【実施例】
【0015】
図1は本発明の一実施例としての電力制御装置10の構成の概略を示す構成図である。実施例の電力制御装置10は、位相制御方式によりスイッチング素子としてのトライアック12をスイッチングすることにより交流電源(AC100V電源)1から負荷としてのヒータ2へ供給する電力を制御するものであり、図示するように、トライアック12の他に、ゼロクロス点検出部14と、センサ部16と、設定値入力部18と、位相制御部20と、を備える。なお、ヒータ2は、例えば、人体の局部を洗浄するための洗浄水を噴射するノズルを備える温水洗浄便座に搭載され、当該ノズルに供給する洗浄水を瞬間的に加温可能な温水ヒータであり、1200W程度の定格出力をもつよう構成されている。
【0016】
トライアック12は、交流電源1とヒータ2とに直列に接続されたスイッチング素子であり、トリガ信号の入力によってオンされる。
【0017】
センサ部16は、ヒータ2を流れる洗浄水の温度を検出する温度センサやヒータ2を流れる洗浄水の流量を検出する流量センサなどを備える。
【0018】
設定値入力部18は、操作パネルを介して目標温水温度などの設定値を操作者から入力する。
【0019】
位相制御部20は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、ROMやRAM、入出力ポートなどを備える。位相制御部20には、交流電源電圧のゼロクロス点の通過を検出するゼロクロス点検出部14からの検出信号やセンサ部16からの検出信号、設定値入力部18からの入力信号などが入力ポートを介して入力されている。一方、位相制御部20からは、トライアック12へのトリガ信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0020】
こうして構成された電力制御装置10では、ヒータ2の位相制御を以下のようにして行なう。即ち、位相制御部20は、まず、センサ部16から温水温度や流量などを入力すると共に設定値入力部18から目標温度を入力し、入力したヒータ2の温水温度や流量、目標温度に基づいてヒータ2に供給すべき目標電力を設定し、設定した目標電力を得るための位相角(目標デューティ比Duty)を設定する。そして、位相制御部20は、ゼロクロス点検出部14により検出される交流電源電圧のゼロクロス点を基準として設定した位相角となるタイミングでトライアック12をオンするためのトリガ信号を出力する。トライアック12のスイッチング制御は、本実施例では、交流電源電圧波形の半波(半サイクル)ごとに位相角を調整する半波位相制御と、交流電源電圧波形の全波(1サイクル)ごとに位相角を調整する全波位相制御とを組み合わせて行なわれる。
【0021】
図2は、半波位相制御および全波位相制御を説明する説明図である。半波位相制御は、
図2(a)に示すように、交流電源電圧波形の半波区間を周期として0%〜100%の間で位相角(デューティ比)を調整するものであり、正の半波区間(
図2中、上の半波区間)と負の半波区間(
図2中、下の半波区間)とでそれぞれ1回ずつオフ期間およびオン期間が発生する。一方、全波位相制御は、
図2(b)に示すように、交流電源電圧波形の全波区間(正の半波区間と負の半波区間とを合わせた区間)を周期として0%〜100%の間で位相角(デューティ比)を調整するものであり、全波区間で1回だけオフ期間およびオン期間が発生する。即ち、全波を構成する正の半波と負の半波のうち一方の半波にのみオン期間とオフ期間とが現われ、残りの半波は必ず全域でオン期間のみ或いはオフ期間のみとなる。具体的には、0%〜50%の間の位相角(デューティ比)でスイッチングする場合、正の半波全域がオフ期間となり、50%〜100%の間の位相角(デューティ比)でスイッチングする場合、負の半波全域がオン期間となる。なお、本実施例では、スイッチング素子としてトライアック12を用いており、半サイクル(半波)が終了すると、自動的にオフされるから、全波位相制御を用いて50%〜100%の間の位相角(デューティ比)でスイッチングする場合、正の半波区間内でトライアック12をオンした後、負の半波区間の開始タイミングでトライアック12を再度オンする。
