(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記測定対象物に前記第一X線源からのX線と前記第二X線源からのX線とを別々に照射させるように前記第一X線源及び前記第二X線源を上下に移動させるX線源移動手段をさらに備える、請求項1に記載の画像取得装置。
コンピュータに、第一焦点サイズを有するX線を照射する第一X線源から照射されて測定対象物を透過したX線に基づいて生成した第一X線CT画像を、前記第一焦点サイズよりも小さい第二焦点サイズを有するX線を照射する第二X線源から照射されて前記測定対象物を透過したX線に基づいて生成した第二X線CT画像に基づいて補正する画像補正工程を実行させる画像補正プログラムであって、
前記画像補正工程は、前記第一X線CT画像のエッジと前記第二X線CT画像のエッジとの差分が所定の範囲内に収まるように、前記第一X線CT画像を補正する、画像補正プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第一実施形態>
まず、
図1〜
図6を用いて、本発明の第一実施形態について説明する。
【0015】
最初に、
図1を用いて、本発明の第一実施形態に係る画像取得装置1の構成について説明する。画像取得装置1は、測定対象物Oに対してX線を照射し測定対象物Oの回転角毎の投影データを検出することにより、所定の三次元座標軸上における測定対象物OのX線CT画像を取得するものである。画像取得装置1は、
図1に示すように、マイクロ線源10と、マイクロ線源用検出器20と、マイクロ画像生成手段30と、ナノ線源40と、ナノ線源用検出器50と、ナノ画像生成手段60と、画像補正手段70と、測定対象物Oを設置するためのステージ(載置台)80と、を備えるものである。
【0016】
マイクロ線源10は、1μm〜1mmの焦点サイズ(第一焦点サイズ)を有するX線を照射するものであり、本発明における第一X線源に相当する。マイクロ線源用検出器20は、マイクロ線源10から照射されて測定対象物Oを透過したX線を検出するものであり、本発明における第一検出器に相当する。ナノ線源40は、1〜800nmの焦点サイズ(第一焦点サイズよりも小さい第二焦点サイズ)を有するX線を照射するものであり、本発明における第二X線源に相当する。ナノ線源用検出器50は、ナノ線源40から照射されて測定対象物Oを透過したX線を検出するものであり、本発明における第二検出器に相当する。マイクロ線源用検出器20及びナノ線源用検出器50としては、フラットパネルディテクタやCdTe検出器等を採用することができる。
【0017】
マイクロ画像生成手段30は、マイクロ線源用検出器20で検出したX線に基づいてマイクロ線源画像(第一X線CT画像)を生成するものであり、本発明における第一画像生成手段に相当する。ナノ画像生成手段60は、ナノ線源用検出器50で検出したX線に基づいてナノ線源画像(第二X線CT画像)を生成するものであり、本発明における第二画像生成手段に相当する。本実施形態におけるマイクロ画像生成手段30及びナノ画像生成手段60は、各々、検出器(マイクロ線源用検出器20及びナノ線源用検出器50)で計測されたX線量(X線ピーク)を数値化する信号処理手段と、信号処理手段による数値データに基づいて画像を再構成する画像再構成手段と、を有している。
【0018】
信号処理手段及び画像再構成手段は、コンピュータ等のハードウェアと、これに実装されるプログラム等のソフトウェアと、によって構成されている。具体的には、信号処理手段及び画像再構成手段のためのプログラムが、インターネット等の通信媒体やUSB等の記録媒体を介してコンピュータに読み込まれると、CPU等の演算処理部やメモリ等の記憶部等により各種処理が実行される。かかる実行に必要な各種データや結果データは適宜、入力部や通信部を介して入力され、出力部や表示部(例えば表示画面)を介して出力される。画像再構成手段は、後述する補正手段と同様に、逐次近似再構成法の中の最尤推定・期待値最大化再構成法(以下、「ML−EM再構成法」という)を用いて、検出X線量の数値データに基づき測定対象物OのX線CT画像を再構成することとしているが、他のアルゴリズム(例えば、フィルタ補正逆投影法、加算型ART法、乗算型ART法、SIRT法、勾配法、最急降下法、共役勾配法、MAP−EM法、Convex法等)を用いて画像の再構成を行うこともできる。
【0019】
