(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
板ガラスを載置位置に移動させるとともにシート材を設置位置に移動させることにより、前記板ガラスと前記シート材とを縦姿勢で交互にパレットに対して積載する梱包工程を備える板ガラス製造方法において、
前記梱包工程では、前記シート材の下部が前記設置位置から離れた位置となる待機姿勢で前記シート材を配置した後、前記板ガラスの上部を保持するとともに前記板ガラスの下部を前記シート材に接触させた状態で、前記板ガラスを前記載置位置に移動させるとともに前記シート材を前記設置位置に移動させることを特徴とする板ガラス製造方法。
板ガラスをパレットにおける載置位置に移動させる搬送装置と、シート材を前記板ガラスの前記載置位置に対応する所定の設置位置に移動させるシート材供給装置と、を備え、前記板ガラスと前記シート材とを縦姿勢で交互に前記パレットに積載する板ガラス製造装置であって、
前記シート材供給装置は、前記シート材の上部を移動させる第1保持部と、前記シート材の下部を移動させる第2保持部とを備え、
前記第2保持部は、前記板ガラスの前記下部と前記シート材の前記下部との接触を維持した状態で、前記シート材の前記下部を前記設置位置から離れた位置から前記設置位置まで位置変更可能に構成されることを特徴とする板ガラス製造装置。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板に代表されるように、各種分野に利用される板ガラスには、表面欠陥やうねりに対して厳しい製品品位が要求されるのが実情である。
【0003】
このような要求を満たすために、板ガラスの製造方法としてダウンドロー法が広く利用されている。このダウンドロー法としては、オーバーフローダウンドロー法やスロットダウンドロー法が公知である。
【0004】
オーバーフローダウンドロー法は、断面が略くさび形の成形体の上部に設けられたオーバーフロー溝に溶融ガラスを流し込み、このオーバーフロー溝から両側に溢れ出た溶融ガラスを成形体の両側の側壁部に沿って流下させながら、成形体の下端部で融合一体化し、ガラスリボンを連続成形するというものである。また、スロットダウンドロー法は、溶融ガラスが供給される耐火物の底壁にスロット状の開口部が形成され、この開口部を通じて溶融ガラスを流下させることによりガラスリボンを連続成形するというものである。
【0005】
特にオーバーフローダウンドロー法では、成形されたガラスリボンの表裏両面が、成形過程において、成形体の如何なる部位とも接触せずに成形されるので、非常に平面度がよく傷等の欠陥のない火造り面となる。
【0006】
オーバーフローダウンドロー法を用いる板ガラス製造装置としては、特許文献1に開示されるように、成形体を内部に有する成形部と、成形部の下方に設置される徐冷部と、徐冷部の下方に設けられる冷却部及び切断部とを備えたものがある。この板ガラス製造装置は、成形体の頂部から溶融ガラスを溢れさせると共に、その下端部で融合させることでガラスリボンを成形し、このガラスリボンを徐冷部に通過させてその内部歪みを除去し、冷却部で室温まで冷却した後に、切断部でガラスリボンから所定寸法の板ガラスを切り出すように構成されている。
【0007】
切り出された板ガラスは、切断部から搬出され、専用のパレットに梱包されて輸送される。この場合、パレット上には複数の板ガラスが縦置きの状態にて積層される。パレット上に板ガラスを縦置きの状態で積載する場合には、板ガラス同士の直接接触による擦り傷の発生防止や、輸送中の板ガラスの破損防止等を目的として、板ガラスの相互間に、緩衝材やスペーサとしてのシート材が介装される。これにより、パレット上には、板ガラスとシート材とを交互に配置させてなる板ガラス積層体が形成される(例えば特許文献2及び特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の板ガラス製造方法において、切断部において切断された板ガラスは、搬送装置によって切断部からパレットに向かって搬送される。板ガラスを縦姿勢にてパレットに積載するには、搬送装置によって板ガラスの上部のみを保持し、板ガラスを宙吊り状態としてパレットまで移送することが望ましい。しかしながら、板ガラスは、その下部が保持されないことから、搬送時及びパレットへの積載時に揺れを生じ易い。したがって、従来の方法では、揺れを抑制するために板ガラスを低速で搬送する必要があり、板ガラスのパレットへの積載を効率良く行うことができなかった。