエトキシシリルプロピル)尿素、ビス(ジエトキシメチルシリルプロピル)N−メチルアミン;ジ又はトリアルコキシシリル末端ポリジアルキルシロキサン、ジ又はトリアルコキシシリル末端ポリアリールアルキルシロキサン、ジ又はトリアルコキシシリル末端ポリプロピレンオキサイド、ポリウレタン、ポリアクリレート;ポリイソブチレン;ジ又はトリアセトキシシリル末端ポリジアルキル;ポリアリールアルキルシロキサン;ジ又はトリオキシイミノシリル末端ポリジアルキル;ポリアリールアルキルシロキサン;ジ又はトリアセトノキシ末端ポリジアルキル又はポリアリールアルキルが挙げられる。使用される架橋剤(ii)は、上記の2種以上の任意の組み合わせも含んでよい。
【0045】
全ケイ素結合ヒドロキシル基の全加水分解性基に対するモル比は、モノシリル含有架橋剤を使用する場合0.4:1〜2:1、又はジシリル含有架橋剤を使用する場合0.5:1〜4:1である。1つの代替形態では、全ケイ素結合ヒドロキシル基の全加水分解性基に対するモル比は1:1〜2:1である。
【0046】
全加水分解性基モル含有量は、混合配合物100gについて算出される。ある物質に関する加水分解性基のモル含有量は、混合生成物100g中の、加水分解性基を含有する分子の量(g単位)を、当該分子の分子量又はポリマー分子の場合は数平均分子量(Mn)で除算し、当該分子中に存在する加水分解性官能基の平均数を乗じた値に等しい。各分子又はポリマーのモル含有量の和は、配合物中の加水分解性基の全モル含有量を構成する。
【0047】
次に、全ケイ素結合ヒドロキシル基の全加水分解性基に対するモル比は、全ケイ素結合ヒドロキシル(Si−OH)基の全モル含有量を加水分解性基の全モル含有率で除算することによって算出されるか、又は比率として表すことができる。
【0048】
組成物は、縮合触媒を更に含む。これにより、組成物が硬化する速度が増加する。特定のシリコーンシーラント組成物に含めるために選択される触媒は、必要とされる硬化速度に応じて異なる。
【0049】
チタネート及び/又はジルコネート系触媒は、一般式Ti[OR
22]
4又はZr[OR
22]
4[式中、R
22は同一でも異なっていてもよく、1〜10個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状であり得る一価の、第一級、第二級又は第三級脂肪族炭化水素基を表す]に従う化合物を含んでよい。任意選択で、チタネート及び/又はジルコネートは、部分不飽和基を含有してもよい。R
22の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第三級ブチル及び分枝状第二級アルキル基、例えば2,4−ジメチル−3−ペンチルが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、各R
22が同一である場合、R
22は、イソプロピル基、分枝状第二級アルキル基又は第三級アルキル基、特に、第三級ブチルである。好適なチタネートの例としては、テトラn−ブチルチタネート、テトラt−ブチルチタネート、チタンテトラブトキサイド、テトライソプロピルチタネートが挙げられる。好適なジルコネートの例としては、テトラn−プロピルジルコネート、テトラn−ブチルジルコネート及びジルコニウムジエチルシトレートが挙げられる。
【0050】
あるいは、チタネート及び/又はジルコネートは、キレート化されていてもよい。キレート化は、アルキルアセチルアセトネート、例えばメチル又はエチルアセトネートなどの、任意の好適なキレート剤によってもよい。あるいは、チタネートは、例えば2−プロパノラト、トリスイソオクタデカノアトチタネート又はジイソプロピルジエチルアセトアセテートチタネートなどの3種のキレート剤をもたらすモノアルコキシチタネートであってよい。
【0051】
触媒のM−OR官能基[式中、Mはチタン又はジルコニウムである]の、ISO787−2:1981に従って決定した組成物中に存在する水分と全ケイ素結合ヒドロキシル基との合計に対するモル比は、0.01:1〜0.6:1である。
【0052】
上記の組成物は、典型的には、2部型の要領で保存された縮合硬化性ゲル又はエラストマー組成物から製造される。2部型組成物は、動的又は静止型ミキサーによる任意の好適な標準的2部型混合装置を使用して混合してもよく、任意選択で、意図された用途での使用のために装置から計量分配される。