画像補正手段70は、マイクロ画像生成手段30で生成したマイクロ線源画像をナノ画像生成手段60で生成したナノ線源画像に基づいて補正するものである。本実施形態における画像補正手段70は、マイクロ画像生成手段30で生成したマイクロ線源画像のデータとナノ画像生成手段60で生成したナノ線源画像のデータとをサイノグラムとして表示画面に表示する表示手段と、マイクロ線源画像のサイノグラムをナノ線源画像のサイノグラムに収束させるように逐次近似再構成法の中のML−EM再構成法を用いて画像を再構成することによりマイクロ線源画像を補正する補正手段と、を有している。表示手段及び補正手段は、コンピュータ等のハードウェアと、これに実装されるプログラム等のソフトウェアと、によって構成されており、これら表示手段及び補正手段のためのプログラムがコンピュータに読み込まれると、CPU等の演算処理部やメモリ等の記憶部等により各種処理が実行される。
【0020】
ここで、画像補正の際に使用されるサイノグラムについて、
図2を用いて説明する。
図2は、測定対象物OのX線CT画像のサイノグラムを説明するための説明図である。サイノグラムとは、測定対象物Oを360°回転させたときの角度毎の検出信号をsin波で表現した像であって、測定対象物Oの断面毎に取得されるものである。マイクロ画像生成手段30やナノ画像生成手段60で生成した平面視楕円形状の測定対象物Oの所定断面におけるX線CT画像のサイノグラム(CTサイノグラム)は、例えば
図2に示すような像で表現される。
【0021】
また、画像補正の際に使用されるML−EM再構成法について、
図3及び
図4を用いて説明する。ML−EM再構成法は、どのような画像であれば測定投影データに近い計算投影データが得られるかを繰り返し計算する方法である。
図3に示したように、0°、90°、180°、270°の各投影データ(サイノグラム)を得たと仮定する。この際、これらの投影データから得られる断面画像がどのようなものであるかを予想することができる。例えば、外形に関しては、一番外側のサイノグラム形状から、楕円であることが予想される。また、90°及び270°のサイノグラムから楕円の上部に輝度の高い物質が存在し、下部に空気層が存在することが示唆される。180°及び270°には楕円内部の物質に関する情報がないため、高輝度物質と空気層が打ち消しあっていることが予想される。このような操作を同時に繰り返し実施することで、矛盾のない断面画像を構成する方法がML−EM再構成法の概要である。
【0022】
図4は、ML−EM再構成法を用いて再構成した断面画像と、フィルタ補正逆投影法(以下、「FBP法」という)を用いて再構成した断面画像と、の比較結果を示す。FBP法で再構成した断面画像は、ストリーク状アーチファクトの発生が確認された。また試料内部の穴と外側の空気層のコントラストが異なっていることも明らかになった。一方、ML−EM法においては、このような現象は確認されなかったが、穴の輪郭のボケが確認された。FBP法は、線減弱係数が大きく異なる元素を含む試料には有効な再構成法であるが、板状や突起物が多いような複雑な形状に由来するアーチファクトに対しては、効果が薄い。これは、FBP法が再構成時にボケ補正フィルタで処理していることに起因する。その他に、補正フィルタの影響によりエッジが強調されたり、コントラストが異なったりするといった問題が発生する。これらの問題は、測定誤差を生む要因となり、測定対象物の形状によっては、測定誤差が大きくなる可能性がある。一方、ML−EM再構成法は、FBP法で顕在化したアーチファクトの発生を抑制することが可能である。
【0023】
但し、ML−EM再構成法は、投影データを基に統計的に一番確からしい画像を導く方法であるため、(1)統計手法のため収束しない可能性がある、(2)再構成画像のエッジが不明瞭となる、(3)解析量が膨大であり再構成時間が長い、といった3つの問題が指摘されている。ML−EM再構成法を実際に利用するためには、これらの問題を解決する方法の開発が求められていた。そこで、本願発明の発明者は、焦点サイズ1〜800nmのX線を照射するナノ線源40を用いて生成したナノ線源画像から得たサイノグラムを正解とし、そのサイノグラムに収束するように全体を補正することで、ML−EM再構成法の上記問題を解決した。
【0024】
図5は、ナノ線源画像のサイノグラムを用いてマイクロ線源画像を補正する方法を説明するための説明図である。マイクロ画像生成手段30で生成したマイクロ線源画像と、ナノ画像生成手段60で生成したナノ線源画像と、はいずれもsin波(サイノグラム)で表現することができる。
