特許第6680470号(P6680470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6680470画像取得装置及び画像取得方法並びに画像補正プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6680470
(24)【登録日】2020年3月24日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】画像取得装置及び画像取得方法並びに画像補正プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20200406BHJP
【FI】
   G01N23/046
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-115101(P2015-115101)
(22)【出願日】2015年6月5日
(65)【公開番号】特開2017-3323(P2017-3323A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100144325
【弁理士】
【氏名又は名称】小澁 高弘
(72)【発明者】
【氏名】紋川 亮
(72)【発明者】
【氏名】中西 正一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真也
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0284939(US,A1)
【文献】 特開2004−294287(JP,A)
【文献】 特開平07−231888(JP,A)
【文献】 特開2011−122930(JP,A)
【文献】 特開2005−292047(JP,A)
【文献】 米国特許第07840249(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276
A61B 6/00− 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一焦点サイズを有するX線を照射する第一X線源と、
前記第一X線源から照射されて測定対象物を透過したX線を検出する第一検出器と、
前記第一検出器で検出したX線に基づいて第一X線CT画像を生成する第一画像生成手段と、
前記第一焦点サイズよりも小さい第二焦点サイズを有するX線を照射する第二X線源と、
前記第二X線源から照射されて前記測定対象物を透過したX線を検出する第二検出器と、
前記第二検出器で検出したX線に基づいて第二X線CT画像を生成する第二画像生成手段と、
前記第一画像生成手段で生成した前記第一X線CT画像を前記第二画像生成手段で生成した前記第二X線CT画像に基づいて補正する画像補正手段と、を備え、
前記画像補正手段は、前記第一画像生成手段で生成した前記第一X線CT画像のエッジと前記第二画像生成手段で生成した前記第二X線CT画像のエッジとの差分が所定の範囲内に収まるように、前記第一X線CT画像を補正する、
画像取得装置。
【請求項2】
前記第一X線源及び前記第一検出器は、前記測定対象物を載置する載置台の中心を通る第一直線上に固定されて配置され、
前記第二X線源及び前記第二検出器は、前記載置台の中心を通り前記第一直線と所定の角度をなして交差する第二直線上に固定されて配置され、
前記画像補正手段は、前記第一画像生成手段で生成した前記第一X線CT画像及び前記第二画像生成手段で生成した前記第二X線CT画像の少なくとも何れか一方を、前記角度に基づいて補正する、請求項1に記載の画像取得装置。
【請求項3】
前記第一検出器及び前記第二検出器は、共通の検出器とされ、
前記第一X線源から照射されるX線が到達する第一の位置と前記第二X線源から照射されるX線が到達する第二の位置との間で、前記測定対象物を載置する載置台及び前記共通の検出器を移動させる載置台検出器移動手段をさらに備える、請求項1に記載の画像取得装置。
【請求項4】
前記測定対象物に前記第一X線源からのX線と前記第二X線源からのX線とを別々に照射させるように前記第一X線源及び前記第二X線源を上下に移動させるX線源移動手段をさらに備える、請求項1に記載の画像取得装置。
【請求項5】
第一焦点サイズを有するX線を照射する第一X線源から照射されて測定対象物を透過したX線を検出する第一検出工程と、
前記第一検出工程で検出したX線に基づいて第一X線CT画像を生成する第一画像生成工程と、
前記第一焦点サイズよりも小さい第二焦点サイズを有するX線を照射する第二X線源から照射されて前記測定対象物を透過したX線を検出する第二検出工程と、
前記第二検出工程で検出したX線に基づいて第二X線CT画像を生成する第二画像生成工程と、
前記第一画像生成工程で生成した前記第一X線CT画像を前記第二画像生成工程で生成した前記第二X線CT画像に基づいて補正する画像補正工程と、を備え、
