(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接着剤は、前記磁石側平面部の周縁に沿った4つの辺部の全てに沿って設けられており、前記磁石側平面部の中央部における前記接着剤の厚みが前記4つの辺部における前記接着剤の厚みよりも薄い請求項1に記載の回転電機用ロータ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
回転電機用ロータの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態も含む概念として用いている。以下の説明では、特に明記している場合を除き、「軸方向L」、「径方向R」、及び「周方向C」は、回転電機用ロータ(以下、「ロータ3」という。)のロータ回転軸A(回転軸心、
図1参照)を基準として定義している。また、径方向Rの内側へ向かう方向を径方向内側R1とし、径方向Rの外側へ向かう方向を径方向外側R2とする。また、周方向Cの一方向を周方向第一側C1とし、周方向Cの他方向を周方向第二側C2とする。ロータ回転軸Aは仮想軸であり、ロータコア10(ロータコア10が固定されたロータ軸4)が、ロータ回転軸A回りに回転する。
【0011】
図1に示すように、回転電機1は、ステータ2とロータ3とを備えている。
図1に示す例では、回転電機1はケース5に収容されており、ステータ2はケース5の内面に固定され、ロータ3は、ケース5に対して回転可能に支持されている。具体的には、ロータ3は、軸受7を介してケース5に対して回転可能に支持されるロータ軸4を備えており、ロータ3のコアであるロータコア10(
図2参照)が、ロータ軸4と一体回転するように連結されている。回転電機1は回転界磁型の回転電機であり、ステータ2のコアにはコイル6が巻装されている。そして、ステータ2から発生する磁界により、ロータ3が回転する。
本実施形態では、回転電機1はインナーロータ型の回転電機であり、ロータ3は、ステータ2に対して相対回転可能な状態で、ステータ2の径方向内側R1に配置されている。
【0012】
図2に示すように、ロータ3は、軸方向Lに延びる磁石挿入孔11を備えたロータコア10と、磁石挿入孔11の内部に接着剤30で固定された永久磁石20と、を備えている。すなわち、ロータ3は、埋込磁石構造の回転電機(例えば、同期電動機)に用いられるロータである。ロータコア10は、例えば、円環板状の磁性体板(例えば、電磁鋼板等)を軸方向Lに複数積層して形成される。この場合、各磁性体板に形成された貫通孔同士が積層方向(軸方向L)に連通して磁石挿入孔11が形成される。
【0013】
ロータコア10は、永久磁石20が挿入される磁石挿入孔11を複数備えている。複数の磁石挿入孔11は、周方向Cに沿って均等間隔で形成されると共に、軸方向Lに対して平行に延びるように形成されている。永久磁石20の軸方向Lの長さは、磁石挿入孔11の軸方向Lの長さに応じた長さとされ、本実施形態では、磁石挿入孔11はロータコア10の軸方向Lにおける両側に貫通しており、磁石挿入孔11の軸方向Lの長さは、永久磁石20の軸方向Lの長さと同等である。
【0014】
永久磁石20は、矩形平面状に形成された磁石側平面部PMを有している。すなわち、永久磁石20の形状は、いずれかの部分に、磁石側平面部PMとしての矩形平面状の面を有する形状であればよい。但し、一般的に、回転電機1のロータ3に用いられる永久磁石20は、ステータ2に対して多くの磁束を出すために径方向Rを向く面が広い形状とされることが多い。そこで、永久磁石20を安定的に固定するという点に鑑みて、磁石側平面部PMは、比較的広い面である径方向内側R1又は径方向外側R2を向く面とされていることが望ましい。また、ステータ2に対して多くの磁束を出すという点に鑑みれば、永久磁石20は、磁石挿入孔11内における径方向外側R2に寄せて配置することが望ましい。そこで、接着剤30が塗布される磁石側平面部PMは、径方向内側R1を向く面とされることが望ましい。言い換えると、磁石側平面部PMの法線がロータコア10の径方向内側R1を向く成分を有するように、当該磁石側平面部PMが設定されていると好適である。
【0015】
本実施形態では、永久磁石20は、直方体状に形成されている。より詳しくは、
図2に示すように、永久磁石20は、周方向Cの幅が径方向Rの幅よりも大きい矩形状断面を有している。なお、本例では、
図1からわかるように、永久磁石20は、軸方向Lの長さが周方向Cの幅より大きい形状となっている。そして、本実施形態では、永久磁石20は、内側表面部20Aと外側表面部20Bと第一側表面部20Cと第二側表面部20Dとを有している。内側表面部20Aは、永久磁石20の表面のうちの径方向内側R1を向く面により形成されている。外側表面部20Bは、永久磁石20の表面のうちの径方向外側R2を向く面により形成されている。第一側表面部20Cは、永久磁石20の表面のうちの周方向第一側C1を向く面により形成されている。第二側表面部20Dは、永久磁石20の表面のうちの周方向第二側C2を向く面により形成されている。本例では、これら内側表面部20A、外側表面部20B、第一側表面部20C及び第二側表面部20Dの夫々は、矩形平面状に形成されている。尚、本実施形態の内側表面部20Aが、「磁石側平面部PM」に相当し、本実施形態の第一側表面部20C及び第二側表面部20Dが、周方向Cを向く「側面部」に相当する。
