(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材と当該基材の表面に接着された表皮材とからなり、前記表皮材の表面側から前記基材の裏面側まで縫い針に係合されて挿通された糸のループ部分が前記基材の裏面側に固定され、前記表皮材の表面側に前記糸のステッチ模様が形成された内装部品であって、
前記基材の裏面側又は前記基材と前記表皮材との間には、前記ステッチ模様の糸が挿通される位置にゴム系部材が装着され、当該ゴム系部材に形成された糸挿通孔によって前記糸のループ部分の根元部が拘束されていること、
前記ゴム系部材は、前記基材に当接させた状態で前記ステッチ模様の糸が縫製されて、前記基材に装着されていること、
前記糸の外径は、前記基材に前記縫い針によって形成された糸貫通孔の内径より小さいことを特徴とする内装部品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術には、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1の技術は、プラスチック製の基材102にステッチ模様形成領域としての薄肉部101が形成されているので、ステッチ模様の周囲で基材表面が階段状に形成されることになり、ステッチ模様に対する意匠上の制約条件となる。この制約条件は、特にデザイン性を重視する自動車の内装品(例えば、インストルメントパネルやコンソールリッド等)では好ましくない。
【0008】
一方、ステッチ模様形成領域に薄肉部101を形成しない場合、上記内装品の基材102は、芯材がポリプロピレン等のいわゆる硬質プラスチック製であるので、ステッチ模様を構成する糸106の外径(例えば、0.5〜0.8mm)より相当程度太い外径(例えば、1.5〜2.0mm)の針挿入部を有するニードル104を使用しないと、ニードル104が簡単に折損又は変形等してしまう恐れがあった。したがって、針挿入部の折損又は変形等を回避するためには、圧入する糸106の外径に比較して、基材102に穿設する細孔103の内径を相当程度大きくせざるを得なかった。この場合、糸の圧入部105を基材102の細孔103周りの樹脂で十分に締付けることができず、ステッチ模様の糸106を確実に基材102に固定できないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、下糸を使用せず、上糸だけでステッチ模様を形成した内装部品及びその製造方法であって、基材の制約条件を緩和しつつ、縫い針の折損や変形等を防止し、簡単な構造で、ステッチ模様の糸を基材に確実に固定できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る内装部品及びその製造方法は、次のような構成を有している。
(1)基材と当該基材の表面に接着された表皮材とからなり、前記表皮材の表面側から前記基材の裏面側まで縫い針に係合されて挿通された糸のループ部分が前記基材の裏面側に固定され、前記表皮材の表面側に前記糸のステッチ模様が形成された内装部品であって、
前記基材の裏面側又は前記基材と前記表皮材との間には、前記ステッチ模様の糸が挿通される位置にゴム系部材が装着され、当該ゴム系部材に形成された糸挿通孔によって前記糸のループ部分の根元部が拘束されていることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、基材の裏面側又は基材と表皮材との間には、ステッチ模様の糸が挿通される位置にゴム系部材が装着され、当該ゴム系部材に形成された糸挿通孔によって糸のループ部分の根元部が拘束されているので、ステッチ模様を構成する糸の外径に比較して相当程度大きな外径の針挿入部(針先端部)を有する縫い針を使用してゴム系部材に糸を挿通しても、当該ゴム系部材に縫い針にて形成された糸挿通孔が縮径することによって、糸のループ部分の根元部を確実に締付けることができる。また、糸の外径に比較して相当程度大きな外径の針挿入部を有する縫い針を使用できるので、縫い針の折損や変形等が生じにくく、基材のステッチ模様形成領域で薄肉部を設ける等の基材に対する制約条件を課する必要がない。その結果、基材の制約条件を緩和しつつ、縫い針の折損や変形等を防止し、ゴム系部材を備えるという簡単な構造で、ステッチ模様の糸を基材に確実に固定できる。
【0012】
なお、基材と表皮材との間にゴム系部材が装着される場合には、基材の裏面側に補強リブや他の部品を取り付ける取り付け座等を設ける自由度が増加し、基材の制約条件をより一層緩和させることができる。また、この場合には、ゴム系部材と補強リブとの干渉を回避できるため、ゴム系部材を細かく分断する必要もない。
【0013】
(2)(1)に記載された内装部品において、
前記ゴム系部材は、前記ステッチ模様に沿って帯状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、ゴム系部材は、ステッチ模様に沿って帯状に形成されているので、基材の裏面側又は基材と表皮材との間に、ゴム系部材を簡単に装着することができる。また、ステッチ模様の各縫い目においてゴム系部材の各糸挿通孔の内径を略均一に縮径させることができる。そのため、ステッチ模様の糸の各ループ部分の根元部をより一層均一な締付力で締付けることができる。その結果、ゴム系部材を簡単に装着でき、また、ゴム系部材を介してステッチ模様の糸の各ループ部分をより一層均一に基材に固定できる。
【0015】
(3)(2)に記載された内装部品において、
前記ゴム系部材には、前記ステッチ模様の糸が挿通される以外の箇所で、薄肉部が前記ステッチ模様の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、ゴム系部材には、ステッチ模様の糸が挿通される以外の箇所で、薄肉部がステッチ模様の長手方向に沿って形成されているので、基材がステッチ模様の長手方向と直交する方向に湾曲していても、薄肉部が変形することによってゴム系部材と基材との密着状態を保持させることができる。また、薄肉部は、ステッチ模様の糸が挿通される以外の箇所で形成されているので、縫製時に基材とゴム系部材との間にステッチ模様の糸が入り込みにくい。そのため、基材の裏面側に形成される糸の各ループ部分をより一層均一な大きさに形成することができる。その結果、ステッチ模様の糸の表皮材側における浮き上がりを抑制しつつ、ゴム系部材を介してより一層安定的に基材に固定できる。
【0017】
(4)(2)又は(3)に記載された内装部品において、
前記ゴム系部材には、前記ステッチ模様の糸が挿通される箇所で、厚肉部が前記ステッチ模様の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、ゴム系部材には、ステッチ模様の糸が挿通される箇所で、厚肉部がステッチ模様の長手方向に沿って形成されているので、ゴム系部材の各糸挿通孔の内径を厚肉部によってより強く縮径させることができる。そのため、ステッチ模様の糸の各ループ部分の根元部をより一層強力な締付力で締付けることができる。その結果、ステッチ模様の糸の表皮材側における浮き上がりを抑制しつつ、ゴム系部材を介してより一層安定的に基材に固定できる。なお、基材の裏面側に装着されるゴム系部材においては、厚肉部をゴム系部材の受け治具に嵌め込むことによって、ゴム系部材の浮きを防止することができる。
【0019】
(5)(1)又は(2)に記載された内装部品において、
前記基材と前記表皮材との間に装着された前記ゴム系部材は、当該ゴム系部材の表面が前記基材の表面と略面一になるように、前記基材の表面側に形成した凹状取付け座に内嵌されていることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、基材と表皮材との間に装着されたゴム系部材は、当該ゴム系部材の表面が基材の表面と略面一になるように、基材の表面側に形成した凹状取付け座に内嵌されているので、ゴム系部材による表皮材の変形(盛り上がり等)を防止することができる。また、ゴム系部材の基材に対する位置決めを簡単に行うことができ、基材に装着したゴム系部材が基材から脱落する恐れを回避できる。そのため、ステッチ模様を形成する表皮材の見栄えを向上しつつ、ゴム系部材を基材に装着する作業性を向上させることができる。
【0021】
(6)(1)又は(2)に記載された内装部品において、
前記基材の裏面側に装着された前記ゴム系部材は、前記基材の裏面から湾曲状に離間する湾曲部を備え、前記糸挿通孔は、前記湾曲部に形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、基材の裏面側に装着されたゴム系部材は、基材の裏面から湾曲状に離間する湾曲部を備え、糸挿通孔は、湾曲部に形成されているので、湾曲部は、針挿入時には糸が進入しやすい斜め下方へ延伸変形させ、針引き戻し時には糸が引っ掛かりやすい斜め上方へ収縮変形させることができる。そのため、針引き戻しに併せてゴム系部材が収縮変形することによって、糸挿通孔の内径をより一層縮径させ、糸のループ部分の根元部をより一層強く締付けることができる。また、斜め上方へ収縮変形した湾曲部の復元力によって表皮材側における糸の浮き上がりを抑制することができる。更に、ゴム系部材の糸挿通孔が形成されている湾曲部は、基材の裏面から湾曲状に離間しているので、縫い針によって基材の裏面側に押し出されるダレ部と縮径する糸挿通孔との干渉を回避させることができる。その結果、ステッチ模様の糸の表皮材側における浮き上がりを抑制しつつ、ゴム系部材を介してより一層確実に基材に固定できる。
【0023】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載された内装部品において、
