(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のエチレン系重合体(α)について、具体的に説明する。
<エチレン系重合体(α)>
本発明のエチレン系重合体(α)は、エチレン単独重合体、またはエチレンと炭素数4以上10以下のα‐オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数6〜10のα‐オレフィンとの共重合体である。α‐オレフィンとして、炭素数4のα‐オレフィンを使用する場合には、炭素数6〜10のα‐オレフィンもあわせて使用することが好ましい。エチレンとの共重合に用いられる炭素数4〜10のα‐オレフィンとしては、1‐ブテン、1‐ヘキセン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐オクテン、1‐デセンなどが挙げられる。
【0027】
α‐オレフィンの炭素数が5個以下の場合、α‐オレフィンが結晶中にとり込まれる確率が高くなり(Polymer, vol. 31, 1999頁, 1990年参照)、その結果、得られる中空成形体の強度が弱くなる傾向にある。また、α‐オレフィンの炭素数が10個を超えると、側鎖(エチレンと共重合したα‐オレフィンに起因する分岐)が結晶化する場合があり、その結果として得られる中空成形体の非晶部が弱くなる傾向にある。
【0028】
α-オレフィンから導かれる構成単位は、全構成単位中、通常2.0mol%以下、好ましくは1.5mol%以下、より好ましくは1.30mol%以下含まれる。
なお、後述するように、エチレン系重合体を二段以上で連続的に重合する場合は、例えば一段目においてエチレンのみを単独重合し、二段目においてエチレンとα−オレフィンとを共重合してもよい。この場合、上記「全構成単位」とは、二段以上で連続的に重合し最終的に得られた重合体の全構成単位を意味する。
【0029】
本発明のエチレン系重合体(α)は、単峰性(モノモーダル)であってもよいし多峰性(マルチモーダル)であってもよいが、後述するように低分子量ポリマーと高分子量ポリマーを重合する多峰性であることが本発明で規定する各種パラメーター範囲を制御しやすいので好ましい。
【0030】
本発明のエチレン系重合体(α)は、下記要件[a]〜[d]を同時に満たすことを特徴としている。
なお、本発明のエチレン系重合体(α)は、下記要件[a]〜[d]を同時に満たす限り、単一のエチレン系重合体であっても二種以上のエチレン系重合体の混合物、あるいは組成物であってもよい。
【0031】
[a]温度190℃、荷重21.6kg下でのメルトフローレート(HLMI)が1.0〜10g/10分、好ましくは1.5〜7.0g/10分、より好ましくは1.5〜3.7g/10分の範囲にある。
【0032】
HLMIが1.0g/10分に満たない場合は、パリソンの押出成形時に押出機への負荷が大きくなり、十分に押出量が確保できず生産性が低下することがあり実用的でなく、10g/10分を超えると、溶融粘度や溶融張力不足が原因で溶融パリソン形成が不安定になることがあり、得られる中空成形体の衝撃強度が低下するので好ましくない。
【0033】
HLMIは主としてエチレン系重合体の分子量に依存しており、エチレン系重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、曽我和雄他編、「Catalytic Olefin Polymerization」、講談社サイエンティフィク、1990年、p.376)。このため、水素/エチレンを増減させることで、エチレン系重合体のHLMIを増減させることが可能である。
【0034】
[b]密度が945〜965kg/m
3、好ましくは948〜960kg/m
3、より好ましくは949〜959kg/m
3の範囲にある。
密度が945kg/m
3に満たないエチレン系重合体は、得られる中空成形体の剛性が不足したり、燃料タンクとして使用した場合に膨潤による剛性低下が起き易いので好ましくなく、一方、965kg/m
3を超えるエチレン系重合体は、得られる中空成形体が脆くなり耐衝撃性およびESCR特性等の長期疲労特性が発現しないので好ましくない。
【0035】
密度は主としてエチレン系重合体のα‐オレフィン含量に依存しており、α‐オレフィン含量が少ないほど密度は高く、α‐オレフィン含量が多いほど密度は低くなる。また、エチレン系重合体中のα-オレフィン含量は、重合系内におけるα‐オレフィンとエチレンとの組成比(α‐オレフィン/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、Walter Kaminsky, Makromol.Chem. 193, p.606(1992))。このため、α-オレフィン/エチレンを増減させることで、上記範囲の密度を有するエチレン系重合体(α)を製造することができる。
【0036】
[c]長さ5.0mm、直径0.5mmであるダイスを用い、210℃でのみかけの剪断速度19460s
- 1における圧力(σ,Pa)とHLMIとの関係が下記の不等式(Eq−1)を満たす。好ましくは下記不等式(Eq−1−2)、特に好ましくは下記不等式(Eq−1−3)を満たす。
log(σ)≧―0.12×log(HLMI)+7.65 ・・・(Eq−1)
log(σ)≧―0.12×log(HLMI)+7.66 ・・・(Eq−1−2)
log(σ)≧―0.12×log(HLMI)+7.68 ・・・(Eq−1−3)
【0037】
ダイス出口での高速流動場において、エチレン系重合体などの溶融樹脂の表面に発生するシャークスキン等の肌荒れの不安定現象は、高速大変形場での伸長流動特性に関係し、変形量が大きい領域でも伸長応力を保持できる系ほどシャークスキンが発生しにくい事が知られている。(例えば、T.I.Burghelea et al,/J.Non-Newtonian Fluid Mech.165(2010)1093-1104)。
【0038】
また、高速大変形場での伸長流動特性の評価方法として、以下の方法が知られている。
キャピラリーレオメーターでは、バレルからダイスに溶融樹脂が流入する際に発生する縮小流れにより流動方向に伸長流動が生じるが、高速大変形場ではこの伸長流動に対する抵抗力、即ち伸長粘度に基づく圧力損失が支配的となり、せん断流動により生じる圧力損失と比較して十分に大きくなる事が知られている(例えば、Cogswell,F.N. Polym.Eng.Sci.1972,12,64)。よって、ダイスの管径を小さくすることによりダイスへの流入部で高速大変形場を生成することができ、さらにダイスのランドを短くしてせん断圧損を小さくできるようなダイスを用いて、発生圧力を測定することで高速大変形場の伸長流動特性を評価することができる。
【0039】
一般に伸長流動特性を向上させるには、エチレン系重合体への長鎖分岐の導入および/あるいは高分子量成分の導入が有効である事が知られている。メタロセン触媒で調整されるモノモーダルなエチレン系重合体は分子量分布が狭い事が知られており、チーグラーナッタ触媒で調整されるモノモーダルなエチレン系重合体より高分子量成分が少なく(すなわちM
Z+1平均分子量が小さい)、伸長流動特性に劣る事が予想される。
【0040】
WO2008/087945号パンフレットに記載されているようにメタロセン触媒を使用してバイモーダルなポリエチレン系樹脂組成物を調整する事により、流動性と衝撃強度に優れるポリエチレンを調整する事が可能となる。しかしメタロセン触媒を使用したバイモーダルなポリエチレン系樹脂組成物の高分子量成分は、チーグラーナッタ触媒で調整されるバイモーダルなポリエチレンより少ない(すなわちM
Z+1平均分子量が小さい)為に伸長流動特性に劣る傾向があり、ブロー成形時のダイス出口での高速流動場でシャークスキンが発生しやすい傾向がある。メタロセン触媒を用いて、高分子量ポリマーの分子量をさらに高分子量化する事によっても伸長流動特性を向上させることができるが、ブロー成形時に低分子量ポリマー成分と高分子量ポリマー成分の分散不良による外観不良が発生しやすくなり、また、パリソン結合部のピンチオフ部(パリソンを金型で挟んだ融着部分)の形状および融着強度が劣るようになる。また、メタロセン触媒を使用してトリモーダル以上のマルチモーダルなポリエチレンを調整する事により、バイモーダルのポリエチレンから得られる高分子量ポリマーよりも更に分子量の高い高分子量ポリマーを導入する事が可能となり、更に分子量の高い高分子量成分(すなわちM
Z+1平均分子量が大きい成分)を有するポリエチレンを得られるが、重合装置の増加による設備投資の増大および更に分子量の高い高分子量ポリマーの分散性の観点から好ましくない。
【0041】
また、長鎖分岐の導入によっても伸長流動特性を向上することができるが、衝撃耐性および長期疲労特性の低下が発生しやすいので好ましくない。
本発明のエチレン系重合体(α)では、高分子量ポリマーを生成する事が可能である第4族遷移金属化合物からなるオレフィン重合用触媒(以下、説明では「A‐1」と呼ぶ場合がある)と、更なる高分子量ポリマーを生成する事が可能である第4族遷移金属化合物からなるオレフィン重合用触媒(以下、説明では「A‐2」と呼ぶ場合がある)との、少なくとも2種類の第4族遷移金属化合物からなるオレフィン重合用触媒の存在下でバイモーダル(二段重合)のエチレン系重合体を調整する事により、溶融時の変形量が大きい領域でも伸長応力を保持できるような伸長流動特性に優れるエチレン系重合体(α)を得る事が可能となり、中空成形時のダイス出口での高速流動場でパリソンの表面に発生するシャークスキンを抑制する事ができる。
【0042】
[d]JIS K7111に準拠して測定された−40℃でのシャルピー衝撃強さ(
kJ/m2)と、HLMIとの関係が下記の不等式(Eq−2)を満たす。好ましくは下記不等式(Eq−2−2)、より好ましくは下記不等式(Eq−2−3)と下記不等式(Eq−2−4)を同時に、特に好ましくは下記不等式(Eq−2−4)と下記不等式(Eq−2−5)を同時に満たす。
log(シャルピー衝撃
強さ)≧―1.1×log(HLMI)+2.16
・・・(Eq−2)
log(シャルピー衝撃
強さ)≧―1.1×log(HLMI)+2.19
・・・(Eq−2−2)
log(シャルピー衝撃
強さ)≧―1.1×log(HLMI)+2.20・・・(Eq−2−3)
log(シャルピー衝撃
強さ)≧1.6 ・・・(Eq−2−4)
log(シャルピー衝撃
強さ)≧―1.1×log(HLMI)+2.25・・・(Eq−2−5)
【0043】
シャルピー衝撃強さがこの範囲にあると、得られる中空成形体は、振動、落下、車両事故などが原因で発生する該中空成形体への衝撃、落下衝撃性にも十分に耐えられる。また、耐衝撃性を向上させるために容器肉厚を厚くすることは経済性を損なう。シャルピー衝撃強さは、エチレン系重合体の密度とHLMIによって調整することができ、密度を小さくするかHLMIを小さくすると、上記シャルピー衝撃強さを大きくすることができる。
【0044】
[e]230℃で測定されたスウェル比が、1.56以上である。
本発明のエチレン系重合体(α)のスウェル比は1.56以上、好ましくは1.60以上である。スウェルとは、ダイスから押出された樹脂溶融物がダイス出口のスリット幅及びクリアランスよりも寸法が大きくなる現象のことであり、スウェル比が小さいと、ブロー成形時においてパリソンなどの成形コントロールが難しく成形性が悪くなり好ましくなく、製品の肉厚調整のためには大きなスウェル比が要求される。スウェルは、更なる高分子量ポリマーを生成する事が可能である第4族遷移金属化合物(A‐2)からなるオレフィン重合用触媒から重合されるエチレン系重合体の、高分子量ポリマーの極限粘度[η]を大きくすることにより、上記スウェルを大きくすることができる。