【0016】
永久磁石20は、内側表面部20Aの法線が径方向内側R1を向く成分を有する姿勢で設置されている。ここで、「法線が径方向内側R1を向く成分を有する」とは、本実施形態のように法線が径方向Rに沿っている状態に限らず、法線が径方向Rに対して傾斜している状態も含む概念である。本実施形態では、永久磁石20は、内側表面部20Aの法線が径方向内側R1を向く状態、すなわち、内側表面部20Aの法線が径方向Rに平行な状態で配置されている。ここでは、永久磁石20は、径方向Rに直交する断面の形状が矩形状であり、内側表面部20Aの法線及び外側表面部20Bの法線の双方が径方向Rに平行な向きに配置されている。
【0017】
磁石挿入孔11は、その内面に、磁石側平面部PMに対向する平面状に形成された孔側平面部PHを有している。すなわち、磁石挿入孔11の内面形状は、永久磁石20の磁石側平面部PMに対向する平面状の面を有する形状とする。また、磁石挿入孔11の内面形状は、内部に永久磁石20を保持することができるように、永久磁石20の形状に合わせた形状とする。例えば、磁石挿入孔11の内面形状は、永久磁石20の外面形状に相似な形状とする。また、上記のように、磁石側平面部PMが径方向内側R1を向く面とされる場合、孔側平面部PHは径方向外側R2を向く面とされる。なお、永久磁石20の磁束の通過を制限するフラックスバリアとして機能する空隙を、磁石挿入孔11と連続して、或いは磁石挿入孔11に接して形成してもよい。
【0018】
本実施形態では、磁石挿入孔11の内面は、永久磁石20の外面形状に相似な直方体状に形成されている。より詳しくは、
図2に示すように、磁石挿入孔11は、周方向Cの幅が径方向Rの幅よりも大きい矩形状断面を有している。すなわち、磁石挿入孔11は、軸方向Lに見て矩形状に形成され、軸方向Lに延びる孔とされている。そして、本実施形態では、磁石挿入孔11の内面は、内側内面部11Aと外側内面部11Bと第一側内面部11Cと第二側内面部11Dとを有している。内側内面部11Aは、永久磁石20に対して径方向内側R1に位置しており、永久磁石20の内側表面部20Aに対向する面である。
外側内面部11Bは、永久磁石20に対して径方向外側R2に位置しており、永久磁石20の外側表面部20Bに対向する面である。第一側内面部11Cは、永久磁石20に対して周方向第一側C1に位置しており、永久磁石20の第一側表面部20Cに対向する面である。第二側内面部11Dは、永久磁石20に対して周方向第二側C2に位置しており、永久磁石20の第二側表面部20Dに対向する面である。本例では、これら内側内面部11A、外側内面部11B、第一側内面部11C及び第二側内面部11Dの夫々は、平面矩形状に形成されている。尚、本実施形態の内側内面部11Aが、「孔側平面部PH」に相当する。
【0019】
接着剤30は、発泡接着剤である。より詳しくは、接着剤30は、発泡温度領域の温度で加熱することにより発泡して膨張すると共に硬化する。本実施形態では、接着剤30は、エポキシ系樹脂を含む基材の中に加熱膨張するカプセルが配合されたものを使用する。
このカプセルは、例えば、加熱によって気化する液体等が封入された熱可塑性樹脂のカプセルとされる。接着剤30は、磁石挿入孔11の内面と永久磁石20の表面との間に設けられており、これら磁石挿入孔11の内面と永久磁石20の表面とを接着する。ここで、接着剤30は、少なくとも、永久磁石20の磁石側平面部PMと磁石挿入孔11の孔側平面部PHとの間に設けられる。本実施形態では、接着剤30は、磁石挿入孔11の孔側平面部PHとしての内側内面部11Aと永久磁石20の磁石側平面部PMとしての内側表面部20Aとの間に加えて、磁石挿入孔11の第一側内面部11Cと永久磁石20の第一側表面部20Cとの間、磁石挿入孔11の第二側内面部11Dと永久磁石20の第二側表面部20Dとの間、にも設けられている。尚、本実施形態では、磁石挿入孔11の外側内面部11Bと永久磁石20の外側表面部20Bとの間には接着剤30は設けられておらず、外側内面部11Bと外側表面部20Bとは接触している。
【0020】
永久磁石20は、その表面に接着剤30を塗布した状態で磁石挿入孔11に挿入されて、磁石挿入孔11の内部に接着剤30により固定される。そこで、次に、永久磁石20を磁石挿入孔11に挿入する前における、永久磁石20に対する接着剤30の塗布状態(
図6に示す状態)について説明する。尚、本明細書において、接着剤30について「塗布する」とは、接着剤30を「設ける」ことの一態様である。以下では、接着剤30を「塗布する」場合を例示して説明するが、接着剤30を「設ける」ことが「塗布する」ことに限定されるものではなく、例えば、型材を用いて対象箇所に接着剤30を流し込む場合等も、「設ける」ことの一態様である。
【0021】
接着剤30は、磁石側平面部PMである内側表面部20Aにおける4つの隅部P2に少なくとも塗布されている。そして、接着剤30の塗布状態は、磁石側平面部PMの中央部P3における接着剤30の厚みが4つの隅部P2における接着剤30の厚みよりも薄くされている。そのため、磁石挿入孔11に挿入された永久磁石20は、磁石側平面部PMの発泡した接着剤30により、磁石側平面部PMの4つの隅部P2は押圧されるが、磁石側平面部PMの中央部P3は押圧されない。従って、磁石側平面部PMの4つの隅部P2の厚みを管理するだけで、永久磁石20は、磁石側平面部PMの傾きを抑制しつつ、磁石挿入孔11の内部における孔側平面部PHに対向する面に押し付けられた状態となる。
