(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多孔性シリカ粒子のバルクは、少なくとも75重量%が50〜4000μmの直径を有する粒子である粒子サイズ分布を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
前記多孔性シリカ粒子のバルクの嵩高さは、前記製造材料蒸気の流動方向と平行に10mm〜300mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
前記少なくとも1種の重合性ポリアルキルシロキサン化合物の液体製造材料は、蒸発前に固相抽出に付されないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
前記ポリアルキルシロキサン化合物は、好ましくは、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)、それらの線状同族体及び上記化合物の任意の混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記少なくとも1つの布(7)は、前記蒸発器ゾーン(1)から送られた前記製造材料蒸気が前記多孔性シリカ粒子のバルクと接触する前に前記少なくとも1つの布(7)を通り抜けるように配置されることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【背景技術】
【0002】
合成石英ガラスを製造するために、加水分解又は酸化によりCVD手順でケイ素含有出発物質からSiO
2粒子の生成及び移動支持体上への堆積が行われる。この方法は外付け法及び内付け法に細分し得る。外付け法の場合、SiO
2粒子は回転支持体の外面上に適用される。関連する外付け法の例としては、いわゆるOVD法(気相外付け)、VAD法(気相軸付け)又はPECVD法(プラズマ増強化学気相堆積)が挙げられる。内付け法の最もよく知られている例は、外側から加熱された管の内壁上にSiO
2粒子が堆積されるMCVD法(改良化学気相堆積)である。
【0003】
支持体表面領域の温度が十分に高ければ、SiO
2粒子は直接ガラス化し、これは「直接ガラス化」としても知られる。これとは対照的に、いわゆる「スート法」ではSiO
2粒子の堆積時の温度が非常に低いので、多孔性SiO
2スート層が得られ、次いで、個別プロセス工程で焼結されて透明石英ガラスとなる。直接ガラス化及びスート法は両方とも、緻密で透明な高純度の合成石英ガラスをもたらす。
【0004】
四塩化ケイ素(SiCl
4)は、合成石英ガラス製造用のケイ素含有製造材料として先行技術から公知である。四塩化ケイ素及び他の類似の塩素含有物質は、100℃未満の中温ですでに十分な蒸気圧を有するので、いずれの不純物も通常は液相に残留し、超高純度スート体の製造がより容易になる。
【0005】
しかしながら、四塩化ケイ素の蒸発時、使用される不活性蒸気流中に部分的に液滴が連行され、反応ゾーンに達成するまでに完全に蒸発するとは限らないことが知られている。それゆえ、液相に含まれる不純物は、最終的にスート体に達するので、それから製造される石英ガラスの品質を劣化させる。不純物は通常は金属である。
【0006】
言及された不純物が反応ゾーンに達しないように蒸発ゾーン内で四塩化ケイ素の蒸発を完了させるいくつかのプロセスが先行技術で公知である。例えば、特許文献1には、蒸発器内にガラスウールを設置すると蒸発時に形成された小滴がガラスウールにより保持されるので、材料蒸気流中へのその逃散が防止されると記載されている。特許文献2には、大表面積の非多孔性フィルター層を同時に用いて液滴を蒸発させる類似の方法が記載されている。特許文献3には、製造材料蒸気流を精製するための活性炭を含むフィルターの使用が記載されている。この場合、以上に挙げた方法とは対照的に、蒸気をフィルターに接触させ、且つ液体は接触させない。
【0007】
これらのすべての方法に共通するのは、気化されずに同伴される液滴を各層中に保持することで問題を解決することである。なぜなら、蒸気ライン中の気化されない液滴は、バーナーの誤動作を引き起こす可能性があり、結果として、石英ガラスの欠陥の発生、燃焼効率の低下及び堆積プロセスの長期安定性の低下をもたらす可能性があるからである。
【0008】
しかしながら、四塩化ケイ素などの塩素含有製造材料の主な欠点は、合成石英ガラスに変換する時に塩酸が生成されるため排気ガスのスクラビング及び廃棄処理のコストが高くなることである。したがって、原則として、SiCl
4を使用する場合、湿分の進入を防止する装置が使用される。これにより塩酸の形成が低減され、且つシリカ酸の形成が回避される。この手順は当業者の熟知するところである。
【0009】
これまで、こうした必要性を回避するために、多数のいわゆる塩素を含まない有機ケイ素化合物が石英ガラス製造用の製造材料として試験されてきた。挙げられる例は、モノシラン、アルコキシシラン、シロキサン及びシラザンである。これらのいわゆる塩素レス有機ケイ素化合物のうち特に興味深いグループは、ポリアルキルシロキサン(簡潔に「シロキサン」とも呼ばれる)であり、これは、例えば、特許文献4から公知である。特に、ポリアルキルシロキサンに包含され得る環式ポリアルキルシロキサンは、重量割合でケイ素の割合が特に高い点で優れており、これは合成石英ガラスの製造に使用する際の経済効率に寄与する。高純度で工業的に入手可能であるため、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)が特に使用される。