【0045】
本発明のエチレン系重合体(α)は、前記要件[a]〜[e]に加えて下記要件[f]または[g]も同時に満たすことが好ましい。さらに要件[f]及び[g]も同時に満たすことがより好ましい。
【0046】
[f]ASTM D1693に準拠して測定された耐環境応力亀裂試験(ESCR試験;試験温度65℃,試験片厚み3mmt)において、50%亀裂発生時間(F
50)が300時間以上、好ましくは400時間以上、より好ましくは500時間以上である。F
50が300時間未満では、耐環境応力亀裂性に劣り、環境応力亀裂による容器の破壊が発生し、内溶液が漏洩するおそれがある。ESCR試験のF
50は、エチレン系重合体の高分子量ポリマーの分子量と密度と配合量によって調整することができ、高分子量ポリマーの分子量を大きくするか密度を小さくするか割合を増量すると、上記F
50を向上させることができる。
【0047】
[g]JIS K7115に準拠して測定された引張クリープ試験(試験温度80℃)において、試験応力が6MPaのとき、100時間経過後のクリープ歪みが15%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは9.5%以下、特に好ましくは9.0%以下である。
【0048】
クリープ歪みが上記範囲にあると、特に高温下でのクリープ変形性に優れる、すなわち、中空成形体を燃料タンク等で実使用時に想定される高温領域において、従来の材料よりも熱変形性に優れるため、中空成形体の厚さを薄くすることが可能となる。クリープ歪みは、エチレン系重合体の密度とHLMIによって調整することができ、密度を大きくするかHLMIを小さくすると、上記クリープ歪を小さくすることができる。
本発明のエチレン系重合体(α)は、前記要件[a]〜[g]に加えて下記要件[h]を満たすことが好ましい。
【0049】
[h]ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定で求められるMw/MnおよびMz
+1/Mwとの関係が下記不等式(Eq−3−1)と下記不等式(Eq−3−2)を同時に満たす。好ましくは下記不等式(Eq−3−2)と下記不等式(Eq−3−3)を同時に、特に好ましくは下記不等式(Eq−3−4)と下記不等式(Eq−3−5)を同時に満たす。
4.0≦(Mw/Mn)≦22.0・・・(Eq−3−1)
(Mz
+1/Mw)≧16.0 ・・・(Eq−3−2)
6.0≦(Mw/Mn)≦21.0・・・(Eq−3−3)
8.0≦(Mw/Mn)≦20.0・・・(Eq−3−4)
(Mz
+1/Mw)≧17.0・・・(Eq−3−5)
【0050】
Mw/Mnが4.0より小さいエチレン系重合体は、成型加工時の押出し負荷が高くなりすぎて加工性に問題が生じ、中空成形時にパリソンが不安定化するなど好ましくない。
Mw/Mnが22.0より大きいエチレン系重合体は、低分子量ポリマーと高分子量ポリマーの分散不良によるブロー成形時の外観不良が発生しやすくなり、また、極限粘度[η]が5.0以下のエチレン系重合体では低分子量成分が増えすぎる為に得られる中空成形体は耐衝撃性が発現しないので好ましくない。また、パリソン結合部のピンチオフ部(パリソンを金型で挟んだ融着部分)の形状および融着強度が劣るようになり、落下強度が低下することがあるので好ましくない。
【0051】
Mz
+1/Mwは高分子量成分の分子量分布を示すもので、Mz/Mwより更に分子量が高い成分の分子量分布を表している。Mw/Mnに対してMz
+1/Mwが大きいことは高分子量成分の分子量分布が広くなり、非常に高い分子量成分が存在して、さらに成分割合が高いことを意味する。
【0052】
Mz
+1/Mwが16.0より大きいエチレン系重合体は、当該エチレン系重合体に含まれる非常に分子量が高い成分により伸長流動特性に優れる結果、ダイス出口での高速流動場で溶融樹脂が安定するので、ダイス出口での成形時の肌荒れを防止する事ができる。
【0053】
本発明のエチレン系重合体(α)のMz
+1/Mwの上限は特に制限はないが、好ましくはMz
+1/Mwは70.0以下、特に好ましくは50.0以下が好ましい。Mz
+1/Mwが大きすぎると非常に分子量が高い成分がブツとなり分散不良となるおそれが発生し、またダイス内の壁面でせん断応力が高くなりダイス内部での肌荒れが発生するおそれがある。
【0054】
本発明のエチレン系重合体(α)は前記要件[a]〜[g]を満たすことに加えて、極限粘度[η]が2.5〜6.0(dl/g)、好ましくは3.0〜5.0(dl/g)をも充足していることがとりわけ好ましい態様である。極限粘度がこの範囲にあるエチレン系重合体は、流動性と剛性と低温耐衝撃性に極めて優れた特性を示す。
【0055】
<エチレン系重合体(α)の製造方法>
本発明のエチレン系重合体(α)は、オレフィン重合触媒、たとえば、
(A−1)下記一般式[I]で表される周期律表第4族の遷移金属化合物(以下説明では「A−1」と呼ぶ場合がある)と、
(A−2)下記一般式[III]で表される周期律表第4族の遷移金属化合物(以下説明では「A−2」と呼ぶ場合がある)と
(B)(B-1) 有機金属化合物、
(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および
(B-3) 遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下説明では「共触媒」と呼ぶ場合がある。)と必要に応じて用いられる
(C)担体
とから形成されるオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンを単独重合させるか、またはエチレンと前記した炭素原子数6〜10のα-オレフィンとを共重合させることによって好適に製造することができる。
【0056】
以下、各成分(A−1)、(A−2)、(B)および(C)について詳説する。
(A−1)
遷移金属化合物
遷移金属化合物(A−1)は、以下に記載する一般式[I]で表される化合物である。
【0057】
【化1】
上記一般式[I]において、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19およびR
20は、それぞれ水素原子、炭化水素基、であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R
7〜R
18までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、R
19およびR
20は不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基であり、Mは周期律表第4族から選ばれた金属であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選ばれ、jは1〜4の整数である。
【0058】
上記一般式[I]で表される遷移金属化合物(A−1)の中で、好んで用いられる化合物は、R
7〜R
10が水素原子であり、Yが炭素原子であり、Mがジルコニウム原子であり、jが2の化合物である。
【0059】
また、上記一般式[I]で表される遷移金属化合物(A−1)の中で、共有結合架橋部の架橋原子Yは、相互に同一でも異なっていてもよいアリール(aryl)基を有する(すなわち、R
19とR
20が相互に同一でも異なっていてもよいアリール基である)ことが好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基および、これらの芳香族水素(sp2型水素)の一つ以上が置換基で置換された基を例示することができる。なお置換基としては、総炭素数1から20の炭化水素基(f1)が挙げられる。このような基(f1)としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、アリル(allyl)基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基などの直鎖状炭化水素基; イソプロピル基、tert-ブチル基、アミル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-プロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基; シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基; フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基およびこれらの核アルキル置換体; ベンジル基、クミル基などのアリール基の置換した飽和炭化水素基; メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、N-メチルアミノ基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基などのヘテロ原子含有炭化水素基を挙げることができる。
【0060】
本発明においては、炭化水素基(f1)が環状飽和炭化水素基、核アルキル置換体であることが好ましく、さらに好ましい具体的な例として化合物[II]で表されるメタロセン化合物を挙げることができる。
【0061】
【化2】
なお、上記式[II]で表わされる遷移金属化合物は、270MHz
1H-NMR(日本電子 GSH-270)およびFD-質量分析(日本電子SX-102A)などを用いて同定することができる。
【0062】
(A−2)
遷移金属化合物
遷移金属化合物(A−2)は、以下に記載する一般式[III]で表される化合物である。
本発明のポリエチレン系重合体(α)は、上記式[I]に示される遷移金属化合物とともに以下の遷移金属化合物[III]を用いることで製造することが出来る。特に遷移金属化合物[II]の遷移金属化合物とともに、用いることが好ましい。
【0063】
本発明で用いられる成分(A−2)の遷移金属化合物は、下記一般式[III]で示される周期律表第4族の遷移金属化合物である。下記一般式[III]で示される周期表第4族の遷移金属化合物について詳細に説明する。
【0064】
【化3】
〔一般式[III]中、Mは周期律表第4族遷移金属原子を示し、mは、1〜4の整数を示し、R
1〜R
5は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上の場合にはR
1〜R
5で示される基のうち少なくとも2個の基が連結されていてもよく、R
6は、下記一般式[IV]で表される基であり、jは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、jが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。〕
【0065】
なお、上記一般式 [III]中、N・・・・・Mは、一般的には配位していることを示すが、本発明においては配位していてもしていなくてもよい。
一般式[I]中、Mは具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。
mは、好ましくは2である。
【0066】