前記画像補正工程は、前記第一画像生成工程で生成した前記第一X線CT画像のエッジと前記第二画像生成工程で生成した前記第二X線CT画像のエッジとの差分が所定の範囲内に収まるように、前記第一X線CT画像を補正する、
画像取得方法。
【請求項6】
コンピュータに、第一焦点サイズを有するX線を照射する第一X線源から照射されて測定対象物を透過したX線に基づいて生成した第一X線CT画像を、前記第一焦点サイズよりも小さい第二焦点サイズを有するX線を照射する第二X線源から照射されて前記測定対象物を透過したX線に基づいて生成した第二X線CT画像に基づいて補正する画像補正工程を実行させる画像補正プログラムであって、
前記画像補正工程は、前記第一X線CT画像のエッジと前記第二X線CT画像のエッジとの差分が所定の範囲内に収まるように、前記第一X線CT画像を補正する、画像補正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像取得装置及び画像取得方法並びに画像補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、物体を様々な方向からX線で撮影した画像を再構成処理することにより、物体の内部構造を含む3次元画像を得ることができるものである。このような特徴を生かして、X線CT装置は、金属部品や樹脂部品におけるボイドやクラック等の微細な内部欠陥の観察、電子部品の複雑な内部形状の計測、故障原因の解析等に従来より利用されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
また、現在においては、デジタル技術の進歩に伴い、X線CT装置をデジタルエンジニアリングシステムの核として利用する試みが始まっている。デジタルエンジニアリングシステムは、高機能CAD/CAMシステム、3次元造形システム、3次元計測システムを融合し、開発から製造までの効率化と高品質化を実現する技術である。高品質、高性能、信頼性の高い製品を低コストで開発するためには、設計の上流段階からデジタルエンジニアリングシステムを活用する必要がある。このシステムは、デジタルモデルの構築から様々なシミュレーションまで計算機上で利用することができ、原理上、実モデルを利用した様々な性能試験を実施することなく製品を開発することが可能である。特にシミュレーションは、詳細設計において、設計案が要求性能を満たしているか確認するために有用なツールとなる。
【0004】
但し、CADを用いて設計したとしても、製品となった時に全く同じ形状である保証はない。鋳造、プレス加工、押し出し成型等金型を用いた部品においては、詳細部分で設計図面と異なることが多く、実際にはシミュレーションのみで製品の品質、性能、信頼性の評価をするまでには至っていない。このため、近年においては、設計値と実製品を比較するリバースエンジニアリングの開発が進められている。X線CT装置は、物体を様々な方向からX線で撮影した画像を再構成処理することで,物体の内部構造を含む3次元画像を得ることができ、この画像を直接モデリングすることで、CAD図面との比較や様々な構造解析に用いることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−125960号公報
【特許文献2】特開2006−329917号公報
【特許文献3】特開2008−70219号公報
【特許文献4】特開平11−281747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、X線CT装置を用いた3次元モデリングは、異質材料間や物体−空気間の閾値の決定手法により、画像の寸法精度が大きく影響を受けるという問題がある。CT画像は、多数のボクセルと呼ばれる立方体から構成されている。これは、立方体を表す場合は影響が少ないが、球等の曲面を表現する際に大きく影響を受ける。ボクセルサイズは、X線焦点サイズ及び検出器のピクセル数に依存しており、測定精度の向上のためには、これらの物理的性能を向上させる必要がある。
【0007】
しかしながら、これらの物理的性能を向上させるためには、以下のような問題がある。X線は、一般的に、電子線をターゲットに照射することにより発生させている。焦点サイズは、電子線を絞ることで小さくすることができるが、その場合、管電圧及び管電流を上げることができないことから、透過能力が落ちるため内部観察ができない。また、検出器は、最も高い解像度を有する半導体集積型のフラットパネルであっても、その画素サイズは100μmである。この理由は、試料を透過したX線が様々な方向から混入するため、これ以上画素サイズを上げるのが難しいためである。高精度計測のためには、CT画像の基になる投影画像の分解能を向上させることが必要であるが、現状、試料のエッジを的確に決定できる検出器は存在していない。以上のような問題を解決するため、実際には、ボクセルの位置の表面の傾きを周りのCT値の差から求めるグレイレベルグラディエント法を用いて3次元画像を作成している。
【0008】
