(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記排出通路が前記高圧部に接続される接続口は、前記遠心圧縮機の使用状態を基準として前記ハウジングの下部に設けられている、請求項1または2に記載の遠心圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一態様に係る遠心圧縮機は、回転軸に取り付けられたコンプレッサインペラと、回転軸およびコンプレッサインペラを収納するハウジングと、を備え、ハウジングは、コンプレッサインペラの上流側に設けられた吸入部と、コンプレッサインペラの背面側に形成され、コンプレッサインペラの回転時に吸入部における圧力よりも高い圧力となる高圧部と、を含み、ハウジングには、高圧部と、吸入部と吸入部よりも上流側の気体流路とを含む低圧部と、を接続するための排出通路が設けられている。
【0011】
この遠心圧縮機によれば、ハウジング内の凝縮水は、排出通路を通って、高圧部から低圧部へと排出される。高圧部は、コンプレッサインペラの回転時(すなわち遠心圧縮機の運転時)に、吸入部における圧力よりも高い圧力となる。排出通路は、この高圧部と低圧部とを接続しているので、圧力差を利用して凝縮水を排出できる。排出通路を形成する管等をハウジングに予め設けておくだけでよく、凝縮水を外部に排出するための配管等を新たに設置する必要がない。このような圧力差を利用した排出機構により、簡易な構成で、ハウジング内の凝縮水を外部に排出することができる。
【0012】
いくつかの態様において、回転軸の周囲に配置されるステータ部を備え、ハウジングは、コンプレッサインペラの背面側に設けられ、ステータ部のコア部を支持する周壁部と、周壁部に対しコンプレッサインペラとは反対側に設けられた端壁部と、を含み、高圧部は、周壁部と端壁部とによって画成される内部空間を含み、排出通路は、コア部よりも端壁部側において内部空間に接続されている。ハウジング内にステータ部が設けられる場合、凝縮水がステータ部の付近に溜まると、ステータ部に悪影響を及ぼすおそれがある。たとえば、遠心圧縮機が停止している間に、溜まった凝縮水が凍結すると、再始動時に不具合が発生するおそれがある。上記構成のように、排出通路が、コア部よりも端壁部側においてハウジングに接続されていると、凝縮水はコア部の付近に溜まりにくい。これにより、ステータ部に対する悪影響を低減することができる。
【0013】
いくつかの態様において、ハウジングは、高圧部に含まれ、遠心圧縮機の使用状態を基準として下部に形成された凝縮水貯留部を含む。ハウジングの下部に凝縮水貯留部が形成されていると、凝縮水は、重力によって、凝縮水貯留部に貯留される。よって、ハウジング内において凝縮水を一定の場所に集めることができる。凝縮水を排出する際には、凝縮水貯留部からまとめて凝縮水を排出することもできる。
【0014】
いくつかの態様において、排出通路が高圧部に接続される接続口は、遠心圧縮機の使用状態を基準としてハウジングの下部に設けられている。凝縮水は、遠心圧縮機の運転時に、ハウジング内が高温になることで蒸発し得る。水蒸気の状態では、凝縮水の排出口(接続口)は上部にあっても、凝縮水は排出され得る。一方で、遠心圧縮機の始動時など、ハウジング内の温度が比較的低いときには、凝縮水は液体の状態であり得る。ハウジングの下部に排出通路の接続口が設けられていると、凝縮水が液体の状態であっても、圧力差を利用して、接続口から凝縮水を容易に排出できる。
【0015】
いくつかの態様において、ハウジングの内壁面には、接続口に向けて延びる溝部が設けられている。この場合、凝縮水を内壁面の溝部に集めることができる。重力によって、溝部を通じて凝縮水を接続口に案内することができる。
【0016】
いくつかの態様において、排出通路は、ハウジングの高圧部とハウジングの吸入部とを接続する。この場合、凝縮水は、高圧部から吸入部へと還流される。遠心圧縮機における圧力差を利用して、ハウジング内に溜まった凝縮水を効率的に排出することができる。排出通路を上流側の配管等に接続する必要がない。遠心圧縮機単独で、課題が解決される。