前記基材の裏面側には、前記基材の糸貫通孔と隣接する位置で、当該糸貫通孔の孔方向と略平行に形成された糸規制部を有する糸規制リブが立設されていることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、基材の裏面側には、基材の糸貫通孔と隣接する位置で、当該糸貫通孔の孔方向と略平行に形成された糸規制部を有する糸規制リブが立設されているので、縫い針の糸孔に糸を係合した状態で、縫い針を表皮材の表面側から基材の裏面側の挿通終端(所定位置)まで挿通させた後に、縫い針を上方へ引き戻すとき、糸孔から糸規制部側に移動しようとする糸を糸規制部によって糸規制部と反対側へ押し戻すことができる。そのため、糸のループ部分が、基材の糸貫通孔に対して糸規制部と反対側のみに安定して形成される。糸のループ部分が糸規制部と反対側のみに安定して形成されるので、ゴム系部材の糸挿通孔からループ部分が抜けるのを、より一層防止することができる。
【0025】
(8)(1)乃至(7)のいずれか1つに記載された内装部品において、
前記ゴム系部材は、ショアA硬度がA60〜80の範囲内で、厚さが1〜3mmの範囲内であることを特徴とする。
【0026】
本発明においては、ゴム系部材は、ショアA硬度がA60〜80の範囲内で、厚さが1〜3mmの範囲内であるので、挿通した糸をゴム系部材の適度な粘弾性によって拘束させることができる。そのため、ゴム系部材は、糸挿通孔内の糸の滑りを防止して、糸のループ部分の根元部を確実に締付けることができる。その結果、ステッチ模様の糸を、ゴム系部材を介してより一層確実に基材に固定できる。
【0027】
(9)(1)乃至(8)のいずれか1つに記載された内装部品において、
前記糸のループ部分は、前記ゴム系部材又は前記基材の裏面側に付着された接着剤によって前記ゴム系部材又は前記基材と接着されていることを特徴とする。
【0028】
本発明においては、糸のループ部分は、ゴム系部材又は基材の裏面側に付着された接着剤によってゴム系部材又は基材と接着されているので、糸挿通孔による糸の締付力を接着剤の接着力によって補完することができる。そのため、ゴム系部材における材質の経年劣化や硬度の温度変化等に対応して、ステッチ模様の糸の引き抜きをより長期的に阻止することができる。その結果、ステッチ模様の糸を、ゴム系部材と接着剤とを介してより一層確実に基材に固定できる。
【0029】
(10)(1)乃至(9)のいずれか1つに記載された内装部品の製造方法であって、
前記ステッチ模様を形成するステッチ加工装置には、前記表皮材の上方に配置され前記縫い針を作動させて前記糸を前記基材に供給する糸供給装置と、前記基材の裏面に当接し当該基材を所定の姿勢で保持するとともに、前記糸のループ部分が収容可能に配置された糸逃し部を有する受け治具とを備え、
前記縫い針を前記基材及び前記ゴム系部材に挿通した所定位置から前記表皮材の表面側に引き戻す時に、前記ゴム系部材に形成された糸挿通孔が縮径して、前記糸のループ部分の根元部を拘束することを特徴とする。
【0030】
本発明においては、ステッチ模様を形成するステッチ加工装置には、表皮材の上方に配置され縫い針を作動させて糸を基材に供給する糸供給装置と、基材の裏面に当接し当該基材を所定の姿勢で保持するとともに、糸のループ部分が収容可能に配置された糸逃し部を有する受け治具とを備え、縫い針を基材及びゴム系部材に挿通した所定位置から表皮材の表面側に引き戻す時に、ゴム系部材に形成された糸挿通孔が縮径して、糸のループ部分の根元部を拘束するので、ステッチ模様を構成する糸の外径に比較して相当程度大きな外径の針挿入部を有する縫い針を使用してゴム系部材に糸を挿通しても、当該ゴム系部材に縫い針にて形成された糸挿通孔が縮径することによって、糸のループ部分の根元部を確実に締付けることができる。また、糸の外径に比較して相当程度大きな外径の針挿入部を有する縫い針を使用できるので、縫い針の折損や変形等が生じにくく、基材のステッチ模様形成領域で薄肉部を設ける等の基材に対する制約条件を課する必要がない。その結果、基材の制約条件を緩和しつつ、縫い針の折損や変形等を防止し、ゴム系部材を備えるという簡単な構造で、ステッチ模様の糸を基材に確実に固定できる。
【0031】
(11)(10)に記載された内装部品の製造方法において、
前記糸供給装置には、前記縫い針の外周側で前記表皮材を押圧する表皮押え部材を備え、前記縫い針の挿入前から引き戻し後まで、前記表皮押え部材が前記縫い針の周囲で前記表皮材を押圧することを特徴とする。
【0032】
本発明においては、糸供給装置には、縫い針の外周側で表皮材を押圧する表皮押え部材を備え、縫い針の挿入前から引き戻し後まで、表皮押え部材が縫い針の周囲で表皮材を押圧するので、基材とゴム系部材との密着状態を維持でき、縫い針の引き戻し時に基材とゴム系部材との間でバタツキが生じるのを、抑えることができる。そのため、基材が立体的に湾曲していても、基材から糸のループ部分が抜けるのを防止することができる。その結果、基材の制約条件を緩和でき、ステッチ模様の糸を確実に基材に固定できる。
【0033】
(12)(10)又は(11)に記載された内装部品の製造方法において、
前記縫い針の糸供給側の外周面には、前記糸を案内する糸溝が糸孔まで針軸方向に形成されているとともに、
前記受け治具の糸逃し部には、前記基材の裏面側に挿通された前記縫い針の糸溝側の外周面と微小隙間をもって針軸方向で略平行に配置された糸規制面と、前記糸規制面と前記縫い針を挟んで対向し前記糸のループ部分が収容可能に配置された糸逃し面とを備え、
前記縫い針を前記所定位置まで挿通してから引き戻す時に、前記糸溝内で弛もうとする糸を前記糸規制面によって前記糸逃し面の方向へ前記糸孔を通して押し出し、前記糸孔と前記糸逃し面との間で、前記糸のループ部分を形成することを特徴とする。
【0034】
本発明においては、縫い針の糸供給側の外周面には、糸を案内する糸溝が糸孔まで針軸方向に形成されているとともに、受け治具の糸逃し部には、基材の裏面側に挿通された縫い針の糸溝側の外周面と微小隙間をもって針軸方向で略平行に配置された糸規制面と、糸規制面と縫い針を挟んで対向し糸のループ部分が収容可能に配置された糸逃し面とを備え、縫い針を所定位置まで挿通してから引き戻す時に、糸溝内で弛もうとする糸を糸規制面によって糸逃し面の方向へ糸孔を通して押し出し、糸孔と糸逃し面との間で、糸のループ部分を形成するので、糸のループ部分が縫い針の糸供給側と反対側のみに安定して形成される。そのため、縫い針の引き戻しに伴って、ゴム系部材の糸挿通孔から糸のループ部分が抜けるのを、より一層防止することができる。その結果、糸のループ部分を安定的に形成でき、ステッチ模様の糸を確実に基材に固定できる。
【0035】
(13)(12)に記載された内装部品の製造方法において、
前記縫い針は、前記糸溝が前記糸孔と交差する位置まで略同一の溝深さで形成され、かつ、前記縫い針の外周面が前記糸溝を除いて円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0036】
本発明においては、縫い針は、糸溝が糸孔と交差する位置まで略同一の溝深さで形成され、かつ、縫い針の外周面が糸溝を除いて円弧状に形成されているので、縫い針を所定位置まで挿入してから引き戻すとき、糸供給側の糸は、糸溝内から外周面側へ突出することなく案内されて、基材との干渉を回避できるとともに、糸供給側と反対側の糸は、縫い針の外周面と基材の糸貫通孔との間で略一定の大きさの摩擦抵抗を受けることができる。そのため、縫い針の引き戻しに伴って、糸のループ部分が縫い針の糸供給側と反対側のみに安定して形成され、ゴム系部材の糸挿通孔からループ部分が抜けるのを、より一層防止することができる。その結果、糸のループ部分の大きさをより均一に形成でき、ステッチ模様の糸を確実に基材に固定できる。
【0037】
(14)(10)又は(11)に記載された内装部品の製造方法において、
前記縫い針は、糸供給側の糸を案内する中空孔が針軸方向に形成された管針であって、針基端部の管壁に前記糸供給側の糸を挿入する糸挿入孔が形成されるとともに、針先端部の管壁で前記糸挿入孔の反対側に前記糸を取り出す糸取出し孔が形成され、
前記受け治具の糸逃し部には、前記糸取出し孔と対向し前記糸のループ部分が収容可能に配置された糸逃し面を備え、
前記縫い針を前記所定位置まで挿通してから引き戻す時に、前記中空孔内で弛もうとする糸を前記中空孔の内周面によって前記糸取出し孔から前記糸逃し面の方向へ押し出し、前記糸取出し孔と前記糸逃し面との間で、前記糸のループ部分を形成することを特徴とする。
【0038】
本発明においては、縫い針は、糸供給側の糸を案内する中空孔が針軸方向に形成された管針であって、針基端部の管壁に糸供給側の糸を挿入する糸挿入孔が形成されるとともに、針先端部の管壁で糸挿入孔の反対側に糸を取り出す糸取出し孔が形成され、受け治具の糸逃し部には、糸取出し孔と対向し糸のループ部分が収容可能に配置された糸逃し面を備え、縫い針を所定位置まで挿通してから引き戻す時に、中空孔内で弛もうとする糸を中空孔の内周面によって糸取出し孔から糸逃し面の方向へ押し出し、糸取出し孔と糸逃し面との間で、糸のループ部分を形成するので、糸のループ部分が縫い針の糸取出し孔側のみに安定して形成される。そのため、縫い針の引き戻しに伴って、ゴム系部材の糸挿通孔から糸のループ部分が抜けるのを、より一層防止することができる。その結果、糸のループ部分を安定的に形成でき、ステッチ模様の糸を確実に基材に固定できる。
【0039】
(15)(14)に記載された内装部品の製造方法において、
前記縫い針の管壁には、前記糸挿入孔から前記糸取出し孔の高さまで針軸方向に前記糸の外径より幅が狭いスリット状透孔が形成されていることを特徴とする。
【0040】
本発明においては、縫い針の管壁には、糸挿入孔から糸取出し孔の高さまで針軸方向に糸の外径より幅が狭いスリット状透孔が形成されているので、中空孔内の糸をスリット状透孔から挿入するピン等に引っ掛けて糸挿入孔から糸取出し孔まで簡単に挿通させることができる。そのため、縫い針への糸の通し作業を簡素化させることができる。なお、スリット状透孔は、糸の外径より幅が狭いので、中空孔内の糸を中空孔の内周面によって糸取出し孔から確実に押し出すことができる。
【0041】
(16)(10)乃至(15)のいずれか1つに記載された内装部品の製造方法において、