しかし、このグレイレベルグラディエント法は、計算にどれだけのボクセルを用いるかにより画像の精度が左右されてしまう。実際の測定では、X線源や検出器の性能に限界があるため、3次元画像作成に用いるボクセルの数は、要求される画像精度を満たすまでには至らない。そのため、得られた画像は、エッジが明瞭でなく、3次元モデリング作成における大きな誤差要因となっていた。
【0009】
本発明は、測定対象物の内外輪郭を高い精度で取得することができる画像取得装置及び画像取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、第一焦点サイズを有するX線を照射する第一X線源と、第一X線源から照射されて測定対象物を透過したX線を検出する第一検出器と、第一検出器で検出したX線に基づいて第一X線CT画像を生成する第一画像生成手段と、第一焦点サイズよりも小さい第二焦点サイズを有するX線を照射する第二X線源と、第二X線源から照射されて測定対象物を透過したX線を検出する第二検出器と、第二検出器で検出したX線に基づいて第二X線CT画像を生成する第二画像生成手段と、第一画像生成手段で生成した第一X線CT画像を第二画像生成手段で生成した第二X線CT画像に基づいて補正する画像補正手段と、を備える、画像取得装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、第一焦点サイズを有するX線を照射する第一X線源から照射されて測定対象物を透過したX線を検出する第一検出工程と、第一検出工程で検出したX線に基づいて第一X線CT画像を生成する第一画像生成工程と、第一焦点サイズよりも小さい第二焦点サイズを有するX線を照射する第二X線源から照射されて測定対象物を透過したX線を検出する第二検出工程と、第二検出工程で検出したX線に基づいて第二X線CT画像を生成する第二画像生成工程と、第一画像生成工程で生成した第一X線CT画像を第二画像生成工程で生成した第二X線CT画像に基づいて補正する画像補正工程と、を備える、画像取得方法を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、コンピュータに、第一焦点サイズを有するX線を照射する第一X線源から照射されて測定対象物を透過したX線に基づいて生成した第一X線CT画像を、第一焦点サイズよりも小さい第二焦点サイズを有するX線を照射する第二X線源から照射されて測定対象物を透過したX線に基づいて生成した第二X線CT画像に基づいて補正する画像補正工程を実行させる、画像補正プログラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態に係る画像取得装置の構成を説明するための構成図である。
図2】測定対象物のX線CT画像のサイノグラムを説明するための説明図である。
図3】最尤推定・期待値最大化再構成法を説明するための説明図である。
図4】最尤推定・期待値最大化再構成法を用いて再構成した断面画像と、フィルタ補正逆投影法を用いて再構成した断面画像と、の比較結果を示す図である。
図5】ナノ線源画像のサイノグラムを用いてマイクロ線源画像を補正する方法を説明するための説明図である。
図6】本発明の第一実施形態に係る画像取得方法を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の第二実施形態に係る画像取得装置の構成を説明するための構成図である。
図8】本発明の第二実施形態に係る画像取得装置の表示画面に表示された測定対象物のマイクロ線源画像を示す図である。
図9】本発明の第二実施形態に係る画像取得装置のナノ画像生成手段で生成した測定対象物のナノ線源画像をマイクロ線源画像とともに表示した状態を示す図である。
図10】本発明の第二実施形態に係る画像取得方法を説明するためのフローチャートである。
図11】本発明の第三実施形態に係る画像取得装置の平面図である。
図12】本発明の第三実施形態に係る画像取得装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第一実施形態>
まず、図1図6を用いて、本発明の第一実施形態について説明する。
【0015】
最初に、図1を用いて、本発明の第一実施形態に係る画像取得装置1の構成について説明する。画像取得装置1は、測定対象物Oに対してX線を照射し測定対象物Oの回転角毎の投影データを検出することにより、所定の三次元座標軸上における測定対象物OのX線CT画像を取得するものである。画像取得装置1は、図1に示すように、マイクロ線源10と、マイクロ線源用検出器20と、マイクロ画像生成手段30と、ナノ線源40と、ナノ線源用検出器50と、ナノ画像生成手段60と、画像補正手段70と、測定対象物Oを設置するためのステージ(載置台)80と、を備えるものである。
【0016】
