特許第6680688号(P6680688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6680688モジュール式の流通式光化学反応器システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6680688
(24)【登録日】2020年3月24日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】モジュール式の流通式光化学反応器システム
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/12 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
   B01J19/12 C
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-559290(P2016-559290)
(86)(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公表番号】特表2017-510447(P2017-510447A)
(43)【公表日】2017年4月13日
(86)【国際出願番号】US2015021622
(87)【国際公開番号】WO2015148279
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2018年3月20日
(31)【優先権主張番号】14305433.6
(32)【優先日】2014年3月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】グレメッツ,シルヴァン マキシム エフ
(72)【発明者】
【氏名】ホルン,クレメンス ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ロベット,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ラヴリック,エレナ ダニエラ
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−530757(JP,A)
【文献】 特開2012−115715(JP,A)
【文献】 特開平04−117409(JP,A)
【文献】 特表2009−502525(JP,A)
【文献】 特表2009−531170(JP,A)
【文献】 特開2012−089755(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/157052(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0228236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/12
C02F 1/30−32
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)中心の平面状の処理液層(30)とii)熱制御流体が内部を流れる2つの外側の平面状の熱制御流体層(40)とを各々が有する複数の流体モジュール(20)と、
複数の照射モジュール(50)と
を含むモジュール式光化学反応器システム(10)であって、
前記複数の照射モジュール(50)の各々が、第1および第2の主要な面(52,54)を有する平面状の形状を有し、前記複数の照射モジュール(50)の各々が、前記第1の主要な面(52)からまたは前記第1の主要な面(52)を通して放射するよう配置されているとともに、前記流体モジュールの外側の平面状の熱制御流体層を通して前記流体モジュールの中心の平面状の処理液層に放射するよう配置された、可視波長および/またはUV波長において放射可能な半導体エミッタ(70)の少なくとも第1のアレイ(60)を含み、該半導体エミッタ(70)の第1のアレイ(60)が、少なくとも、第1の中心波長において放射可能な第1のエミッタ(72)および該第1の中心波長と異なる第2の中心波長において放射可能な第2のエミッタ(74)を含む、モジュール式光化学反応器システム(10)。
【請求項2】
