(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記配置状態推定手段は、各々の圧力センサの一心拍分の出力波形から、前記特徴量として、前記出力波形における最大値と最小値の差分値、および/または、最小値を抽出し、前記複数の圧力センサの間での前記差分値の分布形状、および/または、前記最小値の分布形状に基づいて、前記計測手段の配置状態を推定することを特徴とする、請求項1に記載の血圧測定装置。
前記計測手段は、計測時に前記動脈と交差する方向に配列される複数の圧力センサから構成されるセンサアレイを少なくとも1つ有することを特徴とする、請求項2に記載の血圧測定装置。
前記血圧情報、前記配置状態、前記信頼度のうちの一つまたはこれらの組み合わせを出力する出力手段を有することを特徴とする、請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の血圧測定装置。
前記信頼度が所定の基準値以下の場合に、信頼度を低下させる原因となっている不適切な配置状態を示す情報を前記出力手段に出力する、警告手段を有することを特徴とする、請求項10または11に記載の血圧測定装置。
前記信頼度が所定の基準値以下の場合に、信頼度を低下させる原因となっている不適切な配置状態を、適切な配置状態に修正する方法を前記出力手段に出力する、修正指示手段を有することを特徴とする、請求項10〜12のうちいずれか1項に記載の血圧測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、次のような最適出力の選択方法が記載されている。即ち、複数の圧力センサが搭載された押圧面を有するセンサアレイを生体表面に押圧し、脈波検出時には複数圧力センサから圧力情報を示す電圧信号を同時に入力する。CPUは、電圧信号から固形物に起因して生じる圧力成分を示す直流成分を抽出して、抽出された直流成分から固形物上に位置する圧力センサを特定する。そして複数圧力センサのうちから特定された固形物上に位置する圧力センサを除いたものは、動脈上に位置する圧力センサの候補として選択されて、選択された圧力センサの出力する圧力情報に基づいて動脈から発生する脈波が検出される。
【0006】
このような手法によれば、動脈以外の固形物上に圧力センサが配置されているという、測定値に影響を及ぼすことが顕著なケースにおいては、不適切な配置状態にあるセンサを特定して、最適な出力値の選択候補から除外することができる。
【0007】
しかしながら、上記の従来手法では、動脈を押圧する方向にずれがある(センサ群が押圧面に対して傾いて配置されている)等の、データ解析に悪影響を生ずる条件下で取得された出力であっても、センサ群が適切な配置状態にある場合と同等に扱ってしまうという問題があった。
【0008】
上記のような状況に鑑みて、本発明は、トノメトリ方式による血圧測定方法において、計測された血圧情報の信頼度を算出する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
【0010】
本発明に係る血圧測定装置は、トノメトリ方式で血圧を測定する血圧測定装置であって、複数の圧力センサを備え計測対象の一心拍ごとの血圧情報を計測する計測手段と、各々
の圧力センサの一心拍分の出力波形から特徴量を抽出し、前記複数の圧力センサの間での前記特徴量の値の分布形状に基づいて、前記計測対象の動脈に対する前記計測手段の配置状態を推定する配置状態推定手段と、前記推定された配置状態に基づいて、前記計測手段により計測された血圧情報の信頼度を算出する信頼度算出手段と、を有することを特徴とする、血圧測定装置である。
【0011】
このような構成にすることで、計測された血圧情報についての信頼度を得ることができ、不適切な配置状態で得られた血圧情報(即ち信頼度の低い計測値)を、適切な配置状態で得られた血圧情報(即ち信頼度の高い計測値)と同様に扱うことを防止することができる。
【0012】
ここで、前記配置状態推定手段は、各々の圧力センサの一心拍分の出力波形から、前記特徴量として、前記出力波形における最大値と最小値の差分値、および/または、最小値を抽出し、前記複数の圧力センサの間での前記差分値の分布形状、および/または、前記最小値の分布形状に基づいて、前記計測手段の配置状態を推定するものであってもよい。
【0013】
また、前記計測手段は、計測時に前記動脈と交差する方向に配列される複数の圧力センサから構成されるセンサアレイを少なくとも1つ有していてもよい。
【0014】
このように、所定の配列を有する圧力センサ群がある構成により、前記特徴量の分布形状を該所定の配列を含んで把握することが可能になり、前記配置状態の推定を効率的に行うことができる。
【0015】
また、前記配置状態は、前記センサアレイが前記動脈を押圧する力の程度を示す、押圧程度を含み、前記配置状態推定手段は、前記差分値の分布形状におけるピーク値とボトム値の差、および/または、前記差分値の分布形状におけるピーク値に基づいて、前記押圧程度を推定するものであってもよい。
【0016】
このように、前記配置状態に押圧程度を含む構成であると、前記センサアレイが前記動脈を押圧する力の程度が不適切である状態で血圧情報が計測された場合に、当該状態を反映した血圧情報の信頼度を得ることができる。