マイクロ線源10は、1μm〜1mmの焦点サイズ(第一焦点サイズ)を有するX線を照射するものであり、本発明における第一X線源に相当する。マイクロ線源用検出器20は、マイクロ線源10から照射されて測定対象物Oを透過したX線を検出するものであり、本発明における第一検出器に相当する。ナノ線源40は、1〜800nmの焦点サイズ(第一焦点サイズよりも小さい第二焦点サイズ)を有するX線を照射するものであり、本発明における第二X線源に相当する。ナノ線源用検出器50は、ナノ線源40から照射されて測定対象物Oを透過したX線を検出するものであり、本発明における第二検出器に相当する。マイクロ線源用検出器20及びナノ線源用検出器50としては、フラットパネルディテクタやCdTe検出器等を採用することができる。
【0017】
マイクロ画像生成手段30は、マイクロ線源用検出器20で検出したX線に基づいてマイクロ線源画像(第一X線CT画像)を生成するものであり、本発明における第一画像生成手段に相当する。ナノ画像生成手段60は、ナノ線源用検出器50で検出したX線に基づいてナノ線源画像(第二X線CT画像)を生成するものであり、本発明における第二画像生成手段に相当する。本実施形態におけるマイクロ画像生成手段30及びナノ画像生成手段60は、各々、検出器(マイクロ線源用検出器20及びナノ線源用検出器50)で計測されたX線量(X線ピーク)を数値化する信号処理手段と、信号処理手段による数値データに基づいて画像を再構成する画像再構成手段と、を有している。
【0018】
信号処理手段及び画像再構成手段は、コンピュータ等のハードウェアと、これに実装されるプログラム等のソフトウェアと、によって構成されている。具体的には、信号処理手段及び画像再構成手段のためのプログラムが、インターネット等の通信媒体やUSB等の記録媒体を介してコンピュータに読み込まれると、CPU等の演算処理部やメモリ等の記憶部等により各種処理が実行される。かかる実行に必要な各種データや結果データは適宜、入力部や通信部を介して入力され、出力部や表示部(例えば表示画面)を介して出力される。画像再構成手段は、後述する補正手段と同様に、逐次近似再構成法の中の最尤推定・期待値最大化再構成法(以下、「ML−EM再構成法」という)を用いて、検出X線量の数値データに基づき測定対象物OのX線CT画像を再構成することとしているが、他のアルゴリズム(例えば、フィルタ補正逆投影法、加算型ART法、乗算型ART法、SIRT法、勾配法、最急降下法、共役勾配法、MAP−EM法、Convex法等)を用いて画像の再構成を行うこともできる。
【0019】
画像補正手段70は、マイクロ画像生成手段30で生成したマイクロ線源画像をナノ画像生成手段60で生成したナノ線源画像に基づいて補正するものである。本実施形態における画像補正手段70は、マイクロ画像生成手段30で生成したマイクロ線源画像のデータとナノ画像生成手段60で生成したナノ線源画像のデータとをサイノグラムとして表示画面に表示する表示手段と、マイクロ線源画像のサイノグラムをナノ線源画像のサイノグラムに収束させるように逐次近似再構成法の中のML−EM再構成法を用いて画像を再構成することによりマイクロ線源画像を補正する補正手段と、を有している。表示手段及び補正手段は、コンピュータ等のハードウェアと、これに実装されるプログラム等のソフトウェアと、によって構成されており、これら表示手段及び補正手段のためのプログラムがコンピュータに読み込まれると、CPU等の演算処理部やメモリ等の記憶部等により各種処理が実行される。
【0020】
ここで、画像補正の際に使用されるサイノグラムについて、図2を用いて説明する。図2は、測定対象物OのX線CT画像のサイノグラムを説明するための説明図である。サイノグラムとは、測定対象物Oを360°回転させたときの角度毎の検出信号をsin波で表現した像であって、測定対象物Oの断面毎に取得されるものである。マイクロ画像生成手段30やナノ画像生成手段60で生成した平面視楕円形状の測定対象物Oの所定断面におけるX線CT画像のサイノグラム(CTサイノグラム)は、例えば図2に示すような像で表現される。
【0021】
また、画像補正の際に使用されるML−EM再構成法について、図3及び図4を用いて説明する。ML−EM再構成法は、どのような画像であれば測定投影データに近い計算投影データが得られるかを繰り返し計算する方法である。図3に示したように、0°、90°、180°、270°の各投影データ(サイノグラム)を得たと仮定する。この際、これらの投影データから得られる断面画像がどのようなものであるかを予想することができる。例えば、外形に関しては、一番外側のサイノグラム形状から、楕円であることが予想される。また、90°及び270°のサイノグラムから楕円の上部に輝度の高い物質が存在し、下部に空気層が存在することが示唆される。180°及び270°には楕円内部の物質に関する情報がないため、高輝度物質と空気層が打ち消しあっていることが予想される。このような操作を同時に繰り返し実施することで、矛盾のない断面画像を構成する方法がML−EM再構成法の概要である。
【0022】
