特許第6679985号(P6679985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6679985
(24)【登録日】2020年3月24日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】粘着剤およびそれを用いた粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20200406BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20200406BHJP
   C09J 133/16 20060101ALI20200406BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20200406BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   C09J133/04
   C09J133/14
   C09J133/16
   C09J7/38
   G02B5/30
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-35557(P2016-35557)
(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公開番号】特開2017-149890(P2017-149890A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 克哲
(72)【発明者】
【氏名】田村 純子
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝行
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−291969(JP,A)
【文献】 特開2014−037502(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/190441(WO,A1)
【文献】 特開2010−163518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系共重合体(A)と、アクリル系共重合体(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着剤であって、
前記アクリル系共重合体(A)が、アクリル系共重合体(A)100質量部中、水酸基含有モノマー(a−1)単位0.1〜5質量部と、ホモポリマーのガラス転移温度が0〜100℃である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a−2)単位10〜50質量部と、前記(a−1)および(a−2)と共重合可能なその他モノマー(a−3)単位(但し、(a−3)は、前記(a−1)および(a−2)を除く)45〜89.9質量部とを含有する重量平均分子量が80万〜200万のアクリル系共重合体であり、
前記その他モノマー(a−3)は、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーであり、
前記アクリル系共重合体(B)が、アクリル系共重合体(B)100質量部中、フッ素含有モノマー(b−1)単位またはケイ素含有モノマー(b−2)単位0.01〜5質量部と、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(b−3)95〜99.99質量部とを含有する重量平均分子量が5000〜20万のアクリル系共重合体であり、
前記アクリル系重合体(A)と前記アクリル系重合体(B)との割合が、質量比で(A)/(B)=95/5〜50/50であることを特徴とする粘着剤。
【請求項2】
ケイ素含有モノマー(b−2)が、下記式[1]で示す構造を有するケイ素含有モノマーであることを特徴とする請求項1記載の粘着剤。
【化1】

(式中、nは繰り返し単位を表す整数であり、1≦n≦150である。)
【請求項3】
前記架橋剤(C)が、イソシアネート系化合物であることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤。
【請求項4】
基材と、請求項1〜いずれか記載の粘着剤から形成された粘着剤層とを備えてなる粘着シート。
【請求項5】
偏光板と、請求項1〜いずれか記載の粘着剤から形成された粘着剤層とを備えてなる偏光板粘着シート。
【請求項6】
ガラス板と、請求項1〜いずれか記載の粘着剤から形成された粘着剤層と、光学部材とを備えてなる液晶セル部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤、粘着シート、偏光板粘着シートおよび液晶セル部材に関する。より詳しくは、プラスチックやガラス等の基材に好適に使用できる粘着剤、粘着シート、偏光板粘着シートおよび液晶セル部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子計算機、電子時計、携帯電話、テレビジョン等の家庭用・業務用電化製品など様々な機器に使用される液晶ディスプレイ等の表示装置は、大型化が進んでおり、特に液晶テレビやプラズマテレビ等は大型化が顕著である。また、近年ではスマートフォンやタブレットをはじめとするタッチパネル方式の液晶ディスプレイが急速に普及しており、今後も大きな市場拡大が期待されている。一方で、液晶ディスプレイは、カーナビゲーションなど車載機器等にも使用されており、高温高湿雰囲気などの過酷な車内環境下で使用できる耐久性が必要とされている。そして、液晶ディスプレイには、様々な光学的機能を有する偏光板や位相差板等が用いられており、これらは粘着剤を介してガラスや透明なプラスチックを使用した液晶セル等の被着体に貼付される。
【0003】
前記偏光板は、一般にポリビニルアルコールフィルムがトリアセチルセルロース系フィルムやシクロオレフィン系フィルムにより、挟まれた構成の積層体である。そして、これらのフィルムは、それぞれ機械特性が異なるため加熱時の寸法変化率が異なる、そのため高温雰囲気下に置かれた場合、前記積層体に反りが生じることが多い。
【0004】
ここで例えば、偏光板/粘着剤層/ガラス(ガラスは液晶セルの表面部材)の液晶セル用部材を高温雰囲気に放置すると、偏光板の構成部材間の寸法変化率に由来する反りが発生したり、粘着剤層とガラスとの貼着界面に気泡(発泡)が発生したり、偏光板がガラスから浮き上がり剥がれるといった問題が発生する場合がある。また、反りに起因して液晶セル用部材の応力分布が不均一となり、応力が液晶セル用部材の周辺端部へ集中する結果、液晶セル用部材の四隅や周辺端部から光が漏れる、いわゆる「光漏れ現象」という問題が生じる場合がある。前記の問題は、高温高湿雰囲気でも同様に発生する。
【0005】
他方、液晶ディスプレイ等の製造工程では、偏光板を液晶セルなどの光学部品に貼合せるときに、貼合せ位置にずれが生じた場合など、貼合せてから一定の時間が経過した後に偏光板を剥離し、高価な液晶セルを再利用することが行われている。そのため、粘着剤には貼付から一定時間が経過した後に偏光板を液晶セルから再剥離できる特性(リワーク性)が求められている。