【0017】
さらに、前記配置状態は、計測に適した姿勢である基準状態からの、前記動脈の延びる方向に垂直な方向の傾きを示す、幅方向傾きを含み、前記配置状態推定手段は、前記最小値の分布形状の傾きに基づいて、前記幅方向傾きを推定するものであってもよい。
【0018】
このように、前記配置状態に幅方向傾きを含む構成であると、前記計測手段が適切な状態から前記動脈の延びる方向に垂直な方向に傾いている状態で血圧情報が計測された場合に、当該状態を反映した血圧情報の信頼度を得ることができる。
【0019】
さらに、前記配置状態は、計測に適した姿勢である基準状態からの、前記動脈の延びる方向に垂直な方向のずれを示す、幅方向ずれを含み、前記配置状態推定手段は、前記差分値の分布形状におけるピークの位置に基づいて、前記幅方向ずれを推定するものであってもよい。
【0020】
このように、前記配置状態に幅方向ずれを含む構成であると、前記計測手段が適切な状態から前記動脈の延びる方向に垂直な方向にずれている状態で血圧情報が計測された場合に、当該状態を反映した血圧情報の信頼度を得ることができる。
【0021】
さらに、前記計測手段は、互いに平行に配置される第1のセンサアレイと第2のセンサ
アレイを備えており、前記配置状態は、計測に適した姿勢である基準状態からの、前記動脈の延びる方向に平行な方向の傾きを示す、動脈方向傾きを含み、前記配置状態推定手段は、前記第1のセンサアレイと前記第2のセンサアレイそれぞれの、前記差分値の分布形状におけるピーク値とボトム値の差、および、前記差分値の分布形状におけるピーク値に基づいて、前記動脈方向傾きを推定するものであってもよい。
【0022】
このように、互いに平行に配置される所定の配列のセンサ群が2列あることによって、より多様な計測手段の配置状態の推定を効率的に行うことができる。また、前記配置状態に、前記計測手段の動脈方向傾きを含むことによって、前記計測手段が適切な状態から前記動脈の延びる方向に平行な方向に傾いている状態で血圧情報が計測された場合に、当該状態を反映した血圧情報の信頼度を得る事ができる。
【0023】
さらに、前記計測手段は、互いに平行に配置される第1のセンサアレイと第2のセンサアレイを備えており、前記配置状態は、計測に適した姿勢である基準状態からの、前記動脈の延びる方向に平行な方向のずれを示す、動脈方向ずれを含み、前記配置状態推定手段は、前記第1のセンサアレイと前記第2のセンサアレイの間での、前記差分値の分布形状におけるピーク値の差に基づいて、前記動脈方向ずれを推定するものであってもよい。
【0024】
このように、前記配置状態に動脈方向ずれを含む構成であると、前記計測手段が適切な状態から前記動脈の延びる方向に平行な方向にずれている状態で血圧情報が計測された場合に、当該状態を反映した血圧情報の信頼度を得ることができる。
【0025】
さらに、前記計測手段は、互いに平行に配置される第1のセンサアレイと第2のセンサアレイを備えており、前記配置状態は、計測に適した姿勢である基準状態からの、前記センサアレイと前記計測対象の接触面内での回転を示す、回転ずれを含み、前記配置状態推定手段は、前記第1のセンサアレイと前記第2のセンサアレイの間での、前記差分値の分布形状におけるピークの位置の差に基づいて、前記回転ずれを推定するものであってもよい。
【0026】
このように、前記配置状態に回転方向ずれを含む構成であると、前記センサアレイが前記計測対象との接触面内で回転方向にずれている状態で血圧情報が計測された場合に、当該状態を反映した血圧情報の信頼度を得ることができる。
【0027】
また、本発明に係る血圧測定装置は、前記血圧情報、前記配置状態、前記信頼度のうちの一つまたはこれらの組み合わせを出力する出力手段を有していてもよい。
【0028】
このように出力手段を有する構成により、前記各情報を適宜出力して利用することが可能になる。
【0029】
さらに、前記出力手段は、文字および/または画像により、前記血圧情報、前記配置状態、前記信頼度のうちの一つまたはこれらの組み合わせを出力する画像表示手段、音声により、前記血圧情報、前記配置状態、前記信頼度のうちの一つまたはこれらの組み合わせを出力する音声出力手段、有線または無線の通信により、他の装置に対して前記血圧情報、前記配置状態、前記信頼度のうちの一つまたはこれらの組み合わせを出力する通信手段、
のうちの一つまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0030】
このような構成により、出力する情報と目的に応じて適切な出力方法を採用することができ、また、異なる複数の出力手段を有することで、より効果的な情報の出力が可能になる。
【0031】
また、本発明に係る血圧測定装置は、前記信頼度が所定の基準値以下の場合に、信頼度を低下させる原因となっている不適切な配置状態を示す情報を前記出力手段に出力する、警告手段を有していてもよい。
【0032】
このような構成によると、前記血圧測定装置の利用者は、前記血圧情報の信頼度が所定の基準値以下である場合には、その旨とその原因を把握することができる。
【0033】
さらに、本発明に係る血圧測定装置は、前記信頼度が所定の基準値以下の場合に、信頼度を低下させる原因となっている不適切な配置状態を、適切な配置状態に修正する方法を前記出力手段に出力する、修正指示手段を有していてもよい。
