(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記第1の運転モードから前記第2の運転モードに移行する際、又は、前記第2の運転モードで前記圧縮機を起動する際、前記第2の開閉弁を開いた状態で前記室外膨張弁を開け、前記圧縮機を運転することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空気調和装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、圧縮機が停止しているときのアキュムレータ内では、圧縮機から出て冷媒回路内を流れて来た冷媒とオイルが流入し、そのうちの液体の部分がアキュムレータ内に溜まり、比重の軽いオイルが液状の冷媒の上に層を作り、蓋をしたような安定状態となっている。特に、外気温度が低い環境で実行されることになる暖房モードでは、室外熱交換器から出て暖房用の電磁弁を通り、アキュムレータに流入してその内部に溜まる液冷媒とオイルの量も多くなるため、アキュムレータの出口近くまでオイル面(アキュムレータ内の液面)が上昇するようになる。
【0006】
このような状態で、冷媒を室外膨張弁で減圧する暖房モードから、冷媒を室内膨張弁で減圧する他の運転モード(上記除湿暖房モードや除湿冷房モード、冷房モード)に切り換えられると、室外熱交換器から出た冷媒が室内膨張弁側に流れるようになる。他方、圧縮機はアキュムレータ内の冷媒を吸引するため、アキュムレータ内の圧力は急激に低下することになる。このようにアキュムレータ内の圧力が急激に下がると、オイルより下の冷媒が一気に沸騰して気化し、上のオイルの層を激しく突き破る所謂突沸と称される現象が発生する。
【0007】
そして、この突沸が激しくなると、アキュムレータ内の多くの液冷媒が出口から外部に押し出されるようになるため、圧縮機へ過剰な液戻りが発生し、液圧縮により圧縮機の信頼性が損なわれることになる。また、アキュムレータ内での突沸現象は比較的大きな音を伴うため、騒音の発生により搭乗者の快適性が損なわれる問題もあった。
【0008】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、冷媒を室外膨張弁で減圧する運転モードから冷媒を室内膨張弁で減圧する運転モードに切り換えるとき等に生じる圧縮機への液戻りとアキュムレータ内での騒音の発生を防止若しくは抑制することができる車両用空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、冷媒を放熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒を吸熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、車室外に設けられた室外熱交換器と、放熱器を出て室外熱交換器に流入する冷媒を減圧するための室外膨張弁と、吸熱器に流入する冷媒を減圧するための室内膨張弁と、圧縮機の冷媒吸込側に接続されたアキュムレータと、室外熱交換器から出た冷媒を、室内膨張弁を経て吸熱器に流すための第1の開閉弁と、室外熱交換器から出た冷媒を、吸熱器を経ること無くアキュムレータに流すための第2の開閉弁と、制御装置を備え、この制御装置により、第1の開閉弁を閉じ、第2の開閉弁を開くことで、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を室外膨張弁で減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させ、この室外熱交換器から出た冷媒をアキュムレータに流し、このアキュムレータから圧縮機に吸い込ませる第1の運転モードと、第1の開閉弁を開き、第2の開閉弁を閉じることで、室外熱交換器から出た冷媒を室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させ、この吸熱器から出た冷媒をアキュムレータに流し、このアキュムレータから圧縮機に吸い込ませる第2の運転モードを切り換えて実行するものであって、制御装置は、第1の運転モードから第2の運転モードに移行する際、移行から所定期間、第2の開閉弁を開くことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明の車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、冷媒を放熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒を吸熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、車室外に設けられた室外熱交換器と、放熱器を出て室外熱交換器に流入する冷媒を減圧するための室外膨張弁と、吸熱器に流入する冷媒を減圧するための室内膨張弁と、圧縮機の冷媒吸込側に接続されたアキュムレータと、室外熱交換器から出た冷媒を、室内膨張弁を経て吸熱器に流すための第1の開閉弁と、室外熱交換器から出た冷媒を、吸熱器を経ること無くアキュムレータに流すための第2の開閉弁と、制御装置を備え、この制御装置により、第1の開閉弁を閉じ、第2の開閉弁を開くことで、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を室外膨張弁で減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させ、この室外熱交換器から出た冷媒をアキュムレータに流し、このアキュムレータから圧縮機に吸い込ませる第1の運転モードと、第1の開閉弁を開き、第2の開閉弁を閉じることで、室外熱交換器から出た冷媒を室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させ、この吸熱器から出た冷媒をアキュムレータに流し、このアキュムレータから圧縮機に吸い込ませる第2の運転モードを切り換えて実行するものであって、制御装置は、第2の運転モードで圧縮機を起動する際、起動から所定期間、第2の開閉弁を開くことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御装置は、第1の運転モードから第2の運転モードに移行する際、又は、第2の運転モードで圧縮機を起動する際、第2の開閉弁を開いた状態で室外膨張弁を開け、圧縮機を運転することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において放熱器及び室外膨張弁をバイパスして、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器に直接流入させるためのバイパス配管と、