(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[形状測定装置の構成]
図1は、この発明の一実施の形態による形状測定装置1の構成を示す図である。
図1において、この形状測定装置1は、光源2、光源制御器3、二光束干渉対物レンズ4、観察光学系5、撮像装置6、Zステージ7、Zステージ制御器8、支持部材9、ベース板10、制御装置11、キーボード12、マウス13、およびモニタ14を備える。観察光学系5は、支持部材9を介してベース板10に取り付けられる。平板状の被測定部品15は、ベース板10の表面に置かれる。形状測定装置1は、被測定部品15表面の形状を測定する。
【0011】
光源2は、観察光学系5の側面に設けられ、白色光を出射する。光源制御器3は、光源2に接続され、制御装置11からの指示に従って白色光の明るさを制御する。光源制御器3は、たとえば光源2に供給される電力を制御することにより、白色光の明るさを制御することができる。光源2から出射された白色光は、観察光学系5を介して二光束干渉対物レンズ4に入射される。被測定部品15に照射される光が白色光である場合、レーザなどの単一波長の光と異なり、撮像装置6で取得される干渉光の画像における輝度は、一般的に二光束干渉対物レンズ4の合焦位置で最大になる。そのため、合焦位置に基づいて被測定部品15の形状を測定するには、白色光が適している。
【0012】
二光束干渉対物レンズ4は、Zステージ7を介して観察光学系5の下端に設けられる。二光束干渉対物レンズ4は、光源2からの白色光を二光束に分離する。二光束干渉対物レンズ4は、一方の光束を被測定部品15の表面に照射するとともに他方の光束を参照面に照射する。二光束干渉対物レンズ4は、被測定部品15の表面からの反射光と参照面からの反射光とを干渉させて干渉光を生成する。実施の形態では、二光束干渉対物レンズ4としてミラウ型干渉対物レンズを用いる場合について説明する。二光束干渉対物レンズ4は、マイケルソン型やリニーク型の干渉対物レンズを用いてもよい。
【0013】
観察光学系5は、二光束干渉対物レンズ4によって生成された干渉光を観察するために設けられている。
【0014】
撮像装置6は、制御装置11によって制御され、観察光学系5を介して干渉光の画像を一定周期で取得する。撮像装置6は、取得した画像を制御装置11に出力する。
【0015】
Zステージ7は、観察光学系5の下端に設けられ、二光束干渉対物レンズ4をその光軸方向に移動させる。
【0016】
Zステージ制御器8は、制御装置11からの指示に従ってZステージ7を二光束干渉対物レンズ4の光軸方向に移動させる。
【0017】
Zステージ7によって二光束干渉対物レンズ4を移動させる代わりに、被測定部品15をテーブルで上下させてもよい。あるいは、二光束干渉対物レンズ4と観察光学系5の連結部にテーブルなどを取り付けて二光束干渉対物レンズ4の光軸方向の位置を調整してもよい。あるいは、これらのテーブルとして、位置決めを圧電素子で行うピエゾテーブルを用いてもよい。
【0018】
制御装置11は、たとえばパーソナルコンピュータによって構成されている。制御装置11には、キーボード12、マウス13、およびモニタ14が接続されている。形状測定装置1の使用者は、キーボード12およびマウス13を用いて、形状測定の開始、終了などを制御装置11に指令し、測定された被測定部品15の形状をモニタ14で確認する。制御装置11は、キーボード12、マウス13などからの信号に従って、形状測定装置1全体を制御し、被測定部品15の形状を測定する。
【0019】
[制御装置の構成]
図2は、
図1に示した制御装置11の機能を説明するための機能ブロック図である。
図2に示されるように、制御装置11は、演算処理部41、画像入力部42、データ記憶部43、位置制御値出力部44、および照明制御値出力部45を含む。
【0020】
