特許第6680179号(P6680179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6680179
(24)【登録日】2020年3月24日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】エレベータ装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/02 20060101AFI20200406BHJP
   B66B 5/10 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   B66B3/02 Q
   B66B5/10
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-209263(P2016-209263)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-70292(P2018-70292A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207826
【弁理士】
【氏名又は名称】尾畑 誠治
(72)【発明者】
【氏名】金子 元樹
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−521840(JP,A)
【文献】 特開2016−098113(JP,A)
【文献】 特開平09−278306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00−5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかごの移動距離を検出する移動距離検出手段と、昇降路内に配置された複数のプレートと、前記プレートと対向するように前記かごに設置されたセンサと、を備えたものにおいて、
前記プレートは、上下方向の長さが異なる複数種類あり、
前記移動距離検出手段と前記センサによって前記プレートのうちの通過した一のプレートの上下方向の長さを検出することにより、前記かごがどのプレートの位置にあるかを特定する構成であって、
前記プレートは昇降路の上方側及び下方側に配置されており、前記上方側に配置された各プレートと、前記下方側に配置された各プレートとは、昇降路の中央を中心として上下対称に配置されるとともに、前記センサは、前記上方側プレート用のセンサと、前記下方側プレート用のセンサの2種類であることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記移動距離検出手段はエンコーダであって、かごの移動距離に応じたパルス信号を出力し、前記センサは前記プレートに対向する位置にあることを検出する信号を出力し、前記プレートの上下方向の長さは、前記の両出力によって特定される構成であることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降路内を走行するエレベータのかごの位置を検出する装置に係り、特に昇降路上下端部におけるかごの位置を検出する装置、例えばETS(終端階強制減速装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昇降路内を走行するエレベータのかごの位置を検出する手段として、昇降路内に多数の位置センサを配置し、かごには前記位置センサを操作するカムを設置した構成のものがある。この技術は、かごが位置センサの設置箇所を通過する度に、カムが位置センサをオン・オフすることによって、かごの位置を検出するものである。
しかしこの装置だと、位置センサの数が多くなり、位置センサの配線ケーブルも増加してしまう。
【0003】
そこで、この問題を解決する手段として、かごに光電センサを設け、昇降路には前記光電センサの光軸を遮断する遮蔽板(プレート)を配置したもの(例えば特許文献1参照)が考えられている。
【0004】
この装置を図により説明する。図3は昇降路内のプレートの配置を示す図、図4はかご天井部の要部を示す図、図5はプレートの詳細説明図、図6は各プレートの位置関係説明図である。
【0005】
図において、1はかご2が昇降する昇降路、A1〜A6は昇降路1に配置されたA相プレート、同様にB1〜B6はB相プレート、Z1〜Z6はZ相プレートである。
4はかご2の上部に設置された光電センサであり、A相プレートA1〜A6用の光電センサ4a,B相プレートB1〜B6用の光電センサ4b,Z相プレートZ1〜Z6用の光電センサ4zを備えている。5はかご2の昇降を案内する一対のガイドレールである。
【0006】
図5に示すように、A相,B相プレートには空隙部Gが空けられ、その上下はプレート本体である遮蔽部Sとなっている。遮蔽部Sは光電センサ4の光軸を遮断し、空隙部Gは光電センサ4の光軸が通過可能であり、両者は上下方向に交互に並んでおり、遮蔽部Sと空隙部Gの長さLは同一になっている。
【0007】
図3に示すように、昇降路1の上部には、上から順に、空隙部Gが3個のプレートA1、空隙部Gが2個のプレートA2、空隙部Gが1個のプレートA3が配置されている。
一方、昇降路1の下部には、上から順に、空隙部Gが2個のプレートA4、空隙部Gが3個のプレートA5、空隙部Gが4個のプレートA6が配置されている。このように、昇降路1の上下端部に近いほど空隙部Gの数の多いプレートが配置されるとともに、上部よりも下部のプレートの方が、空隙部が1個多くなっている。