【0010】
かかるポリアルキルシロキサン化合物は重合性であり、製造材料中に純粋形で又は他の成分との混合物として典型的には液体の形態で存在する。これらの化合物は、痕跡量の重合性シラノールも含有することができる。それらは、液体の形態で堆積バーナーなどの消費ユニットに供給されてバーナー出口で又は火炎内に噴霧され得る。しかしながら、通常、製造材料は、蒸発器により気相又は蒸気相に変換されてライン系により連続ガス流として消費ユニットに供給される。
【0011】
これらのいわゆる塩素を含まない製造材料に基づく合成石英ガラスの製造方法のいくつかは、先行技術に記載されている。例えば、印刷文書の特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8及び特許文献9を参照されたい。
【0012】
しかしながら、ポリアルキルシロキサンの使用は、四塩化ケイ素中の低分子金属不純物が、得られる石英ガラスの品質を低下させるという点で、且つ同時に湿分の進入が避けられるという点で、上記の方法とは基本的に異なり、製造材料の不純物が、得られる石英ガラスの品質に影響を及ぼす可能性があること関して、他の困難を伴う。基本的に、SiCl
4は環式ポリアルキルシロキサンよりも熱安定性であり、且つその沸点はかなり低い。一方、環式ポリアルキルシロキサンは、実際上、室温で湿分と反応しない。しかしながら、環式ポリアルキルシロキサンの使用に伴う主な問題の1つは、重合及びゲル形成が起こることである。すでに先に述べたように、ポリアルキルシロキサンは、水、シラノール、重合触媒作用痕跡成分(例えば、ルイス酸又はルイス塩基)などの痕跡量の極性不純物を含有し得ることが知られている。シラノールの場合、この不純物は、それ自体と反応してポリマーを形成し得るか、又は出発化合物との開環反応を開始し得る。このため、最終的に、以上に挙げたポリマーシロキサン残留物及びゲルが形成される。こうしたポリマー及びゲルは、通常、蒸発器、蒸気ライン、制御バルブ、スロットル、他のガス計量装置及びラインに残留し、そこで濃縮される。これにより材料流の制御挙動が大幅に低下し得る。それゆえ、再現性のあるプロセス管理が困難になる。極端な場合、これにより閉塞が起こる。いずれの作用も保守及び清浄化工程の休止時間を増加させるので、ポリアルキルシロキサンを用いたプロセスは関連コストが必要となる。
【0013】
一方、これらの残留物は、得られる石英ガラスの性質にも悪影響を及ぼす。なぜなら、製造材料蒸気流のマスフローの均等分布が制御不能であるため、再現性よく作用しないからである。このため、スートの半径方向及び軸方向の密度変動が増加し、後続の脱水又は塩素化工程で塩素含有率の変動が増加する。さらに、かかる残留物は、マルチバーナー法で外径変動の増加をもたらす。これは、ひいては、対応する材料損失に伴う不良品に影響を及ぼす。この結果、プロセス効率が悪くなるとともに製造コストが増加する。そのほかに、製造材料は、一般に、ある特定のバッチ変動を受ける。これはppm範囲内であるが、それにもかかわらず、プロセスの制御性及び再現性が上記のように欠如することの一因となる。異なる製造業者からの原料は異なる不純物/汚染レベルを有するので、得られる石英ガラスの品質の制御が確保されない。
【0014】
こうした問題を解決するために、特許文献10には、最初にポリアルキルシロキサン成分を噴霧し、それを部分的に液体の形態でパッキング材料に適用することが提案されている。ポリアルキルシロキサン液滴は、キャリヤーガス流と共にパッキング材料を通って下方に搬送され、このパッキング材料内で蒸発する。続いて、パッケージを出る蒸気流の方向は180°変化するので(底部から頂部に流動する)、より高分子の不純物(ポリマー及びゲル)は装置の底部に沈降し、且つこのようにして精製された蒸気流は流動してさらなる使用に供される。ここには、この蒸気流中にガラスウール製の追加の任意選択的フィルターを設置可能であるとも記載されている。しかしながら、液相が存在するため、パッキング材料の入口側でゲル形成による強い接着が起こる。さらに、パッケージ内で液体材料を蒸発させる時間が長いので、かかる蒸発器の応答時間が相対的に長いことが欠点である。蒸気相中へのフィルターの設置に関連してガラスウールフィルターの使用のみが挙げられることにも留意すべきである。技術的観点から見て、これは、先ず、かかるフィルターがフィルター上の系の圧力低下にほとんど影響を及ぼさないことが知られているという事実に基づく。ガラスウールは多孔性ではなく、一般に、BET法に従って測定したとき約1〜<<2m
2/gの内表面積を有する。
【0015】