前記ゴム系部材は、前記基材に押し出し成形されて一体化されていることを特徴とする。
【0042】
本発明においては、ゴム系部材は、基材に押し出し成形されて一体化されているので、ゴム系部材と基材との密着状態を安定して確保することができる。そのため、基材からステッチ模様の糸の抜けをより一層防止することができる。その結果、ステッチ模様の糸の表皮材側における浮き上がりを抑制しつつ、ゴム系部材を介してより一層安定的に基材に固定できる。また、事前にゴム系部材を基材に装着させることができるので、受け治具内でのゴム系部材と基材との位置ズレも簡単に回避することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、下糸を使用せず、上糸だけでステッチ模様を形成した内装部品及びその製造方法であって、基材の制約条件を緩和しつつ、縫い針の折損や変形等を防止し、簡単な構造で、ステッチ模様の糸を基材に確実に固定できる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
次に、本発明に係る実施形態である内装部品及びその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る第1実施例のステッチ模様を備えた内装部品の構造を説明し、そのステッチ模様を形成する加工手順を説明する。また、本第1実施例のゴム系部材の糸拘束力に対してショア硬度及び厚さの好適範囲を評価する試験結果について説明する。更に、本実施形態に係る第2実施例から第5実施例のステッチ模様を備えた内装部品の構造を説明し、そのステッチ模様を形成する加工手順を説明する。
【0046】
(第1実施例)
<ステッチ模様を備えた内装部品の構造>
まず、本実施形態に係る第1実施例のステッチ模様を備えた内装部品の構造を、
図1、
図2を用いて説明する。
図1に、本発明に係る実施形態である内装部品の斜視図を示す。
図2に、
図1に示す内装部品において第1実施例のステッチ模様の固定構造を表すA−A断面図を示す。
【0047】
図1、
図2に示すように、本内装部品10は、基材1と当該基材の表面1Aに接着された表皮材2とからなり、表皮材2の表面2A側から基材1の裏面1B側まで縫い針に係合されて挿通された糸31のループ部分32が基材1の裏面1B側に固定され、表皮材2の表面2Aに糸31のステッチ模様3を備えた内装部品である。そして、基材1の裏面1B側には、ステッチ模様3の糸31が挿通される位置にゴム系部材4が装着され、当該ゴム系部材4に形成された糸挿通孔41によって糸31のループ部分32の根元部321が拘束されている。
【0048】
本内装部品10は、例えば、車両の運転席及び助手席の前方に配置するインストルメントパネルに適用でき、所要の形状に形成された硬質の合成樹脂からなる基材1と、基材1の表面に接着された軟質の表皮材2とから構成されている。基材1は、例えば、射出成形されたポリプロピレン(PP)製である。また、表皮材2は、表面側の延性に優れた表皮21と基材側の発泡層22とで構成され、基材1に接着されている。表皮21には、高級感やソフト感を醸すため、革調のシボ模様が形成されている。表皮21は、例えば、0.5〜0.8mm程度の厚さを有するオレフィン系エラストマ(TPO)製である。発泡層22は、例えば、3〜4mm程度の厚さを有するポリプロピレンフォーム(PPF)製である。また、表皮材2の表面には、車両左右方向に延びるステッチ模様3が形成されている。
【0049】
ステッチ模様3は、糸(上糸)31を表皮材2の表面2A側から基材1の裏面1B側の所定位置まで縫い針と共に挿通して、縫い針を引き戻す際に形成される糸31のループ部分32を基材1の裏面1B側に備えたゴム系部材4が拘束することによって、基材1に固定されている。すなわち、基材1の裏面側には、縫い針によって糸31が挿通されたゴム系部材4を備え、当該ゴム系部材4に縫い針にて形成された糸挿通孔41が縮径することによって糸31のループ部分32の根元部321が拘束され、その結果、ステッチ模様3の糸31が基材1に固定されている。なお、糸31は、例えば、外径が0.5〜0.8mm程度の合成繊維製であり、糸31の外径は、基材1に縫い針によって形成された糸貫通孔11の内径(例えば、1.5〜2.0mm)より小さい。
【0050】
ゴム系部材4は、例えば、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の材質からなり、ステッチ模様の長手方向に沿って帯状に形成された板状ゴム体であって、ショアA硬度(JIS K 6253)がA60〜80の範囲内で、厚さが1〜3mmの範囲内であることが好ましい。ゴム系部材4は、上記所定の硬度及び厚さを有する平坦な板状ゴム体であって、予め基材1の裏面形状に沿わせて形成する必要はない。また、ゴム系部材4は、基材1の裏面に当接させるだけであるので、ゴム系部材4を基材1の裏面に接着させる必要もない。ゴム系部材4は、基材1に当接させた状態でステッチ模様3の糸31を縫製することによって、基材1の裏面1B側に装着されている。なお、エチレンプロピレンゴム(EPDM)製の板状ゴム板では、ショアA硬度(JIS K 6253)がA70〜80の範囲内で、厚さが1.0〜2.0mmの範囲内であることが好ましい。上記好適範囲は、後述する試験結果から求めたものである。
【0051】
また、糸31のループ部分32は、ステッチ模様3の縫製後にゴム系部材4の裏面側に付着された接着剤5によって、当該ゴム系部材4又は基材1と接着されていることが好ましい。ゴム系部材4における材質の経年劣化や硬度の温度変化等に対応して、糸挿通孔41の縮径による糸31の締付力を接着剤5の接着力によって補完することができるからである。ステッチ模様3の縫製後に、接着剤5によって糸31のループ部分32をゴム系部材4又は基材1の裏面側に接着させる理由は、ステッチ模様3の縫製前では、接着剤5が縫い針71に付着して縫い針71の基材1への挿通抵抗が大幅に増加するからである。ここでは、接着剤5として、例えば、塗布型の接着剤を用いたが、それ以外に、接着剤5として、例えば、接着テープを用いてもよい。
【0052】
<ステッチ模様の加工手順>
次に、第1実施例の本内装部品におけるステッチ模様を形成する加工手順を、
図3を用いて詳細に説明する。
図3に、
図2に示すステッチ模様を形成する加工手順を表す加工断面図を示す。
図3(a)は、縫い針を挿通終端まで挿通したときの状態(仮想線で示す)を示し、
図3(b)は、縫い針を表皮材の表面側まで引き戻した状態を示し、
図3(c)は、ループ部分の根元部がゴム系部材によって締付けられ、縫い針を次の縫目の位置に移動させる前の状態を示す。
【0053】
図3に示すように、本内装部品10のステッチ模様3を形成するステッチ加工装置20には、表皮材2の上方に配置され縫い針71を作動させて糸31を基材1に供給する糸供給装置7と、基材1及びゴム系部材4の裏面に当接し基材1及びゴム系部材4を所定の姿勢で保持する受け治具6とを備えている。糸供給装置7は、針先端部71Tに糸31を挿通(係合)する糸孔711が形成された縫い針71を有し、糸孔711に係合された糸31を表皮材2の表面2A側からゴム系部材4の裏面側まで縫い針71と共に挿通してから表皮材2の表面側まで引き戻し、次の縫い位置まで縫い針71を移動させる装置である。糸供給装置7は、図示しない多関節型のロボットのアーム部先端に装着され、ステッチ模様3を形成するため、必要な位置に移動できる。受け治具6には、ステッチ模様3に沿って延設された帯状のゴム系部材4と当接し位置決めするゴム受座61が形成されている。また、ゴム受座61の下方には、ゴム系部材4の裏面側に挿通される縫い針71に対する糸逃し部62が形成されている。
【0054】
また、糸供給装置7には、縫い針71の外周側で表皮材2を押圧する表皮押え部材72を備えている。表皮押え部材72は、装置本体に立設された支持部721と、支持部721の先端側に略円錐状に形成された押え部722とを備え、押え部722の中心部723に縫い針71と糸31とが通過できる通孔724が形成されている。押え部722の中心部723は、引き戻し後の縫い針71の先端より先端側に位置するように形成されている。そのため、押え部722は、内装部品10のステッチ模様3を形成する箇所が立体的に湾曲していても、縫い針71の挿入前から引き戻し後まで、縫い針71の周囲で表皮材2を均一に押えることができる。すなわち、押え部722は、略円錐状に形成されているので、内装部品10のステッチ模様3を形成する箇所が立体的に湾曲していても、当該箇所の周辺部と干渉せずに、縫い針71の周囲のみで表皮材2を確実に押えることができる。
【0055】
まず、
図3(a)に示すように、受け治具6には、ゴム受座61にゴム系部材4を投入して位置決めした後、表皮材2が接着された基材1を載置する。その後、糸供給装置7の縫い針71をステッチ模様3の縫目位置上方に配置して、縫い針71が表皮材2を挿通する前に、表皮押え部材72の押え部722が表皮材2を押圧する。押え部722が表皮材2を押圧することによって、ゴム受座61とゴム系部材4との隙間、及び基材1とゴム系部材4との隙間をそれぞれ無くした密着状態とする。その後、縫い針71の糸孔711に係合された糸31を、表皮材2の表面2A側からゴム系部材4の裏面側まで縫い針71と共に挿通する。縫い針71の挿通深さは、縫い針71がゴム系部材4を貫通してから引き戻されたときに、ゴム系部材4の裏面側に形成される糸31のループ部分32のループ長が10〜30mm程度となるように設定する。なお、ゴム系部材4は、基材1と一体成形されていてもよい。ゴム系部材4と基材1との一体成形は、基材1の射出成形工程(2色成形)によって行うことができる。また、
図21に示すように、押出し装置8からゴム系部材4を基材1の裏面1B(又は表面)に押し出すことによって接合させて、ゴム系部材4と基材1とを一体化させることもできる。この場合、ゴム系部材4は、基材1と相溶性のある材質で形成するか、又は、基材1と機械的に連結できる連結部を備える必要がある。