【0034】
このような構成によると、前記血圧情報の信頼度が所定の基準値以下である場合に、前記血圧測定装置の利用者は、前記修正指示に従って前記計測手段を適切な配置状態に修正することができる。
【0035】
また、本発明に係る血圧測定装置は、手首に装着するウェアラブル装置であってもよい。
【0036】
このような構成によると、前記血圧測定装置の利用者は身体の自由を拘束されることなく、血圧を測定することができる。
【0037】
本発明に係る血圧測定装置の制御方法は、トノメトリ方式で血圧を測定する血圧測定装置の制御方法であって、複数の圧力センサを備える計測手段により、計測対象の一心拍ごとの血圧情報を計測するステップと、各々の圧力センサの一心拍分の出力波形から特徴量を抽出するステップと、前記複数の圧力センサの間での前記特徴量の値の分布形状に基づいて、前記計測対象の動脈に対する前記計測手段の配置状態を推定するステップと、前記推定された配置状態に基づいて、前記計測手段により計測された血圧情報の信頼度を算出するステップと、を有することを特徴とする。
【0038】
本発明に係るプログラムは、前記血圧測定装置の制御方法の各ステップを、該血圧測定装置に実行させるプログラムである。
【0039】
なお、本発明は、上記構成ないし機能の少なくとも一部を有する血圧測定装置として捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む血圧測定装置の制御方法、又は、かかる方法をコンピュータ(プロセッサ)に実行させるためのプログラム、又は、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。上記構成及び処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、トノメトリ方式による血圧測定方法において、計測された血圧情報の信頼度を算出する技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。以下の実施例に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0043】
<実施例1>
まず、
図1〜
図18に従って、本発明の実施例1について説明する。本実施例に係る血圧測定装置は、トノメトリ法により橈骨動脈の圧脈波を測定する装置である。ここで、トノメトリ法とは、皮膚の上から動脈を適切な圧力で押圧して動脈に扁平部を形成し、動脈内圧と外圧をバランスさせて、圧力センサにより非侵襲的に圧脈波を計測する方法をいう。
【0044】
(血圧測定装置の構成)
図1は、本実施例の血圧測定装置1の全体構成を示すブロック図である。血圧測定装置1は、概略、計測部10、制御部20、入力部30、記憶部40を有する。
【0045】
なお、血圧測定装置1は、測定時に被測定者の上腕を固定台に載置して用いられるような据え置き型の装置であってもよいし、測定時の被測定者の動きを拘束しない状態で装着されるウェアラブル装置としてもよい。ここで、血圧測定装置1をウェアラブル装置とすると、被測定者の動きが拘束されない反面、血圧測定装置1が血圧の測定に適した状態から逸脱しやすくなる。この点、計測された血圧情報の信頼度を得ることができる本実施例に係る装置であれば、不適切な状態で計測された血圧情報を、適切な状態で計測された血圧情報と同様に扱うことを防止できるため、好適である。
【0046】
計測部10は、センサ部11により被測定者の圧脈
波を計測する。
図2は計測部10が、図示しないベルトによって被測定者の左手首に装着された状態を示す図、
図3は計測部10の構造と計測時の状態を模式的に示す断面図である。
図2、
図3に示すように計測部10は、センサ部11と、センサ部11を手首に対して押圧するための押圧機構12とを備え、血圧測定対象となる橈骨動脈TDが内部に存在する部位の体表面に接するように配置される。
【0047】
図4はセンサ部11の体表面と接する側の面を表す図である。
図4に示すように、センサ部11は、計測部10が装着された状態において、装着部位に存在する橈骨動脈TDの伸びる方向Aと交差する方向Bに並ぶ複数(例えば46個)の圧力センサ110により形成される第1のセンサアレイ111と、それと平行に配置される第2のセンサアレイ112を有している。
【0048】
第1、第2それぞれのセンサアレイ111、112を構成する各圧力センサ110は、橈骨動脈TD上に必要かつ充分な数が配置されるような間隔で、かつ、他方のセンサアレイを構成する圧力センサ110と対になるように配置されている。ここで、圧力センサ110は、圧力を計測して電気信号に変換する圧電素子や、ピエゾ抵抗効果を利用した素子などを好ましく用いることができる。
【0049】
押圧機構12は、例えば、空気袋とこの空気袋の内圧を調整するポンプとにより構成される。制御部20がポンプを制御し空気袋の内圧を高めると、空気袋の膨張により圧力センサ110が体表面に押し当てられる。なお、押圧機構12は、圧力センサ110の体表面に対する押圧力を調整可能であれば何でもよく、空気袋を用いたものに限定されない。
【0050】