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器に流すための第3の開閉弁と、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス配管に流すための第4の開閉弁と、空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための補助加熱装置を備え、第1の運転モードは暖房モードであり、この暖房モードでは、第3の開閉弁を開き、第4の開閉弁を閉じると共に、第2の運転モードは、第3の開閉弁及び室外膨張弁を閉じ、第4の開閉弁を開くことにより、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス配管から室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させると共に、補助加熱装置を発熱させる除湿暖房モードと、第3の開閉弁を開き、第4の開閉弁を閉じることにより、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該放熱器及び室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させる除湿冷房モードと、第3の開閉弁を開き、第4の開閉弁を閉じることにより、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させる冷房モードと、第3の開閉弁及び室外膨張弁を閉じ、第4の開閉弁を開くことにより、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス配管から室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させる最大冷房モードのうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てであることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において第2の運転モードは、除湿冷房モード、及び/又は、冷房モードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、冷媒を放熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒を吸熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、車室外に設けられた室外熱交換器と、放熱器を出て室外熱交換器に流入する冷媒を減圧するための室外膨張弁と、吸熱器に流入する冷媒を減圧するための室内膨張弁と、圧縮機の冷媒吸込側に接続されたアキュムレータと、室外熱交換器から出た冷媒を、室内膨張弁を経て吸熱器に流すための第1の開閉弁と、室外熱交換器から出た冷媒を、吸熱器を経ること無くアキュムレータに流すための第2の開閉弁と、制御装置を備え、この制御装置により、第1の開閉弁を閉じ、第2の開閉弁を開くことで、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を室外膨張弁で減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させ、この室外熱交換器から出た冷媒をアキュムレータに流し、このアキュムレータから圧縮機に吸い込ませる第1の運転モードと、第1の開閉弁を開き、第2の開閉弁を閉じることで、室外熱交換器から出た冷媒を室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させ、この吸熱器から出た冷媒をアキュムレータに流し、このアキュムレータから圧縮機に吸い込ませる第2の運転モードを切り換えて実行する車両用空気調和装置において、制御装置が、第1の運転モードから第2の運転モードに移行する際、移行から所定期間、第2の開閉弁を開くので、第1の運転モードから第2の運転モードに切り換える際に、第2の開閉弁を経てアキュムレータに多量の冷媒を戻し、内部を攪拌することができるようになる。
【0015】
これにより、アキュムレータ内の安定状態を崩すことができるので、液冷媒の上をオイルが蓋をしたような安定状態でアキュムレータ内の圧力が低下したときに生じる突沸の発生を防止若しくは抑制し、圧縮機での液圧縮やアキュムレータ内での騒音の発生を効果的に解消若しくは抑制することができるようになり、車両用空気調和装置の信頼性を向上させ、搭乗者の快適性も効果的に改善することができるようになる。
【0016】
請求項2の発明によれば、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、冷媒を放熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒を吸熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、車室外に設けられた室外熱交換器と、放熱器を出て室外熱交換器に流入する冷媒を減圧するための室外膨張弁と、吸熱器に流入する冷媒を減圧するための室内膨張弁と、圧縮機の冷媒吸込側に接続されたアキュムレータと、室外熱交換器から出た冷媒を、室内膨張弁を経て吸熱器に流すための第1の開閉弁と、室外熱交換器から出た冷媒を、吸熱器を経ること無くアキュムレータに流すための第2の開閉弁と、制御装置を備え、この制御装置により、第1の開閉弁を閉じ、第2の開閉弁を開くことで、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を室外膨張弁で減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させ、この室外熱交換器から出た冷媒をアキュムレータに流し、このアキュムレータから圧縮機に吸い込ませる第1の運転モードと、第1の開閉弁を開き、第2の開閉弁を閉じることで、室外熱交換器から出た冷媒を室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させ、この吸熱器から出た冷媒をアキュムレータに流し、このアキュムレータから圧縮機に吸い込ませる第2の運転モードを切り換えて実行する車両用空気調和装置において、制御装置が、第2の運転モードで圧縮機を起動する際、起動から所定期間、第2の開閉弁を開くので、第2の運転モードで圧縮機を起動する際に、第2の開閉弁を経てアキュムレータに多量の冷媒を戻し、内部を攪拌することができるようになる。
【0017】