【0056】
次に、
図3(b)に示すように、糸供給装置7の縫い針71を表皮材2の上方まで引き戻す。縫い針71によってゴム系部材4に穿設された糸挿通孔41は、縫い針71で水平方向に押し広げられた後、縫い針71を引き戻すことによって、ゴム系部材4の弾性力によって水平方向に縮径する。ゴム系部材4の糸挿通孔41が縮径することによって、ゴム系部材4の糸挿通孔41と糸31との間で摩擦抵抗が発生し、ゴム系部材4の裏面側に所定の大きさの糸のループ部分32が形成される。なお、縫い針71によって基材1に穿設された糸貫通孔11は、基材1が硬質プラスチック製であるので、縫い針71を引き戻しても殆んど縮径しない。したがって、縫製後に基材1の糸貫通孔11によって糸31のループ部分32を拘束することは困難である。
【0057】
上述したように、縫い針71の引き戻し時においても、押え部722が表皮材2を押圧しているので、ゴム受座61とゴム系部材4との隙間、及び基材1とゴム系部材4との隙間をそれぞれ無くした密着状態を維持でき、縫い針71の引き戻し時に基材1とゴム系部材4との間で生じるバタツキを抑えることができる。そのため、内装部品10のステッチ模様3を形成する箇所が立体的に湾曲していても、縫い針71の挿入前から引き戻し後まで、縫い針71の周囲で表皮材2を均一に押えることによって、ゴム系部材4を基材1に密着させた状態でゴム系部材4の裏面側にループ部分32を確実に形成でき、ゴム系部材4の糸挿通孔41からループ部分32が抜けるのを防止することができる。
【0058】
次に、
図3(c)に示すように、糸供給装置7の縫い針71の先端を表皮押え部材72の押え部722より上方へ引き戻した後に、次の縫目の位置に移動させる。このときには、ゴム系部材4に形成された糸挿通孔41は、完全に縮径してループ部分32の根元部321を確実に締付ける。その結果、ステッチ模様3の糸31を確実に基材1に固定できる。なお、本実施形態では、特許文献1の技術のように、ループ部分32を基材1に圧入することによって拘束する必要がないので、糸31の外径(例えば、0.5〜0.8mm)に比較して相当程度大きな外径(例えば、1.5〜2.0mm)の針挿入部(針先端部71T)を有する縫い針71を使用できる。そのため、基材1に薄肉部を設けなくても、縫い針71の折損や変形等が生じにくい。
【0059】
<ゴム系部材の硬度及び厚さの試験結果>
次に、ゴム系部材の糸拘束力に対してショアA硬度及び厚さの好適範囲を評価する試験結果について、
図4を用いて説明する。
図4に、
図2に示すゴム系部材の糸拘束力に対してショアA硬度及び厚さの好適範囲を表す試験結果グラフを示す。縦軸にゴム系部材の硬度(ショアA)を示し、横軸にゴム系部材の板厚を示す。
【0060】
図4に示す試験は、ゴム系部材4の材質をニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)の3水準に、硬度(ショアA)を50、60、70、80、90の5水準に、板厚(厚さmm)を1.0、2.0、3.0の3水準に選定して、
図3に示すステッチ模様の加工手順に従いステッチ模様3を形成したとき、その縫製結果を表(表皮材側)と裏(ゴム系部材側)で評価した。縫製結果は、○が表で糸31の浮き上がりがなく裏でループ部分32の大きさが均等である場合を示し、△が表で糸31の浮き上がりが一部にあり、裏でループ部分32の不揃いが一部にある場合を示す。
【0061】
図4に示すように、縫製結果が○となった好適範囲Qは、ショアA硬度がA60〜80の範囲内で、厚さが1〜3mmの範囲内であることが判明した。この場合、材質は、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)のいずれでも良い。また、ゴム系部材4の材質をエチレンプロピレンゴム(EPDM)とした場合には、好適範囲Qは、ショアA硬度(JIS K 6253)がA60〜80の範囲内で、厚さが1.0〜2.0mmの範囲内であることが判明した。
【0062】
(第2実施例)
<ステッチ模様を備えた内装部品の構造>
次に、本実施形態に係る第2実施例のステッチ模様を備えた内装部品の構造を、
図5を用いて説明する。
図5に、
図1に示す内装部品において第2実施例のステッチ模様の固定構造を表すA−A断面図を示す。
【0063】
図5に示すように、本内装部品10Bは、ゴム系部材4Bを除いて、第1実施例の構造と共通している。そのため、第1実施例との共通部分に関しては、同一の符号を付して、その説明は原則として割愛する。ここでは、相違点であるゴム系部材4Bに関する内容を、詳細に説明する。
【0064】
第2実施例のゴム系部材4Bは、ステッチ模様3の縫目位置で基材1の裏面から湾曲状に離間する湾曲部4BTを備え、ステッチ模様3の長手方向に沿って帯状に形成された板状ゴム体である。ゴム系部材4Bにおける糸挿通孔41Bは、湾曲部4BTの中央付近に形成されている。第2実施例のゴム系部材4Bの厚さは、湾曲部4BTを含めて全体的に略均一に形成されている。この構造を採ることによって、湾曲部4BTに形成された糸挿通孔41Bがより一層伸縮することによって糸31のループ部分32の根元部321をより強く締付けると同時に、湾曲部4BTが糸31のループ部分32を基材1と反対側へ押し戻すことができる。その結果、ステッチ模様3の糸31の表皮材側での浮き上がりを効果的に抑制しつつ、ステッチ模様3の糸31をより確実に基材1に固定できる。
【0065】
また、第2実施例のゴム系部材4Bは、ステッチ模様3の縫目位置で基材1の裏面から湾曲状に離間する湾曲部4BTを備えているので、基材1の糸貫通孔11の裏面周囲に縫い針71によって押し出されるダレ部12とゴム系部材4Bの糸挿通孔41Bとの干渉を回避させることができる。そのため、ゴム系部材4Bの糸挿通孔41Bにおける締付力をより一層高めることができる。
【0066】
<ステッチ模様の加工手順>
次に、第2実施例の本内装部品10Bにおけるステッチ模様を形成する加工手順を、
図6を用いて詳細に説明する。
図6に、
図5に示すステッチ模様を形成する加工手順を表す加工断面図を示す。
図6(a)に、縫い針を挿通終端まで挿通したときの状態(仮想線で示す)を示し、
図6(b)に、縫い針を表皮材の表面側まで引き戻した状態を示し、
図6(c)に、糸のループ部分の根元部がゴム系部材によって締付けられ、縫い針を次の縫目の位置に移動させる前の状態を示す。
【0067】
図6に示すように、本内装部品10のステッチ模様3を形成するステッチ加工装置20Bには、表皮材2の上方に配置され縫い針71を作動させて糸31を基材1に供給する糸供給装置7と、基材1及びゴム系部材4Bの裏面に当接し基材1及びゴム系部材4Bを所定の姿勢で保持する受け治具6Bとを備えている。ステッチ加工装置20Bは、受け治具6Bを除いて、第1実施例の構造と共通している。そのため、第1実施例との共通部分に関しては、同一の符号を付して、その説明は原則として割愛する。ここでは、相違点である受け治具6Bに関する内容を、詳細に説明する。受け治具6Bには、ステッチ模様3に沿って延設された帯状のゴム系部材4Bを保持し位置決めするゴム受座61Bが形成されている。また、受け治具6Bには、基材1の裏面側に挿通される縫い針71に対する糸逃し部62Bが形成されている。ここで、ゴム受座61B及び糸逃し部62Bは、湾曲部4BT以外の平坦部を保持し位置決めするように形成されている。
【0068】
まず、
図6(a)に示すように、受け治具6Bには、ゴム受座61Bにゴム系部材4Bを投入して位置決めした後、表皮材2が接着された基材1を載置する。その後、糸供給装置7の縫い針71をステッチ模様3の縫目位置上方に配置して、縫い針71が表皮材2を挿通する前に、表皮押え部材72の押え部722が表皮材2を押圧する。押え部722が表皮材2を押圧することによって、ゴム受座61Bとゴム系部材4Bとの隙間、及び基材1とゴム系部材4B(湾曲部4BTを除く)との隙間をそれぞれ無くした状態とする。その後、縫い針71の糸孔711に係合された糸31を、表皮材2の表面側からゴム系部材4Bの裏面側まで縫い針71と共に挿通する。縫い針71の挿通深さは、縫い針71がゴム系部材4Bを貫通してから引き戻されたときに、ゴム系部材4Bの裏面側に形成される糸31のループ部分32のループ長が10〜30mm程度となるように設定する。このとき、ゴム受座61B及び糸逃し部62Bは、湾曲部4BT以外の平坦部を保持しているので、湾曲部4BTは縫い針71に押されて斜め下方に延伸される。
【0069】
次に、
図6(b)に示すように、糸供給装置7の縫い針71を表皮材2の上方まで引き戻す。このとき、縫い針71によって湾曲部4BTに穿設された糸挿通孔41Bは、縫い針71を挿通することによって斜め下方に押し広げられた後、縫い針71を引き戻すことによって斜め上方に復元しながら縮径する。また、湾曲部4BTも、縫い針71を挿通することによって斜め下方に押し広げられた後、縫い針71を引き戻すことによって斜め上方に復元しながら、糸挿通孔周囲がくさび状に変形する。糸挿通孔41Bが縮径することによって、糸挿通孔41Bと糸31との間で摩擦抵抗が発生し、ゴム系部材4Bの裏面側に所定の大きさのループ部分32が形成される。なお、縫い針71の引き戻し時においても、押え部722が表皮材2を押圧しているので、ゴム受座61Bとゴム系部材4Bとの隙間、及び基材1とゴム系部材4B(湾曲部4BTを除く)との隙間をそれぞれ無くした状態を維持し、縫い針71の引き戻し時に基材1とゴム系部材4Bとの間でバタツキが生じるのを抑えることができる。そのため、ゴム系部材4Bの糸挿通孔41Bから糸31のループ部分32が抜けるのを防止することができる。
【0070】
次に、