制御部20は、血圧測定装置1の各部の制御、測定したデータの記録・分析、データの入出力などの各種処理を行う。制御部20は、プロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、などを含む。後述する制御部20の機能は、プロセッサがROM又は記憶部40に記憶されているプログラムを読み込み実行することにより実現される。RAMは、制御部20が各種処理を行う際のワークメモリとして機能する。
【0051】
入力部30は、ユーザに対し操作インターフェースを提供する。例えば、操作ボタン、スイッチ、タッチパネルなどを用いることができる。
【0052】
記憶部40は、データの記憶及び読み出しが可能な記憶媒体であり、制御部20で実行されるプログラム、計測部10から得られた計測データ、計測データを処理することで得られた各種のデータなどを記憶する。記憶部40は例えばフラッシュメモリが用いられる。記憶部40は、メモリカード等の可搬型のものであってもよいし、血圧測定装置1に内蔵されていてもよい。
【0053】
(制御部の機能)
図5は制御部20の機能構成の概略を示すブロック図である。
図5に示すように、制御部20は、基本的な機能として、特徴量抽出部21、トノグラム作成部22、配置状態推定部23、信頼度算出部24、血圧指標特定部25、を有している。本実施例では、制御部20が必要なプログラムを実行することによって、これら各部の機能を発揮する。
【0054】
特徴量抽出部21は、一心拍毎に血圧測定部により計測される脈圧波形の特徴量を抽出する機能である。本実施例において抽出される特徴量は、例えば、1心拍毎の最大圧力値、最低圧力値、及び最大圧力値と最低圧力値の差分値である。
【0055】
トノグラム作成部22は、トノグラムを作成する機能である。ここで、トノグラムとは、複数の圧力センサの間での特徴量の値の分布形状をいう。本実施例におけるトノグラムは、特徴量抽出部21によって抽出された、一心拍単位の最大圧力値と最低圧力値の差分値(以下「ac成分」という)、及び最低圧力値(以下、「dc成分」という)に基づいて、センサアレイ毎に作成される。
【0056】
配置状態推定部23は、トノグラムの形状に基づき、センサ部11の橈骨動脈TDに対する配置状態を推定する機能である。本実施例では、64パターンの配置状態のいずれに該当するかを最終的に推定する。
【0057】
信頼度算出部24は、推定されたセンサ部11の配置状態に基づき、計測部10が計測した血圧情報の信頼度を算出する機能である。
【0058】
血圧指標特定部25は、複数の圧力センサ110で計測された血圧情報から、最終的な測定値となる血圧指標を特定する機能である。本実施例において特定される血圧指標は、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、脈拍数(PR)である。
【0059】
(血圧測定装置の機能)
以下、本実施例における血圧測定装置1の機能について説明する。
図6は、本実施例に係る血圧測定装置1が行う処理の流れの一例を示す全体フローチャートである。
図6が示すように、血圧測定装置1は、一心拍毎に、血圧情報を計測し(ステップS2)、計測された情報から特徴量を抽出してトノグラムを作成し(ステップS3)、該トノグラムに基づいてセンサ部11の橈骨動脈TDに対する配置状態を推定し(ステップS4)、該推定配置状態に基づいて信頼度を算出し(ステップS5)、該信頼度と計測された血圧情報を記憶部40に記録する(ステップS6)。
【0060】
(血圧情報の計測)
計測部10を手首に装着して血圧測定装置1起動すると、制御部20が計測部10の押圧機構12を制御し、センサ部11の押圧力を適切な状態に維持する。そして、各圧力センサ110により計測された血圧情報が制御部20に順次取り込まれる。
【0061】
図7は、圧力センサ110により計測される脈圧波形(トノメトリセンサ圧)を示す。横軸が時間、縦軸が血圧である。本実施例ではサンプリング周波数を125Hzとしたが、1心拍の波形の形状的な特徴を再現可能な限り、任意に設定できる。
【0062】
(特徴量の抽出とトノグラムについて)
特徴量抽出部21は、各圧力センサ110により計測された脈圧波形からac成分とdc成分を抽出する。また、トノグラム作成部22は、一つのセンサアレイを構成する各圧力センサ110のセンサアレイ上の位置を横軸に取り、同一心拍における圧力センサ110毎のac成分とdc成分を縦軸に取ったグラフ、即ちトノグラムを作成する。
図8はト
ノグラムの一例を示す図である。各圧力センサ110には、配置された位置に応じてチャンネル番号が割り振られている。
【0063】
本実施例では、センサアレイ毎に最も大きいac成分の値(ピーク値)を示す圧力センサ110をピークチャンネルとし、最も小さいac成分の値(ボトム値)を示す圧力センサ110をボトムチャンネルとする。また、第1センサアレイ111についてのトノグラムを第1トノグラムとして、第1トノグラムのピーク値を第1ピーク値、ボトム値を第1ボトム値という。さらに、第2のセンサアレイ112についてのトノグラムを第2トノグラムとして、第2トノグラムのピーク値を第2ピーク値、ボトム値を第2ボトム値という。
【0064】
血圧指標特定部25は、第1センサアレイ111のピークチャンネルと第2センサアレイ112のピークチャンネルのうち、より大きいac成分の値を示す方のピークチャンネルをアクティブチャンネルとして選定し、当該アクティブチャンネルにおいて計測された血圧情報から、各種の血圧指標を特定する。