ポリマー及びゲルの形成を回避する他の方法は、特許文献11に記載されている。この文書には、基本的に目標ポリアルキルシロキサンの沸点に近い沸点を有するポリアルキルシロキサン中の極性不純物は、ポリアルキルシロキサン中でのポリマー及びゲルの形成の一因となることが開示されている。しかしながら、ここには、驚くべきことに、こうした極性不純物は蒸発しないと記載されているとともに、多孔性シリカゲルパッケージを用いて固相抽出により液体ポリアルキルシロキサン製造材料からそれを除去すると、もはや重合及び/又はゲル形成の傾向がないので、このようにして精製された製造材料(すなわち、不揮発性不純物を有していないポリアルキルシロキサン)の使用は、石英ガラスの製造に有利であるという事実が得られると記載されている。しかしながら、この戦略は、追加のプロセス工程を必要とし、対応する時間及びコストを伴うことが欠点である。とりわけ、大量のシロキサン(50超〜)の使用により、追加の清浄化工程としてのこの液/固抽出は複雑且つ高価になる。さらに、抽出プロセス時の清浄化作用は、シリカ材料の負荷の増加に伴って減少する(特許文献11の
図4A〜Dを参照されたい)。結果として、原料の品質は抽出時間の増加に伴って変化し得る。さらに、かかるプロセスは、比較的長い滞留時間又はシリカ材料との接触時間を伴う。シリカ材料のプレ処理に依存して、それは弱いL塩基として作用し得る。液体抽出の場合のように接触時間が長い場合、シリカ材料の機能として酸成分が導入され得るか又は転位反応が痕跡領域で行われ得るので、後続の蒸発時に重合挙動に悪影響を及ぼす(すなわち、開環反応が開始され得るとともに、より高次の同族体への転位反応も開始され得る)。さらなる問題は、強力な液/固接触に起因して、元素痕跡不純物が導入され得るとともに、ひいては製造化合物の重合挙動に悪影響を及ぼし得ることである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
好ましい実施形態では、多孔性シリカ粒子のバルクのBET表面積は、Brunauer、Emmett及びTellerに準拠した測定により比表面積(BET表面積)を決定したときに少なくとも2m
2/g、より好ましくは少なくとも3m
2/g、より好ましくは少なくとも4m
2/gである。
【0024】
さらなる好ましい実施形態では、多孔性シリカ粒子のバルクのBET表面積は、Brunauer、Emmett及びTellerに準拠した測定により比表面積(BET表面積)を決定したときに多くとも450m
2/g、より好ましくは多くとも300m
2/g、さらにより好ましくは多くとも250m
2/g、さらにより好ましくは多くとも200m
2/g、さらにより好ましくは多くとも150m
2/g、さらにより好ましくは多くとも100m
2/gである。
【0025】
さらなる好ましい実施形態では、多孔性シリカ粒子のバルクのBET表面積は、Brunauer、Emmett及びTellerに準拠した測定により比表面積(BET表面積)を決定したときに2〜450m
2/g、より好ましくは2〜300m
2/g、さらにより好ましくは2〜250m
2/g、さらにより好ましくは2〜200m
2/g、さらにより好ましくは3〜150m
2/g、さらにより好ましくは4〜100m
2/gである。
【0026】
多孔性シリカ粒子のBET表面積を上述した範囲内に調整した場合、本発明に係る方法は、保守コストを削減して高いプロセス安定性を達成可能である。2m
2/g未満の小さすぎるBET表面積及び450m
2/g超の大きすぎるBET表面積を有する多孔性シリカ粒子では十分なプロセス安定性を達成できないことが、本発明に係る実施例から示される。
【0027】
ある特定の理論により拘束されることを望むものではないが、蒸発器及び蒸気ラインに残留物を生じ得る種々のタイプの痕跡不純物が製造材料に含まれると推定される。
【0028】
A)高沸点痕跡不純物
これらは、蒸気圧が非常に低いため又は露点が低いため、蒸発がかなり困難であり得るとともに、蒸発器及び蒸発器ラインに残留することがあり、滞留時間が長い場合、蒸発系内のゲル状残留物に結合されることがあるという事実により特徴付けられる。
【0029】
B)極性痕跡不純物
かかる反応性痕跡不純物は、例えば、以上に挙げたシラノールであり得る。こうした痕跡不純物は、その極性OH基に起因して環状シロキサンの開環反応を開始し得る。それらは主要な環式成分との縮合反応により反応してより高沸点の不純物になり、これは、次いで蒸気ラインにゲル状不純物として蓄積する。
【0030】
C)触媒活性痕跡不純物
反応性触媒活性痕跡不純物は、例えば、ルイス酸及びルイス塩基である。これらの化合物は、痕跡量の残留湿分の存在下で開環反応を開始し得る。これは、例えば、金属痕跡不純物(金属酸化物及び/又は金属ハロゲン化物)であり得るとともに、これらも環状シロキサンの開環反応に関与する。主要な環式成分とのさらなる反応によりより高沸点の不純物を生成し得るとともに、これは、次いで蒸気ラインにゲル状不純物として蓄積する。
【0031】
B)及びC)の反応性痕跡不純物(例えば、シラノール、ルイス酸及びルイス塩基)は、驚くべきことに本発明に従って、少なくとも2m
2/gの比表面積を有する多孔性シリカ粒子のバルクを含む清浄化装置に製造材料を製造材料蒸気の形態で通した場合、特に効果的且つ効率的に原料から除去可能である。
【0032】
手順の実施後に清浄化装置の多孔性シリカ粒子にシラノールの有意な残留物は見いだされなかったので、使用した温度ではシリカの反応性シラノールは主に環式揮発性シロキサンに変換されたと推定される。結果として、かかるパッケージの使用寿命は、本発明により有意に増加可能である。
【0033】