【0017】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。以下の説明において、特に断らない限り、「径方向」および「周方向」との語は、回転軸12或いは回転軸線Xを基準として用いられる。
【0018】
図1を参照して、第1実施形態の電動コンプレッサ(遠心圧縮機の一例)1について説明する。
図1に示されるように、電動コンプレッサ1は、たとえば車両や船舶の内燃機関に適用されるものである。電動コンプレッサ1は、コンプレッサ7を備えている。電動コンプレッサ1は、ロータ部13およびステータ部14の相互作用によってコンプレッサインペラ8を回転させ、空気等の気体を圧縮し、圧縮空気を発生させる。ロータ部13およびステータ部14によってモータ5が形成されている。
【0019】
電動コンプレッサ1は、ハウジング2内で回転可能に支持された回転軸12と、回転軸12の先端部(第1端部)12aに取り付けられたコンプレッサインペラ8とを備える。ハウジング2は、ロータ部13およびステータ部14を収納するモータハウジング3と、モータハウジング3の第2端側(図示右側)の開口を閉鎖するインバータハウジング4と、コンプレッサインペラ8を収納するコンプレッサハウジング6とを備える。コンプレッサハウジング6は、モータハウジング3の第1端側(図示左側)に設けられている。コンプレッサハウジング6は、吸入口9と、スクロール部10と、吐出口11とを含んでいる。
【0020】
ロータ部13は、回転軸12の回転軸線X方向の中央部に固定されており、回転軸12に取り付けられた1または複数の永久磁石(図示せず)を含む。ステータ部14は、ロータ部13を包囲するようにしてモータハウジング3の内面に固定されている。すなわち、ステータ部14は、回転軸12の周囲に配置されている。ステータ部14は、ロータ部13を包囲するように配置された円筒状のコア部14aと、コア部14aに導線(図示せず)が巻回されてなるコイル部14bとを含む。導線を通じてステータ部14のコイル部14bに交流電流が流されると、ロータ部13およびステータ部14の相互作用によって、回転軸12とコンプレッサインペラ8とが一体になって回転する。コンプレッサインペラ8が回転すると、コンプレッサインペラ8は、吸入口9を通じて外部の空気を吸入し、スクロール部10を通じて空気を圧縮し、吐出口11から吐出する。吐出口11から吐出された圧縮空気は、前述の内燃機関に供給される。
【0021】
電動コンプレッサ1は、ハウジング2に対して回転軸12を回転可能に支持する2個の軸受20A,20Bを備える。軸受20A,20Bは、モータ5を挟むように配置され、回転軸12を両持ちで支持している。第1の軸受20Aは、モータハウジング3のコンプレッサインペラ8側の端部である隔壁部3aに保持されている。第2の軸受20Bは、インバータハウジング4の隔壁部(端壁部)4aの内面側(コンプレッサインペラ8側)に保持されている。
【0022】
続いて、ハウジング2の構成についてより詳細に説明する。モータハウジング3は、ステータ部14のコア部14aを支持する円筒状の周壁部3bと、周壁部3bの第1端側に設けられた円板状の隔壁部3aと、周壁部3bの第2端側に設けられたフランジ部3cとを含む。隔壁部3aおよびフランジ部3cは、回転軸線Xの径方向であり、周壁部3bに垂直な方向に延びている。コア部14aは、回転軸線X方向において、周壁部3bが設けられた範囲内に収まっていてもよい。すなわち、コア部14aは、隔壁部3aとフランジ部3cとの間に配置されてもよい。回転軸線X方向におけるコア部14aの隔壁部4a側の端部は、回転軸線X方向において、フランジ部3cが設けられた位置に重なってもよい。
【0023】
周壁部3bは回転軸線X方向に延びる。隔壁部3aは周壁部3bから径方向内方に延びる。隔壁部3aには回転軸12が貫通している。隔壁部3aは、第1の軸受20Aを保持している。隔壁部3aは、僅かな隙間をもって、コンプレッサインペラ8の背面8aに対面している。周壁部3bの第2端は、インバータハウジング4に対して開口している。回転軸12が、この開口を通り、コンプレッサインペラ8と反対側に延びている。フランジ部3cは、周壁部3bから径方向外方に延びる。
【0024】
