特許第6680550号(P6680550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6680550
(24)【登録日】2020年3月24日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】非乳化型整髪用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20200406BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20200406BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   A61K8/25
   A61K8/81
   A61K8/73
   A61K8/02
   A61K8/34
   A61Q5/06
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-18681(P2016-18681)
(22)【出願日】2016年2月3日
(65)【公開番号】特開2017-137257(P2017-137257A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2019年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】西垣 祥子
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−162788(JP,A)
【文献】 特開2005−239557(JP,A)
【文献】 特開2008−308452(JP,A)
【文献】 特開2012−102058(JP,A)
【文献】 化粧品原料辞典,日光ケミカルズ株式会社,1991年11月29日,458頁
【文献】 岩尾修司、ほか,男性用整髪料、ヘアトリートメント製品の製造技術,FRAGRANCE JOURNAL,1992年 6月,pp.104-111
【文献】 Hair Gel,Mintel GNPD [online],2014年 4月,ID#:2369665
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン性増粘剤および非イオン性増粘剤から選ばれる少なくとも1種の増粘剤(A)を0.3〜5質量%と、
ケイソウ土(B)を0.5〜10質量%と
水を30〜90質量%とを含む非乳化型整髪用組成物。
【請求項2】
増粘剤(A)100質量部中、陰イオン性増粘剤を50質量部以上含む、請求項1に記載の非乳化型整髪用組成物。
【請求項3】
さらにアクリル系またはビニル系の非イオン性樹脂(C)を0.1〜10質量%含む請求項1または2に記載の非乳化型整髪用組成物。
【請求項4】
さらに酸素原子以外のヘテロ原子を分子内に有さない多価アルコール(D)を0.1〜10質量%含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の非乳化型整髪用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非乳化型整髪用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
非乳化型の整髪用組成物には、整髪性、くし通りの良さ、整髪の持続性および組成物の安定性など様々な効果が求められる。このため、特定の成分を配合することで、前記効果を有する整髪用組成物を得る試みが種々なされている(例えば、特許文献1、2など)。しかしながら、整髪性、くし通り、整髪の持続性および組成物の安定性等が総合的に良好な非乳化型の整髪用組成物は得られておらず、前記組成物を得ることは非常に困難な課題となっている。
【0003】
また、一般的に、非乳化型の整髪用組成物は毛髪に塗布すると組成物中の水等により毛髪が濡れ、整髪効果を得るために前記組成物が付着した毛髪を乾燥させる必要がある。このため、乾燥に時間がかかること、完全に乾燥させないと整髪力が低下することおよびドライヤーで加温しながら整髪をする必要があることなどから、簡便さに問題があった。さらに、ドライヤーを使用すると、熱で毛髪のダメージが進行するという問題が生じていた。
【0004】
特許文献3には、特定の無機紛体、揮発性油等を配合した整髪料が開示されている。前記整髪料は、毛髪のべたつきを抑え得る等の効果を有するが、特許文献3に開示される整髪料は乳化型であり非乳化型の整髪用組成物とは性能が異なるため、別途、非乳化型の整髪用組成物の検討が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−240519号公報
【特許文献2】特開2001−39840号公報
【特許文献3】特開2014−162788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、毛髪の濡れが少なく、整髪が簡便で、かつ、毛髪にハリやコシ、ボリュームを与えることができ、整髪の即効性、くし通り、整髪の持続性および組成物の安定性が良好な非乳化型整髪用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する非乳化型整髪用組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、例えば、以下の[1]〜[4]である。
[1] 陰イオン性増粘剤および非イオン性増粘剤から選ばれる少なくとも1種の増粘剤(A)を0.3〜5質量%と、ケイソウ土(B)を0.5〜10質量%とを含む非乳化型整髪用組成物。