【0065】
<トノグラムとセンサ部の配置状態の関係>
図9は、センサ部11が橈骨動脈TDに対して適切に配置されている状態とその配置状態におけるトノグラムの形状を示す図、
図10、
図11、
図12、
図13、
図14、
図15、
図16はセンサ部11が橈骨動脈TDに対して不適切に配置されている7つのパターンと、その配置状態におけるトノグラムの形状を示す図である。なお、本明細書においては、2つのセンサアレイのうち、第1のセンサアレイ111が最も脈圧波の計測に適した場所に配置されている状態を、適切な配置状態とする。
【0066】
図9に示すように、第1トノグラムのac成分が略中央にピークチャンネルが位置する山形となり、かつ、第2トノグラムのac成分が第1のセンサアレイ111のトノグラムよりもやや平坦な山形となり、かつ、第1のセンサアレイ111及び第2のセンサアレイ112のdc成分が略平坦な形状を示す場合には、センサ部11が橈骨動脈TDに対して適切に配置されている状態であると定義する。
【0067】
そうすると、
図10に示すように、第1トノグラム及び第2トノグラムのいずれもが、ac成分及びdc成分ともに低いレベルで平坦な形状を示している(ピーク値が低く、ピーク値とボトム値の差が小さい)場合には、センサ部11が橈骨動脈TDに対して押圧される力の程度が弱い、即ち押圧不足の状態であると推定できる。
【0068】
また、
図11に示すように、第1トノグラム及び第2トノグラムのいずれもが、ac成分及びdc成分ともに高いレベルで平坦な形状を示している(ピーク値の値が高く、ピーク値とボトム値の差が小さい)場合には、センサ部11が橈骨動脈TDに対して押圧される力の程度が過剰、即ち過押圧の状態であると推定できる。
【0069】
また、
図12に示すように、第1
、第2どちらかのトノグラムがac成分及びdc成分ともに低いレベルで平坦な形状を示しており、かつ、他方のトノグラムがac成分及びdc成分ともに高いレベルで平坦な形状を示している場合には、センサ部11が橈骨動脈TDの延びる方向に対して平行な方向(以下「動脈方向」という)に傾いている、即ち動脈方向傾き状態であると推定できる。
【0070】
また、
図13に示すように、第1トノグラムのdc成分が平坦ではなく、一方向への斜線を描くような形状となっていれば、センサ部11が橈骨動脈TDの延びる方向に対して垂直な方向(以下「幅方向」という)に傾いている、即ち幅方向傾き状態であると推定できる。
【0071】
また、
図14に示すように、第1トノグラムのピークチャンネルの位置が、中央から左右に大きく離れた位置にある場合には、センサ部11が幅方向にずれている、即ち幅方向ずれ状態であると推定できる。
【0072】
また、
図15に示すように、第1トノグラムと第2トノグラムのピーク値の高さにあまり差がない(それぞれのピークチャンネルの出力値差が少ない)場合には、センサ部11が動脈方向にずれている、即ち動脈方向ずれ状態であると推定できる。
【0073】
また、
図16に示すように、第1トノグラムと第2トノグラムのピークチャンネルの位置が大きくずれている場合には、センサ部11が体表面との接触面内における回転方向にずれている、即ち回転ずれ状態であると推定できる。
【0074】
(配置状態の推定および信頼度の算出)
配置状態推定部23は、特徴量および/またはトノグラムの形状からセンサ部11の橈骨動脈TDに対する配置状態の推定を行い、信頼度算出部24は該配置状態に応じて信頼度を算出する。
図17は配置状態推定部23がセンサ部11の配置状態を推定する際の処理の一例を示したフローチャート、
図18は
図17の「押圧
程度・動脈方向傾き判定」段階の処理の一例を示すフローチャートである。以下、
図17、
図18に従い、配置状態推定部が配置状態の推定を行う方法を説明する。
【0075】
配置状態推定部23、信頼度算出部24は、それぞれ初期値として「配置状態フラグ=なし(適正配置)」、「信頼度=100」を設定する(ステップS100)。
【0076】
配置状態推定部23は、まず「押圧程度・動脈方向傾き」の判定を行う(ステップS101)。
図18に示すように、配置状態推定部23は第1センサアレイ111の押圧程度を推定した後に、第2センサアレイ112の押圧程度を推定し、その後に第1センサアレイ111と第2のセンサアレイ112の押圧程度の組み合わせで、センサ部11の「押圧
程度・動脈方向傾き」を推定する。
【0077】
具体的には、まず第1センサアレイ111について、第1ピーク値と第1ボトム値の差が所定の出力値差閾値を
下回るか否かを判定する(ステップS111)。ここで、第1ピーク値と第1ボトム値の差が所定の出力値差閾値を
下回らなければ、第1センサアレイ111への押圧程度は適切と推定する(ステップS112)。
【0078】
ステップS111で、第1ピーク値と第1ボトム値の差が所定の出力値差閾値を
下回れば、さらに第1ピーク値が所定の過押圧レベル閾値を超えるか否かを判定する(S113)。ここで、第1ピーク値が該過押圧レベル閾値を超えるのであれば、第1センサアレイ111への押圧程度は過押圧状態であると推定する(ステップS114)。
【0079】
