(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態による発電システムを含む電力システムの構成について説明する。
電力システム1は、
図1に示すように、発電システム10と、電力系統20と、を備える。なお、電力系統20には、需要家30が接続されている。
【0019】
発電システム10は、第1の発電機101と、第2の発電機102と、制御部103と、を備える。発電システム10は、電力の発電事業者(発電者)が発電に用いるシステムの一例であり、単位時間(例えば、30分)ごとの計画発電量と、発電システム10から電力系統20へ実際に供給する単位時間ごとの電力量とを一致させるシステムである。計画発電量とは、電力の発電事業者(発電者)が事前に策定した電力量である。
【0020】
第1の発電機101は、例えば、ゴミ焼却炉などごみや汚泥、バイオマスなどを燃料として発電する発電機である。
第1の発電機101は、発電した電力を電力系統20を介して需要家30に送電する。
【0021】
第2の発電機102は、第1の発電機101が発電した電力よりも出力の安定性が高い発電機であり、例えば、化石燃料を用いた火力、および、水力などを用いて発電する発電機である。
第2の発電機102は、後述する制御部103が生成する指令信号に基づいて発電する。
第2の発電機102は、発電した電力を電力系統20を介して需要家30に送電する。
【0022】
制御部103は、事前に策定した計画発電量と第1の発電機101が実際に発電した発電量とに基づいて、第2の発電機102へ発電を指示する指令信号を生成する。
具体的には、制御部103は、第1の発電機101の実際の発電量と第2の発電機102の基準の電力量との合計が計画発電量よりも少ない場合に、第2の発電機102の基準の発電量にその不足分の発電量を加えた電力量の発電を第2の発電機102に実行させる指令信号を生成し、第2の発電機102に送信する。
また、具体的には、制御部103は、第1の発電機101の実際の発電量と第2の発電機102の基準の発電量との合計が計画発電量よりも多い場合に、第2の発電機102の基準の発電量にその過剰分の発電量を減じた電力量の発電を第2の発電機102に実行させる指令信号を生成し、第2の発電機102に送信する。
【0023】
発電事業者(発電者)は、電力の発電事業者(発電者)が事前に策定した計画発電量、すなわち、単位時間(例えば30分)ごとの計画発電量を発電システム10に報知する。
【0024】
次に、第1の実施形態による発電システム10の処理について説明する。
ここでは、
図2に示す発電システム10の処理フローについて説明する。
【0025】
発電事業者(発電者)は、単位時間(例えば30分)ごとの計画発電量の計画値を策定する。例えば、電力の発電事業者(発電者)の社員がごみや汚泥、バイオマスなどの供給量や発熱量などから策定された計画発電量の情報を取得し、取得した情報を、キーボードなどの入力装置などを介して制御部103に送信する。
【0026】
制御部103は、例えば、電力の発電事業者(発電者)の社員がごみや汚泥、バイオマスなどの供給量や発熱量などから計画発電量の情報を受信することによって取得する(ステップS1)。
【0027】
制御部103は、例えば、
図3に示すような、計画発電量を単位時間(例えば30分)で除算した平均値である発電計画値を特定する。制御部103は、所定時間(例えば1分)の計画発電量を特定する。
【0028】
また、制御部103は、所定時間ごとに第1の発電機101の実際の発電量の情報を取得する(ステップS2)。
具体的には制御部103は、例えば第1の発電機101の出力に設けられた電力量計から所定時間ごとに実際の発電量の情報を取得する。
【0029】
制御部103は、取得した計画発電量の情報と、取得した第1の発電機101の実際の発電量とに基づいて、所定時間ごとに指令信号を生成する(ステップS3)。
より具体的には、制御部103は、
図4に示すように、単位時間のうち最初の所定時間(0から1分まで)では、第1の発電機101の実際の発電量と第2の発電機102の基準の発電量との合計が事前に策定された計画発電量よりも少ないため、第2の発電機102の基準の発電量にその不足分の電力量を加えた電力量の発電を次の制御期間の間に第2の発電機102に実行させる指令信号を生成する。
また、より具体的には、制御部103は、
図4に示すように、次の所定時間(1分から2分まで)では、第1の発電機101の実際の発電量と第2の発電機102の基準の発電量との合計が事前に策定された計画発電量よりも多いため、第2の発電機102の基準の発電量にその過剰分の発電量を減じた電力量の発電を次の制御期間の間に第2の発電機102に実行させる指令信号を生成する。