これにより、同様にアキュムレータ内の安定状態を崩すことができるので、液冷媒の上をオイルが蓋をしたような安定状態でアキュムレータ内の圧力が低下したときに生じる突沸の発生を防止若しくは抑制し、圧縮機での液圧縮やアキュムレータ内での騒音の発生を効果的に解消若しくは抑制することができるようになり、車両用空気調和装置の信頼性を向上させ、搭乗者の快適性も効果的に改善することができるようになる。
【0018】
請求項3の発明によれば、上記各発明に加えて制御装置が、第1の運転モードから第2の運転モードに移行する際、又は、第2の運転モードで圧縮機を起動する際、第2の開閉弁を開いた状態で室外膨張弁を開け、圧縮機を運転するので、アキュムレータにより多量の冷媒を流入させ、内部の攪拌をより一層促進することができるようになる。
【0019】
ここで、請求項4の発明の如く放熱器及び室外膨張弁をバイパスして、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器に直接流入させるためのバイパス配管と、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器に流すための第3の開閉弁と、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス配管に流すための第4の開閉弁と、空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための補助加熱装置を備え、第1の運転モードが暖房モードであり、この暖房モードでは、第3の開閉弁を開き、第4の開閉弁を閉じると共に、第2の運転モードが、第3の開閉弁及び室外膨張弁を閉じ、第4の開閉弁を開くことにより、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス配管から室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させると共に、補助加熱装置を発熱させる除湿暖房モードと、第3の開閉弁を開き、第4の開閉弁を閉じることにより、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該放熱器及び室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させる除湿冷房モードと、第3の開閉弁を開き、第4の開閉弁を閉じることにより、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させる冷房モードと、第3の開閉弁及び室外膨張弁を閉じ、第4の開閉弁を開くことにより、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス配管から室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を室内膨張弁で減圧した後、吸熱器にて吸熱させる最大冷房モードのうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てであるときに、請求項5の発明の如く第2の運転モードを、除湿冷房モード、及び/又は、冷房モードとすれば、暖房モードから除湿冷房モードや冷房モードへの移行時の冷媒掃気運転は不要であるので、暖房モードから除湿冷房モードや冷房モードに移行する際に、移行から所定期間、第2の開閉弁を開いても、当該第2の開閉弁において騒音は発生しない。従って、第2の開閉弁における騒音の発生を回避しながら、比較的短時間で効果的にアキュムレータ内を攪拌し、突沸を防止することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施例の車両用空気調和装置1の構成図を示している。本発明を適用する実施例の車両は、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)であって、バッテリに充電された電力で走行用の電動モータを駆動して走行するものであり(何れも図示せず)、本発明の車両用空気調和装置1も、バッテリの電力で駆動されるものとする。即ち、実施例の車両用空気調和装置1は、エンジン廃熱による暖房ができない電気自動車において、冷媒回路を用いたヒートポンプ運転により暖房モードを行い、更に、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、MAX冷房モード(最大冷房モード)の各運転モードを選択的に実行するものである。
【0023】
尚、車両として電気自動車に限らず、エンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車にも本発明は有効であり、更には、エンジンで走行する通常の自動車にも適用可能であることは云うまでもない。また、上記暖房モードが本発明における第1の運転モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、及び、MAX冷房モードが本発明における第2の運転モードである。
【0024】
実施例の車両用空気調和装置1は、電気自動車の車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び、換気)を行うものであり、冷媒を圧縮する電動式の圧縮機2と、車室内空気が通気循環されるHVACユニット10の空気流通路3内に設けられ、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒が冷媒配管13Gを介して流入し、この冷媒を車室内に放熱させる放熱器4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室外膨張弁6と、車室外に設けられて冷房時には放熱器として機能し、暖房時には蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室内膨張弁8と、空気流通路3内に設けられて冷房時及び除湿時に車室内外から冷媒に吸熱させる吸熱器9と、アキュムレータ12等が冷媒配管13により順次接続され、冷媒回路Rが構成されている。
【0025】
そして、この冷媒回路Rには所定量の冷媒と潤滑用のオイルが充填されている。尚、室外熱交換器7には、室外送風機15が設けられている。この室外送風機15は、室外熱交換器7に外気を強制的に通風することにより、外気と冷媒とを熱交換させるものであり、これにより停車中(即ち、車速が0km/h)にも室外熱交換器7に外気が通風されるよう構成されている。
【0026】
また、室外熱交換器7は冷媒下流側にレシーバドライヤ部14と過冷却部16を順次有し、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷房時に開放される電磁弁17(第1の開閉弁)を介してレシーバドライヤ部14に接続され、過冷却部16の出口側の冷媒配管13Bは室内膨張弁8を介して吸熱器9の入口側に接続されている。尚、レシーバドライヤ部14及び過冷却部16は構造的に室外熱交換器7の一部を構成している。
