(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6680452
(24)【登録日】2020年3月24日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】三次元形状造形物の積層造形方法
(51)【国際特許分類】
B22F 3/16 20060101AFI20200406BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20200406BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20200406BHJP
【FI】
B22F3/16
B22F3/105
B33Y10/00
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-72673(P2019-72673)
(22)【出願日】2019年4月5日
【審査請求日】2019年9月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】井ノ上 悟
(72)【発明者】
【氏名】田中 惣一郎
(72)【発明者】
【氏名】森山 慎也
【審査官】
米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2017/163405(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00〜8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土台部分と本体部分からなる焼結体を形成する三次元形状造形物の積層造形方法において、
造形テーブル上に金属の材料粉体を所定の高さに均一に撒布して材料粉体層を形成し、前記材料粉体層の所定の照射領域にレーザ光または電子ビームを照射して前記材料粉体を加熱溶融させた後に冷却固化させることによって前記所定の照射領域における前記材料粉体層を焼結して前記土台部分を形成する土台部分形成工程と、
前記土台部分の上にさらに前記土台部分の材料粉体と同じ材料粉体を撒布して材料粉体層を形成し、レーザ光または電子ビームを照射して前記材料粉体を加熱溶融および冷却固化させて前記本体部分を形成する本体部分形成工程からなり、
前記土台部分形成工程の後に前記本体部分形成工程を連続して行うことで、前記焼結体を形成する際に前記焼結体に発生する応力によって、前記土台部分にクラックが生じるような所定の強度になるように前記土台部分を形成する、三次元形状造形物の積層造形方法。
【請求項2】
前記焼結体を形成する際に、前記焼結体に発生する応力によって前記土台部分が破断するような前記所定の強度になるように前記土台部分を形成する、請求項1の三次元形状造形物の積層造形方法。
【請求項3】
前記土台部分の形状によって、前記所定の強度を調整する、請求項1の三次元形状造形物の積層造形方法。
【請求項4】
前記土台部分が、前記造形テーブル上に立つ複数の支持部材で形成されて、前記クラックが前記支持部材のうちの少なくとも1つに生じる、請求項3の三次元形状造形物の積層造形方法。
【請求項5】
前記支持部材の形状によって、前記所定の強度を調整する、請求項4の三次元形状造形物の積層造形方法。
【請求項6】
前記支持部材の大きさによって、前記所定の強度を調整する、請求項4の三次元形状造形物の積層造形方法。
【請求項7】
前記支持部材同士の間の距離によって、前記所定の強度を調整する、請求項4の三次元形状造形物の積層造形方法。
【請求項8】
前記土台部分を形成する焼結層の密度によって、前記所定の強度を調整する、請求項1の三次元形状造形物の積層造形方法。
【請求項9】
前記土台部分に形成されている複数の孔の形状によって、前記所定の強度を調整する、請求項1の三次元形状造形物の積層造形方法。
【請求項10】
前記土台部分に形成されている複数の孔の大きさによって、前記所定の強度を調整する、請求項1の三次元形状造形物の積層造形方法。
【請求項11】
前記土台部分に形成されている複数の孔の数によって、前記所定の強度を調整する、請求項1の三次元形状造形物の積層造形方法。
【請求項12】
前記造形テーブル上にベースプレートを取り付けて、前記ベースプレート上に前記土台部分を形成する、請求項1の三次元形状造形物の積層造形方法。
【請求項13】
