特許第6680698号(P6680698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6680698
(24)【登録日】2020年3月24日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】ハニカム型加熱装置及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20200406BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   F01N3/20 D
   F01N3/28 301Z
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-572772(P2016-572772)
(86)(22)【出願日】2016年9月21日
(86)【国際出願番号】JP2016077819
(87)【国際公開番号】WO2017086019
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2019年4月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-224132(P2015-224132)
(32)【優先日】2015年11月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】笠井 義幸
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−256816(JP,A)
【文献】 特開2013−198887(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/098889(WO,A1)
【文献】 米国特許第5259190(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁と、前記隔壁を取り囲む外周壁とを有する柱状のハニカム基材、
前記外周壁の外側表面である外周面の周方向に沿って当該外周面上に隣接配置された複数のヒーター、
前記外周面の周方向に沿って配設され、前記複数のヒーターを電気的に接続する接続体、及び
前記ハニカム基材と前記複数のヒーターと前記接続体とを収納する金属ケースを備え、
前記各ヒーターが、通電により発熱する抵抗加熱式ヒーターであり、
前記接続体の、前記外周面の周方向に直交する断面における断面積が、10.0〜30.0mmであり、
前記接続体の熱膨張係数が、前記ハニカム基材の熱膨張係数より3.0×10−6/℃以上大きい、ハニカム型加熱装置。
【請求項2】
前記接続体に、応力緩和部が設けられている請求項1に記載のハニカム型加熱装置。
【請求項3】
前記応力緩和部が、前記接続体に形成された切り込み部分である請求項2に記載のハニカム型加熱装置。
【請求項4】
前記応力緩和部が、前記接続体に形成された折り曲げ部分である請求項2に記載のハニカム型加熱装置。
【請求項5】
前記接続体が金属板である請求項1〜4の何れか一項に記載のハニカム型加熱装置。
【請求項6】
前記接続体が、Ni、Ni基合金及びステンレス鋼からなる群より選択された何れか一種の金属材料で構成されている請求項1〜5の何れか一項に記載のハニカム型加熱装置。
【請求項7】
前記ハニカム基材が、熱伝導率が20W/m・K以上のセラミック材料で構成されている請求項1〜6の何れか一項に記載のハニカム型加熱装置。
【請求項8】
前記複数のヒーターが、電気的に直列又は並列に接続されており、200V以上の高電圧を通電できるような電気抵抗を有する請求項1〜7の何れか一項に記載のハニカム型加熱装置。
【請求項9】
前記各ヒーターが、前記各ヒーターから前記ハニカム基材へ電流が流れるのを防止するための絶縁機能を有する請求項1〜8の何れか一項に記載のハニカム型加熱装置。
【請求項10】
前記ハニカム基材の長さ方向に直交する断面において、前記ハニカム基材の前記外周面上に配置されている前記各ヒーターの中心角が、180゜以下である請求項1〜9の何れか一項に記載のハニカム型加熱装置。
【請求項11】
前記外周壁の厚さが、前記隔壁の厚さよりも厚い請求項1〜10の何れか一項に記載のハニカム型加熱装置。
【請求項12】
前記ハニカム基材に、ストレスレリーフが形成されている請求項1〜11の何れか一項に記載のハニカム型加熱装置。
【請求項13】
前記ハニカム基材に排ガス浄化用の触媒を担持させた請求項1〜12の何れか一項に記載のハニカム型加熱装置。
【請求項14】
請求項13に記載のハニカム型加熱装置を、エンジンから排出される排ガスの排気経路に設置し、前記エンジンの始動前に前記各ヒーターへの通電を開始することにより前記各ヒーターを発熱させて、排ガス浄化用の触媒を担持させた前記ハニカム基材を、前記触媒の触媒活性温度以上の温度に昇温させるハニカム型加熱装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のエンジンから排出される排ガスの排気経路に設置され、排ガス浄化用の触媒を、その活性温度まで早期に昇温させるためのハニカム型加熱装置と、その使用方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジンから排出される排ガス中に含まれるHC、CO、NO等の有害物質の浄化処理のため、ハニカム構造体に触媒を担持したものが使用されている。このように、ハニカム構造体に担持した触媒によって排ガスを処理する場合、触媒をその活性温度まで昇温する必要があるが、エンジン始動時には、触媒が活性温度に達していないため、排ガスが十分に浄化されないという問題があった。特に、プラグインハイブリッド車(PHEV)やハイブリッド車(HV)は、その走行に、モーターのみによる走行を含むことから、エンジン始動頻度が少なく、エンジン始動時の触媒温度が低いため、エンジン始動直後の排ガス浄化性能が悪化し易い。
【0003】
この問題を解決するため、導電性セラミックスからなるハニカム構造体に電極を配設し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させることで、触媒をエンジン始動前に活性温度まで昇温できるようにした電気加熱触媒(EHC)が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、ハニカム構造体の外周壁を取り囲むように、筒状の抵抗加熱式ヒーターを配置し、ハニカム構造体の外周壁の壁面を加熱することで、内部のセル構造物に熱を伝達するようにした加熱装置も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−229976号公報