【0027】
また、過冷却部16と室内膨張弁8間の冷媒配管13Bは、吸熱器9の出口側の冷媒配管13Cと熱交換関係に設けられ、両者で内部熱交換器19を構成している。これにより、冷媒配管13Bを経て室内膨張弁8に流入する冷媒は、吸熱器9を出た低温の冷媒により冷却(過冷却)される構成とされている。
【0028】
また、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷媒配管13Dに分岐しており、この分岐した冷媒配管13Dは、暖房時に開放される電磁弁21(第2の開閉弁)を介して内部熱交換器19の下流側における冷媒配管13Cに連通接続されている。この冷媒配管13Cがアキュムレータ12に接続され、アキュムレータ12は圧縮機2の冷媒吸込側に接続されている。更に、放熱器4の出口側の冷媒配管13Eは室外膨張弁6を介して室外熱交換器7の入口側に接続されている。
【0029】
また、圧縮機2の吐出側と放熱器4の入口側の間の冷媒配管13Gには後述する除湿暖房とMAX冷房時に閉じられる電磁弁30(第3の開閉弁)が介設されている。この場合、冷媒配管13Gは電磁弁30の上流側でバイパス配管35に分岐しており、このバイパス配管35は除湿暖房とMAX冷房時に開放される電磁弁40(第4の開閉弁)を介して室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに連通接続されている。これらバイパス配管35、電磁弁30及び電磁弁40によりバイパス装置45が構成される。
【0030】
このようなバイパス配管35、電磁弁30及び電磁弁40によりバイパス装置45を構成したことで、後述する如く圧縮機2から吐出された冷媒を室外熱交換器7に直接流入させる除湿暖房モードやMAX冷房モードと、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4に流入させる暖房モードや除湿冷房モード、冷房モードとの切り換えを円滑に行うことができるようになる。
【0031】
また、吸熱器9の空気上流側における空気流通路3には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されており(
図1では吸込口25で代表して示す)、この吸込口25には空気流通路3内に導入する空気を車室内の空気である内気(内気循環モード)と、車室外の空気である外気(外気導入モード)とに切り換える吸込切換ダンパ26が設けられている。更に、この吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路3に送給するための室内送風機(ブロワファン)27が設けられている。
【0032】
また、
図1において23は実施例の車両用空気調和装置1に設けられた補助加熱装置としての補助ヒータである。実施例の補助ヒータ23は電気ヒータであるPTCヒータにて構成されており、空気流通路3の空気の流れに対して、放熱器4の空気上流側となる空気流通路3内に設けられている。そして、補助ヒータ23に通電されて発熱すると、吸熱器9を経て放熱器4に流入する空気流通路3内の空気が加熱される。即ち、この補助ヒータ23が所謂ヒータコアとなり、車室内の暖房を行い、或いは、それを補完する。
【0033】
また、補助ヒータ23の空気上流側における空気流通路3内には、当該空気流通路3内に流入し、吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気(内気や外気)を補助ヒータ23及び放熱器4に通風する割合を調整するエアミックスダンパ28が設けられている。更に、放熱器4の空気下流側における空気流通路3には、FOOT(フット)、VENT(ベント)、DEF(デフ)の各吹出口(
図1では代表して吹出口29で示す)が形成されており、この吹出口29には上記各吹出口から空気の吹き出しを切換制御する吹出口切換ダンパ31が設けられている。
【0034】
次に、
図2において32はプロセッサを備えたコンピュータの一例であるマイクロコンピュータから構成された制御装置としてのコントローラ(ECU)であり、このコントローラ32の入力には車両の外気温度(Tam)を検出する外気温度センサ33と、外気湿度を検出する外気湿度センサ34と、吸込口25から空気流通路3に吸い込まれる空気の温度を検出するHVAC吸込温度センサ36と、車室内の空気(内気)の温度を検出する内気温度センサ37と、車室内の空気の湿度を検出する内気湿度センサ38と、車室内の二酸化炭素濃度を検出する室内CO
2濃度センサ39と、吹出口29から車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ41と、圧縮機2の吐出冷媒圧力(吐出圧力Pd)を検出する吐出圧力センサ42と、圧縮機2の吐出冷媒温度を検出する吐出温度センサ43と、圧縮機2の吸込冷媒圧力を検出する吸込圧力センサ44と、圧縮機2の吸込冷媒温度を検出する吸込温度センサ55と、放熱器4の温度(放熱器4を経た空気の温度、又は、放熱器4自体の温度:放熱器温度TH)を検出する放熱器温度センサ46と、放熱器4の冷媒圧力(放熱器4内、又は、放熱器4を出た直後の冷媒の圧力:放熱器圧力PCI)を検出する放熱器圧力センサ47と、吸熱器9の温度(吸熱器9を経た空気の温度、又は、吸熱器9自体の温度:吸熱器温度Te)を検出する吸熱器温度センサ48と、吸熱器9の冷媒圧力(吸熱器9内、又は、吸熱器9を出た直後の冷媒の圧力)を検出する吸熱器圧力センサ49と、車室内への日射量を検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ51と、車両の移動速度(車速)を検出するための車速センサ52と、設定温度や運転モードの切り換えを設定するための空調(エアコン)操作部53と、室外熱交換器7の温度(室外熱交換器7から出た直後の冷媒の温度、又は、室外熱交換器7自体の温度:室外熱交換器温度TXO)を検出する室外熱交換器温度センサ54と、室外熱交換器7の冷媒圧力(室外熱交換器7内、又は、室外熱交換器7から出た直後の冷媒の圧力:室外熱交換器圧力PXO)を検出する室外熱交換器圧力センサ56の各出力が接続されている。また、コントローラ32の入力には更に、補助ヒータ23の温度(補助ヒータ23で加熱された直後の空気の温度、又は、補助ヒータ23自体の温度:補助ヒータ温度Tptc)を検出する補助ヒータ温度センサ50の出力も接続されている。
【0035】