演算処理部41は、キーボード12、マウス13などを用いて与えられた情報に基づいて、Zステージ7の高さに応じた電圧値に対応する値を格納する位置指令値配列、およびZステージ7の高さに応じた光源2の明るさに対応する値を格納する照明指令値配列を生成する。位置指令値配列は、Zステージ7の位置(被測定部品15からの高さ)を制御するために用いられる。照明指令値配列は、Zステージ7の位置に応じて光源2の明るさを制御するために用いられる。演算処理部41は、位置指令値配列および照明指令値配列をデータ記憶部43に書き込む。実施の形態においては、光源2の明るさをほぼ一定に保つため、照明指令値配列の値は一定である。
【0021】
位置制御値出力部44は、データ記憶部43から位置指令値配列を読み出す。位置制御値出力部44は、位置指令値配列に従って制御電圧EZを出力する。
【0022】
Zステージ制御器8は、位置制御値出力部44から出力される制御電圧EZに応じ
た位置にZステージ7を移動させる。
【0023】
照明制御値出力部45は、データ記憶部43から照明指令値配列を読み出す。照明制御値出力部45は、照明指令値配列に従って制御電圧ELを出力する。実施の形態においては、照明指令値配列はほぼ一定であるため、制御電圧ELはほぼ一定である。
【0024】
光源制御器3は、照明制御値出力部45から出力される制御電圧ELに応じて、光源2の明るさを変化させることができる。
【0025】
画像入力部42は、位置制御値出力部44によるデータ記憶部43からの位置指令値配列の読込みに同期して動作する。画像入力部42は、撮像装置6によって撮影された画像を一定周期で取得する。画像入力部42は、取得した画像をデータ記憶部43に格納する。
【0026】
[合焦位置検出の原理]
図3は、
図1に示した二光束干渉対物レンズ4の構成を示す図である。
図3に示されるように、二光束干渉対物レンズ4は、レンズ21、参照鏡22、およびビームスプリッタ23を含む。参照鏡22は、レンズ21の、被測定部品15を向いている側の中央部に設けられている。ビームスプリッタ23は、レンズ21と被測定部品15との間に設けられている。
【0027】
レンズ21に入射した光は、ビームスプリッタ23によって被測定部品15の方向に通過する光と参照鏡22の方向に反射する2つの光に分けられる。被測定部品15の表面で反射した光L1と参照鏡22の表面で反射した光L2は再びビームスプリッタ23で合流し、レンズ21によって集光される。
【0028】
図4は、
図1に示した観察光学系5の構成を示す図である。
図4に示されるように、観察光学系5は、集光レンズ31、ハーフミラー32、および結像レンズ33を含む。二光束干渉対物レンズ4の光軸と、結像レンズ33の光軸とはほぼ一致しており、ともに撮像装置6の撮像面6Aの中心を通過している。光源2の光軸と集光レンズ31の光軸とはほぼ一致しており、ともに二光束干渉対物レンズ4の光軸とほぼ直交している。光源2と集光レンズ31との間には、不要な波長の光を除去するためのフィルタ34が設けられている。ハーフミラー32は、光源2の光軸と二光束干渉対物レンズ4の光軸との交点に設けられている。ハーフミラー32は、光源2の光軸および二光束干渉対物レンズ4の光軸の各々に対してほぼ45度の角度で配置されている。
【0029】
光源2から出射されてフィルタ34を通過した光は、ハーフミラー32によってレンズ21の方向に反射される。レンズ21に入射した光は、ビームスプリッタ23によって被測定部品15の方向に通過する光と参照鏡22の方向に反射する2つの光に分けられる。被測定部品15および参照鏡22の表面で反射した光は再びビームスプリッタ23で合流し、レンズ21によって集光される。レンズ21から出た光は、ハーフミラー32を通過して、結像レンズ33を経て撮像装置6の撮像面6Aに入射する。
【0030】
撮像面6Aにおいて、被測定部品15の表面で反射した光L1と参照鏡22の表面で反射した光L2との干渉光の画像が取得される。干渉光の強度は、光L1の光路長および光L2の光路長の差に応じて変化する。
【0031】
図5は、二光束干渉対物レンズ4を光軸方向に移動させた場合の干渉光の強度の変化を示す図である。
図5の横軸は、光軸方向の座標(Zステージ7の位置)を示す。
図5の縦軸は、撮像面6Aにおいて取得される画像における干渉光の強度を示している。
【0032】
二光束干渉対物レンズ4は、対象物表面の反射光と参照光を干渉させることにより干渉光を得る。干渉光の強度は、
