特許第6679980号(P6679980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6679980電力需要予測装置、及び電力需要予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6679980
(24)【登録日】2020年3月24日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】電力需要予測装置、及び電力需要予測方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
   H02J3/00 130
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-33822(P2016-33822)
(22)【出願日】2016年2月25日
(65)【公開番号】特開2017-153257(P2017-153257A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】河内 清次
【審査官】 下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−114629(JP,A)
【文献】 特開2006−244062(JP,A)
【文献】 特開2015−192502(JP,A)
【文献】 特開2014−096946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 − 5/00
G06Q 10/00 − 10/10
G06Q 50/00 − 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ及び記憶装置と、
電力需要の実績値である時系列データを記憶する時系列データ記憶部と、
第1の前記時系列データと第2の前記時系列データとが類似する度合いを時間帯別に評価した値である時間帯別評価値を求める時間帯別評価値算出部と、
前記時間帯の夫々について設定された重みである時間帯別影響度を記憶する時間帯別影響度記憶部と、
前記時間帯別評価値の夫々を、夫々について設定された前記時間帯別影響度で重み付けして得られる値を、前記第1の時系列データと前記第2の時系列データの類似度として求める類似度算出部と、
前記類似度が予め設定されている閾値を超えている前記第2の時系列データを、前記時系列データ記憶部が記憶している前記第1の時系列データに類似する前記時系列データとして選出する、時系列データ選出部と、
前記第1の時系列データ及び前記時系列データ選出部が選出した前記時系列データのうちの少なくとも何れかを用いて電力需要を予測する、電力需要予測部と、
備える、電力需要予測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力需要予測装置であって、
前記類似度は、その値が大きい程、類似する度合いが高くなる特性を有し、
前記時間帯別評価値は、その値が小さい程、類似する度合いが高くなる特性を有し、
前記時間帯別評価値を、その値が大きい程、類似の度合いが高くなる特性を有する指標に変換する変換処理部を更に備え、
前記類似度算出部は、前記指標の夫々を、夫々に対応する時間帯について設定された前記時間帯別影響度により重み付けして得られる値を前記類似度として求める、
電力需要予測装置。
【請求項3】
プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置が、
電力需要の実績値である時系列データを記憶するステップ、
第1の前記時系列データと第2の前記時系列データとが類似する度合いを時間帯別に評価した値である時間帯別評価値を求めるステップ、
前記時間帯の夫々について設定された重みである時間帯別影響度を記憶するステップ、
前記時間帯別評価値の夫々を、夫々について設定された前記時間帯別影響度で重み付けして得られる値を、前記第1の時系列データと前記第2の時系列データの類似度として求めるステップ、
前記類似度が予め設定されている閾値を超えている前記第2の時系列データを、記憶している前記第1の時系列データに類似する前記時系列データとして選出するステップ、及び、
前記第1の時系列データ及び選出した前記時系列データのうちの少なくとも何れかを用いて電力需要を予測するステップ、
を更に実行する、
電力需要予測方法。
【請求項4】
請求項に記載の電力需要予測方法であって、
前記類似度は、その値が大きい程、類似する度合いが高くなる特性を有し、
前記時間帯別評価値は、その値が小さい程、類似する度合いが高くなる特性を有し、
前記情報処理装置が、
前記時間帯別評価値を、その値が大きい程、類似の度合いが高くなる特性を有する指標に変換するステップ、及び、
前記指標の夫々を、夫々に対応する時間帯について設定された前記時間帯別影響度により重み付けして得られる値を前記類似度として求めるステップ、
を更に実行する、