一般式[III]において、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示すが、中でも、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ケイ素含有基であることが好ましい。
【0067】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、塩素が最も好ましく用いられる。
一般式[III]において、R
1〜R
5としては、R
1〜R
5は、水素原子、炭化水素基、示し、互いに同一でも異なっていてもよく、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、mが2以上の場合にはR
1〜R
5で示される基のうち少なくとも2個の基が連結されていてもよい。また、R
1〜R
5は、互いに同一でも異なっていてもよく、R
1〜R
5で示される基のうち少なくとも2個の基が連結されていてもよい。なかでも、水素原子、炭化水素基が特に好ましい。
【0068】
炭化水素基は具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、アダマンチル基等の炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状、環状のアルキル基であり、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基等の炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基が置換されていても良い。なかでも、R
2またはR
3がメチル基、エチル基、置換基を有していても良いフェニル基であることが、R
5が、t-ブチル基、アダマンチル基、ジメチルフェニル基、メチルジフェニル基であることが、発明の重合体を得ることができる観点から好ましい。
【0069】
一般式[III]においては、R
6は、[IV](ただし、黒丸(●)は窒素原子との結合点を表す)で表される基である。
【0070】
【化4】
一般式[IV]中、R
13は、炭素数3以上8以下の二価の飽和炭化水素基であり、例えば、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンなどが挙げられ、好ましくは炭素数4以上6以下の二価の飽和炭化水素基(例えば、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン)であり、特に好ましくは炭素数4の二価の飽和炭化水素基(例えば、テトラメチレン)である。
【0071】
一般式[IV]中、R
12およびR
14は、ハロゲン原子、C1〜C20の炭化水素基を示し分岐をしていても環状であっても良く、互いに同一でも異なっていてもよい。炭化水素は、前記R
1〜R
5で例示した基と同様の基が挙げられ、脂肪族であっても芳香族であってその例として挙げることができるが、本願の特徴ある重合体を得るためには脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。R
12は、式[IV]が窒素と結合している炭素のα位に位置することが本願のエチレン重合体を得る点で好ましい。
【0072】
これらのうち、特に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基等の炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基等の炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基等の置換基が1〜5個置換した置換アリール基等が好ましい。
【0073】
nは、0またはR
13の炭素数の2倍以下の整数であり、nが2以上の整数の場合は複数のR
14は、互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式[IV]中、黒丸(●)は窒素原子との結合点を表す。
一般式[III]中、jは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。
【0074】
一般式[III]中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、jが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
以上の点より、本願のエチレン重合体を得るのに最も好ましい化合物を以下に列挙する。
【0075】
【化5】
前記第4族遷移金属化合物の具体的な例においてt−Buはtert−ブチル基を表し、Phはフェニル基を表し、Meはメチル基を表し、Admは1−アダマンチル基を示す。
【0076】
本発明では、これらの化合物において、ジルコニウムをチタン、ハフニウム等のジルコニウム以外の周期律表第4族遷移金属に置き換えた遷移金属化合物を用いることもできる。
【0077】
このような遷移金属化合物(A−2)の製造方法は、特に限定されることなく、たとえば本出願人による特開平11−315109号公報やEP0874005A1に記載の方法によって製造することができる。
【0078】
本発明において、前記式[III]で表される遷移金属化合物(A−2)は、式[IV]中のR
12に置換基が存在するため、式 [III]のR
6で表される置換基の回転が抑えられ、遷移金属近傍の反応場が狭くなり、モノマーやAlへの連鎖移動が起こりにくくなるため、分子量が伸び、高分子量のオレフィン系重合体が得られると考えられる。上記効果の一方で反応場が狭くなりすぎると活性が低下するおそれが考えられることから、式[IV]中のR
12の置換基としては、炭化水素基、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、より好ましくはメチル基が挙げられる。
なお、一般式(IV)の成分は異なる2種以上の化合物を使用することができる。
【0079】
(B)
共触媒
〔(B-1) 有機金属化合物〕
(B-1)有機金属化合物として、具体的には下記のような周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が挙げられる。
【0080】
一般式 R
amAl(OR
b)
nH
pX
q
(式中、R
aおよびR
bは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物である。
後述する実施例において用いたアルミニウム化合物はトリイソブチルアルミニウム、またはトリエチルアルミニウムである。
【0081】
〔(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物〕
本発明で必要に応じて用いられる(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
後述する実施例において使用した有機アルミニウムオキシ化合物は市販されている日本アルキルアルミ株式会社製のMAO(=メチルアルモキサン)/トルエン溶液である。
【0082】
〔(B-3) 遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物〕
本発明で用いられる、遷移金属化合物(A−1)および遷移金属化合物(A−2)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3) (以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特開平1-501950号公報、特開平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、US5321106号公報などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。このようなイオン化イオン性化合物(B-3)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
なお、非限定的な(B)成分としては、後述する実施例では上記(B-1)および(B-2)を併用している。
【0083】
(C)
微粒子状担体
本発明で必要に応じて用いられる(C)微粒子状担体は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が1〜300μm、好ましくは3〜200μmであって、比表面積が50〜1000(m
2/g)、好ましくは100〜800(m
2/g)の範囲にあり、細孔容積が0.3〜3.0(cm
3/g)の範囲にあることが望ましい。このような担体は、必要に応じて80〜1000℃、好ましくは100〜800℃で焼成して使用される。
【0084】
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、前記した遷移金属化合物(A−1)および遷移金属化合物(A−2)と、(B-1) 有機金属化合物、(B-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および(B-3) イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)と、必要に応じて用いられる微粒子状担体(C)と共に、必要に応じて後述するような特定の有機化合物成分(D)を含むこともできる。
【0085】
(D)
有機化合物成分
本発明において、(D)有機化合物成分は、必要に応じて、重合性能および生成ポリマーの物性を向上させる目的で使用される。このような有機化合物としては、アルコール類、フェノール性化合物、カルボン酸、リン化合物およびスルホン酸塩等が挙げられる。
【0086】
本発明に係るエチレン系重合体は、上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、既述のようにエチレンを単独重合させるか、エチレンと炭素原子数6〜10のα-オレフィンとを共重合させるか、あるいは前記単独重合と前記共重合を任意の順番で連続的に実施する等の方法により得られる。
【0087】
重合の際には、各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法、(P1)〜(P10)が例示される。
(P1)成分(A−1)および(A−2)と、(B-1)有機金属化合物、(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物および(B-3) イオン化イオン性化合物から選ばれる少なくとも1種の成分(B)(以下単に「成分(B)」という。)を任意の順序で重合器に添加する方法。
【0088】
(P2)成分(A−1)および(A−2)と成分(B)とを予め接触させた触媒を重合器に添加する方法。
(P3)成分(A−1)および(A−2)と成分(B)とを予め接触させた触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0089】
(P4)成分(A−1)および(A−2)を微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(P5)成分(A−1)および(A−2)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒成分を、重合器に添加する方法。
【0090】
(P6)成分(A−1)および(A−2)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0091】