【0009】
[2] 増粘剤(A)100質量部中、陰イオン性増粘剤を50質量部以上含む、[1]に記載の非乳化型整髪用組成物。
[3] さらにアクリル系またはビニル系の非イオン性樹脂(C)を0.1〜10質量%含む[1]または[2]に記載の非乳化型整髪用組成物。
【0010】
[4] さらに酸素原子以外のヘテロ原子を分子内に有さない多価アルコール(D)を0.1〜10質量%含む[1]〜[3]のいずれかに記載の非乳化型整髪用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、毛髪の濡れが少なく、整髪が簡便で、かつ、毛髪にハリやコシ、ボリュームを与えることができ、整髪の即効性、くし通り、整髪の持続性および組成物の安定性が良好な非乳化型整髪用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の非乳化型整髪用組成物を説明する。以下では、本発明の非乳化型整髪用組成物を単に「組成物」ともいう。
【0013】
〔非乳化型整髪用組成物〕
本発明の組成物は、以下に説明する、増粘剤(A)と、ケイソウ土(B)とを含む。前記組成物は、さらに、アクリル系またはビニル系の非イオン性樹脂(C)(以下「非イオン性樹脂(C)」ともいう。)を含むことが好ましく、酸素原子以外のヘテロ原子を分子内に有さない多価アルコール(D)(以下「多価アルコール(D)」ともいう。)を含むことも好ましい。前記組成物は、非イオン性樹脂(C)および多価アルコール(D)を含むことが好ましい。また、必要に応じてその他の成分(E)を含有してもよい。
本発明の組成物は、非乳化型である。このため、一般的な乳化型の整髪用組成物と比較して、組成物の伸びが良く、油分によるべたつきが無いという利点を有する。
【0014】
<増粘剤(A)>
増粘剤(A)は、陰イオン性増粘剤および非イオン性増粘剤から選ばれる少なくとも1種である。増粘剤(A)を含むことにより、組成物を毛髪に塗布した際に、毛髪の濡れを低減することができ、簡便に整髪することができる。また、増粘剤(A)は、組成物の安定性を向上させる効果も有する。
【0015】
陰イオン性増粘剤としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))コポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス−20)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン(VP))コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシエチルセルロースが挙げられる。
【0016】
非イオン性増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの増粘性セルロース化合物;タマリンドガムなどの増粘性種子粘質物;寒天などの増粘性海藻抽出物;ジェランガム、プルラン、デキストラン、シクロデキストリンなどの増粘性産生粘物質が挙げられる。ただし、非イオン性増粘剤は、非イオン性樹脂(C)に該当する成分ではないことが好ましい。
【0017】
増粘剤(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
増粘剤(A)は、毛髪にハリやコシを与え、ベタつきなく整髪できる観点から、増粘剤(A)100質量部中、陰イオン性増粘剤を好ましくは50質量部以上、より好ましくは70〜100質量部含む。陰イオン性増粘剤の中でも、毛髪の濡れを低減する効果が高く、簡便に整髪でき、毛髪にボリュームを与えることができる観点から、カルボキシビニルポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス−20)コポリマーを含むことが特に好ましい。
【0018】
組成物100質量%中の増粘剤(A)の配合量は、0.3〜5質量%であり、好ましくは0.5〜2質量%である。前記下限値以上であれば、毛髪の濡れを低減することができ、前記上限値以下であれば、組成物の粘度が高くなりすぎず均一塗布性の観点から好ましい。
【0019】
<ケイソウ土(B)>
本発明の組成物は、ケイソウ土(B)を含む。ケイソウ土(B)を含むことにより、毛髪の濡れが少なく、整髪が簡便でかつ即効性があり、整髪の持続性に優れる。また、ケイソウ土(B)を含むことにより、フレーキングやベタつきなどを起こさずに、毛髪にハリやコシ、ボリュームを与えることができる。
【0020】
組成物100質量%中のケイソウ土(B)の配合量は、0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜6質量%、さらに好ましくは2〜4質量%である。前記下限値以上であれば、毛髪にハリやコシ、ボリュームを与えることができ、整髪の即効性が良好になりやすく、また、毛髪の濡れを低減することができる。前記上限値以下であれば、ごわつきにくくなる。
【0021】
<非イオン性樹脂(C)>
本発明の組成物は、アクリル系またはビニル系の非イオン性樹脂(C)を含むことが好ましい。なお、本明細書では、「アクリル系」は「メタクリル系」を包含する意味で用いる。
【0022】
非イオン性樹脂(C)を含むことにより、毛髪にハリやコシ、ボリュームを与えることができ、整髪の即効性が向上し、整髪した際に、すぐに毛髪にボリュームを出すことができる。非イオン性樹脂(C)を用いることにより、前記効果が得られる理由は、非イオン性樹脂(C)が、皮膜形成剤として作用するためであると考えられる。