【0006】
これらの問題を解決すべく、特許文献1では、再剥離性を付与するために、重量平均分子量50万以上の高分子量アクリル系重合体に対し、酸価が高く、重量平均分子量0.2〜10万の低分子量アクリル系重合体をブレンドする技術が開示されている。しかし、特許文献2記載の粘着剤は、再剥離性はあるものの、光漏れ性および長期における耐久性が劣るという問題があった。
【0007】
また、特許文献2では、ヒドロキシ基およびアルキレンオキシド基含有アクリル系共重合体と、多官能性イソシアネート系硬化剤によって、硬化状態で相互浸透ネットワーク構造を構築することで高温高湿環境下における浮き剥がれを抑制する技術が開示されている。しかし、特許文献5記載の粘着剤は、長期にわたり高温高湿環境下に放置された際、アルキレンオキシド基の分解が生じ、浮き、剥がれが生じるという問題があった。
【0008】
一方で、特許文献3では、ガラス転移温度が−55℃以上0℃未満のアクリル系共重合体と、ガラス転移温度が0℃以上180℃以下のアクリル系共重合体とを含む、偏光解消を起こし難い水分散型粘着剤が開示されている。しかし、特許文献4記載の粘着剤は、粘着剤に使用される種々の添加剤によって、ガラス等の被着体を汚染するという問題があった。
【0009】
さらには、特許文献4では、ポリエーテル変性シリコーンとシランカップリング剤を併用することで、粘着剤の耐久性と再剥離性を両立する技術が開示されている。しかし、特許文献6記載の粘着剤は、粘着シートに加工し基材に貼付した直後は透明性が高く、再剥離も可能であるがポリエーテル変性シリコーンとアクリル系重合体の相溶性が悪いため貼り付け後長期間が経過すると粘着剤層内で相分離を起こし、透明性および再剥離性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−100710号公報
【特許文献2】特開2014−055299号公報
【特許文献3】特開2014−1365号公報
【特許文献4】特開2010−159346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、上記諸問題を解決すべく、粘着シートに用いたときに、再剥離性に優れ、高温環境下や高温高湿環境下に曝された後、被着体からの浮きや剥がれが発生しにくい粘着剤およびそれを用いた粘着シートを提供することを目的とする。さらに偏光板固定用に用いたとき、光漏れが極めて少なく、高温高湿環境下に曝された場合においても高い透明性を維持できる良好な粘着力を有し、また、ガラス等の被着体を汚染することが無い再剥離性の良好な粘着剤およびそれを用いた粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、アクリル系共重合体(A)と、アクリル系共重合体(B)と、架橋剤(C)とを含有する粘着剤であって、前記アクリル系共重合体(A)が、アクリル系共重合体(A)100質量部中、水酸基含有モノマー(a−1)単位0.1〜5質量部と、ホモポリマーのガラス転移温度が0〜100℃である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a−2)単位10〜50質量部と、前記(a−1)および(a−2)と共重合可能なその他モノマー(a−3)単位(但し、(a−3)は、前記(a−1)および(a−2)を除く)45〜89.9質量部とを含有する重量平均分子量が80万〜200万のアクリル系共重合体であり、前記アクリル系共重合体(B)が、アクリル系共重合体(B)100質量部中、フッ素含有モノマー(b−1)単位またはケイ素含有モノマー(b−2)単位0.01〜5質量部と、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(b−3)95〜99.99質量部とを含有する重量平均分子量が5000〜20万のアクリル系共重合体であることを特徴とする粘着剤に関する。
【0013】
また、本発明は、ケイ素含有モノマー(b−2)が、下記式[1]で示す構造を有するケイ素含有モノマーである上記粘着剤に関する。
【0014】
【化1】
(式中、nは繰り返し単位を表す整数であり、1≦n≦150である。)
【0015】
また、本発明は、前記アクリル系重合体(A)と前記アクリル系重合体(B)との割合が、質量比で(A)/(B)=95/5〜50/50である上記粘着剤に関する。
【0016】
また、本発明は、前記架橋剤(C)が、イソシアネート系化合物である上記粘着剤に関する。
【0017】
また、本発明は、基材と、上記粘着剤から形成された粘着剤層とを備えてなる粘着シートに関する。
【0018】
また、本発明は、偏光板と、上記粘着剤から形成された粘着剤層とを備えてなる偏光板粘着シートに関する。
【0019】
また、本発明は、ガラス板と、上記粘着剤から形成された粘着剤層と、光学部材とを備えてなる液晶セル部材に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、再剥離性に優れ、高温環境下や高温高湿環境下に曝された後に、例えばガラスやプラスチックス等に被着体から浮きや剥がれが生じにくく、光漏れが生じにくい粘着シートを作成できる粘着剤を提供できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの総称を意味する。
【0022】
<粘着剤>
本発明の粘着剤は、上記アクリル系共重合体(A)、アクリル系共重合体(B)および架橋剤(C)を含むことを特徴とする。
【0023】
<アクリル系共重合体(A)>
アクリル系共重合体(A)は、共重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマー(a−1)単位、ホモポリマーのガラス転移温度が0〜100℃である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(a−2)および前記(a−1)および(a−2)と共重合可能なその他モノマー(a−3)を含む共重合体であり、これらモノマーを共重合することにより得ることができる。
【0024】
アクリル系共重合体(A)は、水酸基含有モノマー(a−1)を含有する。水酸基含有モノマー(a−1)とは、水酸基を有するモノマーを意味する(以下、モノマー(a−1)と略記することがある)。モノマー(a−1)は、架橋剤との架橋反応によりポリマーネットワークを形成するとともに、被着体表面と水素結合を形成することで、浮きおよび剥がれの抑制、光漏れの抑制に寄与する。
【0025】
モノマー(a−1)としては、具体的には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステルなどのグリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。また、これらは単独または2種以上を併用できる。
【0026】
これらモノマー(a−1)のうち、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチルが粘着剤の凝集力の観点より好ましい。
【0027】
モノマー(a−1)は、アクリル系共重合体(A)を構成するモノマー単位として、0.1〜5質量部含まれ、0.1〜2質量部含まれることが好ましい。含有量が0.1質量部以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が5質量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0028】