図5に示すように、マイクロ線源画像のサイノグラムはボケが多いため比較的線が太くなっている。これに対し、ナノ線源画像のサイノグラムは、マイクロ線源10の焦点サイズ(例えば5μm)よりも大幅に小さい焦点サイズ(例えば0.25μm)のX線を照射するナノ線源40を用いて生成したものであるため、ボケが小さく、線が細くなっている。このナノ線源画像のサイノグラムを正確としてML−EM再構成法でマイクロ線源画像を再構成することにより、収束の問題や再構成時間の問題が解決されることとなる。このような補正を、マイクロ線源画像の内部のサイノグラムにも適用することにより、精密な内外形の断面画像を取得することができる。
【0025】
ステージ80は、図示されていない移動機構によって所定の回転軸を中心に回転運動を行うように構成されている。ステージ80は、高い剛性を有するグラナイトやダクタイル鋳鉄で構成することが好ましい。
【0026】
本実施形態においては、
図1に示すように、マイクロ線源10及びマイクロ線源用検出器20が、ステージ80の中心Cを通る第一直線L
1上に固定されて配置され、ナノ線源40及びナノ線源用検出器50が、ステージ80の中心Cを通り第一直線L
1と所定の角度θをなして交差する第二直線L
2上に固定されて配置されている。本実施形態における画像補正手段70は、これら直線のなす角度θに基づいて、マイクロ画像生成手段30で生成したマイクロ線源画像(又はナノ画像生成手段60で生成したナノ線源画像)を補正することとしている。
【0027】
なお、マイクロ線源10(ナノ線源40)とマイクロ線源用検出器20(ナノ線源用検出器50)との間にリニアスケールを配置してもよい。このようにすると、ステージ80の位置を正確に把握することができ、測定対象物OのX線CT画像を精確に取得することができる。また、画像取得装置1は、外部からの振動対策として除振機能を有していることが好ましい。また、画像取得装置1は、鉛やタングステン等からなる遮蔽体によって遮蔽されることが好ましく、空調手段によってその内部の温度及び湿度が一定に維持されることが好ましい。このようにすると、画像情報取得の際に外部環境の影響を抑制することができ、より精確な三次元情報を得ることができる。
【0028】
次に、本実施形態に係る画像取得装置1を用いた画像取得方法について、
図5を適宜参照しながら
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0029】
まず、マイクロ線源10から測定対象物Oに対してX線を照射して、測定対象物Oの回転角毎の投影データ(測定対象物Oを透過したX線)をマイクロ線源用検出器20で検出し(第一検出工程:S1)、検出したデータに基づいてマイクロ画像生成手段30でマイクロ線源画像を生成する(第一画像生成工程:S2)。次いで、生成した測定対象物Oのマイクロ線源画像のサイノグラム(マイクロサイノグラム)を、例えば
図5に示したように表示手段で表示画面に表示する(第一表示工程:S3)。
【0030】
次いで、ナノ線源40から測定対象物Oに対してX線を照射して、測定対象物Oの回転角毎の投影データ(測定対象物Oを透過したX線)をナノ線源用検出器50で検出し(第二検出工程:S4)、検出したデータに基づいてナノ画像生成手段60でナノ線源画像を生成する(第二画像生成工程:S5)。次いで、生成した測定対象物Oのナノ線源画像のサイノグラム(ナノサイノグラム)を、例えば
図5に示したように表示手段で表示画面に表示する(第二表示工程:S6)。なお、これら第二検出工程S4、第二画像生成工程S5及び第二表示工程S6は、第一検出工程S1、第一画像生成工程S2及び第一表示工程S3の前に行われていてもよい。
【0031】
次いで、マイクロサイノグラムをナノサイノグラムに収束させるようにML−EM再構成法を用いて画像を再構成することにより、マイクロ線源画像を補正する(画像補正工程:S7)。この際、
図5に示すように、表示手段でマイクロサイノグラムとナノサイノグラムを融合させた画像を表示画面に表示して画像を再構成することができる。その後、この補正を、マイクロ線源画像の内部のサイノグラムにも適用することにより、精密な内外形の断面画像を取得することができる。
【0032】