【特許文献2】特開2013−238116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通電によりハニカム構造体自体を発熱させる方式では、振動等によりハニカム構造体に軽度のクラックが生じただけでも、ハニカム構造体内を流れる電流の経路が変化して、温度の低下や温度分布の変化が生じるため、耐久性が十分とは言えない。また、この方式において、ハニカム構造体は、その外周に断熱材(把持材)が巻き付けられ、筒状の金属ケース内に収納された状態で使用されるが、断熱材が水分を吸収(吸水)すると、ハニカム構造体に通電した際に、漏電や短絡が生じるおそれが有る。即ち、エンジン遮断後に排気系に残留する水蒸気は排気系で結露するため、排気系に断熱材のような吸水部材があると、結露により生じた水分が吸水部材(断熱材)に集まってくる傾向がある。そして、そのような水分を断熱材が吸水すると、断熱材の電気絶縁性が低下し、その結果、吸水した断熱材により漏電・短絡事故が生じ得る。
【0007】
一方、ハニカム構造体の外周壁を取り囲むように、筒状の抵抗加熱式ヒーターを配置する方式では、ハニカム構造体は、外部のヒーターによって加熱されるため、振動等によりハニカム構造体に軽度のクラックが生じても、ハニカム構造体の温度変化は少ない。しかし、筒状のヒーターは、熱応力による破損が生じ易い。そして、単一(一体構造)の抵抗加熱式ヒーターによる加熱では、そのヒーターが破損して通電できなくなると、ハニカム構造体全体が全く加熱されなくなる。
【0008】
このような問題を解決する手段として、ハニカム構造体の外周壁を取り囲むように、複数の抵抗加熱式ヒーターを配置することが考えられる。この場合、複数のヒーターに纏めて通電するため、それら複数のヒーター間を電気的に接続する接続体が必要になる。通常、この種の加熱装置は、ハニカム構造体とヒーターとが筒状の金属ケースに収納された状態で使用され、ヒーターの発熱時には、金属ケース内の温度は、500〜1000℃程度になる。よって、金属ケースの内部で、ヒーター間の接続を行う場合、接続体の溶断を防ぐため、ある程度、熱容量が大きく、温度上昇し難い接続体を用いる必要がある。しかしながら、接続体は、断面積を増大させるなどして熱容量を大きくすると、それに伴って剛性が高くなる。そして、接続体に高剛性のものを用いると、接続体と当該接続体により接続された複数のヒーターとによって、ハニカム構造体が強く拘束されてしまう。このため、ハニカム構造体がヒーターにより加熱され熱膨張する際に、接続体と当該接続体により接続された複数のヒーターとから、ハニカム構造体に高い応力が加わり、その結果、ハニカム構造体の破損が生じる。
【0009】
一方、接続体に低剛性のものを用いると、接続体によるヒーター間の拘束力が弱まるため、前記のような応力を緩和でき、当該応力によるハニカム構造体の破損を防止することができる。しかしながら、そのような低剛性の接続体は、通常、熱容量が小さいため、高温環境となる金属ケースの内部では、ヒーターの熱によって溶断し易い。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、ハニカム構造体(ハニカム基材)の外周壁を取り囲む複数のヒーター間の接続を、金属ケースの内部で行っても、ハニカム基材の破損や接続体の溶断が生じ難いハニカム型加熱装置とその使用方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下のハニカム型加熱装置及びその使用方法が提供される。
【0012】
[1] 一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁と、前記隔壁を取り囲む外周壁とを有する柱状のハニカム基材、前記外周壁の外側表面である外周面の周方向に沿って当該外周面上に隣接配置された複数のヒーター、前記外周面の周方向に沿って配設され、前記複数のヒーターを電気的に接続する接続体、及び前記ハニカム基材と前記複数のヒーターと前記接続体とを収納する金属ケースを備え、前記各ヒーターが、通電により発熱する抵抗加熱式ヒーターであり、前記接続体の、前記外周面の周方向に直交する断面における断面積が、10.0〜30.0mmであり、前記接続体の熱膨張係数が、前記ハニカム基材の熱膨張係数より3.0×10−6/℃以上大きいハニカム型加熱装置。
【0013】
[2] 前記接続体に、応力緩和部が設けられている[1]に記載のハニカム型加熱装置。
【0014】
[3] 前記応力緩和部が、前記接続体に形成された切り込み部分である[2]に記載のハニカム型加熱装置。
【0015】
[4] 前記応力緩和部が、前記接続体に形成された折り曲げ部分である[2]に記載のハニカム型加熱装置。
【0016】
[5] 前記接続体が金属板である[1]〜[4]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0017】
[6] 前記接続体が、Ni、Ni基合金及びステンレス鋼からなる群より選択された何れか一種の金属材料で構成されている[1]〜[5]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0018】
[7] 前記ハニカム基材が、熱伝導率が20W/m・K以上のセラミック材料で構成されている[1]〜[6]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0019】
[8] 前記複数のヒーターが、電気的に直列又は並列に接続されており、200V以上の高電圧を通電できるような電気抵抗を有する[1]〜[7]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0020】
[9] 前記各ヒーターが、前記各ヒーターから前記ハニカム基材へ電流が流れるのを防止するための絶縁機能を有する[1]〜[8]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0021】
[10] 前記ハニカム基材の長さ方向に直交する断面において、前記ハニカム基材の前記外周面上に配置されている前記各ヒーターの中心角が、180゜以下である[1]〜[9]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0022】