電力需要予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力需要予測装置、及び電力需要予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電力需要のピーク値又はピーク時間帯をより精度よく予測することを目的として構成された電力需要ピーク予測装置について記載されている。電力需要ピーク予測装置は、予測対象期間の特徴を示す特徴情報を取得し、予測対象期間の特徴情報と同一又は所定の基準において類似する特徴情報を含む一以上の過去データを抽出し、各過去データについて、過去期間における電気使用量のピークを示す電力需要ピーク値又は過去期間において電気使用量が所定の閾値以上となる電力需要ピーク時間帯を特定し、特定された各過去データの電力需要ピーク値又は電力需要ピーク時間帯に基づき、予測対象期間の電力需要ピーク値又は電力需要ピーク時間帯の予測値を算出する。
【0003】
特許文献2には、電力会社などで毎日の電力需要を予測する電力需要予測支援方法について記載されている。具体的には、過去の負荷データをデータベースに蓄積管理し、現時点での負荷データの入力を受け付け、検索対象期間と現時点以前の所定時間帯の指定とを受け付け、指定時間帯に入力された負荷データと検索対象期間における指定時間帯と同じ時間帯にある過去の負荷データとを比較して指定時間帯に入力された負荷データの変動に類似する過去の負荷データを複数抽出し、過去短時間分の負荷データと、複数の過去の所定時間分の負荷データのそれぞれの変動曲線を表示出力し、表示出力中の複数の過去の負荷変動曲線から特定の曲線を指定する旨の利用者入力を受け付け、当該指定の変動曲線と過去短時間の負荷の変動曲線以外を非表示にすることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、当日の需要曲線に最も近似する過去需要曲線を特定することにより電力需要量の変化を予測する方法について記載されている。具体的には、(a)現在時刻までの2時間における当日の電力需要量を5分間隔で求め、(b)電力需要データベースを参照し、過去の任意の時間帯における2時間分の電力需要量を5分間隔で求め、(c)当日の電力需要量と(b)で求めた過去の電力需要量との偏差を求め、(d)偏差の絶対値の和Sdを求め、(e)Sdが最小になる時間帯における需要曲線を、当日需要曲線に最も近似するものとして特定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−139283号公報
【特許文献2】特開2006−178893号公報
【特許文献3】特開2005−224002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
安定かつ経済的な電力需給運用を行うためには、電力需要の正確な予測に基づく需給計画の策定が必要である。また昨今の電力システム改革においては計画値同時同量が要請されており、より精度の高い需要予測を行うことが求められている。
【0007】
一方、再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電の大量導入による昼間需要の変化やヒートポンプ給湯器のような省エネ機器増加による深夜需要の変化等、電力需要カーブの変動要因は多様化しており、電力需要を正確に予測することが難しくなってきている。
【0008】
特許文献1乃至3に記載されているように、電力需要の予測に際しては、さまざまな予測手法に過去の時系列データが利用されている。しかし膨大な過去の時系列データの中から予測日の電力需要に近い時系列データを、例えば、人間系で探索しようとすれば、大変な時間と労力が必要になる。また予測日の電力需要に近い時系列データを例えば自動で探索しようとすれば、例えば、「特定の時間帯(早朝、昼間、夜間、ピーク時間帯等)において予測日の電力需要に近い時系列データを選択したい」といったユーザのニーズ(探索意図)に細かく対応することが難しくなる。
【0009】
本発明は、こうした背景に鑑みてなされたもので、多数の時系列データの中からユーザのニーズに合った時系列データを適切に選出し、電力需要予測の多様なニーズに細かく対応することが可能な、電力需要予測装置、及び電力需要予測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、電力需要予測装置であって、プロセッサ及び記憶装置と、電力需要の実績値である時系列データを記憶する時系列データ記憶部と、第1の前記時系列データと第2の前記時系列データとが類似する度合いを時間帯別に評価した値である時間帯別評価値を求める時間帯別評価値算出部と、前記時間帯の夫々について設定された重みである時間帯別影響度を記憶する時間帯別影響度記憶部と、前記時間帯別評価値の夫々を、夫々について設定された前記時間帯別影響度で重み付けして得られる値を、前記第1の時系列データと前記第2の時系列データの類似度として求める類似度算出部と、を備える。
【0011】