図6(c)に示すように、糸供給装置7の縫い針71の先端を表皮押え部材72の押え部722より上方へ引き戻した後に、次の縫目の位置に移動させる。このときには、湾曲部4BTに形成された糸挿通孔41Bは、完全に縮径して糸のループ部分32の根元部321を確実に締付ける。また、湾曲部4BTは、糸挿通孔周囲がくさび状に変形することによって、ループ部分32を基材1と反対側へ押し戻す力が発生し、ステッチ模様3の表皮材側での糸31の浮き上がりを抑制する。その結果、ステッチ模様3の糸31での浮き上がりを抑制しつつ、確実に基材1に固定できる。なお、本実施形態では、特許文献1の技術のように、ループ部分32を基材1に圧入することによって拘束する必要がないので、糸31の外径(例えば、0.5〜0.8mm)に比較して相当程度大きな外径(例えば、1.5〜2.0mm)の針挿入部(針先端部71T)を有する縫い針71を使用できる点は、第1実施例と同様である。そのため、基材1に薄肉部を設けなくても、縫い針71の折損や変形等が生じにくい。
【0071】
(第3実施例)
<ステッチ模様を備えた内装部品の構造>
次に、本実施形態に係る第3実施例のステッチ模様を備えた内装部品の構造を、
図7、
図8を用いて説明する。
図7に、
図1に示す内装部品において第3実施例のステッチ模様を表すA−A断面図を示す。
図8に、
図7に示すB−B断面図を示す。
【0072】
図7、
図8に示すように、本内装部品10Cは、基材1Cとゴム系部材4Cとを除いて、第1実施例の構造と共通している。そのため、第1実施例との共通部分に関しては、同一の符号を付して、その説明は原則として割愛する。ここでは、相違点である基材1C及びゴム系部材4Cに関する内容を、詳細に説明する。
【0073】
本内装部品10Cは、基材1Cと当該基材の表面1CAに接着された表皮材2とからなり、表皮材2の表面2A側から基材1Cの裏面1CB側まで縫い針に係合されて挿通された糸31のループ部分32が基材1Cの裏面1CB側に固定され、表皮材2の表面2Aに糸31のステッチ模様3を備えた内装部品である。そして、基材1Cの裏面1CB側には、ステッチ模様3の糸31が挿通される位置にゴム系部材4Cが装着され、当該ゴム系部材4Cに形成された糸挿通孔41Cによって糸31のループ部分32の根元部321が拘束されている。この構造は、第1実施例と共通している。
【0074】
また、第3実施例に特有の構造として、基材1Cの裏面1CB側には、縫い針によって基材1Cに形成される糸貫通孔11Cと隣接する位置で、当該糸貫通孔11Cの孔方向と略平行に形成された糸規制部141Cを有する糸規制リブ14Cが立設されている。糸規制部141Cは、糸31のループ部分32が基材1Cの糸貫通孔11Cに対して糸規制部141Cと反対側のみに形成されるように、糸31の動きを規制する板状体である。また、糸規制リブ14Cは、糸31のループ部分32の形成に必要な反力を有しつつ、糸規制部141Cに縫い針71Cが接触しても、縫い針71Cが折損しないように弾性変形可能なリブ強度を備えていることが好ましい。
【0075】
糸規制部141Cは、各ループ部分32に対応して、所定高さを有するように形成されている。糸規制部141Cの高さ方向先端部は、縫い針71Cの挿通終端(所定位置)における糸31の折り返し点33に相当する高さまで形成されていることが好ましい。また、糸規制部141Cは、ステッチ模様3に沿って所定幅を有する。ここでは、糸規制部141Cは、各縫目ごとに分割して形成されているが、互いに連結するように連続状に形成してもよい。また、ゴム系部材4Cには、糸規制リブ14Cと当接する部分に切欠き部42Cが形成されている。糸規制リブ14Cは、基材1Cの裏面1CBから垂直状に起立しているが、ゴム系部材4Cの切欠き部42Cを避けるため、
図8に仮想線で示すように、基材1Cの裏面1CBと連結する基端部142Cのみをゴム系部材4Cから離間する方向に屈曲状に形成してもよい。
【0076】
<ステッチ模様の加工手順>
第3実施例の本内装部品10Cにおけるステッチ模様3を形成する加工手順は、基本的に
図3(a)〜(c)に示す手順と同様であるが、
図3(b)において糸31のループ部分32を形成する方法のみが、相違する。ここでは、縫い針71Cを所定位置まで挿通してから引き戻す時に、糸31のループ部分32を形成する方法を、
図9、
図10を用いて説明する。
図9に、
図7に示すステッチ模様を形成する縫い針の引き戻し途中の断面図を示す。
図10に、
図9に示すC−C断面図を示す。
【0077】
図9、
図10に示すように、本内装部品10Cのステッチ模様3を形成するステッチ加工装置20Cには、表皮押え部材72と、縫い針71C、受け治具6Cとを備えている。縫い針71Cの針先端部71TCには、糸31を挿通(係合)する糸孔711Cが横方向に形成され、縫い針71Cの糸供給側の外周面71SCには、糸31を案内する糸溝712Cが糸孔711Cまで針軸方向に形成されている。糸溝712Cは、糸規制部141Cと隣接する位置に形成されている。糸規制部141Cと縫い針71Cの糸溝側の外周面71SCとの微小隙間は、糸31の外径と同一又はそれより僅かに小さい程度が好ましい。例えば、糸31の外径が0.8mmであれば、上記微小隙間は0.8〜0.6mm程度が好ましい。
【0078】
また、受け治具6Cには、ゴム系部材4Cと当接し位置決めするゴム受座61Cが形成されている。また、ゴム受座61Cの下方には、基材1Cの裏面1CB側に立設された糸規制リブ14Cと近接する側壁面621Cと、側壁面621Cと糸規制リブ14C及び縫い針71Cを挟んで対向し糸31のループ部分32を収容可能に配置された糸逃し面622Cとを備えた糸逃し部62Cが形成されている。
【0079】
縫い針71Cの糸孔711Cに糸31を挿通(係合)した状態で、縫い針71Cを表皮材2の表面2A側からゴム系部材4Cの裏面側の挿通終端(所定位置)まで挿通させた(仮想線で示す状態)後に、縫い針71Cを上方(矢印H2の方向)へ引き戻すとき、糸溝712C内で弛もうとする糸31は、糸規制部141Cによって糸逃し面622Cの方向(矢印P1の方向)へ、糸孔711Cを通して押し出される。縫い針71Cの針先端部71TCにおける糸溝712C内の糸31が、糸孔711Cを通して糸逃し面622Cの方向(矢印P1の方向)へ押し出されることによって、糸供給側の糸31は糸溝712C内で弛むことなく収納された状態で上方(矢印P2の方向)へ引き戻され、基材1C及びゴム系部材4Cとの摩擦抵抗が殆んど生じない。そのため、縫い針71Cの糸溝712C内の糸31は、略一定の力で簡単に上方(矢印P2の方向)へ巻き戻される。これに対して、縫い針71Cの糸溝712Cと反対側の糸31は、基材1C及びゴム系部材4Cとの摩擦抵抗が大きく、上方への移動が規制されている。
【0080】
その結果、縫い針71Cを上方へ引き戻すとき、糸31は糸孔711Cから糸逃し面622C側(糸規制部141Cと反対側)へ移動し、糸孔711Cと糸逃し面622Cとの間に形成された収容空間623C内で、糸31のループ部分32が形成される。ゴム系部材4Cの裏面側には、糸31のループ部分32が、縫い針71Cの糸供給側と反対側のみに安定して形成される。したがって、縫い針71Cの引き戻しに伴って、ゴム系部材4Cの糸挿通孔41Cからループ部分32が抜けるのを、より一層防止することができる。
【0081】
(第4実施例)
<ステッチ模様を備えた内装部品の構造>
次に、本実施形態に係る第4実施例のステッチ模様を備えた内装部品の構造を、
図11、
図12を用いて説明する。
図11に、
図1に示す内装部品において第4実施例のステッチ模様の固定構造を表すA−A断面図を示す。
図12に、
図11に示すD−D断面図を示す。
【0082】
図11、
図12に示すように、本内装部品10Dは、基材1Dとゴム系部材4Dとを除いて、第1実施例の構造と共通している。そのため、第1実施例との共通部分に関しては、同一の符号を付して、その説明は原則として割愛する。ここでは、相違点である基材1D及びゴム系部材4Dに関する内容を、詳細に説明する。
【0083】
本内装部品10Dは、基材1Dと当該基材の表面1DAに接着された表皮材2とからなり、表皮材2の表面2A側から基材1Dの裏面1DB側まで縫い針に係合されて挿通された糸31のループ部分32が基材1Dの裏面1DB側に固定され、表皮材2の表面2Aに糸31のステッチ模様3を備えた内装部品である。この構造は、第1実施例と共通している。
【0084】
しかし、第4実施例に特有の構造として、基材1Dと表皮材2との間には、ステッチ模様3の糸31が挿通される位置にゴム系部材4Dが装着され、当該ゴム系部材4Dに形成された糸挿通孔41Dによって糸31のループ部分32の根元部321が拘束されている。この場合、基材1Dの裏面1DB側には、ゴム系部材4Dが装着されていないので、基材1Dの裏面1DB側に補強リブ13Dや他の部品を取り付ける取り付け座(図示しない)等を設ける自由度が増加し、基材1Dの制約条件をより一層緩和させることができる。また、ゴム系部材4Dと補強リブ13Dとの干渉を回避できるため、ゴム系部材4Dを細かく分断する必要もない。
【0085】
また、基材1Dと表皮材2との間に装着されたゴム系部材4Dは、当該ゴム系部材4Dの表面42Dが基材1Dの表面1DAと略面一になるように、基材1Dの表面側に形成した凹状取付け座12Dに内嵌されていることが好ましい。ゴム系部材4Dの厚さは、基材1Dの厚さの1/2以下であることが好ましく、更には、1.0〜1.5mm程度が好ましい。ゴム系部材4Dの表面42Dが基材1Dの表面1DAと略面一にすることによって、表皮材2の厚みを均一に保つことができ、ゴム系部材4Dによる表皮材2の変形(盛り上がり等)を防止することができる。また、ゴム系部材4Dを基材1Dの表面側に形成した凹状取付け座12Dに嵌合することによって、ゴム系部材4Dの基材1Dに対する位置決めを簡単に行うことができ、基材1Dに装着したゴム系部材4Dが基材1Dから脱落する恐れを回避できる。
【0086】
<ステッチ模様の加工手順>
第4実施例の本内装部品10Dにおけるステッチ模様3を形成する加工手順は、基本的に
図3(a)〜(c)に示す手順と同様であるが、
図3(b)において糸31のループ部分32を形成する方法のみが、相違する。ここでは、縫い針71Dを所定位置まで挿通してから引き戻す時に、糸31のループ部分32を形成する方法を、
図13、
図14を用いて説明する。
図13に、