インバータハウジング4は、フランジ部3cに第1端が接続されて回転軸線X方向(コンプレッサインペラ8と反対側)に延びる周壁部4bと、周壁部4bの第2端側の開口を閉鎖する隔壁部4aと、隔壁部4aの周縁から回転軸線X方向に延びる側壁部4cとを含む。隔壁部4aは、回転軸線Xの径方向であり、周壁部4bに垂直な方向に延びている。周壁部4b内に、第2の軸受20Bおよび回転軸12の基端部が配置されている。なお、ステータ部14の一部(たとえばコイル部14bの一部等)が、周壁部4b内に配置されてもよい。コア部14aは、インバータハウジング4側には突出しない。
【0025】
インバータハウジング4には、ステータ部14に駆動電流を供給するための機構が備わっている。すなわち、インバータハウジング4には、インバータ等を含む電気部品群30が設けられている。周壁部4b内には、ステータ部14に接続される導線を束ねる導電部材であるバスバーアッセンブリ32が設けられている。例えばバスバーアッセンブリ32は、第2の軸受20Bの径方向外方の空間に配置されている。隔壁部4aの外面側には、インバータ等の制御部品を収容するモジュール31が固定されている。
【0026】
周壁部3bおよび周壁部4bによって、ハウジング2全体としての周壁部16が構成されている。周壁部16は、コンプレッサインペラ8の背面8a側に設けられ、ステータ部14を支持する。隔壁部4aは、周壁部16に対し、コンプレッサインペラ8とは反対側に設けられる。ハウジング2では、隔壁部3aと、周壁部16と、フランジ部3cと、隔壁部4aとによって、所定の内部空間A1が画成されている。この内部空間A1は、隔壁部3aを隔ててコンプレッサインペラ8の背面8a側に位置する。上記のバスバーアッセンブリ32は、内部空間A1に配置される。一方、隔壁部4aと、側壁部4cとによって、モジュール設置空間A2が形成されている。隔壁部4aは、内部空間A1とモジュール設置空間A2とを隔てている。
【0027】
図2および
図3に示されるように、コンプレッサハウジング6は、コンプレッサインペラ8よりも上流側に設けられ、吸入口9を形成する吸入管部6aと、コンプレッサインペラ8よりも下流側に設けられ、吐出口11を形成する吐出管部6cとを含む。電動コンプレッサ1では、吸入管部6aの上流側に、延長吸入管部(吸入部)6bが取り付けられている。ここで、吸入管部6aは、延長吸入管部6bが設けられる場合と同程度の長さを有してもよい。言い換えれば、延長吸入管部6bが、吸入管部6aに一体化され、吸入管部6aの一部として形成されてもよい。
【0028】
コンプレッサインペラ8の回転時、すなわち電動コンプレッサ1の運転時には、吸入管部6aおよび延長吸入管部6bの内部(すなわち吸入口9)の圧力は、比較的低い。一方、吐出管部6cの内部(すなわち吐出口11)の圧力は、吸入管部6aおよび延長吸入管部6bの内部、すなわちコンプレッサインペラ8の上流側の空間の圧力よりも高い。また、コンプレッサインペラ8の下流側の空間(すなわちスクロール部10等)の圧力は、コンプレッサインペラ8の上流側の空間の圧力よりも高い。
【0029】
コンプレッサインペラ8の背面8a側の空間であって、モータハウジング3、インバータハウジング4の周壁部4bおよび隔壁部4aによって囲まれた空間は、隔壁部3aに形成された連通孔(図示せず)を介して、コンプレッサインペラ8の下流側の空間と連通している。よって、このコンプレッサインペラ8の背面8a側の空間の圧力は、電動コンプレッサ1の運転時には、吐出圧に近くなり、コンプレッサインペラ8の上流側の空間の圧力よりも高くなる。すなわち、コンプレッサインペラ8の背面8a側には、コンプレッサインペラ8の回転時に吸入管部6aおよび延長吸入管部6bにおける圧力よりも高い圧力となる高圧部Hが形成されている。高圧部Hは、上記した内部空間A1を含む。
【0030】
これに対し、吸入管部6aおよび延長吸入管部6bと、延長吸入管部6bよりも上流側の気体流路(電動コンプレッサ1の吸入側に接続される配管を含む)は、低圧部L(
図1参照)を形成している。
【0031】
本実施形態の電動コンプレッサ1は、ハウジング2の内部に溜まり得る凝縮水を排出する機構を備えている。より具体的には、電動コンプレッサ1には、上記した高圧部Hと低圧部Lとを接続する排出通路50(
図2および