【0023】
非イオン性樹脂(C)としては、例えば、(ジメチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー、(ビニルピロリドン/酢酸ビニル(VA))コポリマー、ポリビニルピロリドン、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー、メタクリル樹脂、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミド/ビニルイミダゾール共重合体、ビニルメチルエーテル/マレイン酸エチル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルカプロラクタムが挙げられる。
【0024】
非イオン性樹脂(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
組成物100質量%中の非イオン性樹脂(C)の配合量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。前記範囲では、すぐに毛髪にボリュームを出すことができるため整髪の即効性、および、フレーキング抑制の少なくとも一方に優れ、前記より好ましい範囲では、両方に優れる。
【0025】
<多価アルコール(D)>
本発明の組成物は、酸素原子以外のヘテロ原子を分子内に有さない多価アルコール(D)を含むことが好ましい。多価アルコール(D)を含むことにより、整髪した際のくし通りを向上させ、毛髪のごわつきを低減することができる。
【0026】
本発明に用いることが可能な多価アルコール(D)は、1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有し、酸素原子以外のヘテロ原子を分子内に有さないアルコールである。前記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、ハロゲン原子が挙げられる。また、多価アルコール(D)からは、増粘剤(A)または非イオン性樹脂(C)に該当するものは除かれる。
【0027】
多価アルコール(D)としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン誘導体、ソルビトール、マルチトールが挙げられる。
【0028】
多価アルコール(D)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
組成物100質量%中の多価アルコール(D)の配合量は、フレーキングを抑制し、毛髪のボリュームを維持し、ベタつきを抑制する観点から、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは3〜7質量%である。
【0029】
<その他の成分(E)>
本発明の組成物は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外に、一価アルコール、pH調整剤、保湿剤、生薬類、(A)以外の増粘剤、キレート剤、防腐剤、清涼剤、ビタミン類、蛋白質、香料、抗菌剤、酸化防止剤、抗炎症剤および色素等の添加剤を含有することができる。
【0030】
本発明の組成物は非乳化型であるため、油剤および乳化剤を実質的に含まないことが好ましい。しかしながら、油剤および乳化剤を配合することも可能であり、その場合は、本発明の効果を損なわず、可溶な範囲内で配合することが好ましい。組成物100質量%中の油剤および乳化剤の配合量は、合計で、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0031】
一価アルコールとしては、例えば、エタノールが挙げられる。組成物中に一価アルコールが含まれると、速乾性が向上し、毛髪の濡れを低減することができるため好ましい。組成物中に一価アルコールが含まれる場合には、組成物100質量%中の一価アルコールの配合量としては、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
【0032】
pH調整剤としては、例えば、酸性物質、塩基性物質が挙げられる。増粘剤(A)としてカルボキシビニルポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス−20)コポリマー等、中和が必要な陰イオン性増粘剤を使用する場合、本発明の組成物は、pH調製剤として塩基性物質を含むことが好ましい。塩基性物質としては、例えば、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、アミノメチルプロパノールなどのアルカノールアミン類、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、アルギニンなどの塩基性アミノ酸などが挙げられる。これらのpH調整剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0033】
塩基性物質の配合量は、中和するのに充分な量であり、中和する成分の使用量に応じて適宜配合することができる。pH調製剤を使用する場合、組成物100質量%中のpH調整剤の配合量としては、好ましくは0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜2質量%である。
【0034】
保湿剤としては、例えば、アミノ酸類が挙げられる。