所定数の前記焼結層を積層する毎に前記焼結体を切削加工することを含んでいる、請求項1の三次元形状造形物の積層造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形テーブル上に金属の材料粉体を撒布して材料粉体層を形成することと、材料粉体層の所定の照射領域にレーザ光または電子ビームを照射して焼結層を形成することとを繰り返して、焼結層を積層して所望の三次元形状を有する焼結体を形成することで所望の三次元形状造形物を得る三次元形状造形物の積層造形方法に関する。特に本発明は、三次元形状造形物に発生する反り(そり)を低減する三次元形状造形物の積層造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の三次元形状造形物の製造方法は、材料粉体層を形成するリコート工程と、焼結層を形成する焼結工程とを交互に繰り返すことを開示している。リコート工程は、造形テーブル上に金属の材料粉体を所定の高さに均一に撒布して材料粉体層を形成する。焼結工程は、材料粉体層の所定の照射領域にレーザ光または電子ビームを照射して材料粉体を加熱溶融させた後に冷却固化させることによって所定の照射領域における材料粉体層を焼結して焼結層を形成する。三次元形状造形物は、造形テーブル上に焼結層が積層されることによって形成される三次元形状の焼結体である。さらに特許文献1の三次元形状造形物の製造方法は、必要に応じて複数の焼結層を積層する毎に焼結体の外周を切削する切削工程を追加することも開示している。
【0003】
一般的に造形テーブル上にベースプレートが脱着可能に取り付けられている。ベースプレート上に焼結層を積層する。ベースプレートは、造形テーブルを保護するとともに焼結層の固着を容易にする。積層造形後の三次元形状造形物は、ベースプレートに固着している。三次元形状造形物は、ベースプレートと一緒に造形テーブルから取り外され、ワイヤ放電加工機などを用いてベースプレートから切断される。三次元形状造形物は、二次加工で切削加工機またはワイヤ放電加工機などを用いて仕上げ加工が行われる。二次加工する前の三次元形状造形物は、二次加工で製品寸法および製品形状まで仕上げ加工を行う際に取り除かれる取り代を含んでいる。
【0004】
特許文献2の三次元形状造形物の製造方法は、層を順次積み重ねて所望の三次元形状を有する造形物を形成する際に、三次元形状造形物のうちの支持を必要とする部分の支持部も層を順次積み重ねて形成することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5653657号公報
【特許文献2】特開平09−085837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ベースプレートに固着している三次元形状造形物は、ベースプレートに拘束されている。ベースプレートから切り離されたあとの三次元形状造形物は、内部の残留応力が開放されることで反りが発生する場合があった。反りは、例えば、三次元形状造形物におけるベースプレートに固着していた側の反対側の面の中央部を凹ませる。
【0007】
焼結層は、材料粉体を加熱溶融したものが冷却固化されて形成される際に収縮する。収縮しようとする焼結層は、ベースプレートまたは焼結体に片面が固着されているので、それらに引っ張られている。焼結層を引っ張る力に抗する引張応力が焼結層に残留する。引張応力は、焼結層が形成される毎に焼結体の内部に残留応力として蓄積されていく。
【0008】
反りは、二次加工を行う前の三次元形状造形物の寸法精度および形状精度を低下させる。反りが発生する三次元形状造形物は、二次加工を行うための取り代をさらに増加させる必要がある。取り代の大きな三次元形状造形物は、増加する取り代を積層造形する分だけ造形時間が長くなるとともに増加する取り代を二次加工で取り除く分だけの加工時間が長くなる。取り代の大きな三次元形状造形物は、積層造形に必要な材料粉体の量も増加する。また反りを取り除くためだけに二次加工が行われる場合もある。したがって、反りは、製品の製造コストを増加させる。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、三次元形状造形物の反りを低減する三次元形状造形物の積層造形方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の三次元形状造形物の積層造形方法では、造形テーブル上に金属の材料粉体を所定の高さに均一に撒布して材料粉体層を形成することと、前記材料粉体層の所定の照射領域にレーザ光または電子ビームを照射して前記材料粉体を加熱溶融させた後に冷却固化させることによって前記所定の照射領域における前記材料粉体層を焼結して焼結層を形成することとを繰り返して、前記焼結層を積層して所望の三次元形状を有する焼結体を形成することで所望の三次元形状造形物を得る三次元形状造形物の積層造形方法において、前記造形テーブル上に前記焼結体のうちの土台部分を形成し、前記土台部分上に前記焼結体のうちの本体部分を形成し、前記焼結体を形成する際に前記焼結体に発生する応力によって、前記土台部分にクラックが生じるような所定の強度になるように前記土台部分を形成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の三次元形状造形物の積層造形方法は、三次元形状造形物の反りを低減して、三次元形状造形物の寸法精度および形状精度を向上させて、積層造形での造形時間および二次加工での加工時間を短縮して、三次元形状造形物による製品の製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る積層造形装置のチャンバ内の要部拡大図であって、焼結層を積層して土台部分を形成した状態を示す。