【0053】
一実施形態では、2部型水分硬化性シリコーンタイヤシーラント組成物は、2つの部に保存され、当該の部は、次のように分割されてもよい。
a)1つの部にポリマー(i)及び架橋剤(ii)、もう1つの部にポリマー(i)及び触媒(iii)、
b)1つの部に架橋剤(ii)、もう1つの部にポリマー(i)及び触媒(iii)、又は
c)1種よりも多くのポリマー(i)を使用する場合、1つの部に第1のポリマー(i)及び架橋剤(ii)、もう1つの部に第2のポリマー(i)及び触媒(iii)、
d)1つの部にポリマー(i)、もう1つの部に架橋剤(ii)及び触媒(iii)。
【0054】
それぞれの場合で、充填剤と触媒は同じ部にない。典型的には、存在する場合、充填剤は、ベース部においてポリマー(i)と混合され、ベース部は他の添加剤も含んでもよい。
【0055】
2つの部は、任意の好適な比率、例えば、ベース部:触媒パッケージが、例えば15:1〜1:1、あるいは10:1〜1:1、あるいは5:1〜1:1、好ましくは1:1で、混合できる。
【0056】
上記成分以外に、本発明の目的が達成される範囲で、任意選択の成分が組成物に配合されてもよい。
【0057】
任意選択の成分の例としては、充填剤、耐熱性付与剤、耐寒性付与剤、難燃剤、チキソトロピー付与剤、顔料、界面活性剤、融剤、酸受容体、保護剤、UV安定剤、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤、耐食添加剤、染料、及びこれらの任意の好適な組み合わせが挙げられる。
【0058】
充填剤
2部型水分硬化性シリコーンタイヤシーラント組成物は、充填剤、例えば、補強及び/若しくは非補強無機充填剤、熱及び/若しくは電気伝導性充填剤、例えば、金属充填剤及び溶融性充填剤、又はこれらの組み合わせを組み込んでもよい。
【0059】
微細化補強充填剤の例としては、もみ殻灰などの表面積の大きいヒュームドシリカ及び沈降シリカ、並びにある程度の炭酸カルシウムが挙げられる。更なる微細化非補強充填剤の例としては、粉砕石英、珪藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン、カーボンブラック、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、タルク、ウォラストナイトが挙げられる。単独で又は上記の充填剤と組み合わせて使用されることがある他の充填剤としては、カーボンナノチューブ、例えば多層カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、アルミナイト、硫酸カルシウム(無水石膏)、石膏、硫酸カルシウム、チタン酸バリウム、炭酸マグネシウム、カオリン、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム(水滑石)などの粘土、グラファイト、ダイヤモンド、炭酸銅(例えばマラカイト)、炭酸ニッケル(例えばザラカイト)、炭酸バリウム(例えば毒重石)、及び/又は炭酸ストロンチウム(例えばストロンチウム石)が挙げられる。無水の無機充填剤の例としては、オニキス;アルミニウム三水和物、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物;窒化アルミニウム及び窒化ホウ素などの窒化物;炭化ケイ素及び炭化タングステンなどの炭化物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
充填剤の更なる例としては、酸化アルミニウム、かんらん石族;ざくろ石族;アルミノケイ酸塩;環状ケイ酸塩;鎖状ケイ酸塩;及び層状ケイ酸塩からなる群からのケイ酸塩が挙げられる。かんらん石族は、ケイ酸塩鉱物、例えばフォルステライト及びMg
2SiO
4を含むが、これらに限定されない。ざくろ石族は、赤色ざくろ石;Mg
3Al
2Si
3O
12;緑ざくろ石;及びCa
2Al
2Si
3O
12などの粉砕ケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。アルミノケイ酸塩は、ケイ線石;Al
2SiO
5;ムライト;3Al
2O
3.2SiO
2;カイヤナイト;及びAl
2SiO
5などの粉砕ケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。環状ケイ酸塩族は、コージェライト及びAl