【0022】
ここで、位相制御方式では、交流電源1からヒータ2(負荷)へ流れる電流の波形は、正弦波ではなく、高調波を含む波形となる。
図3は、半波位相制御における高調波電流の分布と全波位相制御における高調波電流の分布とを示す説明図である。なお、
図3(a)は、半波位相制御を用いて50%のデューティ比で位相制御した場合に発生する高調波電流の分布を示し、
図3(b)は、全波位相制御を用いて50%のデューティ比で位相制御した場合に発生する高調波電流の分布を示す。半波位相制御では、電源周波数の奇数倍の高調波電流(奇数次高調波電流)のレベルが高いが(
図3(a)参照)、電源周波数の偶数倍の高調波電流(偶数次高調波電流)のレベルが低い傾向を示す。一方、全波位相制御では、偶数次高調波電流のレベルが高いが(
図3(b)参照)、奇数次高調波電流のレベルが低い傾向を示す。
【0023】
本実施例では、半波位相制御と全波位相制御とを組み合わせた位相制御(以下、これを「組み合わせ位相制御」という)を実行する。
図4は、組み合わせ位相制御を説明する説明図である。なお、
図4(a)は、50%のデューティ比の半波位相制御と同じく50%のデューティ比の全波位相制御とを2サイクルずつ交互に実行した際の電圧波形を示し、
図4(b)は、50%のデューティ比を基準デューティ比として当該基準デューティ比よりも25%小さい25%のデューティ比の半波位相制御と25%大きい75%のデューティ比の半波位相制御とを交互に実行した際の電圧波形を示す。なお、これらの例では、100%のデューティ比で位相制御を実行した場合、1周期で10Aの電流が流れるものとした。組み合わせ位相制御では、
図4(a)に示すように、いずれも50%のデューティ比で半波位相制御と全波位相制御とを実行するため、1周期で5Aの電流が流れ、1周期でみたときに電流の変化は生じない。一方、比較例の位相制御では、
図4(b)に示すように、25%のデューティ比の半波位相制御と75%のデューティ比の半波位相制御とを実行するため、2.5Aの電流が流れる周期と7.5Aの電流が流れる周期とが生じ、5Aの電流差が生じる。この場合、同じ電力系統に照明機器が接続されていると、照明のチラツキ(フリッカ)の原因となる。このように、組み合わせ制御では、1周期単位でみると、電流変化が少ない制御であり、フリッカの発生を低減することができる。
【0024】
図5は、半波位相制御と全波位相制御と組み合わせ位相制御のそれぞれの次数ごとの高調波電流発生限界値に対する余裕度の分布を示す説明図である。
図5に示す余裕度は、位相制御によって生じる次数ごとの高調波電流を測定(または算出)し、測定した高調波電流に基づいて次数ごとの高調波電流発生限界値に対する余裕度を求める処理を、0%〜100%の異なる複数のデューティ比で実行して、これらの平均値をとったものである。図示するように、半波位相制御は、偶数次で余裕度が大きくなり、奇数次では余裕度が小さくなる特徴を有し、この例では、17次の余裕度が最小値となる。全波位相制御は、奇数次で余裕度が大きくなり、偶数次で余裕度が小さくなる特徴を有し、この例では、2次の余裕度が最小値となる。組み合わせ位相制御では、半波位相制御での余裕度と全波位相制御での余裕度とが平均化される。特に、全波位相制御で小さくなる2次の余裕度は、半波位相制御で大きく、半波位相制御で小さくなる15次や17次の余裕度は、全波位相制御で大きいため、組み合わせ位相制御を用いることで、2次の余裕度や15次,17次の余裕度が大幅に改善されていることがわかる。
【0025】
次に、こうした組み合わせ位相制御を用いた電力制御装置20の動作について説明する。