そのほかに、本発明に係るバルクの使用により、製造された合成石英ガラスが全体的に一貫して良好な品質を有するように製造化合物のバッチ差を補償可能であることが判明した。蒸発器、蒸気ライン、制御バルブ、スロットル、他のガス計量装置及びラインへのポリマー及び/又はゲルの堆積が低減及び/又は回避される結果としてマスフローの一様分布を達成可能であるという事実と相まって、本方法は、本発明の主題に基づく制御された再現性のある形で実施可能である。上記したように、これは有意なコスト節約をもたらす。
【0034】
本発明によれば、「を含む」という用語は、「からなる」を意味するものと理解される。
【0035】
<プロセス工程(a)−製造材料の蒸発>
プロセス工程(a)では、少なくとも1種の重合性ポリアルキルシロキサン化合物を含有する製造材料を蒸発させて製造材料蒸気を形成する。
【0036】
原理的には、合成石英ガラスの製造に好適な任意の重合性ポリアルキルシロキサン化合物を本発明に従って使用可能である。本発明の範囲内では、ポリアルキルシロキサンという用語は、線状分子構造(分岐状構造も含む)並びに環式分子構造の両方を含む。
【0037】
特に好適な環式の代表は、以下の総和式
Si
pO
p(R)
2p
を有するポリアルキルシロキサンである。式中、pは2以上の整数である。基「R」はアルキル基であり、最も簡単な場合はメチル基である。
【0038】
ポリアルキルシロキサンは、重量分率で特に高い分率のケイ素を有することにより特徴付けられ、これは合成石英ガラスの製造に使用する際の経済効率に寄与する。
【0039】
これとの関連では、ポリアルキルシロキサン化合物は、好ましくは、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)、及びそれらの線状同族体並びに以上に挙げた化合物の任意の混合物からなる群から選択される。D3、D4、D6、D7及びD8という表記は、General Electric Inc.により導入された表記に由来し、「D」は[(CH
3)
2Si]−O−基を表す。
【0040】
上述したポリアルキルシロキサン化合物の混合物は、本発明の範囲内で同程度に良好に使用可能である。
【0041】
高純度で商業量を入手可能であるため、現時点では好ましくはオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)が使用される。したがって、ポリアルキルシロキサン化合物がオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)である場合、本発明の範囲内で特に好ましい。
【0042】
一般に、製造材料は、プロセス工程(a)に導入する前に精製工程に付すことが可能である。当業者であれば、かかる精製方法を心得ている。しかしながら、好ましい実施形態では、製造材料は、事前に上流の精製プロセスに付されない。つまり、製造材料は、好ましくは、いずれかの不純物が市販品から除去されるプロセスに付されない。好ましくは、上記の不純物A)〜C)は除去されない。本発明によれば、さらに特に好ましいのは、少なくとも1種の重合性ポリアルキルシロキサン化合物の液体製造材料が蒸発前に固相抽出に付されないことを特徴とするプロセスである。それゆえ、製造材料は、好ましくは、液/固相抽出に付されない。驚くべきことに、それにもかかわらず、本発明に係る方法により高い制御性及び再現性をもって石英ガラスを製造可能であることが判明した。特に追加の清浄化工程を省略可能であるという点で、本発明に係る方法は、時間の節約及び休止時間の削減によりコストを達成可能である。
【0043】
さらに、特に製造材料を液/固相抽出に付さない場合、以上で説明したように固相から製造材料への追加の汚染を回避可能である。
【0044】
製造材料の蒸発は、キャリヤーガス成分を存在させて又は存在させずに行うことが可能である。好ましくは、製造材料の蒸発は、キャリヤーガスの存在下で行われる。なぜなら、これによりポリアルキルシロキサン化合物の沸点未満の温度で蒸発を行うことが可能になるからである。つまり、好ましくは、製造材料蒸気はキャリヤーガスを追加的に含む。製造材料の蒸発をその沸点未満で行うべきである場合、かかる手順が好ましい。不活性ガスは、好ましくは化学的に不活性であり、好ましくは窒素又はアルゴンである。重合性ポリアルキルシロキサン化合物とキャリヤーガスとのモル比は、好ましくは0.01〜2の範囲内であり、0.02〜1.5の範囲内が特に好ましく、0.05〜1.25の範囲内がさらに特に好ましい。特に、使用されるキャリヤーガスは、好ましくは、体積基準で<40ppmの含湿率を有し且つ重合性ポリアルキルシロキサン化合物としてOMCTSを含む窒素である。また、この場合、OMCTSと窒素との分子比は0.015〜1.5の範囲内であることが好ましい。
【0045】