図4は、ML−EM再構成法を用いて再構成した断面画像と、フィルタ補正逆投影法(以下、「FBP法」という)を用いて再構成した断面画像と、の比較結果を示す。FBP法で再構成した断面画像は、ストリーク状アーチファクトの発生が確認された。また試料内部の穴と外側の空気層のコントラストが異なっていることも明らかになった。一方、ML−EM法においては、このような現象は確認されなかったが、穴の輪郭のボケが確認された。FBP法は、線減弱係数が大きく異なる元素を含む試料には有効な再構成法であるが、板状や突起物が多いような複雑な形状に由来するアーチファクトに対しては、効果が薄い。これは、FBP法が再構成時にボケ補正フィルタで処理していることに起因する。その他に、補正フィルタの影響によりエッジが強調されたり、コントラストが異なったりするといった問題が発生する。これらの問題は、測定誤差を生む要因となり、測定対象物の形状によっては、測定誤差が大きくなる可能性がある。一方、ML−EM再構成法は、FBP法で顕在化したアーチファクトの発生を抑制することが可能である。
【0023】
但し、ML−EM再構成法は、投影データを基に統計的に一番確からしい画像を導く方法であるため、(1)統計手法のため収束しない可能性がある、(2)再構成画像のエッジが不明瞭となる、(3)解析量が膨大であり再構成時間が長い、といった3つの問題が指摘されている。ML−EM再構成法を実際に利用するためには、これらの問題を解決する方法の開発が求められていた。そこで、本願発明の発明者は、焦点サイズ1〜800nmのX線を照射するナノ線源40を用いて生成したナノ線源画像から得たサイノグラムを正解とし、そのサイノグラムに収束するように全体を補正することで、ML−EM再構成法の上記問題を解決した。
【0024】
図5は、ナノ線源画像のサイノグラムを用いてマイクロ線源画像を補正する方法を説明するための説明図である。マイクロ画像生成手段30で生成したマイクロ線源画像と、ナノ画像生成手段60で生成したナノ線源画像と、はいずれもsin波(サイノグラム)で表現することができる。図5に示すように、マイクロ線源画像のサイノグラムはボケが多いため比較的線が太くなっている。これに対し、ナノ線源画像のサイノグラムは、マイクロ線源10の焦点サイズ(例えば5μm)よりも大幅に小さい焦点サイズ(例えば0.25μm)のX線を照射するナノ線源40を用いて生成したものであるため、ボケが小さく、線が細くなっている。このナノ線源画像のサイノグラムを正確としてML−EM再構成法でマイクロ線源画像を再構成することにより、収束の問題や再構成時間の問題が解決されることとなる。このような補正を、マイクロ線源画像の内部のサイノグラムにも適用することにより、精密な内外形の断面画像を取得することができる。
【0025】
ステージ80は、図示されていない移動機構によって所定の回転軸を中心に回転運動を行うように構成されている。ステージ80は、高い剛性を有するグラナイトやダクタイル鋳鉄で構成することが好ましい。
【0026】
本実施形態においては、図1に示すように、マイクロ線源10及びマイクロ線源用検出器20が、ステージ80の中心Cを通る第一直線L1上に固定されて配置され、ナノ線源40及びナノ線源用検出器50が、ステージ80の中心Cを通り第一直線L1と所定の角度θをなして交差する第二直線L2上に固定されて配置されている。本実施形態における画像補正手段70は、これら直線のなす角度θに基づいて、マイクロ画像生成手段30で生成したマイクロ線源画像(又はナノ画像生成手段60で生成したナノ線源画像)を補正することとしている。
【0027】
なお、マイクロ線源10(ナノ線源40)とマイクロ線源用検出器20(ナノ線源用検出器50)との間にリニアスケールを配置してもよい。このようにすると、ステージ80の位置を正確に把握することができ、測定対象物OのX線CT画像を精確に取得することができる。また、画像取得装置1は、外部からの振動対策として除振機能を有していることが好ましい。また、画像取得装置1は、鉛やタングステン等からなる遮蔽体によって遮蔽されることが好ましく、空調手段によってその内部の温度及び湿度が一定に維持されることが好ましい。このようにすると、画像情報取得の際に外部環境の影響を抑制することができ、より精確な三次元情報を得ることができる。
【0028】
次に、本実施形態に係る画像取得装置1を用いた画像取得方法について、図5を適宜参照しながら図6のフローチャートを用いて説明する。
【0029】
まず、マイクロ線源10から測定対象物Oに対してX線を照射して、測定対象物Oの回転角毎の投影データ(測定対象物Oを透過したX線)をマイクロ線源用検出器20で検出し(第一検出工程:S1)、検出したデータに基づいてマイクロ画像生成手段30でマイクロ線源画像を生成する(第一画像生成工程:S2)。次いで、生成した測定対象物Oのマイクロ線源画像のサイノグラム(マイクロサイノグラム)を、例えば図5に示したように表示手段で表示画面に表示する(第一表示工程:S3)。
【0030】
次いで、ナノ線源40から測定対象物Oに対してX線を照射して、測定対象物Oの回転角毎の投影データ(測定対象物Oを透過したX線)をナノ線源用検出器50で検出し(第二検出工程:S4)、検出したデータに基づいてナノ画像生成手段60でナノ線源画像を生成する(第二画像生成工程:S5)。次いで、生成した測定対象物Oのナノ線源画像のサイノグラム(ナノサイノグラム)を、例えば図5に示したように表示手段で表示画面に表示する(第二表示工程:S6)。なお、これら第二検出工程S4、第二画像生成工程S5及び第二表示工程S6は、第一検出工程S1、第一画像生成工程S2及び第一表示工程S3の前に行われていてもよい。