ステップS113で、第1ピーク値が該過押圧レベル閾値を超えなければ、さらに第1ボトム値が所定の押圧不足レベル閾値を下回るか否かを判定する(S115)。ここで、第1ボトム値が所定の押圧不足レベル閾値を下回れば、第1センサアレイ111の押圧程度は、押圧不足状態であると推定し(S116)、下回らなければ、第1センサアレイ111の押圧程度は適切であると推定する。
【0080】
続けて、第2センサアレイ112についても、第1センサアレイ111の場合と同様に押圧程度の推定を行う(ステップS117〜S122)。
【0081】
さらに続けて、第1センサアレイ111と第2センサアレイ112のいずれもが過押圧
か否かを判定する(ステップS123)。ここで、いずれもが過押圧状態である場合には、センサ部11は橈骨動脈TDに対して「過押圧状態」であると推定し、配置状態フラグに「過押圧状態」を追加する(S124)。
【0082】
ステップS123で、第1センサアレイ111と第2センサアレイ112のいずれもが過押圧ではないと判定した場合には、第1センサアレイ111と第2センサアレイ112のいずれもが押圧不足であるか否かを判定する(ステップS125)。ここで、第1センサアレイ111と第2センサアレイ112のいずれもが押圧不足状態である場合には、センサ部11は橈骨動脈TDに対して「押圧不足状態」であると推定し、配置状態フラグに「押圧不足状態」を追加する(ステップS126)。
【0083】
ステップS125で、第1センサアレイ111と第2センサアレイ112のいずれもが押圧不足状態ではないと判定した場合には、第1センサアレイ111と第2センサアレイ112のいずれかが過押圧状態、かつ、他方が押圧不足状態であるか否かを判定する(ステップS127)。ここで、第1センサアレイ111と第2センサアレイ112のいずれかが過押圧状態、かつ、他方が押圧不足状態である場合には、センサ部11は橈骨動脈TDに対して、「動脈方向傾き状態」であると推定し、配置状態フラグに「動脈方向傾き状態」を追加する(ステップS128)。
【0084】
ステップS127で、第1センサアレイ111と第2センサアレイ112のいずれかが過押圧状態、かつ、他方が押圧不足状態でないと判定した場合には、センサ部11は橈骨動脈TDに対して「適正配置状態」であると推定する(ステップS129)。
【0085】
また、配置状態推定部23が推定した配置状態が、「過押圧状態」、「押圧不足状態」または「動脈方向傾き状態」である場合には、信頼度算出部24は、信頼度の値を30マイナスする。
【0086】
図17に示すように、配置状態推定部23は、次にセンサ部11の幅方向傾きの有無について判定する(ステップS102)。具体的には、第1センサアレイ111のピークチャンネルからプラス10チャンネルに位置する圧力センサ110が示すdc成分の値と、第1センサアレイ111のピークチャンネルからマイナス10チャンネルに位置する圧力センサ110が示すdc成分の値の差により「dc成分傾き」を求める。
【0087】
そして、上記dc成分傾きの値が、所定のdc成分傾き閾値以上の値であった場合には、配置状態推定部23は、センサ部11が橈骨動脈TDに対して「幅方向傾き状態」であると推定し、配置状態フラグに「幅方向傾き状態」を追加する(ステップS103)。また、信頼度算出部24は信頼度の値から、70/4の値をマイナスする。
【0088】
なお、dc成分傾きは、トノグラムの2点以上の値を用いて求めればよく、必ずしも上記のチャンネルの圧力センサ110の位置のものに限定されないし、全てのチャンネルの値を用いて線形回帰により求めてもよい。
【0089】
配置状態推定部23は続けて、センサ部11の幅方向ずれの有無について判定する(ステップS104)。具体的には、第1センサアレイ111のピークチャンネル番号が、ピークチャンネル位置許容範囲内になければ、センサ部11が橈骨動脈TDに対して「幅方向ずれ状態」であると推定し、配置状態フラグに「幅方向ずれ状態」を追加する(ステップS105)。また、信頼度算出部24は信頼度の値から、70/4の値をマイナスする。
【0090】
ここで、ピークチャンネル位置許容範囲は、例えばセンサアレイが46個の圧力センサ
110で構成されている場合、ピークチャンネル下限閾値を20とし、ピークチャンネル上限閾値を26として、20から26の数値範囲とすることができる。
【0091】
なお、幅方向ずれの有無の判定方法は、上記のものに限られず、例えばトノグラムのac成分が複数の山を有するような形状である場合、即ちac成分に極大値が2つ以上ある場合には、幅方向ずれ状態であると推定することも可能である。
【0092】
配置状態推定部23は続けて、センサ部11の動脈方向ずれの有無について判定する(ステップS106)。具体的には、第1センサアレイ111のピーク値と第2センサアレイ112のピーク値の差が、所定のピーク値差閾値を下回れば、センサ部11が橈骨動脈TDに対して「動脈方向ずれ状態」であると推定し、配置状態フラグに「動脈方向ずれ状態」を追加する(ステップS107)。また、信頼度算出部24は、信頼度の値から、70/4の値をマイナスする。
【0093】
配置状態推定部23は続けて、センサ部11の回転ずれの有無について判定する(ステップS108)。具体的には、第1センサアレイ111のピークチャンネル番号と第2センサアレイ112のピークチャンネル番号の差が所定のピークチャンネル差閾値を超える場合には、センサ部11が橈骨動脈TDに対して「回転ずれ状態」であると推定し、配置状態フラグに「回転ずれ状態」を追加する(ステップS109)。また、信頼度算出部24は、信頼度の値から、70/4の値をマイナスする。