[11] 前記外周壁の厚さが、前記隔壁の厚さよりも厚い[1]〜[10]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0023】
[12] 前記ハニカム基材に、ストレスレリーフが形成されている[1]〜[11]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0024】
[13] 前記ハニカム基材に排ガス浄化用の触媒を担持させた[1]〜[12]の何れかに記載のハニカム型加熱装置。
【0025】
[14] [13]に記載のハニカム型加熱装置を、エンジンから排出される排ガスの排気経路に設置し、前記エンジンの始動前に前記各ヒーターへの通電を開始することにより前記各ヒーターを発熱させて、排ガス浄化用の触媒を担持させた前記ハニカム基材を、前記触媒の触媒活性温度以上の温度に昇温させるハニカム型加熱装置の使用方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明のハニカム型加熱装置においては、接続体の断面積を、10.0〜30.0mmの範囲としている。これにより、金属ケース内部という高温環境下での接続体の溶断を防止できる。また、接続体の剛性が高くなりすぎないため、接続体と当該接続体により接続された複数のヒーターとによる、ハニカム基材の拘束力を低下させることができる。そして、その結果、ハニカム基材がヒーターにより加熱され熱膨張する際に、接続体と当該接続体により接続された複数のヒーターとから、ハニカム基材に加わる応力が緩和され、当該応力によるハニカム基材の破損を防止できる。また、本発明のハニカム型加熱装置においては、接続体の熱膨張係数が、ハニカム基材の熱膨張係数より3.0×10−6/℃以上大きくなるようにしている。これにより、ハニカム基材がヒーターにより加熱され熱膨張する際に、接続体が、ハニカム基材より大きく熱膨張する。そして、その結果、ハニカム基材がヒーターにより加熱され熱膨張する際に、接続体と当該接続体により接続された複数のヒーターとから、ハニカム基材に加わる応力が緩和され、当該応力によるハニカム基材の破損を防止できる。
【0027】
また、本発明のハニカム型加熱装置の使用方法によれば、エンジン始動前に各ヒーターへの通電を開始することにより各ヒーターを発熱させて、排ガス浄化用の触媒を担持させたハニカム基材を、触媒の触媒活性温度以上の温度に昇温させることができる。そして、その結果、エンジン始動直後から、活性化した触媒により、排ガス中に含まれる有害成分を効率良く浄化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のハニカム型加熱装置の実施形態の一例を示し、金属ケースの内部の構造を、ハニカム基材の長さ方向と直交する方向から見た概略説明図である。
図2図1のA−A’断面図である。
図3】本発明のハニカム型加熱装置に使用されるヒーターの一例を示す概略断面図である。
図4】応力緩和部の一例を示す概略平面図である。
図5】応力緩和部の他の一例を示す概略断面図である。
図6】ストレスレリーフが形成されたハニカム基材の一例を示す概略平面図である。
図7】ヒーターの中心角について説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、それらの実施形態に限定されて解釈されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等を加え得るものである。
【0030】
(1)ハニカム型加熱装置:
図1は、本発明のハニカム型加熱装置の実施形態の一例を示し、金属ケースの内部の構造を、ハニカム基材の長さ方向と直交する方向から見た概略説明図である。図2は、図1のA−A’断面図である。これら図1及び図2に示すように、本発明のハニカム型加熱装置1は、ハニカム基材2と、複数のヒーター9と、接続体11と、金属ケース15とを備える。
【0031】
ハニカム基材2は、柱状で、一方の端面6から他方の端面7まで延びる複数のセル5を区画形成する隔壁4と、隔壁4を取り囲む外周壁3とを有する。セル5は、排ガス等の流体の流路となる。複数のヒーター9は、ハニカム基材2の外周壁3の外側表面(外部に露出している側の面)である外周面8の周方向に沿って、外周面8上に隣接配置されている。各ヒーター9は、通電のための電極21を有し、通電により発熱する抵抗加熱式ヒーターである。複数のヒーター9は、接続体11によって電気的に接続されている。本実施形態では、図1に示すように、2つの接続体11a、11bが配設されている。これら2つの接続体の内、一方の接続体11aは、各ヒーター9の陽極側の電極21aに接続され、他方の接続体11bは、各ヒーター9の陰極側の電極21bに接続されている。これら2つの接続体11a、11bには、それぞれ電線30a、30bの一端が電気的に接続されている。電線30a、30bの他の一端は、金属ケース15の外部に引き出されて、電源に接続されている。電源から、これら電線30a、30bを介し、接続体11a、11bを通じて各ヒーター9に通電することにより、各ヒーター9を発熱させることができる。
【0032】
金属ケース15は、ハニカム基材2と複数のヒーター9と接続体11とを収納する筒状で金属製の構造体である。接続体11は、ハニカム基材2の外周面8に沿って配設され、金属ケース15の内部において、各ヒーター9の電極21と電気的に接続されている。
【0033】
本発明のハニカム型加熱装置1においては、接続体11の、ハニカム基材2の外周面8の周方向に直交する断面における断面積(以下、単に「接続体の断面積」という場合がある。)が、10.0〜30.0mmである。尚、図1に示すように、ハニカム型加熱装置1が、接続体11を複数有する場合においては、個々の接続体11の断面積が、それぞれ前記範囲に含まれる必要が有る。接続体11の断面積を10.0mm以上とすることにより、接続体11に適度な熱容量を持たせることができる。このため、接続体11の過剰な温度上昇が抑制され、金属ケース15内部という高温環境下において、接続体11の溶断を効果的に防止できる。また、接続体11の断面積を30.0mm以下とすることにより、接続体11の剛性が高くなりすぎるのを防ぐことができる。このため、接続体11と接続体11により接続された複数のヒーター9とによる、ハニカム基材2の拘束力を低下させることができる。そして、その結果、ハニカム基材2がヒーター9により加熱され熱膨張する際に、接続体11と接続体11により接続された複数のヒーター9とから、ハニカム基材2に加わる応力が緩和され、当該応力によるハニカム基材2の破損を効果的に防止できる。本発明のハニカム型加熱装置1において、接続体11の断面積は、20〜30mmであることが好ましく、20〜25mmであることがより好ましい。