【
図3】本発明の実施形態に係る積層造形装置のチャンバ内の要部拡大図であって、土台部分上に焼結層を形成した状態を示す。
【
図4】本発明の実施形態に係る積層造形装置のチャンバ内の要部拡大図であって、焼結層を積層して本体部分を形成している途中の状態を示す。
【
図5】本発明の実施形態に係る積層造形装置のチャンバ内の要部拡大図であって、さらに焼結層を積層して本体部分を形成した状態を示す。
【
図7】本発明の実施形態に係る積層造形装置の概略構成図であって、ベースプレート上に材料粉体層を形成した状態を示す。
【
図8】本発明の実施形態に係る積層造形装置の概略構成図であって、ベースプレート上に焼結層を形成した状態を示す。
【
図9】本発明の実施形態に係る積層造形装置の概略構成図であって、焼結層上に材料粉体層を形成した状態を示す。
【
図10】本発明の実施形態に係る積層造形装置の概略構成図であって、焼結層を積層して焼結体を形成した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、積層造形装置のチャンバ内の要部拡大図であって、焼結層を積層して土台部分を形成した状態を示す。
図2は、
図1のA−A矢視図である。
図3は、積層造形装置のチャンバ内の要部拡大図であって、土台部分上に焼結層を形成した状態を示す。
図4は、積層造形装置のチャンバ内の要部拡大図であって、焼結層を積層して本体部分を形成している途中の状態を示す。
図5は、積層造形装置のチャンバ内の要部拡大図であって、さらに焼結層を積層して本体部分を形成した状態を示す。
図6は、
図5のB−B矢視図である。
図7は、積層造形装置の概略構成図であって、ベースプレート上に材料粉体層を形成した状態を示す。
図8は、積層造形装置の概略構成図であって、ベースプレート上に焼結層を形成した状態あとを示す。
図9は、積層造形装置の概略構成図であって、焼結層上に材料粉体層を形成した状態を示す。
図10は、積層造形装置の概略構成図であって、焼結層を積層して焼結体を形成した状態を示す。なお、左右方向が
図1のX軸方向である。前後方向が不図示のY軸方向であって、X軸方向に直交する水平一軸方向である。上下方向が
図1のZ軸方向である。
図1〜
図10で示す材料粉体層の厚み寸法および焼結層の厚み寸法は、説明のために実際のものに比べて大きく表示されている。
図1〜
図6で示す焼結層の層数は、説明のために少なく表示されている。
【0014】
本発明の三次元形状造形物の積層造形方法は、三次元形状造形物を造形する積層造形装置1に適用される。
図7〜
図10に示す積層造形装置1は、ベース台2と、造形テーブル3と、チャンバ4と、リコータヘッド5と、レーザ光照射装置6と、不図示の制御装置とを備えている。積層造形装置1は、チャンバ4内に不図示の切削装置を備えてもよい。レーザ光照射装置6に替えて不図示の電子ビーム照射装置を備えても良い。
【0015】
ベース台2は、造形テーブル3と、粉体保持壁7とを備えている。造形テーブル3上に造形領域Rが形成されている。造形テーブル3は、不図示の駆動装置によって粉体保持壁7の中を上下方向(Z軸方向)に移動する。造形テーブル3の上面にベースプレート8が脱着可能に取り付けられている。
【0016】
チャンバ4は、造形領域Rを覆う。チャンバ4の内部は、不図示の不活性ガス供給装置から供給される所定濃度の不活性ガスで満たされている。不活性ガスは、材料粉体と反応しないガスである。不活性ガスは、例えば窒素ガスである。
【0017】
リコータヘッド5は、材料収容タンク5aと、一対のブレード5b,5bとを備えている。リコータヘッド5は、不図示の駆動装置によって造形テーブル3の上方を左右方向(X軸方向)に移動する。リコータヘッド5は、造形テーブル3の上方を通り過ぎた位置に退避する。リコータヘッド5の退避位置は、造形テーブル3の右側と左側にある。
【0018】
材料収容タンク5aは、リコータヘッド5の内部に形成されている。材料収容タンク5aは、リコータヘッド5の上部に形成されている材料供給口5cとリコータヘッド5の下部に形成されている材料排出口5dにそれぞれ連通している。
【0019】
材料供給口5cは、不図示の材料補充装置に適時に接続される。材料補充装置は、リコータヘッド5に材料粉体を補充する。材料排出口5dは、リコータヘッド5の移動方向に直交する前後方向(Y軸方向)に細長く形成されて、造形テーブル3上に材料粉体を排出する。材料粉体は、例えば平均粒径20μmの球形の金属粉体である。金属粉体は、例えば鉄粉である。