一方、コントローラ32の出力には、前記圧縮機2と、室外送風機15と、室内送風機(ブロワファン)27と、吸込切換ダンパ26と、エアミックスダンパ28と、吹出口切換ダンパ31と、室外膨張弁6、室内膨張弁8と、補助ヒータ23、電磁弁30(リヒート用)、電磁弁17(冷房用)、電磁弁21(暖房用)、電磁弁40(バイパス用)の各電磁弁が接続されている。そして、コントローラ32は各センサの出力と空調操作部53にて入力された設定に基づいてこれらを制御する。
【0036】
以上の構成で、次に実施例の車両用空気調和装置1の動作を説明する。コントローラ32は実施例では暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、及び、MAX冷房モード(最大冷房モード)の各運転モードを切り換えて実行する。先ず、各運転モードにおける冷媒の流れと制御の概略について説明する。
【0037】
(1)暖房モード(第1の運転モード)
コントローラ32により(オートモード)或いは空調操作部53へのマニュアル操作(マニュアルモード)により暖房モードが選択されると、コントローラ32は暖房用の電磁弁21(第2の開閉弁)を開放し、冷房用の電磁弁17(第1の開閉弁)を閉じる。また、リヒート用の電磁弁30を開放し、バイパス用の電磁弁40を閉じる。
【0038】
そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は
図1に破線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全ての空気が補助ヒータ23及び放熱器4に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒(補助ヒータ23が動作するときは当該補助ヒータ23及び放熱器4)により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
【0039】
放熱器4内で液化した冷媒は当該放熱器4を出た後、冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。室外膨張弁6に流入した冷媒はそこで減圧された後、室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプとなる。そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13A及び電磁弁21及び冷媒配管13Dを経て冷媒配管13Cからアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。即ち、室外熱交換器7から出た冷媒は吸熱器9を経ること無くアキュムレータ12に流れる。そして、放熱器4(補助ヒータ23が動作するときは当該補助ヒータ23及び放熱器4)にて加熱された空気は吹出口29から吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
【0040】
コントローラ32は、後述する目標吹出温度TAOから算出される目標放熱器温度TCO(放熱器温度THの目標値)から目標放熱器圧力PCO(放熱器圧力PCIの目標値)を算出し、この目標放熱器圧力PCOと、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI。冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて圧縮機2の回転数を制御する。また、コントローラ32は、放熱器温度センサ46が検出する放熱器4の温度(放熱器温度TH)及び放熱器圧力センサ47が検出する放熱器圧力PCIに基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の出口における冷媒の過冷却度SCを制御する。前記目標放熱器温度TCOは基本的にはTCO=TAOとされるが、制御上の所定の制限が設けられる。
【0041】
また、コントローラ32はこの暖房モードにおいては、車室内空調に要求される暖房能力に対して放熱器4による暖房能力が不足する場合、その不足する分を補助ヒータ23の発熱で補完するように補助ヒータ23の通電を制御する。それにより、快適な車室内暖房を実現し、且つ、室外熱交換器7の着霜も抑制する。このとき、補助ヒータ23は放熱器4の空気上流側に配置されているので、空気流通路3を流通する空気は放熱器4の前に補助ヒータ23に通風されることになる。
【0042】
ここで、補助ヒータ23が放熱器4の空気下流側に配置されていると、実施例の如くPTCヒータで補助ヒータ23を構成した場合には、補助ヒータ23に流入する空気の温度が放熱器4によって上昇するため、PTCヒータの抵抗値が大きくなり、電流値も低くなって発熱量が低下してしまうが、放熱器4の空気上流側に補助ヒータ23を配置することで、実施例の如くPTCヒータから構成される補助ヒータ23の能力を十分に発揮させることができるようになる。
【0043】
(2)除湿暖房モード(第2の運転モード)
次に、除湿暖房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開放すると共に、室外膨張弁6の弁開度は全閉とする。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は
図1に破線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全ての空気が補助ヒータ23及び放熱器4に通風される状態とする。
【0044】
これにより、圧縮機2から冷媒配管13Gに吐出された高温高圧のガス冷媒は、放熱器4に向かうこと無くバイパス配管35に流入し、電磁弁40を経て室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに至るようになる。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、冷媒は室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
【0045】
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却され、且つ、当該空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気流通路3内の空気は冷却され、且つ、除湿される。吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。
【0046】
このとき、室外膨張弁6の弁開度は全閉とされているので、圧縮機2から吐出された冷媒が室外膨張弁6から放熱器4に逆流入する不都合を抑制若しくは防止することが可能となる。これにより、冷媒循環量の低下を抑制若しくは解消して空調能力を確保することができるようになる。更に、この除湿暖房モードにおいてコントローラ32は、補助ヒータ23に通電して発熱させる。これにより、吸熱器9にて冷却され、且つ、除湿された空気は補助ヒータ23を通過する過程で更に加熱され、温度が上昇するので車室内の除湿暖房が行われることになる。