【0034】
また、本発明のハニカム型加熱装置1においては、接続体11の熱膨張係数が、ハニカム基材2の熱膨張係数より3.0×10−6/℃以上大きくなるようにしている。これにより、ハニカム基材2がヒーター9により加熱され熱膨張する際に、接続体11が、ハニカム基材2より大きく熱膨張する。そして、その結果、ハニカム基材2がヒーター9により加熱され熱膨張する際に、接続体11と接続体11により接続された複数のヒーター9とから、ハニカム基材2に加わる応力が緩和され、当該応力によるハニカム基材2の破損を効果的に防止できる。本発明のハニカム型加熱装置1においては、接続体11の熱膨張係数が、ハニカム基材2の熱膨張係数より6.0×10−6/℃以上大きくなるようにすることが好ましく、12.0×10−6/℃以上大きくなるようにすることがより好ましい。尚、本発明において、接続体及びハニカム基材の熱膨張係数は、線膨張係数測定装置(TMA)を用いて室温〜800℃までの寸法変化を測定するという方法で求めた値である。
【0035】
また、本発明のハニカム型加熱装置1においては、複数のヒーター9によってハニカム基材2を加熱するため、一部のヒーター9が破損して発熱しなくなったとしても、残りの発熱可能なヒーター9で、ハニカム基材2を加熱することができる。
【0036】
更に、本発明のハニカム型加熱装置1に使用される複数のヒーター9は、ハニカム基材2の外周面8の周方向において隣接しているものの、互いに分断された分割構造となっているため、個々のヒーター9には大きな熱応力が生じ難い。このため、これら複数のヒーター9は、特許文献2に開示されているような、筒状で単一のヒーターに比べ、熱応力による破損が起こり難く、耐久性に優れる。
【0037】
本発明のハニカム型加熱装置1に使用されるヒーター9の数は、複数であればよく、上限数は特に限定されないが、装置の組み立て易さ等を考慮すると、2〜8個程度とすることが好ましい。外周面が湾曲したハニカム基材(例えば円柱状のハニカム基材)を用いる場合には、図2等に示すように、ヒーター9に、ハニカム基材2の外周面8と同程度に湾曲した凹円弧状の面10が形成されていることが好ましい。この凹円弧状の面10は、ハニカム基材2の外周面8と対向する面である。このような面10を形成することにより、ヒーター9をハニカム基材2の外周面8上に配置したときに、ヒーター9と外周面8との間に隙間が生じ難くなり、ヒーター9の熱がハニカム基材2に効率良く伝達される。
【0038】
また、本発明のハニカム型加熱装置1は、ハニカム基材2の周方向において、外周面8の50%以上がヒーター9により覆われている部分を有していることが好ましい。更に、本発明のハニカム型加熱装置1には、この「ハニカム基材2の周方向において、外周面8の50%以上がヒーター9により覆われている部分」が、ハニカム基材2の長さ方向において、ハニカム基材2の全長の60%以上の長さに渡って存在することが好ましい。ハニカム基材2の外周面8において、ヒーター9により覆われる領域を、このように設定することにより、ハニカム基材2を目標とする温度まで加熱し易くなる。
【0039】
通常、本発明のハニカム型加熱装置1を、自動車に搭載して使用する場合、ヒーター9の通電に、自動車の電気系統に使用される電源が共通で使用され、例えば200Vという高い電圧の電源が用いられる。このため、本発明のハニカム型加熱装置1においては、複数のヒーター9が、電気的に直列又は並列に接続されており、200V以上の高電圧を通電できるような電気抵抗を有することが好ましい。ここで、「200V以上の高電圧を通電できる」とは、具体的には、200V通電時に電流を25A程度とすることが可能であることを意味する。
【0040】
尚、金属製のヒーターは、電気抵抗が低いため、このような高い電圧の電源を用いた場合、過剰に電流が流れ、電源回路を損傷させることがある。よって、本発明のハニカム型加熱装置1においては、セラミック部材の内部に発熱抵抗体が埋設されたセラミックヒーターを用いることが好ましい。セラミック部材の構成材料としては、ベリリア、窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ等が好適に使用できる。また、発熱抵抗体の構成材料としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、ベリリウム(Be)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)等が好適に使用できる。また、発熱抵抗体の構成材料は、化合物であってもよく、この場合、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)の窒化物、炭化物、硼化物、珪化物等が好適に使用できる。
【0041】
図3は、本発明のハニカム型加熱装置に使用されるヒーターの一例を示す概略断面図である。このヒーター9は、セラミック部材23の内部に発熱抵抗体22が埋設されたセラミックヒーターである。発熱抵抗体22上には、ヒーター9(発熱抵抗体22)に通電するための電極21が立設されている。電極21は、発熱抵抗体22と同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0042】
本発明のハニカム型加熱装置1に使用されるハニカム基材2が導電性材料から形成されている場合、各ヒーター9は、各ヒーター9からハニカム基材2へ電流が流れるのを防止するための絶縁機能を有することが好ましい。各ヒーター9が絶縁機能を有していると、ハニカム基材2が導電性材料から形成されている場合においても、各ヒーター9からハニカム基材へ電流が流れて、短絡(ショート)するのを防止することができる。各ヒーター9に絶縁機能を付与する方法の一例としては、例えば、各ヒーター9の、ハニカム基材2の外周面8と対向する面に、層状の絶縁材を配設する方法が挙げられる。絶縁材の材質としては、窒化珪素、アルミナ等が好適に使用できる。
【0043】