前記第1のアレイ(60)が、少なくとも、前記第1および第2の各中心波長とは異なる第3の中心波長において放射可能な第3のエミッタ(76)を更に含む、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記エミッタ(70)が、個別にパッケージされたエミッタ(78)を含む、請求項1または2に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記エミッタ(70)が、群(79)としてパッケージされたエミッタを含み、前記群(79)が、少なくとも1つの第1のエミッタ(72)および少なくとも1つの第2のエミッタ(74)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記第1のアレイ(60)内の前記少なくとも1つの第1のエミッタ(72)が、第1の電源供給ラインまたは制御ライン(102a)に接続されており、前記第1のアレイ(60)内の前記少なくとも1つの第2のエミッタ(74)が、第2の電源供給ラインまたは制御ライン(102b)に接続されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記複数の照射モジュール(50)が少なくとも1つの照射モジュール(50a)を含み、該少なくとも1つの照射モジュール(50a)が、前記第2の主要な面(54)からまたは前記第2の主要な面(54)を通して放射するよう配置された、可視波長および/またはUV波長において放射可能な半導体エミッタ(70)の第2のアレイ(80)を更に含み、該半導体エミッタ(70)の第2のアレイ(8)が、少なくとも第1のエミッタ(72)および第2のエミッタ(74)を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記複数の照射モジュール(50)の前記少なくとも1つの照射モジュール(50a)が、導入および排出ポート(94,96)を有する冷却流体通路(92)を内部に含む熱交換器(90)を更に含み、該熱交換器(90)が、前記第1のアレイ(60)の前記エミッタ(70)および前記第2のアレイ(80)の前記エミッタ(70)と熱的に接触している、請求項6記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記複数の照射モジュール(50)の各々が、導入および排出ポート(94)を有する冷却流体通路(92)を内部に含む熱交換器(96)を更に含み、該熱交換器(96)が、前記第1のアレイ(60)の前記エミッタ(70)と熱的に接触している、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記エミッタ(70)がLEDである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記LEDが、前記流体モジュール(20)の前記第1または第2の主要な面(22、24)の自由表面領域(22F、24F)に対して少なくとも40mW/cmを供給できる、請求項9記載のシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、合衆国法典第35巻第119条に基づき、2014年3月26日に出願された欧州特許出願第14305433.6号による優先権を主張するものであり、その内容に依拠すると共に、その全体を参照して本明細書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、流通式反応器、およびそれを用いて行われる流通式プロセスに関し、特に、モジュール式の、柔軟な、高スループットの流通式光化学反応器システムに関する。
【背景技術】
【0003】
本発明者らおよび/または彼らの同僚は、以前に、化学反応を行う流通式反応器を開発した。これらの流通式反応器は、典型的には、多層ガラス構造体の形態をとり得る流体モジュールを用い得る。そのような流体モジュール20の一実施形態が、図1に斜視図で示されている。図2および図3の断面図には、そのような流体モジュール20の更なる実施形態の特定の特徴が示されている。図1図3に示されているタイプの流体モジュール20は、一般的に、平面状の形状と、第1および第2の主要な面22、24とを有する(図1の斜視図では、表面24はモジュール20の下部にある)。概ね平面状の処理液層30内に画成された一般的にミリメートル台またはミリメートル未満のチャネルである「微細チャネル」の内部を、反応物質または処理液が循環する。モジュール20は、熱制御流体が内部を流れる2つの外側の平面状の熱制御流体層40を更に含み、処理液層30は、2つの熱制御流体層40の間に位置する。
【0004】
処理液導入および排出ポート32は、処理液の供給および除去を可能にする(ポート32の一方、この場合には排出ポートは、上向きのポート32とは反対側の、下向きの主要な面24にあるため、図1では見えない)。熱流体導入および排出ポート42は、熱制御流体の供給および除去を可能にする。導入および排出ポート32、42は全て、第1および第2の主要な面のいずれか一方の1以上の縁部(図1の実施形態の場合には縁部26)に位置し、導入および排出ポートを含まない自由表面領域22F(および、図1では見えない下側の対応する自由表面領域24F)を残す。
