【実施例1】
【0022】
(1)システム構成
図1に、本実施例が想定するシステム構成例を示す。ネットワークは、無線基地局(001)と複数の無線クライアント(002a、002b)から構成される。本発明が対象とするネットワークは、無線クライアントから無線基地局へ伝送する上り通信、及び無線基地局から各無線クライアントへ伝送する下り通信を対象としている。
【0023】
(2)無線基地局の構成例
図2に、第1の実施例における無線基地局(001)の構成例を示す。無線基地局は、マイクロコンピュータ(011)、二つの無線モジュール(012)を有する。本構成は以下に述べる機能を実現する単なる一構成例にすぎず、本発明の特徴を実現する手段は限定されない。例えば、マイクロコンピュータ(011)は、いわゆるマイコンであって、処理装置(CPU)、メモリ、入力インターフェース、出力インターフェースをを備える。マイクロコンピュータは、FPGA(field-programmable gate array)やASIC(application specific integrated circuit)でも構成可能であるし、また機能の一部は通信用無線モジュール(012)に持たせることも考えられる。
図2に示される各構成要素は、ソフトウェアで実現してもよいし、ハードウェアで構成してもよい。
【0024】
マイクロコンピュータ(011)は、2つの送受信処理部(ドライバ)(013a、013b)、結合/スイッチ部(015)、上位通信プロトコル部(016)、干渉記録部(018)、干渉監視・周波数制御部(019)、通信IF管理テーブル(020)、通信接続管理部(021)を有する。
【0025】
無線モジュール(012)は、パケットデータの無線送受信を行い、送受信処理部(013)は、受信されたパケットデータ、または送信するパケットデータのヘッダ処理、無線クライアントとの認証処理・接続処理等のプロトコル処理を行う。無線モジュール(012)と送受信処理部(013)をあわせて無線インターフェース(014a、014b)と呼ぶ。すなわち、2つの無線インターフェース1(014a)、無線インターフェース2(014b)を有する。また、無線インターフェース(014a、014b)は、通信以外の電波状況を測定する機能を有する。
【0026】
結合/スイッチ部(015)は二つの無線インターフェース(014)で受信された上り通信パケットを纏めて上位通信プロトコル部(016)に転送する(結合機能)。また上位通信プロトコル部(016)からの下り通信パケットを、通信IF管理テーブル(020)を参照し、適切な無線インターフェース(014)を選択して転送する(スイッチ機能)。通信IF管理テーブル(020)は、接続されている無線クライアント毎に、現在通信している無線インターフェース(014)を特定する情報を管理する。
【0027】
上位通信プロトコル部(016)は、上位アプリケーションや他デバイスとの中継を適切なプロトコル処理にて行う。例えば、暗号通信のための鍵の処理は、上位通信プロトコル部(016)が行う。
【0028】
干渉記録部(018)は各無線インターフェース(014a、014b)での干渉検出状況を記録する。干渉監視・周波数制御部(019)は各無線インターフェースで電波状況を監視し、周波数切り替えの判断、周波数切り替え指示信号の送信を行う。
【0029】
通信接続管理部(021)は、各無線インターフェース(014a、014b)の無線クライアント(002)との接続状況を確認し、新たに無線クライアント(002)が接続された場合や、暗号通信等のために必要な鍵交換がなされた場合において、他方の無線インターフェースへそれらの情報をコピーする。情報を記憶するため、無線インターフェース(014a、014b)は、例えば、フラッシュメモリのようなメモリを備えるのがよい。
【0030】
(3)無線クライアントの構成例
図3は、第1の実施例における無線クライアント(002)の構成例を示す図である。無線クライアント(002)は、マイクロコンピュータ(028)、一つの無線モジュール(022)を有する。本構成は以下に述べる機能を実現する単なる一構成例にすぎず、本発明の特徴を実現する手段は限定されない。例えば、マイクロコンピュータ(028)は、FPGAやASICでも構成可能であるし、また機能の一部は無線モジュール(022)に持たせることも考えられる。
【0031】