このように電力需要予測装置は、第1の時系列データと第2の時系列データとが類似する度合いを時間帯別に評価した時間帯別評価値を求めるとともに、求めた時間帯別評価値を時間帯別影響度で重み付けして類似度を求めるので、例えば、ある特定の時間帯(早朝、昼間、夜間、ピーク時間帯等)に類似度の高い時系列データを優先して選出したいといったユーザーニーズ(探索意図)に沿って時系列データを効率よく選出することが可能であり、電力需要予測の多様なニーズに細かく対応することができる。
【0012】
本発明の他の一つは、上記電力需要予測装置であって、前記類似度は、その値が大きい程、類似する度合いが高くなる特性を有し、前記時間帯別評価値は、その値が小さい程、類似する度合いが高くなる特性を有し、前記時間帯別評価値を、その値が大きい程、類似の度合いが高くなる特性を有する指標に変換する変換処理部を更に備え、前記類似度算出部は、前記指標の夫々を、夫々に対応する時間帯について設定された前記時間帯別影響度により重み付けして得られる値を前記類似度として求める。
【0013】
このように電力需要予測装置は、時間帯別評価値が、その値が小さい程、類似する度合いが高くなる特性を有している場合、時間帯別評価値を、その値が大きい程、類似の度合いが高くなる特性を有する指標に変換し、指標の夫々を、夫々に対応する時間帯について設定された時間帯別影響度により重み付けして得られる値を類似度として求めるので、その値が大きい程、類似する度合いが高くなる特性となるように類似度を求めることができる。
【0014】
本発明の他の一つは、上記電力需要予測装置であって、前記類似度が予め設定されている閾値を超えている前記第2の時系列データを、前記時系列データ記憶部が記憶している前記第1の時系列データに類似する前記時系列データとして選出する、時系列データ選出部と、前記第1の時系列データ及び前記時系列データ選出部が選出した前記時系列データのうちの少なくとも何れかを用いて電力需要を予測する、電力需要予測部と、を更に備える。
【0015】
本発明によれば、ユーザーニーズ(探索意図)に沿って選出された時系列データを用いて、電力需要予測の多様なニーズに細かく対応しつつ精度よく電力需要を予測することができ、ひいては経済的な系統運用の実現やインバランス(消費電力量と発電電力量との差分)の低減を図ることができる。
【0016】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、多数の時系列データの中からユーザのニーズに合った時系列データを適切に選出し、電力需要予測の多様なニーズに細かく対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電力需要予測装置10が備える主なハードウェアを示す図である。
図2】電力需要予測装置10が備える主な機能及び電力需要予測装置10が記憶する主な情報を示す図である。
図3】電力需要予測処理S300を説明するフローチャートである。
図4】第1の時系列データ及び第2の時系列データの例を示すグラフである。
図5】時間帯別平均値の指標への変換に用いるグラフ(変換式)の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1に一実施形態として示す電力需要予測装置10が備える主なハードウェアを、図2に電力需要予測装置10が備える主な機能及び電力需要予測装置10が記憶する主な情報を示している。電力需要予測装置10は、情報処理装置(パーソナルコンピュータ、ワークステーション、メインフレーム等)を用いて構成されている。電力需要予測装置10は、例えば、電力会社の中央給電指令所等に設置される。
【0021】
電力需要予測装置10は、電力需要の実績値である時系列データに基づき、例えば、時系列分析(Time Series Analysis)、回帰分析、ニューラルネットワークによる分析等を行うことにより電力需要を予測する。電力需要予測装置10は、蓄積している時系列データの中から電力需要の予測に用いる時系列データとして適切なものを選出し、選出した時系列データを用いて電力需要を予測する。
【0022】
上記選出に際し、電力需要予測装置10は、例えば、電力需要を予測しようとする日(以下、予測日と称する)と、カレンダ情報(曜日、祝祭日、季節(シーズン)等の情報)、気象情報(気温、湿度、風速、日射量等)、及び経済情報(景気動向等)等の条件が一致又は類似する過去の日(以下、過去日と称する。)を基準日とし、基準日の時系列データ(以下、第1の時系列データとも称する。)に類似する時系列データを選出し、第1の時系列データ及び選出した一つ以上の時系列データのうち少なくとも何れかを用いて予測日の電力需要を予測する。尚、基準日は、例えば、人間系により手動で設定する。
【0023】
電力需要予測装置10は、第1の時系列データに類似する時系列データの上記選出に際し、第1の時系列データと当該第1の時系列データと比較する(類否判断の対象とする)データ(以下、第2の時系列データとも称する。)とが類似する度合いを予め設定された時間帯別に評価した値である、時間帯別評価値を求める。尚、第2の時系列データは、電力需要予測装置10が、カレンダ情報、気象情報、及び経済情報等の条件の一致性又は類似性に基づき自動で設定してもよいし、人間系により手動で設定してもよい。