図6は、位相制御部20により実行される電力制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。電力制御ルーチンが実行されると、位相制御部20は、まず、ゼロクロス点検出部14からの検出信号に基づいてゼロクロス点が検出されたか否かを判定する(ステップS100)。ゼロクロス点が検出されたと判定すると、カウンタNを値1だけインクリメントし(ステップS110)、カウンタNが値2以上であるか否かを判定する(ステップS120)。カウンタNが値2以上であると判定すると、カウンタNを値0にリセットすると共に(ステップS130)、サイクル数Cを値1だけインクリメントして(ステップS140)、ステップS150の処理に進む。一方、カウンタNが値2以上でないと判定すると、ステップS130,S140の処理をスキップして電力制御ルーチンを終了する。サイクル数Cは、交流電圧波形を全波(1サイクル)単位でカウントするカウンタであり、ゼロクロス点(半波)が2回検出される度に値1だけインクリメントされる。
【0026】
次に、目標デューティ比Dutyを設定する(ステップS150)。ステップS150の処理は、例えば、センサ部16(温度センサ)からのヒータ2の温水温度や流量を入力すると共に設定値入力部18から目標温度を入力し、ヒータ2を流れる洗浄水の温度が目標温度となるようフィードバック制御を用いてヒータ2に供給すべき目標電力を設定し、設定した目標電力に基づいて目標デューティ比Dutyを設定することにより行なうことができる。
【0027】
目標デューティ比Dutyを設定すると、設定した目標デューティ比Dutyに基づいて組み合わせ位相制御における半波位相制御と全波位相制御の実行割合(規定サイクル数における半波位相制御の連続実行サイクル数Chwおよび全波位相制御の連続実行サイクル数Cfw)を設定する(ステップS160)。ステップS160の処理は、例えば、目標デューティ比Dutyと実行割合(連続実行サイクル数Chw,Cfw)との関係を予め求めて実行割合設定用マップとして位相制御部20のROMに記憶しておき、目標デューティ比が与えられると、マップから対応する実行割合(連続実行サイクル数Chw,Cfw)を導出することにより設定するものとした。実行割合設定用マップの一例を
図7に示す。ここで、連続実行サイクル数Chw,Cfwは、本実施例では、両連続実行サイクル数の合計を20サイクルとし、20サイクルの範囲内で各連続実行サイクル数が増減するように設定される。即ち、各連続実行サイクル数Chw,Cfwは、10サイクルを基本(実行割合が1:1の場合)として、通常、5〜15サイクルの範囲内で設定される。このようにするのは、半波位相制御と全波位相制御とが頻繁に切り替わると、フリッカが発生し易くなる一方、同じ位相制御が長時間連続して実行されると、高調波成分の抑制効果が小さくなるためである。
【0028】
ここで、実行割合設定用マップは、以下のようにして求めることができる。まず、位相制御で使用する複数のデューティ比のうち実行割合の導出対象となる対象デューティ比を設定し、対象デューティ比で半波位相制御と全波位相制御とをそれぞれ単独で実行し、そのときの次数ごとの高調波を測定してそれぞれの限界値に対する比率である余裕度を算出する。そして、算出した次数ごとの余裕度の中から奇数次において余裕度が最小値となる次数(最悪奇数次)と偶数次において余裕度が最小値となる次数(最悪偶数次)とを決定する。次に、半波位相制御と全波位相制御とを1:1の実行割合で組み合わせた組み合わせ位相制御を実行(例えば、10サイクルごとに半波位相制御と全波位相制御とを交互に実行)し、そのときの最悪奇数次および最悪偶数次での高調波を測定してそれぞれの余裕度を算出する。そして、最悪奇数次の余裕度と最悪偶数次の余裕度とを比較し、最悪奇数次の余裕度の方が最悪偶数次の余裕度よりも小さい場合には、最悪奇数次の余裕度を大きくするために全波位相制御の実行割合が増えるよう半波位相制御と全波位相制御との実行割合を変更して組み合わせ位相制御を再度実行する。また、最悪偶数次の余裕度の方が最悪奇数次の余裕度よりも小さい場合には、最悪偶数次の余裕度を大きくするために半波位相制御の実行割合が増えるよう半波位相制御と全波位相制御との実行割合を変更して組み合わせ位相制御を再度実行する。このように、最悪奇数次の余裕度と最悪偶数次の余裕度とが同等となるまで半波位相制御と全波位相制御との実行割合を変更して組み合わせ位相制御を実行する。そして、最悪奇数次の余裕度と最悪偶数次の余裕度とが同等となると、そのときの半波位相制御と全波位相制御との実行割合(半波位相制御の連続実行サイクル数Chwと全波位相制御の連続実行サイクル数Cfw)を対象デューティ比における実行割合とする。こうした処理を、対象デューティ比を変更しながら繰り返し実行することにより、各デューティ比ごとの半波位相制御と全波位相制御との実行割合(半波位相制御の連続実行サイクル数Chwと全波位相制御の連続実行サイクル数Cfw)が導出される。
