(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「熱可塑性エラストマー」とは、使用温度においては加硫ゴムと類似の特性を有し、加工温度では特性が消滅し、容易に加工ができ、使用温度に戻すと再び元の性質を発現する重合体または重合体ブレンドを意味する。
「熱可塑性樹脂」とは、加熱により、成形できる程度の熱可塑性が得られる合成樹脂を意味する。ただし、本発明においては、熱可塑性樹脂には熱可塑性エラストマーを含めない。
「第1の領域よりも第2の領域が伸長しにくい(第2の領域よりも第1の領域が伸長しやすい)」とは、伸縮フィルムを第1の領域および第2の領域の長手方向に直交する方向に伸長した際に、第1の領域の伸び(%)よりも第2の領域の伸び(%)が小さい(第2の領域の伸び(%)よりも第1の領域の伸び(%)が大きい)ことを意味する。
【0010】
<伸縮フィルム>
本発明の伸縮フィルムは、熱可塑性エラストマーを含むエラストマー層と、エラストマー層の第1の面および第2の面のいずれか一方または両方に設けられた、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを除く。)を含む表面層とを有する。
本発明の伸縮フィルムは、伸縮フィルムの面方向に沿って延びる帯状の第1の領域と、第1の領域に隣接し、第1の領域よりも伸長しにくい、伸縮フィルムの面方向に沿って延びる帯状の第2の領域とを交互に有する。
本発明の伸縮フィルムは、複数の貫通孔が形成された多孔伸縮フィルムであってもよい。
【0011】
図1は、本発明の伸縮フィルムの一例である多孔伸縮フィルムを上面から見た写真であり、
図2は、
図1の伸縮フィルムの拡大写真である。
多孔伸縮フィルム10は、エラストマー層と、エラストマー層の第1の面に設けられた第1の表面層と、エラストマー層の第2の面に設けられた第2の表面層(以下、第1の表面層および第2の表面層をまとめて単に表面層とも記す。)とを有する。多孔伸縮フィルム10の断面の図示は省略する。
【0012】
多孔伸縮フィルム10においては、MDに延びる帯状の第1の領域11と、MDに延びる帯状の第2の領域12とがTDに交互に形成されてストライプ状の模様を呈している。
貫通孔13は、各第1の領域11の長さ方向に等間隔に形成され、多孔伸縮フィルム10全体においては千鳥配置とされている。
図1および
図2においては、背景が黒色であることから、第1の領域11は不透明な白色部分として見え、第2の領域12は透明なグレーの部分として見え、貫通孔13は黒色部分として見える。
【0013】
(エラストマー層)
エラストマー層は、伸縮フィルムに伸縮性を付与する層である。
エラストマー層は、単層であってもよく、複層であってもよい。
【0014】
エラストマー層は、熱可塑性エラストマーを含む。
エラストマー層は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分を含んでもよい。
【0015】
熱可塑性エラストマー:
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。表面層中の熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂の場合、相溶性の点から、オレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0016】
熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントとからなる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーのハードセグメントとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。オレフィン系熱可塑性エラストマーのソフトセグメントとしては、エチレンプロピレン系ゴム(EPDM、EPM、EEM)、水添(スチレン)ブタジエンゴム、ポリオクテン等が挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマーのハードセグメントとしては、ポリスチレンが挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーのソフトセグメントとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレンまたはこれらの水添物が挙げられる。
【0017】
オレフィン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、下記のものが挙げられる。
Vistamaxx(登録商標)6102(ExxonMobil社製、プロピレン−エチレン共重合体、ガラス転移温度:−32℃、エチレン単位含有率:16質量%)、
Vistamaxx(登録商標)3020(ExxonMobil社製、プロピレン−エチレン共重合体、ガラス転移温度:−26℃、エチレン単位含有率:11質量%)、
Infuse(登録商標)9107(Dow Chemical社製、エチレン−オクテン共重合体、ガラス転移温度:−62℃)、
Infuse(登録商標)9507(Dow Chemical社製、エチレン−オクテン共重合体、ガラス転移温度:−62℃)等。
熱可塑性エラストマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
他の成分:
他の成分としては、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを除く。)、無機充填材、アマイド系アンチブロッキング剤(ステアリン酸アマイド等)、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、金属石鹸、ワックス、防かび剤、抗菌剤、造核剤、難燃剤、滑剤等が挙げられる。