【0024】
電力需要予測装置10は、上記時間帯別評価値を上記時間帯別に設定された時間帯別影響度で重み付けして得られる値を、第1の時系列データと第2の時系列データの類似度として求める。そして電力需要予測装置10は、例えば、上記類似度が予め設定されている閾値を超えている第2の時系列データを、第1の時系列データに類似する時系列データとして選出する。尚、時間帯別影響度は、例えば、人間系により手動で設定する。
【0025】
このように、電力需要予測装置10は、第1の時系列データと第2の時系列データとが類似する度合いを時間帯別に評価した時間帯別評価値を求め、求めた時間帯別評価値を時間帯別影響度で重み付けして類似度を求め、上記類似度が予め設定されている閾値を超えている第2の時系列データを、第1の時系列データに類似する時系列データとして選出するので、例えば、「ある特定の時間帯(早朝、昼間、夜間、ピーク時間帯等)に類似度の高い時系列データを優先して選出したい」といったユーザのニーズ(探索意図)に沿って時系列データを選出することができ、選出した時系列データを用いて電力需要を予測することで、電力需要予測の多様なニーズに細かく対応することができる。
【0026】
図1に示すように、電力需要予測装置10は、プロセッサ11、記憶装置12、入力装置13、出力装置14、及び通信装置15を備える。プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)を用いて構成されている。記憶装置12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non Volatile RAM)、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等であり、プログラムやデータを記憶する。
【0027】
入力装置13は、情報の入力を行うユーザインタフェース(キーボード、マウス等)である。出力装置14は、各種の情報をユーザに提供するユーザインタフェースであり、例えば、液晶モニタ、印字装置等である。通信装置15は、NIC(Network Interface Card)等の通信インタフェースを用いて構成され、他の装置(例えば、監視制御システム、系統制御システム、配電自動化システム、各種データベースシステム、インターネット上のWebサーバ等)と通信する。
【0028】
図2に示すように、電力需要予測装置10は、時系列データ記憶部211、時間帯別評価値算出部212、時間帯別影響度記憶部213、変換処理部214、類似度算出部215、時系列データ選出部216、及び電力需要予測部217の各機能を備える。尚、電力需要予測装置10は、更にDBMS(DataBase Management System)の機能を備えていてもよい。これらの機能は、プロセッサ11が、記憶装置12に格納されているプログラムを実行することにより、もしくは電力需要予測装置10が備えるハードウェアにより実現される。
【0029】
同図に示すように、電力需要予測装置10は、時系列データ251、時間帯別影響度252、カレンダ情報271(曜日、祝祭日、季節(シーズン)等の情報)、気象情報272(少なくとも時系列データ251に対応する各日の気象情報(気温、湿度、風速、日射量等)を含む)、及び経済情報273(時系列データ251に対応する数年分の景気動向等)を記憶する。電力需要予測装置10は、カレンダ情報271、気象情報272、及び経済情報273を、例えば、インターネットを介して取得し、これらの情報を、例えば、データベースのテーブルとして管理する。
【0030】
上記機能のうち、時系列データ記憶部211は、中央給電指令所において動作する他のシステム等によって随時取得される、過去所定年数前から現在までの各日の電力需要(電力消費量)の実績値である時系列データ251(例えば、時間単位、分単位、秒単位等の所定の時間間隔で取得されたデータ)を記憶する。尚、各時系列データ251には夫々が取得された日時を示す情報が付帯する。
【0031】
時間帯別評価値算出部212は、基準日の時系列データである第1の時系列データと、当該第1の時系列データの比較対象とする時系列データである第2の時系列データとが類似する度合いを時間帯別に評価した値である時間帯別評価値を求める。尚、上記時間帯は、例えば、人間系によって予め電力需要予測装置10に設定される。
【0032】
時間帯別影響度記憶部213は、上記時間帯の夫々について設定された重みである時間帯別影響度252を記憶する。
【0033】
変換処理部214は、第1の時系列データと第2の時系列データの類似度が、その値が大きい程、類似する度合いが高くなる特性を有しており、また時間帯別評価値が、その値が小さい程、類似する度合いが高くなる特性を有している場合に、時間帯別評価値を、その値が大きい程、類似の度合いが高くなる特性を有する指標に変換する。変換処理部214による上記変換の詳細については後述する。