(P7)成分(B)を微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、および成分(A−1)および(A−2)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(P8)成分(B)を微粒子状担体(C)に担持した触媒成分、成分(A−1)および(A−2)、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0092】
(P9)成分(A−1)および(A−2)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒成分と、成分(B)とを予め接触させた触媒成分を、重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0093】
(P10)成分(A−1)および(A−2)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒成分と、成分(B)とを予め接触させた触媒成分、および成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法。この場合各々の成分(B)は、同一でも異なっていてもよい。
【0094】
上記の(P1)〜(P10)の各方法においては、各触媒成分の少なくとも二つ以上は予め接触されていてもよい。
上記の微粒子状担体(C)に、成分(A−1)および(A−2)および成分(B)が担持された固体触媒成分を利用する方法、すなわち(P5)、(P6)、(P9)および(P10)においてはオレフィンが予備重合されていてもよい。この予備重合された固体触媒成分は、通常固体触媒成分1g当たり、ポリオレフィンが0.1〜1000g、好ましくは0.3〜500g、特に好ましくは1〜200gの割合で予備重合されて構成されている。予備重合に供されるオレフィンとしてはエチレンまたは前記した炭素数6〜10のα−オレフィンを例示でき、これらの中ではエチレンが好んで用いられる。本発明においては、通常微粒子状担体(C)を用いる方法によってエチレン系重合体が調製され、好ましくは成分(A−1)および(A−2)と成分(B)とを微粒子状担体(C)に担持した触媒成分にエチレンが予備重合された触媒成分と、成分(B)を任意の順序で重合器に添加する方法が採用される。
【0095】
また、重合を円滑に進行させる目的で、帯電防止剤やアンチファウリング剤などを併用したり、担体上に担持しても良い。
重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できるが、生産性の視点から懸濁重合および気相重合法が好んで採用される。
【0096】
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、又オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。後述する実施例においては不活性炭化水素媒体としてヘキサンを用いる懸濁重合法が非限定例として用いられた。
【0097】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、(共)重合を行うに際して、成分(A−1)および(A−2)は、反応容積1リットル当り、通常10
-12〜10
-2モル、好ましくは10
-10〜10
-3モルになるような量で用いられる。
【0098】
必要に応じて用いられる成分(B-1)は、成分(B-1)と、成分(A−1)および(A−2)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(B-1)/M]が、通常0.01〜100,000、好ましくは0.05〜50,000となるような量で用いられる。
【0099】
必要に応じて用いられる成分(B-2)は、成分(B-2)中のアルミニウム原子と、成分(A−1)および(A−2)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(B-2)/M]が、通常10〜500,000、好ましくは20〜100,000となるような量で用いられる。
【0100】
必要に応じて用いられる成分(B-3)は、成分(B-3)と、成分(A−1)および(A−2)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(B-3)/M]が、通常1〜100、好ましくは2〜80となるような量で用いられる。
【0101】
必要に応じて用いられる成分(D)は、成分(B)が成分(B-1)の場合には、モル比[(D)/(B-1)]が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で、成分(B)が成分(B-2)の場合には、モル比[(D)/(B-2)]が通常0.001〜2、好ましくは0.005〜1となるような量で、成分(B)が成分(B-3)の場合には、モル比[(D)/(B-3)]が通常0.01〜10、好ましくは0.1〜5となるような量で用いられる。
【0102】
重合温度は、通常-50〜+250℃、好ましくは0〜200℃、特に好ましくは60〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧〜100(kg/cm
2)、好ましくは常圧〜50(kg/cm
2)の条件下であり、重合反応は、回分式(バッチ式)、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。重合は、通常気相または重合粒子が溶媒中に析出しているスラリー相で行う。また、スラリー重合または気相重合の場合、重合温度は好ましくは60〜90℃、より好ましくは65〜85℃である。この温度範囲で重合することで、より組成分布が狭いエチレン系重合体が得られる。
【0103】
本発明のエチレン系重合体(α)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における溶出曲線が単峰性であってもよいし多峰性であってもよい。しかし、本発明に係る前記要件[a]〜[g]のクレーム範囲内で各要件の数値をチューニングさせることが容易であるという観点から多峰性のエチレン系重合体が好ましい。
【0104】
多峰性エチレン系重合体は、異なる重合器で二種以上の重合体を別個に製造したのち、これら複数重合体を本発明のエチレン系重合体(α)が満たすべき前記要件を充足するようにブレンドして調製しても良いし、同一の重合器で一段目の重合を行なった後に二段目の重合を行ない調整しても良いし、反応条件の異なる二段以上の直列配置型の重合器を用いて連続的に調製しても良い。
【0105】
本発明のエチレン系重合体(α)を例えば同一の重合器を用いて二段階で調整する場合や反応条件の異なる二段以上の直列配置型の重合器を用いて二段階で調製する場合、一段目の重合器で極限粘度が0.6〜2.0(dl/g)、好ましくは0.9〜1.9(dl/g)のエチレン単独重合体を、全体量の50〜75重量%、好ましくは55〜70重量%製造し、二段目の重合器で極限粘度が5.5〜15(dl/g)、好ましくは6.5〜13(dl/g)のエチレン共重合体を、全体量の25〜50重量%、好ましくは30〜45重量%製造する。なお、エチレン単独重合体とエチレン共重合体を製造する順番は逆でもよいが、本発明の中空成形体用エチレン系樹脂組成物が満たすべき前記要件を制御し易いという点でエチレン単独重合体を先に製造する処方が好んで採用される。
【0106】
前記遷移金属化合物(A−2)により二段目の重合器で重合されるエチレン共重合体の高分子量ポリマーの極限粘度は、10〜40(dl/g)、好ましくは10〜30(dl/g)、とくに好ましくは13〜25(dl/g)であり、前記遷移金属化合物(A−2)により二段目の重合器で重合されるエチレン共重合体の高分子量ポリマーの重合量は、全体量の3〜15重量%、好ましくは4〜10重量%である。
【0107】
前記遷移金属化合物(A−1)により二段目の重合器で重合されるエチレン共重合体の高分子量ポリマーの極限粘度は、4〜9.5(dl/g)、好ましくは6〜9.5(dl/g)である。
【0108】
前記遷移金属化合物(A−2)の二段目の重合器で重合されるエチレン共重合体の高分子量ポリマーの極限粘度および重合量、および前記遷移金属化合物(A−1)により二段目の重合器で重合されるエチレン共重合体の高分子量ポリマーの極限粘度が上記範囲にあると、伸長流動特性に優れ、スウェルが大きく、分散不良の発生を抑制し、パリソン結合部のピンチオフ部が良好となる。
【0109】
前記遷移金属化合物(A−1)および前記遷移金属化合物(A−2)の二段目の重合器で重合されるエチレン共重合体の重合量比は、各メタロセン化合物を単独で重合した際の二段目の高分子量ポリマーの重合活性比により決定される。なお、二段目の高分子量ポリマーの重合量は、各遷移金属化合物の単独重合活性(二段目)を遷移金属化合物(A−1)がδ、遷移金属化合物(A−2)がε(二段目)としたときに、((A−1)成分の二段目の重合量:重量%)=(二段目の重合量:重量%)
(エチレン系組成物)×δ/(δ+ε),および((A−2)成分の二段目の重合量:重量%)=(二段目の重合量:重量%)
(エチレン系組成物)×ε/(δ+ε)の関係より算出する事が出来る。ただし、二段目の単独重合活性は一段目の履歴を受けた重合活性とする。
【0110】
前記遷移金属化合物(A−1)および前記遷移金属化合物(A−2)の二段目の重合器で重合されるエチレン共重合体の高分子量ポリマーの極限粘度は、各メタロセン化合物を単独で重合した際の二段目の高分子量ポリマーの極限粘度により決定される。なお、二段目の極限粘度は、[η]
(エチレン系組成物)=([η]
(一段目の組成物)×(一段目の重合量:重量%)+[η]
(二段目の組成物)×(二段目の重合量:重量%))/100の関係より換算する事が出来る。
【0111】
微粒子状担体(C)を用いる好ましい調製方法においては、得られる重合体は、通常数十〜数千μmφ程度の粒子状である。重合器が二つ以上からなる連続式で重合した場合には、良溶媒に溶解後に貧溶媒に析出させる、あるいは特定の混練機で十分に溶融混練するなどの操作が必要となる場合がある。
【0112】
得られるエチレン系重合体粒子の分子量は、重合系に水素分子を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する成分(B)の違いにより調節することもできる。
【0113】
重合反応により得られた重合体粒子は、通常以下の方法によりペレット化される。
(1)エチレン系重合体粒子および所望により添加される他の成分を、押出機、ニーダー等を用いて機械的にブレンドして、所定の大きさにカットする方法。
【0114】
(2)エチレン系重合体粒子および所望により添加される他の成分を適当な良溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の炭化水素溶媒)に溶解し、次いで溶媒を除去、しかる後に押出機、ニーダー等を用いて機械的にブレンドして、所定の大きさにカットする方法。
【0115】
なお、本発明のエチレン系重合体(α)が、2種以上のエチレン系重合体からなるときは、上記(1)または(2)において、エチレン系重合体として2種以上のエチレン系重合体を混合して用いればよい。
【0116】
本発明のエチレン系重合体(α)は、後述する中空体成形用として特に好ましい。