マイクロコンピュータ(028)は、送受信処理部(023)、上位通信プロトコル部(026)、周波数制御部(027)を有する。無線モジュール(022)は、パケットデータの無線送受信を行い、送受信処理部(023)は、受信されたパケットデータ、または送信するパケットデータのヘッダ処理、無線クライアントとの認証処理・接続処理等のプロトコル処理を行う。無線モジュール(022)と送受信処理部(023)をあわせて無線インターフェースと呼ぶ。
【0032】
送受信処理部(023)は、無線プロトコル処理部(024)と接続された無線基地局情報を管理する基地局情報管理部(025)を有する。
【0033】
上位通信プロトコル部(026)は、上位アプリケーションや他デバイスとの中継を適切なプロトコル処理にて行う。例えば、暗号通信のための鍵の処理は、上位通信プロトコル部(026)が行う。
【0034】
周波数制御部(027)は、無線基地局(001)から受信された周波数切り替え信号を受信し、その情報に応じて無線インターフェースの周波数を切り替える。
【0035】
(4)無線基地局の動作
本実施例における無線基地局(001)の動作を
図4から
図7を用いて説明する。
【0036】
図4は、第1の実施例における無線基地局(001)の動作例を示すフローチャートである。起動後、無線インターフェース1、2(014a、014b)にそれぞれ別のチャンネルの周波数設定を行う。その後、無線インターフェース1(014a)、無線インターフェース(014b)で、それぞれのインターフェースの無線基地局動作(S002a,S002b)が開始される。すなわち、各無線インターフェース1(014a)、無線インターフェース(014b)は、それぞれが独立して、一つまたは複数の無線クライアント(002)と通信を行う。
【0037】
図5は、無線インターフェース1(014a)の、無線基地局動作(S002a)の例を示すフローチャートである。周波数設定後、設定された周波数チャンネルで電波状況を確認するチャンネル確認を行う(S011)。たとえば、5GHz帯の無線LANの周波数帯域では60秒間、レーダー信号が存在しないか確認が必要である。そのチャンネル確認中に、電波状況が悪いと判断された場合(S012)、別の周波数に設定し(S016)、再びチャンネル確認を行う(S011)。
【0038】
電波状況が良いと判断された場合、すなわち干渉が認められない場合には、通信を開始する(S013)。通信状態中、無線クライアント(002)からの接続要求があった場合、認証・アソシエーション処理、必要に応じて暗号のための鍵交換を行い、無線クライアント(002)と無線通信を行う。この手順は、基本的に現状の無線LAN等の手順を踏襲する。本明細書では、認証・アソシエーション処理のための情報や、暗号のための鍵情報等、データ通信を確立および維持するために必要な処理のための情報を、接続情報ということにする。通常、無線基地局と無線クライアントを接続するには、無線のネットワーク名、プロトコル、認証や暗号化のための方式、暗号化キー等の情報のいくつかを使用する。
【0039】
通信状態中も、通信周波数チャンネルで常に電波状況を監視し、電波状況が悪いと判断された場合には(S014)、無線クライアント通信周波数切り替え動作を行う(S015)。電波状況の判断は、例えば、プライマリ無線機器であるレーダー信号が検出された場合や、無線インターフェース(014a)で観測された干渉状況が所望の状況より悪くなった場合、等が考えられる。この時、干渉記録部(018)に干渉観測結果及び時刻が記録される。
【0040】
無線インターフェース2(014b)の無線基地局動作例も、無線インターフェース1(014a)での動作と同等であり、2つの無線インタフェースは平行して動作している。すなわち無線インターフェース1、無線インターフェース2(014a、014b)は両方同時に通信状態になり、それぞれが無線クライアント(002)と通信する。またその通信チャンネルでの電波状況も観測する。
【0041】
図6は、
図5に示した無線クライアント通信周波数切り替え動作(S015)の例を示す、フローチャートである。まず、無線インターフェース1(014a)に接続されている無線クライアント(002)全てに周波数切り替え指示信号を送信する(S021)。周波数切り替え指示信号には、切り替え先になる周波数チャンネルを特定する情報が含まれることが望ましい。具体的な例としては、周波数チャンネルは無線インターフェース2(014b)が使用しているチャンネルである。周波数チャンネルを特定する情報が含まれない場合であっても、チャンネルの候補が少ない場合には、全てのチャンネルについて接続を試行してもよい。
【0042】