【0034】
類似度算出部215は、時間帯別評価値の夫々を、夫々について設定された時間帯別影響度で重み付けして得られる値を、第1の時系列データと第2の時系列データの類似度として求める。例えば、類似度算出部215は、時間帯別評価値の夫々を、夫々について設定された時間帯別影響度で重み付けして得られる値を合算した値を、第1の時系列データと第2の時系列データの類似度として求める。
【0035】
時系列データ選出部216は、類似度が予め設定されている閾値を超えている第2の時系列データを、第1の時系列データに類似する時系列データとして選出する。
【0036】
電力需要予測部217は、第1の時系列データ及び時系列データ選出部216が選出した第2の時系列データのうち少なくとも何れかを用いて、予測日の電力需要を予測する。例えば、電力需要予測部217は、第1の時系列データ及び時系列データ選出部216が選出した第2の時系列データの平均値を求めることにより、予測日の電力需要を予測する。また例えば、電力需要予測部217は、第1の時系列データ及び時系列データ選出部216が選出した第2の時系列データのうち少なくとも何れかに基づき、例えば、時系列分析、回帰分析、ニューラルネットワークによる分析等を行うことにより、予想日の電力需要を予測する。また電力需要予測部217は、上記予測に際し、例えば、電力需要に影響を与える因子(例えば、カレンダ情報271、気象情報272、経済情報273)と時系列データとの相関を表す関係式を導出し、導出した関係式を用いて予測日の電力需要を予測する。
【0037】
[処理例]
続いて、図3に示すフローチャートとともに、電力需要予測装置10が電力需要の予測に際して行う処理(以下、電力需要予測処理S300と称する。)について説明する。
【0038】
同図に示すように、電力需要予測装置10は、まず基準日の時系列データ(第1の時系列データ)を、記憶している時系列データ251から取得する(S311)。
【0039】
続いて、電力需要予測装置10は、まず記憶している時系列データ251の中から、第1の時系列データと異なる時系列データを第2の時系列データとして1つ取得する(S312)。
【0040】
続いて、電力需要予測装置10は、取得した第2の時系列データについて時間帯別評価値を求める(S313)。
【0041】
続いて、電力需要予測装置10は、求めた時間帯別評価値を前述した指標に変換する(S314)。
【0042】
続いて、電力需要予測装置10は、S314で得られた指標を時間帯別影響度で重み付けして得られる値を、第1の時系列データと第2の時系列データの類似度として求める(S315)。例えば、電力需要予測装置10は、変換した指標を、夫々について設定された時間帯別影響度で重み付けして得られる値を合算した値を上記類似度として求める。
【0043】
続いて、電力需要予測装置10は、S315で求めた類似度が、予め設定されている閾値を超えているか否かを判定する(S316)。上記類似度が閾値を超えている場合(S316:YES)、処理はS317に進む。上記類似度が閾値を超えていない場合(S316:NO)、処理はS318に進む。
【0044】
S317では、電力需要予測装置10は、取得中の第2の時系列データを電力需要の予測に用いる時系列データとして選出する。例えば、電力需要予測装置10は、選出した時系列データに当該時系列データを選出した旨を示すフラグを設定する。
【0045】
S318では、電力需要予測装置10は、S312において未取得の時系列データがあるか否かを判定する。未取得の時系列データがある場合(S318:YES)、処理はS312に戻る。未取得の時系列データがない場合(S318:NO)、処理はS319に進む。
【0046】
S319では、電力需要予測装置10は、第1の時系列データ及び時系列データ選出部216が選出した第2の時系列データのうち少なくとも何れかの時系列データを用いて電力需要を予測する。
【0047】
[具体例]
図4に、第1の時系列データ及び第2の時系列データの例を示す。同図に示すグラフの横軸は時間であり、縦軸は電力需要(任意単位)である。同図において、時系列データA(a1,a2,a3,・・・)は第1の時系列データであり、時系列データB(b1,b2,b3,・・・)、時系列データC(c1,c2,c3,・・・)、及び時系列データD(d1,d2,d3,・・・)は、いずれも第2の時系列データである。
【0048】
同図に示すように、この例では、4つの時間帯(第1時間帯(1時〜7時)、第2時間帯(7時〜12時)、第3時間帯(12時〜18時)、第4時間帯(18時〜24時)を設定している。
【0049】
第1の時系列データ及び第2の時系列データが図4に示すデータで構成される場合、図3の電力需要予測処理S300は以下のようにして行われる。
【0050】