【0019】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が挙げられる。
無機充填材としては、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ等が挙げられる。
他の成分は、マスターバッチ化してエラストマー層形成用材料に添加してもよい。
他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
エラストマー層中の各成分の割合:
熱可塑性エラストマーの割合は、エラストマー層100質量%のうち、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。熱可塑性エラストマーの割合が前記範囲の下限値以上であれば、優れた伸縮性が得られやすい。熱可塑性エラストマーの割合の上限値は100質量%である。
【0021】
熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを除く。)の割合は、エラストマー層中の樹脂成分の総量100質量%のうち、0〜20質量%が好ましい。熱可塑性樹脂の割合が前記範囲の上限値以下であれば、優れた伸縮性が得られやすい。
【0022】
エラストマー層の厚さ:
エラストマー層の厚さは、5〜50μmが好ましく、10〜45μmがより好ましく、15〜40μmがさらに好ましい。エラストマー層の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、伸縮フィルムの伸縮力が充分に得られるため、伸縮フィルムを製品に適用した際の収縮力が充分に得られる。エラストマー層の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、伸縮フィルムの伸縮力が過剰となって製品に適用した際の収縮力が強くなりすぎることを抑制できる。
エラストマー層が複層である場合のエラストマー層の厚さは、複層全体の厚さである。
【0023】
(表面層)
表面層は、伸縮フィルムのブロッキングの発生を抑える層である。
表面層は、エラストマー層の第1の面および第2の面のいずれか一方または両方に設けられる。伸縮フィルムのブロッキングの発生が充分に抑えられる点から、エラストマー層の第1の面および第2の面の両方に設けられることが好ましい。エラストマー層の第1の面に設けられた第1の表面層および第2の面に設けられた第2の表面層は、同じ種類の表面層であってもよく、異なる種類の表面層であってもよい。
【0024】
表面層は、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを除く。)を含む。
表面層は、無機充填材をさらに含むことが好ましい。
表面層は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分を含んでもよい。
【0025】
熱可塑性樹脂:
熱可塑性樹脂としては、エラストマー層中の熱可塑性エラストマーと相溶性を有するものが好ましい。エラストマー層中の熱可塑性エラストマーがオレフィン系熱可塑性エラストマーの場合、相溶性の点から、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
無機充填材:
無機充填材は、表面層の表面に滑り性を付与して、伸縮フィルムのブロッキングの発生をさらに抑える成分である。
無機充填材としては、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ等が挙げられる。
無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
無機充填材の平均粒子径は、2〜10μmが好ましい。無機充填材の平均粒子径が前記範囲の下限値以上であれば、滑り性が向上する。無機充填材の平均粒子径が前記範囲の上限値以下であれば、肌触りがよくなる。
無機充填材の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡像において無作為に選択した10個の粒子の粒子径の平均値である。
【0028】
無機充填材は、マスターバッチ化して表面層形成用材料に添加してもよい。また、無機充填材のマスターバッチをそのまま表面層形成用材料としてもよい。マスターバッチのベース樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が挙げられ、汎用性の点から、ポリエチレンが好ましい。
【0029】
無機充填材のマスターバッチの市販品としては、例えば、下記のものが挙げられる。
TEP 1HC783 WHT(HANIL TOYO社製、炭酸カルシウム(平均粒子径:5μm、含有率:50質量%)、ベース樹脂:ポリエチレン)、
PE180NLD2(サンプラック工業社製、炭酸カルシウム(平均粒子径:5μm、含有率:50質量%)、ベース樹脂:ポリエチレン)、
キノプラスEMB−7A2806AC(住化カラー社製、ゼオライト(平均粒子径:2μm、含有率:20質量%)、ベース樹脂:ポリエチレン)、
スムースマスターS(大日精化工業社製、シリカ(平均粒子径10μm、含有率:20質量%)、ベース樹脂:ポリエチレン)等。
マスターバッチは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
他の成分:
他の成分としては、アマイド系アンチブロッキング剤(ステアリン酸アマイド等)、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、金属石鹸、ワックス、防かび剤、抗菌剤、造核剤、難燃剤、滑剤等が挙げられる。
【0031】
他の成分は、マスターバッチ化して表面層形成用材料に添加してもよい。
アマイド系アンチブロッキング剤のマスターバッチとしては、リケマスター EXR−040(理研ビタミン社製、ステアリン酸アマイド含有マスターバッチ(ステアリン酸アマイド含有率:15質量%)、ベース樹脂:ポリエチレン)等が挙げられる。