蒸発プロセス工程それ自体は、当業者に公知である。ポリアルキルシロキサン化合物は、ポリアルキルシロキサン化合物とキャリヤーガスとの選択分子比に依存して120〜200℃の温度で蒸気相に変換される。蒸発チャンバーの蒸発温度は、常にポリアルキルシロキサン化合物の露点よりも少なくとも数度高くすべきである。この場合も、露点は、ポリアルキルシロキサン化合物とキャリヤーガスとの選択分子比に依存する。好ましい実施形態では、ポリアルキルシロキサン化合物は、蒸発前に40〜120℃の温度にプレ加熱され、次いで、製造材料のプレ加熱よりも高い温度を有する蒸発チャンバー内に噴霧される。好ましい実施形態では、不活性キャリヤーガスは、蒸発チャンバーに供給する前に250℃までの温度に追加的にプレ加熱可能である。蒸発チャンバーの温度は、常にポリアルキルシロキサンとキャリヤーガスとの混合物の露点温度よりも平均で高いことが有利である。好適な蒸発プロセスは、例えば、国際公開第2013/087751A号及び国際公開第2014/187513A号並びに独国特許第102013209673号に記載されている。
【0046】
本発明の範囲内では、「露点」という用語は、液体の凝縮と蒸発との平衡状態が確立される温度を記述する。
【0047】
製造材料の沸点未満の温度を使用する場合、蒸発は、好ましくは不活性キャリヤーガスと一緒に行われる。
【0048】
本発明の範囲内では、「蒸発」とは、製造材料が本質的に液相から気相に変換されるプロセスを意味するものと理解される。これは、好ましくは、上記のように製造材料の主成分としての重合性ポリアルキルシロキサン化合物の露点超の温度を用いて行われる。製造材料の小さい液滴が連行される可能性があることを技術的に排除できないことは、当業者であれば心得ている。それゆえ、プロセス工程(a)では、97mol%以上、好ましくは98mol%以上、より好ましくは99mol%以上、特に好ましくは99.9mol%以上の気体成分を好ましくは含有する製造材料蒸気が好ましくは生成される。
【0049】
特に、製造材料蒸気の温度を特に後続のプロセス工程(b)のために及び/又はそのプロセス工程時に本質的に100℃超に維持することが好ましい。結果として、製造材料中の反応性痕跡成分は十分に熱的に「活性化」される。つまり、特に、痕跡成分は、熱的活性化により高移動性を有し得るので、通常の輸送プロセスによりシリカ粒子のバルクの内側細孔構造に導入可能である。これは、特に、これらの痕跡成分の全表面(すなわち、シリカ粒子の最内側細孔も同様)に蒸気相中で迅速に到達可能であるので、効果的精製を達成可能であるという利点を有する。痕跡不純物は、シリカ材料の表面及び細孔壁のOH基(化学吸着)への結合/吸収(化学吸着)又は吸着(物理吸着)が可能である。これとの関連では、バルクは、気相中で製造材料に本質的に接触することにより固着も閉塞も起こさないので、特に濾過ケークの形成をもたらさないので、バルク間の圧力損失の増加ももたらさないことが判明した。15トン超の市販のOMCTSの蒸発後でさえも、閉塞を観測することはできなかった。
【0050】
プロセス工程(a)により生成された製造材料蒸気は、続いてプロセス工程(b)に供給される。
【0051】
<プロセス工程(b)−製造材料蒸気の精製>
プロセス工程(b)では、プロセス工程(a)から得られた製造材料蒸気を少なくとも1つの清浄化装置を通して製造材料蒸気を清浄化する。プロセス工程(b)の清浄化装置は、Brunauer、Emmett及びTellerに準拠した測定により比表面積(BET表面積)を測定したときに少なくとも2m
2/gの比表面積を有する多孔性シリカ粒子のバルクを含む。
【0052】
それゆえ、本発明によれば、製造材料蒸気は、多孔性シリカ粒子のパッケージに接触させる。この場合も製造材料蒸気が細孔凝縮により液相に移行し得ることは当業者に確かに公知であるが、本発明によれば、上記のように製造材料蒸気を最初にパッケージに接触させる。これにより、製造材料の上記の精製効率及び本発明に係る方法の驚くほど良好な実行可能性がもたらされる。製造材料の良好な精製が達成されると同時に、後続の装置内でのゲル及びポリマーの形成が回避されて石英ガラス製造の良好な制御性及び再現性が得られ、シリカ粒子のパッケージは、特に耐久性があり、とりわけパッケージ間の圧力低下がごくわずかであるため、石英ガラス製造の全体プロセスに最小限の障害を与えるにすぎない。それゆえ、パッケージの交換は、ほとんど必要とされず、少ない休止時間をもたらす。さらに、清浄化装置は機構が単純であり、石英ガラス製造用の既存の装置に後から組み込むことさえも可能である。
【0053】
本発明によれば、比表面積とは、特に明記されていない限りBET表面を意味する。この表面を決定する方法は当業者に公知である。特にDIN ISO9277:2003−05に準拠して決定可能である。
【0054】
多孔性シリカ粒子のBET表面積が2〜450m
2/gの範囲内、より好ましくは2〜300m
2/g、さらにより好ましくは2〜250m
2/gの範囲内、さらにより好ましくは2〜200m
2/gの範囲内、さらにより好ましくは3〜150m
2/gの範囲内、さらにより好ましくは4〜100m
2/gの範囲内であれば、特に好ましい。特にこの領域では製造材料蒸気の精製は特に効果的であり且つ使用寿命は最長であることが判明した。
【0055】
原理的には、所要の比表面積を有するシリカ粒子は、シリカ粒子のバルクに使用可能である。しかしながら、シリカ粒子は、合成シリカ材料を含むことが好ましい。
【0056】
好ましくは、シリカ材料は、合計で1ppm未満、好ましくは500ppb未満、より好ましくは250ppb未満、最も好ましくは100ppb未満、特に好ましくは50ppb未満の含有率で、Li、Na、K、Ca及びMgからなる群の元素を有する。
【0057】