【0094】
以上のようにして、センサ部11の橈骨動脈TDに対する最終的な配置状態が64パターンのうちの一つに推定され、これに応じて計測値の信頼度が算出され、算出された信頼度と共に、計測された血圧情報、及び特定された各血圧指標が記憶
部40に記録される。
【0095】
(本実施例に係る血圧測定装置の効果)
本実施例に係る血圧測定装置1は、上述の構成により、押圧程度、動脈方向傾き、幅方向傾き、動脈方向ずれ、幅方向ずれ、回転ずれといった観点から、センサ部11の配置状態を効率的に推定することができる。また、このようにして推定されたセンサ部11の配置状態から、センサ部11によって計測された血圧情報についての信頼度を100点法により得ることができる。このため、センサ部11が不適切な配置状態にあるときに得られた血圧情報(即ち信頼度の低い計測値)を、適切な配置状態にあるときに得られた血圧情報(即ち信頼度の高い計測値)と同様に扱うことを防止することができる。
【0096】
<変形例>
なお、本実施例では、配置状態推定のための5つのステップの各段階で、信頼度の値の算出を行っているが、必ずしもこのような方法を取る必要はなく、最終的に推定された配置状態に基づいて信頼度を算出するようにしても良い。
【0097】
また、本実施例では、「押圧程度・動脈方向傾き」の状態が、他の不適切な配置状態よりも、大きく信頼度に影響を及ぼすように値を設定した(それぞれ30と70/4とした)が、必ずしもこのような振り分けである必要はない。
【0098】
さらに、本実施例では、信頼度を100点法で算出しているが、必ずしもこのような連続値である必要はなく、「信頼できる」、「やや信頼できる」、「あまり信頼できない」、「ほとんど信頼できない」、「全く信頼できない」等の段階評価によって信頼度を表すようにしても良い。
【0099】
また、本実施例では、最終的な配置状態が64通りのうちの一つに推定されるようにしたが、これに限られるわけではなく、より多くのパターンから配置状態を推定してもよい
。例えば、本実施例ではずれや傾きが「有るか否か」のみを推定しているものについて、ずれや傾きがある場合は「どちらの方向に」の要素を加えて、729パターンの配置状態から最終的な配置状態を推定してもよい。さらに、「どの程度」の要素を加えて、より細かく配置状態を推定するものであってもかまわない。
【0100】
また、これとは逆に、より少ない判定要素から配置状態の推定を行うようにしてもよい。例えば、「押圧程度」、「幅方向ずれの有無」、「幅方向傾きの有無」のみから最終的な配置状態を推定してもよい。このようにすれば、センサアレイを1つ用いるだけで配置状態の推定を行うことが可能である。
【0101】
また、記
憶部40に記録される情報は、本実施例のものだけに限られず、トノグラム作成部22により作成されたトノグラムのデータ、配置状態推定部23により推定された配置状態の情報も併せて記録するようにしてもよい。
【0102】
<実施例2>
以下、本発明に係る実施例2について、
図19〜
図22に基づいて説明する。なお、本実施例は実施例1と比べて、ハードウェア構成が出力部50を有する以外は略同じであるため、そのような部分については実施例1と同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。また、血圧測定装置の行う処理、制御部20の機能についても実施例1と共通する部分が多くあるため、そのような部分については詳細な説明を省略する。
【0103】
(血圧測定装置の構成)
図19は、本実施例の血圧測定装置2の全体構成を示すブロック図である。血圧測定装置2は概略、計測部10、制御部20、入力部30、記憶部40、出力部50を有する。前述の通り、出力部50以外は実施例1と同様の構成及び機能である。
【0104】
出力部50は、ユーザに対し情報出力を行うインターフェースを提供する。本実施例においては、出力部50として液晶ディスプレイ及びスピーカを有することを前提とするが、必ずしもこれに限定されない。例えば、液晶ディスプレイ以外の表示装置、スピーカ以外の音声出力装置、他のデバイスとの間でデータ通信を行う通信装置などを用いる事もできる。通信装置におけるデータ通信方式は、有線であってもよいし無線によるものであってもよい。また、これらを組み合わせて用いる事も可能である。
【0105】
(制御部の機能)
図20は制御部20の機能構成の概略を示すブロック図である。
図20に示すように、制御部20は、基本的な機能として、特徴量抽出部21、トノグラム作成部22、配置状態推定部23、信頼度算出部24、血圧指標特定部25、配置状態出力処理部26、を有している。本実施例では、制御部20が必要なプログラムを実行することによって、これら各部の機能を発揮する。配置状態出力処理部26以外の構成は実施例1と同様である。
【0106】
配置状態出力処理部26は、後述する出力部50が推定されたセンサ部11の配置状態に応じた出力をするための処理を行う機能である。
【0107】
(血圧測定装置の機能)
図21は、本実施例に係る血圧測定装置2が行う処理の流れの一例を示す全体フローチャートである。