他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
表面層中の各成分の割合:
熱可塑性樹脂の割合は、表面層100質量%のうち、10〜90質量%が好ましく、15〜85質量%がより好ましい。熱可塑性樹脂の割合が前記範囲の下限値以上であれば、表面層を形成することができる。
熱可塑性樹脂には、マスターバッチのベース樹脂も含まれる。
【0033】
無機充填材の割合は、表面層100質量%のうち、10〜90質量%が好ましく、15〜85質量%がより好ましい。無機充填材の割合が前記範囲の下限値以上であれば、伸縮フィルムのブロッキングの発生が充分に抑えられる。また、後述するギア延伸の際に表面層が破壊されやすくなる。無機充填材の割合が前記範囲の上限値以下であれば、表面層を形成することができる。
【0034】
表面層の厚さ:
表面層の厚さは、0.5〜10μmが好ましく、2〜9μmがより好ましく、3〜8μmがさらに好ましい。表面層の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、伸縮フィルムのブロッキングの発生が充分に抑えられる。表面層の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、伸縮フィルムの伸縮性が充分に得られる。エラストマー層の第1の面に設けられた第1の表面層および第2の面に設けられた第2の表面層は、同じ厚さであってもよく、異なる厚さであってもよい。
【0035】
(第1の領域および第2の領域)
第1の領域は、後述するギア延伸によって未延伸伸縮フィルムをストライプ状に延伸した際に表面層が延伸破壊された部分である。
第2の領域は、後述するギア延伸によって未延伸伸縮フィルムをストライプ状に延伸した際に表面層が延伸破壊されなかった部分である。
【0036】
第1の領域は、表面層が残っているものの、表面層が延伸破壊されているため、伸縮性に関してはエラストマー層単独に近くなっている。
第2の領域は、表面層が延伸破壊されていない、すなわち伸縮性のない表面層がエラストマー層の表面に残っているため、伸縮性がやや不充分である。
そのため、第1の領域よりも第2の領域が伸長しにくくなっており、第2の領域よりも第1の領域が伸長しやすくなっている。
【0037】
第1の領域の下記平均伸長倍率は、1.51〜5.00倍であり、1.60〜4.50倍が好ましい。
第2の領域の下記平均伸長倍率は、1.01〜1.50倍であり、1.01〜1.48倍が好ましい。
【0038】
平均伸長倍率:
伸縮フィルムから第1の領域および第2の領域の長手方向に50mm、長手方向に直交する方向に100mmの短冊状試験片を切り取る。試験片を試験装置のつかみ具につかみ具間距離が30mmとなるように固定する。試験片を第1の領域および第2の領域の長手方向に直交する方向に速度100mm/分で下記式(I)で算出される伸びが80%となるように伸長する。伸長倍率(倍)を下記式(III)から算出する。第1の領域および第2の領域ともに無作為に選択した12箇所の伸長倍率を算出し、平均値を求める。
伸び=(L1−L0)/L0×100 (I)
伸長倍率=R1/R0 (III)
ただし、L0は、伸長する前のつかみ具間距離(mm)であり、L1は、伸長した後のつかみ具間距離(mm)であり、R0は、伸長する前の第1の領域または第2の領域の長手方向に直交する方向の長さ(μm)であり、R1は、伸長した後の第1の領域または第2の領域の長手方向に直交する方向の長さ(μm)である(ただし、R0およびR1は、同じ領域の同じ箇所で測定する)。
【0039】
第1の領域の平均伸長倍率が前記範囲の下限値以上であれば、伸縮フィルムを伸長した際に第1の領域が優先的に伸長する。そのため、伸縮フィルム全体の伸縮性が良好となる。
第1の領域の平均伸長倍率が前記範囲の上限値以下であれば、適切な伸縮性が得られる。
第2の領域の平均伸長倍率が前記範囲内であれば、永久ひずみが小さくなり、伸縮フィルム全体の伸縮性が良好となる。
多孔伸縮性フィルムの場合、第2の領域の平均伸長倍率が前記範囲内であり、かつ第1の領域の平均伸長倍率が前記範囲の下限値以上であれば、多孔伸縮フィルムを伸長した際に表面層が破壊されている第1の領域が優先的に伸長する。そのため、貫通孔周辺にかかる応力も小さくなり、伸長時の破断が発生しにくい。また、表面層が破壊されていない第2の領域は、剛性が高く、多孔伸縮フィルムを伸長した際に変形する量が小さいため、破断が起こりにくい。
【0040】
伸長する前の第1の領域の幅および第2の領域の幅は、特に限定されず、伸縮フィルムに要求される伸縮性、通気性、柔軟性等に応じて適宜決定すればよい。
【0041】
(貫通孔)
貫通孔は、第1の領域に形成されていてもよく、第2の領域に形成されていてもよい。
貫通孔が第1の領域および第2の領域のいずれに形成されていても、多孔伸縮フィルムを伸長した際に貫通孔をきっかけにした破断が発生しにくい。第1の領域は、表面層が破壊されているため、低応力で伸長する。したがって、貫通孔周辺にかかる応力も小さくなり、伸長時の破断は起こりにくい。一方、第2の領域は、表面層が破壊されていないため、剛性が高く、伸長時の変形が起こりにくいため、破断が起こりにくい。
貫通孔は、後述する本発明の製造方法で多孔伸縮フィルムを製造した場合は、ほとんどのものが第1の領域に形成される。
【0042】
貫通孔の開口面積の平均値は、0.1〜1.5mm
2が好ましく、0.2〜1.4mm
2がより好ましい。貫通孔の開口面積の平均値が前記範囲の下限値以上であれば、多孔伸縮フィルムの通気性がさらによくなる。貫通孔の開口面積の平均値が前記範囲の上限値以下であれば、多孔伸縮フィルムを伸長した際に貫通孔をきっかけにした破断がさらに発生しにくい。
貫通孔の開口面積の平均値は、無作為に選択した50箇所の貫通孔の開口面積の平均値である。
