【文献】
竹内博幸、山影久尚、長尾之彦、福島正一,高炉スラグ微粉末を用いた超高強度コンクリートの実用化に関する研究,コンクリート工学年次論文報告集,日本,日本コンクリート工学会,1993年,Vol.15, No.1,PP.93-98
【文献】
岩城一郎、澤井洋介、三浦尚,高炉スラグ混和コンクリートの強度発現に及ぼす配合及び温度の影響,コンクリート工学年次論文集,日本,日本コンクリート工学会,2000年,Vol.22, No.2,PP.127-132
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
【0010】
セメント25〜30重量部と高炉スラグ微粉末70〜75重量部を有する結合材100重量部と、骨材と、水と、を有するセメント組成物であって、
前記セメントの単位セメント量を90〜214kg/m
3としたセメント組成物。
【0011】
かかる場合には、セメント組成物の強度を向上させることが可能となる。
【0012】
次に、セメント25〜30重量部と高炉スラグ微粉末70〜75重量部を有する結合材100重量部と、骨材と、水と、を有するセメント組成物であって、
水結合材比を21〜47%としたセメント組成物。
【0013】
かかる場合には、セメント組成物の強度を向上させることが可能となる。
【0014】
===本実施の形態について===
本実施の形態について、以下において、さらに詳しく説明する。
【0015】
本実施の形態においては、セメント組成物として、水、セメント、細骨材、粗骨材等を含んで構成されるコンクリートを例に挙げて説明する。
【0016】
本実施の形態では、CO2排出量の多いセメントの使用量を減らし、セメントの代替材料としてCO2排出量が少ない混和材(結合材)を使用するようにした。このように、セメントの使用量を極力減らすことで、コンクリート製造時のCO2の排出量を削減することが可能となる。しかしながら、セメントの使用量が少なくなることによってコンクリートの強度が低下する虞がある。そこで、本実施の形態では以下に示すように、CO2を極力低減しつつ適切な強度を備えた材料構成のコンクリートの開発を行った。
【0017】
表1は、比較例に係るコンクリートの各種データを示した表である。
【0018】
表1には、No.1からNo.4までの4個のサンプルが表されている。なお、No.2とNo.3のサンプルについては、σ28(標準養生28日圧縮強度)以外のデータが同じであるのに、σ28の値が異なっているが、これは、データ取得時期が異なるためである。
【0019】
比較例に係るコンクリートは、水(W)、結合材としての普通ポルトランドセメント(C。以下、単にセメントと呼ぶ)及び高炉スラグ微粉末(BS)、骨材としての細骨材(S1、S2)及び粗骨材(G1、G2)、混和剤を有している。そして、水(W)、セメント(C)、高炉スラグ微粉末(BS)、細骨材(S1、S2)、粗骨材(G1、G2)の単位量(kg/m
3)が、表に記されている。
【0020】
また、細骨材S1、細骨材S2とあるのは、2種類の細骨材が混合されていることを意味する。細骨材S1、細骨材S2がどの種類の細骨材であるかについては、注)に記載されている。例えば、No.1のサンプルにおいては、細骨材S1が山砂であり、細骨材S2が石灰砕砂である。なお、当該事項については、後述する表2A乃至表2Fについても同様のことが言える。
【0021】
なお、サンプルNo.2及びNo.3においては、細骨材S1のみであり、細骨材S2が存在しない。しかしながら、細骨材S1が、山砂+石灰砕砂となっていることからも分かるように、これらのサンプルにおいても、細骨材として山砂と石灰砕砂が混合されたものを使用している。これらのサンプルにおいては、予め山砂と石灰砕砂が混合されたもの(混合砂)を用いている関係上、山砂、石灰砕砂の個別の単位量を取得できないため、当該混合砂を細骨材S1として記している。一方で、他のサンプルにおいては、細骨材S1と細骨材S2を各々準備し、それぞれの単位量を測ってから現場で混合している。なお、当該事項については、後述するサンプルNo.11〜No.20についても同様のことが言える。
【0022】
いずれにせよ、どのサンプルにおいても、山砂と石灰砕砂とを混合したものを細骨材として用いている。なお、山砂は天然骨材の一例であり、石灰砕砂はコンクリート用砕砂の一例である。そのため、どのサンプルにおいても、天然骨材とコンクリート用砕砂とを混合したものを細骨材として用いていると言える。
【0023】
同様に、粗骨材G1、粗骨材G2とあるのは、2種類の粗骨材が混合されていることを意味する。粗骨材G1、粗骨材G2がどの種類の粗骨材であるかについては、注)に記載されている。例えば、No.4のサンプルにおいては、粗骨材G1が硬質砂岩砕石であり、粗骨材G2が石灰砕石である。なお、当該事項については、後述する表2A乃至表2Fについても同様のことが言える。
【0024】
なお、サンプルNo.2及びNo.3においては、粗骨材G1、粗骨材G2の双方とも石灰砕石となっているが、これは産地が異なる2種類の石灰砕石を混合して用いているため、各々の石灰砕石を粗骨材G1、粗骨材G2として記している。なお、当該事項については、後述するサンプルNo.11〜No.20、No.58〜No.77についても同様のことが言える。
【0025】
いずれにせよ、どのサンプルにおいても、石灰砕石か、石灰砕石と硬質砂岩砕石とを混合したものを粗骨材として用いている。なお、石灰砕石も硬質砂岩砕石もコンクリート用砕石の一例であるため、どのサンプルにおいても、コンクリート用砕石を粗骨材として用いていると言える。
【0026】
また、比較例に係るコンクリートにおいては、混和剤(化学混和剤)として、AE減水剤が用いられている。表1には、AEと記している。
【0027】
また、W/Bは、水結合材比(単位はパーセント)を表している。水結合材比は、水の結合材(セメント及び高炉スラグ微粉末)に対する重量比である。また、σ28(単位はN/mm