図4参照)が設けられている。電動コンプレッサ1では、排出通路50は、ハウジング2の外部に配置されてハウジング2に接続された排出管41によって形成されている。
【0032】
図2および
図3に示されるように、排出管41は、モータハウジング3とコンプレッサハウジング6とをつないでいる。排出管41の第1端部41aは、モータハウジング3のフランジ部3cに接続されている。排出管41の第2端部41bは、コンプレッサハウジング6の延長吸入管部6bに接続されている。第1端部41aは、排出管41内の排出通路50を高圧部Hに連通させている。第2端部41bは、排出管41内の排出通路50を低圧部Lに連通させている。これにより、高圧部Hと低圧部Lとは、排出管41を介して連通している。第2端部41bは、吸入管部6aに接続されてもよい。
【0033】
より詳細には、第1端部41aには、ソケット状の接続部41cが設けられており、この接続部41cが、フランジ部3cに形成された貫通孔に挿入されている。接続部41cの先端の接続口42は、内部空間A1に接続されている。第2端部41bは、延長吸入管部6bに一体化されてもよい。第2端部41bにソケット状の接続部が設けられ、この接続部が、延長吸入管部6bに形成された貫通孔に挿入されてもよい。排出管41の接続形態は、上記に限られない。たとえば、排出管41の第1端部41aは、モータハウジング3の外部の部位(孔部)に接続されてもよい。排出管41の第1端部41aが内部空間A1に連通していればよい。ハウジング2の外部の部位に、第1端部41a側および第2端部41b側の双方が接続され得る、ニップルのような接続部が設けられてもよい。
【0034】
排出管41の接続部41cは、ステータ部14のコア部14aよりも隔壁部4a側において、内部空間A1に接続されている。より詳細には、接続部41cは、コア部14aの端面14cよりも隔壁部4a側において、内部空間A1に接続されている。
図3および
図4に示されるように、接続口42は、インバータハウジング4の下部に設けられている。本明細書において、「下部」および「下方」との語は、電動コンプレッサ1の使用状態(或いは搭載状態)を基準として用いられる。たとえば、「インバータハウジング4の下部」は、インバータハウジング4の中央(回転軸線X)より下部であってもよい。インバータハウジング4は、周壁部4bの一部であって、ステータ部14に対応する周壁部3bの直径よりも下方に突出する突出部4e(
図3参照)を含む。排出管41の接続口42は、この突出部4eに接続されている。電動コンプレッサ1の使用状態において、回転軸線Xは横方向に延びてもよい。なお、
図3は、回転軸線Xを含む鉛直面でモータハウジング3およびインバータハウジング4を切断した断面図である。
図4は、回転軸線Xを含む水平面でモータハウジング3およびインバータハウジング4を切断した断面図である。
【0035】
排出管41は、高圧部Hと低圧部Lとを接続することにより、ハウジング2の高圧部H内に溜まった凝縮水を、電動コンプレッサ1の運転時に低圧部Lへと還流させる。排出管41の接続口42は、凝縮水の還流時に、排出口として機能する。
【0036】
図4は、モータハウジング3およびインバータハウジング4の下部の内面側を示す図である。
図4に示されるように、周壁部3bの下部(底部)およびフランジ部3cの下部(底部)の内壁面3dには、回転軸線X方向に延びる第1溝部43が形成されている。また、周壁部4bの下部(底部)の内壁面4dには、第2溝部44が形成されている。第2溝部44は、第1溝部43の延長線上に形成されて回転軸線X方向に延びる軸方向部分44aと、軸方向部分44aに連続して周方向に延びる周方向部分44bとを含む。
【0037】
図5に示されるように、周方向部分44bとフランジ部3cとの間には、径方向および周方向に延びる側壁部44c(第2溝部44の一部)が形成されている。更に、周壁部4bの突出部4eには、周方向部分44bよりも下方に窪んだ凝縮水貯留部46が形成されている。凹部である凝縮水貯留部46は、内部空間A1(高圧部H)に含まれ、インバータハウジング4の内面の下部に形成されている。凝縮水貯留部46は、コア部14aの端面14cよりも隔壁部4a側に形成されている。接続口42は、この凝縮水貯留部46に面するように設けられている。