3(Mg、Fe)
2[Si
4AlO
18]などのケイ酸塩鉱石を含むが、これらに限定されない。鎖状ケイ酸塩族は、粉砕ケイ酸塩鉱物、例えば、珪灰石及びCa[SiO
3]を含むが、これらに限定されない。層状ケイ酸塩は、雲母;K
2AI
14[Si
6Al
2O
20](OH)
4;葉蝋石;Al
4[Si
8O
20](OH)
4;タルク;Mg
6[Si
8O
20](OH)
4;蛇絞石、例えばアスベスト;カオリナイト;Al
4[Si
4O
10](OH)
8;及びバーミキュライトなどのケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。
【0061】
上記充填剤のうちの2種以上の任意の組み合わせを使用してよい。
【0062】
好ましい実施形態において存在する場合、使用する充填剤は、ヒュームドシリカ及び沈降シリカ、炭酸カルシウム、カーボンブラック、中空ガラスビーズ及び/又はカーボンナノチューブ、例えば多層カーボンナノチューブ、並びにこれらの混合物から選択される。
【0063】
充填剤処理剤
熱伝導性充填剤、並びに/又は無水補強及び/若しくは増量充填剤は、存在する場合、任意選択で、処理剤で表面処理されてもよい。処理剤及び処理方法は当該技術分野において公知である。充填剤の表面処理は、典型的に、例えば、脂肪酸若しくはステアレートなどの脂肪酸エステルを用いて、又はオルガノシラン、オルガノシロキサン、若しくはオルガノシラザン、例えばヘキサアルキルジシラザン若しくは短鎖シロキサンジオールを用いて行われる。一般に、表面処理は充填剤を疎水性にし、したがって、組成物中の他の成分との均質混合物の取り扱い及び入手を容易にする。
R
5eSi(OR
6)
4−e
[式中、R
5は、6〜20個の炭素原子を有する置換又は非置換の一価炭化水素基、例えば、へキシル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、及びオクタデシルなどのアルキル基、ベンジル及びフェニルエチルなどのアラルキル基であり、6〜20個の炭素原子を有すアルキル基が好ましく、R
6は、1〜6個の炭素原子を有するアルキルであり、文字eは、1、2又は3である]などのシランも、充填剤の処理剤として使用できる。
【0064】
接着促進剤
好適な接着促進剤は、式R
14hSi(OR
15)
(4−h)[式中、下付き文字hは、1、2、又は3であり、あるいはhは3である]のアルコキシシランを含んでもよい。各R
14は独立して一価の有機官能基である。R
14は、グリシドキシプロピル若しくは(エポキシシクロヘキシル)エチルなどのエポキシ官能基、アミノエチルアミノプロピル若しくはアミノプロピルなどのアミノ官能基、メタクリルオキシプロピル、メルカプトプロピルなどのメルカプト官能基、又は不飽和有機基であり得る。各R
15は独立して、少なくとも1個の炭素原子を有する非置換飽和炭化水素基である。R
15は、1〜4個の炭素原子、あるいは1〜2個の炭素原子を有してよい。R
15の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、及びイソプロピルが挙げられる。
【0065】
適切な接着促進剤の例としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びグリシドキシプロピルトリメトキシシランとアルミニウムキレート又はジルコニウムキレートとの組み合わせが挙げられる。接着促進剤の例は、米国特許第4,087,585号及び同第5,194,649号に見ることができる。硬化性組成物は、存在する場合、組成物の重量に基づいて、0.01〜2重量%、あるいは0.05〜2重量%、あるいは0.1〜1重量%の接着促進剤を含んでもよい。好ましくは、生成物ネットワークへの組み込みよりも基材への分子の拡散に有利となるように、接着促進剤の加水分解速度は、架橋剤の加水分解速度よりも低くなければならない。
【0066】
界面活性剤
好適な界面活性剤としては、シリコーンポリエーテル、エチレンオキサイドポリマー、プロピレンオキサイドポリマー、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのコポリマー、その他のノニオン性界面活性剤、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。組成物は、組成物の重量に基づいて最大0.05%の界面活性剤を含んでもよい。