本発明のエチレン系重合体(α)には、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、核剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤などの添加剤やカーボンブラック、酸化チタン、チタンイエロー、フタロシアニン、イソインドリノン、キナクリドン化合物、縮合アゾ化合物、群青、コバルトブルー等の顔料が必要に応じて配合されていてもよい。
【0117】
<中空成形体>
本発明の中空成形体は、上記本発明のエチレン系重合体(α)からなり、中空成形体としての好ましい態様は燃料タンク、ドラム缶、農薬用容器、IBC、コンテナである。
【0118】
本発明の中空成形体は、上記本発明のエチレン系重合体(α)からなる層を含む中空成形体である。すなわち、本発明の中空成形体は、単層容器のように単層で形成されていてもよいし、また多層容器のように二層以上の多層で形成されていてもよく、その肉厚は用途に応じて100μm〜5mmの範囲で任意に変更することができる。
【0119】
たとえば多層容器が二層で形成されている場合、第一の層が前記した上記本発明のエチレン系重合体(α)で形成され、他の層が、第一の層を形成する上記本発明のエチレン系重合体(α)とは異なる重合体で形成されるか、あるいは、上記本発明のエチレン系重合体(α)であって、第一の層で使用したエチレン系重合体(α)とは異なる物性を有するエチレン系重合体(α)で形成することもできる。
【0120】
上記した「異なる重合体」としては、たとえばポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロンなど)、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、変性ポリオレフィンなどを挙げることができる。これらのうちで、好ましくは、ポリエチレンでは発現しないガスバリヤー機能を備えたエチレン・ビニルアルコール共重合体とポリアミド樹脂が用いられる。その際、層間接着強度を高めるために、ガスバリヤー性樹脂であるエチレン・ビニルアルコール共重合体やポリアミド樹脂等の層が、接着性樹脂の層を介して、前記したポリエチレン樹脂層と積層一体化した配置構成が好ましく、それによって耐衝撃性、およびガスバリヤー性に優れた容器を製造することができる。接着性樹脂としては、接着性ポリオレフィン樹脂が好ましく、例えば、カルボン酸グラフト変性ポリオレフィンやエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の金属イオン架橋物を使用することができる。
【0121】
本発明の中空成形体の好ましい態様は燃料タンク、ドラム缶、農薬用容器である。
本発明の燃料タンクおよび農薬用容器の、より好ましい態様は、内側から外側に向かって、本発明のエチレン系重合体(α)層(I)/接着層(IV)/前記バリア層(II)/再生層(III)からなる積層構造体を含む燃料タンクおよび農薬用容器である。
【0122】
また、本発明の燃料タンクおよび農薬用容器は、上記エチレン系重合体(α)層(I)とバリア層(II)とが接着層(IV)を介して積層されていることが好ましく、再生層(III)とバリア層(II)とが接着層を介して積層されていることも好ましい。
【0123】
すなわち、本発明の燃料タンクおよび農薬用容器は、より好ましくは、エチレン系重合体(α)層(I)/接着層(IV)/バリア層(II)/接着層(IV)/再生層(III)/エチレン系重合体(α)層(I)からなる積層構造体である。なお、再生層は粉砕再生層として知られており、好ましくは、中空プラスチック製品の製造過程で材料残渣の形態で発生する、いわゆるバリから製造されることが好ましい。
【0124】
本発明の中空成形体は、従来公知の中空成形(ブロー成形)法により調製される。ブロー成形法には各種方法があり、押出ブロー成形法、二段ブロー成形法、射出成形法に大別される。本発明においては、特に押出ブロー成形法および射出成形法が好ましく採用される。
【実施例】
【0125】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[エチレン系重合体(α)の測定]
エチレン系重合体およびエチレン系重合体(α)の物性の測定方法を以下に示す。
【0126】
<メルトフローレート(MFR)>
JIS K7210(1999)に準拠し、190℃、2.16kg荷重および190℃、21.6kg荷重の条件下で測定した。
【0127】
<密度(d)>
JIS K7112(1999)に準拠し、MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定した。
【0128】
<溶融張力(MT)>
190℃における溶融張力(MT)(単位;g)は、一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定した。測定には東洋精機製作所社製キャピラリーレオメーター:キャピログラフ1Bを用いた。条件は樹脂温度190℃、溶融時間6分、バレル径9.55mmφ、押し出し速度15mm/分、巻取り速度7.85m/分、ダイス径2.095mmφ、ダイス長さ8mmとした。この値が大きいほど、中空成形時のドローダウンが抑制され、成形性がよいといえる。
【0129】
<極限粘度[η]>
測定サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度η
spを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度η
spを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、下記式(Eq-6A)に示すように濃度(C)を0に外挿した時のη
sp/Cの値を極限粘度[η](単位;dl/g)として求めた。
[η]=lim(η
sp/C) (C→0) --------(Eq-6A)
【0130】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、Z+1平均分子量(Mz+1)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mw、Mz+1/Mw)>
分子量分布曲線は、ウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフ alliance GPC2000型(高温サイズ排除クロマトグラフ)を用い、以下のように測定した。
解析ソフト:クロマトグラフィデータシステムEmpower2(Waters社)
カラム:TSKgel GMH
6− HT×2+TSKgel GMH
6−HTL×2(内径7.5mm×長さ30cm,東ソー社)
移動相:o−ジクロロベンゼン(和光純薬 特級試薬)
検出器:示差屈折計(装置内蔵)
カラム温度:140℃
流速:1.0mL/分
注入量:500μL
サンプリング時間間隔:1秒
試料濃度:0.15%(w/v)
分子量較正:単分散ポリスチレン(東ソー社)/分子量495〜2060万
【0131】
Z. Crubisic, P. Rempp, H. Benoit, J. Polym. Sci.,
B5, 753 (1967)に記載された汎用較正の手順に従い、ユニバーサル校正を実施し、標準ポリエチレン分子量換算として、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、Z+1平均分子量(Mz+1)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mw、Mz+1/Mw)を求めた。
【0132】
<210℃でのせん断圧力(σ)>
210℃における見かけのせん断圧力(σ)(単位;Pa)は、一定速度で押出したときの圧力を測定することにより決定した。測定には東洋精機製作所社製キャピラリーレオメーター:キャピログラフ1Bを用いた。条件は樹脂温度210℃、バレル径9.55mmφ、押し出し速度200mm/分(見かけのせん断速度19460s
- 1)、細管の長さLは5.0mmφ、直径は0.5mmのダイスを用いて測定した。
この値が大きいほど伸長流動特性に優れるといえる。
【0133】
<スウェル比>
230℃におけるスウェル比は、東洋精機製作所社製キャピラリーレオメーターにて評価した。
バレル径9.55mm、細管の長さLは3.0mmとし、直径を0.5mmとし、流入角が90°のダイスを用いて測定した。
【0134】
シリンダー温度230℃、ピストンの降下速度1mm/分,2mm/分,5mm/分に設定して試料を押出し、ピストンの降下速度2mm/分の際の、ノズル出口より17mm下方のストランド径( D i ) をレーザー光線により測定した。このようにして測定したストランド径( D i ) とノズル径( D 0 ) との比( スウェル比=D i / D 0 ) を求めた。
【0135】
[エチレン系重合体(α)の成形方法、中空体の物性測定]
<中空成形条件>
日本製鋼所(株)社製のNB−30中空成形機を用いて、アキュムレーター式で中空容器の成形を行い、外観の評価を行った。シリンダー設定温度:210℃,ダイ設定温度:210℃,金型温度:20℃,射出速度:0.1625kg/s,ダイ径:132mm,ダイギャップ:5.25mmとしてパリソンを射出したのちにパリソンを切り開き、パリソンの内面と外面の外観評価を行なった。
また、20L握手付角型工薬缶(ホ゛トル重量1000g)が成形されるように、ダイコアのギャップをサンプルに応じて変化させ成形したボトルのピンチ形状の確認を行なった。
【0136】
<製品肌・ピンチ形状>
パリソンの外観およびボトルのピンチ形状を目視にて確認し、
a)パリソンにシャークスキンやブツがなく外観に優れ、ピンチ形状が良好であるものを○
b)パリソンにシャークスキンはないが、ブツあるいはピンチ形状が不良であるものを△
c)パリソンにシャークスキンが発生するものを×
とした。
【0137】
[実施例1]
[合成例1]
[固体状担体(X‐1)の調製]
200℃で3時間乾燥したシリカ(平均粒径=3.8μm、比表面積=804m
2/g、細孔容積=0.87mL/g)5gを274ミリリットルのトルエンで懸濁状にした後、メチルアルミノキサン溶液(Al=3.03モル/リットル)33.0ミリリットルを30分かけて滴下した。次いで1.5時間かけて100℃まで昇温し、その温度で4時間反応させた。その後60℃まで降温し、上澄み液をデカンテーション法によって除去した。得られた固体触媒成分をトルエンで3回洗浄した後、トルエンで再懸濁化して固体触媒成分(X‐1)を得た(全容積257ミリリットル)。
【0138】
[合成例2]
[メタロセン化合物の担持による固体触媒成分(Y‐1)の調製]
磁気攪拌子を備え、充分に窒素置換した500mLガラス容器に脱水トルエン149.7mLを装入し、上記で調製した固体状担体(X‐1)のトルエンスラリーを54.28mL(Al原子換算で21.12mmol)装入した。次いで、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド(A‐1)で表される遷移金属錯体のトルエン溶液17.60mL(Zr原子換算で0.047mmol)を滴下装入し、15分後、A−2で表される遷移金属錯体のトルエン溶液28.41mL(Zr原子換算で0.026mmol)を滴下装入し、室温で1時間反応させ、オレフィン重合用触媒(Y-1)を得た。
【0139】
【化6】
【0140】
【化7】
【0141】
<エチレン系重合体(α−1)>