本発明のハニカム型加熱装置1では、ハニカム基材2の長さ方向(軸方向)に直する断面において、ハニカム基材2の外周面8上に配置されている各ヒーター9の中心角αが、180゜以下であることが好ましい。また、この中心角αは、10〜180゜であることがより好ましく、10〜100゜であることが更に好ましい。ここで、「各ヒーター9の中心角α」とは、図7に示すように、ハニカム基材2の長さ方向に直交する断面において、各ヒーター9の両端とハニカム基材2の中心Oとを結ぶ2本の線分により形成される角である。また、「ハニカム基材2の中心O」とは、図7に示すように、ハニカム基材2の長さ方向に直交する断面の外周形状が円形である場合は、その円の中心を意味する。また、ハニカム基材2の長さ方向に直交する断面の外周形状が円形以外の形状である場合は、その断面に内包される最大の円の中心を意味する。各ヒーター9の中心角αが、180゜を超えると、ハニカム基材2とヒーター9との間に隙間が生じ易くなる。また、各ヒーター9の中心角αが、10゜未満では、1つのヒーター9で覆うことができる外周面8の範囲が狭くなり、ハニカム基材2を目標の温度まで加熱するために必要なヒーター9の数が多くなりすぎる場合がある。尚、図7においては、ハニカム基材2の隔壁が省略されている。
【0044】
本発明のハニカム型加熱装置1において使用する接続体11は、その断面積が10.0〜30.0mmであり、かつ、その熱膨張係数が、ハニカム基材2の熱膨張係数より3.0×10−6/℃以上大きい導体であれば、その材質や形態は特に制限されない。接続体11として好適に使用できるものとしては、例えば、金属板を挙げることができる。接続体11として、金属板を使用する場合、図2の接続体11のように、複数のヒーター9の周りを取り囲むように、湾曲させた状態で使用することが好ましい。また、当該金属板には、図2の接続体11のように、ヒーター9の電極21が嵌合する孔部18が設けられ、孔部18において、金属板(接続体11)がヒーター9の電極21と電気的に接続されていることが好ましい。
【0045】
また、本発明のハニカム型加熱装置1においては、接続体11に、応力を緩和するための応力緩和部が設けられていることが好ましい。ここで言う「応力緩和部」とは、接続体によるヒーター間の拘束力を低下させ、ハニカム基材がヒーターにより加熱されて熱膨張した際に、接続体と当該接続体により接続された複数のヒーターとから、ハニカム基材に加わる応力を緩和する機能を有する部位である。図4は、応力緩和部の一例を示す概略側面図(ハニカム基材の長さ方向と直交する方向から見た概略図)である。この例では、隣接するヒーター9の電極21間において、接続体11に切り込みが形成されており、この切り込みが形成された部分が応力緩和部25となる。このように切り込みが形成された部分は、他の部分に比べて剛性が低く変形し易いため、接続体11によるヒーター9間の拘束力を低下させ、前記応力を緩和することができる。また、図5は、応力緩和部の他の一例を示す概略断面図(ハニカム基材の長さ方向と直交する断面の概略図)である。この例では、隣接するヒーター9の電極21間において、接続体11に折り曲げ部分が形成されており、この折り曲げ部分が応力緩和部26となる。このような折り曲げ部分は、伸縮性を有するため、接続体11によるヒーター9間の拘束力を低下させ、前記応力を緩和することができる。
【0046】
本発明のハニカム型加熱装置1において、接続体11は、その溶融温度が、1100℃以上であることが好ましく、1300℃以上であることがより好ましく、1500℃以上であることが特に好ましい。このように、溶融温度が高い接続体11を用いることで、接続体11がより溶断し難くなる。接続体11の材質は、特に限定されるものではないが、耐熱性が高く、低抵抗であることから、ニッケル(Ni)、Ni基合金及びステンレス鋼からなる群より選択された何れか一種の金属材料から構成されたものであることが好ましい。また、銅線がニッケルで被覆されたニッケル被覆銅線を、導体に用いることも好ましい。
【0047】
本発明のハニカム型加熱装置1に使用されるハニカム基材2は、熱伝導率が20W/m・K以上のセラミック材料で構成されていることが好ましく、熱伝導率が50W/m・K以上のセラミック材料で構成されていることがより好ましい。ハニカム基材2が、このような熱伝導率の高い材料で構成されていることにより、ヒーター9の熱をハニカム基材2に効率良く伝達することができるとともに、ハニカム基材2全体を均一に発熱させることができる。尚、本発明において、ハニカム基材の熱伝導率は、レーザーフラッシュ法で測定した値である。
【0048】
ハニカム基材2の構成材料としては、熱伝導性、耐熱性、耐食性に優れたSiC(炭化珪素)を主成分とするものが好ましい。尚、ここで言う「主成分」とは、材料全体の50質量%以上であることを意味する。より具体的な構成材料としては、Si−SiC複合材、(Si+Al)−SiC複合材、金属複合SiC、再結晶SiC、Si、SiC等が好適な材料として挙げられる。但し、ハニカム基材2の気孔率が高すぎる場合には、これらの材料を用いても、高い熱伝導率が得られないことがあるため、ハニカム基材2は緻密質(気孔率が0〜5%程度)であることが好ましい。Si−SiC複合材は、SiCに金属Siが含浸されることで緻密に形成され、高い熱伝導率や耐熱性を示すため、ハニカム基材2の構成材料として特に好ましい。
【0049】
ハニカム基材2の外周壁3の厚さは、隔壁4の厚さよりも厚いことが好ましい。このように、外周壁3の厚さを、隔壁4の厚さよりも厚くすることで、ハニカム基材2の強度を高めることができ、ハニカム基材2に必要な強度を確保し易くなる。
【0050】
ハニカム基材2の外周壁3の厚さは、特に制限はないが、0.15〜2.0mmとすることが好ましく、0.3〜1.0mmとすることが更に好ましい。外周壁3の厚さを0.15mm以上とすることにより、ハニカム基材2の機械的強度を十分なものとし、衝撃や熱応力によってハニカム基材2が破損するのを防止することができる。また、外周壁3の厚さを2.0mm以下とすることにより、ヒーター9の熱を外周壁3を介して隔壁4まで効率良く伝達できる。
【0051】
ハニカム基材2の隔壁4の厚さも、特に制限はないが、0.1〜1mmとすることが好ましく、0.2〜0.5mmとすることが更に好ましい。隔壁4の厚さを0.1mm以上とすることにより、ハニカム基材2の機械的強度を十分なものとし、衝撃や熱応力によってハニカム基材2が破損するのを防止することができる。また、隔壁4の厚さを1mm以下とすることにより、流体がセル5内を流れる際の圧力損失が大きくなるのを防止することができる。
【0052】