【0029】
そして、フラグFが値0であるか否かを判定する(ステップS170)。ここで、フラグFは、実行中の位相制御が半波位相制御であるか全波位相制御であるかを示すフラグであり、値0のときには実行中の位相制御が半波位相制御であることを示し、値1のときには実行中の位相制御が全波位相制御であることを示す。フラグFが値0であると判定、即ち実行中の位相制御が半波位相制御であると判定すると、サイクル数Cが半波位相制御の連続実行サイクル数Chwに達した否かを判定し(ステップS180)、サイクル数Cが連続実行サイクル数Chwに達していないと判定すると、実行する位相制御として半波位相制御を選択して(ステップS190)、電力制御ルーチンを終了する。一方、サイクル数Cが連続実行サイクル数Chwに達したと判定すると、実行する位相制御として全波位相制御を選択し(ステップS200)、フラグFを値1に設定すると共にサイクル数Cを値0にリセットして(ステップS210,S220)、電力制御ルーチンを終了する。
【0030】
ステップS170でフラグFが値1であると判定、即ち実行中の位相制御が全波位相制御であると判定すると、サイクル数Cが全波位相制御の連続実行サイクル数Cfwに達した否かを判定し(ステップS230)、サイクル数Cが連続実行サイクル数Cfwに達していないと判定すると、全波位相制御を選択して(ステップS240)、電力制御ルーチンを終了する。一方、サイクル数Cが連続実行サイクル数Cfwに達したと判定すると、半波位相制御を選択し(ステップS250)、フラグFを値0に設定すると共にサイクル数Cを値0にリセットして(ステップS260,S270)、電力制御ルーチンを終了する。
【0031】
以上説明した実施例の電力制御装置10によれば、交流電源波形の半波区間(半サイクル)を周期として位相角(デューティ比)を調整する半波位相制御と、交流電源波形の全波区間(1サイクル)を周期として位相角(デューティ比)を調整する全波位相制御とを切り替えて実行する。これにより、奇数次の高調波成分と偶数次の高調波成分とが平均化することができ、過大な高調波の発生を抑制することができる。しかも、位相制御の周期を半サイクル(半波)と1サイクル(全波)とに切り替えて高調波の発生を抑制するから、デューティ比を目標値から変化させることによって高調波の発生を抑制するものに比して、1サイクル(全波)ごとの出力波形間の電流差を小さくすることができ、フリッカの発生を抑制することができる。この結果、過大な高調波の発生を抑制すると共にフリッカの発生を抑制することができる。
【0032】
また、実施例の電力制御装置10によれば、高調波が大きくなるデューティ比(位相角)も使用が可能であるため、1サイクル(全波)単位で目標電力をヒータ2に供給することができ、制御性を良好なものとすることができる。
【0033】
さらに、実施例の電力制御装置10によれば、目標デューティ比Dutyごとに半波位相制御と全波位相制御の実行割合(規定サイクルにおける半波位相制御の連続実行サイクル数Chwおよび全波位相制御の連続実行サイクル数Cfw)を設定するから、実行するデューティ比に拘わらず、過大な高調波の発生を効果的に抑制することができる。
【0034】
実施例の電力制御装置10では、5〜15サイクルの範囲内で連続実行サイクル数Chw,Cfwを設定するものとしたが、2〜100サイクル(電源周波数が50Hzの場合、100ms〜2s)、より好ましくは、2〜50サイクル(電源周波数が50Hzの場合、100ms〜1s)の範囲内で設定されるものとしてもよい。なお、ヒータ2の定格出力が比較的低い場合(例えば、200Wや300Wなど)には、フリッカの影響は少なくなるため、1サイクルごとに半波位相制御と全波位相制御とを交互に実行するものとしてもよい。
【0035】