【0043】
貫通孔の数は、多孔伸縮フィルムの1cm
2あたり、1〜20個が好ましく、3〜15個がより好ましい。貫通孔の数が前記範囲の下限値以上であれば、多孔伸縮フィルムの通気性がさらによくなる。貫通孔の数が前記範囲の上限値以下であれば、多孔伸縮フィルムを伸縮性が低下しにくい。
【0044】
(伸縮フィルムの厚さ)
伸縮フィルムの厚さは、6〜70μmが好ましく、10〜60μmがより好ましく、20〜55μmがさらに好ましい。伸縮フィルムの厚さが前記範囲の下限値以上であれば、伸縮フィルムを伸縮性が充分に高くなる。伸縮フィルムの厚さが前記範囲の上限値以下であれば、伸縮フィルムの伸縮性が過剰にならない。
【0045】
(作用効果)
以上説明した本発明の伸縮フィルムにあっては、エラストマー層の第1の面および第2の面のいずれか一方または両方に表面層が設けられているため、ブロッキングの発生が抑えられる。
また、以上説明した本発明の伸縮フィルムにあっては、複数の貫通孔が形成されている多孔伸縮フィルムの場合は、通気性がよい。
また、以上説明した本発明の伸縮フィルムにあっては、伸縮フィルムの面方向に沿って延びる、伸長倍率が1.51〜5.00倍の帯状の第1の領域と、第1の領域に隣接し、第1の領域よりも伸長しにくい、伸縮フィルムの面方向に沿って延びる、伸長倍率が1.01〜1.50倍の帯状の第2の領域とを交互に有するため、伸縮フィルム全体の伸縮性が良好となる。また、多孔伸縮フィルムの場合は、伸長した際に破断しにくく伸縮性が低下しにくい。すなわち、
図3に示すように、多孔伸縮フィルム10をTDに伸長した際に、第2の領域12よりも伸長しやすい第1の領域11が優先的に伸長する。そのため、表面層を有しているにもかかわらず多孔伸縮フィルム10全体の伸縮性が良好となる。また、多孔伸縮フィルム10の場合は、第1の領域11は低応力で伸長するため、また、第2の領域12は剛性が高く伸長しにくいため、貫通孔13をきっかけにした破断が発生しにくい。そのため、多孔伸縮フィルム10の伸縮性が低下しにくい。一方、全面にわたって伸長しやすさが均一であり、かつ伸縮性のない表面層を有するため伸縮性がやや不充分である、従来の伸縮フィルムに貫通孔を形成した場合は、該フィルムを伸長した際に該フィルムの伸長が不充分なために貫通孔に応力が集中し、貫通孔から破断しやすい。
【0046】
(他の実施形態)
本発明の伸縮フィルムは、エラストマー層と、エラストマー層の第1の面および第2の面のいずれか一方または両方に設けられた表面層とを有し、複数の貫通孔が形成され、同一の方向に延びる、伸長倍率が1.51〜5.00倍の帯状の第1の領域と、第1の領域よりも伸長しにくい、伸長倍率が1.01〜1.50倍の帯状の第2の領域とを交互に有するものであればよく、図示例の多孔伸縮フィルム10に限定されない。
例えば、表面層は、エラストマー層の第1の面および第2の面のいずれか一方のみに設けられていてもよい。
貫通孔は、形成されていなくてもよい。
貫通孔は、第1の領域のみ、あるいは第2の領域のみに形成されていてもよく、第1の領域および第2の領域の両方に形成されていてもよい。
貫通孔の配置は、千鳥配置に限定されず、格子配置であってもよく、ランダム配置であってもよい。
【0047】
<伸縮フィルムの製造方法>
本発明の伸縮フィルムの製造方法は、下記の工程(d)を有する方法である。本発明の伸縮フィルムの製造方法は、工程(c)を有していてもよい。本発明の伸縮フィルムの製造方法は、必要に応じて、下記の工程(a)および工程(b)を有していてもよい。
【0048】
工程(a):エラストマー層形成用材料および表面層形成用材料を用意する工程。
工程(b):エラストマー層と、エラストマー層の第1の面および第2の面のいずれか一方または両方に設けられた表面層とを有する未延伸伸縮フィルムを製造する工程。
工程(c):必要に応じて、未延伸伸縮フィルムをエンボス加工することによって、未延伸伸縮フィルムに点在する複数の窪み部を形成する工程。
工程(d):工程(b)の後、または工程(c)の後に、未延伸伸縮フィルムを後述するギア延伸することによって、本発明の伸縮フィルムを得る工程。
【0049】
(工程(a))
エラストマー層形成用材料が、熱可塑性エラストマーのみからなる場合は、熱可塑性エラストマーをエラストマー層形成用材料として用いる。
エラストマー層形成用材料が、熱可塑性エラストマーおよび他の成分を含む場合は、各成分を混合してエラストマー層形成用材料を調製する。他の成分は、マスターバッチ化してエラストマー層形成用材料に添加してもよい。
【0050】
表面層形成用材料が、熱可塑性樹脂のみからなる場合は、熱可塑性樹脂を表面層形成用材料として用いる。
表面層形成用材料が、熱可塑性樹脂、無機充填材、必要に応じて他の成分を含む場合は、各成分を混合して表面層形成用材料を調製する。無機充填材、他の成分は、マスターバッチ化して表面層形成用材料に添加してもよい。また、マスターバッチが熱可塑性樹脂を含む場合は、マスターバッチを表面層形成用材料としてもよい。
【0051】
各成分の混合方法としては、例えば、ヘンシェルミキサ、タンブラーミキサ、バンバリーミキサ、ニーダ等の各種ミキサを用いる方法が挙げられる。
各成分の混合順序は、特に限定されない。例えば、全成分を一度に混合してもよい。
第1の表面層形成用材料および第2の表面層形成用材料は、同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
【0052】
(工程(b))
エラストマー層形成用材料および表面層形成用材料を公知の成形方法で成形して、エラストマー層と、エラストマー層の第1の面および第2の面のいずれか一方または両方に設けられた表面層とを有する未延伸伸縮フィルムを得る。
成形方法としては、例えば、キャストフィルムプロセス法、インフレーション法等が挙げられ、生産性の点から、キャストフィルムプロセス法が好ましい。
【0053】
図4は、未延伸伸縮フィルムの一例を示す断面図である。