【0020】
一対のブレード5b,5bは、リコータヘッド5の下部から突き出し、材料排出口5dを挟んで左右にそれぞれ設けられている。一対のブレード5b,5bは、材料排出口5dから排出された材料粉体を平坦化する。
【0021】
レーザ光照射装置6は、チャンバ4の上方に設けられている。レーザ光照射装置6から出力されるレーザ光Lは、チャンバ4に設けられた保護ウィンドウ4aを透過して造形領域Rに照射される。レーザ光照射装置6は、不図示のレーザ光源と、不図示の2軸のガルバノミラー、不図示のスポット径調整装置とを備えている。
【0022】
レーザ光源は、材料粉体を加熱溶融できるレーザ光Lを出力する。レーザ光Lは、例えばYAGレーザ、ファイバレーザまたは炭酸ガスレーザなどである。
【0023】
スポット径調整装置は、レーザ光源から出力されるレーザ光Lを集光して所望のスポット径に調整する。
【0024】
2軸のガルバノミラーは、レーザ光源から出力されるレーザ光Lを制御可能に2次元走査して、レーザ光Lを造形領域R内の所望の位置に照射する。
【0025】
保護ウィンドウ4aは、レーザ光Lを透過可能な材料で形成されている。保護ウィンドウ4aは、レーザ光LがYAGレーザ、ファイバレーザまたは炭酸ガスレーザであれば、例えば石英ガラスでも構成が可能である。
【0026】
制御装置1aは、積層造形装置1に備える各種装置を制御する。制御装置1aは、本発明の三次元形状造形物の積層造形方法に従って、積層造形装置1に備える各種装置を制御することができる。
【0027】
積層造形装置1の基本動作は、つぎの通りである。
【0028】
まず準備工程を実施する。一般的に造形テーブル3上に着脱可能なベースプレート8が取り付けられる。ベースプレート8の上面の高さとブレード5bの先端の高さが同じ高さになるように造形テーブル3を移動する。
【0029】
つぎにリコート工程を実施する。材料粉体層9の厚み分の高さだけ造形テーブル3を下げる。退避位置から造形テーブル3の上方を通り反対側の退避位置までリコータヘッド5を移動する。
図7に示すようにベースプレート8上に材料粉体層9が形成される。ベースプレート8上に金属の材料粉体を所定の高さに均一に撒布することができる。
【0030】
つぎに焼結工程を実施する。レーザ光照射装置6で材料粉体層9の所定の照射領域にレーザ光Lを照射する。
図8に示すようにベースプレート8上に焼結層10が形成される。焼結層10とベースプレート8が固着する。最初の焼結層10のみで焼結体11が形成される。
【0031】
再びリコート工程を実施する。材料粉体層9の厚み分の高さだけ造形テーブル3を下げる。退避位置から造形テーブル3の上方を通り反対側の退避位置までリコータヘッド5を移動する。
図9に示すように前回の焼結層10上に新たな材料粉体層9が形成される。
【0032】
再び焼結工程を実施する。レーザ光照射装置6で材料粉体層9の所定の照射領域にレーザ光Lを照射する。前回の焼結層10上に新たな焼結層10が形成される。
図10に示すように新たな焼結層10と前回の焼結層10が固着する。焼結層10が積層されて焼結体11が形成される。
【0033】
積層造形装置1は、リコート工程と焼結工程を繰り返して、複数の焼結層10を積層して所望の三次元形状を有する焼結体11を形成し、所望の三次元形状造形物を得る。
【0034】
さらに積層造形装置は、所定数の焼結層10を積層する毎に、焼結体11を切削する切削工程を実施するようにしてもよい。
【0035】
ここかは、本発明の特有の三次元形状造形物の積層造形方法が説明される。
【0036】
本発明の三次元形状造形物の積層造形方法は、造形テーブル3上に焼結体11のうちの土台部分11aを形成し、土台部分11a上に焼結体11のうちの本体部分11bを形成する。造形テーブル3上にベースプレート8を取り付ける場合には、ベースプレート8上に土台部分11aを形成し、土台部分11a上に本体部分11bを形成する。
【0037】
さらに本発明の三次元形状造形物の積層造形方法は、焼結体11を形成する際に、焼結体11に発生する応力によって、土台部分11aの少なくとも一部にクラックCが生じるような所定の強度になるように、土台部分11aを形成する。クラックCは、ひび割れ、あるいは亀裂を示す。
【0038】
土台部分11aは、形成中の焼結体11に応力が発生する度に、少なくとも一部にクラックCを生じる。形成中の焼結体11に応力が残留することがない。形成後の焼結体11に応力が残留することがない。形成後の本体部分11bに応力が残留すことがない。したがって、ベースプレート8および土台部分11aから切り離されたあとの本体部分11bの反りを低減することができる。
【0039】
土台部分11aは、クラックCを生じたあと、さらに破断するような所定の強度になるように形成してもよい。
【0040】
土台部分11aの所定の強度は、土台部分11aの形状によって調整することができる。