アクリル系共重合体(A)は、ホモポリマーのガラス転移温度が0〜100℃である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(a−2)を含有する(以下、モノマー(a−2)と略記することがある)。モノマー(a−2)を使用することで、粘着剤の凝集力が向上し強靭な粘着剤層が得られ、高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合における、浮きおよび剥がれを抑制することができる。
【0029】
モノマー(a−2)としては、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニルなどが挙げられる。
【0030】
これらモノマー(a−2)のうち、アクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルが、粘着剤の柔軟性の観点より好ましい。
【0031】
モノマー(a−2)は、アクリル系共重合体(A)を構成するモノマー単位として、10〜50質量部含まれ、15〜40質量部含まれることが好ましい。含有量が15質量部以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が45質量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0032】
本明細書におけるアクリル系共重合体(A)は、前記(a−1)および(a−2)と共重合可能なその他モノマー(a−3)(但し、モノマー(a−3)は、前記(a−1)および(a−2)を除く)を含有する(以下、モノマー(a−3)と略記することがある)。モノマー(a−3)は、粘着剤の柔軟性が向上させ、浮きおよび剥がれの抑制、光漏れの抑制に寄与する。
【0033】
モノマー(a−3)としては、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、その他ビニル系モノマー等が挙げられる。
【0034】
ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとは、後述するモノマー(b−3)と同義であり、具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。これらの中でもアクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが良好な粘着性能を得やすいという点から好ましい。これらは単独または2種以上を併用できる。
【0035】
モノマー(a−3)は、アクリル系共重合体(A)を構成するモノマー単位として、45〜89.9質量%含まれ、58〜84.9%質量%含まれることが好ましい。含有量が45質量%以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が89.9質量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0036】
ホモポリマーの「ガラス転移温度(Tg)」とは、加熱融解したポリマーをある条件のもと冷却していくと過冷却液体を経てガラス状態となるが、この状態が変化する際の温度を意味する。具体的に本明細書において、Tgは、JIS K7121により測定される値である。表1に測定したホモポリマーのガラス転移温度を示す。
【0037】
前記その他ビニル系モノマーは、アミド結合を含有するモノマー、エポキシ基を含有するモノマー、アミノ基を含有するモノマー、アルキレンオキサイド単位を有するモノマー、酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられるが、共重合可能であれば良く、特にこれらに限定されるものではない。
【0038】
アミド結合を含有するモノマーは、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、などの(メタ)アクリルアミド系の化合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、などの複素環を含有した化合物、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミドなどが挙げられる。
【0039】
エポキシ基を含有するモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルなどが挙げられる。
【0040】
アミノ基を含有するモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルなどが挙げられる。
【0041】
アルキレンオキサイド単位を有するモノマーは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の単位を有することが好ましい。具体的には、例えば、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0042】
その他ビニル系モノマーは、これらのモノマーを単独または2種以上を併用できる。
【0043】
その他ビニル系モノマーは、アクリル系共重合体中、共重合体を構成するモノマー単位として、0.1〜10質量%含むことが好ましく、0.2〜5%質量%がより好ましい。含有量が0.1質量%以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が10質量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0044】
アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、80万〜200万であり、100万〜180万であることが好ましい。80万〜200万の範囲にあることで凝集力などがより向上するため、浮きおよび剥がれがより抑制でき、応力緩和性もより向上する。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算値である。GPCの測定法の詳細は、実施例に記載する。
【0045】
<アクリル系共重合体(B)>
アクリル系共重合体(B)は、共重合体を構成するモノマー単位として、フッ素含有モノマー(b−1)単位またはケイ素含有モノマー(b−2)単位のいずれかのモノマー単位およびホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(b−3)を含む共重合体であり、これらモノマーを共重合することにより得ることができる。
【0046】
フッ素含有モノマー(b−1)とは、フッ素を有するモノマーを意味する(以下、モノマー(b−1)と略記することがある)。モノマー(b−1)は、ガラス等の極性被着体表面への粘着剤のぬれ進行を抑制し、リワーク性の付与に寄与する。また、他のモノマーと共重合することで、アクリル系共重合体(B)中に組み込まれるため、被着体の汚染を抑制することができる。
【0047】