【0022】
ここで、接着剤30は、磁石側平面部PMの周縁に沿った4つの辺部P1のうち、対向する2つの辺部P1(4つの隅部P2を含む)に沿って少なくとも塗布されており、磁石側平面部PMの中央部P3における接着剤30の厚みが対向する2つの辺部P1における接着剤30の厚みよりも薄くされているとより好適である。本実施形態では、更に好ましい態様として、接着剤30は、磁石側平面部PMの周縁に沿った4つの辺部P1の全てに沿って塗布されており、磁石側平面部PMの中央部P3における接着剤30の厚みが4つの辺部P1における接着剤30の厚みよりも薄くされている。
【0023】
以下では、磁石側平面部PMとしての内側表面部20Aにおける接着剤30の塗布状態の説明を分りやすくするために、
図4に示すように、内側表面部20Aを概略的に区画する仮想の領域を設定し、当該仮想領域を用いて接着剤30の塗布状態を説明する。各領域の境界として、内側表面部20Aの周縁21(辺)から設定幅Wだけ内側にオフセットした位置に仮想境界線SLを設定する。
図4には、一点鎖線で仮想境界線SLを示している。ここでは、内側表面部20Aの4つの辺に沿って、4本の仮想境界線SLが設定されている。設定幅Wは、0より大きく、内側表面部20Aの短辺の長さの1/3より小さい任意の幅とすることができる。この設定幅Wは、好ましくは内側表面部20Aの短辺の長さの1/50以上、1/5以下に設定されると好適である。そして、内側表面部20Aの各辺と当該辺に平行な仮想境界線SLとにより挟まれた設定幅Wの帯状の領域のそれぞれを辺領域T1として設定する。一方、4本の仮想境界線SLにより囲まれる領域の内側を中央領域T3として設定する。この中央領域T3は、内側表面部20Aの4つの隅22を結ぶ2本の対角線が交わる点を含む領域となっている。また、ここでは、内側表面部20Aの4つの隅22の夫々に、隅領域T2を設定している。本例では、隅領域T2は、内側表面部20Aの各辺に沿った4つの辺領域T1の内、交差する2つの辺領域T1が重なる領域である。隅領域T2は、4つの隅22のそれぞれを含む領域となっている。
【0024】
そして、各隅領域T2の一部又は全部が、隅部P2となる。内側表面部20Aは、4つの隅領域T2に対応して4つの隅部P2を有する。また、各辺領域T1の一部又は全部が、辺部P1となる。内側表面部20Aは、4つの辺領域T1に対応して4つの辺部P1を有する。また、中央領域T3の一部又は全部が、中央部P3となる。本実施形態では、一例として、辺領域T1の全部を辺部P1とし、隅領域T2の全部を隅部P2とし、中央領域T3の全部を中央部P3としている。この場合、中央部P3は、内側表面部20Aにおける辺部P1及び隅部P2以外の部分となる。なお、隅領域T2の一部を隅部P2とする場合には、例えば、
図4において隅領域T2内に破線で示すように、隅領域T2の一部を占める領域を隅部P2とすることができる。同様に、中央領域T3の一部を中央部P3とする場合には、例えば、
図4において中央領域T3内に破線で示すように、中央領域T3の一部を占める領域を中央部P3とすることができる。また、辺領域T1の一部を辺部P1とする場合には、例えば、
図4において辺領域T1内に破線で示すように、辺領域T1の一部を占める領域を辺部P1とすることができる。
【0025】
そして、本実施形態では、
図6に示すように、接着剤30は、矩形状の内側表面部20Aにおける、4つの隅部P2を含む4つの辺部P1の全てに沿って塗布されている。更に、本実施形態では、接着剤30は、中央部P3にも塗布されている。すなわち、本実施形態では、接着剤30は、内側表面部20Aの全体に塗布されている。但し、中央部P3における接着剤30の厚みが4つの辺部P1における接着剤30の厚みよりも薄くされている。更に、本実施形態では、4つの辺部P1と中央部P3とのそれぞれにおいて、接着剤30の厚みが均一に近くなるように、接着剤30が塗布されている。すなわち、内側表面部20Aに塗布された接着剤30の径方向内側R1を向く表面は、各領域に設定された高さの平坦面となっている。
【0026】
また、本実施形態では、
図6に示すように、接着剤30は、磁石側平面部PMである内側表面部20Aに加えて、側面部である第一側表面部20C及び第二側表面部20Dにも塗布されている。ここでは、第一側表面部20C及び第二側表面部20Dのそれぞれについて、全体に均一に近い厚さの接着剤30が塗布されている。なお、第一側表面部20C及び第二側表面部20Dのそれぞれについて、上記内側表面部20Aと同様に、各面の中央部における接着剤30の厚みが、4つの隅部、2つの辺部、或いは4つの辺部における接着剤30の厚みよりも薄くされていてもよい。また、第一側表面部20C及び第二側表面部20Dのいずれか一方のみに接着剤30を塗布し、他方に接着剤30を塗布しないようにしてもよい。
【0027】