制御部103は、生成した指令信号を第2の発電機102に送信する。
【0030】
第2の発電機102は、制御部103から指令信号を受信する。
第2の発電機102は、受信した指令信号に基づいて発電する(ステップS4)。
具体的には、
第2の発電機102は、指令信号に含まれる発電量の情報が示す発電量、すなわち、1つ前の所定時間内で計画発電量に対して発電できなかった場合には不足分の発電量を次の所定時間内で補うように発電し、1つ前の所定時間内で計画発電量に対して過剰に発電した場合には余剰分の発電量を次の所定時間内で吸収するように発電する。
【0031】
発電システム10は、単位時間ごとに上記のステップS2〜ステップS4(ステップS1は初回のみ行えばよい)の処理を行うことにより、発電期間中の計画発電量と第1の発電機101と第2の発電機102との合計の実際の発電量とを一致させることができる。
【0032】
以上、本発明の第1の実施形態による発電システム10を備える電力システム1について説明した。
第1の発電機101と、第1の発電機101より出力安定性が高い第2の発電機102とを備える本発明の第1の実施形態による発電システム10において、制御部103は、第2の発電機102の出力を制御する。制御部103は、単位時間を複数の制御期間に切り分け、一の制御期間内での第1の発電機101の計画発電量と実績発電量との差を検出する。制御部103は、検出した差に相当する発電量を、次制御期間内での第2の発電機102の発電量の増減量として設定する。言い換えると、制御部103は、単位時間内における所定時間(t〜t+Δt)内での第1の発電機101の計画発電量と実績発電量との差を検出し、検出した差に相当する発電量を、所定時間(t〜t+Δt)に続く所定時間(t+Δt〜t+nΔt)内での第2の発電機102の発電量の増減量として設定し、第2の発電機102の出力を制御する。なお、tは、単位時間における時刻を表す。Δtは、一の制御期間を表す。nは1よりも大きい実数であり、(n−1)Δtは、次制御期間を表す。
こうすることで、発電システム10は、事前に策定された計画発電量と実際の発電量との差(インバランス)をより小さくすることができる。
【0033】
例えば、具体的には、小売電力の自由化が進み、消費者は電力の小売事業者を選択することができるようになった。この小売電力の自由化に伴い、例えば、2017年4月からは、既定時間(30分)単位で発電事業者(発電者)が事前に策定した発電計画における電力量と同量の電力を実際に発電する同時同量制度が導入されている。発電事業者(発電者)は、この同時同量制度を守る必要がある。なお、2017年4月から導入された同時同量制度では、3つの要件をいずれも満たす発電設備(系統への連系点単位で判断)について、発電設備ごとの託送契約上の同時最大受電電力の値を亊業者単位で合計し、その値が1万kWを超える事業者を「発電事業者」とすることとされている。ここで、3つの要件のうちの1つは、「当該発電設備の発電容量(kW)に占める託送契約上の同時最大受電電力(kW)の割合が5割を超えること。ただし、発電容量が10万kWを超える場合には、上記の値が1割を超えること。」という要件である。また、3つの要件のうちの別の1つは、「当該発電設備の年間の発電量(kWh)(所内消費量を除く)に占める系統への逆潮流量(kWh)(特定供給等分を除く)の割合が5割を超えることが見込まれること。ただし、発電容量が10万kWを超える場合には、上記の値が1割を超えることが見込まれること。」という要件である。また、3つの要件のうちの残りの1つは、「当該発電設備の発電容量が1000kW以上であること。」という要件である。
ところで、バイオマス(ごみや汚泥などの廃棄物を含む)を燃料とした場合、計画発電量の策定は、原料となるバイオマスの投入量、性状、運転パターンおよび過去の実績データ等により決定される。そのため、発電システム10のように、第1の発電機101がバイオマスを燃料とする発電機である場合、原料となるバイオマスの性状が均一でないことや一時的な焼却不適物の混入等により出力が安定しない(インバランスが生じやすい)。
このような場合に、本発明の第1の実施形態による発電システム10のような構成とすることにより、例えば性状が不安定なバイオマスを原料とする出力が不安定な第1の発電機101の出力の変動を、例えば燃料として化石燃料などを用いる出力安定性が高い第2の発電機102の出力を調整することで打ち消す。その結果、計画値通りの発電が可能であり、事前に策定された計画電力量と実際の発電量との差(インバランス)をより小さくすることができる。