未延伸伸縮フィルム10’は、エラストマー層14と、エラストマー層14の第1の面に設けられた第1の表面層15と、エラストマー層14の第2の面に設けられた第2の表面層16とを有する。
【0054】
多孔伸縮フィルムを製造する場合、未延伸伸縮フィルムの下記永久ひずみは、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。
未延伸伸縮フィルムの永久ひずみ:
未延伸伸縮フィルムから機械方向(MD)に50mm、幅方向(TD)に200mmの短冊状試験片を切り取る。試験片を試験装置のつかみ具につかみ具間距離が100mmとなるように固定する。試験片をTDに速度100mm/分で下記式(I)で算出される伸びが80%となるように伸長した後、直ちに試験片を同速度にて収縮させる。永久ひずみ(%)を下記式(II)から算出する。
伸び=(L1−L0)/L0×100 (I)
永久ひずみ=(L2−L0)/(L1−L0)×100 (II)
ただし、L0は、伸長する前のつかみ具間距離(mm)であり、L1は、伸長した後のつかみ具間距離(mm)であり、L2は、収縮させる際に試験片の荷重(N/50mm)が0になるときのつかみ具間距離(mm)である。
【0055】
未延伸伸縮フィルムの永久ひずみが、前記範囲の下限値以上であれば、工程(c)を経て工程(d)におけるギア延伸によって貫通孔が形成された後、多孔伸縮フィルムの収縮力が大きすぎる(永久ひずみが小さすぎる)ことがないため、多孔伸縮フィルムの収縮によって貫通孔が塞がれることがなく、通気性を充分に確保できる。
【0056】
(工程(c))
多孔伸縮フィルムを製造する場合、工程(c)において未延伸伸縮フィルムをエンボス加工する。
未延伸伸縮フィルムをエンボス加工することによって、未延伸伸縮フィルムに点在する複数の窪み部を形成する。窪み部は、工程(d)においてギア延伸された際に貫通孔となる部分である。
【0057】
エンボス加工の方法としては、例えば、ロールプレス法、差圧法、高圧ジェット法等が挙げられる。
ロールプレス法は、周面に多数の突出ピンが設けられたピンエンボスロールと、これに対応するアンビルロールとを対向配置し、これらロール間に未延伸伸縮フィルムを通す方法である。
差圧法は、未延伸伸縮フィルムを軟化温度付近に軟化させて、多数の開孔を有する支持体の上面に位置させた状態で、支持体の下方から吸引したり、支持体の上面から空気圧で加圧したりする方法である。
高圧ジェット法は、多数の高圧液体ジェットノズルから噴出される液体の高圧ジェットによって未延伸伸縮フィルムを変形させる方法である。
【0058】
窪み部は、未延伸伸縮フィルムを貫通しない程度の深さとする。貫通した窪み部が多数発生した場合、工程(d)におけるギア延伸によって処理で未延伸伸縮フィルムが破断するおそれがある。
窪み部の深さは、例えば、ピンエンボスロールに設けられた突出ピンの高さによって調整できる。
ピンエンボスロールの突出ピンの形状、数、配置等は、多孔伸縮フィルムの貫通孔の形状、数、配置等に応じて適宜決定すればよい。
【0059】
(工程(d))
工程(b)の後、または工程(c)の後に、未延伸伸縮フィルムをギア延伸することによって、未延伸伸縮フィルムをストライプ状に延伸し、第1の領域および第2の領域を交互に有する本発明の伸縮フィルムを得る。また、工程(c)の後に、未延伸伸縮フィルムをギア延伸することによって、貫通孔が形成された多孔伸縮フィルムを得る。
ギア延伸は、具体的には、下記のように行われる。
【0060】
周方向または軸方向に延びる複数の凸条を有する第1の賦形ロールと、前記第1の賦形ロールの凸条と同じ方向に延びる複数の凸条を有する第2の賦形ロールとを、一方の賦形ロールの凸条と他方の賦形ロールの凸条間の溝とが噛み合ように対向配置する。
【0061】
図5は、一対の賦形ロールの一例を示す拡大図である。
円筒状のロール本体22の周面に周方向に延びる複数の凸条24を有する第1の賦形ロール20と、円筒状のロール本体32の周面に周方向に延びる複数の凸条34を有する第2の賦形ロール30とが、第1の賦形ロール20の凸条24と第2の賦形ロール30の凸条34間の溝36とが噛み合ように、かつ第1の賦形ロール20の凸条24間の溝26と第2の賦形ロール30の凸条34とが噛み合ように所定のクリアランスを設けて対向配置されている。
【0062】
図6は、一対の賦形ロールの他の例を示す拡大図である。
円筒状のロール本体42の周面に軸方向に延びる複数の凸条44を有する第1の賦形ロール40と、円筒状のロール本体52の周面に軸方向に延びる複数の凸条54を有する第2の賦形ロール50とが、第1の賦形ロール40の凸条44と第2の賦形ロール50の凸条54間の溝56とが噛み合ように、かつ第1の賦形ロール40の凸条44間の溝46と第2の賦形ロール50の凸条54とが噛み合ように所定のクリアランスを設けて対向配置されている。
【0063】
第1の賦形ロールと第2の賦形ロールとを回転させながら、第1の賦形ロールと第2の賦形ロールとの間に、エンボス加工された未延伸伸縮フィルムを通すことによって、第1の賦形ロールの凸条と第2の賦形ロールの凸条との間で延伸された第1の領域および延伸されなかった第2の領域を形成する。未延伸伸縮フィルムがエンボス加工されている場合、第1の領域および第2の領域を形成すると同時に、未延伸伸縮フィルムの窪み部を延伸して貫通孔を形成する。
【0064】
図5の一対の賦形ロールによれば、これらの間を通る未延伸伸縮フィルムが第1の賦形ロール20の凸条24によって下方に押され、かつ第2の賦形ロール30の凸条34によって上方に押される。そのため、未延伸伸縮フィルムは、隣り合う第1の賦形ロール20の凸条24と第2の賦形ロール30の凸条34とによって部分的に上下斜め方向に延伸され、第1の領域となる。このとき、未延伸伸縮フィルムの延伸される部分に窪み部が存在すれば、窪み部は薄肉のため延伸によって開裂し、貫通孔となる。一方、未延伸伸縮フィルムにおいて、第1の賦形ロール20の凸条24の頂部または第2の賦形ロール30の凸条34の頂部に接する部分は、延伸されないため、第2の領域となる。