本実施形態では、ロータコア10は、永久磁石20の対象領域T4に向けて径方向内側R1から油を供給する油路12を備えている。この油路12は、複数の磁石挿入孔11に対応して複数形成されている。油路12は、径方向Rに沿って形成されており、磁石挿入孔11に対して径方向内側R1から連通している。そして、内側内面部11Aに形成されている油路12の開口が、径方向Rに見て、永久磁石20の内側表面部20Aにおける対象領域T4と重複するように、ロータコア10に油路12が形成されている。つまり、油路12は、内側表面部20Aにおける対象領域T4に対して径方向内側R1から油を供給する。対象領域T4は、内側表面部20Aにおける、接着剤30の厚みが4つの隅部P2より薄い領域である。従って、本実施形態では、中央領域T3が対象領域T4である。
【0028】
次に、ロータ3の製造方法について説明する。
図3に示すように、ロータ3を製造する場合には、準備工程S1と、塗布工程S2と、乾燥成型工程S3と、挿入工程S4と、膨張硬化工程S5と、を行う。これらの各工程は、記載の順に行われる。すなわち、塗布工程S2は、準備工程S1の後に行われる。乾燥成型工程S3は、塗布工程S2の後に行われる。挿入工程S4は、乾燥成型工程S3の後に行われる。膨張硬化工程S5は、挿入工程S4の後に行われる。
【0029】
〔準備工程〕
準備工程S1は、永久磁石20に塗布する接着剤30を準備する工程である。上記のとおり、接着剤30は、発泡温度領域の温度で加熱することにより発泡して膨張すると共に硬化する、発泡接着剤である。また、接着剤30は、粘性を有している。乾燥成型工程S3において乾燥させる前は、比較的粘性が高く、乾燥成型工程S3において乾燥させることで、粘性が低下する。
【0030】
〔塗布工程〕
塗布工程S2は、接着剤30を磁石側平面部PMとしての内側表面部20Aにおける4つの隅部P2に少なくとも塗布する工程である。本実施形態では、上記のとおり、塗布工程S2において、永久磁石20の内側表面部20A、第一側表面部20C及び第二側表面部20Dに接着剤30を塗布する。より具体的には、本実施形態では、この塗布工程S2において、内側表面部20Aの全面、第一側表面部20Cの全面及び第二側表面部20Dの全面に、接着剤30を塗布する。尚、本明細書において、接着剤30を塗布する塗布工程S2は、接着剤30を設ける「設置工程」の一態様である。本実施形態では、「設置工程」として「塗布工程S2」を例示して説明するが、「設置工程」はこれに限定されるものではなく、例えば、型材を用いて対象箇所に接着剤30を流し込む「注入工程」等の接着剤30を設けるための各種の工程も「設置工程」の一態様である。
【0031】
〔乾燥成型工程〕
乾燥成型工程S3は、接着剤30を発泡温度領域より低い温度で乾燥させると共に、内側表面部20Aに塗布された接着剤30を、内側表面部20Aの中央部P3における接着剤30の厚みが4つの隅部P2における接着剤30の厚みよりも薄くなるように成型する工程である。後述する挿入工程S4により永久磁石20が磁石挿入孔11に挿入され、後述する膨張硬化工程S5により永久磁石20に塗布された接着剤30が膨張し、その膨張した接着剤30によって、磁石側平面部PMの4つの隅部P2は押圧される。この際、中央部P3における接着剤30の厚みは薄いため、磁石側平面部PMの中央部P3は押圧されない。そのため、磁石側平面部PMの4つの隅部P2の厚みを管理するだけで、永久磁石20を、磁石側平面部PMの傾きを抑制しつつ、磁石挿入孔11の内部における孔側平面部PHに対向する面に押し付けられた状態とすることができる。
【0032】
乾燥成型工程S3における接着剤30の乾燥は、接着剤30に含まれる溶剤を揮発させることにより行う。例えば、接着剤30の乾燥は、空気を吹き付けること(エアブロー)や、乾燥温度領域の温度で加熱すること等により行う。なお、乾燥温度領域は、常温より高く発泡温度領域より低い温度領域に設定される。このように接着剤30を乾燥させることで、接着剤30の粘性が低下する。
【0033】
また、本実施形態では、乾燥成型工程S3において、中央部P3における接着剤30の厚みが4つの辺部P1における接着剤30の厚みよりも薄くなるように成型する。この成型に際して、本実施形態では、内側型部材16を用いる。内側型部材16は、内側表面部20Aに塗布された接着剤30を成型するための型部材である。
図5に示すように、この内側型部材16を、内側表面部20Aに塗布された接着剤30に押し付けることで、中央部P3における接着剤30の厚みが、4つの辺部P1における接着剤30の厚みより薄くなるように成型される。このため、内側型部材16は、押圧面における、中央部P3に対応する領域が、4つの辺部P1に対応する領域よりも突出した形状となっている。更に、本実施形態では、内側型部材16は、当該内側型部材16による押圧後の接着剤30の厚みが、4つの辺部P1と中央部P3とのそれぞれにおいて均一に近くなるように押圧する。このため、内側型部材16は、中央部P3に対応する領域と、4つの辺部P1に対応する領域とのそれぞれが、内側表面部20Aに平行な平坦面とされている。すなわち、内側型部材16の押圧面は、中央部が高く周縁部が低い段付き平面状に形成されている。本実施形態では、内側型部材16が、「成型用の型部材」に相当する。
【0034】
更に、本実施形態では、第一側表面部20Cと第二側表面部20Dとに塗布された接着剤30の成型のために、第一側型部材17及び第二側型部材18を用いる。第一側型部材17は、第一側表面部20Cに塗布された接着剤30を成型するための部材である。