【0034】
なお、発電システム10は、第1の発電機101の発電量のばらつきが想定の範囲を超えても大丈夫なように、
図5に示すように、蓄電装置104を備え、制御部103の指令により蓄電装置104に過剰電力を吸収させてもよい。また、発電システム10は、第1の発電機101の発電量のばらつきが想定の範囲を超えても大丈夫なように、蓄電装置104を備え、電力不足時に制御部103の指令により蓄電装置104から電力を補填するものであってもよい。
【0035】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態による発電システム10を含む電力システムの構成について説明する。
本発明の第2の実施形態による電力システム1は、本発明の第1の実施形態による電力システム1と同様に、発電システム10と、電力系統20と、を備える。なお、電力系統20には、需要家30が接続されている。
ただし、本発明の第1の実施形態における所定時間は一定の時間であったのに対して、本発明の第2の実施形態における所定時間は、変化する。
【0036】
具体的には、例えば、制御部103は、
図6に示すように、単位時間内の後半に近づくにつれて所定時間を短くする。
また、具体的には、例えば、制御部103は、
図7に示すように、第1の発電機101の発電量の変化、すなわち、傾きに従って所定時間を変化させてもよい。より具体的には、制御部103は、第1の発電機101の発電量の変化を予測し、変化が小さい場合には、第2の発電機102の発電量の変化が小さくなるため所定時間を短くし、第1の発電機101の発電量の変化が大きい場合には、第2の発電機102の発電量の変化が大きくなるため所定時間を長くしてもよい。
また、具体的には、例えば、制御部103は、
図8に示すように、第1の発電機101の実際の発電量に従って所定時間を変化させてもよい。より具体的には、制御部103は、第1の発電機101の実際の発電量と第2の発電機102の基準の発電量との合計が所定時間の計画発電量を超えている場合には、第2の発電機102の発電量は小さくなり変化に対応しやすくなるため所定時間を短くし、第1の発電機101の実際の発電量と第2の発電機102の基準の発電量との合計が所定時間の計画発電量未満である場合には、第2の発電機102の発電量は大きくなり変化に対応しづらくなるため所定時間を長くする。
また、所定時間を変化させる場合に、所定時間を長くするか短くするかのどちらかのみを採用してもよい。具体的には、例えば第1の発電機101の実際の発電量と第2の発電機102の基準の発電量との合計が所定時間の計画発電量を超えている場合には所定時間を変化させず、第1の発電機101の実際の発電量と第2の発電機102の基準の発電量との合計が所定時間の計画発電量未満である場合だけ、所定時間を長くしてもよい。また、具体的には、例えば第1の発電機101の実際の発電量と第2の発電機102の基準の発電量との合計が所定時間の計画発電量未満である場合には次の所定時間を変化させず、第1の発電機101の実際の発電量と第2の発電機102の基準の発電量との合計が所定時間の計画発電量を超えている場合のみ、所定時間を短くしてもよい。
こうすることで、発電システム10において、第2の発電機102による発電量を安定させることができると共に、第1の発電機101の発電量と第2の発電機102の実際の発電量との合計と、計画発電量との差が所定の範囲内の差を小さくするための追従性とを両立することができる。
なお、制御部103は、第1の発電機101と第2の発電機102の実際の発電量との合計と、計画発電量とを一致させるという観点から、最終調整量が小さくなるように、単位時間の終わりに近くなった場合には、所定時間を短くすることが望ましい。具体的には、制御部103は、例えば、単位時間の残り10パーセントにおいては、所定時間を設定可能な最小の時間とする。
なお、所定時間が変化する以外は、本発明の第2の実施形態による発電システム10の処理は、本発明の第1の実施形態による発電システム10の処理と同様であるため、処理の説明は省略する。
【0037】
以上、本発明の第2の実施形態による発電システム10を備える電力システム1について説明した。
本発明の第2の実施形態による電力システム1は、本発明の第1の実施形態による電力システム1と同様に、発電システム10と、電力系統20と、を備える。なお、電力系統20には、需要家30が接続されている。