【0008】
B相プレートB1〜B6も、A相プレートA1〜A6と同様に構成され、配置されているが、昇降路1の上部では、A相プレートよりも、L/2だけ下げて配置され、昇降路1の下部では、A相プレートよりも、3L/2だけ上げて配置されている。
【0009】
Z相プレートZ1〜Z6は空隙のないプレートで、対応するA相,B相プレートより長くなっており、その上端は対応するA相,B相プレートより上方まで伸び、その下端は対応するA相,B相プレートより下方まで伸びている。
光電センサ4は遮蔽部Sの上端又は下端(エッジ)を検出するとパルス信号を発生し、このパルス信号によってかご位置検出を行う。
【0010】
また、Z相プレートZ1〜Z6の上下端部を基準にして、昇降路1を多数の区間に区切っている。
【0011】
図3に示すように、プレートZ1の上端から昇降路1の上端までを区間1、プレートZ1の上端からプレートZ2の上端までを区間2、以下同様にして、プレートZ6の上端から昇降路1の下端までを区間7としている。また、プレートZ1の下端から昇降路1の上端までを区間11、プレートZ1の下端からプレートZ2の下端までを区間12、以下同様にして、プレートZ6の下端から昇降路1の下端までを区間17としている。
【0012】
これらの区間はかご2の進行方向も示している。即ち、各Z相プレートを通過したかご2が区間1〜6に達したと判断されたときにはかご2は上昇中であり、また各Z相プレートを通過したかご2が区間12〜17に達したと判断されたときにはかご2は下降中である。
【0013】
この従来技術の動作を簡単に説明する。図6は、図3のプレートA3,B3,Z3部分の詳細図であり、ここをかご2が上昇する場合について説明する。
【0014】
かご2が上昇してa1に達すると、光電センサ4zがZ相プレートZ3を検出する。更にかご2が上昇してa2に達すると、光電センサ4bがB相プレートB3の遮蔽部Sを検出する。更にかご2が上昇してa3に達すると、光電センサ4aがA相プレートA3の遮蔽部Sを検出する。更にかご2が上昇してa4に達すると、光電センサ4bがB相プレートB3の遮蔽部Sの検出を終了して、空隙部Gを検出する。
以下同様にして、光電センサ4は各相プレートの空隙部Gと遮蔽部Sとの境界部を順次検出しながら、かご2は上昇していく。
【0015】
昇降路1に配置された、A、B、Z相プレート1枚ずつからなるプレート群は、それぞれ各相プレートの長さや空隙部Gと遮蔽部Sの数、及び各相プレートの設置位置のずれ量が異なっている。
そのため、詳細な説明は省略するが、光電センサ4で各相プレートの空隙部Gと遮蔽部Sとの境界部を順次検出していくことによって、かご2がどのプレート群をどの方向に通過したかを検出することができる。
これによって、かご2がどの区間を昇降中であるかを検出することができる。
【0016】
しかし、前記の先行技術では、A相,B相,Z相の3種のプレート、及びA相,B相,Z相の3種のプレート用の光電センサが必要になる。また、安全性向上のために、システムを2重化すれば、光線センサは6個必要となり、かごへの設置が困難になる可能性が出てくるという問題がある。
【0017】
そこでこの問題を解決するために、1つの光電センサと1相のプレートのよって、かごの位置を検出するもの(例えば特許文献2参照)が考えられている。
この先行技術は、各階のかご着床位置にそれぞれ2枚のプレートを配置するとともに、各階の2枚のプレートの間隔を異ならせたものである。これにより、2枚のプレートの間隔を検出することにより、かごの位置を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2016−141537号公報
【特許文献2】特開平9−278306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前記特許文献2の技術では、かご位置を検出する箇所(例えば、各階のかご着床位置)毎にプレートが2枚ずつ必要であり、構成が複雑になるという問題がある。
本発明は、上記の課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、エレベータのかごの移動距離を検出する移動距離検出手段と、昇降路内に配置された複数のプレートと、前記プレートと対向するように前記かごに設置されたセンサと、を備えたものにおいて、前記プレートは、上下方向の長さが異なる複数種類あり、前記移動距離検出手段と前記センサによって前記プレートのうちの通過した一のプレートの上下方向の長さを検出することにより、前記かごがどのプレートの位置にあるかを特定する構成であることを特徴とするものである。
【0021】
また本発明は、前記プレートは、それぞれ上下方向の長さが全て異なっていることを特徴とするものである。
更に本発明は、前記プレートは昇降路の上方側及び下方側に配置されており、前記上方側に配置された各プレートと、前記下方側に配置された各プレートとは、昇降路の中央を中心として上下対称に配置されるとともに、前記センサは、前記上方側プレート用のセンサと、前記下方側プレート用のセンサの2種類であることを特徴とするものである。
【0022】