図5に示すように、この第一側型部材17を、第一側表面部20Cに塗布された接着剤30に押し付けることで、第一側表面部20Cに塗布されている接着剤30の周方向第一側C1を向く面が平坦面となるように成型される。このため、第一側型部材17は、押圧面の全体が一つの平面となっている。第二側型部材18は、第二側表面部20Dに塗布された接着剤30を成型するための部材である。
図5に示すように、この第二側型部材18を、第二側表面部20Dに塗布された接着剤30に押し付けることで、第二側表面部20Dに塗布されている接着剤30の周方向第二側C2を向く面が平坦面となるように成型される。
このため、第二側型部材18は、押圧面の全体が一つの平面となっている。
【0035】
本実施形態では、内側表面部20Aに塗布された接着剤30への内側型部材16の押し付けと、第一側表面部20Cに塗布された接着剤30への第一側型部材17の押し付けと、第二側表面部20Dに塗布された接着剤30への第二側型部材18の押し付けと、を同時に行う。これにより、これら3つの表面部に塗布された接着剤30の成型を同時に行う。なお、これらの各表面部における接着剤30の成型を1面ずつ順次行っても良いし、まず内側表面部20Aの成型を行った後、第一側表面部20Cと第二側表面部20Dの成型を同時に行っても良い。
【0036】
〔挿入工程〕
挿入工程S4は、永久磁石20を磁石挿入孔11に挿入する工程である。上記のとおり、前工程である乾燥成型工程S3において、接着剤30は、所定の厚みに成型されていると共に乾燥されて粘性が低い状態となっている。また、この挿入工程S4では、
図7に示すように、接着剤30は、発泡による膨張はしていない。従って、永久磁石20を磁石挿入孔11に挿入する際に、接着剤30が邪魔になることなく、容易に挿入作業を行うことができる。これにより、成型した接着剤30の形がくずれることも抑制できる。
【0037】
〔膨張硬化工程〕
膨張硬化工程S5は、接着剤30を発泡温度領域の温度で加熱し、接着剤30を膨張させると共に硬化させる工程である。本実施形態では、この膨張硬化工程S5は、接着剤30が塗布された永久磁石20が磁石挿入孔11に挿入された状態のロータ3の全体を加熱することにより行う。内側表面部20Aに塗布された接着剤30は、内側表面部20Aと内側内面部11Aとの間で膨張する。これにより、永久磁石20は径方向外側R2に押されて、永久磁石20の外側表面部20Bが、磁石挿入孔11の外側内面部11Bに当接する。この状態で接着剤30が硬化することで、永久磁石20の径方向Rの位置決めが行われる。
【0038】
更に、本実施形態では、第一側表面部20Cに塗布された接着剤30が、第一側表面部20Cと第一側内面部11Cとの間で膨張し、第二側表面部20Dに塗布された接着剤30が、第二側表面部20Dと第二側内面部11Dとの間で膨張する。これにより、永久磁石20は周方向Cの双方から押され、磁石挿入孔11における周方向Cの中央部に保持される。この状態で接着剤30が硬化することで、永久磁石20の周方向Cの位置決めが行われる。
【0039】
2.その他の実施形態
次に、回転電機用ロータ及びその製造方法のその他の実施形態について説明する。
【0040】
(1)上記実施形態では、磁石挿入孔11の径方向Rに直交する断面の形状が矩形状であり、永久磁石20の径方向Rに直交する断面の形状も矩形状である場合を例として説明したが、磁石挿入孔11の形状や永久磁石20の形状はこれに限定されない。例えば、
図9に示すように、永久磁石20の外側表面部20Bにおける周方向Cの中央部が、周方向Cの両側部に比べて径方向外側R2に突出する凸形状となっていても好適である。
図9の例では、外側表面部20Bの形状が、径方向外側R2に向かって凸となる円筒面の一部となるように形成されている。更に
図9の例では、外側表面部20Bの周方向Cの両側部分に、面取り部、すなわち、周方向Cの外側へ向かうに従って径方向内側R1に向かう傾斜面が形成されている。なお、内側表面部20Aの形状は上記実施形態と同様である。これにより、
図9の例では、永久磁石20の径方向Rに直交する断面の形状が、おおよそD字状に形成されている。磁石挿入孔11は、永久磁石20の形状に合わせた形状となっている。
図9の例では、外側表面部20Bの形状を前述のような形状とし、磁石挿入孔11の形状をそれに適合する形状としたことにより、永久磁石20の内側表面部20Aに塗布された接着剤30が膨張した際に、永久磁石20を磁石挿入孔11の周方向Cの正しい位置に位置決めすることができる。すなわち、内側表面部20Aに塗布された接着剤30が膨張し、永久磁石20の外側表面部20Bの円筒面又は面取り部の傾斜面が、磁石挿入孔11の外側内面部11Bの適合する円筒面又は傾斜面に押し付けられることで、磁石挿入孔11の外側内面部11Bの形状に応じた適切な周方向Cの位置に、永久磁石20が位置決めされる。このため、
図9の例では、永久磁石20の周方向Cの側面部には、接着剤30は塗布していない。
【0041】
(2)また、上記の実施形態では、永久磁石20の内側表面部20A及び外側表面部20Bが、径方向Rに直交する方向に沿って配置された構成を例として説明したが、永久磁石20の配置構成はこれに限定されない。例えば、