【0031】
次いで、マイクロサイノグラムをナノサイノグラムに収束させるようにML−EM再構成法を用いて画像を再構成することにより、マイクロ線源画像を補正する(画像補正工程:S7)。この際、図5に示すように、表示手段でマイクロサイノグラムとナノサイノグラムを融合させた画像を表示画面に表示して画像を再構成することができる。その後、この補正を、マイクロ線源画像の内部のサイノグラムにも適用することにより、精密な内外形の断面画像を取得することができる。
【0032】
以上説明した実施形態に係る画像取得装置1においては、比較的小さい1〜800nmの焦点サイズを有するX線を用いて生成した測定対象物Oのナノ線源画像に基づいて、比較的大きい1μm〜1mmの焦点サイズを有するX線を用いて生成した測定対象物Oのマイクロ線源画像を補正することができる。ナノ線源40は、マイクロ線源10と比較すると透過能力が小さいため、測定対象物Oの内部撮影には向かないが、エッジが鮮明な透視画像を得ることができ、精度の高い外観形状のナノ線源画像を取得することができる。一方、マイクロ線源10は、ナノ線源40と比較すると透過能力が大きいため、測定対象物Oの内部撮影に向いている。精度の高い外観形状を有するナノ線源画像に基づいてマイクロ線源画像を補正し、この補正を内部のデータにも適用することにより、精度の高い内外輪郭を構築することができる。
【0033】
また、以上説明した実施形態に係る画像取得装置1においては、マイクロ線源10、マイクロ線源用検出器20、ナノ線源40及びナノ線源用検出器50が所定の位置に固定された状態で配置されており、X線源及び検出器の位置移動がないため、より精度の高いCT画像を取得することが可能となる。
【0034】
なお、以上の実施形態においては、ML−EM再構成法を用いてマイクロ線源画像を補正した例を示したが、マイクロサイノグラムをナノサイノグラムに収束させるようにすることにより、他の再構成法(例えば、フィルタ補正逆投影法、加算型ART法、乗算型ART法、SIRT法、勾配法、最急降下法、共役勾配法、MAP-EM法、Convex法等)を用いてマイクロ線源画像を補正することもできる。
【0035】
<第二実施形態>
次に、図7図10を用いて、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る画像取得装置1Aは、第一実施形態に係る画像取得装置1の検出器、ステージ及び画像補正手段の構成を変更したものであり、その他の構成については第一実施形態と実質的に同一である。このため、異なる構成を中心に説明することとし、第一実施形態と共通する構成については、第一実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0036】
本実施形態に係る画像取得装置1Aは、図7に示すように、マイクロ線源10と、マイクロ画像生成手段30と、ナノ線源40と、ナノ画像生成手段60と、画像補正手段70Aと、ステージ80Aと、一台の検出器90と、を備えるものである。
【0037】
マイクロ線源10(第一X線源)及びナノ線源40(第二X線源)は、第一実施形態と同一である。但し、本実施形態においては、図7に示すように、マイクロ線源10によるX線の照射方向と、ナノ線源40によるX線の照射方向と、が平行となる(交差しない)ように、これらX線源の向きが設定されている。マイクロ画像生成手段30(第一画像生成手段)及びナノ画像生成手段60(第二画像生成手段)もまた第一実施形態と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0038】
本実施形態における検出器90は、マイクロ線源10から照射されて所定の測定対象物Oを透過したX線と、ナノ線源40から照射されて測定対象物Oを透過したX線と、の双方を検出するものであり、本発明における第一検出器及び第二検出器(共通の検出器)に相当する。検出器90としては、フラットパネルディテクタやCdTe検出器等を採用することができる。
【0039】
本実施形態におけるステージ80Aは、図示されていない平行移動機構によって、検出器90とともに水平方向(図7に矢印で示す方向)に平行移動を行うように構成されている。平行移動機構は、マイクロ線源10から照射されるX線が到達する第一の位置と、ナノ線源40から照射されるX線が到達する第二の位置と、の間でステージ80Aと検出器90とを移動させるものであり、本発明における載置台検出器移動手段に相当する。
【0040】