モノマー(b−1)としては、(メタ)アクリル酸トリフルオロメタン、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチルなどが挙げられる。また、これらは単独または2種以上を併用できる。
【0048】
これらモノマー(b−1)のうち、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピルが粘着剤のリワーク性付与の観点より好ましい。
【0049】
ケイ素含有モノマー(b−2)とは、ケイ素を有するモノマーを意味する(以下、モノマー(b−2)と略記することがある)。モノマー(b−2)は、ガラス等の極性被着体表面への粘着剤のぬれ進行を制御し、リワーク性の付与に寄与する。また、他のモノマーと共重合することで、アクリル系共重合体(B)中に組み込まれるため、被着体の汚染を抑制することができる。
【0050】
モノマー(b−2)としては、式[1]で示す構造を有するケイ素含有モノマーであることが好ましく、下記式[2]で示されるモノマーであることがより好ましい。
【化2】
【0051】
上記式においてR1は、水素またはメチル基を表す。この内、メチル基が好ましい。R2は、炭素数1〜6のアルキレン基を表す。この内、プロピレン基が好ましい。R3は、炭素数1〜6のアルキル基を表す。この内、ブチル基が好ましい。nは、繰り返し単位を表す整数であり、1≦n≦150の範囲内の整数であるが、5≦n≦120の範囲内の整数が好ましく、10≦n≦80の範囲内の整数がより好ましい。
【0052】
これらモノマー(b−2)のうち、サイラプレーンFM−0711(JNC社製:上記式[2]において、R1がメチル基、R2がプロピレン基、R3がブチル基、n=11である。)、サイラプレーンFM−0721(JNC社製:上記式[2]において、R1がメチル基、R2がプロピレン基、R3がブチル基、n=65である。)が好ましい。
【0053】
モノマー(b−1)またはモノマー(b−2)は、アクリル系共重合体(B)を構成するモノマー単位として、0.01〜5質量部含まれ、0.1〜3質量部含まれることが好ましい。含有量が0.01質量部以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が5質量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0054】
アクリル系共重合体(B)は、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(b−3)(以下、モノマー(b−3)と略記することがある)を含有する。モノマー(b−3)は、粘着剤の柔軟性が向上させ、浮きおよび剥がれの抑制、光漏れの抑制に寄与する。
【0055】
モノマー(b−3)としては、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが挙げられる。
【0056】
ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。これらの中でもアクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが良好な粘着性能を得やすいという点から好ましい。これらは単独または2種以上を併用できる。
【0057】
ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、アクリル系共重合体(B)を構成するモノマー単位として、95〜99.99質量%含まれる。含有量が95質量%以上になることで凝集力がより向上する。また、含有量が99.99質量%以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0058】
アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量は、5000〜20万であり、1万〜10万であることが好ましい。5000〜20万の範囲にあることで凝集力などがより向上するため、浮きおよび剥がれがより抑制でき、応力緩和性もより向上する。
【0059】
本発明の粘着剤は、高分子量成分であるアクリル系共重合体(A)と低分子量成分であるアクリル系共重合体(B)とを含有することで、アクリル系共重合体(A)の凝集力に加えて、アクリル系共重合体(B)の存在により応力緩和性を併せ持った粘着層を形成することが可能となる。さらには、アクリル系共重合体(A)は水酸基含有モノマー(a−1)単位を含有し、後述する架橋剤(C)と架橋反応することで、優れた耐久性を発現する。また、アクリル系共重合体(B)はフッ素含有モノマー(b−1)単位またはケイ素含有モノマー(b−2)単位を含有するため、優れた再剥離性を発現する。
【0060】
本発明の粘着剤においては、前記アクリル系重合体(A)とアクリル系重合体(B)との割合が、質量比で(A)/(B)=95/5〜50/50であることが好ましく、(A)/(B)=90/10〜80/20であることがより好ましい。アクリル系重合体(B)が含まれないと、偏光板の収縮により生じる応力集中を緩和できなくなり、光漏れ現象が生じる。一方、アクリル系重合体(B)しか含まれないと、粘着層の凝集力が不足して発泡、浮き・剥がれが生じやすい。(A)/(B)=95/5〜50/50の割合でアクリル系重合体(A)とアクリル系重合体(B)が含まれていることにより、過酷な条件下に置かれた後でもリワーク性が良好な粘着層を得ることができる。
【0061】
本発明の粘着剤は、種々の方法で得ることができる。たとえば、アクリル系重合体(A)とアクリル系重合体(B)とをそれぞれ別個に得ておき、両者を混合することよって目的の共重合体混合物を得ることが可能である。
【0062】
アクリル系共重合体(A)および(B)は、モノマー混合物を重合することで得ることができる。重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合など公知の重合方法が可能であるが、溶液重合が好ましい。溶液重合の際に使用される溶媒は、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが好ましい。重合温度は、60〜120℃が好ましく、重合時間は5〜12時間が好ましい。
【0063】
重合の際に使用される重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、重合温度でラジカルを発生できる化合物であれば特に制限はなく、過酸化物およびアゾ化合物等の公知の化合物を使用できる。
過酸化物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド類;
t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル類;
シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレート、などのパーオキシケタール類;
クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルシクロヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;
ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;