【0067】
融剤
組成物は、組成物の重量に基づいて最大2%の融剤を含んでもよい。カルボン酸及びアミンなどの化学活性官能基を含有する分子を融剤として使用することができる。そのような融剤としては、コハク酸、アビエチン酸、オレイン酸、及びアジピン酸などの脂肪族酸;安息香酸などの芳香族酸;脂肪族アミン及びそれらの誘導体、例えばトリエタノールアミン、アミンの塩酸塩、並びにアミンの臭化水素酸塩を挙げることができる。融剤は当該技術分野において既知であり、市販されている。
【0068】
酸受容体
好適な酸受容体としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。組成物は、適切であれば、組成物の重量に基づいて最大2%の酸受容体を含んでもよい。
【0069】
トリアゾール構造、チアジアゾール構造、ベンゾトリアゾール構造、メルカプトチアゾール(mercaptothiozole)構造、メルカプトベンゾチアゾール構造又はベンゾイミタゾール構造を有する窒素/硫黄含有ヘテロ環化合物などの耐食添加剤。
【0070】
本発明は、インナーチューブあり又はなしのタイヤ、自動車使及びトラックタイヤなどの空気タイヤに使用するための2部型水分硬化性シリコーンタイヤシーラント組成物であって、オリジナルタイヤ及び更生タイヤにカーカスパンク保護のための空気シーリング特性を提供することのできる組成物に関する。
【0071】
一実施形態では、タイヤの内側の円周方向に、トレッド内で半径方向に接着付着されたシーリングバンドを有するセルフシーリング空気ゴムタイヤが提供され、シーラントは、タイヤの内側に塗布された上記の硬化された2部型水分硬化性シリコーンタイヤシーラント組成物を含む。
【0072】
本発明はまた、支持材料の上にシーラントが塗布されたシーリングバンドを使用したセルフシーリングタイヤを製造する方法に関し、シーリングバンドは、タイヤの中に導入され、ショルダー領域間に延びるタイヤの内壁面に施される。
【0073】
本発明の好ましい実施態様では、外周トレッド、そのための支持カーカス及び当該支持カーカスから内向きに配置されたインナーゴムライナーを備える空気タイヤが提供され、カーカスとインナーライナーとの間に配置されたシーラント材料組成物層は、本発明によるシーラント材料組成物を含む。
【0074】
あるいは、セルフシーリング空気ゴムタイヤであって、サイドウォール、支持カーカス、非伸縮性ビード、インナーライナー(空気バリア層)、シーラント層、及び外周トレッド(トレッド部分)を有するセルフシーリング空気ゴムタイヤが提供される。個々のサイドウォールは、トッレッド部分の軸方向外端から内向きに半径方向に延び、それぞれの非伸縮性ビードと接合する。支持カーカスは、トレッド部分及びサイドウォールの支持構造として作用できる。シーラント材料組成物層は、支持カーカスとインナーライナーとの間に配置することができる。外周トレッドは、タイヤ使用時に接地するように適合されている。
【0075】
シーラントをタイヤのセルフシーリング層として実用化するには、シーラントを、シーラントを使用しようとするタイヤ又は物品に、容易かつ実用的に塗布することができるように配合しなければならない。タイヤ内部にシーラントを塗布する1つの方法は、シーラント組成物を硬化剤と混合する工程と、それをタイヤが回転しているときにタイヤ内部に噴霧する工程とを含む。タイヤ回転中に、組成物の2つの部の混合によりシーラントの硬化がいくらか起こり、走行及びプーリングに耐える均一なシームレスコーティングが得られる。
【0076】
本明細書に記載の組成物は、典型的には、硬化のために熱を必要としないことから、後加硫されたタイヤへの塗布に適している。
【0077】
本発明では、2部型組成物を好適な混合/投与単位で混合し、混合組成物を直ちに標的基材(タイヤ)表面に塗布する。混合後の組成物は、タイヤ内面に付着するのに十分なグリーン強度を有するように設計され、数時間後に硬化する。
【0078】
典型的には、2部型水分硬化性シリコーンタイヤシーラント組成物は、未硬化状態で塗布され、混合して基材タイヤ表面上に付着するとすぐに硬化することにより、以下に論じるように、最終用途に応じて、0.25〜10mm、あるいは0.5mm〜10mm、あるいは1〜5mmの硬化厚さとなる。相互混合の後、硬化前に、例えば、カーテンコーター、噴霧デバイス、ダイコーター、ディップコーター、押出コーター、ナイフコーター及びスクリーンコーターなどの好適なディスペンサを使用して、縮合硬化性ゲル組成物を基材上に塗布することができ、これにより、硬化が形成されると、当該基材上にコーティングが提供される。