図8に示すように、一つの磁極を構成する一対の永久磁石20を軸方向Lに見てV字状になるように配置してもよい。この場合にも、各永久磁石20としては、直方体状のものを使用できる。説明を加えると、一対の永久磁石20のうち周方向第一側C1に位置する永久磁石20については、周方向第一側C1に向かうに従って径方向外側R2に位置するように内側表面部20A及び外側表面部20Bを傾けて配置する。また、周方向第二側C2に位置する永久磁石20については、周方向第二側C2に向かうに従って径方向外側R2に位置するように内側表面部20A及び外側表面部20Bを傾けて配置する。また、
図8の例では、永久磁石20の周方向Cの両側面部の内、径方向内側R1に位置する方の側面部のみに接着剤30を塗布する。これにより、側面部に塗布された接着剤30が膨張したときに、永久磁石20を、磁石挿入孔11における径方向外側R2に位置する方の側面部へ押圧して位置決めすることができる。
なお、
図8の例では、フラックスバリアとして機能する空隙が、各磁石挿入孔11と連続して、各磁石挿入孔11の周方向Cの両側に形成されている。
【0042】
(3)上記実施形態では、磁石側平面部PMの4つの辺部P1における接着剤30の厚みが、中央部P3における接着剤30の厚みよりも厚い場合を例として説明した。しかし、このような構成に限定されるものではない。磁石側平面部PMの中の少なくとも4つの隅部P2における接着剤30の厚みが、中央部P3における接着剤30の厚みよりも厚い構成となっていればよい。例えば、磁石側平面部PMの4つの辺部P1の内の対向する2つの辺部P1における接着剤30の厚みが、中央部P3及び他の辺部P1における接着剤30の厚みよりも厚い構成としても好適である。或いは、磁石側平面部PMの4つの隅部P2における接着剤30の厚みが、中央部P3を含む磁石側平面部PM内の他の部分における接着剤30の厚みよりも厚い構成としても好適である。
【0043】
(4)上記実施形態では、中央部P3を含む磁石側平面部PMの全体に接着剤30を塗布する構成を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、中央部P3に接着剤30を全く塗布せず、中央部P3の接着剤30の厚みを0としても好適である。このような場合において、接着剤30の厚みを厚くする領域以外の領域の全てに接着剤30を塗布しない構成としてもよい。例えば、磁石側平面部PMの4つの隅部P2のみに接着剤30を塗布し、その他の領域には接着剤30を塗布しない構成としてもよい。
【0044】
(5)上記の実施形態では、磁石側平面部PMの法線がロータコア10の径方向内側R1を向く成分を有するように、当該磁石側平面部PMが内側表面部20Aとされている場合を例として説明した。しかし、磁石側平面部PMを永久磁石20のいずれの面にするかは任意である。従って、磁石側平面部PMの法線がロータコア10の径方向内側R1を向く成分を有するように構成されていてもよい。すなわち、磁石側平面部PMを、ロータコア10の径方向外側R2を向く面としてもよい。例えば、上記の実施形態における、外側表面部20Bを磁石側平面部PMとしてもよい。なお、その場合、孔側平面部PHは、永久磁石20に対して径方向外側R2において、磁石側平面部PMに対向する面となる。例えば、上記の実施形態における、外側内面部11Bを孔側平面部PHとしてもよい。
【0045】
(6)上記実施形態では、中央領域T3が対象領域T4である場合を例として説明した。
しかし、磁石側平面部PMに中央領域T3以外にも接着剤30の厚みが薄い領域がある場合には、当該領域を対象領域T4として、油路12により径方向内側R1から油を供給してもよい。また、油路12は必ず備える必要があるものではない。従って、例えば
図8や
図9に示すように、ロータコア10が、油路12を備えない構成であってもよい。
【0046】
(7)上記実施形態では、永久磁石20における内側表面部20Aと外側表面部20Bと第一側表面部20Cと第二側表面部20Dとのうち、内側表面部20Aと第一側表面部20Cと第二側表面部20Dとに接着剤30を塗布する構成を例として説明したが、接着剤30を塗布する表面部はこれに限定されない。すなわち、例えば、
図9に示すように、内側表面部20Aにのみ接着剤30を塗布してもよく、
図8に示すように、内側表面部20Aに加えて、第一側表面部20Cと第二側表面部20Dとのうちの何れか一方にのみ接着剤30を塗布してもよい。また、内側表面部20Aと外側表面部20Bと第一側表面部20Cと第二側表面部20Dとの全てに接着剤30を塗布してもよい。
【0047】
(8)上記実施形態では、乾燥成型工程S3における接着剤30の成型を、磁石側平面部PMに型部材を押し付けることにより行うことを例示したが、接着剤30を成型する方法はこれに限定されない。例えば、乾燥成型工程S3における乾燥のために空気を吹き付けること(エアブロー)により、磁石側平面部PMに塗布された接着剤30を磁石側平面部PMの隅部P2や辺部P1側へ寄せ、それにより、磁石側平面部PMの中央部P3における接着剤30の厚みが当該隅部P2や辺部P1における接着剤30の厚みよりも薄くなるようにしても好適である。
【0048】
(9)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0049】
3.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した回転電機用ロータの概要について説明する。