図5の一対の賦形ロールによって未延伸伸縮フィルムが部分的に延伸される方向はTDとなるため、
図5の一対の賦形ロールによるギア延伸は、TDギア延伸とも呼ばれる。TDギア延伸によれば、
図1および
図2に示すように、MDに延びる帯状の第1の領域11と、MDに延びる帯状の第2の領域12とがTDに交互に形成される。
【0065】
図6の一対の賦形ロールによれば、これらの間を通る未延伸伸縮フィルムが第1の賦形ロール40の凸条44によって下方に押され、かつ第2の賦形ロール50の凸条54によって上方に押される。そのため、未延伸伸縮フィルムは、隣り合う第1の賦形ロール40の凸条44と第2の賦形ロール50の凸条54とによって部分的に上下斜め方向に延伸され、第1の領域となる。このとき、未延伸伸縮フィルムの延伸される部分に窪み部が存在すれば、窪み部は薄肉のため延伸によって開裂し、貫通孔となる。一方、未延伸伸縮フィルムにおいて、第1の賦形ロール40の凸条44の頂部または第2の賦形ロール50の凸条54の頂部に接する部分は、延伸されないため、第2の領域となる。
図6の一対の賦形ロールによって未延伸伸縮フィルムが部分的に延伸される方向はMDとなるため、
図6の一対の賦形ロールによるギア延伸は、MDギア延伸とも呼ばれる。MDギア延伸によれば、TDに延びる帯状の第1の領域と、TDに延びる帯状の第2の領域とがMDに交互に形成される。
【0066】
通常のフィルムを全体的に延伸する場合、フィルムの弾性限界を超えて延伸させると、フィルムに不可逆的な変化が起こる。多くの場合、フィルムの不可逆的な変化には、色調変化(白化)や寸法変化(長さや幅の増大または減少)を伴う。この寸法変化は、永久ひずみと呼ばれる。弾性限界を超える延伸によって永久ひずみが発生したフィルムは、(延伸倍率−永久ひずみ)の範囲内で弾性的な挙動をする。例えば、長さ100mmのフィルムを200mm(延伸倍率:2倍)に延伸し、30%の永久ひずみが発生した場合、フィルムの延伸後の長さは130mmであり、100%−30%=70%、すなわち130mm〜200mmの範囲内で弾性的な挙動を持つこととなる。ここで、弾性的な挙動とは、力を加えて寸法が変化しても、その力を除いた際に再び元の寸法に戻る性質をいう。延伸後のフィルムは、その長さが延伸前の100mmから130mmに変化していることから、100%〜154%(130mm/130mm〜200mm/130mm)の範囲内で弾性的な挙動をする(弾性を有する)。
【0067】
ギア延伸においては、未延伸伸縮フィルムを部分的にその弾性限界を超えて延伸させる。ギア延伸によって部分的にその弾性限界を超えて延伸された未延伸伸縮フィルムは、色調変化をおこす。すなわち、
図1および
図2における白色部分の第1の領域は、弾性限界を超えて延伸され、永久ひずみを発生し、その結果、ある範囲で弾性を有するようになった領域である。この色調変化は、未延伸伸縮フィルムの構造に不可逆的な変化が起こっていることを示す。例えば、未延伸伸縮フィルムが非エラストマーである熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)を含む表面層を有する場合、弾性限界を超える延伸によって表面層は延伸破壊される。延伸破壊された表面層には、内部にヒビ、微細孔等の空隙が発生する。この空隙は、表面層に入り込んだ光の乱反射を起こし、外観上は白色に見えるようになる。また、破壊された表面層は、その本来持つ機械強度を失う。これに伴い、第1の領域は、表面層の拘束から解放され、その本来持つ弾性(エラストマー層による伸縮性)が発現するようになる。
なお、ギア延伸によって延伸されなかった部分、すなわち第2の領域は、色調の変化は起こらない。
【0068】
ギア延伸においては、賦形ロールの凸条の頂部の幅W、凸条の高さH、隣り合う凸条の頂部間の間隔P、第1の賦形ロールの凸条と第2の賦形ロールの凸条との噛み合い深さD等を調整することによって、延伸倍率を調整できる。
ギア延伸における延伸倍率の計算は、その延伸原理から、三平方の定理により容易に算出できる。例えば、隣り合う第1の賦形ロールの凸条の頂部と第2の賦形ロールの凸条の頂部との間隔(未延伸伸縮フィルムの延伸される部分の幅)が1mm、噛み合い深さが√3mmであった場合、未延伸伸縮フィルムの延伸された部分の幅は2mmとなり、延伸倍率は2倍となる。ここで、永久ひずみが30%であった場合、延伸された部分の幅は、延伸前の1mmから1.3mmに変化する。
【0069】
第1の領域の幅および第2の領域の幅、長さは、特に限定されず、伸縮フィルムの使用目的等に応じて適宜決定すればよい。
貫通孔の開口部の面積は、ピンエンボスロールの突出ピンの大きさ、形状、および延伸倍率によって適宜調整できる。
【0070】
(作用効果)
以上説明した本発明の伸縮フィルムの製造方法にあっては、エラストマー層の第1の面および第2の面のいずれか一方または両方に設けられた表面層とを有する未延伸伸縮フィルムを上述したギア延伸しているため、第1の領域の幅および第2の領域を有する伸縮フィルムを製造できる。すなわち、ブロッキングの発生が抑えられ、かつ伸縮性が良好である伸縮フィルムを製造できる。
また、未延伸伸縮フィルムをエンボス加工することによって、未延伸伸縮フィルムに点在する複数の窪み部を形成し、エンボス加工された未延伸伸縮フィルムを上述したギア延伸した場合、第1の領域の幅および第2の領域を有し、かつ貫通孔が形成された多孔伸縮フィルムを製造できる。すなわち、ブロッキングの発生が抑えられ、通気性がよく、かつ伸縮性が良好である多孔伸縮フィルムを製造できる。
【0071】
(他の実施形態)
本発明の伸縮フィルムのうち、多孔伸縮フィルムについては、エンボス加工とギア延伸とを組み合わせた方法以外の製造方法によって製造しても構わない。