2)は、標準養生28日圧縮強度を表している。標準養生28日圧縮強度試験においては、φ100*200mmの供試体を作成して水中養生後、JIS A 1108(BS EN 206)に準じて材齢28日の20℃の圧縮強度を測定する。なお、当該事項については、後述する表2A乃至表2Fについても同様のことが言える。
【0028】
表2A乃至表2Fは、本件例に係るコンクリートの各種データを示した表である。
【0029】
表2Aには、No.1からNo. 20までの20個のサンプルが表されている。表2Bには、No. 21からNo.36までの16個のサンプルが表されている。表2Cには、No.37からNo.52までの16個のサンプルが表されている。表2Dには、No.53からNo.72までの20個のサンプルが表されている。表2Eには、No.73からNo.90までの18個のサンプルが表されている。表2Fには、No.91からNo.101までの11個のサンプルが表されている。
【0030】
本件例に係るコンクリートは、比較例に係るコンクリートと同様、水(W)、結合材としてのセメント(C)及び高炉スラグ微粉末(BS)、骨材としての細骨材(S1、S2)及び粗骨材(G1、G2)、混和剤を有している。そして、水(W)、セメント(C)、高炉スラグ微粉末(BS)、細骨材(S1、S2)、粗骨材(G1、G2)の単位量(kg/m
3)が、表に記されている。
【0031】
なお、表2A乃至表2Eにおいては、実験1から実験20が示され、各実験に対して複数のサンプルがある。これは、当該複数のサンプルが、同一のプラント(Plant)にて同一の時期(3つの時期、すなわち、標準期(春期、秋期)、夏期、冬期のいずれか)に採られたことを意味する。例えば、実験1に属するNo.1からNo.5までの5個のサンプルは、同一のプラント(Plant)にて同一の時期に採られたものである。
【0032】
また、本件例の表2A乃至表2Eに示したサンプル(つまり、No.1からNo.90までのサンプル)においては、セメント(C)の高炉スラグ微粉末(BS)に対する比を1対3としている。これに対し、表2Fに示したサンプル(つまり、No. 91からNo.101までのサンプル)においては、セメント(C)の高炉スラグ微粉末(BS)に対する比を3対7としている。すなわち、前者においては、セメントを25重量部とし、高炉スラグ微粉末を75重量部として、結合材を100重量部としているのに対し、後者においては、セメントを30重量部とし、高炉スラグ微粉末を70重量部として、結合材を100重量部としている。
【0033】
ここで、比較例に係るコンクリートと本件例に係るコンクリートの相違点について説明すると、本件例に係るコンクリートの方が比較例に係るコンクリートよりもセメントの単位量の値が大きくなっている。つまり、比較例のセメントの単位量が79〜81kg/m
3であるのに対し、本件例のセメントの単位量は90〜214kg/m
3となっている。
【0034】
また、本件例に係るコンクリートの方が比較例に係るコンクリートよりも水結合材比の値が小さくなっている。つまり、比較例の水結合材比が55%であるのに対し、本件例の水結合材比は21〜47%となっている。
【0035】
また、本件例においては、硬質砂岩砕砂か、陸砂か、山砂又は陸砂と石灰砕砂とを混合したものを細骨材として用いている。なお、山砂及び陸砂は天然骨材の一例であり、硬質砂岩砕砂及び石灰砕砂はコンクリート用砕砂の一例である。そのため、天然骨材か、コンクリート用砕砂か、天然骨材とコンクリート用砕砂とを混合したものを細骨材として用いていると言える。
【0036】
また、本件例においては、石灰砕石か、硬質砂岩砕石か、石灰砕石と硬質砂岩砕石とを混合したものを粗骨材として用いている。なお、石灰砕石も硬質砂岩砕石もコンクリート用砕石の一例であるため、どのサンプルにおいても、コンクリート用砕石を粗骨材として用いていると言える。
【0037】
また、本件例に係るコンクリートにおいては、混和剤(化学混和剤)として、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤のいずれかが用いられている。表においては、高性能減水剤を使用した場合にSP1と、高性能AE減水剤を使用した場合にSP2と、AE減水剤を使用した場合に、AEと記している。
【0038】
本件例及び比較例の双方において、水(W)、結合材としてのセメント(C)及び高炉スラグ微粉末(BS)、骨材としての細骨材(S1、S2)及び粗骨材(G1、G2)、混和剤を用いてコンクリートを製造する前に、表に記載された各単位量、水結合材比のデータを取得した。そして、コンクリートを製造し、標準養生28日圧縮強度試験を実施することにより、表に記載された標準養生28日圧縮強度データを取得した。
【0039】
そして、表から明らかなように、本件例に係るコンクリートの方が、比較例に係るコンクリートよりも、高い圧縮強度を備えている。つまり、比較例の標準養生28日圧縮強度が28.1〜29.8N/mm
2であるのに対し、本件例の標準養生28日圧縮強度は32.6〜122.0N/mm
2となっている。
【0040】
このように、本件例に係るセメント組成物(コンクリート)によれば、セメント組成物(コンクリート)の強度を向上させることが可能となる。
【0041】
===その他の実施形態について===
上記の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0042】
上記実施の形態においては、結合材としてセメント及び高炉スラグ微粉末を例に挙げたが、他の材料が含まれている場合であってもよい。例えば、シリカフュームやフライアッシュをさらに含む結合材を排除するものではない。
【0043】
また、上記実施の形態においては、混和剤(化学混和剤)として高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤を例に挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、減水剤の使用を排除するものではない。