【0005】
流体モジュール20の様々なサイズによって、研究室規模から製造規模のプロセスへのスケールアップが可能である。所与の必要な流量に対して、十分な滞留時間を提供するために、特定の量の内部体積が必要である。必要に応じて合計の内部体積を増加させることは、反応器を構成するために複数の流体モジュール20を直列に接続することによって提供される。従って、反応器は、典型的には、複数の流体モジュール20で構成される。各流体モジュール20は、予熱、予混合、混合、滞留時間の提供、クエンチ等の特定の機能を有し得る。ガラスは、UVスペクトルおよび可視スペクトルにおける光化学の対象の波長に対して少なくとも部分的に透明であるので、モジュール20がガラスで形成され得るならば、光化学は潜在的に有用な用途である。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態は、i)処理液が内部を流れる中心の平面状の処理液層と、ii)熱制御流体が内部を流れる2つの外側の平面状の熱制御流体層とを各々が有する複数の流体モジュールで構成されるモジュール式光化学反応器システムを含む。本システムは、複数の照射モジュールを更に含み、複数の照射モジュールの各々は、第1および第2の主要な面を有する平面状の形状を有し、該複数の照射モジュールの各々が、第1の主要な面からまたは第1の主要な面を通して放射するよう配置された、可視波長および/またはUV波長において放射可能な半導体エミッタの少なくとも第1のアレイを含み、半導体エミッタの第1のアレイは、少なくとも、第1の中心波長において放射可能な第1のエミッタおよび第2の中心波長において放射可能な第2のエミッタを含み、第1および第2の中心波長は互いに異なる。
【0007】
半導体エミッタ(望ましくはLED)の使用は、反応の収率を高める可能性、または、より広いスペクトルを有する光源に存在する望ましくない波長によって促進され得る望ましくない副生成物の生成を低減する可能性を有する、はっきりと定められた波長を用いることを可能にする。中心波長が異なる少なくとも第1および第2のエミッタを設けることにより、2つの波長間での実験および最適化を容易にすることができると共に、2つ以上の波長の光による利益を得る反応の性能を高める可能性がある。
【0008】
本開示のシステムから組み立てられる反応器は、柔軟に構成変更可能であると共にコンパクトでありながら、エミッタの熱的出力を反応物質または処理液から良好に隔離する。また、本システムおよび本システムから構成される反応器は、反応試験および特徴づけがより容易に達成されるように、反応器を分解せずに、照射波長を切り替える、またはより一般的には、照射のスペクトル成分を変える能力を提供する。
【0009】
他の変形例および具体的な長所は、以下の説明で述べられると共に、以下の説明から自明である。上記の概要説明および以下の詳細説明は特定の実施形態を表すものであり、特許請求の範囲の性質および特徴の理解のための概観または枠組みを提供することを意図したものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示のシステムにおいて有用な流体モジュールの一実施形態の斜視図
図2】本開示のシステムにおいて有用な流体モジュールの更なる実施形態の断面図
図3】本開示のシステムにおいて有用な流体モジュールの更なる実施形態の断面図
図4】本開示のシステムにおいて有用な照射モジュールの一実施形態の拡大組立て斜視図
図5A】本開示のシステムにおいて有用な照射モジュールの更なる実施形態の模式的な断面図
図5B】本開示のシステムにおいて有用な照射モジュールの更なる実施形態の模式的な断面図
図6】本開示のシステムにおいて有用な照射モジュールの支持フレームまたはコアの一実施形態の斜視図
図7A】本開示のシステムにおいて有用な照射モジュールのエミッタアレイの別の実施形態の模式的な平面図
図7B】本開示のシステムにおいて有用な照射モジュールのエミッタアレイの別の実施形態の模式的な平面図
図8】本開示のシステムの構成要素で構成された、部分的に組み立てられた反応器の一実施形態の斜視図