以上説明した実施形態に係る画像取得装置1においては、比較的小さい1〜800nmの焦点サイズを有するX線を用いて生成した測定対象物Oのナノ線源画像に基づいて、比較的大きい1μm〜1mmの焦点サイズを有するX線を用いて生成した測定対象物Oのマイクロ線源画像を補正することができる。ナノ線源40は、マイクロ線源10と比較すると透過能力が小さいため、測定対象物Oの内部撮影には向かないが、エッジが鮮明な透視画像を得ることができ、精度の高い外観形状のナノ線源画像を取得することができる。一方、マイクロ線源10は、ナノ線源40と比較すると透過能力が大きいため、測定対象物Oの内部撮影に向いている。精度の高い外観形状を有するナノ線源画像に基づいてマイクロ線源画像を補正し、この補正を内部のデータにも適用することにより、精度の高い内外輪郭を構築することができる。
【0033】
また、以上説明した実施形態に係る画像取得装置1においては、マイクロ線源10、マイクロ線源用検出器20、ナノ線源40及びナノ線源用検出器50が所定の位置に固定された状態で配置されており、X線源及び検出器の位置移動がないため、より精度の高いCT画像を取得することが可能となる。
【0034】
なお、以上の実施形態においては、ML−EM再構成法を用いてマイクロ線源画像を補正した例を示したが、マイクロサイノグラムをナノサイノグラムに収束させるようにすることにより、他の再構成法(例えば、フィルタ補正逆投影法、加算型ART法、乗算型ART法、SIRT法、勾配法、最急降下法、共役勾配法、MAP-EM法、Convex法等)を用いてマイクロ線源画像を補正することもできる。
【0035】
<第二実施形態>
次に、
図7〜
図10を用いて、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る画像取得装置1Aは、第一実施形態に係る画像取得装置1の検出器、ステージ及び画像補正手段の構成を変更したものであり、その他の構成については第一実施形態と実質的に同一である。このため、異なる構成を中心に説明することとし、第一実施形態と共通する構成については、第一実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0036】
本実施形態に係る画像取得装置1Aは、
図7に示すように、マイクロ線源10と、マイクロ画像生成手段30と、ナノ線源40と、ナノ画像生成手段60と、画像補正手段70Aと、ステージ80Aと、一台の検出器90と、を備えるものである。
【0037】
マイクロ線源10(第一X線源)及びナノ線源40(第二X線源)は、第一実施形態と同一である。但し、本実施形態においては、
図7に示すように、マイクロ線源10によるX線の照射方向と、ナノ線源40によるX線の照射方向と、が平行となる(交差しない)ように、これらX線源の向きが設定されている。マイクロ画像生成手段30(第一画像生成手段)及びナノ画像生成手段60(第二画像生成手段)もまた第一実施形態と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0038】
本実施形態における検出器90は、マイクロ線源10から照射されて所定の測定対象物Oを透過したX線と、ナノ線源40から照射されて測定対象物Oを透過したX線と、の双方を検出するものであり、本発明における第一検出器及び第二検出器(共通の検出器)に相当する。検出器90としては、フラットパネルディテクタやCdTe検出器等を採用することができる。
【0039】
本実施形態におけるステージ80Aは、図示されていない平行移動機構によって、検出器90とともに水平方向(
図7に矢印で示す方向)に平行移動を行うように構成されている。平行移動機構は、マイクロ線源10から照射されるX線が到達する第一の位置と、ナノ線源40から照射されるX線が到達する第二の位置と、の間でステージ80Aと検出器90とを移動させるものであり、本発明における載置台検出器移動手段に相当する。
【0040】
画像補正手段70Aは、マイクロ画像生成手段30で生成したマイクロ線源画像をナノ画像生成手段60で生成したナノ線源画像に基づいて補正するものである。本実施形態における画像補正手段70Aは、マイクロ画像生成手段30で生成したマイクロ線源画像のエッジと、ナノ画像生成手段60で生成したナノ線源画像のエッジと、の差分が所定の範囲内に収まるように、マイクロ線源画像を補正するものである。具体的には、画像補正手段70Aは、マイクロ画像生成手段30で生成した測定対象物Oのマイクロ線源画像を表示画面に表示するマイクロ画像表示手段と、ナノ画像生成手段60で生成した測定対象物Oのナノ線源画像をマイクロ線源画像のボクセルサイズよりも小さいナノ線源画像のボクセルサイズで表示画面に表示するナノ画像表示手段と、を有している。
【0041】