【0041】
図1〜
図6に示すように、土台部分11aは、ベースプレート8上に立つ複数の支持部材12で形成してもよい。このときクラックCまたは破断は、複数の支持部材12のうちの少なくとも1つに生じればよい。
【0042】
例えば
図1および
図2に示すように、焼結層10を積層して、ベースプレート8上に複数の支持部材12を形成する。
図3〜
図6に示すように、さらに焼結層10を積層して、複数の支持部材12上に本体部分11bを形成する。焼結層10が積層される毎に形成途中の本体部分11bに発生する応力によって、クラックCが少なくとも1つの支持部材12に生じている。なお、必ずしも焼結層10を積層する毎に支持部材12にクラックCが生じるとは限らない。例えば、所定の大きさ以上の応力が焼結体11に発生することによって少なくとも1つの支持部材12にクラックCが生じるような強度に各支持部材12を形成してもよい。焼結層10が積層される過程において、所定の大きさよりも小さい応力が焼結体11に徐々に蓄積されていき、焼結体11に残留する応力が所定の大きさを超えたときに少なくとも1つの支持部材12にクラックCが生じるようにしてもよい。
【0043】
各支持部材12の所定の強度は、各支持部材12の形状によって調整することができる。
【0044】
例えば
図1および
図2に示すように、各支持部材12は、ベースプレート8上に円柱を形成し、円柱の上に逆四角錐台を形成して構成してもよい。
【0045】
各支持部材12の所定の強度は、各支持部材12の大きさによって調整することができる。各支持部材12の所定の強度は、支持部材12同士の間の距離によって調整することができる。各支持部材12の所定の強度は、各支持部材12の大きさ、および、支持部材12同士の間の距離によって決まる支持部材12の本数によって調整することができる。
【0046】
土台部分11aの所定の強度は、焼結層10の密度によって調整することができる。土台部分11aは、低密度の焼結層10で形成されて、多孔質状に形成されるとよい。土台部分11aは、本体部分11bに比べて低密度の焼結層10で形成されるとよい。
【0047】
低密度の焼結層10は、材料粉体層9に照射されるレーザ光Lの出力を小さくすること、レーザ光Lを照射する時間を短くすること、あるいは、レーザ光Lのスポット径を大きくすること、などによって形成することができる。逆に高密度の焼結層10は、材料粉体層9に照射されるレーザ光Lの出力を大きくすること、レーザ光Lを照射する時間を長くすること、あるいは、レーザ光Lのスポット径を小さくすること、などによって形成することができる。
【0048】
土台部分11aの所定の強度は、土台部分11aに形成されている複数の孔の形状によって調整することができる。土台部分11aの所定の強度は、土台部分11aに形成されている複数の孔の大きさによって調整することができる。土台部分11aの所定の強度は、土台部分11aに形成されている複数の孔の数によって調整することができる。土台部分11aに形成されている複数の孔は、積層造形で自由に形成することができる。
【0049】
土台部分11aの所定の強度は、前述の各種調整方法を組み合わせて調整してもよい。
【0050】
以上説明した本発明は、この発明の精神および必須の特徴的事項から逸脱することなく他のいろいろな形態で実施することができる。したがって、本明細書に記載した実施例は例示的なものであり、これに限定して解釈されるべきものではない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、三次元形状造形物の積層造形に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 積層造形装置
1a 制御装置
2 ベース台
3 造形テーブル
4 チャンバ
4a 保護ウィンドウ
5 リコータヘッド
5a 材料収容タンク
5b ブレード
5c 材料供給口
5d 材料排出口
6 レーザ光照射装置
7 粉体保持壁
8 ベースプレート
9 材料粉体層
10 焼結層
11 焼結体
11a 土台部分
11b 本体部分
12 支持部材
C クラック
R 造形領域
L レーザ光
【要約】
【課題】積層造形された三次元形状造形物の反りを低減することが望まれる。
【解決手段】造形テーブル(3)上に金属の材料粉体層(9)を形成することと、材料粉体層の所定の照射領域にレーザ光(L)を照射して焼結層(10)を形成することとを繰り返して、焼結層を積層して所望の三次元形状を有する焼結体(11)を形成して所望の三次元形状造形物を得る際に、造形テーブル上に焼結体のうちの土台部分(11a)を形成し、土台部分上に焼結体のうちの本体部分(11b)を形成し、焼結体を形成する際に焼結体に発生する応力によって、土台部分にクラック(C)が生じるような所定の強度になるように土台部分を形成する。
【選択図】
図5