充分に窒素置換した内容積500リットルの重合槽に精製ヘプタン250Lを入れ、ここに、トリイソブチルアルミニウム89mmol、オレフィン重合用触媒(Y-1)を固体成分換算で2.38g加えた。80℃に昇温して1度脱圧した後、0.65MPa・Gとなるようにエチレン/水素混合ガス(気相部の濃度:水素/エチレン=0.100(mol/mol))を連続的に供給し、1.9時間重合を行った。重合後、脱圧し、窒素置換を行い用いたエチレン/水素混合ガスを除去した。得られた重合体は、密度が963(kg/m
3)、[η]が1.76(dl/g)、MFRが2.01g/10minであり、重合体の重合量は23.7kgであった。
【0142】
この重合槽にトリイソブチルアルミニウム60mmol、1−ヘキセン194mlを挿入し、75℃に昇温して1度脱圧した後、0.30MPa・Gとなるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給し(気相部の濃度:水素/エチレン=0.0091(mol/mol))、2.1時間重合を行った。
【0143】
重合槽にメタノール添加し反応を停止させ、冷却および残留ガスをパージした。得られたエチレン重合体(PE)のスラリーをろ過した。エチレン重合体を80℃で10時間、減圧乾燥を行った。得られたエチレン重合体は36.4kgであり、重合活性は124.7kg‐PE/mmol−Zr・hr、生産性は3860g−PE/g−cat.・hrであった。エチレン重合体の分析の結果、嵩密度は0.479g/cm
3、ポリマー密度=952g/cm
3、極限粘度[η]は3.99dL/gのパウダーを得た。同様の操作を3回実施した。
【0144】
該パウダー100重量部に対して、耐熱安定剤としてIrganox1010(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppm、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppmステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)1500ppm配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28、スクリーンメッシュ40/60/100/60/40)を用い、設定温度240℃、樹脂押出量25(kg/hr)の条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてエチレン系重合体(α−1)のペレットを得た。得られたペレットを測定用試料として物性測定を行った結果を表1に示す。さらに、得られたペレットを用いて中空成形を実施した。成形時の製品肌を表1に示す。
【0145】
[実施例2]
[合成例3]
[固体状担体(X‐2)の調製]
200℃で3時間乾燥したシリカ(平均粒径=3.8μm、比表面積=804m
2/g、細孔容積=0.87mL/g)9.0kgを49.4リットルのトルエンで懸濁状にした後、メチルアルミノキサン溶液(Al=3.03モル/リットル)59.4リットルを30分かけて滴下した。次いで1.5時間かけて100℃まで昇温し、その温度で4時間反応させた。その後60℃まで降温し、上澄み液をデカンテーション法によって除去した。得られた固体触媒成分をトルエンで3回洗浄した後、トルエンで再懸濁化して固体触媒成分(X‐2)を得た(全容積118リットル)。
【0146】
[合成例4]
[メタロセン化合物の担持による固体触媒成分(Y‐2)の調製]
充分に窒素置換した反応容器中に、トルエンに懸濁させた合成例1にて合成した固体状担体(X−2)をアルミニウム原子換算で18.01モルを入れ、その懸濁液を撹拌しながら、室温下(20〜25℃)で化合物(A−1)20.18(ミリモル/リットル)溶液を2リットル(40.38ミリモル)加え0.25時間反応させた後、化合物(A−2)を6.73(ミリモル/リットル)溶液を2リットル(13.46ミリモル)加えオレフィン重合用触媒(Y‐2)を得た。
【0147】
<エチレン系重合体(α−2)>
内容積340Lの攪拌機付き第1重合槽に、ヘキサンを29(リットル/hr)、オレフィン重合触媒(Y‐2)をジルコニウム原子に換算して0.027(mmol/hr)、エチレン6.0(kg/hr)、水素26.7(N-リットル/hr)、トリイソブチルアルミニウムを8.1(mmol/hr)を連続的に供給し、アデカプロニックL−71(ADEKA株式会社製、以下L−71という)0.46(g/hr)を連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合内容物を連続的に抜出しながら、重合温度80℃、反応圧0.52(MPaG)、平均滞留時間3.7hrという条件で重合を行った。
【0148】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.30(MPaG),60℃に保たれたフラッシュドラムにおいて未反応エチレンおよび水素の除去を行った。
その後、内容積200Lの攪拌機付き第2重合槽へ該内容物、ヘキサン26(リットル/hr)、トリイソブチルアルミニウムを6.2(mmol/hr)、エチレン3.2(kg/hr)、水素分子0.8(N-リットル/hr)、1-ヘキセンを25(g/hr)、L−71を0.24(g/hr)を連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合内容物を連続的に抜出しながら、重合温度75℃、反応圧0.30(MPaG)、平均滞留時間2.1hrという条件で重合を行った。
【0149】
第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2(リットル/hr)で供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。第1重合槽で得られた重合体は、密度が962(kg/m
3)、[η]が1.80(dl/g)、MFRが1.83g/10minであった。第1重合槽で重合される成分が65重量%、第2重合槽で重合される成分が35重量%になるよう運転条件を調整し、密度が953(kg/m
3)、[η]が3.88(dl/g)のパウダーを得た。
【0150】
該パウダー100重量部に対して、耐熱安定剤としてIrganox1010(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppm、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppmステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)1500ppm配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28、スクリーンメッシュ40/60/100/60/40)を用い、設定温度240℃、樹脂押出量25(kg/hr)の条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてエチレン系重合体(α−2)のペレットを得た。得られたペレットを測定用試料として物性測定を行った結果を表1に示す。さらに、得られたペレットを用いて中空成形を実施した。成形時の製品肌を表1に示す。
【0151】
[実施例3]
[合成例5]
[メタロセン化合物の担持による固体触媒成分(Y‐3)の調製]
充分に窒素置換した反応容器中に、トルエンに懸濁させた合成例1にて合成した固体状担体(X−2)をアルミニウム原子換算で18.01モルを入れ、その懸濁液を撹拌しながら、室温下(20〜25℃)で化合物(A−1)20.18(ミリモル/リットル)溶液を2リットル(40.38ミリモル)加え0.25時間反応させた後、化合物(A−2)を8.65(ミリモル/リットル)溶液を2リットル(17.31ミリモル)加えオレフィン重合用触媒(Y‐3)を得た。
【0152】
<エチレン系重合体(α−3)>
内容積340Lの攪拌機付き第1重合槽に、ヘキサン28(リットル/hr)、オレフィン重合触媒(Y‐3)をジルコニウム原子に換算して0.037(mmol/hr)、エチレン6.0(kg/hr)、水素28.7(N-リットル/hr)トリイソブチルアルミニウム8.1(mmol/hr)、連続的に供給しL−71を0.46(g/hr)で連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合内容物を連続的に抜出しながら、重合温度80℃、反応圧0.49(MPaG)、平均滞留時間3.7hrという条件で重合を行った。
【0153】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.30(MPaG),60℃に保たれたフラッシュドラムにおいて未反応エチレンおよび水素の除去を行った。
その後、内容積200Lの攪拌機付き第2重合槽へ該内容物、ヘキサン25(リットル/hr)、エチレン3.2(kg/hr)、水素0.9(N-リットル/hr)、1-ヘキセンを25(g/hr)、トリイソブチルアルミニウムを6.2(mmol/hr)、L−71を0.24(g/hr)で連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合内容物を連続的に抜出しながら、重合温度75℃、反応圧0.29(MPaG)、平均滞留時間2.1hrという条件で重合を行った。
【0154】
第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2(リットル/hr)で供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。第1重合槽で得られた重合体は、密度が963(kg/m
3)、[η]が1.51(dl/g)、MFRが4.63g/10minであった。第1重合槽で重合される成分が69重量%、第2重合槽で重合される成分が31重量%になるよう運転条件を調整し、密度が956(kg/m
3)、[η]が3.70(dl/g)のパウダーを得た。
【0155】
該パウダー100重量部に対して、耐熱安定剤としてIrganox1010(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppm、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppmステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)1500ppm配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28、スクリーンメッシュ40/60/100/60/40)を用い、設定温度240℃、樹脂押出量25(kg/hr)の条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてエチレン系重合体(α−3)のペレットを得た。得られたペレットを測定用試料として物性測定を行った結果を表1に示す。さらに、得られたペレットを用いて中空成形を実施した。成形時の製品肌を表1に示す。
【0156】
[実施例4]
<エチレン系重合体(α−4)>