好ましくは、シリカ材料は、合計で1ppm未満、好ましくは500ppb未満、より好ましくは250ppb未満、最も好ましくは100ppb未満、特に好ましくは50ppb未満の含有率で、Fe、Cu、Cr、Mn及びNiからなる群の元素を有する。
【0058】
好ましくは、シリカ材料は、合計で1ppm未満、好ましくは500ppb未満、より好ましくは250ppb未満、最も好ましくは100ppb未満、特に好ましくは50ppb未満の含有率で、Ti、Zr及びZnからなる群の元素を有する。
【0059】
好ましくは、シリカ材料は、50ppm未満、好ましくは1ppm未満、より好ましくは500ppb未満、最も好ましくは250ppb未満、特に好ましくは100ppb未満の含有率のAlを有する。
【0060】
好ましくは、シリカ材料は、500ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、最も好ましくは5ppm未満、特に好ましくは2ppm未満の残留塩素含有率を有する。
【0061】
これらの好ましい含有率のそれぞれ、好ましくはこれらの含有率の少なくとも2つの組合せ、特に好ましくはすべての含有率は、製造材料蒸気の精製を特に効果的にする。かかるシリカ粒子は、例えば、スラッジ顆粒化プロセス(Eirich顆粒化)により取得可能である。
【0062】
好ましくは、本発明に係るプロセスは、多孔性シリカ粒子のバルクが、粒子の少なくとも75重量%が50〜4000μmの直径を有する粒子サイズ分布を有することを特徴とする。2000〜4000μmの画分は、伝統的なスクリーニング技術により決定し、且つ1〜2000μmの画分は、レーザー光散乱(Mastersizer2000を使用)により決定した。多孔性シリカ粒子のバルクは、特に好ましくは、粒子の少なくとも75重量%が100〜3000μm、より好ましくは125〜2500μm、特に好ましくは180〜2000μmの直径を有する粒子サイズ分布を有する。粒子の少なくとも75重量%が500〜2000μmの直径を有する本発明に係るさらに好ましい粒子サイズ分布が存在する。
【0063】
重量百分率は、多孔性シリカ粒子のバルクの全重量を基準にする。この実施形態により、特に、バルク間の低い圧力低下と同時に効率的な清浄化作用を達成可能である。シリカのより小さい粒子サイズが液/固相抽出に有利であるという国際公開第98/47946号の評価とは対照的に、本発明によれば、驚くべきことに、好ましい粒子サイズ範囲内では製造材料蒸気の効果的な精製が行われることが判明した。しかしながら、それと同時に、より高い流量を実現可能であり、且つ追加のプロセス工程を必要としない。
【0064】
好ましくは、本発明に係るプロセスは、記載のすべての実施形態で、多孔性シリカ粒子のバルクが、50μm未満の粒子サイズの割合が多くとも20重量%、特に好ましくは多くとも15重量%を有することを特徴とする。重量百分率は、多孔性シリカ粒子のバルクの全重量を基準にする。この実施形態により、特に、バルク間の低い圧力低下と同時に効率的な清浄化作用を達成可能である。
【0065】
好ましくは、本発明に係るプロセスは、多孔性シリカ粒子のバルクの嵩密度が0.5〜3のg/cm
3、より好ましくは0.75〜2g/cm
3、特に好ましくは0.9〜1.5g/cm
3であることも特徴とする。嵩密度の決定は当業者に公知であり、特にDIN53194に準拠して行うことが可能である。この嵩密度は、特に、バルク間の低い圧力低下それゆえ高処理量と効率的かつ効果的な精製との間の良好な組合せを表す。
【0066】
好ましくは、本発明に係るプロセスは、プロセス工程(b)の精製による製造材料蒸気の圧力低下が2〜750mbar、好ましくは3〜400mbar、より好ましくは5〜100mbarであることを特徴とする。
【0067】
本発明によれば、プロセス工程(a)からプロセス工程(b)への製造材料蒸気の流入速度は、好ましくは0.01〜2m/s、より好ましくは0.02〜1m/sである。高処理量にもかかわらず、これらの速度で依然として良好な清浄化性能を達成可能である。この場合、シリカ粒子のバルク中の製造材料蒸気の平均滞留時間は、2min未満、特に好ましくは1min未満、特に好ましくは45s未満、より好ましくは30s未満、より好ましくは15s未満、最も好ましくは5s未満であることは特に好ましい。この短い平均滞留時間の結果として、特にシリカ材料と製造材料蒸気との間の二次反応(例えば、開環反応)は開始されない。かかる短い平均滞留時間は、特に製造材料が蒸気の形態であるので実現可能である。
【0068】
製造材料蒸気は、プロセス工程(b)では100℃超、好ましくは120℃超、特に好ましくは130℃超の温度を有するべきである。これにより、製造材料は、本質的に蒸気の形態を維持することが保障される。必要であれば、この目的で製造材料蒸気のこの温度を確保するために、追加の加熱装置を備えることが可能である。
【0069】
好ましくは、多孔性シリカ粒子のバルクの嵩高さは、製造材料蒸気の流動方向と平行に10mm〜300mmである。それにより、特に明記された粒子サイズ分布と組み合わせて、高処理量の十分な清浄化作用を確保することが可能である。
【0070】
本発明によれば、B)及びC)の反応性痕跡不純物(例えば、シラノール、ルイス酸及びルイス塩基)は、プロセス工程(b)の精製工程で低減される。これらの痕跡不純物の低減は、特に、商業製造材料の対応する含有率よりも少ない痕跡不純物含有率への低減である。