生薬類としては、例えば、植物エキスが挙げられ、具体的には、ダイサンチクエキス、アルニカエキス、カモミラエキス、シコンエキス、シナノキエキス、スギナエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セージエキス、トウキエキス、ノバラエキス、ビワ葉エキス、マロニエエキス、モモ葉エキス、ヨクイニンエキスおよびローズマリーエキスなどが挙げられる。これらの生薬類は1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0035】
(A)以外の増粘剤、キレート剤、防腐剤、清涼剤、ビタミン類、蛋白質、香料、抗菌剤、酸化防止剤、抗炎症剤および色素については、当業者に公知のものを始め、特に制限なく用いることができる。
【0036】
本発明の組成物は、上記成分(A)〜(E)の他に通常は水を含む。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、精製水および天然水が挙げられ、殺菌済みのものが好ましい。
組成物100質量%中の水の含有量としては、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは50〜85質量%である。
【0037】
≪製造方法≫
本発明の組成物は、上述した各成分を、公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、分散等することによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。
【0038】
本発明の組成物は、増粘剤(A)と、ケイソウ土(B)とを含む。前記組成物は、増粘剤(A)およびケイソウ土(B)に加え、さらに、非イオン性樹脂(C)を含むことが好ましい。また、前記組成物は、増粘剤(A)およびケイソウ土(B)に加え、さらに、多価アルコール(D)を含むことが好ましい。そして、前記組成物は、増粘剤(A)、ケイソウ土(B)、非イオン性樹脂(C)および多価アルコール(D)を含むことが特に好ましい。また、本発明の組成物は通常、水を含む。
【0039】
≪用途および剤型≫
本発明の組成物は、毛髪に塗布して使用することができる。
毛髪に塗布した後にドライヤー等で熱を与え整髪することもできるが、本発明の組成物は、塗布後の毛髪の濡れが少ないという特徴を有しているため、ドライヤー等を使用しなくても簡便に整髪することができる。また、本発明の組成物は、整髪用組成物に求められる均一塗布性、塗布後の毛髪のごわつきやべたつきの無さ、フレーキングの無さ、整髪の持続力などの性質を満たしており、さらに、毛髪のハリやコシ、ボリュームを与えることができ、整髪の即効性、くし通りの良さ、整髪の持続性および組成物の安定性が良好である。
【0040】
本発明の組成物は非乳化型であることから、状態としては、ジェル状、ローション状等が挙げられ、整髪の簡便性から、ジェル状であることが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
[実施例1〜26および比較例1〜7]
表1、2に示す処方で各成分を混合することにより、整髪用組成物を製造し、以下の方法で評価した。結果を表1、2に示す。
なお、表1、2に記載の各成分は以下の市販品を用いた。
【0042】
<増粘剤>
カルボキシビニルポリマー:カーボポール934(Lubrizol社製)
(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス−20)コポリマー:STRUCTURE 2001(アグゾノーベル社製)
キサンタンガム:エコーガムT(大日本製薬社製社製)
ヒドロキシエチルセルロース:ヒドロキシエチルセルロース SE−600(ダイセル化学社製)
ポリクオタニウム−37:SalcareSC96(BASF社製)
【0043】
<無機紛体>
ケイソウ土:オプライトW3050(中央シリカ社製)
シリカ:アエロジル200(日本アエロジル社製)
カオリン:カオリンASP170(BASF社製)
【0044】
<非イオン性樹脂>
(ジメチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー:プラスサイズL−2700(互応化学社製)
【0045】
〔評価〕
専門パネラー(美容師)10名が1人ずつ、各項目に記載した評価基準に従って、官能評価を行った。各項目につき10名の評価点の平均を算出し、以下のとおり評価した。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点未満である。
【0046】
ただし、評価項目12のドライヤーの必要性についは、10名中6名以上が「有り」と評価したときを「有」とし、それ以外を「無」とした。
また、東京チャーム社製 カットウィッグNo.55デザインカット(人毛100%)を用い、全頭で4gの整髪用組成物を用いて毛髪の根元から立ち上がるように整髪を行い、各項目を評価した。
【0047】
(1)評価項目1:毛髪の濡れの無さ
整髪用組成物を毛髪に塗布した直後の毛髪の濡れを評価した。
4点:濡れていない。
3点:ほとんど濡れていない。
2点:濡れている。
1点:とても濡れている。
【0048】
(2)評価項目2:整髪の簡便性
整髪する際に髪がすぐに乾き、簡便に整髪できるかを評価した。
4点:非常に簡便である。
3点:簡便である。
2点:やや簡便でない。
1点:簡便でない。
【0049】
(3)評価項目3:整髪の即効性
整髪した際に毛髪にボリュームが出るまでの即効性を評価した。
4点:非常に即効性がある。
3点:即効性がある。
2点:やや即効性がある。
1点:即効性が無い。
【0050】