図9】幾つかの追加の構成要素を含む、図8の反応器の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図9に斜視図で示されているモジュール式光化学反応器システム(10)は、複数の流体モジュール(20)を含み、各流体モジュール(20)は、図1に示されているように、第1および第2の主要な面(22、24)を有する平面状の形状を有する。図1、並びに図2および図3に示されているように、複数の流体モジュール(20)の各々は、処理液が内部を流れる中心の平面状の処理液層(30)と、熱制御流体が内部を流れる2つの外側の平面状の熱制御流体層(40)とを含む。処理液層(30)は、2つの熱制御流体層(40)の間に位置する。処理液層(30)および2つの熱制御流体層(40)は全て、UVスペクトルおよび/または可視スペクトルにおける少なくとも幾つかの波長の放射に対して少なくとも部分的に透明である。流体モジュール(20)の動作においては、例えば水またはエタノール等の略透明な熱制御流体が用いられるのが望ましい場合がある。
【0012】
複数の流体モジュール(20)の各々は、処理液を供給および除去するための処理液導入および排出ポート(32)と、熱制御流体を供給および除去するための熱流体導入および排出ポート(42と)を更に含む。導入および排出流体ポート(32)は、1)第1および第2の主要な面(22、24)のいずれか一方の1以上の縁部(26)、または、2)流体モジュール(20)の第1および第2の主要な面(22、24)以外の表面(28)に位置しており、いずれの場合にも、第1および第2の主要な面(22、24)に、導入および排出ポートを含まない自由表面領域(22F、24F)が残る。この自由表面領域(22F、24F)は、第1または第2の主要な面(22、24)のそれぞれの少なくとも50%、望ましくは、少なくとも75%で構成される。
【0013】
図9に斜視図として示されているモジュール式光化学反応器システム(10)は、図4の斜視図、並びに図5Aおよび図5Bの断面図の実施形態に示されているもののような、複数の照射モジュール(50)を更に含む。複数の照射モジュール(50)の各々は、第1および第2の主要な面(52,54)を有する平面状の形状を有し、各照射モジュール(50)は、第1の主要な面(52)からまたは第1の主要な面(52)を通して放射するよう配置された、可視波長および/またはUV波長において放射可能な半導体エミッタ(70)の少なくとも第1のアレイ(60)を含む。更に、半導体エミッタ(70)の第1のアレイ(60)は、少なくとも、第1の中心波長において放射可能な第1のエミッタ(72)および第2の中心波長において放射可能な第2のエミッタ(74)を含み、第1および第2の中心波長は互いに異なる。
【0014】
照射モジュールの一実施形態の更なる詳細が、図4の拡大斜視図に示されている。照射モジュール(50)の支持フレームまたはコア(90)は、照射モジュール50に冷却流体を供給するための導入および排出ポート94を含む。コア(90)は、ガスケット(64)および蓋(66)と共に、図示されている順序で組み立てられて一体に固定された際に、エミッタアレイ(60)のエミッタ(70)を冷却するための熱交換器96を構成する。エミッタ(70)は、(例えば、はんだ付け、または他の取付け処理もしくは構造等によって)取付けシート(71)に取り付けられ、この取付けシート(71)が蓋(66)に取り付けられる。或いは、図4の実施形態のような別個の蓋(66)を用いないようにして、図5Aおよび図5Bに断面図で示されている更なる実施形態のように、エミッタ(70)用の取付けシート(71)自体が、コア(90)内の流体チャネルを覆う蓋として機能してもよい。光シールドまたはフレーム(97)が、アレイ(60)の側面を囲むように取り付けられ得ると共に、保護窓(98)がシールド(97)に取り付けられ得る。保護窓は、石英、ガラス、または他の任意の、望ましくは照射モジュール(50)によって用いられる波長に対して透明な材料でできていてもよく、必要に応じて、照射モジュール(50)によって与えられる照射を均一に分配する光拡散器として機能するように、粗面化された構造または類似の光学的特徴を含んでもよい。別の光学的な代替例として、窓(98)およびフレーム(97)が協働して、アレイ(60)を覆う気密シールを構成してもよく、密閉された体積に、例えばアルゴン等の不活性ガス、または、例えば窒素等の低反応性ガスが充填されてもよい。これは、空気によって運ばれる何らかの薬品、または保護窓(98)上またはその付近に別様で存在する何らかの薬品から、エミッタを保護する役割をする。
【0015】
図5Aおよび図5Bは、照射モジュール(50)の更なる実施形態の模式的な断面図である。図5Aで(図4よりも)より明確にわかるように、本開示による照射モジュール(50)は、照射モジュール(50)の互いに反対側にある第1および第2の主要な面(52,54)上に、(エミッタ70の)第1のアレイ60および(エミッタ70の)第2のアレイ80の両方を含むのが望ましい場合がある。単一のコア(90)の両側にはそれぞれ、2つのアレイ(60,80)をそれぞれ支持するための表面があり得る。これらのアレイは、クリップまたはレッジ(62)によって保持され得る。また、図5Bに概略を示すように、本開示のシステムは、図5Aに示されているような2つのアレイ(60,80)ではなく、1つのみのアレイ(60)を有する照射モジュール(50)を含むのも望ましい。