ハニカム基材2のセル密度(単位断面積当たりのセルの数)については、特に制限はないが、25〜2000セル/平方インチ(4〜320セル/cm)の範囲であることが好ましい。セル密度を25セル/平方インチ(4セル/cm)以上とすることにより、隔壁4の強度、ひいてはハニカム基材2自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分なものとすることができる。また、セル密度を2000セル/平方インチ(320セル/cm)以下とすることにより、流体がセル5内を流れる際の圧力損失が大きくなるのを防止することができる。
【0053】
ハニカム基材2の気孔率は、0〜5%程度であることがより好ましい。ハニカム基材2の気孔率をこのような範囲とすることにより、ハニカム基材2に必要な強度を確保し易くなるとともに、熱伝導率を向上させることができる。尚、ここで言う「気孔率」は、アルキメデス法により測定した値である。
【0054】
ハニカム基材2の形状(外形)は、柱状であること以外は特に限定されず、例えば、円柱状、楕円柱状、多角柱状等の形状とすることができる。また、セル5のハニカム基材2の長さ方向に対して垂直な断面における形状(以下、「セル形状」という。)も特に限定されないが、四角形、六角形、八角形等の多角形あるいはそれらを組み合わせたもの、例えば四角形と八角形を組み合わせたもの等が好ましい。
【0055】
ハニカム基材2の長さ方向に垂直な断面の直径(当該断面が円形以外の形状である場合は、当該断面に外接する円の直径)は、特に限定されるものではないが、300mm以下であることが好ましく、200mm以下であることがより好ましい。ハニカム基材2の長さ方向に垂直な断面の直径を、このような範囲とすることにより、ヒーター9の熱を、ハニカム基材2の内部の隔壁4まで、効率良く伝達することができる。
【0056】
ハニカム基材2には、ストレスレリーフ(stress relief)が形成されていることが好ましい。ストレスレリーフを形成することにより、ハニカム基材2内での応力緩和が可能となる。ストレスレリーフの代表的なものとしては、例えば、図6に示すように、ハニカム基材2の外周面8から内部方向に切り込まれたスリット12が挙げられる。但し、ストレスレリーフは、このようなスリット12に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲で公知のストレスレリーフを形成することができる。
【0057】
本発明のハニカム型加熱装置1を、エンジンから排出される排ガスの排気経路に設置して使用する場合、ハニカム基材2の隔壁4に排ガス浄化用の触媒を担持させることが好ましい。このように隔壁4に触媒を担持させると、排ガス中のCO、NO、HC等の有害物質を、触媒反応によって無害な物質にすることが可能になる。ここで、ハニカム基材2の隔壁4に担持させる触媒の種類は特に限定されないが、例えば、自動車排ガス浄化用途に用いる場合、貴金属を用いることが好ましい。貴金属としては、白金、ロジウム若しくはパラジウム、又はこれらを組み合わせたものが好ましい。これら貴金属の担持量は、ハニカム基材2の単位体積当たり、0.1〜5g/Lとすることが好ましい。
【0058】
貴金属等の触媒は、隔壁4に高分散状態で担持させるため、一旦、アルミナ等の比表面積の大きな耐熱性無機酸化物の粒子(担体微粒子)に担持させた後、その粒子とともにハニカム基材2の隔壁4に担持させることが好ましい。
【0059】
本発明のハニカム型加熱装置1において、金属ケース15の材質は、例えば、ステンレス鋼であることが好ましく、クロム系、クロム・ニッケル系のステンレス鋼であることが特に好ましい。
【0060】
また、本発明のハニカム型加熱装置1においては、図1に示すように、ハニカム基材2の一方の端面6及び他方の端面7のそれぞれに近い部位において、ハニカム基材2と金属ケース15との間に断熱材17を配設することが好ましい。このように、断熱材17を配設することによって、ヒーター9の熱が外部に逃げ難くなり、ヒーター9の熱を、ハニカム基材2に効率良く伝達することができる。断熱材17の材質は特に限定されないが、ハニカム基材2の外周に巻き付けることによって、ハニカム基材2と金属ケース15との間に容易に配設でき、断熱性も高いことから、セラミック繊維マットを用いることが好ましい。尚、接続体11及び電極21は、断熱材17と接触しない構造とすることが好ましい。このような構造とすると、断熱材17が吸水して、断熱材17の電気絶縁性が低下したとしても、漏電や短絡による事故が生じ難くなる。また、接続体11及び電極21と断熱材17との間には、耐熱性を有する断熱シートを配設することが望ましい。耐熱性を有する断熱シートとしては、マイカ材等からなるシートが好適なものとして挙げられる。
【0061】
本発明のハニカム型加熱装置1の用途や使用形態は、特に限定されるものではないが、エンジンから排出される排ガスの排気経路に設置して使用することが、その効果を有効に活用する観点から好ましい。そして、その場合、本発明のハニカム型加熱装置1は、エンジンの始動前に各ヒーター9への通電を開始することにより各ヒーター9を発熱させて、排ガス浄化用の触媒を担持させたハニカム基材2を、その触媒の触媒活性温度以上の温度に昇温させるために使用することが好ましい。本発明のハニカム型加熱装置1を、このように使用すると、エンジン始動直後から、活性化した触媒により、排ガス中に含まれる有害成分を効率良く浄化することができる。
【0062】
(2)ハニカム型加熱装置の製造方法:
本発明のハニカム型加熱装置の製造方法の一例を説明する。まず、ハニカム基材を作製するために、セラミック原料を含有する成形原料を作製する。セラミック原料には、先にハニカム基材の材料として例示したセラミックスを形成できるような粉末を好適に使用することができる。例えば、ハニカム基材の構成材料として、Si−SiC複合材を採用する場合には、SiC粉末をセラミック原料とすることが好ましい。成形原料は、このようなセラミック原料に、必要に応じて、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、界面活性剤等の添加剤を混合して調製することが好ましい。
【0063】
次に、成形原料を混練して柱状の坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法には、特に制限はない。好適な方法としては、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0064】