【0047】
コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、補助ヒータ温度センサ50が検出する補助ヒータ温度Tptcと前述した目標放熱器温度TCOに基づいて補助ヒータ23の通電(発熱)を制御することで、吸熱器9での空気の冷却と除湿を適切に行いながら、補助ヒータ23による加熱で吹出口29から車室内に吹き出される空気温度の低下を的確に防止する。
【0048】
これにより、車室内に吹き出される空気を除湿しながら、その温度を適切な暖房温度に制御することが可能となり、車室内の快適且つ効率的な除湿暖房を実現することができるようになる。また、前述した如く除湿暖房モードではエアミックスダンパ28は空気流通路3内の全ての空気を補助ヒータ23及び放熱器4に通風する状態とされるので、吸熱器9を経た空気を効率良く補助ヒータ23で加熱して省エネ性を向上させ、且つ、除湿暖房空調の制御性も向上させることができるようになる。
【0049】
尚、補助ヒータ23は放熱器4の空気上流側に配置されているので、補助ヒータ23で加熱された空気は放熱器4を通過することになるが、この除湿暖房モードでは放熱器4に冷媒は流されないので、補助ヒータ23にて加熱された空気から放熱器4が吸熱してしまう不都合も解消される。即ち、放熱器4によって車室内に吹き出される空気の温度が低下してしまうことが抑制され、COPも向上することになる。
【0050】
(3)除湿冷房モード(第2の運転モード)
次に、除湿冷房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を開放し、電磁弁40を閉じる。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は
図1に破線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全ての空気が補助ヒータ23及び放熱器4に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化していく。
【0051】
放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至り、開き気味で制御される室外膨張弁6を経て室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
【0052】
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
【0053】
吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。この除湿冷房モードではコントローラ32は補助ヒータ23に通電しないので、吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱(暖房時よりも放熱能力は低い)される。これにより車室内の除湿冷房が行われることになる。
【0054】
コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、前述した冷媒回路Rの高圧圧力に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI)を制御する。
【0055】
(4)冷房モード(第2の運転モード)
次に、冷房モードでは、コントローラ32は上記除湿冷房モードの状態において室外膨張弁6の弁開度を全開とする。尚、コントローラ32はエアミックスダンパ28を制御し、
図1に実線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気が、補助ヒータ23及び放熱器4に通風される割合を調整する。また、コントローラ32は補助ヒータ23に通電しない。
【0056】
これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入すると共に、放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。このとき室外膨張弁6は全開とされているので冷媒はそれを通過し、そのまま室外熱交換器7に流入し、そこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮液化する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
【0057】
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却される。また、空気中の水分は吸熱器9に凝結して付着する。
【0058】
吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気が吹出口29から車室内に吹き出されるので(一部は放熱器4を通過して熱交換する)、これにより車室内の冷房が行われることになる。また、この冷房モードにおいては、コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
【0059】
(5)MAX冷房モード(最大冷房モード:第2の運転モード)
次に、最大冷房モードとしてのMAX冷房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開放すると共に、室外膨張弁6の弁開度は全閉とする。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は
図3に示す如く補助ヒータ23及び放熱器4に空気流通路3内の空気が通風されない状態とする。但し、多少通風されても支障はない。また、コントローラ32は補助ヒータ23に通電しない。
【0060】
これにより、圧縮機2から冷媒配管13Gに吐出された高温高圧のガス冷媒は、放熱器4に向かうこと無くバイパス配管35に流入し、電磁弁40を経て室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに至るようになる。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、冷媒は室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
【0061】