例えば、エンボス加工していない未延伸伸縮フィルムをギア延伸し、第1の領域および第2の領域を形成した後、公知の開口手段(スリッティング、ホットピンメルト等)によって貫通孔を形成してもよい。
【0072】
<複合シート>
本発明の複合シートは、本発明の伸縮フィルムからなる層と、不織布からなる層とを有する。
【0073】
(不織布)
不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、フラッシュ紡糸不織布、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、湿式不織布、乾式不織布等が挙げられる。
不織布の繊維としては、合成繊維(ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等)、天然繊維(綿、絹)、半合成繊維(レーヨン繊維、アセテート繊維等)等が挙げられる。
不織布には、伸長性付与加工(柔軟加工、ひだ付け加工、収縮加工、縮充加工等)を施してもよい。
【0074】
(複合シートの製造方法)
複合シートは、例えば、本発明の伸縮フィルムと不織布とを接合し、積層することによって製造される。
接合方法としては、熱プレス法、熱エンボス接着法、ホットメルト接着剤による接着、超音波接着法、高周波接着法等が挙げられる。
【0075】
(作用効果)
以上説明した本発明の複合シートにあっては、本発明の伸縮フィルムからなる層を有するため、伸縮フィルムからなる層によるブロッキングの発生が抑えられ、かつ伸縮性が良好である。
また、以上説明した本発明の複合シートにあっては、本発明の伸縮フィルムが多孔伸縮フィルムの場合は、通気性がよい。
【0076】
(他の実施形態)
本発明の複合シートは、本発明の伸縮フィルムからなる層と、不織布からなる層とを有するものであればよく、本発明の伸縮フィルムからなる層および不織布からなる層のみからなるものに限定はされない。
例えば、本発明の複合シートの効果を損なわない範囲において、本発明の伸縮フィルムからなる層および不織布からなる層以外の他の層を有していてもよい。
【実施例】
【0077】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0078】
<測定方法、評価方法>
(各層の厚さ)
未延伸伸縮フィルムにおけるエラストマー層および表面層の厚さは、マイクロスコープによる断面観察によって求めた。
【0079】
(伸縮フィルムの永久ひずみ)
伸縮フィルムから機械方向(MD)に50mm、幅方向(TD)に200mmの短冊状試験片を切り取った。試験片を精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフ、材料試験オペレーションソフトウエア:TRAPEZIUM2)のつかみ具につかみ具間距離が100mmとなるように固定した。試験片をTDに速度100mm/分で下記式(I)で算出される伸びが80%となるように伸長した後、直ちに試験片を同速度にて収縮させた。1サイクル目の永久ひずみ(%)を下記式(II)から算出した。1サイクル目に用いた試験片を用い、同じ操作をもう一度繰り返し、2サイクル目の永久ひずみ(%)を算出した。試験は、23℃±2℃で行った。
伸び=(L1−L0)/L0×100 (I)
永久ひずみ=(L2−L0)/(L1−L0)×100 (II)
ただし、L0は、伸長する前のつかみ具間距離(mm)であり、L1は、伸長した後のつかみ具間距離(mm)であり、L2は、収縮させる際に試験片の荷重(N/50mm)が0になるときのつかみ具間距離(mm)である。
【0080】
(伸縮フィルムの通気性)
伸縮フィルムについて、JIS P 8117:2009(ISO 5636−5:2003)に準拠し、ガーレ式デンソメータ(東洋精機製作所社製、G−B3C型)を用いて空気100mLが通過する時間を測定し、透気抵抗度(秒/100mL)とした。透気抵抗度は、通気性の指標となる。透気抵抗度が小さいほど、通気性がよい。下限の検出限界は1.4秒/100mLである。
【0081】
(第1の領域および第2の領域の平均伸長倍率)
伸縮フィルムから機械方向(MD)に50mm、幅方向(TD)に100mmの短冊状試験片を切り取った。試験片を精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフ、材料試験オペレーションソフトウエア:TRAPEZIUM2)のつかみ具につかみ具間距離が30mmとなるように固定した。試験片をTDに速度100mm/分で下記式(I)で算出される伸びが80%となるように伸長した。伸長倍率(倍)を下記式(III)から算出した。第1の領域および第2の領域ともに無作為に選択した12箇所の伸長倍率を算出し、平均値を求めた。試験は、23℃±2℃で行った。
伸び=(L1−L0)/L0×100 (I)
伸長倍率=R1/R0 (III)
ただし、L0は、伸長する前のつかみ具間距離(mm)であり、L1は、伸長した後のつかみ具間距離(mm)であり、R0は、伸長する前の第1の領域または第2の領域の長手方向に直交する方向の長さ(μm)であり、R1は、伸長した後の第1の領域または第2の領域の長手方向に直交する方向の長さ(μm)である(ただし、R0およびR1は、同じ領域の同じ箇所で測定する)。
【0082】
<原料>
(熱可塑性エラストマー)
Vistamaxx(登録商標)6102(ExxonMobil社製、プロピレン−エチレン共重合体、ガラス転移温度:−32℃、エチレン単位含有率:16質量%)。
(熱可塑性樹脂)
スミカセン(登録商標)CE3506(住友化学社製、ポリエチレン)。
(マスターバッチ)
TEP 1HC783 WHT(HANIL TOYO社製、炭酸カルシウム(平均粒子径:5μm、含有率:50質量%)、ベース樹脂:ポリエチレン)。
【0083】
(エラストマー層形成用材料)
エラストマー層形成用材料(A−1)としては、熱可塑性エラストマーをそのまま用いた。
(表面層形成用材料)