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたものであり、板ガラスのパレットへの積載を効率良く行うことが可能な板ガラス製造方法及び板ガラス製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、板ガラスを載置位置に移動させるとともにシート材を設置位置に移動させることにより、前記板ガラスと前記シート材とを縦姿勢で交互にパレットに対して積載する梱包工程を備える板ガラス製造方法において、前記梱包工程では、前記シート材の下部が前記設置位置から離れた位置となる待機姿勢で前記シート材を配置した後、前記板ガラスの上部を保持するとともに前記板ガラスの下部を前記シート材に接触させた状態で、前記板ガラスを前記載置位置に移動させるとともに前記シート材を前記設置位置に移動させることを特徴とする。
【0012】
このように、本方法では板ガラスをパレットに載置する際に、事前に板ガラスの下部をシート材に接触させることで、板ガラスを搬送する上で発生する揺れを確実に止めることができる。したがって、板ガラスをシート材に接触させるまでの間、当該板ガラスを高速で移動させることが可能になる。さらに、板ガラスの下部をシート材に接触させた状態で当該板ガラスを載置位置に移動させることから、接触後における板ガラスの揺れの発生を確実に防止できる。これにより、板ガラスのパレットへの積載を効率良く行うことができる。
【0013】
本方法では、前記待機姿勢で前記シート材を配置する際、前記シート材の上部を前記設置位置に配置することが望ましい。これによれば、板ガラスの下部がシート材の下部に接触する際に、板ガラスの上部は、シート材に接触しない。すなわち、板ガラスの下部のみをシート材に接触させることで、その揺れを効果的に停止させることが可能になる。
【0014】
前記パレットは、前記板ガラスの表面を支持する第1支持面と、前記板ガラスの下端部を支持する第2支持面とを備え、前記シート材の下端部は、前記第2支持面から離間した状態で前記設置位置に移動することが望ましい。これによれば、板ガラスの下端部と第2支持面との間にシート材の下部が挟み込まれる事態を防止し、板ガラスとシート材とを好適に積層することが可能になる。
【0015】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、板ガラスをパレットにおける載置位置に移動させる搬送装置と、シート材を前記板ガラスの前記載置位置に対応する所定の設置位置に移動させるシート材供給装置と、を備え、前記板ガラスと前記シート材とを縦姿勢で交互に前記パレットに積載する板ガラス製造装置であって、前記シート材供給装置は、前記シート材の上部を移動させる第1保持部と、前記シート材の下部を移動させる第2保持部とを備え、前記第2保持部は、前記板ガラスの前記下部と前記シート材の前記下部との接触を維持した状態で、前記シート材の前記下部を前記設置位置から離れた位置から前記設置位置まで位置変更可能に構成されることを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、第2保持部を設置位置から離れた位置に配することで、板ガラスの下部をシート材の下部に好適に接触させることができる。板ガラスをパレットに載置する際に、事前に板ガラスの下部をシート材に接触させることで、板ガラスを搬送する上で発生する揺れを確実に止めることができる。さらに、第2保持部は、設置位置から離れた位置から設置位置へと移動することにより、板ガラスの下部がシート材の下部に接触した状態で、当該板ガラスを、揺れを生じさせることなく載置位置へと案内できる。これにより、板ガラスのパレットへの積載を効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、板ガラスの梱包を効率良く行うことが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図14は、本発明に係る板ガラス製造装置及び板ガラス製造方法の一実施形態を示す。
【0020】
図1に示すように、板ガラス製造装置1は、ダウンドロー法により溶融ガラスGMをガラスリボンGRに連続的に成形する成形部2と、成形部2の下方でガラスリボンGRの内部歪みを除去する徐冷部3と、徐冷部3の下方に設けられる冷却部4と、冷却部4の下方に設けられる切断部5と、切断部5によってガラスリボンGRから切り出された板ガラスGSを移送する搬送部6と、板ガラスGSをパレット7に載置する梱包部8とを備える。