【0016】
図6は、コア(90)の一実施形態の斜視図を示しており、コア(90)は、エミッタアレイ(60)または蓋(66)のための支持面(91)を含み、この支持面内に入るように、冷却流体が内部を流れる陥凹したチャネル93がある。
【0017】
図7Aおよび図7Bは、例えば図4図5A、および図5Bに示されているもの等の照射モジュール(50)のエミッタアレイ(60)(および80)の別の実施形態の模式的な平面図である。図7Aの実施形態では、エミッタ70は、個別にパッケージされたエミッタ(または個別にパッケージされたLED)78の形態であり、一方、図7Bの実施形態では、エミッタ70は、少なくとも2つのタイプの(それぞれ異なるタイプ72、74、76の)エミッタが共にパッケージされた群79(例えば「マルチチップ」LED等)の形態である。両方の実施形態において、少なくとも第1のエミッタ(72)および第2のエミッタ(74)があり、第2のエミッタ(74)は、第1のエミッタ(72)の第1の中心波長とは異なる第2の中心波長を有する。必要に応じて、アレイ(60)(または(80))は、少なくとも、第1および第2の各中心波長とは異なる第3の中心波長において放射可能な第3のエミッタ(76)を更に含み得る。また、4以上の異なるエミッタまたは異なるタイプのエミッタが用いられてもよい。また、グループ化されたエミッタ(即ち、エミッタの群)79は、同じアレイ内で個々のエミッタとして用いられてもよい。
【0018】
また、異なるタイプの数に関わらず、および、それらが一体にパッケージされているか否かに関わらず、様々な異なるタイプのエミッタ(72、74、76)は、スイッチ、コントローラ、またはレシーバ100によって、制御ラインおよび/または電源供給ライン(102a、102b、102c)(全体を102で示す)のそれぞれを介して、独立して制御可能であることが望ましい。同じ波長のエミッタで各々が構成されたエミッタの様々なサブアレイが、スイッチ、コントローラ、またはレシーバによって、独立して制御可能であるのが好ましい。1つのアレイ上の同じ波長または中心波長のエミッタは、集合的に制御されるのが望ましい。様々な波長に対する独立制御は、反応器またはいずれかの構成要素を分解する必要なしに、様々な波長を用いることを含む反応の特徴づけまたは他の実験もしくは反応の容易な制御を可能にする。
【0019】
エミッタ(70)はLEDであるのが望ましい。一実施形態によれば、このアレイは、エミッタが取り付けられるプリント配線板を含む。更に、これらは、流体モジュール(20)の第1または第2の主要な面(22、24)の自由表面領域(22F、24F)に対して、望ましくは少なくとも40mW/cm、より望ましくは少なくとも50mW/cmの均質な照射を供給できる。LEDは高出力LEDであり得、または、アレイ上のLEDの密度は、所望の照射を達成するのに十分なものであり得る。所望の程度の照射の均質性は、アレイ上のLEDの密度によって、または光拡散器を介して達成され得る。
【0020】
図8および図9は、本開示のシステム(10)が反応器(12)として組み立てられ得る特定の方法の一実施形態を示す斜視図を示す。図8および図9において、流体モジュール(20)および照射モジュール(50)は、このケースでは梁の形態の反応器支持体またはマウント(104)に支持される。或いは、システムのメンテナンスを容易にするために、流体モジュール(20)および照射モジュール(50)は、2つの別々の支持体またはマウントに支持されてもよく、照射モジュール(50)とそれらの支持体またはマウントとを、反応器内へとおよび反応器外へとスライドさせてもよい。これらの実施形態における照射モジュール(50)は、両面の照射モジュール(50a)と、片面の照射モジュール(50b)との両方を含む。図8には、流体モジュール20を含まない反応器12が示されている。図9は、照射モジュール(50)の放射面の間の複数の流体モジュール(20)の位置を示す。
【0021】
システム(10)で構成される反応器(12)は、柔軟に構成変更可能であると共にコンパクトでありながら、エミッタの熱的出力を反応物質または処理液から良好に隔離する。その理由は、第1には、ランプ等の光源ではなく、エネルギー変換効率がかなり高い半導体エミッタ(例えばLED等)を用いること、第2には、数百ワットもの抽出が可能な熱交換器(96)を用いること、第3には、流体モジュール(20)の処理液層(30)の両側が、到達する入射照射が通る熱制御流体層(40)によって囲まれていることにより、エミッタ(70)によってまたはエミッタ(70)において発生する熱からの有意な隔離を提供することである。また、システム(10)によって構成される反応器(12)は、熱交換器(96)を用いることによって、LEDエミッタが低温(室温および流体モジュールの動作温度より低い温度)で動作するのを可能にし、その結果、放射の強度が高まると共に、LEDの寿命が増加する。