画像補正手段70Aは、マイクロ画像生成手段30で生成したマイクロ線源画像をナノ画像生成手段60で生成したナノ線源画像に基づいて補正するものである。本実施形態における画像補正手段70Aは、マイクロ画像生成手段30で生成したマイクロ線源画像のエッジと、ナノ画像生成手段60で生成したナノ線源画像のエッジと、の差分が所定の範囲内に収まるように、マイクロ線源画像を補正するものである。具体的には、画像補正手段70Aは、マイクロ画像生成手段30で生成した測定対象物Oのマイクロ線源画像を表示画面に表示するマイクロ画像表示手段と、ナノ画像生成手段60で生成した測定対象物Oのナノ線源画像をマイクロ線源画像のボクセルサイズよりも小さいナノ線源画像のボクセルサイズで表示画面に表示するナノ画像表示手段と、を有している。
【0041】
図8は、マイクロ画像表示手段によって表示画面に表示された測定対象物Oのマイクロ線源画像のエッジ(マイクロエッジ)EMを例示するものである。本実施形態においては、図8に示すマイクロ線源画像のボクセルサイズを100μmに設定している。図9は、ナノ画像表示手段によって表示画面に表示された測定対象物Oのナノ線源画像のエッジ(ナノエッジ)ENを例示するものである。本実施形態においては、図9に示すナノ線源画像のボクセルサイズを5μm程度に設定している。マイクロ画像表示手段及びナノ画像表示手段もまた、コンピュータ等のハードウェアと、これに実装されるプログラム等のソフトウェアと、によって構成されており、これらマイクロ画像表示手段及びナノ画像表示手段のためのプログラムがコンピュータに読み込まれると、CPU等の演算処理部やメモリ等の記憶部等により各種処理が実行される。
【0042】
また、画像補正手段70Aは、ナノエッジENとマイクロエッジEMとの差分を算出する差分算出手段と、差分算出手段で算出した差分が所定の範囲内に収まるようにマイクロ線源画像を補正する補正手段と、をさらに有している。差分算出手段で算出される差分としては、例えば、図9に示されるようなナノエッジENとマイクロエッジEMとの間の距離の特定抽出範囲内における平均二乗誤差を採用することができる。補正手段で行われる画像補正としては、マイクロ線源画像を拡大又は縮小したり、マイクロ線源画像を特定の方向に平行移動させたり、マイクロ線源画像を所定の回転軸を中心に回転移動させたりすることを含み、差分の最小化あるいは少なくとも所定範囲内への減少を実現できる限り、拡大、縮小、平行移動及び回転移動の少なくとも何れか一つが補正として実行されれば良い。これら差分算出手段及び補正手段もまた、コンピュータ等のハードウェアと、これに実装されるプログラム等のソフトウェアと、によって構成されており、差分算出手段及び補正手段のためのプログラムがコンピュータに読み込まれると、CPU等の演算処理部やメモリ等の記憶部等により各種処理が実行される。
【0043】
次に、本実施形態に係る画像取得装置1Aを用いた画像取得方法について、図8及び図9を適宜参照しながら図10のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
まず、マイクロ線源10から測定対象物Oに対してX線を照射して、測定対象物Oの回転角毎の投影データ(測定対象物Oを透過したX線)を検出器90で検出し(第一検出工程:S10)、検出したデータに基づいてマイクロ画像生成手段30でマイクロ線源画像を生成する(第一画像生成工程:S20)。次いで、生成した測定対象物Oのマイクロ線源画像を、例えば図8に示したようにマイクロ線源画像のボクセルサイズ(100μm)で表示画面に表示し、従来から採用されているエッジ抽出方法を採用してマイクロエッジEMを抽出する(第一表示工程:S30)。
【0045】
次いで、ナノ線源40から測定対象物Oに対してX線を照射して、測定対象物Oの回転角毎の投影データ(測定対象物Oを透過したX線)を検出器90で検出し(第二検出工程:S40)、検出したデータに基づいてナノ画像生成手段60でナノ線源画像を生成する(第二画像生成工程:S50)。次いで、生成した測定対象物Oのナノ線源画像を、例えば図9に示したようにナノ線源画像のボクセルサイズ(5μm)で表示画面に表示し、従来から採用されているエッジ抽出方法を採用してナノエッジENを抽出する(第二表示工程:S60)。なお、これら第二検出工程S40、第二画像生成工程S50及び第二表示工程S60は、第一検出工程S10、第一画像生成工程S20及び第一表示工程S30の前に行われていてもよい。
【0046】
次いで、第一表示工程S30で抽出したマイクロエッジEMと、第二表示工程S60で抽出したナノエッジENと、の差分を算出し、この差分が所定の範囲R内に収まるか否かを判定する(差分判定工程:S70)。差分判定工程S70において差分が所定の範囲R内にあると判定した場合には、マイクロ線源画像の補正を行わずに作業を終了する。一方、差分判定工程S70において差分が所定の範囲R内にないと判定した場合には、画像補正手段70Aを用いてマイクロ線源画像を補正し(画像補正工程:S80)、その後、その補正を、マイクロ線源画像の内部のサイノグラムにも適用することにより、精密な内外形の断面画像を取得する。
【0047】