図5に示されるようにZステージ7の位置に応じて、ある値を中心にして一定周期で振動し、その振幅はコントラストに相当する。また、振幅が最大となるP1はレンズ21の合焦位置である。ここで、たとえば被測定部品15が平面で、被測定部品15が対物レンズの光軸に対して垂直に配置された場合、反射光は正反射光となり、干渉光のコントラストは大きい。しかしながら、被測定部品15が傾斜した状態では、対物レンズ21の開口に戻る光L1が減少し、反射光の強度が低下する。これにより、干渉光のコントラストも低下する。
【0033】
干渉光のコントラストが低下すると、対象物と対物レンズとの距離を変化させた場合に、コントラストの明確なピークが生じにくくなり、ピークP1の検出が困難となる。ピークを検出できない場所の高さは不定となり、対象物の形状を正確に測定することは困難になる。
【0034】
しかしながら、被測定部品15の表面の凹凸による反射光量の違いは、撮像装置6で取得される画像における画素間の明暗の差として確認することができる場合がある。
【0035】
そこで実施の形態では、合焦位置を求めるために必要な評価値として、合焦位置を算出する対象である注目画素の輝度に加えて、注目画素の輝度と注目画素に近接する複数の単位領域の輝度との差に相関関係のある評価値として、注目画素の輝度と注目画素に近接する近接領域に含まれる画素の輝度との分散値を用いて、各画素の合焦位置を算出する。
【0036】
図6は、二光束干渉対物レンズ4を光軸方向に移動させた場合の干渉光の強度の分散値の変化を示す図である。
図6の横軸は、光軸方向の座標(Zステージ7の位置)を示す。
図6の縦軸は、干渉光の強度の分散値を示している。
図6に示されるように、被測定部品15と二光束干渉対物レンズ4との距離を変化させた場合に、分散値に関して明確なピークP2が生じている。ピークP2に対応する位置FP2は、合焦位置にほぼ一致する。そのため、分散値を用いることにより注目画素の合焦位置を精度よく算出することができる。その結果、被測定部品15の形状を正確に測定することができる。
【0037】
図7は、撮像装置6によって取得される画像を構成する複数の画素を模式的に示す図である。撮像装置6によって取得される画像を構成する各画素は、位置(x,y)によって特定される。画素の座標値xは、0からM
xまでのいずれかの値をとる。画素の座標値yは、0からM
yまでのいずれかの値をとる。実施の形態において、画像上の位置が(x,y)である画素C
xyにおける分散値V(x,y)は、画素C
xyを中心とするA×Bの近接領域R
ABに含まれる画素の輝度G(i,j)を用いて、以下の式(1)で表される。
【0039】
式(1)においては、G
aveは近接領域R
ABの輝度の平均値であり、以下の式(2)で表される。
【0041】
輝度に関する分散値以外に、注目画素を含む近接領域を構成する複数の画素の各々の輝度と注目画素の輝度との差に相関関係があり、合焦位置でピークを示す評価値として、たとえば、画像のエッジ検出に用いられる輝度に関する一次微分値、あるいは二次微分値を挙げることができる。輝度に関する一次微分値としては、以下の式(3)で表されるグラディエントD1aを挙げることができる。
【0042】
D1a(x,y)=|G(x+1,y−1)−G(x−1,y−1)|+|G(x+1,y)−G(x−1,y)|+|G(x+1,y+1)−G(x−1,y+1)|+|G(x−1,y+1)−G(x−1,y−1)|+|G(x,y+1)−G(x,y−1)|+|G(x+1,y+1)−G(x+1,y−1)| …(3)
グラディエントD1aは、注目画素に隣接する画素のうち、画素の位置を規定する座標軸のx軸方向に向き合う画素間の輝度の傾きの絶対値、およびy軸方向に向き合う画素間の輝度の傾きの絶対値の和である。なお、画素間の輝度の傾きとは、画素間の輝度の差である。
【0043】
図8は、注目画素C
xyに隣接する画素を示す図である。
図8に示されるように、注目画素C
xyは、画素C
x−1,y,C
x,y+1,C
x+1,y+1,C
x+1,y,C
x+1,y−1,C
x,y−1,C