ただし、本発明の第1の実施形態における所定時間は一定の時間であったのに対して、本発明の第2の実施形態における所定時間は変化する。
制御部103は、単位時間内における所定時間(t〜t+Δt)内での第1の発電機101の計画発電量と実績発電量との差を検出し、検出した差に相当する発電量を、所定時間(t〜t+Δt)に続く所定時間(t+Δt〜t+nΔt)内での第2の発電機102の発電量の増減量として設定し、第2の発電機102の出力を制御する。制御部103は、単位時間内の後半に近づくにつれてnを2よりも小さくする。
または、制御部103は、第1の発電機101の発電量の変化、すなわち、傾きに従ってnを変化させる。具体的には、制御部103は、第1の発電機101の発電量の変化を予測し、変化が小さい場合には、第2の発電機102の発電量の変化が小さくなるためnを大きくし、第1の発電機101の発電量の変化が大きい場合には、第2の発電機102の発電量の変化が大きくなるためnを小さくする。
または、制御部103は、第1の発電機101の実際の発電量に従ってnを変化させる。制御部103は、第1の発電機101の実際の発電量と第2の発電機102の基準の発電量との合計が計画発電量を超えている場合には、第2の発電機102の発電量は小さくなり変化に対応しやすくなるためnを小さくし、第1の発電機101の実際の発電量と第2の発電機102の基準の発電量との合計が計画発電量未満である場合には、第2の発電機102の発電量は大きくなり変化に対応しづらくなるためnを大きくする。
こうすることで、発電システム10において、第2の発電機102による発電量を安定させることができると共に、第1の発電機101の発電量と第2の発電機102の実際の発電量との合計と、計画発電量との差が所定の範囲内の差を小さくするための追従性とを両立することができる。
また、制御部103は、最終調整量が小さくなるように、単位時間の終わりに近くなった場合には、所定時間を短くする。
こうすることで、発電システム10において、第1の発電機101と第2の発電機102の実際の発電量との合計と、計画発電量とをより近づけることができる。
【0038】
なお、本発明の実施形態により発電システム10は、
図9に示すように、第1の発電機101を複数備え、第2の発電機102を単数備えるものであってもよい。
こうすることで、バランシンググループを形成する廃棄物・バイオマス発電施設を含めた複数の発電者の計画値同時同量において、第1の発電機101により発電した電力と第2の発電機102の実際の発電量とを全量送配電事業者へ給電することができ、かつ蓄電装置を用いず電力を直接需要家30に供給することができるため、第1の発電機101の実際の発電量と第2の発電機102の実際の発電量との合計を損失なく最小限にすることができる。
【0039】
なお、本発明の実施形態による第2の発電機102は、バイオガスを燃料としたガスエンジン(メタンガスの濃度計測と流量調整)あるいは水素ガスを燃料とした燃料電池による発電機であってもよい。この場合、発電システム10は、メタンガス(あるいは水素ガス)の濃度計測と流量制御により、計画値に対し、ほぼ安定した出力が可能であり、メタンガス(あるいは水素ガス)は貯留できることから、補正に必要な電力量のみをリアルタイムに発電することができる。
【0040】
なお、本発明の実施形態において、所定時間は、第2の発電機102による電力の補正に必要な時間に基づいて設定されてもよい。例えば、第2の発電機102が指令信号を読み取り、その指令信号が示す発電を実行するまでに1秒かかる場合には、所定時間を1秒以上に設定する。
こうすることで、第2の発電機102による電力の補正の追従性を確保することができる。
【0041】
なお、本発明の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0042】
記憶部のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0043】
本発明の実施形態について説明したが、上述の発電システム10は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータがそのプログラムを実行するようにしてもよい。
【0044】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、発明の範囲を限定しない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、省略、置き換え、変更を行ってよい。