【0038】
図3、
図4および
図5に示されるように、周壁部3bおよびフランジ部3cの底部に形成された第1溝部43と、周壁部4bの底部に形成された第2溝部44とは、たとえば、それらの間に形成された僅かな隙間をもって連続している。回転軸線X方向に沿って延びる第1溝部43と、回転軸線X方向から周方向へと方向を変えるL字状の第2溝部44とが、高圧部H内の凝縮水を集めるための1本の溝部45を形成する。この溝部45が、凝縮水貯留部46に連絡している。溝部45は、凝縮水の流路である。第1溝部43および第2溝部44は、凝縮水貯留部46および接続口42に向けて延びている。第1溝部43および第2溝部44の深さは、接続口42に近づくにつれて、深くなってもよい。言い換えれば、第1溝部43および第2溝部44の底部の高さは、接続口42に近づくにつれて、低くなってもよい。第2溝部44の周方向部分44bは、凝縮水貯留部46に臨んでいる。凝縮水貯留部46は、第1溝部43および第2溝部44の最下端(周方向部分44bの下流端)よりも低い位置に形成されている。凝縮水貯留部46は、モータハウジング3の円筒状の周壁部3bよりも径方向外方の領域(たとえばハウジング2の突出部4e)に設けられている。
【0039】
図4および
図5に示されるように、凝縮水貯留部46の底部の中央には、たとえば回転軸線X方向に延びる谷部46aが形成されている。接続口42は、凝縮水貯留部46の谷部46aの付近に設けられている。
図5に示されるように、接続口42の入口42aは、谷部46aに向けて開口してもよい。接続口42の入口42aは、凝縮水貯留部46の最下端に開口する必要はなく、凝縮水貯留部46内の他の適宜の位置に開口してもよい。
【0040】
以上の構成を有する電動コンプレッサ1における凝縮水の排出作用について、説明する。電動コンプレッサ1の運転時、コンプレッサ7により昇圧された気体の一部は、コンプレッサインペラ8の背面8aから連通穴を通って、モータハウジング3内の高圧部Hに達する。高圧部Hは、コンプレッサインペラ8の吸入側よりも高圧となる。この時、水分の混じった気体がモータハウジング3内に入る。
【0041】
エンジン(内燃機関)が停止した後、たとえば寒冷地のような場所では、モータハウジング3内の温度が下がり、気体に含まれていた水分は凝縮し、液体となり得る。モータハウジング3には、下部に第1溝部43および第2溝部44が設けられているので、これらが凝縮水の流路となり、凝縮水は、重力によって、これらの第1溝部43および第2溝部44を通って凝縮水貯留部46に溜まる。なお、この際、排出管41内に凝縮水が溜まってもよい。
【0042】
このような流路を通じた流下により、モータハウジング3内に凝縮水が途中で溜まることを防止できるので、エンジン再始動時の凍結による不具合等が防止され得る。なお、モータハウジング3の周壁部3bの内壁面3dにコア部14aが密着している場合でも、内壁面3dから窪んだ第1溝部43が設けられているため、凝縮水は、コア部14aに接触しにくくなっている。
【0043】
エンジンが再始動する際、モータ5の発熱等により、凝縮水は気化し得る。コンプレッサインペラ8の吸入側の低圧部Lとモータハウジング3内の高圧部Hとの間に差圧が生じるため、モータハウジング3内に溜まった凝縮水は、排出管41(排出通路50)を通じて延長吸入管部6b側に排出される。
【0044】
本実施形態の電動コンプレッサ1によれば、ハウジング2内の凝縮水は、排出通路50を通って、高圧部Hから低圧部Lへと排出される。高圧部Hは、コンプレッサインペラ8の回転時(すなわち電動コンプレッサ1の運転時)に、延長吸入管部6bにおける圧力よりも高い圧力となる。排出通路50は、この高圧部Hと低圧部Lとを接続しているので、圧力差を利用して凝縮水を排出できる。排出通路50を形成する排出管41をハウジング2に予め設けておくだけでよく、凝縮水を外部に排出するための配管等を新たに設置する必要がない。このような圧力差を利用した排出機構により、簡易な構成で、ハウジング2内の凝縮水を外部に排出することができる。凝縮水回収のための配管等が不要である上、元々ある重力、モータの発熱、コンプレッサインペラ8との圧力差を利用して、凝縮水を還流させている。その結果として、凝縮水を効率的に排出することが可能になっている。