(4)評価項目4:均一塗布性
組成物の伸び、毛髪へのなじみなどが良く、均一に毛髪に塗布できるかを評価した。
4点:非常に均一塗布性が高い。
3点:均一塗布性が高い。
2点:やや均一塗布性が低い。
1点:均一塗布性が低い。
【0051】
(5)評価項目5:毛髪のハリやコシ
整髪後の毛髪のハリやコシを評価した。
4点:非常にハリやコシがある。
3点:ハリやコシがある。
2点:ややハリやコシがある。
1点:ハリやコシがない。
【0052】
(6)評価項目6:毛髪のボリューム
整髪後の毛髪の立ち上がりの角度が大きいか否かで毛髪のボリュームを評価した。
4点:非常にボリュームがある。
3点:ボリュームがある。
2点:ややボリュームがある。
1点:ボリュームがない。
【0053】
(7)評価項目7:ごわつきの無さ
整髪後の毛髪のごわつきの無さを評価した。
4点:まったくごわつきが無い。
3点:ほとんどごわつきが無い。
2点:ごわつく。
1点:とてもごわつく。
【0054】
(8)評価項目8:ベタつきの無さ
整髪後の毛髪のベタつきの無さを評価した。
4点:まったくベタつきが無い。
3点:ほとんどベタつきが無い。
2点:ベタつく。
1点:とてもベタつく。
【0055】
(9)評価項目9:くし通り
整髪後に手ぐしを通し、ひっかかりの少なさを評価した。
4点:非常にくし通りが良い。
3点:くし通りが良い。
2点:ややくし通りが悪い。
1点:くし通りが悪い。
【0056】
(10)評価項目10:フレーキングの無さ
整髪後に手ぐしを通した際に白い粉(フレーキング)の無さを評価した。
4点:フレーキングが無い。
3点:ほぼフレーキングが無い。
2点:フレーキングがある。
1点:非常にフレーキングがある。
【0057】
(11)評価項目11:持続力
整髪後、室温20℃、湿度60%の室内で12時間放置した後に、毛髪の立ち上がりが保持されているかを評価した。
4点:非常に持続力が高い。
3点:持続力が高い。
2点:やや持続力が低い。
1点:持続力が低い。
【0058】
(12)評価項目12:ドライヤーの必要性
整髪する際のドライヤーによる乾燥工程の必要性を評価した。
無し:ドライヤーが必要でない。
有り:ドライヤーが必要である。
【0059】
(13)評価項目13:ダメージの無さ
整髪する工程を30回繰り返した毛髪と、未処理の毛髪との手触りの差でダメージを評価した。
4点:ダメージが無い。
3点:ほぼダメージが無い。
2点:ダメージがある。
1点:非常にダメージがある。
【0060】
(14)評価項目14:組成物の安定性
組成物をポリエチレンテレフタラート素材の50ml透明容器に入れ、45℃高温槽に1ヶ月保管した後の、組成物の外観の変化の有無によって安定性を評価した。
4点:安定性が高い。
3点:やや安定性が高い。
2点:安定性が低い。
1点:非常に安定性が低い。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
実施例1〜26で製造した整髪用組成物はいずれも、(1)〜(14)の全評価項目において良好な評価となった。そのため、本発明の組成物は、毛髪の濡れが少なく、整髪が簡便で、かつ、毛髪にハリやコシ、ボリュームを与えることができ、整髪の即効性、くし通り、整髪の持続性および組成物の安定性が良好であることが分かる。それに加え、整髪用組成物に求められる均一塗布性、塗布後の毛髪のごわつきやべたつきの無さ、フレーキングの無さ、整髪の持続力などの性質を満たしている。
【0064】
中でも、増粘剤(A)として陰イオン性増粘剤を使用した組成物(例えば、実施例3および実施例10)は、増粘剤(A)として非イオン性増粘剤を使用した組成物(実施例11)と比較し、より優良な評価を得た項目が多く、特に毛髪にハリやコシを与え、ベタつきなく整髪できる観点から好ましい。
【0065】
また、増粘剤(A)およびケイソウ土(B)を含む組成物(実施例1〜17)と比較し、さらに非イオン性樹脂(C)を含む組成物(実施例18〜21)は、より優良な評価を得た項目が多く、特に、整髪の即効性において好ましい。また、増粘剤(A)およびケイソウ土(B)に加え、さらに多価アルコール(D)を含む組成物(実施例22)も、より優良な評価を得た項目が多く、特に、毛髪のごわつき低減の観点において好ましい。そして、増粘剤(A)、ケイソウ土(B)、非イオン性樹脂(C)および多価アルコール(D)を含む組成物(実施例23〜26)は、より優良な評価を得た項目がさらに多く、総合的に優れていることが分かる。
【0066】
比較例1では増粘剤(A)の配合量が少なく、比較例3ではケイソウ土(B)の配合量が少なく、比較例5では増粘剤として陽イオン性ポリマーであるポリクオタニウム−37を使用しており、比較例6、7ではケイソウ土(B)の代わりに、それぞれシリカ、カオリンを使用した。これらの組成物は、毛髪が濡れる結果となった。そのためドライヤーが必要となり、整髪の簡便性が悪く、また、ダメージも生じている。
【0067】
比較例2で製造した組成物は、増粘剤(A)の配合量が多いため、組成物を均一に塗布することができず、整髪の簡便性が悪いという結果となった。
比較例4で製造した組成物は、ケイソウ土(B)の配合量が多いため、ごわつきが生じる結果となった。
【0068】
比較例6では、ケイソウ土(B)の代わりにシリカを使用し、比較例7では、ケイソウ土(B)の代わりにカオリンを使用した組成物を使用している。シリカおよびカオリンは、整髪効果を有する紛体として整髪用組成物に用いられることが多いが、シリカはこの増粘剤に安定に配合することができず、カオリンではボリューム効果が得られなかった。また、両者とも、毛髪が濡れる結果となった。