その後、無線クライアント(002)から送られてくる上りデータが受信される無線インターフェースを監視し(S022)、受信した無線インターフェースが無線インターフェース1から無線インターフェース2に変更された場合に(S023)、通信IF管理テーブル(020)の該当する無線クライアントの無線インターフェースをインターフェース2に書き換える(S024)。これにより、結合/スイッチ部(015)は、上位通信プロトコル部(016)より送られてきた該当無線クライアント宛ての下り通信データを無線インターフェース2に切り換えることができる。
【0043】
通信IF管理テーブルの情報を書き換える方法として、上述のように、無線クライアント(002)からのパケットを受信したインターフェースが変更されたことをトリガーとして、通信IF管理テーブル(020)の情報を書き換える方法がある。また、無線基地局(001)が周波数切り換え指示信号を送った後、無線クライアント(002)からの周波数切り換え指示信号に対する応答がある場合は、その応答を受信したことをトリガーとして、通信IF管理テーブル(020)の該当する無線クライアントの無線インターフェース情報を書き換えてもよい。さらに、無線基地局(001)が周波数切り換え指示信号を送信した後、無線クライアント(002)からのデータ受信を待たず、予め定めた任意の短い時間Δtだけ待ってから、通信IF管理テーブル(020)に記載された該当する無線クライアントの無線インターフェース情報を変更してもよい。Δtは0秒に設定されてもよく、また、周波数切り換え指示信号の中に切り換え時刻の指定がある場合は、Δtは現在時刻と指定された時刻との差分を示すものであってもよい。
【0044】
さらに、上記切り換え方法を複合的に用いてもよい。例えば、無線クライアント(002)から送られてくる上りデータの受信イベントが、下りデータの送信イベントより先に発生した場合、データを受信する無線インターフェースが切替わったことをトリガーとして通信IF管理テーブル(020)の該当するクライアントの無線インターフェース情報を書き換える。また、無線基地局(001)から無線クライアント(002)への下りのデータ送信イベントが先に発生した場合、無線基地局(001)が周波数切り換え指示信号を送信してからΔt秒が経過するまでは周波数切り換え前の無線インターフェースから下りデータを送信し、Δt秒の経過後、通信IF管理テーブル(020)に記載された無線インターフェース情報を変更するようにしてもよい。
【0045】
全ての無線クライアント(002)からの受信無線インターフェースが無線インターフェース2(014b)に切り替わった場合、またはタイムアウトが発生した場合(S025)、無線クライアント通信周波数切り替え動作(S015)を終了する(S026)。
【0046】
その後、
図5に示したように、無線インターフェース1の周波数を別に設定し(S016)、チャンネル確認を行う(S011)。その際に、干渉記録部(018)に記録されている過去の干渉観測結果を参照して決定してもよい。例えば、5GHz帯無線LANではレーダー信号が観測された周波数チャンネルは30分間利用することができないため、過去30分以内にレーダーが観測された周波数チャンネルは選択しない。新しい周波数で干渉がないことが確認されたら、無線インターフェース1は新たに通信を開始することができる。
【0047】
ここまで、無線インターフェース1(014a)で電波状況が悪くなった場合で説明したが、無線インターフェース2(014b)の電波状況が悪くなった逆の状況でも、同様の動作を行う。
【0048】
図7は、無線基地局(001)の通信接続管理部(021)の動作例を示すフローチャートである。通信接続管理部(021)は、無線インターフェース(014a、014b)の無線クライアント(002)との接続状況を監視し(S032)、新たに無線クライアントが接続された場合や、暗号通信のための鍵交換がなされた場合に(S033)、他方の無線インターフェースへ認証情報、アソシエーション情報、及び必要に応じて鍵情報をコピーする(S034)。これらの動作によって、各無線クライアント(002)と、両方の無線インターフェース(014a、014b)とが通信可能状態とすることができる。通常、認証、アソシエーションの処理は送受信処理部(013)が行い、鍵情報の処理は上位通信プロトコル部(016)で行う。
【0049】
図8は、通信IF管理テーブル(020)の内容例を示したものである。各無線クライアントに固有のアドレスであるMAC(Media Access Control)アドレス(081)に対して、現在通信中の無線インターフェース(082)を管理する。
【0050】