実施例の電力制御装置10では、目標デューティ比Dutyに応じて半波位相制御と全波位相制御の実行割合を変更して組み合わせ位相制御を実行するものとしたが、目標デューティ比Dutyに拘わらず半波位相制御と全波位相制御の実行割合を一定としてもよい。
【0036】
実施例の電力制御装置10では、半波位相制御と全波位相制御とを切り替えて実行するものとしたが、半波位相制御と組み合わせ位相制御とを切り替えて実行するものとしてもよい。
図8は、変形例の電力制御ルーチンを示すフローチャートである。
図8のルーチンの各処理のうち、
図6のルーチンと同一の処理については同一のステップ番号を付し、その説明は重複するから省略する。変形例の電力制御ルーチンでは、ステップS150で目標デューティ比Dutyを設定した後、設定した目標デューティ比Dutyが第1範囲内であるか否かを判定する(ステップS300)。目標デューティ比Dutyが第1範囲内にないと判定すると、ステップS190に進んで半波位相制御を実行し、目標デューティ比Dutyが第1範囲内にあると判定すると、上述したステップS160〜S270の組み合わせ位相制御を実行する。ここで、第1範囲は、目標デューティ比Dutyで半波位相制御を実行すると、高調波電流発生限界値に対する余裕度が許容範囲を下回ることになるデューティ比の範囲を示す。
図9は、半波位相制御のDutyごとの15次高調波余裕度の分布を示す説明図である。なお、この例では、15次高調波余裕度が最悪奇数次の余裕度であるものとした。図示するように、余裕度の許容範囲が20%以上とした場合、余裕度が許容範囲を下回るデューティ比の範囲は、約25%〜75%となる。したがって、この例では、目標デューティ比Dutyが約25%〜75%の範囲内にあるときに組み合わせ位相制御が実行され、その他の範囲のときには半波位制御が実行される。
【0037】
実施例の電力制御装置10では、半波位相制御と全波位相制御とを切り替えて実行するものとしたが、全波位相制御と組み合わせ位相制御とを切り替えて実行するものとしてもよい。
図10は、変形例の電力制御ルーチンを示すフローチャートである。
図10のルーチンの各処理のうち、
図6のルーチンと同一の処理については同一のステップ番号を付し、その説明は重複するから省略する。変形例の電力制御ルーチンでは、ステップS150で目標デューティ比Dutyを設定した後、設定した目標デューティ比Dutyが第2範囲内であるか否かを判定する(ステップS400)。目標デューティ比Dutyが第2範囲内にないと判定すると、ステップS240に進んで全波位相制御を実行し、目標デューティ比Dutyが第2範囲内にあると判定すると、上述したステップS160〜S270の組み合わせ位相制御を実行する。ここで、第2範囲は、目標デューティ比Dutyで全波位相制御を実行すると、高調波電流発生限界値に対する余裕度が許容範囲を下回ることになるデューティ比の範囲を示す。
図11は、全波位相制御のDutyごとの2次高調波余裕度の分布を示す説明図である。なお、この例では、2次高調波余裕度が、最悪偶数次の余裕度であるものとした。図示するように、余裕度の許容範囲が20%以上とした場合、余裕度が許容範囲を下回るデューティ比の範囲は、約25%〜45%および約55%〜75%となる。したがって、この例では、目標デューティ比Dutyが約25%〜45%および約55%〜75%の何れかの範囲内にあるときに組み合わせ位相制御が実行され、その他の範囲のときには全波位制御が実行される。
【0038】
なお、組み合わせ位相制御において偶数次の余裕度が許容範囲を下回るデューティ比が存在する場合、そのデューティ比でのスイッチング制御を半波位相制御で実行するものとしてもよい。また、組み合わせ位相制御において奇数次の余裕度が許容範囲を下回るデューティ比が存在する場合、そのデューティ比でのスイッチングを全波位相制御で実行するものとしてもよい。
【0039】
実施例の電力制御装置10では、目標デューティ比Dutyで半波位相制御と全波位相制御とを連続実行サイクル数Chw,Cfwずつ繰り返し実行するものとしたが、目標デューティ比Dutyに拘わらず一定時間ごとにデューティ比を0%とする期間(オフ期間)を設定するものとしてもよい。