【0045】
ハウジング2内にステータ部14が設けられる場合、凝縮水がステータ部14の付近に溜まると、ステータ部14に悪影響を及ぼすおそれがある。たとえば、電動コンプレッサ1が停止している間に、溜まった凝縮水が凍結すると、再始動時に不具合が発生するおそれがある。排出通路50が、コア部14aよりも隔壁部4a側においてハウジング2に接続されていると、凝縮水はコア部14aの付近に溜まりにくい。これにより、ステータ部14に対する悪影響を低減することができる。
【0046】
ハウジング2の下部に凝縮水貯留部46が形成されていると、凝縮水は、重力によって、凝縮水貯留部46に貯留される。よって、ハウジング2内において凝縮水を一定の場所に集めることができる。凝縮水を排出する際には、凝縮水貯留部46からまとめて凝縮水を排出することもできる。
【0047】
凝縮水は、電動コンプレッサ1の運転時に、ハウジング2内が高温になることで蒸発し得る。水蒸気の状態では、凝縮水の排出口(接続口42)は上部にあっても、凝縮水は排出され得る。一方で、電動コンプレッサ1の始動時など、ハウジング2内の温度が比較的低いときには、凝縮水は液体の状態であり得る。ハウジング2の下部に排出通路50の接続口42が設けられていると、凝縮水が液体の状態であっても、圧力差を利用して、接続口42から凝縮水を容易に排出できる。凝縮水貯留部46が下部に設けられ、接続口42も下部に設けられることにより、凝縮水が液体の状態であっても、凝縮水を還流させ易くなっている。
【0048】
内壁面3dの第1溝部43、内壁面4dの第2溝部44に、凝縮水を集めることができる。重力によって、第1溝部43および第2溝部44を通じて凝縮水を接続口42に案内することができる。
【0049】
凝縮水は、高圧部Hから延長吸入管部6bへと還流される。電動コンプレッサ1における圧力差を利用して、ハウジング2内に溜まった凝縮水を効率的に排出することができる。排出通路50を上流側の配管等に接続する必要がない。電動コンプレッサ1単独で、課題が解決される。
【0050】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。たとえば、排出通路50は、ハウジング2の外部に設けられる形態に限られない。排出通路50は、ハウジング2内に形成されてもよい。この場合、排出管41は不要である。また、排出通路50の途中部までがハウジング2内に形成され、途中部以降に排出管が用いられてもよい。
【0051】
排出管41の接続先は、電動コンプレッサ1よりも上流側の配管であってもよい。すなわち、排出管41の第2端部41bは、電動コンプレッサ1よりも上流側の配管に接続されてもよい。その場合、電動コンプレッサ1の排出管41は、高圧部Hと、上流側の配管(低圧部L)とを接続するための排出通路50を形成する。すなわち、単体の電動コンプレッサ1において、排出管41の第2端部41bがどこにも接続されていない状態であっても、第2端部41bが低圧部Lに接続されることが想定されている場合(接続部41cと上流側の配管とが接続され得る形状になっている場合など)は、排出管41は、高圧部Hと低圧部Lとを接続するための排出通路50を構成すると言える。電動コンプレッサ1と、上流側の配管と、排出管とによって、ハウジング2内の凝縮水を外部に排出することができる圧縮機システムが提供され得る。
【0052】
ハウジング2の下部に凝縮水貯留部46が設けられる一方、接続口(排出口)が、電動コンプレッサ1の使用状態を基準として下部以外の領域、たとえば上部に設けられてもよい。コア部14aよりも隔壁部4a側に接続口または凝縮水貯留部46が設けられる場合に限られない。コア部14aの径方向外方の領域に、接続口または凝縮水貯留部が設けられてもよい。その場合でも、凝縮水がステータ部14に触れにくいようにするため、接続口は、ステータ部14から離間させることが望ましい。
【0053】
タービンを備えた電動コンプレッサに本発明が適用されてもよい。電動コンプレッサ1以外の遠心圧縮機(モータ5を備えない遠心圧縮機)に本発明が適用されてもよい。高圧部Hが形成されるようなあらゆる遠心圧縮機に対し、本発明は適用され得る。