表面層形成用材料(B−1)としては、熱可塑性樹脂とマスターバッチとをタンブラーミキサで混合して得られた、ポリエチレン85質量%および炭酸カルシウム15質量%からなる混合物を用いた。
表面層形成用材料(B−2)としては、マスターバッチをそのまま用いた。
【0084】
<未延伸伸縮フィルムの製造>
(製造例1)
Tダイを備えた押出機(住友重機械モダン社製)を用い、エラストマー層形成用材料(A−1)および表面層形成用材料(B−1)を200℃で押出成形し、キャストフィルムプロセス法によって、エラストマー層と、エラストマー層の第1の面に設けられた第1の表面層と、エラストマー層の第2の面に設けられた第2の表面層とを有する未延伸伸縮フィルム(F−1)を得た。各層の厚さを表1および表2に示す。
【0085】
(製造例2)
表面層形成用材料(B−1)を表面層形成用材料(B−2)に変更した以外は、製造例1と同様にして、エラストマー層と、エラストマー層の第1の面に設けられた第1の表面層と、エラストマー層の第2の面に設けられた第2の表面層とを有する未延伸伸縮フィルム(F−2)を得た。各層の厚さを表3および表4に示す。
【0086】
<多孔伸縮フィルムまたは伸縮フィルムの製造>
(実施例1)
未延伸伸縮フィルム(F−1)をロールプレス法でエンボス加工した。
ピンエンボスロールに設けられた突出ピンの形状は、円柱(直径:0.5mm、高さ:0.8mm)とし、突出ピンの配置は、間隔3mmの千鳥配置とした。
【0087】
エンボス加工された未延伸伸縮フィルムを、
図5に示すような一対の賦形ロールを用いてTDギア延伸し、多孔伸縮フィルムを得た。多孔伸縮フィルムについて評価を行った。結果を表1に示す。
TDギア延伸においては、第1の賦形ロールの凸条の頂部の幅は0.5mmとし、第2の賦形ロールの凸条の頂部の幅は0.5mmとし、第1の賦形ロールの凸条の頂部間の間隔は2.5mmとし、第1の賦形ロールの凸条の頂部間の間隔は2.5mmとし、第1の賦形ロールの凸条と第2の賦形ロールの凸条との噛み合い深さは2.9mm(210%)とした。
【0088】
(実施例2)
エンボス加工を行わず、TDギア延伸を行った以外は、実施例1と同様にして、伸縮フィルムを得た。伸縮フィルムについて評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(比較例1)
エンボス加工を行い、TDギア延伸を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、伸縮フィルムを得た。伸縮フィルムについて評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(比較例2)
未延伸伸縮フィルム(F−1)について評価を行った。結果を表2に示す。
【0091】
(比較例3)
未延伸伸縮フィルム(F−1)にスリッティングによってスリットを形成し、多孔伸縮フィルムを得た。多孔伸縮フィルムについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0092】
(比較例4)
未延伸伸縮フィルム(F−1)にホットピンメルトによって貫通孔を形成し、多孔伸縮フィルムを得た。多孔伸縮フィルムについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
(実施例3)
未延伸伸縮フィルム(F−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、多孔伸縮フィルムを得た。多孔伸縮フィルムについて評価を行った。結果を表3に示す。
ただし、TDギア延伸においては、第1の賦形ロールの凸条と第2の賦形ロールの凸条との噛み合い深さは3.2mm(240%)とした。
【0096】
(実施例4)
エンボス加工を行わず、TDギア延伸を行った以外は、実施例3と同様にして、伸縮フィルムを得た。伸縮フィルムについて評価を行った。結果を表3に示す。
【0097】
(比較例5)
エンボス加工を行い、TDギア延伸を行わなかった以外は、実施例3と同様にして、伸縮フィルムを得た。伸縮フィルムについて評価を行った。結果を表3に示す。
【0098】
(比較例6)
未延伸伸縮フィルム(F−2)について評価を行った。結果を表4に示す。
【0099】
(比較例7)
未延伸伸縮フィルム(F−2)にスリッティングによってスリットを形成し、多孔伸縮フィルムを得た。多孔伸縮フィルムについて評価を行った。結果を表4に示す。
【0100】
(比較例8)
未延伸伸縮フィルム(F−2)にホットピンメルトによって貫通孔を形成し、多孔伸縮フィルムを得た。多孔伸縮フィルムについて評価を行った。結果を表4に示す。
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
実施例1、3の結果から、未延伸伸縮フィルムをエンボス加工し、ギア延伸することによって、第1の領域および第2の領域が形成されると同時に、貫通孔が形成されることが分かる。第1の領域および第2の領域を有し、貫通孔が形成された多孔伸縮フィルムは、永久ひずみが小さく(伸縮性がよく)、通気性も高い。
実施例2、4の結果から、未延伸伸縮フィルムをエンボス加工せずにギア延伸することによって、第1の領域および第2の領域が形成されるが、貫通孔が形成されないことが分かる。第1の領域および第2の領域を有する伸縮フィルムは、永久ひずみが小さい(伸縮性がよい)。
比較例1、5の結果から、未延伸伸縮フィルムをエンボス加工しただけでは、第1の領域および第2の領域、ならびに貫通孔が形成されないことが分かる。また、永久ひずみが比較的大きく、伸縮性が不充分であることが分かる。
比較例2、6の結果から、未延伸伸縮フィルム自体は、永久ひずみが比較的大きく(伸縮性が不充分であり)、通気性もないことが分かる。
比較例3、4、7、8の結果から、未延伸伸縮フィルムにスリッティングやホットメルトによってスリットや貫通孔を形成しただけでは、伸縮フィルムを伸長した際に応力がスリットや貫通孔に集中し、破断することが分かる。