【0071】
特に、再現性よく一定した組成を有する製造材料蒸気は、本発明に係る清浄化工程(b)を用いて提供可能である。結果として、液体製造材料のバッチ変動は、得られる合成石英ガラスの品質に影響を及ぼさない。
【0072】
また、なんら特定の理論により拘束されることを望むものではないが、蒸気中の製造材料の粒子密度は、液体抽出(例えば、先行技術のもの)よりも低いことが有利であるように思われる。これによりシリカ材料と製造材料との間で起こり得る相互作用の可能性が低減されるので、望ましくない副反応はそれほど頻繁に起こらない。しかしながら、同時に、相互作用は、製造材料蒸気の効果的な精製を達成するのに十分である。
【0073】
特に、本発明に係るプロセスは、上流の液相固体抽出(HPLCプロセス工程)を用いずに行われる。
【0074】
プロセス工程(b)で提供される精製は、「in−situ」気相固体抽出として設計される。つまり、本発明に係る方法では、例えば、国際公開第98/47946A号に記載されるように製造液体が精製されるのではなく、製造材料の蒸気が精製される。蒸気相への移行時に熱エネルギーが原料に供給される。結果として、おそらく特に反応性の不純物は蒸発時又は蒸気相中で少なくとも部分的に反応するので、蒸気の化学組成は元の組成(液相の国際公開第98/47946A号と比較して)と異なり得る。
【0075】
<プロセス工程(c)−製造材料蒸気の変換>
プロセス工程(c)では、プロセス工程(b)から得られた精製製造材料蒸気を反応ゾーンに供給し、酸化により及び/又は加水分解により製造材料蒸気をSiO
2粒子に変換する。
【0076】
このプロセス工程は、特に、既知のスートプロセス又は既知の直接ガラス化法に対応する。可能な実施形態は当業者に公知である。
【0077】
<プロセス工程(d)−SiO
2粒子の堆積>
プロセス工程(d)では、プロセス工程(c)から得られたSiO
2粒子を堆積表面上に堆積させる。このプロセス工程の実施形態は専門家の技能及び知識の範囲内にある。
【0078】
<プロセス工程(e)−任意選択的な乾燥及びガラス化>
プロセス工程(e)では、必要であれば、プロセス工程(d)から得られたSiO
2粒子の乾燥及びガラス化を行って合成石英ガラスを形成する。このプロセス工程は、特に事前に行われたプロセス工程がスートプロセスに従って行われた場合に必要である。このプロセス工程の実施形態は専門家の技能及び知識の範囲内にある。
【0079】
全体として、本発明に係る方法は、「直接ガラス化」による合成石英ガラスの製造にも好適である。この方法では、プロセス工程(d)で堆積表面上にSiO
2粒子を堆積させる時の温度が十分に高いので、SiO
2粒子の直接ガラス化が起こる。したがって、「直接ガラス化」の場合、任意選択的なプロセス工程(d)は省略される。さらに、本発明に係る方法は、「スートプロセス」による石英ガラスの製造にも好適である。この場合、プロセス工程(c)でSiO
2粒子を堆積させる時の温度が十分に低いので多孔性SiO
2スート層が得られ、この層の乾燥及びガラス化を個別のプロセス工程(d)で行って合成石英ガラスを与える。
【0080】
本発明に係る方法は、合成石英ガラスの製造に適しており、これは外付け法及び内付け法として行われる。本発明に係る方法が外付け法として行われる場合、OVD法(気相外付け)、VAD法(気相軸付け)又はPECVD法(プラズマ増強化学気相堆積)であることが好ましい。本発明に係る方法が内付け法として行われる場合、MCVD法(改良化学気相堆積)が好ましい。
【0081】
<装置>
本発明の他の態様では、合成石英ガラスを製造するための装置が提供される。この装置は、次の構成要素:
少なくとも1種の重合性ポリアルキルシロキサン化合物を含有する少なくとも1種の製造材料を蒸発させて製造材料蒸気を形成するための、少なくとも1つの蒸発器ゾーン1と、
少なくとも1つの蒸発器ゾーン1から得られた製造材料蒸気が供給され、且つBrunauer、Emmett及びTellerに準拠した測定により比表面積(BET表面積)を決定したときに少なくとも2m
2/gの比表面積を有する多孔性シリカ粒子のバルクを含む、少なくとも1つの清浄化装置2と、
少なくとも1つの清浄化装置2から得られた精製製造材料蒸気を通して熱分解により又は加水分解により製造材料をSiO
2粒子に変換する、少なくとも1つの反応ゾーン3と、
合成石英ガラスを形成するために反応ゾーン3から得られたSiO
2粒子の堆積ゾーンを有する、少なくとも1つの堆積ゾーン4と
により特徴付けられる。
【0082】
本発明に係る装置は、好ましくは、本発明に係る方法を行うように機能する。それゆえ、三次元の物理的特性を有する上記の選択肢はすべて、本発明に係る装置に好適である。
【0083】
例として
図1を参照して本発明に係る装置を以下に説明する。
【0084】
本発明に係る装置は、少なくとも1つの蒸発器ゾーン1を含む。少なくとも1種の重合性ポリアルキルシロキサン化合物を含有する少なくとも1種の製造材料は、この蒸発器ゾーンで蒸発されて製造材料蒸気を形成する。上記の製造材料は、個別又は組合せの実施形態すべてで製造材料として使用可能である。
【0085】