内容積340Lの攪拌機付き第1重合槽に、ヘキサン29(リットル/hr)、オレフィン重合触媒(Y‐3)をジルコニウム原子に換算して0.034(mmol/hr)、エチレン5.2(kg/hr)、水素30.1(N-リットル/hr)、トリイソブチルアルミニウム8.1(mmol/hr)、L−71を0.44(g/hr)を連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合内容物を連続的に抜出しながら、重合温度80℃、反応圧0.42(MPaG)、平均滞留時間3.8hrという条件で重合を行った。
【0157】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.30(MPaG),60℃に保たれたフラッシュドラムにおいて未反応エチレンおよび水素の除去を行った。
その後、内容積200Lの攪拌機付き第2重合槽へ該内容物、ヘキサン25(リットル/hr)、エチレン4.0(kg/hr)、水素分子1.4(N-リットル/hr)、1-ヘキセン25(g/hr)、トリイソブチルアルミニウムを6.2(mmol/hr)、L−71を0.26(g/hr)で連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合内容物を連続的に抜出しながら、重合温度75℃、反応圧0.37(MPaG)、平均滞留時間2.1hrという条件で重合を行った。
【0158】
第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2(リットル/hr)で供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。第1重合槽で得られた重合体は、密度が963(kg/m
3)、[η]が1.58(dl/g)、MFRが3.02g/10minであった。第1重合槽で重合される成分が65重量%、第2重合槽で重合される成分が35重量%になるよう運転条件を調整し、密度が953(kg/m
3)、[η]が3.80(dl/g)のパウダーを得た。
【0159】
該パウダー100重量部に対して、耐熱安定剤としてIrganox1010(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppm、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppmステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)1500ppm配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28、スクリーンメッシュ40/60/100/60/40)を用い、設定温度240℃、樹脂押出量25(kg/hr)の条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてエチレン系重合体(α−4)のペレットを得た。得られたペレットを測定用試料として物性測定を行った結果を表1に示す。さらに、得られたペレットを用いて中空成形を実施した。成形時の製品肌を表1に示す。
【0160】
[実施例5]
<エチレン系重合体(α−5)>
内容積340Lの攪拌機付き第1重合槽に、ヘキサン28(リットル/hr)、オレフィン重合触媒(Y‐3)をジルコニウム原子に換算して0.037(mmol/hr)、エチレン6.0(kg/hr)、水素28.7(N-リットル/hr)トリイソブチルアルミニウム8.1(mmol/hr)、連続的に供給しL−71を0.46(g/hr)で連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合内容物を連続的に抜出しながら、重合温度80℃、反応圧0.49(MPaG)、平均滞留時間3.7hrという条件で重合を行った。
【0161】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.30(MPaG),60℃に保たれたフラッシュドラムにおいて未反応エチレンおよび水素の除去を行った。
その後、内容積200Lの攪拌機付き第2重合槽へ該内容物、ヘキサン25(リットル/hr)、エチレン3.2(kg/hr)、水素0.9(N-リットル/hr)、1-ヘキセン40(g/hr)、トリイソブチルアルミニウムを6.2(mmol/hr)、L−71を0.24(g/hr)で連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合内容物を連続的に抜出しながら、重合温度75℃、反応圧0.29(MPaG)、平均滞留時間2.1hrという条件で重合を行った。
【0162】
第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2(リットル/hr)で供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。第1重合槽で得られた重合体は、密度が963(kg/m
3)、[η]が1.51(dl/g)、MFRが4.61g/10minであった。第1重合槽で重合される成分が69重量%、第2重合槽で重合される成分が31重量%になるよう運転条件を調整し、密度が951(kg/m
3)、[η]が3.70(dl/g)のパウダーを得た。
【0163】
該パウダー100重量部に対して、耐熱安定剤としてIrganox1010(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppm、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppmステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)1500ppm配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28、スクリーンメッシュ40/60/100/60/40)を用い、設定温度240℃、樹脂押出量25(kg/hr)の条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてエチレン系重合体(α−5)のペレットを得た。得られたペレットを測定用試料として物性測定を行った結果を表1に示す。さらに、得られたペレットを用いて中空成形を実施した。成形時の製品肌を表1に示す。
【0164】
[比較例1]
[合成例6]
[メタロセン化合物の担持による固体触媒成分(Y‐4)の調製]
充分に窒素置換した反応容器中に、トルエンに懸濁させた合成例1にて合成した固体触媒(X‐2)をアルミニウム原子換算で18.01モルを入れ、その懸濁液を撹拌しながら、室温下(20〜25℃)で化合物(A−1)31.06(ミリモル/リットル)溶液を2リットル(61.12ミリモル)加え1時間反応させ、オレフィン重合用触媒(Y‐4)を得た。
【0165】
<エチレン系重合体(β−1)>
内容積340Lの攪拌機付き第1重合槽に、ヘキサン51(リットル/hr)、オレフィン重合触媒(Y‐4)をジルコニウム原子に換算して0.027(mmol/hr)、エチレン7.8(kg/hr)、水素29.1(N-リットル/hr)、トリイソブチルアルミニウム11.2(mmol/hr)、L−71を0.46(g/hr)を連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合内容物を連続的に抜出しながら、重合温度80℃、反応圧0.75(MPaG)、平均滞留時間2.7hrという条件で重合を行った。
【0166】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.30(MPaG),60℃に保たれたフラッシュドラムにおいて未反応エチレンおよび水素の除去を行った。
その後、内容積200Lの攪拌機付き第2重合槽へ該内容物、ヘキサン26(リットル/hr)、エチレン4.2(kg/hr)、水素0.7(N-リットル/hr)、1-ヘキセン35(g/hr)、トリイソブチルアルミニウムを7.2(mmol/hr)、L−71を0.24(g/hr)で連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合内容物を連続的に抜出しながら、重合温度75℃、反応圧0.26(MPaG)、平均滞留時間1.6hrという条件で重合を行った。
【0167】
第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2(リットル/hr)で供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。第1重合槽で得られた重合体は、密度が965(kg/m
3)、[η]が1.17(dl/g)、MFRが13g/10minであった。第1重合槽で重合される成分が65重量%、第2重合槽で重合される成分が35重量%になるよう運転条件を調整し、密度が953(kg/m
3)、[η]が3.55dl/g)のパウダーを得た。
【0168】
該パウダー100重量部に対して、耐熱安定剤としてIrganox1010(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppm、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppmステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)1500ppm配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28、スクリーンメッシュ40/60/100/60/40)を用い、設定温度240℃、樹脂押出量25(kg/hr)の条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてエチレン系重合体(β−1)のペレットを得た。得られたペレットを測定用試料として物性測定を行った結果を表1に示す。さらに、得られたペレットを用いて中空成形を実施した。成形時の製品肌を表1に示す。
【0169】
比較例1のエチレン系重合体は、エチレン系重合体(β−1)の210 ℃ での剪断速度19460s
- 1 における圧力(σ,Pa)が要件[c]の右辺より小さい。このため、製品肌にシャークスキンの外観不良が発生した。
【0170】
[比較例2]
<エチレン系重合体(β−2)>
内容積340Lの攪拌機付き第1重合槽に、ヘキサン51(リットル/hr)、オレフィン重合触媒(Y‐4)をジルコニウム原子に換算して0.027(mmol/hr)、エチレンを7.2(kg/hr)、水素26.1(N-リットル/hr)、トリイソブチルアルミニウムを11.2(mmol/hr)L−71を0.46(g/hr)を連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合内容物を連続的に抜出しながら、重合温度80℃、反応圧0.75(MPaG)、平均滞留時間2.7hrという条件で重合を行った。
【0171】
第1重合槽から連続的に抜出された内容物は、内圧0.30(MPaG),60℃に保たれたフラッシュドラムにおいて未反応エチレンおよび水素の除去を行った。
その後、内容積200Lの攪拌機付き第2重合槽へ該内容物、ヘキサン26(リットル/hr)、エチレン4.8(kg/hr)、水素0.8(N-リットル/hr)、1-ヘキセン35(g/hr)、トリイソブチルアルミニウムを7.2(mmol/hr)、L−71を0.24(g/hr)で連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合内容物を連続的に抜出しながら、重合温度75℃、反応圧0.26(MPaG)、平均滞留時間1.6hrという条件で重合を行った。