【0079】
必要とされる厚さ及び圧力要件は、当該タイヤの最終用途に応じて変化するものとなる。これにより、例えば、乗用車型のタイヤの場合、少なくとも0.5mm、好ましくは1〜5mmの厚さを有することができる。別の例によれば、大型車又は農業用車両のタイヤの場合、好ましい厚さは1〜6mmとなり得る。別の例によると、土工機械分野の車両用又は航空機用のタイヤの場合、好ましい厚さは2〜10mmとなり得る。最後に、別の例によると、自転車用タイヤの場合、好ましい厚さは0.4〜2mmとなり得る。
【0080】
上記の2部型水分硬化性シリコーンタイヤシーラント組成物から誘導される硬化材料は、粘着性固形分(23℃時)であり、特に、その特異な配合による非常に高い可撓性及び変形特性を特徴とする。本明細書に記載の組成物の使用の1つの利点は、タイヤの実用温度の非常に広い範囲内で、転がり抵抗の点でセルフシーリング層を有さないタイヤと比べて実質的に不利益がないという点である。シリコーン系材料は、多くの有機代替物よりも極端な温度変化への耐性が大きいことから、非シリコーンセルフシーリング組成物と比べて、一部のタイヤの使用中に頻繁に遭遇する温度である、比較的高温(典型的には60℃を超える)での使用中に、過剰なクリープのリスクが著しく低下する。セルフシーリング特性は、低温(典型的には0℃未満)での使用時にも改善される。
【0081】
更に、上記組成物から誘導される硬化材料は、9,000〜26,000Paの貯蔵弾性率を有する。上記の2つの値の間の貯蔵弾性率は、柔軟性(釘又はそれ自体に対する粘着性)及び硬度(圧力下での耐クリープ性/耐流動性)の適正なバランスを与えることが確認された。かかる貯蔵弾性率を23℃で示すシリコーン配合物は、他の温度、すなわち、−25〜100℃で、タイヤ用セルフシーリングコーティングとして作用するのに必要な弾性率のバランスをなおも満たす貯蔵弾性率を示すであろう。
【0082】
釘などの異物がタイヤの構造を通過すると、セルフシーリング層として機能する組成物は、複数の応力を受ける。これらの応力に反応して、その有利な変形性及び弾性特性により、上記組成物は、異物の周りに非浸透性の接触領域を生成する。上記異物の輪郭又は断面形状が均一か定形かに関係なく、セルフシーリング組成物は、その可撓性により、非常に小さいサイズの開口部に入り込むことができる。セルフシーリング組成物と異物との間のこの相互作用により、上記異物の影響を受ける領域がシールされる。
【0083】
異物が取り除かれた場合、偶発的か意図的かに関係なく、穿孔が残り、これは、そのサイズによっては、比較的大きな漏れを生じやすい。静水圧にさらされるセルフシーリング組成物は、変形されることによって穿孔を封止するのに十分に柔軟かつ変形可能であり、膨張用ガスの漏れを防止する。特にタイヤの場合には、負荷のかかったタイヤが走行/回転中に変形する状況であっても、セルフシーリング組成物の可撓性により、周囲の壁の力に問題なく耐えることができることが明らかとなった。
【0084】
上記の記述は、組成物のタイヤでの使用に主に集中してきたが、上記組成物から得られる硬化材料は、任意の種類の「膨張式」物品、すなわち、定義上、空気で膨張したときに使用可能な形態をとる任意の物品に、耐パンク層として使用してもよいことは理解されるべきである。このような膨張式物品の例としては、例えば(限定するものではないが)、ゲーム又はスポーツに使用される膨張式ボート及びバルーン又はボールがある。記載のように、2部型組成物は、膨張式物品の内壁に塗布され、内壁を完全に又は少なくとも部分的に覆う。
【0085】
組成物は、上記のように、硬化すると、乗用車、SUV(スポーツユーティリティビークル)、二輪車(特に自転車及びオートバイ)、航空機、又はライトバン、「大型」車、すなわち、地下鉄、バス、道路輸送車両(貨物自動車、トラクタ、トレーラー)、オフロード車、例えば、農業用若しくは土木機械、及び他の輸送又は荷役用車両から選択される産業用車両のタイヤにおいて、耐パンク層としての使用に十分に適する。非常に高速で走行することができる乗用車用タイヤ、又は特に高い内部温度条件下で走行/回転及び動作することができる産業用車両、例えば、大型車用のタイヤに関する問題はないであろう。