図12に示すステッチ模様を形成する縫い針の引き戻し途中の断面図を示す。
図14に、
図13に示すE−E断面図を示す。
【0087】
図13、
図14に示すように、本内装部品10Dのステッチ模様3を形成するステッチ加工装置20Dには、表皮押え部材72と、縫い針71D、受け治具6Dとを備えている。縫い針71Dの針先端部71TDには、糸31を挿通(係合)する糸孔711Dが横方向に形成され、縫い針71Dの糸供給側の外周面71SDには、糸31を案内する糸溝712Dが糸孔711Dまで針軸方向に形成されている。糸溝712Dは、後述する糸規制面621Dと隣接する位置に形成されている。なお、縫い針71Dは、糸溝712Dが糸孔711Dと交差する位置まで略同一の溝深さで形成され、かつ、縫い針71Dの外周面71SDが糸溝712Dを除いて円弧状に形成されている点が、
図9に示す縫い針71Cと相違する。
【0088】
また、受け治具6Dの糸逃し部62Dには、基材1Dの裏面1DB側に挿通された縫い針71Dの糸溝712D側の外周面71SDと微小隙間をもって針軸方向で略平行に配置された糸規制面621Dと、糸規制面621Dと縫い針71Dを挟んで対向し糸31のループ部分32が収容可能に配置された糸逃し面622Dとを備えている。糸規制面621Dと縫い針71Dの糸溝712D側の外周面71SDとの微小隙間は、糸31の外径と同一又はそれより僅かに小さい程度が好ましい。例えば、糸31の外径が0.8mmであれば、上記隙間は0.8〜0.6mm程度が好ましい。
【0089】
縫い針71Dの糸孔711Dに糸31を挿通(係合)した状態で、縫い針71Dを表皮材2の表面2A側から基材1Dの裏面1DB側の挿通終端(所定位置)まで挿通させた(仮想線で示す状態)後に、縫い針71Dを上方(矢印H2の方向)へ引き戻すとき、糸溝712D内で弛もうとする糸31は、糸規制面621Dによって糸逃し面622Dの方向(矢印P1の方向)へ、糸孔711Dを通して押し出される。縫い針71Dの針先端部71TDにおける糸溝712D内の糸31が、糸孔711Dを通して糸逃し面622Dの方向(矢印P1の方向)へ押し出されることによって、糸供給側の糸31は糸溝712D内で弛むことなく収納された状態で上方(矢印P2の方向)へ引き戻され、基材1D及びゴム系部材4Dとの摩擦抵抗が殆んど生じない。そのため、縫い針71Dの糸溝712D内の糸31は、略一定の力で簡単に上方(矢印P2の方向)へ巻き戻される。これに対して、縫い針71Dの糸溝712Dと反対側の糸31は、基材1D及びゴム系部材4Dとの摩擦抵抗が大きく、上方への移動が規制されている。
【0090】
その結果、縫い針71Dを上方へ引き戻すとき、糸31は糸孔711Dから糸逃し面622D側(糸規制面621Dと反対側)へ移動し、縫い針71Dの糸孔711Dと糸逃し面622Dとの間に形成された収容空間623D内のみで、糸31のループ部分32が形成される。なお、縫い針71Dは、糸溝712Dが糸孔711Dと交差する位置まで略同一の溝深さで形成され、かつ、縫い針71Dの外周面71SDが糸溝712Dを除いて円弧状に形成されているので、縫い針71Dを所定位置まで挿入してから引き戻すとき、糸供給側の糸31は、糸溝712D内から外周面側に突出することなく収容されて、基材1Dとの干渉を回避できる。反面、糸供給側と反対側の糸31は、縫い針71Dの外周面71SDと基材1Dの糸貫通孔11Dとの間で略一定の大きさの摩擦抵抗を受けることができる。そのため、縫い針71Dの引き戻しに伴って、糸31のループ部分32が縫い針71Dの糸供給側と反対側のみに安定して形成され、ゴム系部材4Dの糸挿通孔41Dからループ部分32が抜けるのを、より一層防止することができる。
【0091】
(第5実施例)
<ステッチ模様を備えた内装部品の構造>
次に、本実施形態に係る第5実施例のステッチ模様を備えた内装部品の構造を、
図15〜
図17を用いて説明する。
図15に、
図1に示す内装部品において第5実施例のステッチ模様の固定構造を表すA−A断面図を示す。
図16に、
図15に示すG−G断面図を示す。
図17に、
図16に示すゴム系部材の部分矢視図を示す。
【0092】
図15〜
図17に示すように、本内装部品10Eは、基材1Eとゴム系部材4Eとを除いて、第1実施例の構造と共通している。そのため、第1実施例との共通部分に関しては、同一の符号を付して、その説明は原則として割愛する。ここでは、相違点である基材1E及びゴム系部材4Eに関する内容を、詳細に説明する。
【0093】
本内装部品10Eは、基材1Eと当該基材の表面1EAに接着された表皮材2とからなり、表皮材2の表面2A側から基材1Eの裏面1EB側まで縫い針に係合されて挿通された糸31のループ部分32が基材1Eの裏面1EB側に固定され、表皮材2の表面2Aに糸31のステッチ模様3を備えた内装部品である。そして、基材1Eの裏面1EB側には、ステッチ模様3の糸31が挿通される位置にゴム系部材4Eが装着され、当該ゴム系部材4Eに形成された糸挿通孔41Eによって糸31のループ部分32の根元部321が拘束されている。この構造は、第1実施例と共通している。
【0094】
しかし、第5実施例に特有の構造として、ゴム系部材4Eには、ステッチ模様3の糸31が挿通される以外の箇所で、薄肉部45Eがステッチ模様3の長手方向に沿って形成されている。薄肉部45Eは、例えば、ゴム系部材4Eの表面4EA側に略V字状断面の凹溝として形成され、ゴム系部材4Eを薄肉部45Eを支点に幅方向で湾曲させることができる。ここでは、
図16に示すように、基材1Eがステッチ模様3の長手方向と直交する方向に湾曲しているので、薄肉部45Eが変形することによってゴム系部材4Eと基材1Eとの密着状態を保持させることができる。なお、薄肉部45Eは、ゴム系部材4Eの裏面側に形成してもよく、又は、ゴム系部材4Eの内部に中空状に形成してもよい。
【0095】
また、第5実施例に特有の構造として、ゴム系部材4Eには、ステッチ模様3の糸31が挿通される箇所で、厚肉部42Eがステッチ模様3の長手方向に沿って形成されている。厚肉部42Eは、ゴム系部材4Eの幅方向中央部に形成され、当該厚肉部42Eの幅方向両側に、厚肉部42Eより薄肉化された鍔部43E、44Eが形成されている。なお、薄肉部45Eは、一方の鍔部43Eに形成されている。厚肉部42Eによって、ゴム系部材4Eの各糸挿通孔41Eの内径をより強く縮径させることができ、また、鍔部43E、44Eによって基材との密着性を高めることができる。そのため、ゴム系部材4Eは、ステッチ模様3の糸31の各ループ部分32の根元部321をより一層強力な締付力で拘束することができる。
【0096】
<ステッチ模様の加工手順>
第5実施例の本内装部品10Eにおけるステッチ模様3を形成する加工手順は、基本的に
図3(a)〜(c)に示す手順と同様であるが、
図3(b)において糸31のループ部分32を形成する方法のみが、相違する。ここでは、縫い針71Eを所定位置まで挿通してから引き戻す時に、糸31のループ部分32を形成する方法を、
図18〜
図20を用いて説明する。
図18に、
図16に示すステッチ模様を形成する縫い針(管針)の引き戻し途中の断面図を示す。
図19に、
図18に示すH−H断面図を示す。
図20に、
図18に示す縫い針(管針)の概略矢視図を示す。
【0097】
図18〜
図20に示すように、本内装部品10Eのステッチ模様3を形成するステッチ加工装置20Eには、表皮押え部材72と、縫い針71E、受け治具6Eとを備えている。縫い針71Eは、糸供給側の糸31を案内する中空孔714Eが針軸方向に形成された管針であって、針基端部71KEの管壁に糸供給側の糸31を挿入する糸挿入孔713Eが形成されるとともに、針先端部71TEの管壁で糸挿入孔713Eの反対側に糸31を取り出す糸取出し孔715Eが形成されている。また、縫い針71Eの針先端部71TEには、針先テーパー面716Eが形成され、当該針先テーパー面716Eより上方に糸取出し孔715Eが形成されている。
【0098】
また、糸挿入孔713Eは、縫い針71Eの外周面71SEから中空孔714Eの内周面に向けて管壁を斜め下方に貫通している。また、糸取出し孔715Eは、中空孔714Eの内周面から縫い針71Eの外周面71SEに向けて管壁を斜め下方に貫通している。そして、縫い針71Eの管壁には、糸挿入孔713Eから糸取出し孔715Eの高さまで針軸方向に糸31の外径より幅が狭いスリット状透孔717Eが形成されている。そのため、中空孔714E内の糸31を、スリット状透孔717Eから挿入するピン718E等に引っ掛けて、糸挿入孔713Eから糸取出し孔715Eまで簡単に挿通させることができる。
【0099】
また、受け治具6Eには、ステッチ模様3に沿って延設された帯状のゴム系部材4Eと当接し位置決めするゴム受座61Eが形成されている。また、ゴム受座61Eの下方には、ゴム系部材4Eの裏面側に挿通される縫い針71Eに対する糸逃し部62Eが形成されている。受け治具6Eの糸逃し部62Eには、糸取出し孔715Eと対向し糸31のループ部分32が収容可能に配置された糸逃し面622Eが形成され、糸取出し孔715Eと反対側で縫い針71Eの外周面71SEに対して離間する側壁面621Eが形成されている。この場合、縫い針71Eの外周面71SEと側壁面621Eとの隙間は、
図13、
図14に示す縫い針71Dの外周面71SDと糸規制面621Dとの微小隙間より大きくとることができる。そのため、縫い針71Eと受け治具6Eの糸逃し部62Eとの干渉を回避し、縫い針71Eの折損又は変形等をより一層防止することができる。
【0100】
縫い針71Eの糸挿入孔713Eから糸供給側の糸31を中空孔714E内に挿入し、糸取出し孔715Eに糸31を挿通(係合)した状態で、縫い針71Eを表皮材2の表面2A側から基材1Eの裏面1EB側の挿通終端(所定位置)まで挿通させた(仮想線で示す状態)後に、縫い針71Eを上方(矢印H2の方向)へ引き戻すとき、中空孔714E内で弛もうとする糸31は、中空孔714Eの内周面によって糸逃し面622Eの方向(矢印P1の方向)へ押し出される。また、中空孔714E内の糸31は、基材1E及びゴム系部材4Eと接触しないので摩擦抵抗が全く生じない。そのため、中空孔714E内の糸31は、糸挿入孔713Eを通して、略一定の力で簡単に上方(矢印P2の方向)へ巻き戻される。これに対して、縫い針71Eの糸取出し孔715Eから取り出された糸31は、基材1E及びゴム系部材4Eとの摩擦抵抗が大きく、上方への移動が規制されている。