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却される。また、空気中の水分は吸熱器9に凝結して付着するので、空気流通路3内の空気は除湿される。吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、同様に圧縮機2から吐出された冷媒が室外膨張弁6から放熱器4に逆流入する不都合を抑制若しくは防止することが可能となる。これにより、冷媒循環量の低下を抑制若しくは解消して空調能力を確保することができるようになる。
【0062】
ここで、前述した冷房モードでは放熱器4に高温の冷媒が流れているため、放熱器4からHVACユニット10への直接の熱伝導が少なからず生じるが、このMAX冷房モードでは放熱器4に冷媒が流れないため、放熱器4からHVACユニット10に伝達される熱で吸熱器9からの空気流通路3内の空気が加熱されることも無くなる。そのため、車室内の強力な冷房が行われ、特に外気温度Tamが高いような環境下では、迅速に車室内を冷房して快適な車室内空調を実現することができるようになる。また、このMAX冷房モードにおいても、コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
【0063】
(6)運転モードの切換
空気流通路3内を流通される空気は上記各運転モードにおいて吸熱器9からの冷却や放熱器4(及び補助ヒータ23)からの加熱作用(エアミックスダンパ28で調整)を受けて吹出口29から車室内に吹き出される。コントローラ32は外気温度センサ33が検出する外気温度Tam、内気温度センサ37が検出する車室内の温度、前記ブロワ電圧、日射センサ51が検出する日射量等と、空調操作部53にて設定された車室内の目標車室内温度(設定温度)とに基づいて目標吹出温度TAOを算出し、各運転モードを切り換えて吹出口29から吹き出される空気の温度をこの目標吹出温度TAOに制御する。
【0064】
この場合、コントローラ32は、外気温度Tam、車室内の湿度、目標吹出温度TAO、放熱器温度TH、目標放熱器温度TCO、吸熱器温度Te、目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無、等のパラメータに基づき、暖房モードから除湿暖房モード、除湿暖房モードから除湿冷房モード、除湿冷房モードから冷房モード、冷房モードからMAX冷房モード、このMAX冷房モードから冷房モード、冷房モードから除湿冷房モード、除湿冷房モードから除湿暖房モード、除湿暖房モードから暖房モードに運転モードを切り換える。また、暖房モードから除湿冷房モードや冷房モード、除湿冷房モードや冷房モードから暖房モードに切り換える場合もある。実施例では上記のように各運転モードの切り換えを行うことで、環境条件や除湿の要否に応じて的確に暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード及びMAX冷房モードを切り換え、快適且つ効率的な車室内空調を実現する。
【0065】
(7)冷媒掃気運転
尚、前述した如く除湿暖房モードでは、電磁弁30を閉じ、室外膨張弁6も全閉として放熱器4に冷媒を流さない状態となるため、暖房モードから除湿暖房モードに切り換えた時点で放熱器4に残留している冷媒は内部に寝込んだ状態となり、循環冷媒量が減少してしまう。
【0066】
そこで、コントローラ32は、実施例では暖房モードから除湿暖房モードに切り換える際、冷媒掃気運転を実行する。この冷媒掃気運転でコントローラ32は、暖房モードから除湿暖房モードに切り換える際には、電磁弁21を閉じ、電磁弁17を開いて除湿暖房モードに移行した後、電磁弁30と電磁弁40を切り換える前に、室外膨張弁6の弁開度を所定時間だけ拡大(例えば全開)する。この状態は冷房モードと同様の状態である。また、実施例では圧縮機2の回転数NCは低く(例えば制御上の最低回転数)維持する。
【0067】
これにより、放熱器4を含む電磁弁30から室外膨張弁6までの間に存在する冷媒を室外熱交換器7の方向に追い出す(掃気)。そして、所定期間が経過した後、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開き、室外膨張弁6を全閉に向けて閉じていく。この室外膨張弁6が全閉となった後、コントローラ32は圧縮機2の回転数を除湿暖房モードでの作動範囲で制御する状態に移行する。このような冷媒掃気運転により、放熱器4への冷媒の寝込みを防止し、冷媒回路R内の冷媒循環量を確保して空調性能の低下を防止する。
【0068】
(8)突沸防止制御
ここで、前述した如く圧縮機2が停止しているときのアキュムレータ12内では、圧縮機2から出て冷媒回路R内を流れて来た冷媒とオイルが流入し、そのうちの液体の部分がアキュムレータ12内に溜まり、比重の軽いオイルが液冷媒の上に層を作り、蓋をしたような安定状態となっている。特に、暖房モードでは、室外熱交換器7から出て電磁弁21を通り、アキュムレータ12に流入してその内部に溜まる液冷媒とオイルの量も多くなる。
【0069】
このような状態で、暖房モードから除湿冷房モードや冷房モードに運転モードが切り換えられると、室外熱交換器7から出た冷媒が電磁弁17から室内膨張弁8の方向に流れるようになる。そして、圧縮機2はアキュムレータ12内の冷媒を吸引するため、アキュムレータ12内の圧力は急激に低下し、オイルより下の冷媒が一気に沸騰して気化し、上のオイルの層を激しく突き破る突沸が発生して圧縮機2へ過剰な液戻りや音(騒音)が発生する。そして、このような突沸は、室外熱交換器7を出た冷媒が室内膨張弁8から吸熱器9方向に流れる除湿冷房モードや冷房モードで圧縮機2が起動される場合も同様に危惧される。そこで、コントローラ32は暖房モードから除湿冷房モードや冷房モードに切り換える際や、除湿冷房モードや冷房モードで圧縮機2を起動する際、以下に説明する突沸防止制御を実行する。
【0070】
(8−1)暖房モードから除湿冷房モード又は冷房モードに切り換える際の突沸防止制御
先ず、
図4を参照しながら、車両用空気調和装置1の運転モードを、前述した暖房モード(第1の運転モード)から除湿冷房モード又は冷房モード(第2の運転モード)に切り換える際にコントローラ32が実行する突沸防止制御の例について説明する。
図4のタイミングチャートは、暖房モードから除湿冷房モード、又は、冷房モードに移行する際の圧縮機2の回転数NCと、室外膨張弁6の弁開度と、電磁弁17、電磁弁21及び補助ヒータ23の状態を示している。
【0071】
コントローラ32は冷房用の電磁弁17を開いて、暖房モードから除湿冷房モード又は冷房モードに移行した後、所定期間、暖房用の電磁弁21を閉じずに開いた状態に維持する。また、その間も室外膨張弁6を開けてその弁開度を暖房モードでの作動範囲から除湿冷房モード/冷房モードでの作動範囲に拡大していき、圧縮機2も運転し続けて暖房モードでの作動範囲から除湿冷房モード/冷房モードでの作動範囲に回転数NCを上昇させていく。
【0072】