(5)無線クライアントの動作
図9に、第1の実施例における無線クライアント(002)の動作例を示すフローチャートを示す。起動後、無線基地局(001)のスキャン(S041)を行い、無線基地局(001)との認証・アソシエーション処理(S042)を行う。暗号通信が必要な場合は、必要な鍵の生成処理等を行う。これらは、現状の無線LANの処理を踏襲してよい。通信を可能とするデータ処理が終わった後、無線通信(S043)を開始する。
【0051】
通信中に、無線基地局から周波数切り替え信号が受信された場合(S044)、無線インターフェースの通信周波数チャンネルを変更する(S046)。切り替え先の周波数チャンネルは、周波数切り替え信号に含まれる。
【0052】
ここで、無線基地局(001)の無線モジュール(012a、012b)のMACアドレスの設定の仕方で動作が異なる。まず、二つの無線モジュール(012a、012b)のMACアドレスが同じ場合は、周波数を変更するのみで通信再開が可能になる。この場合は、
図9の無線基地局アドレス変更処理(S045)は省略可能である。
【0053】
二つの無線モジュール(012a、012b)のMACアドレスが異なる場合、送受信処理部(023)で保持されている無線基地局の物理アドレスを変更する(S045)。切り替え先の無線基地局のMACアドレスは、周波数切り替え指示信号に含まれる。
【0054】
また、周波数切り替え動作時に、無線基地局(001)に送信するデータが存在しない場合には、切り替え直後に無線基地局に周波数切り替え完了信号を切り替え後の周波数チャンネルで送信する(S047)。これにより、無線基地局(001)は、無線クライアント(002)の周波数が切り換えられたことが判別できる。
【0055】
図10に、無線基地局(001)から無線クライアント(002)に送信される、周波数切り替え指示信号(1000)の内容例を示す。上述したように、切り替え先周波数情報(1001)、必要により、切り替え先MACアドレス情報(1002)を含む。また、必要に応じて、周波数切り替え時刻(1003)を含む。周波数切り替え時刻を含む場合は、周波数切り替えを瞬時に行わずその時刻に行う。切り替え先周波数は、無線インターフェース1から無線インターフェース2に切り替える場合には、無線インターフェース2が用いている周波数である。
【0056】
(6)全体シーケンス
図11に、本実施例で実現される周波数切り替え全体シーケンス例を示す。無線クライアント1は、無線基地局(001)の無線インターフェース1と接続を行い、無線通信を行い、無線クライアント2は、無線基地局(001)の無線インターフェース2と接続を行っていることを示している。
【0057】
干渉監視・周波数制御部(019)によるスキャン(S041)の後、送受信処理部(013)および上位通信プロトコル部(016)によって、無線クライアント1と無線インターフェース1との認証、アソシエーション、鍵交換処理(4-way handshake)(S042−1)を行う。その後、通信接続管理部(021)は、無線インターフェース1の認証・アソシエーションの情報や鍵情報を無線インターフェース2にコピーする(COPY1−2)。
【0058】
同様に、無線クライアント2と無線インターフェース2との認証、アソシエーション、鍵交換処理(4-way handshake)(S042−2)が終了した後、無線インターフェース2の認証・アソシエーション情報等を無線インターフェース1にコピーする(COPY2−1)。
【0059】
スキャン(S041)、無線クライアント1と無線インターフェース1との認証、アソシエーション、鍵交換処理(4-way handshake)(S042−1)等の通信の確立方式については、現在運用されている無線LANの方式を踏襲してよい。
【0060】
無線クライアント1との通信(S043−1)の間に、干渉監視・周波数制御部(019)によって、無線インターフェース1における干渉検出(IT)がなされた場合、通信接続管理部(021)は、現在の鍵情報を無線インターフェース2にコピーし(KEY COPY)する。また、干渉監視・周波数制御部(019)は、周波数切り替え指示信号(SW)を無線インターフェース1から無線クライアント1へ送信する(S021)。
【0061】
無線クライアント1(002a)は周波数切り替え指示信号を受信後、必要により無線基地局情報(例えば、MACアドレス)を変更して、周波数を切り替え(S045,S046)、無線インターフェース2と通信(S043−3)を開始する。無線インターフェース2は、すでに無線インターフェース1から、認証・アソシエーション情報および鍵情報を受信しており、無線クライアント1と通信可能状態であるため、切り替え時に何の手続きも必要なく瞬時に通信を再開する。