【0021】
成形部2は、炉壁の内側に、オーバーフローダウンドロー法を実行する成形体9と、この成形体9から溢れ出た溶融ガラスGMをガラスリボンGRとして引き抜くエッジローラ10とを備える。
【0022】
成形体9は、長尺状に構成されるとともに、頂部に形成されたオーバーフロー溝11と、互いに対向する一対の側壁部を構成する垂直面部12及び傾斜面部13とを備えている。一対の傾斜面部13は、下方に向かって漸次接近することで交差し、成形体9の下端部14を構成している。エッジローラ10は、ガラスリボンGRの幅方向の端部を挟持するように、左右一組のローラ対として構成される。
【0023】
徐冷部3は、成形部2から下降するガラスリボンGRを徐冷してその内部歪みを除去する。すなわち、徐冷部3内は、所定の温度勾配を有するように温度設定がなされている。ガラスリボンGRは、徐冷部3内を下降するにつれて徐々に温度が低下する。徐冷部3は、内部に配置された上下複数段のガイドローラ15を介してガラスリボンGRを鉛直下方に案内する。
【0024】
冷却部4は、徐冷部3から移送されるガラスリボンGRを通過させることにより、ガラスリボンGRをさらに冷却する。冷却部4は、ガラスリボンGRを室温付近まで冷却する。冷却部4により冷却されたガラスリボンGRは、下方の切断部5へと送られる。
【0025】
切断部5は、冷却部4から下方に移送されるガラスリボンGRを所定の寸法に切断する折割装置16を有する。成形部2により連続成形されたガラスリボンGRは、この折割装置16によって矩形状に切断され、板ガラスGSが得られる。必要に応じ、切断された板ガラスGSの幅方向の両端に形成された厚肉部を切断して除去する処理や、切断された板ガラスGSの検査が行われる。切断された板ガラスGSは、搬送部6によって切断部5から搬出され、梱包部8へと送られる。
【0026】
搬送部6は、板ガラスGSを移動させる複数の保持部17を備える搬送装置として構成される。各保持部17は、板ガラスGSを把持可能なクランプ機構17aを有する。搬送部6は、保持部17のクランプ機構17aによって板ガラスGSの上部GSaを把持するとともに、板ガラスGSの表面がその移動方向に面するように、当該板ガラスGSを搬送する。また、搬送部6は、板ガラスGSの下部GSbを保持することなく当該板ガラスGSを搬送する。なお、各保持部17は、ロボットアームその他の各種移動機構により三次元的に移動し得る。なお、搬送される板ガラスGSの厚みは、例えば0.3〜3.0mmとされるが、これに限定されない。
【0027】
梱包部8は、
図1及び
図2に示すシート材供給装置18を含む。シート材供給装置18は、帯状シート元材19を上流側でロール状に巻回してなる元材ロール20と、元材ロール20から引き出された帯状シート元材19をその下流側端部してシート材21を切り出す切断装置22と、切断装置22の下方に配置され、かつ切断後のシート材21を保持する一対の第1保持部23及び一対の第2保持部24と、各保持部23,24を移動可能に支持するガイド部材25,26とを主に備える。
【0028】
また、シート材供給装置18における元材ロール20から切断装置22に至るまでの経路には、帯状シート元材19の送り移動を円滑に行わせるための各種ローラが配列されている。すなわち、シート材供給装置18は、上流側から順に、元材ロール20から帯状シート元材19を挟持して引き出す引出ニップローラ27と、帯状シート元材19の引き出し寸法を一定範囲に調整するダンサーローラ28と、帯状シート元材19を所要の経路に沿わせるための多数のガイドローラ29と、帯状シート元材19の下流側端部を挟持して切断装置22に送り出すための送出ニップローラ30とを備える。
【0029】
なお、シート材供給装置18により供給される帯状シート元材19(シート材21)としては、樹脂シート、紙その他の各種材質のものが使用される。樹脂シートとしては、高発泡ポリエチレンシート等の発泡樹脂シート、例えばミラマット(登録商標)が好適に使用され得る。帯状シート元材19(シート材21)の厚みは、0.05〜2.00mmとされるが、これに限定されない。
【0030】
切断装置22は、送出ニップローラ30と、各保持部23,24との間に配置される。切断装置22は、各保持部23,24によって帯状シート元材19の一部を保持した状態で、その切断刃22aにより、当該帯状シート元材19を切断する。