次いで、格子状のスリットが形成された口金を用いて、坏土から、隔壁と外周壁とを有するハニカム成形体を押出成形し、このハニカム成形体を乾燥する。乾燥方法は、特に限定されるものではない。好適な乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらの内でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥、熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
【0065】
続いて、乾燥後のハニカム成形体(ハニカム乾燥体)を焼成して、ハニカム基材を作製する。尚、この焼成(本焼成)の前に、ハニカム成形体中に含まれているバインダ等を除去するため、仮焼(脱脂)を行うことが好ましい。仮焼の条件は、特に限定されるものではなく、ハニカム成形体中に含まれている有機物(有機バインダ等)を除去(燃焼)することができるような条件あればよい。ハニカム成形体を焼成(本焼成)する条件(温度、時間、雰囲気等)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、Si−SiC複合材から構成されるハニカム基材を作製する場合は、SiC粉末を含むハニカム成形体上に、塊状の金属Siを載置して、減圧の不活性ガス又は真空中で焼成し、金属Siをハニカム成形体に含浸させる。この焼成により、SiC粒子の隙間に金属Siが充填された緻密質(低気孔率)のハニカム基材が得られる。尚、ハニカム基材には、必要に応じて、スリット等のストレスレリーフを形成してもよい。
【0066】
また、ハニカム基材の隔壁に排ガス浄化用の触媒を担持させる場合には、例えば、予め、担体微粒子となるセラミックス粉末に、貴金属等の触媒成分を含む水溶液を含浸させた後、乾燥し、焼成することにより触媒コート微粒子を得る。こうして得られた触媒コート微粒子に、分散媒(水等)、その他の添加剤を加えてコーティング液(スラリー)を調製する。そして、このスラリーを、吸引法等の従来公知のコーティング方法を用いて、ハニカム基材の隔壁にコーティングした後、乾燥し、焼成することによって、ハニカム基材の隔壁に触媒を担持させる。
【0067】
次に、ヒーターを作製する。尚、以下に説明する作製方法は、抵抗加熱式ヒーターの一種であるセラミックヒーターを作製する方法の一例である。まず、窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ等のセラミック原料に、適宜、焼結助剤、バインダ等を添加してヒーター用成形原料を得る。このヒーター用成形原料からハニカム基材の外周面と同程度に湾曲したプレート成形体を作製し、それを焼成することで、セラミックプレートを作製する。このセラミックプレートの表面に、発熱抵抗体を印刷した後に再度焼成する。発熱抵抗体としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、ベリリウム(Be)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)等からなるものが好適に使用できる。また、発熱抵抗体は、化合物からなるものであってもよく、この場合、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)の窒化物、炭化物、硼化物、珪化物等からなるものが好適に使用できる。
【0068】
次いで、発熱抵抗体上に、発熱抵抗体と電気的に接続するように、棒状の電極を立設する。続いて、前記セラミックプレートと同様の方法で作製したセラミックプレートに、電極挿通用の孔部を設け、それを、発熱抵抗体が印刷された前記セラミックプレートに重ね合わせて接着する。このようにして、ハニカム基材の外周面と同程度に湾曲した凹円弧状の面を有するセラミックヒーターが得られる。
【0069】
こうして得られた複数のセラミックヒーターを、ハニカム基材の外周面の周方向に沿って、外周面を取り囲むように隣接配置し、各セラミックヒーターの凹円弧状の面をハニカム基材の外周面に接触させる。次いで、10.0〜30.0mmの断面積を有し、その熱膨張係数が、ハニカム基材の熱膨張係数より3.0×10−6/℃以上大きい接続体(例えば、金属板)を、ハニカム基材の外周面の周方向に沿って配設し、各ヒーターの電極と電気的に接続する。次に、ハニカム基材の一方の端面及び他方の端面にそれぞれ近い部位において、ハニカム基材の外周に、セラミック繊維マット(断熱材)を巻き付け、金属ケース内に収納する。尚、接続体には、外部の電源から当該接続体を通じてヒーターに通電するための電線の一端を接続し、当該電線の他の一端を、金属ケースの外部に引き出しておくことが好ましい。
【0070】
以上により、エンジンから排出される排ガスの排気経路等に設置可能な、本発明のハニカム型加熱装置が得られる。
【0071】
(3)ハニカム型加熱装置の使用方法:
本発明のハニカム型加熱装置の使用方法において使用されるハニカム型加熱装置は、上述の本発明のハニカム型加熱装置1であって、ハニカム基材に排ガス浄化用の触媒を担持させたものである。この使用方法においては、ハニカム基材に排ガス浄化用の触媒を担持させたハニカム型加熱装置1を、エンジンから排出される排ガスの排気経路に設置する。そして、エンジンの始動前に各ヒーター9への通電を開始することにより各ヒーター9を発熱させて、排ガス浄化用の触媒を担持させたハニカム基材2を、触媒の触媒活性温度以上の温度に昇温させる。この使用方法によれば、エンジン始動直後から、活性化した触媒により、排ガス中に含まれる有害成分を効率良く浄化することが可能となる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
SiC粉末に、バインダ及び水を加えてハニカム基材用成形原料を作製し、それを真空土練機で混練して、円柱状の坏土を得た。この坏土から、押出成形により、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁と、その隔壁を取り囲む外周壁とを有する円柱状のハニカム成形体を得た。その後、このハニカム成形体をマイクロ波及び熱風で乾燥することにより、ハニカム乾燥体を得た。次いで、このハニカム乾燥体上に、塊状の金属Siを載置し、真空炉中で焼成し、Si−SiC複合材から構成されたハニカム基材を得た。こうして得られたハニカム基材は、直径が90mm、長さが75mmの円柱状で、外周面の面積は21195mm、外周壁の厚さは0.3mm、隔壁の厚さは0.15mm、セル形状は正方形、セル密度は400セル/cmであった。また、ハニカム基材の気孔率は、5%であった。