【0172】
第2重合槽から抜き出した内容物へメタノールを2(リットル/hr)で供給し重合用触媒を失活させた。その後、該内容物中のヘキサン及び未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥し重合体を得た。第1重合槽で得られた重合体は、密度が964(kg/m
3)、[η]が1.34(dl/g)、MFRが7.2g/10minであった。第1重合槽で重合される成分が60重量%、第2重合槽で重合される成分が40重量%になるよう運転条件を調整し、密度が952(kg/m
3)、[η]が3.46(dl/g)のパウダーを得た。
【0173】
該パウダー100重量部に対して、耐熱安定剤としてIrganox1010(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppm、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppmステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)1500ppm配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28、スクリーンメッシュ40/60/100/60/40)を用い、設定温度240℃、樹脂押出量25(kg/hr)の条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてエチレン系重合体(β−2)のペレットを得た。得られたペレットを測定用試料として物性測定を行った結果を表1に示す。さらに、得られたペレットを用いて中空成形を実施した。成形時の製品肌を表1に示す。
【0174】
比較例2のエチレン系重合体は、エチレン系重合体(β−2)の210℃での剪断速度19460s
- 1 における圧力(σ,Pa)が要件[c]の右辺より小さい。このため、製品肌にシャークスキンの外観不良が発生した。
【0175】
[比較例3]
[合成例7]
[遷移金属錯体の担持による固体触媒成分(Y‐5)の調製]
磁気攪拌子を備え、充分に窒素置換した500mLガラス容器に脱水トルエン142.7mLを装入し、上記で調製した固体状担体(X‐1)のトルエンスラリーを43.00mL(Al原子換算で16.74mmol)装入した。次いでA−2で表される遷移金属錯体のトルエン溶液64.30mL(Zr原子換算で0.058mmol)を滴下装入し、室温で1時間反応させ、オレフィン重合用触媒(Y-5)を得た。
【0176】
<エチレン系重合体(β−3)>
充分に窒素置換した内容積500リットルの重合槽に精製ヘプタン250Lを入れ、ここに、トリイソブチルアルミニウム89mmol、オレフィン重合用触媒(Y-5)を固体成分換算で1.86g加えた。80℃に昇温して1度脱圧した後、0.50MPa・Gとなるようにエチレン/水素混合ガス(気相部の濃度:水素/エチレン=0.120(mol/mol))を連続的に供給し、2.5時間重合を行った。重合後、脱圧し、窒素置換を行い用いたエチレン/水素混合ガスを除去した。得られた重合体は、密度が964(kg/m
3)、[η]が1.36(dl/g)、MFRが6.42g/10minであり、重合体の重合量は22.4kgあった。
【0177】
この重合槽にトリイソブチルアルミニウム60mmol、1−ヘキセン194mlを挿入し、75℃に昇温して1度脱圧した後、0.65MPa・Gとなるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給し(気相部の濃度:水素/エチレン=0.011(mol/mol))、1.4時間重合を行った。
【0178】
重合槽にメタノール添加し反応を停止させ、冷却および残留ガスをパージした。得られたエチレン重合体(PE)のスラリーをろ過した。エチレン重合体を80℃で10時間、減圧乾燥を行った。得られたエチレン重合体は34.5kgであり、重合活性は152.5kg‐PE/mmol−Zr・hr、生産性は4760g−PE/g−cat.・hrであった。エチレン重合体の分析の結果、嵩密度は0.453g/cm
3、ポリマー密度=959g/cm
3、極限粘度[η]は6.19dL/gのパウダーを得た。同様の操作を3回実施した。
【0179】
該パウダー100重量部に対して、耐熱安定剤としてIrganox1010(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppm、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ社製)を1000ppmステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)1500ppm配合した。しかる後にプラコー社製単軸押出機(スクリュー径65mm、L/D=28、スクリーンメッシュ40/60/100/60/40)を用い、設定温度240℃、樹脂押出量25(kg/hr)の条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてエチレン系重合体(β−3)のペレットを得た。得られたペレットを測定用試料として物性測定を行った結果を表1に示す。さらに、得られたペレットを用いて中空成形を実施した。成形時の製品肌を表1に示す。
【0180】
比較例3のエチレン系重合体は、要件[c]を満たすのでシャークスキンは発生しなかったが、要件[e]のスウェル比が小さくパリソンの成形コントロールが困難であった。また、要件[h]のMw/Mnの要件を満たさない為に分散不良と推測するブツが発生し、パリソン結合部のピンチオフ部(パリソンを金型で挟んだ融着部分)が薄くなり、ピンチ形状が悪化した。
【0181】
[比較例4]
エチレン系重合体として東ソー社製高密度ポリエチレン「ニポロンハード8900」を使用した以外は、実施例1と同様にして物性測定を行った結果を表1に示す。さらに、中空成形を実施した。成形時の製品肌を第1表に示す。
比較例4のエチレン系重合体は、−40℃でのシャルピー衝撃強さ(
kJ/m2)が要件[d]の右辺より小さいので、落下の際の耐衝撃性が不十分である。
【0182】
[比較例5]
エチレン系重合体としてプライムポリマー社製高密度ポリエチレン「HI−ZEX8200B」を使用した以外は、実施例1と同様にして物性測定を行った結果を第1表に示す。さらに、中空成形を実施した。成形時の製品肌を表1に示す。
比較例5のエチレン系重合体は、−40℃でのシャルピー衝撃強さ(
kJ/m2)が要件[d]の右辺より小さいので、落下の際の耐衝撃性が不十分である。
【0183】
[比較例6]
エチレン系重合体としてBasell社製高密度ポリエチレン「4261AG」を使用した以外は、実施例1と同様にして物性測定を行った結果を表1に示す。さらに、中空成形を実施した。成形時の製品肌を表1に示す。
比較例6のエチレン系重合体は、−40℃でのシャルピー衝撃強さ(
kJ/m2)が要件[d]の右辺より小さいので、落下の際の耐衝撃性が不十分である。
【0184】
[比較例7]
エチレン系重合体として日本ポリエチレン社製高密度ポリエチレン「HB111R」を使用した以外は、実施例1と同様にして物性測定を行った結果を表1に示す。さらに、中空成形を実施した。成形時の製品肌を表1に示す。
比較例7のエチレン系重合体は、−40℃でのシャルピー衝撃強さ(
kJ/m2)
が要件[d]の右辺より小さいので、落下の際の耐衝撃性が不十分である。
【0185】
[参考例1]
[合成例8]
[遷移金属化合物の担持による固体触媒成分(Y‐6)の調製]
磁気攪拌子を備え、充分に窒素置換した500mLガラス容器に脱水トルエン149.7mLを装入し、上記で調製した固体状担体(X‐1)のトルエンスラリーを54.28mL(Al原子換算で21.12mmol)装入した。次いで化合物(A−1)で表される遷移金属錯体のトルエン溶液17.60mL(Zr原子換算で0.047mmol)を滴下装入し、室温で1時間反応させ、オレフィン重合用触媒(Y-6)を得た。
【0186】
<エチレン系重合体(γ−1)>
充分に窒素置換した内容積500リットルの重合槽に精製ヘプタン250Lを入れ、ここに、トリイソブチルアルミニウム89mmol、オレフィン重合用触媒(Y-6)を固体成分換算で2.38g加えた。以降は、実施例1と同条件にて重合を行なった。80℃(一段目)重合時に得られた重合体は、密度が969(kg/m
3)、極限粘度[η]が0.92(dl/g)であり、重合体の重合量は12.5kgであり、重合活性は88.1kg‐PE/mmol−Zr・hr、生産性は2760g−PE/g−cat.・hrであった。
【0187】
次いで75℃(二段目)重合を行ない、重合活性は66.5kg‐PE/mmol−Zr・hr、生産性は2030g−PE/g−cat.・hrであった。重合終了後に得られた重合体の極限粘度[η]は3.23dL/gであり、重合体の重合量は22.4kgであり、重合活性は77.2kg‐PE/mmol−Zr・hr、生産性は2380g−PE/g−cat.・hrであった。
一段目および重合終了後の極限粘度[η]より、二段目で重合されるエチレン共重合体の高分子量成分の極限粘度[η]は6.15(dl/g)であった。
【0188】
[参考例2]
[合成例9]
[遷移金属化合物の担持による固体触媒成分(Y‐7)の調製]
磁気攪拌子を備え、充分に窒素置換した500mLガラス容器に脱水トルエン149.7mLを装入し、上記で調製した固体状担体(X‐1)のトルエンスラリーを54.28mL(Al原子換算で21.12mmol)装入した。次いで化合物(A−2)で表される遷移金属錯体のトルエン溶液28.41mL(Zr原子換算で0.026mmol)を滴下装入し、室温で1時間反応させ、オレフィン重合用触媒(Y-7)を得た。
【0189】
<エチレン系重合体(γ−2)>
充分に窒素置換した内容積500リットルの重合槽に精製ヘプタン250Lを入れ、ここに、トリイソブチルアルミニウム89mmol、オレフィン重合用触媒(Y-7)を固体成分換算で2.38g加えた。以降は、実施例1と同条件にて重合を行なった。80℃(一段目)重合時に得られた重合体は、密度が953(kg/m
3)、極限粘度[η]が2.30(dl/g)であり、重合体の重合量は11.2kgであり、重合活性は78.9kg‐PE/mmol−Zr・hr、生産性は2470g−PE/g−cat.・hrであった。
【0190】
次いで75℃(二段目)重合を行ない、重合活性は18.0kg‐PE/mmol−Zr・hr、生産性は560g−PE/g−cat.・hrであった。重合終了後に得られた重合体の極限粘度[η]は5.44dL/gであり、重合体の重合量は14.0kgであり、重合活性は47.0kg‐PE/mmol−Zr・hr、生産性は1460g−PE/g−cat.・hrであった。
【0191】
一段目および重合終了後の極限粘度[η]より、二段目で重合されるエチレン共重合体の高分子量成分の極限粘度[η]は18.0(dl/g)であった。
参考例1および参考例2より、実施例1において75℃(二段目)で遷移金属化合物(A−1)により重合されるエチレン共重合体の高分子量成分の極限粘度[η]は6.1(dl/g)であり、重合量は全体量の27.5重量%となり、実施例1において75℃(二段目)で遷移金属化合物(A−2)により重合されるエチレン共重合体の高分子量成分の極限粘度[η]は18.0(dl/g)であり、重合量は全体量の7.5重量%となる。
【0192】
【表1】