【0031】
第1保持部23は、シート材21の幅方向端部における上部21aを保持するように構成される。第2保持部24は、シート材21の幅方向端部における下部21bを保持するように構成される。各保持部23,24は、帯状シート元材19を切断してなるシート材21の幅方向両端部を保持するクランプ機構23a,24aを有する。
【0032】
ガイド部材25,26は、各保持部23,24をパレット7に対して前後に接近・離反させる第1ガイド部材25と、この第1ガイド部材25を上下に移動させる第2ガイド部材26とを含む。
【0033】
第1ガイド部材25は、第2ガイド部材26から前方に突出する長尺体である。第1ガイド部材25は、水平方向に対して所定の角度で下方に傾斜している。第1ガイド部材25は、その上面側で、各保持部23,24をその長手方向(前後方向)にスライド自在に支持する。
【0034】
第1ガイド部材25は、各保持部23,24を前後に移動させるための駆動機構を備える。この駆動機構はベルト伝達機構からなるが、この構成に限定されるものではなく、例えば、ボールネジ機構、ラックアンドピニオン機構、リニアモータなどで構成されてもよい。
【0035】
第2ガイド部材26は、上下方向に延びる長尺体である。第2ガイド部材26は、鉛直方向に対して所定の角度で傾斜している。第2ガイド部材26は、第1ガイド部材25の一端部を上下移動可能に支持する。第1ガイド部材25は、第2ガイド部材26に対して直角を為すように、当該第2ガイド部材に支持される。第2ガイド部材26は、第1ガイド部材25を上下に移動させるための駆動機構を有する。この駆動機構はベルト伝達機構により構成されるが、これに限定されるものではなく、例えば、ボールネジ機構、ラックアンドピニオン機構、リニアモータなどで構成され得る。
【0036】
第2ガイド部材26は、パレット7の上方に配置された基台部31に吊り下げ支持されている。基台部31は、第1基台部32と第2基台部33の上下2つに分割されている。第1基台部32は、建物の構造物である梁に固定されている。第2基台部33は、前後方向に移動可能となるように、第1基台部32の下面に支持されている。
【0037】
梱包部8には複数のパレット7が配置され得る。梱包部8では、板ガラスGSの品種や寸法に対応して複数種のパレット7が用意される。搬送部6及びシート材供給装置18の動作により、パレット7には、板ガラスGSとシート材21とが縦姿勢で交互にパレット7に積層される。パレット7は、板ガラスGSの一方の表面を支持する第1支持面34と、板ガラスGSの下端部GScを支持する第2支持面35とを有する。第1支持面34と第2支持面35とは、90°を為すように交差している。
【0038】
第1支持面34は、鉛直方向に対して所定の角度で傾斜している。詳細には、第1支持面34は、第1ガイド部材25と直角を為すように、かつ第1ガイド部材26と平行となるように傾斜する。また、第2支持面35は、水平方向に対して所定の角度で傾斜する。すなわち、第2支持面35は、第1ガイド部材25と平行となるように、かつ第2ガイド部材26と直角を為すように傾斜する。
【0039】
以下、上記構成の板ガラス製造装置1によって板ガラスGSを製造する方法について説明する。板ガラス製造方法は、
図3に示すように、成形工程S1、徐冷工程S2、冷却工程S3、切断工程S4、搬送工程S5、及び梱包工程S6を主に備える。
【0040】
成形工程S1では、成形部2の成形体9に供給された溶融ガラスGMがオーバーフロー溝11から溢れ出て、垂直面部12及び傾斜面部13を伝って流下する。溶融ガラスGMは、成形体9の下端部14において融合一体化してガラスリボンGRとして成形される。エッジローラ10は、このガラスリボンGRの幅方向における各端部を挟持するとともに、当該ガラスリボンGRを下方に案内する。
【0041】
徐冷工程S2では、成形部2から下降してきたガラスリボンGRが徐冷部3を通過する。このとき、ガラスリボンGRは、ガイドローラ15によって下方に案内されながら所定の温度勾配に従い徐冷され、その内部歪みが除去される。
【0042】
冷却工程S3において、ガラスリボンGRは、冷却部4における自然冷却によってさらに冷却される。その後、ガラスリボンGRは、切断工程S4において、折割装置16により所定寸法の板ガラスGSとして切り出される。切断によって矩形に構成された板ガラスGSは、搬送工程S5により切断部5から排出され、梱包部8に配置されるパレット7に向かって搬送される。なお、切断工程S4と搬送工程S5の間には、必要に応じ、板ガラスGSの幅方向の両端に形成された厚肉部を切断して除去する工程や、板ガラスGSを検査する工程が設けられる。