図21が示すように、血圧測定装置2は、一心拍毎に、血圧情報を計測し(ステップS22)、計測された情報から特徴量を抽出してトノグラムを作成し(ステップS23)、該トノグラムに基づいてセンサ部11の橈骨動脈TDに対する配置状態を推定し(ステップS24)、該推定配置状態に基づいて信頼度を算出する(ステップS25)。ここまでの流れは実施例1と同様である。
【0108】
血圧測定装置2は、さらに、推定されたセンサ部11の配置状態が「適切」であるか否かを判定し(ステップS26)、「適切」でない場合には警告信号を出力部50から出力する(ステップS27)。
【0109】
その後、血圧測定装置は、血圧指標特定部25により特定された各血圧指標、センサ部11の推定配置状態イメージ、算出された信頼度、推定された配置状態に対応するコメントを、表示部に表示する(ステップS28)。
【0110】
血圧情報の計測、特徴量の抽出、配置状態の推定、信頼度の算出については、実施例1と同様に行うため説明は省略し、以下では推定された配置状態に基づいて、配置状態出力処理部26が行う処理について説明する。
【0111】
配置状態出力処理部26は、まず推定された配置状態が、「適切」であるか否かの判定を行い、「適切」でない場合には、警告信号として、警告音声をスピーカから発するように処理を行う。なお、配置状態が適切でない場合とは、即ち計測された血圧情報の信頼度が所定の値以下ということであるため、警告信号を発するか否かの判定は、信頼度の値が該所定の値を超えるか否かにより行うようにしてもよい。
【0112】
ここで、音声は1種類の警告音であってもよいし、配置状態に応じた複数の種類の警告音であってもよい。また、言語による音声メッセージで、配置状態に応じた警告を発しても良い。この場合、音声データは記憶部40の音声データベースから該当する音声データを選択するようにしてもよい。
【0113】
また、配置状態出力処理部26は、推定された配置状態に応じた、「配置状態イメージ画像」を、表示部に表示するように処理を行う。ここで、配置状態イメージ画像は、記憶部40の配置状態イメージ画像データベースから、該当する配置状態イメージ画像データを選択することにより取得するようにしてもよい。
【0114】
さらに、配置状態出力処理部26は、推定された配置状態に応じた、「配置状態コメント」を表示部に表示するように処理を行う。また、配置状態が「適切」でない場合の配置状態コメントには、どのようにすれば適切な配置状態に修正することができるかを指示する、「修正指示コメント」を併せて表示してもよい。ここで、配置状態コメント及び修正指示コメントは、記憶部40のデータベースからデータを選択することにより取得してもよい。この場合には、配置状態コメントに修正コメントを含めたコメントデータを用意するのであってもよいし、配置状態コメントと、修正コメントはそれぞれのデータベースに格納されていてもよい。
【0115】
(表示装置への情報の表示)
制御部20は、以上のように配置状態出力処理部26によって処理された情報と併せて、トノグラム作成部22により作成された第1トノグラム、信頼度算出部24により算出された信頼度、血圧指標特定部25により特定された各血圧指標、を液晶ディスプレイに表示する。
図22A、
図22Bに、その表示画面の一例を示す。
図22Aは、センサ部11が橈骨動脈TDに対して適切な配置状態にある場合の例、
図22Bは幅方向にずれと傾きがある場合の例である。
【0116】
(本実施例に係る血圧測定装置の効果)
上述の構成により、本実施例に係る血圧測定装置2の利用者は、測定された血圧指標(SBP、DBP、PR)、および該血圧指標の信頼度を液晶ディスプレイの表示により適時に知ることができる。また、計測対象の橈骨動脈TDに対してセンサ部11がどのよう
な配置状態にあるのかを、イメージ画像及び文字情報の表示により適時に知ることができる。
【0117】
また、本実施例に係る血圧測定装置2の利用者は、前記血圧指標を含む血圧情報の信頼度が所定の基準値以下である場合には、音声および/またはディスプレイ画面により、その旨を即時に知ることができる。さらに、信頼度を低下させる原因となっている不適切な配置状態を、イメージ画像及び文字情報により適時に知ることができ、センサ部11を適切な配置状態にするための方法を文字情報の表示により知ることができる。このため、利用者自らが、センサ部11の配置状態を、血圧を測定するのに適した状態に修正することが可能になる。
【0118】
<変形例>
上記ディスプレイに表示された各種情報は、表示されるだけでなく随時記憶部40に記録されるようにしてもよい。また、表示される情報に限らず、計測された全ての血圧情報、第2トノグラムのデータ、等も併せて記録されるようにしても構わない。
【0119】
また、本実施例では血圧測定装置と一体の液晶ディスプレイに、情報が表示されるようにしたが、通信装置により血圧測定装置とは別体のモニタ、プロジェクタ、スマートフォンなどの携帯情報端末、により情報を表示させても構わない。
【0120】
また、本実施例では警告信号として音声が出力されるようにしたが、これに限らず、例えば光の明滅などで警告を発するようにしても良い。その場合には、液晶ディスプレイの画面でこれを表現しても良いし、ディスプレイとは別にLED等を用いてもよい。