ビス(t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類などの有機過酸化物、又はこれらの混合物があげられる。
【0064】
アゾ化合物としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの2,2’−アゾビスブチロニトリル類;
2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などの2,2’−アゾビスバレロニトリル類;
2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’−アゾビスプロピオニトリル類;
1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などの1,1’−アゾビス−1−アルカンニトリル類などが使用できる。
【0065】
重合開始剤は、単独または2種以上を併用できる。重合開始剤は、前記モノマー混合物100質量部に対して、0.01〜10質量部を使用することが好ましく、0.1〜2質量部がより好ましい。
【0066】
<架橋剤(C)>
次に、架橋剤(C)について説明する。架橋剤は、アクリル系重合体と架橋反応し、樹脂ネットワークを形成することで、浮きおよび剥がれの抑制、光漏れの抑制、ならびに高温高湿環境下に曝された場合においても高い透明性を維持できる効果が得られる。
【0067】
架橋剤(C)としては、イソシアネート系化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、酸無水物基含有化合物、カルボジイミド化合物、N−メチロール基含有化合物および、金属キレート化合物等が挙げられる。
【0068】
上記イソシアネート系化合物は、具体的には、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートモノマー、具体的には芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、およびビュレット体、ヌレート体、及びアダクト体が好ましい。
【0069】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0070】
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0071】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0072】
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0073】
ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物をいう。具体的には、例えばヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体などが挙げられる。
【0074】
ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体をいい、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体イソホロンジイソシアネートの3量体トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
【0075】
アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物をいい、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物(トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6−ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物などが挙げられる。
【0076】
2官能以上の低分子活性水素含有化合物は、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(エチレンオキサイドの付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(プロピレンオキサイドの付加モル数10以下)、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の脂肪族あるいは脂環族ジオール類;
1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−メチレンジフェノール、4,4’−(2−ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、o−,m−,及びp−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−イソプロピリデンフェノール、あるいはビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させてなるビスフェノール類等の芳香族ジオール類;
1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールブタン、1,1,1−トリメチロールペンタン、1,1,1−トリメチロールヘキサン、1,1,1−トリメチロールヘプタン、1,1,1−トリメチロールオクタン、1,1,1−トリメチロールノナン、1,1,1−トリメチロールデカン、1,1,1−トリメチロールウンデカン、1,1,1−トリメチロールドデカン、1,1,1−トリメチロールトリデカン、1,1,1−トリメチロールテトラデカン、1,1,1−トリメチロールペンタデカン、1,1,1−トリメチロールヘキサデカン、1,1,1−トリメチロールヘプタデカン、1,1,1−トリメチロールオクタデカン、1,1,1−トリメチロールナノデカン、1,1,1−トリメチロール−sec−ブタン、1,1,1−トリメチロール−tert−ペンタン、1,1,1−トリメチロール−tert−ノナン、1,1,1−トリメチロール−tert−トリデカン、1,1,1−トリメチロール−tert−ヘプタデカン、1,1,1−トリメチロール−2−メチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−3−メチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−2−エチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロール−3−エチル−ヘキサン、1,1,1−トリメチロールイソヘプタデカンなどのトリメチロール分岐アルカン類、トリメチロールブテン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールペンテン、トリメチロールヘキセン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールオクテン、トリメチロールデセン、トリメチロールドデセン、トリメチロールトリデセン、トリメチロールペンタデセン、トリメチロールヘキサデセン、トリメトロールヘプタデセン、トリメチロールオクタデセン、1,2,6−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、グリセリン等の3官能ポリオール類;
ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール等の4官能以上のポリオール類;
エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンチレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ヘプチレンジアミン、オクチレンジアミン、ノニレンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン等の脂肪族ポリアミン類;
フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ポリアミン類;
エチレンジチオール、プロピレンジチオール、ブチレンジチオール、ペンチレンジチオール、ヘキシレンジチオール、ヘプチレンジチオール、オクチレンジチオール、ノニレンジチオール、ジメルカプトジシクロヘキシルメタン、3−メルカプトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルチオール、1,3−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)等のポリチオール類を挙げることができる。これら多官能低分子活性水素含有化合物は、単独または2種以上を併用できる。
【0077】
イソシアネート系化合物は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましく、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体がより好ましい。具体的にはヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が好ましく、更にはトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体等の芳香脂肪族系ポリイソシアネート化合物が好ましい。これらのポリイソシアネート化合物は、単独または2種以上を併用できる。
【0078】
エポキシ化合物は、例えばビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0079】
アジリジン化合物は、例えばN,N’−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0080】
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが挙げられる。このような高分子量ポリカルボジイミドとしては、日清紡績社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01、03、05、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0081】
酸無水物基含有化合物は、カルボン酸無水物基を2つ以上有する化合物であり特に限定されるものではないが、テトラカルボン酸二無水物、ヘキサカルボン酸三無水物、ヘキサカルボン酸二無水物、無水マレイン酸共重合樹脂などが好ましい。なお、反応中に脱水反応を経由して無水物と成りうるポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハーフエステルなどは、本発明の「酸無水物基含有化合物」に含まれる。
【0082】
テトラカルボン酸二無水物は、例えば無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0083】
金属キレート化合物は、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物などが挙げられる。具体的には、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
【0084】
架橋剤(C)は、単独または2種以上を併用できる。これら架橋剤(C)の内、基材密着性と再剥離性と両立する観点より、ポリイソシアネート系化合物が好ましく、ポリイソシアネート系化合物がより好ましい。
【0085】
架橋剤は、アクリル系共重合体100質量部に対して、0.05質量部〜20質量部含有することが好ましく、0.1質量部〜15質量部以下含有することがより好ましい。含有量が0.05質量部以上になることで凝集力がより向上する。含有量が20質量部以下になることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなる。
【0086】
本発明の粘着剤は、シランカップリング剤を含んでもよい。シランカップリング剤を用いることで高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合における、浮きおよび剥がれを更に抑制することができる。
【0087】
前記シランカップリング剤は、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;
3−クロロプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、分子内にアルコキシシリル基を有するシリコーンレジンなどが挙げられる。
【0088】
上記シランカップリング剤の内、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物が好ましく、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランがより好ましい。
【0089】
前記シランカップリング剤は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、0.01〜2質量部を使用することが好ましく、0.05〜1質量部の範囲がより好ましい。
【0090】
本発明の粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、任意成分として各種樹脂、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤及び帯電防止剤等を配合しても良い。
【0091】
本発明の粘着剤は、光学部材用粘着剤として好適である他、各種プラスチックシート、一般ラベル・シール、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、粘着性付与剤、粘着剤、積層構造体用粘着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート粘着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、又、各種樹脂添加剤およびその原料等としても非常に有用に使用できる。
【0092】