【0043】
搬送工程S5では、搬送部6(搬送装置)の保持部17によって板ガラスGSの上部GSaを保持する。板ガラスGSとともに板ガラスGSの下部GSbを床面から離間させた宙吊り状態で、切断部5からパレット7へと当該板ガラスGSを搬送する。搬送部6は、保持部17がパレット7に接近すると、この保持部17を一時停止させる。その後、保持部17は、板ガラスGSの上部GSaを保持したままで次の梱包工程S6へと移行する。なお、保持部17は、上記のようにパレット7の直前位置で一時停止することなく、梱包工程S6に移行することも可能である。
【0044】
梱包工程S6は、シート材供給装置18によってシート材21をパレット7に供給する工程(以下「シート材供給工程」という)と、搬送部6により板ガラスGSをパレット7に載置する工程(以下「載置工程」という)とを含む。梱包工程S6では、このシート材供給工程と載置工程とが同時に進行する。
【0045】
以下、シート材供給工程及び載置工程における板ガラスGS及びシート材21の動作について
図4乃至
図14を参照しながら説明する。
【0046】
シート材供給装置18は、元材ロール20から帯状シート元材19を引き出しながら、当該帯状シート元材19を切断装置22へと連続的に搬送する。具体的には、シート材供給装置18は、引出ニップローラ27、ダンサーローラ28、ガイドローラ29、及び送出ニップローラ30を経由して、帯状シート元材19を切断装置22へと送る。
【0047】
帯状シート元材19からシート材21を切り出す前の初期段階においては、
図4に示すように、一対の第1保持部23の直下方に一対の第2保持部24が近接して配置され、これらの各保持部23,24のクランプ機構23a,24aは全て開状態にある。
【0048】
この状態から、
図5に示すように、送出ニップローラ30が、帯状シート元材19を下方に送り出し、帯状シート元材19の下端部が、一対の第2保持部24を通過した時点で、送出ニップローラ30による送り出しを一時的に停止させる。この停止時に、一対の第2保持部24のクランプ機構24aが閉状態となって、帯状シート元材19の下端部における幅方向両端部を挟持して保持する。なお、この時点では、一対の第1保持部23のクランプ機構23aは依然として開状態にある。
【0049】
この状態から、一対の第2保持部24及び第1ガイド部材25が、第2ガイド部材26に沿って下動するとともに、これに同期して送出ニップローラ30も回転駆動する。これにより、
図6に示すように、帯状シート元材19がさらに下方に送り出され、その送り出し量が所定量に達した時点で、再びその送り出しを一時的に停止させる。この停止時に、一対の第1保持部23のクランプ機構23aが閉状態となって、帯状シート元材19の幅方向両端部を挟持して保持する。この結果、帯状シート元材19の幅方向両端部は、下部部が一対の第2保持部24により保持されると共に、これらの保持部23,24から上方に所定量離間した部位が一対の第1保持部23により保持される。
【0050】
この状態の下で、
図7に示すように、帯状シート元材19が、一対の第1保持部23の直上方位置で切断装置22により幅方向全長に亘って切断される。この結果、切断後における所定の大きさのシート材21の上部21a及び下部21bが、各保持部23,24により保持された状態となる。各保持部23,24が下動端に達した時点で、各保持部23,24及び第1ガイド部材25が停止する(
図8参照)。
【0051】
図8及び
図9に示すように、シート材供給装置18によってパレット7の直前位置に搬送されたシート材21は、第1ガイド部材25に沿って各保持部23,24が前進することにより、パレット7上の所定位置に移動し、所定の姿勢に設定される。このとき、第1保持部23が第2保持部24よりも前進し、シート材21の上部21aをパレット7の第1支持面34に接触させる。一方 、第2保持部24は、パレット7の第1支持面34から離れた位置(
図9参照)でシート材21の下部21bを支持する。この場合において、第2保持部24は、シート材21の下端部21cをパレット7の第2支持面35から離れた位置で支持する。これにより、シート材21は、