図12は位相制御のオフ期間を説明する説明図であり、
図13は位相制御にオフ期間を設定した場合と設定しない場合の次数ごとの余裕度の分布を示す説明図である。なお、
図13中の「オフ期間設定A」は、「オフ期間設定B」よりも長いオフ期間が設定されている。
図12に示するように、一定時間ごとに所定期間だけオフとするオフ期間が設定されると、この間、高周波が発生することがほとんどないため、オフ期間を含めた期間における高調波の平均値が大幅に低減される。このとき、オフ期間が長いほど、高調波の平均値が低減されるため、高調波電流発生限界値に対する余裕度は大きくなる傾向を示す(
図13参照)。
【0040】
実施例の電力制御装置10では、目標デューティ比Dutyで半波位相制御と全波位相制御とを連続実行サイクル数Chw,Cfwずつ繰り返し実行するものとした。これに対して、半波位相制御、全波位相制御における各連続実行サイクル数Chw,Cfwでの平均値が目標デューティ比Dutyとなるよう実行デューティ比を所定ステップ幅ずつスイープさせながら実行デューティ比によりスイッチングするスイープ制御を実行するものとしてもよい。
図14は、スイープ制御の様子を示す説明図である。なお、
図14(a)は、半波位相制御におけるスイープ制御の様子を示し、
図14(b)は、全波位相制御におけるスイープ制御の様子を示す。図示するように、目標デューティ比Dutyとして36%が設定され、半波位相制御および全波位相制御の各連続実行サイクル数Chw,Cfwとして5サイクルが設定された場合、実行デューティ比として28%から開始し、4%刻みで一方向に変化させ、44%で終了するように設定される。こうしたスイープ制御は、目標デューティ比Dutyが高調波が大きくなり易いデューティ比であるときに実行することができる。これにより、高調波が大きくなり易いデューティ比の使用回数を減らすことができ、全体として高調波の発生を抑制することができる。また、スイープ制御は、所定ステップ幅ずつデューティ比を変化させるため、1サイクルごとの出力波形間の電流差を小さくすることができ、フリッカの発生を抑制することができる。
【0041】
また、スイープ制御は、半波位相制御と全波位相制御とでスイープの方向を異ならせてもよい。
図15は、スイープ制御を伴って全波位相制御と半波位相制御とを切り替える様子を示す説明図である。
図15に示すように、目標デューティ比Dutyとして36%が設定され、半波位相制御および全波位相制御の各連続実行サイクル数Chw,Cfwとして5サイクルが設定された場合、全波位相制御においては、28%のデューティ比から開始し、4%刻みでデューティ比を大きくし、44%のデューティ比で全波位相制御のサイクルが終了する。続いて、半波位相制御においては、44%のデューティ比から開始し、4%刻みでデューティ比を小さくし、28%のデューティ比で半波位相制御のサイクルが終了する(
図15の上段参照)。このように、半波位相制御と全波位相制御とでスイープの方向と逆向きにすることにより、半波位相制御と全波位相制御とでスイープの方向と同一方向とするもの(
図15の下段参照)に比して、半波位相制御と全波位相制御との切り替わりの際に生じる出力波形間の電流差を小さくすることができ、フリッカの発生を抑制することができる。
【0042】
実施例では、本発明を、温水洗浄便座の温水ヒータの制御に適用して説明したが、これに限定されるものではなく、乾燥機や湯沸かし器などの他の電気機器の制御にも適用可能である。また、負荷としてヒータ2を挙げたが、モータなど、位相制御方式によって制御が可能な他の如何なる負荷に適用するものとしてもよい。
【0043】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、トライアック12が「スイッチング素子」に相当し、交流電源1が「交流電源」に相当し、ヒータ2が「負荷」に相当する。
【0044】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0045】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。