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、基材と、本発明の粘着剤から形成した粘着剤層を備えている。前記粘着シートは、例えば、基材に粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成することで得られる。また、剥離性シートに粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、基材を貼り合わせることで得られる。なお粘着剤層は基材の少なくとも一方の面に設けられていれば良い。また、本発明でシート、フィルムおよびテープは同義語である。また、粘着剤層の基材と接していない面に剥離性シートを貼り合せることはいうまでも無い。
【0093】
粘着剤を塗工するときに、適当な液状媒体、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、その他炭化水素系溶剤等の有機溶剤を添加して、粘度を調整することができる。また粘着剤を加熱して粘度を低下させることもできる。ただし、水やアルコール等はアクリル系共重合体(B)とポリイソシアネート化合物との架橋反応を阻害するため、使用を避けることが好ましい。
【0094】
基材は、例えばセロハン、プラスチック、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、木材等が挙げられる。基材は板状でもフィルム状でも良い。また基材は、単独または、複数の基材を積層した構成も好ましい。
【0095】
プラスチックは、例えば、ポリビニルアルコールやトリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、ポリアリレート系樹脂(PAR:ビスフェノールAとフタル酸の共重合樹脂です)、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂(エポキシ基含有樹脂とポリアミン又は無水カルボン酸を反応させた樹脂です)などが挙げられる。
【0096】
本発明において粘着剤は、公知の方法で塗工できる。例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件は、通常60〜160℃程度の熱風加熱でよい。
【0097】
粘着剤層の厚さは、0.1〜300μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。0.1μmに満たない場合、十分な粘着力が得られないことがあり、300μmを超えても粘着力等の性能はそれ以上向上しない場合が多い。
【0098】
本発明の粘着シートは、光学部材の貼合わせに好適に用いることができる。すなわち基材に光学部材を使用することが好ましい。光学部材は、具体的には、偏光板、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム等を挙げることができる。
【0099】
基材に光学部材を使用した本発明の粘着シートは、液晶セルのガラス部材に貼り付けて液晶セル部材として使用することも好ましい。前記光学部材が偏光板の場合、高温雰囲気及び高温高湿雰囲気に放置されたときにも、粘着剤層は応力緩和性が良好であるため偏光板の反りに起因する光漏れを抑制できる。
【0100】
本発明の粘着シートは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル、電極周辺部材等各種エレクトロニクス関連の部材やプロテクトフィルム、建材や車輌の窓ガラス等のガラス部材に好ましく使用できるが、ポリオレフィン、ABS、アクリル等のプラスチック、ダンボール、木材、合板、ステンテス、アルミ等の金属にも使用できる。
【実施例】
【0101】
次に本発明の実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、「部」とは「質量部」、「%」とは「質量%」をそれぞれ意味するものとする。
【0102】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)は、下記の装置および測定条件によるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。重量平均分子量(Mw)の決定は、標準物質としてポリスチレンを用いた換算で行った。
装置名 : 島津製作所製、LC−GPCシステム「Prominence」
カラム : 東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を直列に連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/分
カラム温度 : 40℃
【0103】
<合成例1:アクリル系共重合体(A)>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、アクリル酸ブチル(BA)79.9質量部、アクリル酸メチル(MA)20質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)0.1質量部、アセトン100部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)0.02部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し反応を開始させた。その後、反応溶液を還流温度で7時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分20質量部、粘度1500mPa・sの共重合体溶液を得た。Mwは150万であった。得られた共重合体を共重合体(A−1)とする。
【0104】
<合成例2〜11>
合成例1で使用したモノマーおよびその配合量を、表2に記載した通りに変更した以外は、合成例1と同様に合成することでそれぞれアクリル系共重合体を得た。得られたアクリル系共重合体のMwを表2に示す。尚、合成例2〜5で得られたアクリル系共重合体がアクリル系共重合体(A)であり、合成例6〜11で得られたアクリル系共重合体はアクリル系共重合体(A)ではないアクリル系共重合体である。
【0105】
<合成例12:アクリル系共重合体(B)>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)にアクリル酸ブチル(BA)99部、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(ビスコート3F、商品名:ビスコート3F、大阪有機化学工業社製)1部、メチルエチルケトン100部、AIBN0.02部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し反応を開始させた。その後、反応溶液を還流温度で7時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分20質量部、粘度100mPa・sの共重合体溶液を得た。Mwは5000であった。得られた共重合体を共重合体(B−1)とする。
【0106】
<合成例13〜19>
合成例12で使用したモノマーおよびその配合量を、表2に記載した通りに変更した以外は、合成例12と同様に合成することでそれぞれアクリル系共重合体を得た。得られたアクリル系共重合体のMwを表2に示す。尚、合成例13〜16で得られたアクリル系共重合体がアクリル系共重合体(B)であり、合成例17〜19で得られたアクリル系共重合体はアクリル系共重合体(B)ではないアクリル系共重合体である。