【0101】
その結果、縫い針71Eを上方へ引き戻すとき、中空孔714E内の糸31は糸取出し孔715Eから糸逃し面622E側へ移動し、糸取出し孔715Eと糸逃し面622Eとの間に形成された収容空間623E内のみで、糸31のループ部分32が形成される。そのため、縫い針71Eの引き戻しに伴って、糸31のループ部分32が縫い針71Eの糸取出し孔715E側のみに安定して形成され、ゴム系部材4Eの糸挿通孔41Eから糸31のループ部分32が抜けるのを、より一層防止することができる。
【0102】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る内装部品10、10B、10C、10D、10Eによれば、基材1、1C、1D、1Eの裏面側又は基材1、1C、1D、1Eと表皮材2との間には、ステッチ模様3の糸31が挿通される位置にゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eが装着され、当該ゴム系部材に形成された糸挿通孔41、41B、41C、41D、41Eによって糸31のループ部分32の根元部321が拘束されているので、ステッチ模様3を構成する糸31の外径に比較して相当程度大きな外径の針挿入部を有する縫い針71、71C、71D、71Eを使用してゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eに糸31を挿通しても、当該ゴム系部材に縫い針にて形成された糸挿通孔41、41B、41C、41D、41Eが縮径することによって、糸31のループ部分32の根元部321を確実に締付けることができる。また、糸31の外径に比較して相当程度大きな外径の針挿入部(針先端部)を有する縫い針を使用できるので、縫い針71、71C、71D、71Eの折損や変形等が生じにくく、基材1、1C、1D、1Eのステッチ模様形成領域で薄肉部を設ける等の基材1、1C、1D、1Eに対する制約条件を課する必要がない。その結果、基材1、1C、1D、1Eの制約条件を緩和しつつ、縫い針71、71C、71D、71Eの折損や変形等を防止し、ゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eを備えるという簡単な構造で、ステッチ模様3の糸31を基材1、1C、1D、1Eに確実に固定できる。
【0103】
なお、基材1Dと表皮材2との間にゴム系部材4Dが装着される場合には、基材1Dの裏面1DB側に補強リブ13Dや他の部品を取り付ける取り付け座等を設ける自由度が増加し、基材1Dの制約条件をより一層緩和させることができる。また、この場合には、ゴム系部材4Dと補強リブ13Dとの干渉を回避できるため、ゴム系部材4Dを細かく分断する必要もない。
【0104】
また、本実施形態によれば、ゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eは、ステッチ模様3に沿って帯状に形成されているので、基材1、1C、1D、1Eの裏面側又は基材1、1C、1D、1Eと表皮材2との間に、ゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eを簡単に装着することができる。また、ステッチ模様3の各縫い目においてゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eの各糸挿通孔41、41B、41C、41D、41Eの内径を略均一に縮径させることができる。そのため、ステッチ模様3の糸31の各ループ部分32の根元部321をより一層均一な締付力で締付けることができる。その結果、ゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eを簡単に装着でき、また、ゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eを介してステッチ模様3の糸31の各ループ部分32をより一層均一に基材に固定できる。
【0105】
また、本実施形態によれば、ゴム系部材4Eには、ステッチ模様3の糸31が挿通される以外の箇所で、薄肉部45Eがステッチ模様3の長手方向に沿って形成されているので、基材1Eがステッチ模様3の長手方向と直交する方向に湾曲していても、薄肉部45Eが変形することによってゴム系部材4Eと基材1Eとの密着状態を保持させることができる。また、薄肉部45Eは、ステッチ模様3の糸31が挿通される以外の箇所で形成されているので、縫製時に基材1Eとゴム系部材4Eとの間にステッチ模様3の糸31が入り込みにくい。そのため、基材1Eの裏面1EB側に形成される糸31の各ループ部分32をより一層均一な大きさに形成することができる。その結果、ステッチ模様3の糸31の表皮材2側における浮き上がりを抑制しつつ、ゴム系部材4Eを介してより一層安定的に基材1Eに固定できる。
【0106】
また、本実施形態によれば、ゴム系部材4Eには、ステッチ模様3の糸31が挿通される箇所で、厚肉部42Eがステッチ模様3の長手方向に沿って形成されているので、ゴム系部材4Eの各糸挿通孔41Eの内径を厚肉部42Eによってより強く縮径させることができる。そのため、ステッチ模様3の糸31の各ループ部分32の根元部321をより一層強力な締付力で締付けることができる。その結果、ステッチ模様3の糸31の表皮材2側における浮き上がりを抑制しつつ、ゴム系部材4Eを介してより一層安定的に基材1Eに固定できる。なお、基材1Eの裏面1EB側に装着されるゴム系部材4Eにおいては、厚肉部42Eをゴム系部材4Eの受け治具6Eに嵌め込むことによって、ゴム系部材4Eの浮きを防止することができる。
【0107】
また、本実施形態によれば、基材1Dと表皮材2との間に装着されたゴム系部材4Dは、当該ゴム系部材4Dの表面42Dが基材1Dの表面1DAと略面一になるように、基材1Dの表面側に形成した凹状取付け座12Dに内嵌されているので、ゴム系部材4Dによる表皮材2の変形(盛り上がり等)を防止することができる。また、ゴム系部材4Dの基材1Dに対する位置決めを簡単に行うことができ、基材1Dに装着したゴム系部材4Dが基材1Dから脱落する恐れを回避できる。そのため、ステッチ模様3を形成する表皮材2の見栄えを向上しつつ、ゴム系部材4Dを基材1Dに装着する作業性を向上させることができる。
【0108】
また、本実施形態によれば、基材1の裏面1B側に装着されたゴム系部材4Bは、基材1の裏面1Bから湾曲状に離間する湾曲部4BTを備え、糸挿通孔41Bは、湾曲部4BTに形成されているので、湾曲部4BTは、針挿入時には糸31が進入しやすい斜め下方へ延伸変形させ、針引き戻し時には糸31が引っ掛かりやすい斜め上方へ収縮変形させることができる。そのため、針引き戻しに併せてゴム系部材4Bが収縮変形することによって、糸挿通孔41Bの内径をより一層縮径させ、糸31のループ部分32の根元部321をより一層強く締付けることができる。また、斜め上方へ収縮変形した湾曲部4BTの復元力によって表皮材2側における糸31の浮き上がりを抑制することができる。更に、ゴム系部材4Bの糸挿通孔41Bが形成されている湾曲部4BTは、基材1の裏面1Bから湾曲状に離間しているので、縫い針71によって基材1の裏面1B側に押し出されるダレ部12と縮径する糸挿通孔41Bとの干渉を回避させることができる。その結果、ステッチ模様3の糸31の表皮材2側における浮き上がりを抑制しつつ、ゴム系部材4Bを介してより一層確実に基材1に固定できる。
【0109】
また、本実施形態によれば、基材1Cの裏面1CB側には、基材1Cの糸貫通孔11Cと隣接する位置で、当該糸貫通孔11Cの孔方向と略平行に形成された糸規制部141Cを有する糸規制リブ14Cが立設されているので、縫い針71Cの糸孔711Cに糸31を係合した状態で、縫い針71Cを表皮材2の表面2A側から基材1Cの裏面1CB側の挿通終端(所定位置)まで挿通させた後に、縫い針71Cを上方へ引き戻すとき、糸孔711Cから糸規制部141C側に移動しようとする糸31を糸規制部141Cによって糸規制部と反対側へ押し戻すことができる。そのため、糸31のループ部分32が、基材1Cの糸貫通孔11Cに対して糸規制部141Cと反対側のみに安定して形成される。糸31のループ部分32が糸規制部141Cと反対側のみに安定して形成されるので、ゴム系部材4Cの糸挿通孔41Cからループ部分32が抜けるのを、より一層防止することができる。
【0110】
また、本実施形態によれば、ゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eは、ショアA硬度がA60〜80の範囲内で、厚さが1〜3mmの範囲内であるので、挿通した糸31をゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eの適度な粘弾性によって拘束させることができる。そのため、ゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eは、糸挿通孔41、41B、41C、41D、41E内の糸31の滑りを防止して、糸31のループ部分32の根元部321を確実に締付けることができる。その結果、ステッチ模様3の糸31を、ゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eを介してより一層確実に基材1、1C、1D、1Eに固定できる。
【0111】