以上説明した実施形態に係る画像取得装置1Aにおいても、第一実施形態に係る画像取得装置1と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、比較的小さい1〜800nmの焦点サイズを有するX線を用いて生成した測定対象物Oのナノ線源画像に基づいて、比較的大きい1μm〜1mmの焦点サイズを有するX線を用いて生成した測定対象物Oのマイクロ線源画像を補正することができる。ナノ線源40は、マイクロ線源10と比較すると透過能力が小さいため、測定対象物Oの内部撮影には向かないが、エッジが鮮明な透視画像を得ることができ、精度の高い外観形状のナノ線源画像を取得することができる。一方、マイクロ線源10は、ナノ線源40と比較すると透過能力が大きいため、測定対象物Oの内部撮影に向いている。精度の高い外観形状を有するナノ線源画像に基づいてマイクロ線源画像を補正し、この補正を内部のデータにも適用することにより、精度の高い内外輪郭を構築することができる。
【0048】
また、以上説明した実施形態に係る画像取得装置1Aにおいては、マイクロ線源10から照射されて所定の測定対象物Oを透過したX線と、ナノ線源40から照射されて測定対象物Oを透過したX線と、の双方を検出する検出器90を採用しているため、検出器を二つ用意する必要がない。このため、コストを削減することができる。
【0049】
<第三実施形態>
次に、図11及び図12を用いて、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態に係る画像取得装置1Bは、第一実施形態に係る画像取得装置1AのX線源、検出器及びステージの構成を変更したものであり、その他の構成については第二実施形態と実質的に同一である。このため、異なる構成を中心に説明することとし、第二実施形態と共通する構成については、第二実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0050】
本実施形態に係る画像取得装置1Bは、図11及び図12に示すように、マイクロ線源10Bと、ナノ線源40Bと、ステージ80Bと、検出器90Bと、マイクロ画像生成手段と、ナノ画像生成手段と、画像補正手段と、を備えるものである。マイクロ画像生成手段(第一画像生成手段)、ナノ画像生成手段(第二画像生成手段)及び画像補正手段は、第二実施形態と同一であるため、図示及び詳細な説明を省略する。
【0051】
本実施形態におけるマイクロ線源10B(第一X線源)及びナノ線源40B(第二X線源)は、第二実施形態と同様に、マイクロ線源10BによるX線の照射方向と、ナノ線源40によるX線の照射方向と、が平行となる(交差しない)ようにその向きが設定されている。但し、本実施形態においては、図12に示すように、ナノ線源40Bがマイクロ線源10Bの鉛直方向下方に配置されている。そして、マイクロ線源10B及びナノ線源40Bは、図示されていない平行移動機構によって、上下方向(図12に矢印で示す方向)に平行移動を行うように構成されている。平行移動機構は、ステージ80Bに載置された測定対象物Oに、マイクロ線源10BからのX線と、ナノ線源40BからのX線と、を別々に照射させるようにマイクロ線源10B及びナノ線源40Bを上下に移動させるものであり、本発明におけるX線源移動手段に相当する。
【0052】
本実施形態における検出器90B(第一検出器及び第二検出器)の基本的な機能は、第二実施形態と同様であり、マイクロ線源10Bから照射されて所定の測定対象物Oを透過したX線と、ナノ線源40Bから照射されて測定対象物Oを透過したX線と、の双方を検出する。本実施形態におけるステージ80B及び検出器90Bは、各々所定の位置に固定されて配置されている。
【0053】
以上説明した実施形態に係る画像取得装置1Bにおいても、第一及び第二実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、以上説明した実施形態に係る画像取得装置1Bにおいては、ステージ80B及び検出器90Bを左右(水平方向)に移動させる必要がないため、装置全体のサイズを小さくすることができるという利点がある。
【0054】
本発明は、以上の各実施形態に限定されるものではなく、これら実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前記各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0055】
1・1A・1B…画像取得装置
10・10B…マイクロ線源(第一X線源)
20…マイクロ線源用検出器(第一検出器)
30…マイクロ画像生成手段(第一画像生成手段)
40・40B…ナノ線源(第二X線源)
50…ナノ線源用検出器(第二検出器)
60…ナノ画像生成手段(第二画像生成手段)
70…画像補正手段
80・80A・80B…ステージ(載置台)
90・90B…検出器(第一検出器、第二検出器)
O…測定対象物
S1・S10…第一検出工程
S2・S20…第一画像生成工程
S4・S40…第二検出工程
S5・S50…第二画像生成工程
S7・S80…画像補正工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12