【0107】
[共重合体混合物の調整]
<調整例1>
アクリル系共重合体(A)として共重合体(A−1)と、アクリル系共重合体(B)として共重合体(B−1)を、(A)/(B)=90/10の質量比(不揮発分換算)で混合し、共重合体混合物の溶液を得た。得られた共重合体混合物を、共重合体混合物(1)とした。
【0108】
<調整例2〜19>
調整例1で使用したアクリル系共重合体(A)およびアクリル系共重合体(B)を表3に記載した通りに変更した以外は、調整例1と同様に混合することでそれぞれ共重合体混合物の溶液を得た。
【0109】
(実施例1)
不揮発分が100部となる量の共重合体混合物(1)溶液に対して、架橋剤(C)としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(C−1)1部、シランカップリング剤としてKBM−403(S−1、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:信越シリコーン社製)0.1部を配合し、更に、不揮発分が20%となる量の酢酸エチルを配合して粘着剤を得た。
【0110】
上記粘着剤を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離性シート(セラピールMF:東レフィルム加工社製)上に、乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、ポリビニルアルコール(PVA)系偏光子の両面をトリアセチルセルロース系フィルム(以下、「TACフィルム」という)で挟んだ積層構造の偏光板(HLC2−5618:SANRITZ社製)の片面を貼り合せ、「剥離フィルム/粘着剤層/TACフィルム/PVA/TACフィルム」という構成からなる粘着シートを得た。次いで、得られた粘着シートを温度35℃相対湿度55%の条件で1週間熟成させて、積層体を得た。
【0111】
(実施例2〜20、比較例1〜10)
実施例1で使用した材料共重合体混合物、架橋剤(C)、の替わりに、表4および表5に示した材料および配合量にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤をそれぞれ得た。更に、実施例1と同様にして、粘着シートおよび積層体をそれぞれ得た。実施例および比較例で使用した架橋剤(C)を表4および表5に示す。
【0112】
得られた積層体を、以下の方法によって評価した。
(1)耐熱性および耐湿熱性評価
上記で得られた積層体を、幅160mm、縦120mmの大きさに切り出した。次いで、切り出した積層体から剥離性シートを剥がして無アルカリガラス板に、ラミネータを用いて貼着した。続いて、この積層体が貼り付けられたガラス板を50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持して各部材を密着させることで測定試料を得た。この測定試料を、高温雰囲気での耐性評価として耐熱性を評価した。すなわち測定試料を85℃で500時間放置した後に、発泡、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。
また、測定試料を、高温高湿雰囲気での耐性評価として耐湿熱性を評価した。すなわち測定試料を60℃、相対湿度95%で500時間放置した後に発泡、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。耐熱性および耐湿熱性は、いずれも以下の基準に基づいて評価した。
◎:発泡、浮き、剥がれが全く認められず、良好である。
○:0.5mm以下の発泡、浮き、剥がれのいずれかが認められるが、実用上問題がない。
×:全面的に発泡、浮き、剥がれがあり、使用できない。
【0113】
(2)光漏れ性評価
上記で得られた積層体を、幅160mm、縦120mmの大きさに切り出した。次いで、切り出した積層体から剥離性シートを剥がして無アルカリガラス板の両面に、各々2枚の積層体をその偏光板の吸収軸が直交するようにラミネータを用いて貼着して圧着物を得た。続いて、圧着物を、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。この測定試料を、85℃で500時間放置した後、偏光板に光を透過させたときの光漏れを目視で観察した。光漏れ性は、以下の基準に基づいて評価した。
◎:白抜けが無く、良好である。
○:ごく一部に白抜けが認められるが、全面的な白抜けは認められず、実用上問題がない。
×:全面的に白抜けがあり、使用できない。
【0114】
(3)再剥離外観性評価
上記で得られた積層体を、幅160mm、縦120mmの大きさに切り出した。次いで、切り出した積層体から剥離性シートを剥がして無アルカリガラス板にラミネータを用いて貼り付けた。続いて、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。この測定試料を、85℃で3時間放置した後に、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、180°方向に300mm/分の速度で引っ張る、剥離試験を行った。次いで、剥離後のガラス表面の曇りを目視で観察し、以下の基準に基づいて評価した。
○:糊残り、曇りが認められず、良好である。
×:糊残り、曇りが認められ、実用不可である。
【0115】
(4)再剥離粘着力評価
得られた積層体を、幅25mm、縦100mmの大きさに切り出した。次いで、切り出した積層体から剥離性シートを剥がして無アルカリガラス板にラミネータを用いて貼り付けた。続いて、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。この測定試料を、23℃で1日間放置した後に、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力を測定し、以下の基準に基づいて評価した。
◎:粘着力が5N/25mm未満であり、良好である。
〇:粘着力が5N以上10N/25mm未満であり、実用上問題がない。
×:粘着力が10N/25mm以上であり、実用不可である。
(5)被着体汚染性評価
上記で得られた積層体を、幅160mm、縦120mmの大きさに切り出した。次いで、切り出した積層体から剥離性シートを剥がして無アルカリガラス板にラミネータを用いて貼り付けた。続いて、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。この測定試料を、60℃、相対湿度95%の環境下で500時間放置した後に、積層体を手で剥離しガラス表面の汚染を目視で観察し、以下の基準に基づいて評価した。
◎:ガラス表面の汚染が無く、良好である。
〇:わずかなガラス表面の汚染は認められるが、実用上問題がない。
×:ガラス表面の汚染が確認され、実用不可である。
【0116】
表6および表7の結果から、実施例1〜20に示すように本発明の粘着剤は、高温雰囲気および高温高湿雰囲気での耐久性、光漏れ性、ならびに再剥離性が優れている。一方、比較例1〜10は、前記特性を全て満たすことはできなかった。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
【表5】