x−1,y−1,C
x−1,yに囲まれている。
図8および式(3)を参照しながら、グラディエントD1
aは、x軸方向に向き合う画素C
x+1,y−1およびC
x−1,y−1の間の輝度の傾きの絶対値(|G(x+1,y−1)−G(x−1,y−1)|)、画素C
x+1,yおよびC
x−1,yの間の輝度の傾きの絶対値(|G(x+1,y)−G(x−1,y)|)、画素C
x+1,y+1およびC
x−1,y+1の間の輝度の傾きの絶対値(|G(x+1,y+1)−G(x−1,y+1)|)、y軸方向に向き合う画素C
x−1,y+1およびC
x−1,y−1の間の輝度の傾きの絶対値(|G(x−1,y+1)−G(x−1,y−1)|)、画素C
x,y+1およびC
x,y−1の間の輝度の傾きの絶対値(|G(x,y+1)−G(x,y−1)|)、並びに画素C
x+1,y+1およびC
x+1,y−1の間の輝度の傾きの絶対値(|G(x+1,y+1)−G(x+1,y−1)|)の和である。
【0044】
輝度に関する一次微分値としては、以下の式(4)で表されるグラディエントD1bを用いることもできる。
【0045】
D1b(x,y)=D1a(x,y)+|G(x+1,y+1)−G(x−1,y−1)|+|G(x+1,y−1)−G(x−1,y+1)| …(4)
グラディエントD1bは、注目画素に隣接する画素のうち、画素の位置を規定する座標軸の対角線方向に向き合う画素間の輝度の傾きの絶対値を、グラディエントD1aに加えたものである。
【0046】
図8および式(4)を参照しながら、グラディエントD1bは、グラディエントD1a、対角線方向に向き合う画素C
x+1,y+1およびC
x−1,y−1の間の輝度の傾きの絶対値(|G(x+1,y+1)−G(x−1,y−1)|)、並びに対角線方向に向き合う画素C
x+1,y−1およびC
x−1,y+1の間の輝度の傾きの絶対値(|G(x+1,y−1)−G(x−1,y+1)|)の和である。
【0047】
輝度に関する二次微分値としては、以下の式(5)で表されるラプラシアンD2aを用いることができる。
【0048】
D2a(x,y)=|{G(x,y)−G(x−1,y)}−{G(x+1,y)−G(x,y)}|+|{G(x,y)−G(x,y−1)}−{G(x,y+1)−G(x,y)}|=|2G(x,y)−G(x−1,y)−G(x+1,y)|+|2G(x,y)−G(x,y−1)−G(x,y+1)| …(5)
ラプラシアンD2aは、画素の位置を規定する座標軸のx軸方向に注目画素と隣接する画素と注目画素との間の輝度の傾きの差と、y軸方向に注目画素と隣接する画素間の輝度の傾きの差との和である。
【0049】
図8と式(5)を参照しながら、ラプラシアンD2aは、注目画素C
xyおよびx軸方向に注目画素C
xyに隣接する画素C
x−1,yの間の傾き(G(x,y)−G(x−1,y))と、注目画素C
xyおよびx軸方向に注目画素C
xyに隣接する画素C
x+1,yの間の傾き(G(x+1,y)−G(x,y))との差の絶対値、および注目画素C
xyおよびy軸方向に注目画素C
xyに隣接する画素C
x,y−1の間の傾き(G(x,y)−G(x,y−1))と、注目画素C
xyおよび
y軸方向に注目画素C
xyに隣接する画素C
x,y+1の間の傾き(G(x,y+1)−G(x,y))との差の絶対値の和である。
【0050】
輝度に関する二次微分値としては、以下の式(6)で表されるラプラシアンD2bを用いることもできる。
【0051】
D2b(x,y)=D2a(x,y)+|{G(x,y)−G(x−1,y−1)}−{G(x+1,y+1)−G(x,y)}|+|{G(x,y)−G(x−1,y+1)}−{G(x+1,y−1)−G(x,y)}|=D2a(x,y)+|2G(x,y)−G(x−1,y−1)−G(x+1,y+1)|+|2G(x,y)−G(x−1,y+1)−G(x+1,y−1)| …(6)
ラプラシアンD2bは、ラプラシアンD2aに画素の位置を規定する座標軸の対角線方向に注目画素に隣接する画素と注目画素との間の輝度の傾きの差を加えたものである。
【0052】
図8と式(6)を参照しながら、ラプラシアンD2bは、ラプラシアンD2a、注目画素C