【0050】
回転電機用ロータは、ロータ回転軸(A)に沿う方向である軸方向(L)に延びる磁石挿入孔(11)を備えたロータコア(10)と、前記磁石挿入孔(11)の内部に接着剤(30)で固定された永久磁石(20)と、を備え、前記永久磁石(20)は、矩形平面状に形成された磁石側平面部(PM)を有し、前記磁石挿入孔(11)は、その内面に、前記磁石側平面部(PM)に対向する平面状に形成された孔側平面部(PH)を有し、前記接着剤(30)は、発泡性接着剤であり、前記磁石側平面部(PM)における4つの隅部(P2)に少なくとも設けられており、前記磁石側平面部(PM)の中央部(P3)における前記接着剤(30)の厚みが前記4つの隅部(P2)における前記接着剤(30)の厚みよりも薄い。
【0051】
このような構成により、発泡性を有する接着剤(30)が、磁石側平面部(PM)の中央部(P3)よりも4つの隅部(P2)において厚くなるように設けられている。そして、このような4つの隅部(P2)に設けられた接着剤(30)は、製造過程において発泡することにより、永久磁石(20)を孔側平面部(PH)側から押圧する。これにより、永久磁石(20)は、磁石挿入孔(11)の内部における孔側平面部(PH)に対向する内面に押し付けられた状態となる。この際、永久磁石(20)は、磁石側平面部(PM)の4つの隅部(P2)が接着剤(30)により押圧されると共に磁石側平面部(PM)の中央部(P3)が押圧されない状態となっている。そのため、永久磁石(20)は、磁石挿入孔(11)の内部における孔側平面部(PH)に対向する内面に比較的均等に押し付けられた状態となり易い。よって、永久磁石(20)が磁石挿入孔(11)内に適切に位置決めされたものとなる。
【0052】
また、磁石側平面部(PM)の中央部(P3)における接着剤(30)の厚みが4つの隅部(P2)における接着剤(30)の厚みよりも薄いため、永久磁石(20)は、磁石側平面部(PM)の4つの隅部(P2)が接着剤(30)により押圧されると共に磁石側平面部(PM)の中央部(P3)が押圧されない状態となっている。そのため、磁石側平面部(PM)の中央部(P3)の接着剤(30)の厚みは、4つの隅部(P2)に比べて厳密に管理する必要がない。従って、磁石側平面部(PM)の全体の接着剤(30)の厚みを、4つの隅部(P2)に設けられた接着剤(30)の厚みと同様に管理する場合に比べて、接着剤(30)の厚みの管理が行い易い。すなわち、この回転電機用ロータ(3)は、製造工程が複雑化することを抑制できる構造となっている。
【0053】
ここで、前記接着剤(30)は、前記磁石側平面部(PM)の周縁(21)に沿った4つの辺部(P1)のうち、前記4つの隅部(P2)を含む対向する2つの辺部(P1)に沿って少なくとも設けられており、前記磁石側平面部(PM)の中央部(P3)における前記接着剤(30)の厚みが前記対向する2つの辺部(P1)における前記接着剤(30)の厚みよりも薄いと好適である。
【0054】
この構成によれば、磁石側平面部(PM)の4つの隅部(P2)が含まれるようにしつつ、接着剤(30)の厚みが中央部(P3)よりも厚い領域を、磁石側平面部(PM)の2つの辺に沿って連続的に形成することができる。従って、磁石側平面部(PM)の傾きを抑制しつつ、永久磁石(20)を、磁石挿入孔(11)の内部に適切に位置決めできる。また、永久磁石(20)の磁石挿入孔(11)の内部への固定を、より確実なものとすることができる。
【0055】
また、前記接着剤(30)は、前記磁石側平面部(PM)の周縁(21)に沿った4つの辺部(P1)の全てに沿って設けられており、前記磁石側平面部(PM)の中央部(P3)における前記接着剤(30)の厚みが前記4つの辺部(P1)における前記接着剤(30)の厚みよりも薄いと好適である。
【0056】
この構成によれば、磁石側平面部(PM)の4つの隅部(P2)が含まれるようにしつつ、接着剤(30)の厚みが中央部(P3)よりも厚い領域を、磁石側平面部(PM)の4つの辺に沿って連続的に形成することができる。従って、磁石側平面部(PM)の傾きを抑制しつつ、永久磁石(20)を、磁石挿入孔(11)の内部に適切に位置決めできる。また、永久磁石(20)の磁石挿入孔(11)の内部への固定を、より一層確実なものとすることができる。
【0057】
また、前記磁石側平面部(PM)の法線が、前記ロータコア(10)の径方向内側(R1)を向く成分を有すると好適である。
【0058】
この構成によれば、磁石側平面部(PM)に設けられた接着剤(30)により、永久磁石(20)は、磁石挿入孔(11)の内部における径方向外側(R2)の面に押し付けられた状態で位置決めされる。従って、永久磁石(20)を径方向(R)に確実に位置決めすることができる。また、ロータ(3)がインナーロータ型回転電機に用いられる場合には、ロータ(3)に対して径方向外側(R2)に配置されたステータ(2)に対して、永久磁石(20)からより多くの磁束を出すことができる。従って、回転電機(1)の特性を向上させることができる。
【0059】
また、前記永久磁石(PM)は、前記ロータコア(10)の周方向(C)を向く側面部(20C,20D)を有し、前記接着剤(30)は、前記磁石側平面部(PM)に加えて、前記側面部(20C,20D)にも設けられていると好適である。