図8は、マイクロ画像表示手段によって表示画面に表示された測定対象物Oのマイクロ線源画像のエッジ(マイクロエッジ)E
Mを例示するものである。本実施形態においては、
図8に示すマイクロ線源画像のボクセルサイズを100μmに設定している。
図9は、ナノ画像表示手段によって表示画面に表示された測定対象物Oのナノ線源画像のエッジ(ナノエッジ)E
Nを例示するものである。本実施形態においては、
図9に示すナノ線源画像のボクセルサイズを5μm程度に設定している。マイクロ画像表示手段及びナノ画像表示手段もまた、コンピュータ等のハードウェアと、これに実装されるプログラム等のソフトウェアと、によって構成されており、これらマイクロ画像表示手段及びナノ画像表示手段のためのプログラムがコンピュータに読み込まれると、CPU等の演算処理部やメモリ等の記憶部等により各種処理が実行される。
【0042】
また、画像補正手段70Aは、ナノエッジE
NとマイクロエッジE
Mとの差分を算出する差分算出手段と、差分算出手段で算出した差分が所定の範囲内に収まるようにマイクロ線源画像を補正する補正手段と、をさらに有している。差分算出手段で算出される差分としては、例えば、
図9に示されるようなナノエッジE
NとマイクロエッジE
Mとの間の距離の特定抽出範囲内における平均二乗誤差を採用することができる。補正手段で行われる画像補正としては、マイクロ線源画像を拡大又は縮小したり、マイクロ線源画像を特定の方向に平行移動させたり、マイクロ線源画像を所定の回転軸を中心に回転移動させたりすることを含み、差分の最小化あるいは少なくとも所定範囲内への減少を実現できる限り、拡大、縮小、平行移動及び回転移動の少なくとも何れか一つが補正として実行されれば良い。これら差分算出手段及び補正手段もまた、コンピュータ等のハードウェアと、これに実装されるプログラム等のソフトウェアと、によって構成されており、差分算出手段及び補正手段のためのプログラムがコンピュータに読み込まれると、CPU等の演算処理部やメモリ等の記憶部等により各種処理が実行される。
【0043】
次に、本実施形態に係る画像取得装置1Aを用いた画像取得方法について、
図8及び
図9を適宜参照しながら
図10のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
まず、マイクロ線源10から測定対象物Oに対してX線を照射して、測定対象物Oの回転角毎の投影データ(測定対象物Oを透過したX線)を検出器90で検出し(第一検出工程:S10)、検出したデータに基づいてマイクロ画像生成手段30でマイクロ線源画像を生成する(第一画像生成工程:S20)。次いで、生成した測定対象物Oのマイクロ線源画像を、例えば
図8に示したようにマイクロ線源画像のボクセルサイズ(100μm)で表示画面に表示し、従来から採用されているエッジ抽出方法を採用してマイクロエッジE
Mを抽出する(第一表示工程:S30)。
【0045】
次いで、ナノ線源40から測定対象物Oに対してX線を照射して、測定対象物Oの回転角毎の投影データ(測定対象物Oを透過したX線)を検出器90で検出し(第二検出工程:S40)、検出したデータに基づいてナノ画像生成手段60でナノ線源画像を生成する(第二画像生成工程:S50)。次いで、生成した測定対象物Oのナノ線源画像を、例えば
図9に示したようにナノ線源画像のボクセルサイズ(5μm)で表示画面に表示し、従来から採用されているエッジ抽出方法を採用してナノエッジE
Nを抽出する(第二表示工程:S60)。なお、これら第二検出工程S40、第二画像生成工程S50及び第二表示工程S60は、第一検出工程S10、第一画像生成工程S20及び第一表示工程S30の前に行われていてもよい。
【0046】
次いで、第一表示工程S30で抽出したマイクロエッジE
Mと、第二表示工程S60で抽出したナノエッジE
Nと、の差分を算出し、この差分が所定の範囲R内に収まるか否かを判定する(差分判定工程:S70)。差分判定工程S70において差分が所定の範囲R内にあると判定した場合には、マイクロ線源画像の補正を行わずに作業を終了する。一方、差分判定工程S70において差分が所定の範囲R内にないと判定した場合には、画像補正手段70Aを用いてマイクロ線源画像を補正し(画像補正工程:S80)、その後、その補正を、マイクロ線源画像の内部のサイノグラムにも適用することにより、精密な内外形の断面画像を取得する。
【0047】