xyおよび対角線方向に注目画素C
xyに隣接する画素C
x−1,y−1の間の傾き(G(x,y)−G(x−1,y−1))と、注目画素C
xyおよび対角線方向に注目画素C
xyに隣接する画素C
x+1,y+1の間の傾き(G(x+1,y+1)−G(x,y))との差の絶対値、および注目画素C
xyおよび対角線方向に注目画素C
xyに隣接する画素C
x−1,y+1の間の傾き(G(x,y)−G(x−1,y+1))と、注目画素C
xyおよび対角線方向に注目画素C
xyに隣接する画素C
x+1,y−1の間の傾き(G(x+1,y−1)−G(x,y))との差の絶対値の和である。
【0053】
[形状測定処理]
図9は、制御装置11の演算処理部41によって行なわれる形状測定処理を示すフローチャートである。
図9に示されるように、演算処理部41は、ステップS1(以下ではステップを単にSと表す。)において位置指令値配列および照明指令値配列を作成し、処理をS2に進める。
【0054】
演算処理部41は、S2において、光源2の輝度を照明指令値配列によって決定される輝度に設定して被測定部品15に白色光を照射するとともに
、位置指令値配列の各値によって決定される位置にZステージ7を移動させて、各位置において干渉光の画像を取得するとともに、取得した各画像のそれぞれについて、当該画像を構成する各画素の評価値を算出し、処理をS3に進める。
【0055】
演算処理部41は、S3において、各画素の評価値が最大となるZステージ7の位置を当該画素の合焦位置として検出し、処理をS4に進める。
【0056】
演算処理部41は、各画素の合焦位置に基づいて被測定部品15の形状をモニタ14に表示し、処理を終了する。
【0057】
以下、S1〜S3の各々について詳細に説明する。
演算処理部41は、S1において、位置指令値配列および照明指令値配列を作成し、データ記憶部43にそれぞれ格納する。実施の形態では、照明指令値配列は一定値である。以下では位置指令値配列の作成方法について説明する。
【0058】
位置指令値配列のi番目の値であるEZ[i]は、EZ[i]に対応するZステージ7の座標値Z[i]、Zステージ7の最大高さZ
max、Zステージ7の最小高さZ
min、最大高さZ
maxに対応する制御電圧EZ
max、および最小高さZ
minに対応する制御電圧EZ
minを用いて以下の式(7)で表される。
【0059】
EZ[i]=Z[i](EZ
max−EZ
min)/(Z
max−Z
min) …(7)
Zステージ7は、画像を取得する間、一定の速度W(μm/秒)で移動し、途中で停止しない。位置指令値配列が先頭から順に一定の時間間隔ΔT1(秒)で参照されるとすると、座標値Z[i]は、以下の式(8)と表される。
【0060】
Z[i]=i×ΔT1×W …(8)
式(8)を式(7)に代入すると、位置指令値EZ[i]は以下の式(9)で表される。
【0061】
EZ[i]=(i×ΔT1×W)(EZ
max−EZ
min)/(Z
max−Z
min) …(9)
実施の形態では、EZ
max=10(V)、EZ
min=0(V)、Z
max=100(μm)、Z
min=0(μm)である。i番目の位置指令値EZ[i]は以下の式(10)で表される。
【0062】
EZ[i]=(i×ΔT1×W)/10 …(10)
なお、配列の要素の個数Nは、Zステージ7の移動距離をD(μm)とおくと、N=D/(ΔT1×W)である。
【0063】
図10は、位置指令値配列と、配列の順番を示す配列番号iとの関係を例示するグラフである。
図10の横軸は配列番号iを示し、縦軸は位置指令値EZ[i]を示している。
図10に示されるように、位置指令値EZ[i]は配列番号iに比例して増大する。
【0064】
再び
図9を参照してS2の説明を行なう。制御装置11は、S2において、S1で作成した位置指令値配列および照明指令値配列に基づいてZステージ7の位置および光源2の明るさを制御しながら、干渉光の画像を取得する。
【0065】