図9に示すように鉛直方向に対して傾斜した状態(待機姿勢)となる。この場合において、シート材21はパレット7の第1支持面34よりも大きく傾斜する。
【0052】
次に、搬送部6の保持部17により搬送される板ガラスGSは、
図10において二点鎖線及び実線で示すように、一時停止した位置(二点鎖線で示す位置)から更にパレット7上(実線で示す位置)へと移る。具体的には、搬送部6の保持部17は、板ガラスGSの下端部GScがパレット7の第1支持面34と第2支持面35との交点Oに向かうように、板ガラスGSを移動させる。このとき、
図10において実線で示すように、板ガラスGSの下部GSbは、シート材21の下部21bに接触する。この時点で、搬送部6は、保持部17による板ガラスGSの搬送を一時的に停止する。
【0053】
詳細には、
図11に示すように、板ガラスGSの表面における下部GSbに、シート材21の下端部21cが接触した状態となる。したがって、板ガラスGSの下端部GScは、シート材21の下端部21cよりも下方に突出する。このような接触状態により、この後における板ガラスGSの搬送において、板ガラスGSの下端部GScとパレット7の第2支持面35との間に、シート材21の下端部21cが入り込むことはない。したがって、シート材21の下部21bが板ガラスGSと第2支持面35との間に挟まれるという事態を防止できる。
【0054】
シート材21は、既述のような傾斜姿勢にあることから、その上部21aが板ガラスGSに接触することなく、その下部21bのみによって板ガラスGSの下部GSbを支持した状態となる。既述のように、板ガラスGSは、その上部GSaのみが搬送部6の保持部17により支持された宙吊り状態で搬送され、かつ表面がその移動方向に面した状態で搬送される。このため、この搬送によって板ガラスGSに揺れが生じ得る。この場合、板ガラスGSの下部GSbを、待機姿勢にあるシート材21の下部21b(下端部21c)に接触させることにより、板ガラスGSの揺れを止めることができる。
【0055】
その後、
図12に示すように、シート材供給装置18は、第2保持部24をパレット7の第1支持面34に近接する位置に移動させ、シート材21の下端部21cをパレット7の第1支持面34に接触させる。これにより、シート材21は、所期の設置位置に配される。このとき、シート材21は、その一方の面が第1支持面34に全面的に接触する。
【0056】
板ガラスGSは、搬送部6の保持部17によって、シート材21との接触を維持したままで、当該シート材21とともに移動する。
図12に示すように、搬送部6は、保持部17を二点鎖線で示す位置から実線で示す位置に移動させることにより、板ガラスGSの下端部GScをパレット7の第2支持面35に接触させる。このとき、板ガラスGSは、依然として鉛直方向に沿って保持部17に支持されており、板ガラスGSの表面は、シート材21の表面に接触していない。
【0057】
その後、
図13に示すように、搬送部6の保持部17は、パレット7の第1支持面34に接近し、板ガラスGSの表面をシート材21の表面に接触させる。その後、保持部17は、クランプ機構17aによる板ガラスGSの把持を解除する。これにより、板ガラスGSは、その表面がシート材21を介してパレット7の第1支持面34に支持され、その下端部GScが第2支持面35に支持される。なお、搬送部6の保持部17及びシート材供給装置18の各保持部23,24は、新たな板ガラスGS及び新たなシート材21を保持すべく、初期の位置へと復帰する。
【0058】
以上により、板ガラスGSは、
図14に示すようにパレット7における所期の載置位置に配される。その後、以上の動作を繰り返すことにより、パレット7上に複数の板ガラスGSとシート材21とが縦姿勢にて交互に積層される。その際、2枚目以降のシート材21の表面は、パレット7の第1支持面34と積層されたシート材21及び板ガラスGSを介して接触し、2枚目以降の板ガラスGSの表面は、共に移動するシート材21に加えて既に積層されたシート材21及び板ガラスGSを介し、パレット7の第1支持面34に支持される。このため、板ガラスGSの載置位置は、載置される板ガラスGSごとに変わることとなるが、搬送部6の保持部17の位置制御によって好適に調整される。同様に、シート材21の設置位置は、設置されるシート材21ごとに変わるが、シート材供給装置18の保持部23、24の位置制御によって好適に調整される。これに伴い、第2保持部24の位置も、シート材21の設置位置の変更に応じて適宜調整される。
【0059】