例えば図3のS313において、電力需要予測装置10は、各時間帯について、第1の時系列データと第2の時系列データとの距離の二乗和を各時間帯のデータ数で除した値(距離の二乗和平均値)を、各時間帯における時間帯別評価値として求める。即ち、時系列データB〜Dの時間帯別評価値を夫々、(時間帯別評価値b)、(時間帯別評価値c)、(時間帯別評価値d)とすれば、これらは次のようにして求められる。
【0051】
図3のS314において、電力需要予測装置10は、例えば、図5に示すグラフを用いて時間帯別評価値を指標に変換する。尚、上記変換に用いるグラフは、時間帯別評価値を、その値が大きい程、類似の度合いが高くなる特性を有する指標に変換するものであればよく、例えば、「(時間帯別評価値d)>(時間帯別評価値c)>(時間帯別評価値b)」の関係である場合、上記変換に用いるグラフは、例えば、最大値が1となるようにした次のような直線でもよい。
指標=−1.0×時間帯別評価値/(時間帯別評価値d)+1
【0052】
図3のS315において、電力需要予測装置10は、例えば、次の式から類似度を求める。
類似度(一般式)=第1時間帯の指標×第1時間帯の時間帯別影響度数
+第2時間帯の指標×第2時間帯の時間帯別影響度数
+第3時間帯の指標×第3時間帯の時間帯別影響度数
+第4時間帯の指標×第4時間帯の時間帯別影響度数
【0053】
例えば、時間帯別影響度数が次のように設定されており、
第1時間帯の時間帯別影響度数=0.5
第2時間帯の時間帯別影響度数=0.7
第3時間帯の時間帯別影響度数=1.0
第4時間帯の時間帯別影響度数=0.3
【0054】
第2の時系列データの夫々の指標が次のように求められている場合、
時系列データB:第1時間帯の指標=0.5
第2時間帯の指標=0.7
第3時間帯の指標=0.5
第4時間帯の指標=0.0
時系列データC:第1時間帯の指標=0.3
第2時間帯の指標=0.6
第3時間帯の指標=0.7
第4時間帯の指標=0.5
時系列データD:第1時間帯の指標=0.0
第2時間帯の指標=0.0
第3時間帯の指標=0.0
第4時間帯の指標=0.6
【0055】
類似度は、次のようにして求められる。
時系列データBの類似度=0.5×0.5
+0.7×0.7
+0.5×1.0
+0.0×0.3=1.24
時系列データCの類似度=0.3×0.5
+0.6×0.7
+0.7×1.0
+0.5×0.3=1.42
時系列データDの類似度=0.0×0.5
+0.0×0.7
+0.0×1.0
+0.6×0.3=0.18
【0056】
尚、この例では、「時系列データCの類似度>時系列データBの類似度>時系列データDの類似度」の関係であるので、例えば、図3のS316の閾値が1.0に設定されているとすれば、図3のS317において、電力需要予測装置10は、電力需要の予測に用いる時系列データとして、時系列データC及び時系列データBを選出する。
【0057】
以上に説明したように、本実施形態の電力需要予測装置10は、第1の時系列データと第2の時系列データとが類似する度合いを時間帯別に評価した時間帯別評価値を求めるとともに、求めた時間帯別評価値を時間帯別影響度で重み付けして類似度を求めるので、例えば、ある特定の時間帯(早朝、昼間、夜間、ピーク時間帯等)に類似度の高い時系列データを優先して選出したいといったユーザのニーズ(探索意図)に沿って時系列データを効率よく選出することができ、電力需要予測の多様なニーズに細かく対応することができる。
【0058】
また電力需要予測装置10は、時間帯別評価値が、その値が小さい程、類似する度合いが高くなる特性を有している場合、時間帯別評価値を、その値が大きい程、類似の度合いが高くなる特性を有する指標に変換し、指標の夫々を夫々に対応する時間帯について設定された時間帯別影響度により重み付けして得られる値を類似度として求めるので、その値が大きい程、類似する度合いが高くなる特性となるように類似度を求めることができる。
【0059】
また電力需要予測装置10は、ユーザーニーズ(探索意図)に沿って選出された時系列データを用いて電力需要を予測するので、電力需要予測の多様なニーズに細かく対応しつつ精度よく電力需要を予測することができ、ひいては経済的な系統運用の実現やインバランス(消費電力量と発電電力量との差分)の低減を図ることができる。
【0060】
ところで、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0061】
例えば、予測日の開始時は必ずしも午前零時でなくてもよく、例えば、予測日の開始時を前日の午後零時としてもよい。また予測日の終了時は必ずしも午前零時でなくてもよく、例えば、予測日の終了時を翌日の午後零時としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 電力需要予測装置、211 時系列データ記憶部、212 時間帯別評価値算出部、213 時間帯別影響度記憶部、214 変換処理部、215 類似度算出部、216 時系列データ選出部、217 電力需要予測部、251 時系列データ、252 時間帯別影響度、S300 電力需要予測処理
図1
図2
図3
図4
図5