それゆえ、蒸発器ゾーン1は、少なくとも1種の製造材料用の供給ライン5を含む。任意選択的に、蒸発器ゾーンは、不活性ガス用の供給ライン6も含み得る。
【0086】
気相への液体製造材料の移行は蒸発ゾーン1で行われ、製造材料蒸気を形成する。かかる蒸発ゾーンの実施形態は当業者に公知である。
【0087】
製造材料蒸気は、少なくとも1つの蒸発器ゾーン1から得られた製造材料蒸気が供給される少なくとも1つの清浄化装置2で精製される。清浄化装置2は、Brunauer、Emmett及びTellerに準拠した測定により比表面積(BET表面積)を決定したときに少なくとも2m
2/gの比表面積を有する多孔性シリカ粒子のバルク8を含む。多孔性シリカ粒子は、好ましくは、以上ですでに述べた個別又は組合せの好ましいシリカ粒子構成がすべて可能である。同様に、特に、プロセス工程(b)は、この清浄化装置2ですべての選択肢を用いて行われる。
【0088】
清浄化装置2は、好ましくは、製造材料蒸気速度の測定及び/又は調整を行うための制御デバイスをさらに含む。さらに、清浄化装置の前後で圧力低下を測定可能である。制御デバイスにより得られたデータにより清浄化装置2の状態に関する結論を引き出したり、必要であれば、交換操作又は清浄化操作の必要性を認識したりすることも可能である。
【0089】
清浄化装置2は、少なくとも1つの温度制御ユニットをさらに含み得る。これは、製造材料蒸気が100℃超、好ましくは120℃超の温度で少なくとも1つの清浄化装置2内の気相中に保持されることを保証する。
【0090】
さらに、清浄化装置2は、好ましくは、少なくとも1つの布7を含み得る。少なくとも1つの布7は、蒸発器ゾーン1から送られた製造材料蒸気が多孔性シリカ粒子のバルクとの接触前に少なくとも1つの布を通り抜けるように配置される。この少なくとも1つの布7は、特に、製造材料蒸気に含まれ得る液滴を保持するように機能する。これにより、製造材料蒸気が(初期に)本質的に気相中で多孔性シリカ粒子のバルクに接触することが保障される。つまり、多孔性シリカ粒子のバルクに接触する製造材料蒸気は、好ましくは97重量%以上、好ましくは98重量%以上、より好ましくは99重量%以上、特に好ましくは99.9重量%以上の気体成分を含有する。
【0091】
好ましくは、製造材料蒸気は、蒸発器ゾーン1から実質的に直線状の通路を通って清浄化装置2内に方向付けられる(すなわち、少なくとも1つの布7を通って多孔性シリカ粒子のバルク8の方向に)。つまり、好ましくは、製造材料蒸気は、35°、好ましくは25°、特に好ましくは10°の最大方向変化を受ける。小さい方向変化、とりわけ重力による方向変化は、完全に回避することができない。蒸気のかかる進行は、特に、コンパクトな装置構成に結びつく。
【0092】
本発明に係る装置の少なくとも1つの反応ゾーン3は、当業者に公知である。少なくとも1つの清浄化装置2から得られた精製製造材料蒸気はその中に送られて、酸化により及び/又は加水分解により製造材料はSiO
2粒子に変換される。上記の直接ガラス化法又はスート法による実施形態は、ここに提供可能である。
【0093】
反応ゾーン3から得られたSiO
2粒子用の堆積ゾーンを有する少なくとも1つの堆積ゾーン4それ自体も当業者に公知である。
【0094】
<使用>
本発明のさらなる態様では、少なくとも1種の重合性ポリアルキルシロキサン化合物を含有する製造材料蒸気を精製するための多孔性シリカ粒子のバルクの使用が提供される。ただし、多孔性シリカ粒子は、少なくとも2m
2/gの比表面積を有し、且つ比表面積は、Brunauer、Emmett及びTellerに準拠した測定により決定される(BET表面)。多孔性シリカ粒子のバルクの場合、上記の個別又は組合せの実施形態すべてを使用可能である。
【0095】
<石英ガラス>
本発明のさらなる態様では、本発明に係る方法により取得可能な合成石英ガラスが提供される。こうして得られる石英ガラスは、製造材料蒸気の効率的精製から生じる均一性及び再現性を有する。
【0096】
さらに、スートプロセスから得られる合成石英ガラスは、スート堆積後、軸方向のより均一な密度分布を有する。
【実施例】
【0097】
実施例1〜8に基づく種々のシリカパッケージを用いて
図1に記載の蒸発器を操作した。シリカパッケージは、それぞれ、振とう後に50mmの嵩高さを有していた。同一条件下で原料を100℃にプレ加熱し、次いで、キャリヤーガスとして150℃にプレ加熱された窒素と一緒に、180℃に加熱された蒸発チャンバー内に噴霧した。
【0098】
続いて、パイプの蒸気導出側及び投入系からバーナーの出口までの系の平均圧力上昇をmbar/kg蒸発製造材料単位で確認した。系の圧力上昇は、蒸気導出パイプ、スロットル及び投入装置にポリマー残留物が堆積する尺度である。蒸発製造材料当たりの系の圧力上昇が小さいほど、保守労力及びプロセス時間損失が小さい。同時に、これはプロセス再現性の向上並びに製品均一性(スート体又は石英ガラスの軸方向均一性)の向上に効果がある。
【0099】
【表1】
【0100】
プロセス安定性/保守労力の説明:
− +++: >12週間以内に蒸発器の保守が必要
− ++: 8〜12週間以内に蒸発器の保守が必要
− +: 3〜8週間以内に蒸発器の保守が必要
− −: 1.5〜3週間以内に蒸発器の保守が必要
− − −: <1週間以内に蒸発器の保守が必要