【0060】
この構成によれば、ロータコア(10)の磁石挿入孔(11)の内部において、永久磁石(20)を周方向(C)に確実に位置決めすることができる。
【0061】
また、前記磁石側平面部(PM)における、前記接着剤(30)の厚みが前記4つの隅部(P2)より薄い領域を対象領域(T4)として、前記ロータコア(10)は、前記対象領域(T4)に向けて径方向内側(R1)から油を供給する油路(12)を備えていると好適である。
【0062】
この構成によれば、磁石側平面部(PM)の対象領域(T4)と磁石挿入孔(11)の孔側平面部(PH)との間に油を通流又は充満させることができる。従って、永久磁石(20)を適切に冷却することが容易となる。
【0063】
また、前記接着剤(30)は、発泡後の発泡接着剤であると好適である。
【0064】
この構成によれば、接着剤(30)の発泡後の厚みを利用して、挿入孔(11)に対して永久磁石(20)を圧迫させることができる。よって、挿入孔(11)の内部に永久磁石(20)を固定でき、その結果、挿入孔(11)に対する永久磁石(20)の位置決めを適切に行うことができる。
【0065】
回転電機用ロータの製造方法は、ロータ回転軸(A)に沿う方向である軸方向(L)に延びる磁石挿入孔(11)を備えたロータコア(10)と、前記磁石挿入孔(11)の内部に接着剤(30)で固定された永久磁石(20)と、を備え、前記永久磁石(20)は、矩形平面状に形成された磁石側平面部(PM)を有し、前記磁石挿入孔(11)は、その内面に、前記磁石側平面部(PM)に対向する平面状に形成された孔側平面部(PH)を有する回転電機用ロータ(3)の製造方法において、発泡温度領域の温度で加熱することにより発泡して膨張すると共に硬化する前記接着剤(30)を準備する準備工程(S1)と、前記接着剤(30)を前記磁石側平面部(PM)における4つの隅部(P2)に少なくとも設ける設置工程(S2)と、前記設置工程(S2)の後、前記発泡温度領域より低い温度で前記接着剤(30)を乾燥させると共に、前記磁石側平面部(PM)に設けられた前記接着剤(30)を、前記磁石側平面部(PM)の前記中央部(P3)における前記接着剤(30)の厚みが前記4つの隅部(P2)における前記接着剤(30)の厚みよりも薄くなるように成型する乾燥成型工程(S3)と、前記乾燥成型工程(S3)の後、前記永久磁石(20)を前記磁石挿入孔(11)に挿入する挿入工程(S4)と、前記挿入工程(S4)の後、前記接着剤(30)を前記発泡温度領域の温度で加熱し、前記接着剤(30)を膨張させると共に硬化させる膨張硬化工程(S5)と、を行う。
【0066】
このような構成により、接着剤(30)を設けた後、発泡温度領域より低い温度で接着剤(30)を乾燥させると共に、磁石側平面部(PM)に設けられた接着剤(30)を、磁石側平面部(PM)の中央部(P3)における接着剤(30)の厚みが4つの隅部(P2)における接着剤(30)の厚みよりも薄くなるように成型する乾燥成型工程(S3)を行う。従って、接着剤(30)の粘性を低下させつつ、磁石側平面部(PM)内の場所に応じて接着剤(30)の厚さが適切な厚みとなるようにすることができる。そして、乾燥により接着剤(30)の粘性が低下した状態で挿入工程(S4)を行うため、接着剤(30)が磁石側平面部(PM)内の場所に応じて適切な厚みにされた状態を維持しつつ、永久磁石(20)を磁石挿入孔(11)に挿入することができる。その後、接着剤(30)を膨張させて硬化させることにより、永久磁石(20)を磁石挿入孔(11)内に適切に位置決めすることができる。また、この構成によれば、接着剤(30)の厚みの管理を、磁石側平面部(PM)の中央部(P3)における接着剤(30)の厚みが4つの隅部(P2)における接着剤(30)の厚みよりも薄くなるように成型するだけで行うことができる。従って、製造工程が複雑化することも抑制できる。
【0067】
ここで、接着剤(30)は、磁石側平面部(PM)の中央部(P3)よりも4つの隅部(P2)において厚くなるように成型されているため、膨張硬化工程(S5)において発泡することにより、永久磁石(20)を孔側平面部(PH)側から押圧する。これにより、永久磁石(20)は、磁石挿入孔(11)の内部における孔側平面部(PH)に対向する内面に押し付けられる。この際、永久磁石(20)は、磁石側平面部(PM)の4つの隅部(P2)が接着剤(30)により押圧されると共に磁石側平面部(PM)の中央部(P3)が押圧されない。そのため、永久磁石(20)は、磁石挿入孔(11)の内部における孔側平面部(PH)に対向する内面に押し付けられる。よって、永久磁石(20)を磁石挿入孔(11)内に適切に位置決めすることができる。
【0068】
また、前記乾燥成型工程(S4)では、成型用の型部材(16)を前記磁石側平面部(PM)に設けられた接着剤(30)に押し付けて、前記接着剤(30)を成型すると好適である。
【0069】
この構成によれば、型部材(16)を接着剤(30)に押し付けるだけで磁石側平面部(PM)に設けられた接着剤(30)を成型できるため、接着剤(30)の成型を容易に行える。また、磁石側平面部(PM)に設けられた接着剤(30)の厚さを、型部材(16)の形状に合わせた厚さにすることができる。従って、接着剤(30)の厚さの管理を容易且つ高精度に行うことができる。