演算処理部41からの開始トリガに応答して、位置制御値出力部44および照明制御値出力部45は、それぞれ制御電圧EZおよびELの出力を開始する。位置制御値出力部44は、位置指令値配列を先頭から順次参照し、一定の時間間隔ΔT1(秒)で制御電圧EZを変更する。位置指令値配列の最後の番号に達したら、位置制御値出力部44は制御電圧EZの出力を終了する。
【0066】
画像入力部42は、演算処理部41からの開始トリガに応答して、撮像装置6からの画像の取り込みを開始する。画像入力部42は、一定の周期ΔT2で撮像装置6から出力された画像を取り込む。画像入力部42は、取り込んだ画像をDMA(Direct Memory Access)転送方式を用いてデータ記憶部43へ画像を転送する。DMA転送は、周期ΔT2と比較して短い時間で完了する。
【0067】
以下の説明においては、(x,y)は、撮像装置6によって取得される画像上の画素の位置を表す。G[k](x,y)は、撮像装置6によって取得される複数の画像のうち、k番目に取得された画像の位置(x,y)の画素の輝度を表す。G
max(x,y)は、位置(x,y)の画素の輝度の、撮影された複数の画像における最大値を表す。IDG
max(x,y)は、位置(x,y)の画素の輝度が最大となる画像の番号を表す。
【0068】
V[k](x,y)は、撮像装置6によって取得される複数の画像のうち、k番目に取得された画像の位置(x,y)の画素における分散値を表す。V
max(x,y)は、位置(x,y)の画素における分散値の、撮像装置6によって取得された複数の画像における最大値を表す。IDV
max(x,y)は、位置(x,y)における分散値が最大となる画像の番号を表す。
【0069】
演算処理部41は、画像番号kを変化させながら、撮像装置6によってk番目に取得された画像を処理の対象とする。演算処理部41は、k番目に取得された画像について、xおよびyを変化させながら、当該画像を構成する各画素について、分散値V[k](x,y)を算出する。演算処理部41は、撮像装置6によって取得される画像上の各画素について、最大輝度G
max(x,y)、最大分散値V
max(x,y)、最大輝度番号IDG
max(x,y)、最大分散値番号IDV
max(x,y)を算出する。以下では、各値の導出過程について詳細に説明する。
【0070】
図11は、演算処理部41が各画像の分散値、最大輝度、最大分散値、最大輝度番号、および最大分散値番号を算出する処理を説明するためのフローチャートである。
図11に示されるように、演算処理部41は、S20において初期化処理を行なう。演算処理部41は、初期化処理において、最大輝度G
max(x,y)および最大分散値V
max(x,y)を0に初期化する。演算処理部41は、最大輝度番号IDG
max(x,y)および最大分散値番号IDV
max(x,y)を−1に初期化する。この初期化処理は、たとえば、演算処理部41が開始トリガを出す直前に行なわれる。
【0071】
演算処理部41は、撮像装置6によってk番目に取得された画像について、xを0からM
xまで変化させるとともに、yを0からM
yまで変化させながら、S21〜S28までの処理を行なう。
【0072】
演算処理部41は、S21において、位置(x,y)の画素について、輝度の差G[k](x,y)−G[k−1](x,y)を算出し、処理をS22に進める。演算処理部41は、S22において、輝度の差の下限値TG以上であるか否か(以下の式(11)を満たすか否か)を判定する。ここで、輝度の差を
図5の干渉光の振幅とみなし、下限値TGと比較することにより振幅の小さい画像番号kの画像を検出対象から除外する。
【0073】
TG≦G[k](x,y)−G[k−1](x,y) …(11)
式(11)が満たされる場合(S22においてYES)、演算処理部41は、S23に処理を進め、輝度G[k](x,y)と最大輝度G
max(x,y)とを比較する。輝度G[k](x,y)が最大輝度G
max(x,y)よりも大きい場合(S23においてYES)、演算処理部41は、S24に処理を進める。演算処理部41は、S24において、最大輝度G
max(x,y)を輝度G[k](x,y)に更新するとともに最大輝度番号IDG
max(x,y)を画像番号kに更新し、処理をS25へ進める。
【0074】