【0074】
次に、Si粉末に、バインダ及び水を加えてヒーター用成形原料を作製した。このヒーター用成形原料からハニカム基材の外周面と同程度に湾曲したプレート成形体を作製し、それを焼成することで、セラミックプレートを作製した。このセラミックプレートの表面に、白金からなる発熱抵抗体を印刷した後に再度焼成した。次いで、発熱抵抗体上に、発熱抵抗体と電気的に接続するように、棒状の電極を立設した。続いて、前記セラミックプレートと同様の方法で作製したセラミックプレートに、電極挿通用の孔部を設け、それを、発熱抵抗体が印刷されたセラミックプレートに重ね合わせて接着した。このようにして、ハニカム基材の外周面と同程度に湾曲した凹円弧状の面を有するセラミックヒーターを得た。このヒーターの凹円弧状の面は、幅(円弧部分の長さ)が10mm、長さ(円弧部分に垂直な方向の長さ)が65mmであった。
【0075】
続いて、前記のようにして得られた8個のヒーターを、ハニカム基材の外周面の周方向に沿って、その外周面上に隣接配置し、各ヒーターの凹円弧状の面をハニカム基材の外周面に接触させた。このとき、ハニカム基材の外周面の周方向において、隣接するヒーター間の間隔が全て等しくなるようにヒーターの配置を調整した。次いで、27.0mmの断面積を有し、その熱膨張係数が、ハニカム基材の熱膨張係数より10.5×10−6/℃大きいSUS430製の金属板を湾曲させて、ハニカム基材の外周面の周方向に沿って配設し、各ヒーターの電極と電気的に接続した。金属板には、予め、各ヒーターの電極と嵌合する孔部を設けておき、当該孔部にて各ヒーターの電極と電気的に接続した。次に、ハニカム基材の一方の端面及び他方の端面にそれぞれ近い部位において、ハニカム基材の外周に、アルミナファイバーマット(断熱材)を巻き付け、筒状の金属ケース内に収納した。尚、接続体には、予め、外部の電源から接続体を通じてヒーターに通電するための電線の一端を接続しておき、当該電線の他の一端を、金属ケースの外部に引き出した。以上のようにして、実施例1のハニカム型加熱装置を得た。
【0076】
(評価)
上記のようにして得られた10個のハニカム型加熱装置に、それぞれ7.5Wの電力を40秒間にわたって印加するというサイクルを、10サイクル繰り返した。その後、ハニカム基材が破損していたハニカム型加熱装置の個数を調べて、その結果を表1に示した。
【0077】
(実施例2)
金属板の材質をインバーに変更することにより、金属板の熱膨張係数を、ハニカム基材の熱膨張係数より3.6×10−6/℃大きくした以外は、実施例1と同様にして、実施例2のハニカム型加熱装置を得た。こうして得られた10個のハニカム型加熱装置について、実施例1と同様の方法で、ハニカム基材が破損していたハニカム型加熱装置の個数を調べて、その結果を表1に示した。
【0078】
(実施例3)
金属板の断面積を20.0mmに変更し、金属板の材質をSUS304に変更することにより、金属板の熱膨張係数を、ハニカム基材の熱膨張係数より15.7×10−6/℃大きくした以外は、実施例1と同様にして、実施例3のハニカム型加熱装置を得た。こうして得られた10個のハニカム型加熱装置について、実施例1と同様の方法で、ハニカム基材が破損していたハニカム型加熱装置の個数を調べて、その結果を表1に示した。
【0079】
(比較例1)
金属板の代わりに、断面積が38.5mmのタングステン製ケーブルを用いることにより、当該ケーブルの熱膨張係数を、ハニカム基材の熱膨張係数より1.3×10−6/℃大きくした以外は、実施例1と同様にして、比較例1のハニカム型加熱装置を得た。こうして得られた10個のハニカム型加熱装置について、実施例1と同様の方法で、ハニカム基材が破損していたハニカム型加熱装置の個数を調べて、その結果を表1に示した。
【0080】
(比較例2)
タングステン製ケーブルの代わりに、SUS430製ケーブルを用いて、当該ケーブルの熱膨張係数を、ハニカム基材の熱膨張係数より10.5×10−6/℃大きくした以外は、比較例1と同様にして、比較例2のハニカム型加熱装置を得た。こうして得られた10個のハニカム型加熱装置について、実施例1と同様の方法で、ハニカム基材が破損していたハニカム型加熱装置の個数を調べて、その結果を表1に示した。
【0081】
(比較例3)
タングステン製ケーブルの断面積を33.0mmに変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例3のハニカム型加熱装置を得た。こうして得られた10個のハニカム型加熱装置について、実施例1と同様の方法で、ハニカム基材が破損していたハニカム型加熱装置の個数を調べて、その結果を表1に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
(考察)
表1に示すとおり、接続体の断面積が10.0〜30.0mmで、接続体とハニカム基材との熱膨張係数差が3.0×10−6/℃以上である実施例1〜3は、ハニカム基材が破損していたハニカム型加熱装置の個数が、10個中2個以下であった。一方、接続体の断面積が30.0mmを超えるとともに、前記熱膨張係数差が3.0×10−6/℃未満である比較例1,3と、接続体の断面積が30.0mmを超える比較例2は、ハニカム基材が破損していたハニカム型加熱装置の個数が、10個中7個以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、自動車等のエンジンから排出される排ガスの排気経路に設置され、排ガス浄化用の触媒を、その活性温度まで早期に昇温させるためのハニカム型加熱装置及びその使用方法として、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1:ハニカム型加熱装置、2:ハニカム基材、3:外周壁、4:隔壁、5:セル、6:一方の端面、7:他方の端面、8:外周面、9:ヒーター、10:凹円弧状の面(ハニカム基材の外周面と対向する面)、11:接続体、11a:接続体、11b:接続体、12:スリット、15:金属ケース、17:断熱材、18:孔部、21:電極、21a:電極、21b:電極、22:発熱抵抗体、23:セラミック部材、25:応力緩和部、26:応力緩和部、30a:電線、30b:電線、O:中心、α:中心角。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7