【0062】
チャンネル切り替えの完了は、無線基地局(001)にデータを切り替え後の周波数チャンネルで送信し、無線基地局(001)がこれを受信したことによって判別される。データがない場合には、周波数切り替え完了信号(S047)を切り替え後の周波数チャンネルで送信する。これにより、無線基地局(001)は、無線クライアント(002)の周波数が切り換えられたことを判別できる。無線インターフェース1は、干渉している周波数を変更するために、別の周波数に切り替えてチャンネル確認を行う(S011)。
【0063】
図12は、本実施例で実現される別の周波数切り替え全体シーケンス例を示す。
図11との違いは、鍵情報の無線インターフェース2へのコピー(KEY COPY)を、無線クライアント1と無線インターフェース1が鍵情報を交換した後に、その都度行うことである。この方式によると、無線インターフェース1と無線インターフェース2は、常時最新の鍵情報を共有することができる。
図11の例では、鍵のコピー(KEY COPY)のタイミングの後に鍵の更新が行われると、鍵の再コピーをしなければならない場合があるが、
図12の例ではこれを防ぐ効果がある。
【0064】
本実施例により、無線基地局(001)の二つの無線インターフェースを各無線クライアントと常に通信可能状態としておき、通信IF管理テーブル(020)で無線クライアント端末の接続情報を管理することで、周波数切り替えの際に認証・アソシエーション処理を省略することができる。また無線クライアントへの下り通信で用いる無線インターフェースを瞬時に切り替えを行うことができるので、周波数切り替えの際に通信遮断をなくすことが可能である。
【実施例3】
【0070】
第1の実施例では、一つの無線インターフェース(例えば、無線インターフェース1)で干渉が起こると、無線インターフェース1に接続されていた無線クライアントは、無線インターフェース2に接続されることになる。このため、一時的に無線インターフェース2側の負荷が上昇することになる。この課題を解決する例を以下に示す。
【0071】
第3の実施例の無線基地局(001)、無線クライアント(002)の構成は、第1の実施例と同等である。本実施例では、
図5で示した無線クライアント通信周波数切り替え(無線インターフェース1)の動作例を示すフローチャートが異なる。
【0072】
図15に第3の実施例における無線インターフェース1の無線基地局動作例を示すフローチャートを示す。
図6のフローと異なる点は、一旦干渉が検出され(S012)、無線インターフェース1の周波数が設定され(S016)、新たな周波数でのチャンネル確認(S011)が終了し、通信状態が開始された場合(S013)、接続無線クライアントの平滑化処理(S061、S062)が行われることである。
【0073】
全てのクライアントが無線インターフェース2に接続された状態から、両者の電波状況を考慮して、一部の無線クライアントを無線インターフェース1に接続し直す処理である。まず、接続無線クライアントの平滑化計算(S061)により、無線インターフェース1に接続し直す無線クライアントを決定する。接続し直す無線クライアントの決定方法例としては、干渉検出前に無線インターフェース1が接続していた無線クライアント(002)、または現在の通信量から無線インターフェース1と無線インターフェース2の通信不可が同等になるように選択する、等が考えられる。その後計算に基づいて決定した、対象の無線クライアントの通信周波数を切り替える(S062)
図16に、本実施例で実現される周波数切り替え全体シーケンス例を示す。実施例3では、実施例1と同様に、最初無線インターフェース1と通信していた無線クライアント1が、無線インターフェース1での干渉検出(IT)により、無線インターフェース2で通信再開する(S043−3)。
【0074】
一方、無線インターフェース1は、
図5で説明したシーケンスを実行し、再設定した周波数によって、チャンネルの確認を行う(S011)。干渉検出(S012)の結果、干渉が検出されなければ、再設定した周波数で通信が可能となる(S013)。
【0075】
そこで、無線インターフェース2に接続している無線クライアント(002)の一部を、無線インターフェース1が別周波数で通信可能となった場合に、再び無線インターフェース1と通信するように制御する。このため、無線基地局(001)の干渉監視・周波数制御部(019)は、周波数切り替え指示信号(SW2)を、無線インターフェース2から切り替え対象となる無線クライアント(002)に対して送信する(S1601)。この処理は、実施例1の周波数切り替え指示信号(SW)の処理(S021)と同様である。