式(11)が満たされない場合(S22においてNO)、あるいは輝度G[k](x,y)が最大輝度G
max(x,y)以下である場合(S23においてNO)、演算処理部41は、処理をS25へ進める。
【0075】
演算処理部41は、S25において、位置(x,y)の画素について、式(1)を用いて分散値V[k](x,y)を算出し、処理をS26へ進める。演算処理部41は、S26において、分散値V[k](x,y)が下限値TV以上であるか否かを判定する。分散値V[k](x,y)が下限値TV以上である場合(S26においてYES)、演算処理部41は、処理をS27へ進め、分散値V(x,y)と最大分散値V
max(x,y)とを比較する。分散値V[k](x,y)が最大分散値V
max(x,y)より大きい場合(S27においてYES)、演算処理部41は、最大分散値V
max(x,y)を分散値V[k](x,y)に更新するとともに、最大分散値番号IDV
max(x,y)を画像番号kに更新する。
【0076】
分散値V[k](x,y)が下限値TV未満である場合(S26においてNO)、あるいは分散値V[k](x,y)が最大分散値V
max(x,y)以下である場合(S27においてNO)、演算処理部41は、処理をS29へ進める。
【0077】
演算処理部41は、S29において、番号kの画像に含まれる全画素について処理を完了したか否かを判定する。番号kの画像に含まれる全画素について処理を完了していない場合(S29においてNO)、演算処理部41は、画素の位置(x,y)を次の画素の位置に更新して処理をS21へ戻す。番号kの画像に含まれる全画素について処理を完了した場合(S29においてYES)、演算処理部41は、処理をS30へ進める。
【0078】
演算処理部41は、S30において撮像装置6によって取得された全画像について処理を完了したか否かを判定する。全画像について処理が完了していない場合(S30においてNO)、演算処理部41は、画像番号kを次の画像番号に更新して処理をS21へ戻す。全画像について処理が完了した場合(S30においてYES)、処理を終了する。
【0079】
S2が終了したとき、撮像装置6によって取得された画像番号が0からk
maxの複数の画像について、最大輝度G
max(x,y)には位置(x,y)における画素の輝度の最大値が格納されている。最大輝度番号IDG
max(x,y)には、位置(x,y)における画素の輝度G[k](x,y)が最大となる画像番号kが格納されている。最大分散値V
max(x,y)には位置(x,y)における輝度の分散値V[k](x,y)の最大値が格納されている。最大分散値番号IDV
max(x,y)には、位置(x,y)における輝度の分散値V[k](x,y)が最大となる画像番号kが格納されている。
【0080】
S3において、演算処理部41は、S2で求めた最大輝度番号IDG
max(x,y)および最大分散値番号IDV
max(x,y)に基づいて、各画素の合焦位置を検出する。
【0081】
図12は、合焦位置を検出する処理(
図9のS3)をより具体的に示すフローチャートである。以下では、記載を単純にするために最大輝度番号IDG
max(x,y)を最大輝度番号M
xyと表す。
【0082】
図12に示されるように、演算処理部41は、S31において最大輝度番号M
xyが−1以外の値に更新されているか否かを判定する。最大輝度番号M
xyが−1以外の値に更新されている場合(S31においてYES)、演算処理部41は、S32に処理を進めて干渉光の輝度が最大となるZステージ7の位置に基づいて合焦位置を検出する。最大輝度番号M
xyが−1以外の値に更新されていない場合(S31においてNO)、演算処理部41は、S33に処理を進めて干渉光の輝度の分散値が最大となるZステージ7の位置に基づいて合焦位置を検出する。以下では、S32およびS33の詳細について説明する。
【0083】
S32は、最大輝度番号M
xyが−1以外の値に更新されている場合(S31においてYES)に行なわれる。最大輝度番号M