また本発明は、前記移動距離検出手段はエンコーダであって、かごの移動距離に応じたパルス信号を出力し、前記センサは前記プレートに対向する位置にあることを検出する信号を出力し、前記プレートの上下方向の長さは、前記の両出力によって特定される構成であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、昇降路に配置するプレート及びかごに設置するセンサの数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態による全体構成を示す概略図である。
図2】本発明の実施の形態によるかご天井部の要部を示す図である。
図3】従来の昇降路内のプレートの配置を示す図である。
図4】従来のかご天井部の要部を示す図である。
図5】従来のプレートの詳細説明図である。
図6】従来の各プレートの位置関係説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1は本実施の形態による全体構成を示す概略図、図2はかご天井部の要部を示す図である。
【0026】
図1において、10は一端がかご2に連結された主ロープであり、機械室11に配置された巻上機12、そらせ車13に巻き掛けられ、他端がカウンターウェイト14に連結されている。15は機械室11に配置されたガバナ、16は昇降路1の下部に配置されたテンションプーリ、17はガバナ15とテンションプーリ16とに巻き掛けられたガバナロープであり、中間部がかご2に連結されている。
【0027】
20は機械室11に配置された制御装置、21はかご2と制御装置20との間で信号や電力を授受するトラベリングケーブルである。22はガバナ15に設けられたエンコーダで、一般的なインクリメンタル形エンコーダと同じく、その回転量に応じて、制御装置20にA相及びB相信号を出力することにより、かご2の移動距離及び移動方向を検出する。P1〜P6は昇降路1内に配置されたプレートであり、それぞれ上下方向の長さが異なっている。23はかご2の上部に設置された光電センサであり、プレートP1〜P6を検出するものである。
【0028】
本実施の形態では、かご2の移動距離はエンコーダ22の信号(パルス)により常時検出している。またプレートP1〜P6の長さの検出は、エンコーダ22の信号と光電センサ23の信号とを利用して行なう。
【0029】
即ち、光電センサ23がプレートを検出して、光電センサ23の信号がプレートによって遮蔽されている区間の、エンコーダ22の信号をカウントすることにより、かご2が通過したプレートの長さが、エンコーダの信号、即ちパルス数で表される。
このパルス数を、予め記憶してあるプレートP1〜P6の長さと比較することにより、かご2の光電センサ23がどのプレートを通過したかを特定することができる。更にかご1の運転方向の検出はエンコーダ22により行なえる。
【0030】
従って、上記の処理から、かご2がどのプレートP1〜P6をどの方向に通過したかを検出することができる。これにより、かご2の位置を検出することができる。
【0031】
上記のように本実施の形態によれば、1種(1列)のプレート、及びプレート用の一つの光電センサがあればよい。また、かご位置を検出する箇所には、1枚のプレートを配置すればよい。従って、従来に比べて、プレート及び光電センサの数を減らすことができる。
【0032】
前記の図1の実施の形態では、プレートP1〜P6の上下方向の長さは、下方のプレートほど長くなっているが、逆に上方のプレートの長さを長くしてもよい。また、各プレートP1〜P6の長さが異なっており、どの位置にどの長さのプレートが配置されているかがわかっておれば、順不同に配置してもよい。
また、各プレートP1〜P6の長さの差は、エンコーダ22のカウント誤差や信号伝達の遅れ等を考慮しても誤検出しないだけの長さの差があればよい。
【0033】
また前記の実施の形態では、全てのプレートの長さを異ならせているが、光電センサを2個使用してもよいならば、昇降路1の中央を中心として上下対称に配置してもよい。例えば、プレートP1〜P3を上方、プレートP1〜P3を逆に配列したプレートP3〜P1を下方に配置し、上方のプレートは上方用光電センサで検出し、下方のプレートは下方用光電センサで検出するものである。
更に、前記の実施の形態では、昇降路1の上下それぞれ3箇所にプレートを配置しているが、3箇所に限ることはなく、必要に応じてプレート数を増減すればよい。
【0034】
また、図1では機械室11を有するエレベータについて説明したが、機械室なしエレベータでも同様に適用できることはもちろんである。更に、主ロープ10のローピングも図1の構成に限ることはない。
また、エンコーダ22をガバナに設けているが、ガバナのテンションプーリや、巻上機のシーブやモータに設けることもできる。
【0035】
更に、前記プレートは昇降路の上下部に配置しているが、必要に応じて、昇降路の上下部の何れか一方のみに配置することも可能である。更に、本発明はETS用に限定されるものでもない。
また、かご2の移動距離及び移動方向を検出しているが、かご位置だけが分かればよいのなら、かごの移動距離を検出できるものであればよい。
【0036】
また、センサとして光電センサ23を使用しているが、赤外線センサ、磁気式センサ、超音波センサ、画像認識など、他のセンサを使用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 昇降路
2 かご
15 ガバナ
16 テンションプーリ
22 エンコーダ(移動距離検出手段)
23 光電センサ
P1〜P6 プレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6