【0022】
また、本システム、および本システムから構成される反応器は、反応試験および特徴づけがより容易に達成されるように、反応器を分解せずに、照射波長を切り替える、またはより一般的には、照射のスペクトル成分を変える能力を提供する。コンパクトでありながら、反応器構造または設計、および供給される放射に関して柔軟な流通式反応器において、光化学反応を行うことができるのは有利である。対象の光の波長は、主に300〜450nmの近UV光および紫色光であるが、他のUV波長または可視波長も対象となり得る。
【0023】
流体モジュール(20)の両側から熱的制御層(40)を介して照射される作用流体層(30)を有することは、熱的隔離を設けるのを補助するのみならず、処理液に大量の照射が届き、流体モジュール(20)の一方の主要な面のみを照射するのと比較して、処理チャネルの深さを通るより均一な透過を可能にする。
【0024】
なお、所与の反応器における全ての流体モジュール(20)が必ずしも照射を必要とするまたは照射による利益を得るわけではなく、従って、同じ反応器内の一部の流体モジュールは照射されず、他の一部の流体モジュールが照射されてもよい。換言すれば、照射光源は、流体モジュールの数から独立して、または流体モジュールの数と共に拡張可能である。
【0025】
従って、装置を何ら変更せず、いかなるメンテナンスも行わずに、同じ照明の解決策を用いて、異なる種類の化学を行うことができる。これは、1つの単一波長に特定された装置ではない。
【0026】
半導体光源からのスペクトル的により狭い光を用いることにより、化学をより良好に理解することができ、それに従って最適化できる。半導体光源の正確な波長は、より高い生成物選択性を得ることを可能にする。また、光源の寿命も長くなるはずである。
【0027】
本明細書に開示された方法および/または装置は、一般的に、微細構造中の、多相混合流体を含む(および、固体も含み得る多相混合流体を含む流体または混合流体を含む)流体または混合流体の、混合、分離、抽出、結晶化、析出、または別様の処理を含む任意の処理を行う際に有用である。この処理は、物理的処理、有機、無機、または有機および無機の両方の種の相互変換を生じる処理として定義される化学反応を含み得るものであり、望ましくは、何らかの波長の光の存在を好む化学的、物理的、または生物学的な処理な反応または反応、即ち、光増感、(光開始ラジカル反応における)光開始、光活性化、光触媒性、または光合成等の光反応を含む。対象となり得る、光によって補助されるまたは光を好む反応としては、光異性化、転位、光還元、環化、2+2環化付加、4+2環化付加、4+4環化付加、1,3−双極性環化付加、(環化を生じ得る)シグマトロピー転位、光酸化、保護基またはリンカーの光開裂、光ハロゲン化(光塩素化、光臭素化)、光スルホクロル化、光スルホキシド化、光重合、光ニトロソ化、光脱炭酸、プレビタミンDの光合成、アゾ化合物の分解、ノリッシュ型反応、バートン型反応が挙げられるが、これらに限定されない。更に、本開示の方法および/または装置を用いて行われ得る反応としては、酸化、還元、置換、脱離、付加、配位子交換、金属交換、およびイオン交換が挙げられるが、これらに限定されない。より具体的には、本開示の方法および/または装置を用いて、重合、アルキル化、脱アルキル化、ニトロ化、過酸化、スルホキシド化、エポキシ化、アンモ酸化、水素化、脱水素化、有機金属反応、貴金属化学/均一触媒反応、カルボニル化、チオカルボニル化、アルコキシ化、ハロゲン化、脱ハロゲン化水素化、脱ハロゲン化、ヒドロホルミル化、炭酸化、脱炭酸化、アミノ化、アリール化、ペプチド結合、アルドール縮合、環化縮合、脱水素環化、エステル化、アミド化、複素環合成、脱水、アルコール分解、加水分解、アンモノリシス、エーテル化、酵素合成、ケタール化、鹸化、異性化、四級化、ホルミル化、相間移動反応、シリル化、ミトリル合成、リン酸化、オゾン分解、アジド化学、メタセシス、ヒドロシリル化、結合反応、および酵素反応であるがこれらに限定されない任意の反応が行われ得る。
【0028】
上記の説明は、特許請求の範囲の性質および特徴の理解を容易にするための例示的な実施形態を提供するものである。特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対して様々な変形が行われ得ることが、当業者には自明であろう。