最終的に、パレット7上には、所定数の板ガラスGSとシート材21による板ガラス積層体36が構成される。板ガラス積層体36は、保護カバーにより被覆され、以上によって梱包工程S6が終了する。梱包された板ガラス積層体36は、パレット7と共に次工程へと搬送され、更なる切断工程や研削・研磨等の仕上げ加工工程を経て製品化される。
【0060】
以上説明した本実施形態に係る板ガラス製造装置及び板ガラス製造方法によれば、板ガラスGSをパレット7に載置する際に、事前に板ガラスGSの下部GSbをシート材21の下部21bに接触させることで、板ガラスGSを搬送する上で発生する揺れを確実に止めることができる。したがって、板ガラスGSをシート材21に接触させるまでの間、搬送部6によって当該板ガラスGSを高速で移動させることが可能になる。さらに、板ガラスGSの下部GSbをシート材21に接触させた後は、この接触状態が維持されることから、その後の移動において、板ガラスGSに揺れが生じることを確実に防止できる。これにより、板ガラスGSのパレット7への積載を効率良く行うことが可能になる。
【0061】
シート材21の下部21bは、待機姿勢で設置位置から離れた位置に配置された後、設置位置に移動する。この待機姿勢でシート材21の下部21bを設置位置から離す距離、換言すると、待機姿勢の配置位置から設置位置までシート材21の下部21bを移動させる距離は、例えば、50〜300mm程度とすればよい。必要に応じ、待機姿勢でシート材21の下部21bを設置位置から離す距離を、縦姿勢での板ガラスGSの搬送に伴って発生する揺れ等や板ガラスGSの設置位置に応じて適宜調整してもよい。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0063】
上記の実施形態では、搬送工程S5において、板ガラスGSをパレット7の直前位置で一時停止させていたが、これに限定されない。板ガラスGSを一停止させることなく、その下部GSbをシート材21に接触させてもよい。これにより、板ガラスGSを、より効率的にパレット7に積載できる。
【0064】
また、第2保持部24がシート材21の幅方向端部における下部21bを保持する際に、幅方向端部の下端部21cを含めて保持するが、これに限定されない。第2保持部24が幅方向端部の下部21bを保持する際に、第2保持部24が幅方向端部の下端部21cを保持しなくてもよく、換言すると、下端部21cの直上部分のみを保持してもよい。例えば、第2保持部24は、距離比D1/L1が0〜0.4である領域の一部又は全部の幅方向端部を適宜保持すればよい。ここで、D1はシート材21の下端部21cからの距離(mm)であり、L1はシート材21の長さ(mm)である(
図8参照)。
【0065】
同様に、第1保持部23がシート材21の幅方向端部における上部21aを保持する際に、幅方向端部の上端部を含めて保持するが、これに限定されない。第1保持部23が幅方向端部の上部21aを保持する際に、第1保持部23が幅方向端部の上端部を保持しなくてもよい。第1保持部23の保持は、シート材21のうちの第1保持部23よりも上側に位置する部分が自重で垂れ下がらないように(折れ曲がらないように)適宜行えばよい。
【0066】
上記の実施形態の第2保持部24は、第1ガイド部材25によってパレット7に対して接近・離反可能であるとともに、第2ガイド部材26によって上下に移動可能であるが、これに限定されない。第2保持部24は、上下に移動不能とし、第1ガイド部材25によってパレット7に対してのみ接近・離反可能としてもよい。この場合、第2保持部24の上下位置は、設置位置のシート材21の下部21bと同じ位置となる。加えて、第3保持部が配置され、その第3保持部は、パレット7に対してのみ接近・離反不能であり、第2ガイド部材26によって上下にのみ移動可能である。
【0067】
図4乃至
図8を用いて説明したように、帯状シート元材19からシート材21を切り出した後でそのシート材21をパレット7の直前位置まで搬送する。その間、第3保持部材を用いる実施形態では、第2保持部24に代えて第3保持部材を用いる。パレット7の直前位置で、シート材21の下部21bを第3保持部材から第2保持部24に受け渡す。シート材21の下部21bを受け渡した後、第3保持部材は次のシート材21の切り出しを行う。このような第3保持部材を用いる実施形態では、シート材21を設置位置に移動させる前に、次のシート材21の切り出しが開始されるので、タクトタイムを短縮することができる。