【実施例】
【0086】
全ての粘度測定は、特記のない限り、Brookfieldコーンプレート粘度計RV DIIIで、最も適切なコーンプレートを用いて、23℃で測定した。
【0087】
実施例のために、下記の市販のタイヤを購入及び使用した:
ブリヂストンTuranza ER300 205/55/16 91H、
Continental Conti Premium Contact 5 205/55/16 91W、
Goodyear Efficient Grip 205/55/16 91H、
Michelin Energy Saver 205/55/16 91V、及び
Pirelli Cinturato P7 205/55/16 91V。
【0088】
ベースAの調製
73.01gのNanocyl(登録商標)NC7000カーボンナノチューブ、3544.2gのOH末端ポリジメチルシロキサン(約50,000mPa
・sの粘度及び63,000g/molの数平均分子量(Mn)を示す)及び382.8gのトリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン(約56,000mPa
・sの粘度及び62,000g/molの数平均分子量(Mn)を示す)を、Neulinger5リットルミキサーに加えた。これらを最初に遊星ミキサーを用いて50rpmで2分間混合し、その後遊星ミキサーで50rpm及びディスクで700rpmで更に15分間、最後に遊星ミキサーで100rpm及びディスクで700rpmで更に30分間混合した。得られたベース生成物を、次いで、バケツに取り出した。
【0089】
ベースBの調製
1500gのEvonik Printex Aカーボンブラック、8825gのOH末端ポリジメチルシロキサン(約50,000mPa
・sの粘度及び63,000g/molの数平均分子量(Mn)を示す)及び973gのトリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン(約56,000mPa
・sの粘度及び62,000g/molの数平均分子量(Mn)を示す)を、20リットルのバケツに加え、Collomix Biaxペールミキサーで60分間混合した。
【0090】
混合物の調製
実施例1
24.87gのトリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン(約56,000mPa
・sの粘度及び62,000g/molの数平均分子量(Mn)を示す)及び0.133gのテトラn−ブチルチタネートを合わせて、デンタルミキサーにより2300rpmで30秒間混合した。250gのベースAをプラスチック容器に導入した。トリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン(56,000mPa
・sの粘度)とテトラn−ブチルチタネートとの上記予備混合物を、容器に加え、スピードミキサーにて2300rpmで30秒間を4回、混合した。
【0091】
実施例2
28.85gのトリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン(約56,000mPa
・sの粘度及び62,000g/molの数平均分子量(Mn)を示す)及び0.155gのテトラn−ブチルチタネートを、合わせてデンタルミキサーにより2300rpmで30秒間混合した。290gのベース2をプラスチック容器に導入した。トリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン(56,000mPa
・sの粘度)とテトラn−ブチルチタネートとの上記予備混合物を、容器に加え、スピードミキサーにて2300rpmで30秒間を4回、混合した。
【0092】
比較例1
40.85gのトリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン(約56,000mPa
・sの粘度及び62,000g/molの数平均分子量(Mn)を示す)を、0.133gのテトラn−ブチルチタネートと予備混合した。250gのベースAをプラスチック容器に加えた。トリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン(56,000mPa