以上説明した実施形態に係る画像取得装置1Aにおいても、第一実施形態に係る画像取得装置1と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、比較的小さい1〜800nmの焦点サイズを有するX線を用いて生成した測定対象物Oのナノ線源画像に基づいて、比較的大きい1μm〜1mmの焦点サイズを有するX線を用いて生成した測定対象物Oのマイクロ線源画像を補正することができる。ナノ線源40は、マイクロ線源10と比較すると透過能力が小さいため、測定対象物Oの内部撮影には向かないが、エッジが鮮明な透視画像を得ることができ、精度の高い外観形状のナノ線源画像を取得することができる。一方、マイクロ線源10は、ナノ線源40と比較すると透過能力が大きいため、測定対象物Oの内部撮影に向いている。精度の高い外観形状を有するナノ線源画像に基づいてマイクロ線源画像を補正し、この補正を内部のデータにも適用することにより、精度の高い内外輪郭を構築することができる。
【0048】
また、以上説明した実施形態に係る画像取得装置1Aにおいては、マイクロ線源10から照射されて所定の測定対象物Oを透過したX線と、ナノ線源40から照射されて測定対象物Oを透過したX線と、の双方を検出する検出器90を採用しているため、検出器を二つ用意する必要がない。このため、コストを削減することができる。
【0049】
<第三実施形態>
次に、
図11及び
図12を用いて、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態に係る画像取得装置1Bは、第一実施形態に係る画像取得装置1AのX線源、検出器及びステージの構成を変更したものであり、その他の構成については第二実施形態と実質的に同一である。このため、異なる構成を中心に説明することとし、第二実施形態と共通する構成については、第二実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0050】
本実施形態に係る画像取得装置1Bは、
図11及び
図12に示すように、マイクロ線源10Bと、ナノ線源40Bと、ステージ80Bと、検出器90Bと、マイクロ画像生成手段と、ナノ画像生成手段と、画像補正手段と、を備えるものである。マイクロ画像生成手段(第一画像生成手段)、ナノ画像生成手段(第二画像生成手段)及び画像補正手段は、第二実施形態と同一であるため、図示及び詳細な説明を省略する。
【0051】
本実施形態におけるマイクロ線源10B(第一X線源)及びナノ線源40B(第二X線源)は、第二実施形態と同様に、マイクロ線源10BによるX線の照射方向と、ナノ線源40によるX線の照射方向と、が平行となる(交差しない)ようにその向きが設定されている。但し、本実施形態においては、
図12に示すように、ナノ線源40Bがマイクロ線源10Bの鉛直方向下方に配置されている。そして、マイクロ線源10B及びナノ線源40Bは、図示されていない平行移動機構によって、上下方向(
図12に矢印で示す方向)に平行移動を行うように構成されている。平行移動機構は、ステージ80Bに載置された測定対象物Oに、マイクロ線源10BからのX線と、ナノ線源40BからのX線と、を別々に照射させるようにマイクロ線源10B及びナノ線源40Bを上下に移動させるものであり、本発明におけるX線源移動手段に相当する。
【0052】
本実施形態における検出器90B(第一検出器及び第二検出器)の基本的な機能は、第二実施形態と同様であり、マイクロ線源10Bから照射されて所定の測定対象物Oを透過したX線と、ナノ線源40Bから照射されて測定対象物Oを透過したX線と、の双方を検出する。本実施形態におけるステージ80B及び検出器90Bは、各々所定の位置に固定されて配置されている。
【0053】
以上説明した実施形態に係る画像取得装置1Bにおいても、第一及び第二実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、以上説明した実施形態に係る画像取得装置1Bにおいては、ステージ80B及び検出器90Bを左右(水平方向)に移動させる必要がないため、装置全体のサイズを小さくすることができるという利点がある。
【0054】
本発明は、以上の各実施形態に限定されるものではなく、これら実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。すなわち、前記各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前記各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。