【0029】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0030】
実施形態1
i)中心の平面状の処理液層(30)とii)熱制御流体が内部を流れる2つの外側の平面状の熱制御流体層(40)とを各々が有する複数の流体モジュール(20)と、
複数の照射モジュール(50)と
を含むモジュール式光化学反応器システム(10)であって、
前記複数の照射モジュール(50)の各々が、第1および第2の主要な面(52,54)を有する平面状の形状を有し、前記複数の照射モジュール(50)の各々が、前記第1の主要な面(52)からまたは前記第1の主要な面(52)を通して放射するよう配置された、可視波長および/またはUV波長において放射可能な半導体エミッタ(70)の少なくとも第1のアレイ(60)を含み、該半導体エミッタ(70)の第1のアレイ(60)が、少なくとも、第1の中心波長において放射可能な第1のエミッタ(72)および該第1の中心波長と異なる第2の中心波長において放射可能な第2のエミッタ(74)を含む、モジュール式光化学反応器システム(10)。
【0031】
実施形態2
前記第1のアレイ(60)が、少なくとも、前記第1および第2の各中心波長とは異なる第3の中心波長において放射可能な第3のエミッタ(76)を更に含む、請求項1記載のシステム(10)。
【0032】
実施形態3
前記エミッタ(70)が、個別にパッケージされたエミッタ(78)を含む、実施形態1または2に記載のシステム(10)。
【0033】
実施形態4
前記エミッタ(70)が、群(79)としてパッケージされたエミッタを含み、前記群(79)が、少なくとも1つの第1のエミッタ(72)および少なくとも1つの第2のエミッタ(74)を含む、実施形態1〜3のいずれか一つに記載のシステム(10)。
【0034】
実施形態5
前記第1のアレイ(60)内の前記少なくとも1つの第1のエミッタ(72)が、第1の電源供給ラインまたは制御ライン(102a)に接続されており、前記第1のアレイ(60)内の前記少なくとも1つの第2のエミッタ(74)が、第2の電源供給ラインまたは制御ライン(102b)に接続されている、実施形態1〜4のいずれか一つに記載のシステム(10)。
【0035】
実施形態6
前記複数の照射モジュール(50)が少なくとも1つの照射モジュール(50a)を含み、該少なくとも1つの照射モジュール(50a)が、前記第2の主要な面(54)からまたは前記第2の主要な面(54)を通して放射するよう配置された、可視波長および/またはUV波長において放射可能な半導体エミッタ(70)の第2のアレイ(80)を更に含み、該半導体エミッタ(70)の第2のアレイ(8)が、少なくとも第1のエミッタ(72)および第2のエミッタ(74)を含む、実施形態1〜5のいずれか一つに記載のシステム(10)。
【0036】
実施形態7
前記複数の照射モジュール(50)の前記少なくとも1つの照射モジュール(50a)が、導入および排出ポート(94,96)を有する冷却流体通路(92)を内部に含む熱交換器(90)を更に含み、該熱交換器(90)が、前記第1のアレイ(60)の前記エミッタ(70)および前記第2のアレイ(80)の前記エミッタ(70)と熱的に接触している、実施形態6記載のシステム(10)。
【0037】
実施形態8
前記複数の照射モジュール(50)の各々が、導入および排出ポート(94)を有する冷却流体通路(92)を内部に含む熱交換器(96)を更に含み、該熱交換器(96)が、前記第1のアレイ(60)の前記エミッタ(70)と熱的に接触している、実施形態1〜5のいずれか一つに記載のシステム(10)。
【0038】
実施形態9
前記エミッタ(70)がLEDである、実施形態1〜8のいずれか一つに記載のシステム(10)。
【0039】
実施形態10
前記LEDが、前記流体モジュール(20)の前記第1または第2の主要な面(22、24)の自由表面領域(22F、24F)に対して少なくとも40mW/cmを供給できる、実施形態9記載のシステム(10)。
【符号の説明】
【0040】
10 モジュール式光化学反応器システム
20 流体モジュール
22F、24F 自由表面領域
30 処理液層
40 熱制御流体層
50 照射モジュール
52 第1の主要な面
54 第2の主要な面
60 第1のアレイ
70 半導体エミッタ
72 第1のエミッタ
74 第2のエミッタ
76 第3のエミッタ
78 個別にパッケージされたエミッタ
79 群としてパッケージされたエミッタ
80 第2のアレイ
90 熱交換器
92 冷却流体通路
102a 第1の電源供給ラインまたは制御ライン
102b 第2の電源供給ラインまたは制御ライン
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9