・sの粘度)とテトラn−ブチルチタネートとの上記予備混合物を、容器に加え、スピードミキサーにて2300rpmで30秒間を4回、混合した。
【0093】
比較例2
15.89gのトリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン(約56,000mPa
・sの粘度及び62,000g/molの数平均分子量(Mn)を示す)を、0.133gのテトラn−ブチルチタネートと予備混合した。250gのベースAをプラスチック容器に加えた。トリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン(56,000mPa
・sの粘度)とテトラn−ブチルチタネートとの上記予備混合物を、容器に加え、スピードミキサーにて2300rpmで30秒間を4回、混合した。
【0094】
試験した実施例1並びに比較例1及び2の組成物の詳細な表を、表1に示す。下記走行時のタイヤに関する試験結果を、表2に示す。
【0095】
硬度及び貯蔵弾性率の評価
TA XT plusテクスチャーアナライザーを使用して、硬化エラストマーの硬度を観測した。使用したプローブは、球形端部で終端されたポリカーボネートシリンダである。プローブと球体の直径は、1/2インチ(1.27cm)である。スタートに戻る(return to start)プログラムを使用した。プレテストスピードは5mm/sで、トリガー力は0.1gである。テストスピードは1mm/sである。プローブは、生成物中に5mmの距離で挿入され、その後、有意な力が測定されない距離まで移される。最大の正及び負の力を測定し、本明細書に報告する。より高い正の力は、より高い硬度のエラストマーを表す。より高い負の力は、より粘着性のエラストマーを表す。
【0096】
シーリング効率の評価
プレス及びカッティングシリンダーを使って、タイヤの回転バンド上に直径3mmの孔を切り取った。実施例1、2並びに比較例1及び2で得られた生成物を、それぞれ310mLのカートリッジに充填し、タイヤ内部に塗布し、ルーラーを用いて、設計厚さで平滑化した。
【0097】
実施例1、2並びに比較例1及び2の生成物を、所望の厚さで塗布し、タイヤの3つの孔を埋めることなく、覆うようにした。23℃及び相対湿度50%で7日間硬化した後、タイヤをホイールに装着し、1bar(0.1MPa)で与圧した。直径5mmの釘を、タイヤ内の距離が40mmになるまで、3mmの孔に押し込んだ。次いで、圧力を2.7bar(0.27MPa)まで上げ、孔はタイヤから取り除かれた。
【0098】
その後数時間及び数日間は、セメント質を含まないストリング補修プラグを漏れている孔に充填し、漏れが観察されなくなるまで、任意選択で水を用いて、漏れを追跡した。タイヤを、補修後2週間保持した。14日後に、0.1bar(0.01MPa)を超える喪失がない場合の結果を表2に報告する。3/3は、3つの孔のいずれにも漏れが観察されなかったことを意味する。0/3は、3つの孔の全てが、漏れるので修理が必要であったことを意味する。
【表1】
【表2】
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
実施例1は、気密性について優れた結果を示しているが、比較例1及び2は、試験での不合格を多数示している。これは、タイヤをシールする生成物を得るために、適切な架橋密度が要求されることを示す。
【0102】
実施例のテクスチャーアナライザーの結果は、タイヤで適切な性能を得るには、硬度及び粘着性の折り合いが必要であることを示す。剛直すぎる材料(比較例1)は、間隙を確実に閉塞できるだけの十分な粘着力を示さず、柔軟すぎる材料(比較例2)は、孔からの材料のクリープを防止するのに十分な硬度を示さない。実施例1及び2は、硬度と粘着性との適切なバランスを示し、クリープを示すことなく釘によって生じた間隙を閉塞する。
【0103】
実施例1並びに比較例1及び2のレオロジー測定値は、−20〜80℃の温度範囲が生成物の貯蔵弾性率に与える影響は非常に限られることを、示す。この温度範囲は、タイヤがその寿命の中で使用中に耐えなければならない可能性のある温度限界の典型である。これにより、典型的にこの温度範囲におけるレオロジー測定値においてはるかに大きなばらつきを示す有機代替物と比べて、タイヤシーラントとしてのシリコーン技術が有利となる可能性が強調される。