xyが−1以外の値であるということは、S2において、位置(x,y)の画素の輝度に関する式(11)が満たされる場合があったということである。このような場合、位置(x,y)の画素の輝度について明確なピークが得られているとして、干渉光の輝度に基づいて合焦位置を検出する。具体的には、(M
xy−L)番目から(M
xy+L)番目の各画像について、以下の式(12)で表される包絡線の値M[k](x,y)を画像番号kの画像上の各画素(x,y)について計算する。整数Lは、正の整数であり、たとえば5である。
【0085】
図13は、Zステージ7の光軸方向の座標値Zと干渉光の強度との関係を示す曲線Cと、曲線Cの曲線Eを示す図である。画像番号kに対応するZステージ7の光軸方向の座標値Zと包絡線の値M[k](x,y)との関係は、
図13の曲線Eとして表される。
【0086】
以下の式(13)により、式(12)によって算出された包絡線の値M[k](x,y)を用いて、各画素の合焦位置f(x,y)を算出する。
【0088】
式(13)は、
図13に示される曲線Eの重心を求めるための計算式である。包絡線の値M[k](x,y)が
図13に示されるような曲線Eの頂点を中心とした左右対称のデータの場合、重心はその中心位置となるピークP3を示す。合焦位置f(x,y)は、
図13のピークP3に対応する位置FP3となる。
【0089】
再び
図12を参照して、S33は、最大輝度番号M
xyが初期値である−1のままである場合(S31においてNO)に行なわれる。最大輝度番号M
xyが初期値のままであるということは、S2において位置(x,y)の画素の輝度に関する式(11)が満たされる場合がなかったということである。このような場合、位置(x,y)の画素の輝度についてピークが得られていないとして、実施の形態においては、式(1)によって算出される分散値を用いて合焦位置を検出する。具体的には、(M
xy−L)番目から(M
xy+L)番目の各画像について、式(1)に基づいて画像上の位置(x,y)にある画素について分散値V[k](x,y)を用いて、以下の式(14)により各画素の合焦位置f(x,y)を算出する。
【0091】
撮像装置6によって画像が取得される周期ΔT2と、Zステージ7の速度W(μm/秒)とを用いると、合焦位置f(x,y)における合焦位置配列F(x,y)は、以下の式(15)で表される。
【0092】
F(x,y)=ΔT2×W×f(x,y) …(15)
制御装置11は、式(15)で表される合焦位置配列F(x,y)をモニタ14に3次元表示することにより、被測定部品15の立体形状を表示することができる。
【0093】
実施の形態によれば、合焦位置を求めるために必要な評価値として、合焦位置を算出する対象である注目画素の輝度に加えて、注目画素の輝度と注目画素に近接する複数の単位領域の輝度との差に相関関係のある評価値として、注目画素の輝度と注目画素に近接する近接領域に含まれる画素の輝度との分散値を用いることにより、画像に含まれる複数の画素の合焦位置を精度よく算出することができる。その結果、被測定部品15の形状を正確に測定することができる。
【0094】
図14は、本発明の実施の形態に従う形状測定装置を備える塗布装置100の模式的な斜視図である。
図14に示されるように、塗布装置100は、形状測定装置1Aと、塗布機構50とを備える。形状測定装置1Aは、被塗布対象物である基板15Aの形状を測定する。塗布機構50は、基板15Aに、塗布機構50に設けられた塗布針を用いて、基板15Aの被塗布対象面(上面側)に塗布材料を塗布し、回路パターンを描画する。
【0095】
図15は、基板15Aの製造工程を示すフローチャートである。S51において塗布工程が行なわれる。塗布工程においては、基板15Aの被塗布面に回路パターンを描画する。S51に続いて、S52において形状測定工程が行なわれる。形状測定工程においては、形状測定装置1Aを用いて基板15Aの被塗布面の形状が測定される。S52に続いて、S53において検査工程が行なわれる。検査工程においては、S51において回路パターンが描画された被塗布面の形状を検査する。S53の終了により、基板15Aの製造工程が完了する。
【0096】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。