また、本実施形態によれば、糸31のループ部分32は、ゴム系部材4、4B、4C、4D、4E又は基材1、1C、1D、1Eの裏面側に付着された接着剤5によってゴム系部材4、4B、4C、4D、4E又は基材1、1C、1D、1Eと接着されているので、糸挿通孔41、41B、41C、41D、41Eによる糸31の締付力を接着剤5の接着力によって補完することができる。そのため、ゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eにおける材質の経年劣化や硬度の温度変化等に対応して、ステッチ模様3の糸31の引き抜きをより長期的に阻止することができる。その結果、ステッチ模様3の糸31を、ゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eと接着剤5とを介してより一層確実に基材1、1C、1D、1Eに固定できる。
【0112】
また、他の実施形態に係る内装部品を製造する製造方法によれば、ステッチ模様3を形成するステッチ加工装置20、20B、20C、20D、20Eには、表皮材2の上方に配置され縫い針71、71C、71D、71Eを作動させて糸31を基材1、1C、1D、1Eに供給する糸供給装置7、7C、7D、7Eと、基材1、1C、1D、1Eの裏面1B、1CB、1DB、1EBに当接し当該基材を所定の姿勢で保持するとともに、糸31のループ部分32が収容可能に配置された糸逃し部62、62B、62C、62D、62Eを有する受け治具6、6B、6C、6D、6Eとを備え、縫い針71、71C、71D、71Eを基材1、1C、1D、1E及びゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eに挿通した所定位置から表皮材2の表面2A側に引き戻す時に、ゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eに形成された糸挿通孔41、41B、41C、41D、41Eが縮径して、糸31のループ部分32の根元部321を拘束するので、ステッチ模様3を構成する糸31の外径に比較して相当程度大きな外径の針挿入部を有する縫い針71、71C、71D、71Eを使用してゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eに糸31を挿通しても、当該ゴム系部材に縫い針71、71C、71D、71Eにて形成された糸挿通孔41、41B、41C、41D、41Eが縮径することによって、糸31のループ部分32の根元部321を確実に締付けることができる。また、糸31の外径に比較して相当程度大きな外径の針先端部71T、71TC、71TD、71TEを有する縫い針71、71C、71D、71Eを使用できるので、縫い針の折損や変形等が生じにくく、基材1、1C、1D、1Eのステッチ模様形成領域で薄肉部を設ける等の基材に対する制約条件を課する必要がない。その結果、基材1、1C、1D、1Eの制約条件を緩和しつつ、縫い針71、71C、71D、71Eの折損や変形等を防止し、ゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eを備えるという簡単な構造で、ステッチ模様3の糸31を基材1、1C、1D、1Eに確実に固定できる。
【0113】
また、本他の実施形態によれば、糸供給装置7、7C、7D、7Eには、縫い針71、71C、71D、71Eの外周側で表皮材2を押圧する表皮押え部材722を備え、縫い針71、71C、71D、71Eの挿入前から引き戻し後まで、表皮押え部材722が縫い針71、71C、71D、71Eの周囲で表皮材2を押圧するので、基材1、1C、1D、1Eとゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eとの密着状態を維持でき、縫い針71、71C、71D、71Eの引き戻し時に基材1、1C、1D、1Eとゴム系部材4、4B、4C、4D、4Eとの間でバタツキが生じるのを、抑えることができる。そのため、基材1、1C、1D、1Eが立体的に湾曲していても、基材1、1C、1D、1Eから糸31のループ部分32が抜けるのを防止することができる。その結果、基材1、1C、1D、1Eの制約条件を緩和でき、ステッチ模様3の糸31を確実に基材1、1C、1D、1Eに固定できる。
【0114】
また、本他の実施形態によれば、縫い針71Dの糸供給側の外周面71SDには、糸31を案内する糸溝712Dが糸孔711Dまで針軸方向に形成されているとともに、受け治具6Dの糸逃し部62Dには、基材1Dの裏面側に挿通された縫い針71Dの糸溝712D側の外周面71SDと微小隙間をもって針軸方向で略平行に配置された糸規制面621Dと、糸規制面621Dと縫い針71Dを挟んで対向し糸31のループ部分32が収容可能に配置された糸逃し面622Dとを備え、縫い針71Dを所定位置まで挿通してから引き戻す時に、糸溝712D内で弛もうとする糸31を糸規制面621Dによって糸逃し面622Dの方向(矢印P1の方向)へ糸孔711Dを通して押し出し、糸孔711Dと糸逃し面622Dとの間で、糸31のループ部分32を形成するので、糸31のループ部分32が縫い針71Dの糸供給側と反対側のみに安定して形成される。そのため、縫い針71Dの引き戻しに伴って、ゴム系部材4Dの糸挿通孔41Dから糸31のループ部分32が抜けるのを、より一層防止することができる。その結果、糸31のループ部分32を安定的に形成でき、ステッチ模様3の糸31を確実に基材1Dに固定できる。
【0115】
また、本他の実施形態によれば、縫い針71Dは、糸溝712Dが糸孔711Dと交差する位置まで略同一の溝深さで形成され、かつ、縫い針71Dの外周面71SDが糸溝712Dを除いて円弧状に形成されているので、縫い針71Dを所定位置まで挿入してから引き戻すとき、糸供給側の糸31は、糸溝712D内から外周面71SD側に突出することなく収納されて、基材1Dとの干渉を回避できる。反面、糸供給側と反対側の糸31は、縫い針71Dの外周面71SDと基材1Dの糸貫通孔11Dとの間で略一定の大きさの摩擦抵抗を受けることができる。そのため、縫い針71Dの引き抜きに伴って、糸31のループ部分32が縫い針71Dの糸供給側と反対側のみに安定して形成され、ゴム系部材4Dの糸挿通孔41Dからループ部分32が抜けるのを、より一層防止することができる。その結果、糸31のループ部分32の大きさをより均一に形成でき、ステッチ模様3の糸31を確実に基材1Dに固定できる。
【0116】
また、本他の実施形態によれば、縫い針71Eは、糸供給側の糸31を案内する中空孔714Eが針軸方向に形成された管針であって、針基端部71KEの管壁に糸供給側の糸31を挿入する糸挿入孔713Eが形成されるとともに、針先端部71TEの管壁で糸挿入孔713Eの反対側に糸31を取り出す糸取出し孔715Eが形成され、受け治具6Eの糸逃し部62Eには、糸取出し孔715Eと対向し糸31のループ部分32が収容可能に配置された糸逃し面622Eを備え、縫い針71Eを所定位置まで挿通してから引き戻す時に、中空孔714E内で弛もうとする糸31を中空孔714Eの内周面によって糸取出し孔715Eから糸逃し面622Eの方向(矢印P1の方向)へ押し出し、糸取出し孔715Eと糸逃し面622Eとの間で、糸31のループ部分32を形成するので、糸31のループ部分32が縫い針71Eの糸取出し孔715E側のみに安定して形成される。そのため、縫い針71Eの引き戻しに伴って、ゴム系部材4Eの糸挿通孔41Eから糸31のループ部分32が抜けるのを、より一層防止することができる。その結果、糸31のループ部分32を安定的に形成でき、ステッチ模様3の糸31を確実に基材1Eに固定できる。
【0117】
また、本他の実施形態によれば、縫い針71Eの管壁には、糸挿入孔713Eから糸取出し孔715Eの高さまで針軸方向に糸31の外径より幅が狭いスリット状透孔717Eが形成されているので、中空孔714E内の糸31をスリット状透孔717Eから挿入するピン718E等に引っ掛けて糸挿入孔713Eから糸取出し孔715Eまで簡単に挿通させることができる。そのため、縫い針71Eへの糸31の通し作業を簡素化させることができる。なお、スリット状透孔717Eは、糸31の外径より幅が狭いので、中空孔714E内の糸31を中空孔714Eの内周面によって糸取出し孔715Eから確実に押し出すことができる。
【0118】
また、本他の実施形態によれば、ゴム系部材4は、基材1に押し出し成形されて一体化されているので、ゴム系部材4と基材1との密着状態を安定して確保することができる。そのため、基材1からステッチ模様3の糸31の抜けをより一層防止することができる。その結果、ステッチ模様3の糸31の表皮材2側における浮き上がりを抑制しつつ、ゴム系部材4を介してより一層安定的に基材1に固定できる。また、事前にゴム系部材4を基材1に装着させることができるので、受け治具6内でのゴム系部材4と基材1との位置ズレも簡単に回避することができる。
【0119】
<変形例>
上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で変更することができる。例えば、上記他の実施形態である内装部品を製造する製造方法によれば、受け治具6、6B、6Cにゴム系部材4、4B、4Cを常温で載置するが、ゴム系部材4、4B、4Cの温度を上昇させた状態で、糸孔711、711Cに挿通された糸31を表皮材2の表面側からゴム系部材4、4B、4Cの裏面側まで縫い針71、71Cと共に挿通してから表皮材2の表面側まで引き戻し、ゴム系部材4、4B、4Cの裏面側に糸31のループ部分32を形成した後に、次の縫い位置まで縫い針71、71Cを移動させてもよい。ゴム系部材4、4B、4Cの温度を上昇させた状態では、ゴム系部材4、4B、4Cの硬度が低下して縫い針71、71Cに対する負荷を軽減させることができる。また、ゴム系部材4、4B、4Cの伸縮率が向上し、糸挿通孔41、41B、41Cによる締付力を増加させることもできる。この場合、ゴム系部材4、4B、4Cを加温する方法には、受け治具6、6B、6Cに加温装置を追加する方法の他に、表皮材2と基材1、1Cとを貼着させる工程に連続させて、ステッチ模様3の加工工程を行うことによって、表皮材2の加熱温度を利用する方法がある。