【0076】
周波数切り替え指示信号(SW2)を受信した無線クライアント(002)は、通信周波数チャンネルの変更処理(S046−2)、無線基地局アドレス変更処理(S045−2)を行う。この処理は、実施例1の通信周波数チャンネルの変更処理(S046)、無線基地局アドレス変更処理(S045)と同様である。その後、無線クライアント(002)の一部は、無線インターフェース1と通信(S043−4)を開始する。これにより、無線インターフェース1と2の負荷のバランスが保たれる。
【0077】
本実施例により、無線干渉が存在しない場合は、二つの無線インターフェースを同時に通信に利用でき、システム全体のスループット向上が可能である。
【実施例4】
【0078】
図17に、システム全体の動作概念を示す。(a)は、無線クライアント1(002a)の、例えば送受信処理部023が管理する情報を示す。(b)は、無線クライアント2(002b)の、例えば送受信処理部023が管理する情報を示す。(c)は、無線基地局(001)の、例えば通信接続管理部(021)が管理する情報を示す。
【0079】
無線クライアント1(002a)の情報(a)は、当該クライアントを示すID、例えばMACアドレス(1701a)、認証情報、アソシエーション情報、鍵情報などの、データ通信を確立するための接続情報(1702a)および、通信のための周波数チャンネルを指定する情報(1703a)を含む。無線クライアント2(002b)の情報(b)も同様である。
【0080】
無線基地局(001)の情報(c)は、担当している無線クライアントのID、例えばMACアドレス(1704)に対応して、データ通信を確立するための接続情報(1705)、通信している無線インターフェースの識別情報(1706)、および、通信のための周波数チャンネルを指定する情報(1707)を含む。この情報は、
図8に示した、通信IF管理テーブル(020)の情報を含むものである。
図17では、理解を容易にするために、各テーブルに必要な情報をまとめているが、関連付けがなされていれば、複数のテーブルに分離することもできる。
【0081】
いま、「ID001」で示される無線クライアント1が無線基地局の無線インターフェース1と「チャンネルA」で通信し、「ID002」で示される無線クライアント2が無線基地局の無線インターフェース2と「チャンネルB」で通信しているとする(切り替え前)。
【0082】
ここで、実施例1〜3の例と同様に、無線クライアント1と無線インターフェース1間の「チャンネルA」に干渉が発生した場合、無線基地局(001)は、無線クライアント1(002a)に対して、切り替え指示信号を送信し(S021)、これを受信した無線クライアント1は、通信周波数チャンネルの変更処理(S046)および、必要に応じて、無線基地局アドレスの変更処理(S045)を行う。この結果、無線クライアント1の使用周波数は「チャンネルB」に変更される(切り替え後)。ただし、周波数チャンネルが変更されても、データ通信を確立するための接続情報(1705a)は、「情報X」のまま変更されずに維持される。
【0083】
一方、無線基地局(001)の情報(c)は、無線クライアント1が無線インターフェース2に切り替えられたことを、無線インターフェースの識別情報(1706)の更新によって管理する。先の実施例で説明したように、無線インターフェース1と2は、接続情報1705を共有しているため、無線インターフェースが切り替えられた場合でも、通信の遮断を抑制することが可能となる。
【0084】
以上、本発明の実施例について述べてきたが、本発明の主旨はこれらの実施例に限定されない。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0085】
本明細書で説明した実施例によると、二つの無線インターフェースを通信用として設定し備えておき、管理テーブルで無線クライアント端末の接続状況を管理することで、周波数切り替えの際にアソシエーション処理を省略し、また無線クライアント端末への下り通信で用いる無線インターフェースを瞬時に切り替えを行うことにより、周波数切り替えの際の通信遮断をなくす。また、電波状況が良い場合においては、二つの無線インターフェースを通信用として使えることにより、システム全体のスループットの向上が可能となる。