そして、所定期間が経過した後、コントローラ32は電磁弁21を閉じる。尚、圧縮機2の作動範囲が除湿冷房モード/冷房モードでの作動範囲に移行するまでの期間を実施例では突沸防止制御とする。
【0073】
このように、コントローラ32は暖房モードから除湿冷房モードや冷房モードに移行する際、移行から所定期間、暖房用の電磁弁21(第2の開閉弁)を開くので、暖房モードから除湿冷房モードや冷房モードに切り換える際に、電磁弁21を経てアキュムレータ12に多量の冷媒を戻し、内部を攪拌することができるようになる。
【0074】
これにより、アキュムレータ12内の安定状態を崩すことができるので、液冷媒の上をオイルが蓋をしたような安定状態でアキュムレータ12内の圧力が低下したときに生じる突沸の発生を防止若しくは抑制し、圧縮機2での液圧縮やアキュムレータ12内での騒音の発生を効果的に解消若しくは抑制することができるようになり、車両用空気調和装置1の信頼性を向上させ、搭乗者の快適性も効果的に改善することができるようになる。
【0075】
また、コントローラ32は暖房モードから除湿冷房モードや冷房モードに移行する際、電磁弁21を開いた状態で室外膨張弁6を開けてその弁開度を拡大していき、圧縮機2も運転し続けるので、アキュムレータ12により多量の冷媒を流入させ、内部の攪拌をより一層促進することができるようになる。
【0076】
(8−2)除湿冷房モード又は冷房モードで圧縮機2を起動する際の突沸防止制御
次に、
図5を参照しながら、除湿冷房モード又は冷房モード(第2の運転モード)で車両用空気調和装置1の圧縮機2を起動する際にコントローラ32が実行する突沸防止制御の例について説明する。
図5のタイミングチャートは、除湿冷房モード、又は、冷房モードで圧縮機2を起動する際の圧縮機2の回転数NCと、室外膨張弁6の弁開度と、電磁弁17及び電磁弁21の状態を示している。
【0077】
コントローラ32は除湿冷房モード又は冷房モードでの停止状態から圧縮機2を起動した後、所定期間、暖房用の電磁弁21を開く。その間、コントローラ32は室外膨張弁6を全開状態(圧縮機2が停止中は全開)から、その弁開度を除湿冷房モード/冷房モードでの作動範囲に制御する状態に移行していき、圧縮機2も運転して除湿冷房モード/冷房モードでの作動範囲に回転数NCを上昇させていく。
【0078】
そして、所定期間が経過した後、コントローラ32は電磁弁21を閉じる。尚、圧縮機2と室外膨張弁6の作動範囲が除湿冷房モード/冷房モードでの作動範囲に移行するまでの期間を実施例では突沸防止制御とする。
【0079】
このように、コントローラ32は除湿冷房モードや冷房モードで圧縮機2を起動する際、起動から所定期間、暖房用の電磁弁21(第2の開閉弁)を開くので、除湿冷房モードや冷房モードで圧縮機2を起動する際に、電磁弁21を経てアキュムレータ12に多量の冷媒を戻し、内部を攪拌することができるようになる。
【0080】
これにより、同様にアキュムレータ12内の安定状態を崩すことができるので、液冷媒の上をオイルが蓋をしたような安定状態でアキュムレータ12内の圧力が低下したときに生じる突沸の発生を防止若しくは抑制し、圧縮機2での液圧縮やアキュムレータ12内での騒音の発生を効果的に解消若しくは抑制することができるようになり、車両用空気調和装置1の信頼性を向上させ、搭乗者の快適性も効果的に改善することができるようになる。
【0081】
また、この場合もコントローラ32は除湿冷房モードや冷房モードで圧縮機2を起動する際、電磁弁21を開いた状態で室外膨張弁6を開け、圧縮機2も運転し続けるので、同様にアキュムレータ12により多量の冷媒を流入させ、内部の攪拌をより一層促進することができるようになる。
【0082】
ここで、本発明における第2の運転モードとしては前述した除湿暖房モードも存在するが、実施例では上記突沸防止制御を暖房モードから除湿暖房モードに移行する際には実行しない。その理由は、前述した如く暖房モードから除湿暖房モードに移行する際に行われる冷媒掃気運転に起因する。この冷媒掃気運転では、前述した如く室外膨張弁6が全開とされ、冷房モードでの運転となるので、電磁弁21の上流側の室外熱交換器7は高圧となり、下流側のアキュムレータ12は低圧となる。即ち、電磁弁21の前後の圧力差が大きくなるので、突沸防止制御のために電磁弁21を開くと、騒音が発生する危険性がある。
【0083】
一方で、実施例の如く暖房モードから除湿冷房モードや冷房モードに移行する際に突沸防止制御を行うようにすれば、暖房モードから除湿冷房モードや冷房モードへの移行時には冷媒掃気運転は行わないので、暖房モードから除湿冷房モードや冷房モードに移行する際に、移行から所定期間、電磁弁21を開いても、当該電磁弁21において騒音は発生しない。また、停止中は電磁弁21の上流側と下流側は平衡しているので、圧縮機2の起動時に開放しても騒音は発生しない。従って、実施例によれば電磁弁21における騒音の発生を回避しながら、比較的短時間で効果的にアキュムレータ12内を早期に攪拌し、突沸を防止することができるようになる。
【0084】
尚、実施例では暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、及び、MAX冷房モードの各運転モードを切り換えて実行する車両用空気調和装置1に本発明を適用したが、それに限らず、暖房モードと、その他の運転モードの何れか、又は、それらの組み合わせを切り換えて実行する場合にも本発明は有効である。
【0085】
例えば、移行時に前述した冷媒掃気運転を行う除湿暖房モードへの移行時であっても、電磁弁21における騒音の発生を考慮しない場合、或いは、騒音発生を回避する構造を採った場合には本発明を実行してもよい。また、暖房モードからMAX冷房モードに直接移行するモード切換が可能な場合には、本発明を実行してもよい。
【0086】
更に、実施例で示した各運転モードの切換制御は、それに限られるものでは無く、車両用空気調和装置の能力や使用環境に応じて、外気温度Tam、車室内の湿度、目標吹出温度TAO、放熱器温度TH、目標放熱器温度TCO、吸熱器温度Te、目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無、等のパラメータの何れか、又は、それらの組み合わせ、それらの全てを採用して適切な条件を設定すると良い。
【0087】
更にまた、補助加熱装置は、実施例で示した補助ヒータ23に限られるものでは無く、ヒータで加熱された熱媒体を循環させて空気流通路内の空気を加熱する熱媒体循環回路や、エンジンで加熱されたラジエター水を循環するヒータコア等を利用してもよい。また、上記各実施例で説明した冷媒回路Rの構成はそれに限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能であることは云うまでもない。